説明

生体高分子の表示方法及び装置

【課題】 蛋白質やアミノ酸などの生体高分子の全体像と部分的な詳細情報を同一画面に表示し、解析効率、精度の向上を図ること。
【解決手段】 データベースから生体高分子の全体構造に関する情報を読出して生体高分子の全体構造の像を表示画面に表示する手段と、表示された全体構造の像のうちユーザに指定された部分の詳細構造に関する情報を前記データベースから読み出して前記全体構造の像と詳細構造に関する情報とを同一画面上に表示する手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミノ酸や蛋白質等の生体高分子の構造を表示する方法及び装置に係り、特に蛋白質などの生体高分子の全体構造に関する像とユーザが指定した部分の詳細な構造に関する情報とを同時に同一画面に表示する方法及び装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バイオインフォマティクスの世界において、蛋白質などの生体高分子の全体構造に関する像と部分的な詳細な構造に関する配列情報の両方が必要となるが、同時に両方の情報を見比べることが非常に困難である。
例えばゲノム解析において、ヒトゲノムのゲノム解析は終了し、他の生物も続々とゲノム解析が進んでいる。それらは膨大な量ですべてのシークエンス情報(配列情報)を1画面に収めることは不可能である。その結果、全体像を絵で表すことになるが、それではシークエンスの詳細がわからなくなる。従来は全体像を表示する画面と詳細部分を拡大した画面を別にすることによって解決してきたが、全体構造の像と部分的情報の連携ができていないため、わかりにくく、解析効率や精度を下げる要因になっている。
蛋白質の機能解析においても、蛋白質の立体構造を表示するのに全体像を絵で表すことになるが、その際も配列情報等の詳細が分からなくなる。従来は対象の部位に矢印や色を用いて、アミノ酸やアノテーション等の部位を区別して表現していたが、さらに詳細な配列情報は別画面で見る必要があり、配列情報を全体像と同一の画面で連携して見ることが困難な状況である。
従来、この種の表示方法として下記の特許文献1に開示されたものがある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−139254
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライフサイエンス分野において、生体高分子の膨大な量の配列情報の中から目的の情報を抽出して解析するには、全体像と部分的な配列情報を別々に見ていく従来の手法では、十分な解析効率や精度を得ることができないという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、ライフサイエンス分野において、生体高分子の全体像と部分的な配列情報を同一画面上で同時に表示し、解析効率や精度を向上させることができる生体高分子の表示方法および装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る生体高分子の表示方法は、生体高分子表示装置がデータベースから生体高分子の全体構造に関する情報を読出して生体高分子の全体構造の像を表示画面に表示するステップと、表示された全体構造の像のうちユーザに指定された部分の詳細構造に関する情報を前記データベースから読み出して前記全体構造の像と詳細構造に関する情報とを同一画面上に表示するステップとを備えることを特徴とする。
また、本発明に係る生体高分子の表示装置は、データベースから生体高分子の全体構造に関する情報を読出して生体高分子の全体構造の像を表示画面に表示する手段と、表示された全体構造の像のうちユーザに指定された部分の詳細構造に関する情報を前記データベースから読み出して前記全体構造の像と詳細構造に関する情報とを同一画面上に表示する手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ライフサイエンス分野において、蛋白質などの生体高分子の全体像と部分的な配列情報を別々にして見ていた問題を解決し、全体像と部分的な配列情報を同時に同一画面で確認することが可能になり、解析効率、精度の向上に貢献することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明に係る生体高分子表示装置の実施の形態を示す全体構成図である。
本実施形態の生体高分子表示装置は、様々な生物種の塩基配列情報とそのアミノ酸情報、注釈情報が格納されたシークエンスデータベース1011と、タンパク質の配列情報、塩基配列情報、アミノ酸情報、構造座標、注釈情報が格納された蛋白質データベース1012から成るデータベース101を備えている。また、データベース101の更新処理および検索処理を行うデータ処理部102、拡大のスケール、注釈の位置、注釈の色、注釈の内容を入力する入力部103、拡大画面、注釈の内容を画面に表示する表示部104から成るコンピュータ105を備えている。
【0009】
シークエンスデータベース1011は、図6に示すように、配列ID、配列名、ゲノム配列、アミノ酸配列のデータから構成されるテーブル1011Aと、配列ID、注釈名、注釈内容、注釈位置、注釈色のデータから構成されるテーブル1011Bから構成されている。
配列IDは、ユーザが配列情報をデータベース1011に登録する際に指定する固有の識別情報である。
【0010】
本実施形態の装置では、データ処理部102に実装されたプログラム1021が、配列IDを用いてシークエンスデータベース1011に登録されているテーブル1011Aにアクセスし、ゲノム配列を取得して画面に表示する。そしてテーブル1011Bにアクセスし、注釈情報を取得してゲノム配列に注釈の色を表示する。
【0011】
一方、蛋白質データベース1012は、図7に示すように、タンパクID、タンパク質名、PDBファイルパスのデータから構成されるテーブル1012Aと、タンパクID、注釈名、注釈内容、注釈位置、注釈色のデータから構成される1012Bから構成されている。
テーブル1012AのPDBファイルパスにあるPDBとは、蛋白質構造データバンク(Protein Data Bank)の略称であり、タンパク質と核酸の3次元構造の構造座標を蓄積している国際的な公共データベースである。PDBファイルは、PDBが扱っているフォーマットファイルのことで、PDBファイルパスにPDBファイルのファイルパスが格納されている。
テーブル1012Bの注釈位置には、注釈情報が位置する構造座標が格納されている。
データ処理部102のプログラム1021は、タンパクIDを用いて蛋白質データベース1012に登録されているテーブル1012Aにアクセスし、蛋白質の立体構造に係る座標情報を取得し、立体構造図を表示する。そしてテーブル1012Bにアクセスし、注釈情報を取得して、蛋白質の立体構造図に注釈の色を表示する。
【0012】
図2は、解析対象のアミノ酸の全体構造の像とユーザに指定された部分の詳細構造の情報であるゲノム配列情報を同時に表示する拡大虫眼鏡インタフェース画面の一例を示す図である。
この拡大虫眼鏡インタフェース画面は、プログラム1021が表示部104に表示する。
ここで例示する拡大虫眼鏡インタフェース画面は、アミノ酸などの全体像を表示する全体像表示ウインドウ201と、全体像の中の一部分をユーザに選択させるカーソル部202と、ユーザに指定された部分の詳細情報(アミノ酸にあってはゲノム配列)を表示する部分情報表示ウインドウ203と、拡大のスケールと注釈の色を設定する虫眼鏡設定ウインドウ204で構成されている。
【0013】
部分情報表示ウインドウ203は、ユーザが入力した注釈に対し色を付けて表示する表示部2031と、注釈の内容を表示する2032で構成されている。
虫眼鏡設定ウインドウ204は、ユーザに指定された部分の詳細情報を表示する際の拡大スケールを選択する入力部2041と、注釈の色を入力する入力部2042と、注釈の内容を入力する入力部2043と、注釈の内容を登録する入力部2044で構成されている。
入力部2041でDNA(デオキシリボ核酸)レベルで部分情報を表示するか、アミノ酸レベルで部分情報を表示するか選択することができる。
また、入力部2042で注釈を入れた際の色の設定を行うことができる。さらに入力部2043で注釈の内容を入力することができる。また、入力部2044で入力部2042と入力部2043で入力された内容を元に、表示部2031と表示部2032の注釈情報を表示する。
【0014】
図3は、解析対象の蛋白質の全体構造の像とユーザに指定された部分の情報を同時に表示する拡大虫眼鏡インタフェース画面の一例を示す図である。
図2の例と同様に、蛋白質の全体構造を表示する全体像表示ウインドウ301と、蛋白質の立体構造の中の一部分をユーザに選択させるカーソル部302と、選択された部分の詳細情報を表示する部分情報表示ウインドウ303と、拡大のスケールと注釈の色を設定する虫眼鏡設定ウインドウ304で構成されている。
虫眼鏡設定ウインドウ304は、ユーザに指定された部分の詳細情報を表示する際の拡大スケールを選択する入力部3041と、注釈の色を入力する入力部3042と、注釈の内容を入力する入力部3043で構成されている。入力部3041でDNA(デオキシリボ核酸)レベルで部分情報を表示するか、アミノ酸レベルで部分情報を表示するか選択することができる。入力部3042で注釈を入れた際の色の設定を行うことができる。また、入力部3043で注釈の内容を入力することができる。
【0015】
図4は、拡大虫眼鏡インタフェース画面を表示するプログラム1021の処理の概要を示すフローチャートである。
プログラム1021は、まず、解析対象のアミノ酸の配列情報、ゲノム配列情報、タンパク質の配列情報、立体構造図の情報をデータベース101に格納する(ステップ401)。
次に、登録されたシークエンスの全体像、もしくはタンパク質の立体構造の全体像を図2または図3で例示した全体像表示ウインドウ201または301に表示する(ステップ402)。
【0016】
次に、部分的な詳細情報を表示する際の拡大スケール、注釈の色などのパラメータを入力させ、データベース101のテーブル1011B,1012Bに登録する(ステップ403)。
次に、虫眼鏡形状のカーソル部202,302を使って拡大したい部分がユーザに選択されると(ステップ404)、その選択された部分の詳細情報(例えばアミノ酸にあってはゲノム配列、蛋白質にあってはアミノ酸配列)をデータベース101から読出し、部分情報表示ウインドウ203または303に表示する(ステップ405)。
ユーザが虫眼鏡形状のカーソル部202,302を移動して別の部分を指定した場合、その部分に注釈があった場合は、設定された注釈の色を配列に色付けし、注釈内容も部分表示ウインドウ203または303に表示させる(ステップ407)。
【0017】
図5は、部分表示ウインドウ上で選択した部分に対し、注釈の色と内容を登録した場合の処理概要を示したフローチャートである。
プログラム1021は、虫眼鏡形状のカーソル部202,302で選択した部分に対する拡大画面を表示する(ステップ501)。次に、ユーザがマウスのドラッグ機能を用いて注釈を入れたい配列を選択し(ステップ502)、さらに注釈の色と注釈の内容を入力し(ステップ503)、登録ボタン2044を押下したならば(ステップ504)、部分情報表示ウインドウ203または303で選択された部分情報に対し、色付けの注釈の内容を付加して登録する(ステップ505)。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る生体高分子の表示装置の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】生体高分子の全体像と部分詳細情報を表示する画面の一例を示す図である。
【図3】生体高分子の全体像と部分詳細情報を表示する画面の他の例を示す図である。
【図4】生体高分子の全体像と部分詳細情報を表示するプログラムの表示処理の概要を示すフローチャートである。
【図5】生体高分子の全体像と部分詳細情報を表示するプログラムの注釈情報等の入力処理を示すフローチャートである。
【図6】シークエンスDBの構成を示す図である。
【図7】蛋白質DBの構成を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
101 データベース
102 データ処理部
103 入力部
104 表示部
201 全体像表示ウインドウ
203 部分情報表示ウインドウ
1011 シークエンスDB
1012 蛋白質DB
1021 プログラム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体高分子表示装置がデータベースから生体高分子の全体構造に関する情報を読出して生体高分子の全体構造の像を表示画面に表示するステップと、表示された全体構造の像のうちユーザに指定された部分の詳細構造に関する情報を前記データベースから読み出して前記全体構造の像と詳細構造に関する情報とを同一画面上に表示するステップとを備えることを特徴とする生体高分子の表示方法。
【請求項2】
データベースから生体高分子の全体構造に関する情報を読出して生体高分子の全体構造の像を表示画面に表示する手段と、表示された全体構造の像のうちユーザに指定された部分の詳細構造に関する情報を前記データベースから読み出して前記全体構造の像と詳細構造に関する情報とを同一画面上に表示する手段とを備えることを特徴とする生体高分子の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−72827(P2010−72827A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238117(P2008−238117)
【出願日】平成20年9月17日(2008.9.17)
【出願人】(000233055)日立ソフトウエアエンジニアリング株式会社 (1,610)
【Fターム(参考)】