説明

生分解カード

【課題】 使用可能な期間を延長することができるとともに、その期間を自由に調節することができ、また、磁気テープ等を接着する場合であっても安価に対応可能な生分解カードを提供する。
【解決手段】 生分解性のカード基材11a,11bと、カード基材11a,11bの少なくとも一方の面に形成され、そのカード基材11a,11bに印刷された絵柄を保護する、生分解性の保護層12a,12bと、カード基材11a,11b又は保護層12a,12bの少なくとも一方の所定領域に形成され、生分解速度を調節する分解調節層13a,13bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリペイドカード,会員カード,クレジットカード,キャッシュカード,社員証,学生証,定期券その他のカードに好適に使用することができる生分解カードに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、空気中の水分による加水分解、紫外線等の光による光分解、微生物による分解などにより、自然環境下で分解する生分解樹脂を使用した生分解カードが知られている。この種の生分解カードは、テレホンカード,施設利用カード等のいわゆる使い捨てのプリペイドカード等に使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述した従来の生分解カードは、使用できる期間が短いので、用途が限られていた。また、従来の生分解カードに磁気テープ等を接着しようとするときは、専用の接着剤を使用しなければならず、製造コストがかかっていた。
【0004】本発明の課題は、使用可能な期間を延長することができるとともに、その期間を自由に調節することができ、また、磁気テープ等を接着する場合であっても安価に対応可能な生分解カードを提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。前記課題を解決するために、請求項1の発明は、生分解性のカード基材(11a,11b)と、カード基材(11a,11b)の少なくとも一方の面に形成され、そのカード基材(11a,11b)に印刷された絵柄を保護する、生分解性の保護層(12a,12b)と、カード基材(11a,11b)又は保護層(12a,12b)の少なくとも一方の所定領域に形成され、生分解速度を調節する分解調節層(13a,13b)とを有する生分解カードである。
【0006】請求項2の発明は、請求項1に記載の生分解カードにおいて、生分解性のカード基材(11)と、カード基材(11)の少なくとも一方の面の所定領域に形成され、生分解速度を調節する分解調節層(13a,13b)とを有する生分解カードである。
【0007】請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載の生分解カードにおいて、分解調節層(13a,13b)は、網点状に形成され、網点の面積によって生分解速度を調節することを特徴とする生分解カードである。
【0008】請求項4の発明は、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の生分解カードにおいて、分解調節層(13a,13b)は、塩化ビニル又はその共重合体を含む合成樹脂であることを特徴とする生分解カードである。
【0009】請求項5の発明は、請求項4に記載の生分解カードにおいて、分解調節層(13a,13b)は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする生分解カードである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図面等を参照して、本発明の実施の形態について、さらに詳しく説明する。
(第1実施形態)図1は、本発明による生分解カードの第1実施形態を示す断面図である。なお、本実施形態では、クレジットカードとして使用する生分解カード10を例に挙げて説明する。生分解カード10は、カード基材11a,11bと、保護層12a,12bと、分解調節層13a,13bと、磁気テープ14と、ホログラム15と、サインパネル16とを有する。
【0011】カード基材11a,11bは、このカードの担体となる基材である。また、カード基材11a,11bは、その装飾絵柄を表示して、カードを装飾する。カード基材11a,11bは、材料として、生分解樹脂を使用している。生分解樹脂とは、加水分解、光分解、微生物分解等により、自然環境下で分解する樹脂のことである。このような樹脂の例を挙げると、脂肪族二塩基酸と二価アルコールの縮合重合により合成される各種の脂肪族ポリエステルなどがある。例えば、コハク酸、アジピン酸とエチレングリコール、1,4ブタンジオールの縮合重合により得られるポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリテトラメチレンアジペート等の脂肪族ポリエステルなどである。また、3官能又は4官能の多価アルコール、オキシカルボン酸及び多価カルボン酸、若しくはその無水物から合成した脂肪族ポリエステルなども使用することができる。さらに、ポリ乳酸、ポリグリコール酸等の脂肪族ポリエステルなどを使用することもできる。
【0012】保護層12a,12bは、カード基材11a,11bの装飾絵柄が剥がれ落ちないように、表面を保護する層である。保護層12a,12bは、カード基材11a,11bに形成されている。保護層12a,12bは、カード基材11a,11bと同様の生分解樹脂を使用している。
【0013】分解調節層13a,13bは、生分解速度を調節する層である。分解調節層13a,13bは、保護層12a,12bに形成する。分解調節層13a,13bは、塩化ビニルを含む合成樹脂(例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体,塩化ビニル−塩化ビニリデン共重合体,塩化ビニル−アクリロニトリル共重合体など)で、形成する。このような合成樹脂は、加水分解等しないので、カードの生分解速度を遅らせることができる。また、このような合成樹脂を使用することで、後述の通り、容易に、磁気テープ14の接着等をすることができる。なお、分解調節層13a,13bは、生産性、製造コスト等を考慮すると、特に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体を含むOP(Over Print)インキを印刷して形成するとよい。分解調節層13a,13bは、網点状に、形成する。分解調節層13a,13bは、この網点面積率の大小によって、生分解速度を調節することができる。すなわち、網点面積率が大きく、網点の占める割合が大きいほど、生分解に時間がかかり、網点面積率が小さく、網点の占める割合が小さいほど、生分解に時間がかからない。
【0014】磁気テープ14は、データを再生可能に記録する部分であり、分解調節層13aに形成されている。磁気テープ14は、通常用いられる磁気記録部であり、磁性材料(例えば、γ−Fe2 3 ,Co被着γ−Fe2 3 ,Fe3 4 ,Fe−Cr,Fe−Co,Co−Cr,Co−Ni,Ba−フェライト,Sr−フェライト,CrO2 等)を含んでいる。磁気テープ14は、そのような磁性材料の磁気転写テープを、熱転写等により、分解調節層13aに接着して形成する。なお、前述の通り、分解調節層13aは、塩化ビニルを含む合成樹脂で形成されているので、磁気テープ14を接着するヒートシール材は、塩化ビニル製カードに接着するものをそのまま使用することができる。
【0015】ホログラム15は、光の干渉によりホログラム像を結像可能とする部分であって、これによりカードが本物であることを証明する。ホログラム15は、あらかじめ転写シートに形成されており、分解調節層13aに熱転写して貼付する。なお、ホログラム15も、磁気テープ14と同様に、塩化ビニル製カード用のヒートシール材で接着することができる。
【0016】サインパネル16は、カード所有者が、自己のサインを記入する部分であり、分解調節層13bに熱転写して貼付する。サインパネル16も、磁気テープ14と同様に、塩化ビニル製カード用のヒートシール材で接着することができる。
【0017】(作製方法)生分解カード10は、以下のように作製する。
(1)保護層12a,12bになる生分解樹脂製の透明オーバーシートの表面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のOPインキをグラビア・コートする。さらに、保護層12aになるオーバーシートには、磁気テープ14を熱転写する。
(2)一方、カード基材11a,11bになる生分解樹脂製のコアシートの表面に、装飾絵柄を印刷する。
(3)(2)において、装飾絵柄を印刷したコアシートの裏面同士を合わせて、さらに、その外側に、(1)において、OPインキをコーティングしたオーバーシートを重ね合わせ、プレスラミネート(加圧加熱融着)して、積層シートを作製する。
(4)(3)において、作製した積層シートを装飾絵柄に合わせて、カードの大きさに打ち抜く。
(5)(4)において、打ち抜いたカードに、ホログラム15及びサインパネル16を熱転写して、クレジットカードとして使用する生分解カード10が完成する。
【0018】本実施形態によれば、生分解カード10は、分解調節層13a,13bを有するので、生分解に要する時間を遅らせることができる。また、分解調節層13a,13bは、網点状に形成されており、この網点面積率の大小によって、生分解速度を調節することができる。さらに、分解調節層13a,13bは、塩化ビニルを含む合成樹脂で形成されているので、塩化ビニル製カード用のヒートシール材を使用して、磁気テープ14等を接着することができる。特に、分解調節層13a,13bは、生産性、製造コストを考慮すると、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体で形成するとよい。
【0019】(第2実施形態)図2は、本発明による生分解カードの第2実施形態を示す断面図である。なお、以下に示す各実施形態では、前述した第1実施形態と同様の機能を果たす部分には、同一数字の符号を付して、重複する説明を適宜省略する。生分解カード10は、カード基材11a,11bと、保護層12a,12bと、分解調節層13aと、磁気テープ14と、ホログラム15とを有する。分解調節層13aは、片面にのみ形成されている。磁気テープ14等の付属物をカードの片面にのみ設ければよく、かつ、生分解速度が遅くなりすぎないようにしたいときは、本実施形態のように、分解調節層を片面にのみ設けることができる。
【0020】本実施形態によれば、分解調節層13aは、片面にのみ形成されているので、生分解速度が遅くなりすぎないように調節することができる。また、製造コストもかからない。
【0021】(第3実施形態)図3は、本発明による生分解カードの第3実施形態を示す断面図である。生分解カード10は、カード基材11と、分解調節層13a,13bと、磁気テープ14と、サインパネル16とを有する。分解調節層13aは、カード基材11の外周に沿って、直接形成されている。分解調節層13bは、カード基材11全面に、直接形成されている。カード基材11の装飾絵柄の保護があまり重要でないときや、薄手のカードにしたいときは、本実施形態のように、分解調節層13a,13bをカード基材11に直接設けることができる。
【0022】本実施形態によれば、分解調節層13a,13bは、カード基材11に直接形成されているので、薄手のカードを製造することができる。
【0023】(変形形態)以上説明した実施形態に限定されることなく、種々の変形や変更が可能であって、それらも本発明の均等の範囲内である。保護層12、分解調節層13は、カード使用用途、生産性、製造コスト等を考慮して、任意に設けることができる。例えば、図4に示すように、カード基材11の一方の面に保護層12を設け、他方の面に分解調節層13を設けてもよい。また、分解調節層13の厚さを厚くすることによっても、生分解速度を調節することができる。すなわち、分解調節層13は、厚いほど、生分解に時間がかかる。
【0024】
【実施例】以下、本発明を実施例により、さらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例)厚さ0.1mmの生分解樹脂製の透明オーバーシートの表面に、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体のOPインキを塗膜厚2μmでグラビア・コートして、さらに、磁気テープ14を熱転写する。一方、装飾絵柄を印刷した厚さ0.28mmの生分解樹脂製のコアシート2枚を重ね合わせて、その外側に、OPインキをコーティングしたオーバーシートを重ね合わせ、プレスラミネートして、積層シートを作製する。その積層シートを装飾絵柄に合わせて、カードの大きさに打ち抜き、ホログラム15及びサインパネル16を熱転写して、クレジットカードの生分解カード10が完成する。
【0025】このようにして完成した生分解カード10は、磁気テープ14,ホログラム15,サインパネル16を分離しない十分な強度で接着していた。また、40℃×90%RHの環境下に1000時間放置後、曲げテスト(JIS X 6303−1988)をおこなっても、割れを生じなかった。
【0026】(比較例)厚さ0.1mmの生分解樹脂製の透明オーバーシートの表面に、磁気テープ14を熱転写し、実施例と同様のコアシートを用いて、プレスラミネートして、積層シートを作製する。その積層シートを装飾絵柄に合わせて、カードの大きさに打ち抜き、ホログラム15及びサインパネル16を熱転写して、クレジットカードの生分解カード10が完成する。
【0027】このようにして完成した生分解カード10は、磁気テープ14,ホログラム15,サインパネル16を接着する強度が不十分であり、分離してしまった。また、40℃×90%RHの環境下に500時間放置後、上記と同様の曲げテストをおこなったところ、割れを生じた。
【0028】
【発明の効果】以上詳しく説明したように、請求項1の発明によれば、分解調節層を有するので、生分解速度を調節することができる。
【0029】請求項2の発明によれば、分解調節層は、カード基材に直接形成されているので、薄手のカードを製造することができる。
【0030】請求項3の発明によれば、分解調節層は、網点状に形成されているので、この網点面積の大小によって、生分解速度を調節することができる。
【0031】請求項4の発明によれば、分解調節層は、塩化ビニル又はその共重合体を含む合成樹脂で形成されているので、塩化ビニル製カード用のヒートシール材を使用して、磁気テープ等を接着することができる。
【0032】請求項5の発明によれば、分解調節層は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体で形成されているので、生産性がよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による生分解カードの第1実施形態を示す断面図である。
【図2】本発明による生分解カードの第2実施形態を示す断面図である。
【図3】本発明による生分解カードの第3実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明による生分解カードの変形形態を示す断面図である。
【符号の説明】
10 生分解カード
11,11a,11b カード基材
12,12a,12b 保護層
13,13a,13b 分解調節層
14 磁気テープ
15 ホログラム
16 サインパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】 生分解性のカード基材と、前記カード基材の少なくとも一方の面に形成され、そのカード基材に印刷された絵柄を保護する、生分解性の保護層と、前記カード基材又は前記保護層の少なくとも一方の所定領域に形成され、生分解速度を調節する分解調節層とを有する生分解カード。
【請求項2】 生分解性のカード基材と、前記カード基材の少なくとも一方の面の所定領域に形成され、生分解速度を調節する分解調節層とを有する生分解カード。
【請求項3】 請求項1又は請求項2に記載の生分解カードにおいて、前記分解調節層は、網点状に形成され、網点の面積によって生分解速度を調節することを特徴とする生分解カード。
【請求項4】 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の生分解カードにおいて、前記分解調節層は、塩化ビニル又はその共重合体を含む合成樹脂であることを特徴とする生分解カード。
【請求項5】 請求項4に記載の生分解カードにおいて、前記分解調節層は、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であることを特徴とする生分解カード。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2000−158596(P2000−158596A)
【公開日】平成12年6月13日(2000.6.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平10−336719
【出願日】平成10年11月27日(1998.11.27)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】