説明

生分解性フィルム及び生分解性袋体

【課題】基材層だけでなくヒートシール層も生分解性樹脂により形成することにより、自然環境において優れた生分解性を有し、且つ、ヒートシール部のヒートシール強度と、基材層とヒートシール層間のラミネート強度にも優れた包装用フィルム及び、該フィルムを用いて作製した袋体を提供する。
【解決手段】ポリ乳酸を含む生分解性樹脂からなる基材層(I)の少なくとも一面側に、脂肪族ポリエステルを含む生分解性樹脂からなるヒートシール層(II)が積層されてなる生分解性フィルムにおいて、上記基材層(I)の融点Tm(A)と上記ヒートシール層(II)の融点Tm(B)との差(Tm(A)−Tm(B))が、55℃以上であることを特徴とする生分解性フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性フィルム及び該フィルムを用いた袋体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自然環境保護の観点から、プラスチック製品が自然環境中に棄却された場合に経時的に分解・消失し、最終的に自然環境に悪影響を及ぼさないことが求められている。従来のプラスチックは、自然環境中で長期にわたって安定であり、しかも嵩比重が小さいため、廃棄物埋め立て地の短命化を促進したり、自然の景観や野生動植物の生活環境を損なうといった問題がある。
【0003】
生分解性プラスチックは、土壌中や水中で、加水分解や生分解により、徐々に崩壊・分解が進行し、最終的に微生物の作用により無害な分解物となることが知られている。
生分解性プラスチックとしては、例えば、脂肪族α−ヒドロキシカルボン酸単位により構成される脂肪族ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位により構成される脂肪族ポリエステル、変性PVA、セルロースエステル化合物、デンプン変性体、及び、これらのブレンド品等が知られている。
【0004】
ポリ(脂肪族α−ヒドロキシカルボン酸)の一種であるポリ乳酸は、高剛性及び高透明性を備えており、容器・包装の分野、特に軟包装分野で使用するための研究が行なわれている。
しかし、ポリ乳酸からなるフィルムは、軟包装用基材フィルムとしては硬すぎるという問題、及び、ヒートシール強度が低すぎるという問題がある。これらの問題を解決するために、ポリ乳酸フィルムに可塑剤を添加することが提案されているが、可塑剤の添加によって耐熱性が悪くなると言う問題が新たに生じる。
【0005】
特許文献1には、生分解性フィルムが表面層、中間層、裏面層を有する積層体であって、表面層及び裏面層は、それぞれ乳酸系樹脂を主成分とする層であり、且つ、中間層は、乳酸系樹脂と脂肪族系ポリエステルを含む層であることを特徴とする生分解性フィルムが開示されている。また、特許文献1には、該生分解性フィルムを溶断シールすることにより袋体に成形してなることを特徴とする生分解性袋体が開示されている。特許文献1に開示された生分解性フィルムは、乳酸系樹脂からなるフィルムの柔軟性を可塑剤を添加することなく改善したものである。
しかし、乳酸系樹脂からなる上記の表面層及び裏面層は、ヒートシール性が十分に改善されていない。また、特許文献1では、表面層と中間層、及び中間層と裏面層の界面密着性(ラミネート強度)について評価されておらず、包装材料として用いた場合に、表面層と中間層または中間層と裏面層の間での界面剥離(層間剥離)が原因となって包装体が破壊するおそれもある。
【0006】
特許文献2には、生分解性プラスチックからなる基材フィルムの片面に、パートコートによりヒートシール層が設けられた積層体において、該ヒートシール層が塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体樹脂、ポリエステル系樹脂、又はアクリル系樹脂のいずれかを主成分とする包装材料が開示されている。特許文献2に開示された包装材料には、熱接着性が高い樹脂からなるヒートシール層が設けられる。しかし、特許文献2において用いられるヒートシール層は、本質的には生分解性の無い樹脂で形成されるので、包装材料の生分解性を損なわない範囲で該ヒートシール層用樹脂をパートコートする。生分解性に優れた包装材料とするためには、ヒートシール層も生分解性樹脂により形成することが望ましい。
また、ヒートシール層は包装された内容物に直接接触する可能性があるが、特許文献2に記載されたヒートシール層用樹脂のうち塩化ビニル及びアクリル系樹脂は、食品衛生上必ずしも十分な信頼性が得られない場合がある。そのため、食品や薬品等の体内へ摂取されるものや、幼児のおしゃぶり等の口腔内に接触するものを包装する場合には、たとえパートコートのヒートシール層にすぎないとしても、塩化ビニル及びアクリル系樹脂を用いずに、できるだけ健康上の信頼性が高い樹脂を用いてヒートシール層を形成することが望ましい。
【0007】
【特許文献1】特開2004−82512号公報
【特許文献2】特開2003−53902号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、基材層だけでなくヒートシール層も生分解性樹脂により形成することにより、自然環境において優れた生分解性を有し、且つ、ヒートシール部のヒートシール強度と、基材層とヒートシール層間のラミネート強度にも優れた包装用フィルム及び、該フィルムを用いて作製した袋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明により提供される第1の発明は、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂からなる基材層(I)の少なくとも一面側に、脂肪族ポリエステルを含む生分解性樹脂からなるヒートシール層(II)が積層されてなる生分解性フィルムにおいて、上記基材層(I)の融点Tm(A)と上記ヒートシール層(II)の融点Tm(B)との差(Tm(A)−Tm(B))が、55℃以上であることを特徴とする生分解性フィルムである。
【0010】
前記第1の発明において、前記脂肪族ポリエステルが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステル共重合体であることが好ましい。
【0011】
前記第1の発明において、前記ヒートシール層(II)は、結晶性脂肪族ポリエステルと非結晶性脂肪族ポリエステルとを混合した生分解性樹脂からなり、上記結晶性脂肪族ポリエステルの含有量X(重量%)と上記非結晶性脂肪族ポリエステルの含有量Y(重量%)との混合比率(X/Y)が、2〜20であることが好ましい。
【0012】
前記第1の発明において、前記基材層(I)の厚さT(A)と前記ヒートシール層(II)の厚さT(B)の比(A/B)が、0.1〜1.25であることが好ましい。
【0013】
上記目的を達成するために本発明により提供される第2の発明は、前記第1の発明である生分解性フィルムを、そのヒートシール層(II)が内側になるように折り曲げ又は重ね合わせ、開放端の少なくとも一部がヒートシールされた構造を有することを特徴とする生分解性袋体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明により提供される積層構造を有する生分解性フィルムは、基材層(I)だけでなくヒートシール層(II)も生分解性樹脂で形成されているので、生分解性に優れている。また、本発明により提供される積層構造を有する生分解性フィルムは、ヒートシール層(II)と接合する相手方との間の熱融着性に優れるだけでなく、基材層(I)とヒートシール層(II)間の密着性も良好であり、ヒートシール部において基材層(I)とヒートシール層(II)の界面での剥離が起こり難い。従って、包装材料または袋体の材料としての適性に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
生分解性樹脂とは、一般には、通常のプラスチック製品と同じように使え、使用後は自然界の微生物によって最終的に水と炭酸ガスに分解されるプラスチックと解されている。本発明は、このような生分解性樹脂を用いて製造された生分解性フィルム及び包装袋である。
【0016】
本発明に係る生分解性フィルムは、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂からなる基材層(I)の少なくとも一面側に、脂肪族ポリエステルを含む生分解性樹脂からなるヒートシール層(II)が積層されてなる生分解性フィルムにおいて、上記基材層(I)の融点Tm(A)と上記ヒートシール層(II)の融点Tm(B)との差(Tm(A)−Tm(B))が、55℃以上であることを特徴とするものである。
また、本発明に係る生分解性袋体は、上記本発明に係る生分解性フィルムを、そのヒートシール層(II)が内側になるように折り曲げ又は重ね合わせ、開放端の少なくとも一部がヒートシールされた構造を有することを特徴とするものである。
【0017】
図1は、本発明に係る生分解性フィルムの層構成の一例を模式的に示す断面図である。図1に示した生分解性フィルムは、符号1で表わされる基材層(I)の片面側全面に、符号2で表わされるヒートシール層(II)が設けられた層構成を有している。
【0018】
本発明では、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂が基材層(I)に用いられる。ポリ乳酸とは、乳酸の水酸基とカルボキシル基がエステル結合によって重縮合したものである。本発明において使用されるポリ乳酸は、繰り返し単位がL−乳酸であるポリ(L−乳酸)、繰り返し単位がD−乳酸であるポリ(D−乳酸)、繰り返し単位がL−乳酸及びD−乳酸の両方である共重合体、すなわちポリ(DL−乳酸)、及び、これらの混合体を意味する。
ポリ乳酸が乳酸以外の共重合成分を含まない場合には、ポリ(L−乳酸)とポリ(D−乳酸)を重量比(ポリ(L−乳酸)/ポリ(D−乳酸))で70/30〜30/70、特に好ましくは50/50の割合で混合した樹脂は、ステレオコンプレックスを形成し、高い融点を有する。
【0019】
ポリ乳酸は、乳酸由来の繰り返し単位に加えて、エステル結合を作る他の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。他の繰り返し単位としては、脂肪族α−ヒドロキシカルボン酸等の他のヒドロキシカルボン酸単位、脂肪族ジオール単位、脂肪族ジカルボン酸単位といった脂肪族系骨格を有する繰り返し単位が好ましい。
ただし、乳酸以外の繰り返し単位を含む場合には、ポリ乳酸単位の割合(共重合率)が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。ここでの共重合率は、ヒドロキシカルボン酸単位、ジカルボン酸単位、及び、ジオール単位を、それぞれ一つの繰り返し単位と考えて計算する。
【0020】
乳酸と共重合させてもよい他のヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−メチル乳酸、2−ヒドロキシカプロン酸等の二官能脂肪族ヒドロキシ−カルボン酸や、カプロラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等のラクトン類が挙げられる。
【0021】
乳酸と共重合させてもよい他の脂肪族ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。
また、乳酸と共重合させてもよい他の脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、ドデカン二酸等が挙げられる。
その他にも、乳酸と共重合可能な他の脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、及び脂肪族ジオールとしては、後述するヒートシール層(II)を形成する脂肪族ポリエステルの共重合成分と同じものを例示することが出来る。
【0022】
ポリ乳酸は、縮合重合法、開環重合法等の公知の方法により合成することができる。例えば、L−乳酸、D−乳酸、L体とD体の混合物、又は、乳酸と他の共重合成分の混合物を、高沸点溶媒存在下、減圧で共沸脱水する直接脱水縮合重合することにより、任意の組成を有するポリ乳酸を得ることができる。
また、開環重合法(ラクチド法)では、乳酸の環状二量体であるラクチドを、必要に応じて重合調節剤等を用いながら、適当な触媒を使用して反応させることによって、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。ラクチドには、L−乳酸の二量体であるL−ラクチド、D−乳酸の二量体であるD−ラクチド、さらにL−乳酸とD−乳酸からなるDL−ラクチドがあり、これらを混合して重合することにより、任意の組成、結晶性を有するポリ乳酸を得ることができる。
【0023】
基材層(I)に用いるポリ乳酸の重量平均分子量は、基材層に必要な強度を十分に有し、且つ、製膜性も良好なものを用いる観点から、5万〜50万の範囲であることが好ましく、10万〜30万であることがより好ましい。
【0024】
本発明において基材層(I)を形成する生分解性樹脂は、ポリ乳酸を主成分とするが、可塑剤等の添加剤や、ポリ乳酸以外の生分解性樹脂や、フィルム全体の生分解性を損なわない量の非生分解性樹脂等の他の成分を含有していてもよい。
基材としての機能と十分な生分解性を確保する観点から、基材層(I)を形成する生分解性樹脂は、ポリ乳酸を80重量%以上含有していることが好ましく、90重量%以上含有していることがさらに好ましく、95重量%以上含有していることが特に好ましい。
【0025】
基材層(I)の融点及びガラス転移点は、ポリ乳酸に含まれる共重合成分の種類や共重合率を変えたり、ポリ乳酸に可塑剤や他の樹脂を添加するなどの方法で調節することが出来る。
ポリ乳酸に添加する可塑剤は生分解性のものが好ましい。生分解性可塑剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、エーテルエステル系可塑剤を挙げることができる。これらは、単独でも複数組み合わせて使用してもよい。
【0026】
上記ポリ乳酸を主成分とする基材層(I)の厚さは、特に限定されないが、5〜150μmが好ましく、7〜120μmがより好ましく、10〜80μmが特に好ましい。基材層(I)が薄過ぎると基材としての強度が不十分となり、これが厚過ぎると包装材料としての柔軟性や被包装物に対するフィット感が不充分となる。
【0027】
ヒートシール材とは、シーラントともいわれ、一般には、袋状にするために熱でシールする材料のことをいう。フィルムをヒートシールにより貼り合わせて造られるラミネート製品では、ヒートシール可能なフィルムの基本的構成は、基材層とヒートシール層の組み合わせとなる。
本発明では、脂肪族ポリエステルを含む生分解性樹脂からなるヒートシール層(II)が、ポリ乳酸を含む生分解性樹脂からなる基材層(I)に積層される。
【0028】
本発明において脂肪族ポリエステルとは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰り返し単位(脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位)により構成される単独重合または共重合脂肪族ポリエステル、脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位により構成される共重合脂肪族ポリエステル、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位と脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位により構成される共重合脂肪族ポリエステルのなかから選ばれるポリエステルである。なお、脂肪族系の繰り返し単位には、脂環式構造のヒドロキシカルボン酸単位、ジカルボン酸単位及びジオール単位も含まれる。
共重合脂肪族ポリエステルは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸単位の連鎖からなるブロックと、脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位が交互に配列した連鎖からなるブロックを含むブロック共重合体であってもよい。
【0029】
脂肪族ポリエステルは、芳香族系の繰り返し単位を含んでいてもよい。ただし、芳香族系の繰り返し単位を含む場合には、脂肪族系の繰り返し単位の割合(共重合率)が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましい。ここでの共重合率は、ヒドロキシカルボン酸単位、ジカルボン酸単位、及び、ジオール単位を、それぞれ一つの繰り返し単位と考えて計算する。
【0030】
脂肪族ポリエステルの繰り返し単位となる脂肪族ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、1から10個の炭素原子を有する枝分かれ又は線状の脂肪族ヒドロキシカルボン酸を用いることができ、より具体的には、乳酸、グリコール酸、2−メチル乳酸、3−ヒドロキシ酪酸、4−ヒドロキシ酪酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシ−3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−2−メチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、ヒドロキシピバリン酸、ヒドロキシイソカプロン酸、ヒドロキシカプロン酸が挙げられる。
【0031】
また、脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、2〜10個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸を主成分とする限り、より大きい炭素原子数、例えば30個までの炭素原子を有するジカルボン酸成分を含むことができる。かかる脂肪族ジカルボン酸としては、具体的には、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、スベリン酸、1,3−シクロペンタジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、ジグリコール酸、イタコン酸、マレイン酸、及び2,5−ノルボルナンジカルボン酸等のジカルボン酸が挙げられる。
【0032】
また、脂肪族ジオールとしては、例えば、2〜12個の炭素原子、好ましくは4〜6個の炭素原子を有する枝分かれ又は線状のジヒドロキシ化合物を用いることができる。より具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,4−ジメチル−2−エチルヘキサン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2−イソブチル−1,3−プロパンジオール、2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジオール、シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール及び2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール類及びジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びポリオキシエチレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール並びにポリテトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0033】
脂肪族ポリエステルは、脂肪族ヒドロキシカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、脂肪族ジオール、及び、それらのエステル化物等の誘導体から適宜選んだ共重合成分の混合物を、高沸点溶媒存在下、減圧で共沸脱水する直接脱水縮合重合により合成することができる。
【0034】
共重合脂肪族ポリエステルがブロック共重合体の場合には、以下のような方法で合成することができる。
(第一の方法)
先ず、脂肪族ジカルボン酸単位と脂肪族ジオール単位が交互に配列したジカルボン酸/ジオール系ポリエステルを合成する。例えば、原料の脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸を通常ジオール/ジカルボン酸=1/1〜1.5/1モル比の割合で仕込み、窒素雰囲気下にて130〜220℃まで5〜20℃/時間の割合で徐々に昇温させながら撹拌して水を留去する。4〜12時間反応後、エステル交換触媒、及び酸化防止剤を添加して徐々に減圧度を上げながら過剰のグリコールを留去し、最終的には0.5kPa以下で減圧しながら200〜250℃で4〜12時間反応すると粘性の高いポリエステルが得られる。
そして、ラクチドのようなα−ヒドロキシカルボン酸から水分子を失って生成した環状エステルと、ジカルボン酸/ジオール系ポリエステルを、重合触媒の存在下で反応させることにより、共重合脂肪族ポリエステル(B)が得られる。
【0035】
(第二の方法)
予め、α−ヒドロキシカルボン酸の直接重縮合またはその環状エステルの開環重合によりα−ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルを合成する。また、上述したジカルボン酸/ジオール系ポリエステルも合成する。そして、α−ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルと、ジカルボン酸/ジオール系ポリエステルとを溶融混合後、エステル化或いはエステル交換触媒の存在下、減圧条件下で脱水し重縮合することにより、共重合脂肪族ポリエステル(B)が得られる。
【0036】
(第三の方法)
上述したα−ヒドロキシカルボン酸系ポリエステルと、上述したジカルボン酸/ジオール系ポリエステルと高沸点溶媒との共存下、エステル交換触媒を加え、減圧条件下で共沸脱水重縮合即ち直接重縮合反応させることにより、共重合脂肪族ポリエステル(B)が得られる。
【0037】
ヒートシール層(II)に用いる脂肪族ポリエステルの重量平均分子量は、ヒートシール面における十分なヒートシール強度と、基材層との積層界面におけるラミネート強度を確保する観点から、300〜500,000の範囲であることが好ましく、1,000〜300,000の範囲であることがより好ましい。
【0038】
本発明においてヒートシール層(II)を形成する生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性樹脂からなるが、可塑剤等の添加剤や、脂肪族ポリエステル以外の生分解性樹脂や、フィルム全体の生分解性を損なわない量の非生分解性樹脂等の他の成分を含有していてもよい。
ヒートシール層(II)のヒートシール性及び基材層(I)とのラミネート強度を確保する観点から、ヒートシール層(II)を形成する生分解性樹脂は、脂肪族ポリエステルを80重量%以上含有していることが好ましく、90重量%以上含有していることがさらに好ましく、95重量%以上含有していることが特に好ましい。
【0039】
ヒートシール層(II)の融点及びガラス転移点は、脂肪族ポリエステルに含まれる共重合成分の種類や共重合率を変えたり、脂肪族ポリエステルに可塑剤や他の樹脂を添加するなどの方法で調節することが出来る。
脂肪族ポリエステルを主成分とする生分解性樹脂に添加する可塑剤は生分解性のものが好ましい。生分解性可塑剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、エーテルエステル系可塑剤を挙げることができる。これらは、単独でも複数組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本発明において、ヒートシール層(II)の融点及びガラス転移点を、基材層(I)との関係で調節することは非常に重要である。
融点とは、一般に、物質が固体から液体になる温度であると解されている。一般に、生分解性樹脂等の熱可塑性樹脂は、熱をかけると軟らかくなり、さらに熱をかけると流動状態になるが、その性質はガラス転移点と融点で表わされる。一般に、樹脂では結晶化した領域と結晶化していない領域(非晶領域)があるが、樹脂の温度がガラス転移点以下であると樹脂の分子が凍結されたように動かなく、樹脂は硬い状態となる。一方、樹脂の温度がガラス転移点になると樹脂の非晶領域の分子が動きはじめ、ガラス転移点よりも高くなると樹脂が軟らかくなる。一般に、樹脂の融点とは、樹脂の結晶領域がときほぐされて、樹脂の一気圧の下で固相から液相に変化する温度であると解されている。
【0041】
一般に、結晶性高分子では、熱的特性の点では融点(Tm)、ガラス転移点(Tg)及び結晶化温度(Tc)を有し、同系統の高分子の間では結晶性が高いほど融点、ガラス転移点及び結晶化温度が高く、分子構造上の特徴としては、分子鎖が大きな側鎖を有しない、分子鎖の枝分かれが少ない、分子鎖間に橋架け構造が少ない等の特徴を有する。
一方、非結晶性高分子は、熱的特性の点ではガラス転移点(Tg)のみ有し、分子構造上の特徴としては、分子鎖が無秩序な位置に大きな側鎖を有する、分子鎖の枝分かれが多い、分子鎖間に橋架け構造が多い等の特徴を有する。
【0042】
本発明においては、ヒートシール層(II)がヒートシールされる接合相手に対して優れた熱融着性を発揮し、且つ、基材層(I)とヒートシール層(II)の間にも層間剥離を阻止し得る優れた密着性を得る観点から、基材層(I)の融点Tm(A)とヒートシール層(II)の融点Tm(B)との差(Tm(A)−Tm(B))が、55℃以上であることが必要であり、この融点の差が70℃以上であることが好ましく、76℃以上であることが特に好ましい。
また、同様の観点から、基材層(I)のガラス転移点Tg(A)とヒートシール層(II)のガラス転移点Tg(B)との差(Tg(A)−Tg(B))が、40℃以上であることが好ましく、このガラス転移点の差が50℃以上であることが、さらに好ましい。
基材層(I)とヒートシール層(II)の融点及びガラス転移点とは、これらの層を形成する樹脂の融点及びガラス転移点のことであり、後述する実験例で述べるように、示差走査熱量計を用い、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて測定することができる。
【0043】
本発明では、基材層(I)の融点Tm(A)とヒートシール層(II)の融点Tm(B)との差(Tm(A)−Tm(B))を55℃以上とし、または、基材層(I)のガラス転移点Tg(A)とヒートシール層(II)のガラス転移点Tg(B)との差(Tg(A)−Tg(B))を40℃以上とする観点から、基材層(I)を形成するポリ乳酸含有生分解性樹脂の融点が160℃以上であることが好ましく、そのガラス転移点が55℃以上であることが好ましい。
【0044】
また、同じ観点から、ヒートシール層(II)を形成する脂肪族ポリエステル含有生分解性樹脂の融点が80〜120℃であることが好ましく、そのガラス転移点が−50〜20℃であることが好ましい。
基材層(I)との融点又はガラス転移点の差を大きくするためには、脂肪族ポリエステル含有生分解性樹脂の融点又はガラス転移点が低いほどよいが、低すぎるとヒートシール層のベタつきや軟化が生じやすくなる。
【0045】
基材層(I)又はヒートシール層(II)を形成する生分解性樹脂が、融点を2つ以上有する場合がある。これは、2種以上の樹脂を含有する混合樹脂の場合に、しばしば観察される。
生分解性樹脂が、融点を2つ以上有する場合には、基材層(I)又はヒートシール層(II)の融点差(Tm(A)−Tm(B))が最も小さい値となる測定点を採用する。すなわち、基材層(I)を形成する生分解性樹脂が複数の融点Tm(A1)、Tm(A2)・・・を有する場合には、そのなかでも最も低温側の融点を採用する。一方、ヒートシール層(II)を形成する生分解性樹脂が複数の融点Tm(B1)、Tm(B2)・・・を有する場合には、そのなかでも最も高温側の融点を採用する。
【0046】
ヒートシール層(II)の融点及びガラス転移点を調節するためには、結晶性の高い脂肪族ポリエステルと結晶性の低い脂肪族ポリエステルとを適切に組み合わせてヒートシール層(II)を形成する方法が有効である。
一般に、混合樹脂中の結晶性高分子の含有割合が多いほど、融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)が高くなる傾向があるので、結晶性脂肪族ポリエステルと非結晶性脂肪族ポリエステルを混合して用いることによって、融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)を調節することが出来る。
【0047】
融点(Tm)及びガラス転移点(Tg)を調節する観点から、ヒートシール層(II)を形成する生分解性樹脂に占める、結晶性脂肪族ポリエステルの含有量X(重量%)と非結晶性脂肪族ポリエステルの含有量Y(重量%)との混合比率(X/Y)を2〜20とすることが好ましく、この混合比率を3〜15とすることがさらに好ましく、5〜10とすることが特に好ましい。
結晶性脂肪族ポリエステルとは結晶性の高い脂肪族ポリエステルであり、非結晶性脂肪族ポリエステルとは結晶性の低い脂肪族ポリエステルである。定量的には、下記計算式1で表わされる結晶化度の大きいものほど結晶性が高いものとする。
【0048】
【数1】

【0049】
高分子の結晶化度は(1)X線回折法、(2)密度測定、(3)赤外吸収法(結晶性バンドまたは非結晶性バンドの強度)、(4)核磁気共鳴法(広幅法、吸収の微分曲線)、(5)融解熱測定などによって求められる。
本発明では、融解熱測定法により結晶化度を求めた。
【0050】
本発明では、互いに混合される脂肪族ポリエステルの相対的関係において結晶性と非結晶性を区別するが、より好ましくは結晶化度を指標としたときに、結晶化度20%以上、特に結晶化度50%以上のものを結晶性脂肪族ポリエステルとして用い、結晶化度20%未満、特に結晶化度10%以下のものを非結晶性脂肪族ポリエステルとして用いる。
【0051】
結晶性脂肪族ポリエステルと非結晶性脂肪族ポリエステルは、同じ一次構造を有する繰り返し単位を主体とする高分子同士の組み合わせであることが好ましい。例えば、同じ一次構造を有する繰り返し単位の共重合率を、好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは80モル%以上、特に好ましくは90モル%以上とし、他の共重合成分の種類と量を変えることによって、同系統であるが結晶性の異なる脂肪族ポリエステルを合成することが出来る。
また、ポリ乳酸の場合には、鏡像異性体(L乳酸とD乳酸)の共重合比を変えることによって高分子構造の立体規則性が変化し、結晶性にもなるし、非結晶性にもなる。
本発明においては、特にポリ乳酸系の結晶性脂肪族ポリエステルとポリ乳酸系の非結晶性脂肪族ポリエステルを上記混合比率(X/Y)の範囲内で混合して用いることが好ましい。
【0052】
上記脂肪族ポリエステルを主成分とするヒートシール層(II)の厚さは、特に限定されないが、通常20〜150μmであり、30〜120μmであることが好ましく、40〜100μmであることがさらに好ましい。ヒートシール層(II)が薄過ぎるとヒートシール強度と層間ラミネート強度不十分となり、これが厚過ぎると、ただ無駄となるだけである。
【0053】
基材層(I)上にヒートシール層(II)を設けるための積層とは、ラミネートともいい、一般に、二次元構造の層状材料を積み重ねる操作、さらには、積層した材料を加圧加熱硬化などによって所要の形状に一体化して成形する操作も含まれる。すなわち、性質の異なったフィルムとフィルムを貼り合わせてそれぞれの特徴を生かし、目的の性能を持った包装材料を製造する技術である。一般には、2層〜3層構成が多いが、4層以上の場合もある。
積層(ラミネート)方法としては、サーマルラミネート(以下、「熱ラミ」という。)、押出しラミネート、共押出し法、及びドライラミネートが代表的な方法である。熱ラミとは、一般には、基材フィルムと接着性樹脂フィルムを、加熱・圧着して冷却し巻き取る方法である。押出しラミネートとは、一般には、溶融した樹脂をスリット状の供給口からベースフィルム上に流し込み、圧着・冷却して巻き取る方法である。共押出し法とは、2層分又はそれ以上の溶融樹脂を別々の供給口から同時に流し出し、溶融状態の2層以上の樹脂を圧着・冷却して巻き取る方法である。ドライラミネートとは、一般には、フィルムとフィルムを接着剤で貼り合せる方法である。
【0054】
本発明の生分解性フィルムは、上記したような従来知られた方法に従い製造することができる。例えば、ポリ乳酸を含有する基材層用生分解性樹脂、及び、該ポリ乳酸よりも融点が低い脂肪族ポリエステルを含有するヒートシール層用生分解性樹脂をそれぞれ溶融し、共押出しラミネートすることによって、基材層(I)の片面側全面にヒートシール層(II)を設けた生分解性フィルムが得られる。
また、ポリ乳酸を含有する生分解性樹脂を、溶融押出し法や溶液キャスト法により、予め基材フィルムとし、該基材フィルム表面の全体に又は一部領域に結晶性脂肪族ポリエステルと非結晶性脂肪族ポリエステルを混合した生分解性樹脂を押出しラミネートすることによって、基材層(I)の片面側にヒートシール層(II)を設けた生分解性フィルムが得られる。
また、ポリ乳酸を含有する生分解性樹脂からなる基材フィルムと、脂肪族ポリエステルを含有する生分解性樹脂からなるヒートシール性フィルムを、予め成形し、これらをドライラミネート法で貼り合わせることによっても、基材層(I)の片面側にヒートシール層(II)を設けた生分解性フィルムが得られる。
【0055】
このようにして得られる生分解性フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、包装用の袋として用いるとき、その厚さが、通常10〜300μm程度であり、20〜200μmであることが好ましく、30〜150μmのときに特に優れた効果を奏する。
【0056】
また、本発明の生分解性フィルムは、基材層(I)の厚さT(A)とヒートシール層(II)の厚さT(B)の比(A/B)が特定の範囲内にある場合に、特に優れた効果を層する。具体的には、基材層(I)の厚さT(A)とヒートシール層(II)の厚さT(B)の比(A/B)が、0.1〜1.25(1/10〜5/4)であることが好ましく、0.15〜0.83(3/20〜5/6)であることがさらに好ましい。
【0057】
本発明の生分解性フィルムは、基材層(I)の片面のみにヒートシール層(II)が設けられた積層構造であってもよいし、両面にヒートシール層が設けられた積層構造であってもよい。また、基材層(I)表面の全体にヒートシール層が設けられていてもよいし、一部領域だけにヒートシール層が設けられていてもよい。
層構成の例を、幾つか図示する。図1は、すでに説明したように、符号1で表わされる基材層(I)の片面側全面に、符号2で表わされるヒートシール層(II)が設けられた例である。図2は、基材層(I)の片面側の一部領域にヒートシール層(II)が設けられた例であり、図3は、基材層(I)の両面それぞれの一部領域にヒートシール層(II)が設けられた例である。
【0058】
本発明においては、生分解性プラスチックからなるヒートシール層(II)を用いるので、基材層(I)上の全面にヒートシール層(II)を設けた場合でも、フィルムの生分解性を損なわない。基材層(I)の全面にヒートシール層(II)を設ける場合には、基材層(I)表面の一部領域にヒートシール層(II)を設ける場合よりも、ヒートシール層を形成する工程が簡易となる。
また、基材層(I)の全面にヒートシール層(II)を設ける場合には、フィルム全面がヒートシール可能なため、ヒートシールされる部分の面積や形状を自由に変えたり、様々な形状の袋体を自由に作製できるなど、包装加工が容易になるという利点がある。
【0059】
本発明の生分解性フィルムは、基材層(I)及びヒートシール層(II)のほかに、フィルムの生分解性を損なわない層を有していても良い。フィルムの生分解性を損なわない層は、生分解性材料からなる層であることが好ましい。基材層(I)及びヒートシール層(II)以外の生分解性材料からなる層としては、様々な生分解性プラスチックの層、金属酸化物等の無機材料からなる蒸着層、パルプ等の天然繊維からなる紙の層等が挙げられる。ただし、本質的には生分解性の無い材料からなる層であっても、極薄い層或いはフィルム上の面積占有率が極めて小さい層であって、フィルムの生分解性を損なわない場合には、フィルム内に設けることが可能である。
基材層(I)上にヒートシール層(II)以外の層を設ける場合には、基材層(I)とヒートシール層(II)の間の密着性を損ねないようにするため、基材層(I)の表面にヒートシール層(II)を直接積層し、基材層(I)とヒートシール層(II)の間に他の層が介在しないようにすることが好ましい。図4は、符号1で表わされる基材層(I)の片面側全面に符号2で表わされるヒートシール層(II)を設け、該ヒートシール層(II)を設けた側とは反対側の面に、金属酸化物からなる蒸着層3と、生分解性フィルムからなる最表面層4を設けた例である。
【0060】
得られた生分解性フィルムを、そのヒートシール層が内側になるように折り曲げ又は重ね合わせ、開放端の少なくとも一部をヒートシールすることによって、三方袋、四方袋、ガセット袋等の様々な形状の袋体が形成される。ヒートシールの方法としては、超音波溶着、電熱式熱板、熱ローラ等を用いることができる。
本発明の生分解性フィルムは、従来の製袋機を用いて本発明の生分解性フィルムからなる袋体を製造することができ、特別な製袋機に設計変更する必要がないので費用面・実用面においても有利である。
【0061】
本発明により提供される生分解性フィルム、及び生分解性袋体は、完全生分解性であるため、自然環境への負荷軽減に貢献し得る。
また、本発明の生分解性フィルムは、ヒートシール層(II)同士又はヒートシール層(II)が接合する相手方に対する熱融着性に優れるとともに、基材層(I)とヒートシール層(II)との間にも良好な密着性が得られる。従って、ヒートシール部またはその近傍において、ヒートシール層(II)同士の界面及び基材層(I)とヒートシール層(II)の間の界面での不測の剥離(デラミネーション)が起こり難く、気密性が安全に保たれる。従って、包装材料または袋体の形成材料としての適性に優れており、例えば、食品や医薬品などの経口内容物の包装に好適に用いることができる。
【0062】
本発明の生分解性フィルムは、基材層(I)とヒートシール層(II)との界面(ラミネート面)の密着強度(ラミネート強度)を、100gf/15mm以上(0.98N/15mm以上)とすることができ、また150gf/15mm以上(1.47N/15mm以上)とすることができ、さらには200gf/15mm以上(1.96N/15mm以上)とすることができる。
また、本発明の生分解性フィルムは、当該生分解性フィルムのヒートシール層(II)同士(ヒートシール部)の接着強度(ヒートシール強度)を、0.8kgf/15mm以上(7.84N/15mm以上)とすることができ、さらには1.3kgf/15mm以上(9.8N/15mm以上)とすることができる。
【0063】
なお、「gf/15mm以上」とは、生分解性フィルム(15mm幅)を常温でT形剥離させるのに必要な強度を意味する。
【実施例】
【0064】
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。なお、試験方法は以下のとおりである。
【0065】
(1)融解温度(融点)
試料を化学天秤で約5mg量りとり(0.1mgまで量る)、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント(株)製、商品名:DSC Q10)を用いて、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて、予め融解温度より約100℃低い温度で装置が安定するまで保持した後、加熱速度10℃/分で融解ピーク終了時より約30℃高い温度まで加熱し、DSC曲線を描かせる。DSC曲線の融解ピークの頂点を、融解温度(融点)として特定した。
【0066】
(2)ガラス転移温度(ガラス転移点)
試料を化学天秤で約10mg量りとり(0.1mgまで量る)、示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント(株)製、商品名:DSC Q10)を用いて、JIS K7121−1987「プラスチックの転移温度測定方法」に準じて、予め転移温度より約50℃低い温度で装置が安定するまで保持した後、加熱速度20℃/分で転移終了時よりも約30℃高い温度まで加熱し、DSC曲線を描かせる。
DSC曲線の各ベースラインの延長した直線から縦軸方向に等距離にある直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線とが交わる点をガラス転移温度(ガラス転移点)として特定した。
【0067】
(3)結晶化度
示差走査熱量計(ティー・エイ・インスツルメント(株)製、商品名:DSC Q10)を用い、試料を50℃で1分間保持した後、200℃/分の速度で180℃まで昇温し、180℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で50℃まで降温した。50℃で5分間保持した後、10℃/分の速度で180℃まで昇温し、その際に得られる融解曲線において、60℃から145℃に基線を引き、融解エンタルピー(J/g)を求めた。これを293(J/g)で除した値に、100を乗じた値を結晶化度(%)とした。
【0068】
(4)ラミネート強度
生分解性フィルムから試験片(15mm(幅)×70mm(長さ)以上)を切り出し、引張試験機(東洋精機(株)製、商品名:ストログラフ M−1)を用いて、下記測定条件下で、基材層(I)とヒートシール層(II)の界面を常温でT形剥離させるのに必要な剥離強度を、ラミネート強度として測定した。測定条件は、チャック間距離;50mm、チャックの移動速度;300mm/minとした。測定記録は、プロッター式データレコーダーを用いた。
測定は3回行い、得られた測定値の平均値をラミネート強度とした。
ラミネート強度が、200gf/15mm以上(1.96N/15mm以上)の場合は、生分解性フィルムのラミネート性が良好であると評価できる。
【0069】
(5)ヒートシール強度
生分解性フィルムのヒートシール層(II)同士が、最内層になるように重ね合わせ、ヒートシール機(テスター産業(株)製、商品名:TP−701−A ヒートシールテスター)を用いて、シール温度;140℃、シール圧力;2kgf/cm(19.6N/cm)、シール時間;1秒の条件下で、ヒートシール(熱融着)を行ない、ヒートシール部を得た。
上記ヒートシール部から試験片(15mm(幅)×70mm(長さ)以上)を切り出し、JIS Z 0238:1998「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」に準拠し、ヒートシール層同士の層間を常温でT形剥離させるのに必要な剥離強度を、ヒートシール強度として測定した。
測定は3回行い、得られた測定値の平均値をヒートシール強度とした。
ヒートシール強度が、1.0kgf/15mm以上(9.8N/15mm以上)の場合は、生分解性フィルムのヒートシール性が良好であると評価できる。
【0070】
(6)袋体適性評価
生分解性フィルムのヒートシール層(II)同士が、最内層になるように重ね合わせ、3辺について、ヒートシール機(テスター産業(株)製、商品名:TP−701−A ヒートシールテスター)を用いて、シール温度;140℃、シール圧力;2kgf/cm(19.6N/cm)、シール時間;1秒の条件下で、ヒートシール(熱融着)を行ない、3辺のヒートシール部を得た。
残り一辺の開放端(開口部)から内容物となる水を充填し、空気をなるべく抜いた状態で、残り一辺の開放端(開口部)について、上記と同様のヒートシール機を用い、同様の条件下でヒートシール(熱融着)を行ない、4辺のヒートシール部を有する四方袋体(生分解性袋体)を作製した。
上記四方袋体の適性試験は、JIS Z 0238:1998「ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法」に準拠し、(6−1)四方袋体の4辺のヒートシール部のヒートシール強度、及び(6−2)四方袋体の落下強度について調べ、袋体適性を評価した。
具体的な試験方法、及び評価方法は、以下のとおりである。
(6−1)四方袋体のヒートシール強度
四方袋体の4辺の各ヒートシール部から試験片(15mm(幅)×70mm(長さ)以上)をそれぞれ切り出し、上記(5)ヒートシール強度の測定と同様に、各辺のヒートシール部のヒートシール強度について測定した。
測定は各辺でそれぞれ3回ずつ行ない、得られた各辺の測定値の平均値を、各辺のヒートシール強度とした。
(6−2)四方袋体の落下強度
水が充填され、空気がなるべく抜かれた状態の四方袋体を、高さ80cmの位置から、袋体を自立させる方向(垂直方向)、及び袋体を寝かせる方向(水平方向)にして、各方向から1回ずつ落下させて、袋体からの水の漏洩の有無、及び袋体の破損の有無を確認し、四方袋体の落下強度について調べた。
上記(6−1)及び(6−2)の試験結果から、四方袋体の袋体適性を以下のように評価した。
四方袋体の各辺のすべてのヒートシール強度が、1.3kgf/15mm以上であり、且つ、袋体からの水の漏洩が無く、袋体の破損が無いものを袋体適性が良好(◎)と判定し、四方袋体の少なくとも1辺のヒートシール強度が、0.5kgf/15mm以下であり、且つ、袋体からの水の漏洩が有り、袋体の破損が有るものを袋体適性が不良(×)と判定し、さらに、袋体適性評価の良好(◎)と不良(×)以外のものを袋体適性評価として◎と×の間の普通(○)と判定した。
【0071】
(7)柔軟性評価
得られた生分解性フィルムについて、手で触った際の感触、風合いで判断し、◎:柔らかい、○:極めて柔らかい、△:少し硬い、×:硬い、の基準で判定した。
フィルムが、極めて柔らかい(柔らか過ぎる)と、フィルムが破損し易くなる不都合が生じ、また、硬いと包装用フィルムとして適さないため、適度な柔らかさを有するフィルムを最も高く評価した。
【0072】
(8)総合評価
得られた生分解性フィルムについて、ラミネート強度、ヒートシール強度、袋体適性評価、及び柔軟性評価の結果を総合的に判断し、ラミネート強度が300gf/15mm以上であり、且つ、ヒートシール強度が1.3kgf/15mm以上であり、且つ、袋体適性評価が◎であり、且つ、柔軟性評価が◎であるものを総合評価として良好(◎)と判定し、ラミネート強度が100gf/15mm以下であり、又は、ヒートシール強度が0.8kgf/15mm以下であり、且つ、袋体適性評価が×であり、且つ柔軟性評価はいずれでもよいものを総合評価として不良(×)と判定し、さらに、総合評価の良好(◎)と不良(×)以外のものを総合評価として◎と×の間の普通(○)と判定した。
【0073】
(実施例1)
基材層(I)の材料として、厚さ15μmのポリ乳酸フィルム(東セロ(株)製、商品名:パルグリーン)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AD92W)を用いた。
【0074】
成形機(東洋精機(株)製、商品名:ミニテストプレス)を用いて、温度;140℃、圧力;10MPa、加圧時間;5分の条件下で、上記ポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体を溶融し、基材層(I)用のポリ乳酸フィルム上に熱ラミし、厚さ20μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例1の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0075】
(実施例2〜7)
基材層(I)の材料として、実施例1と同じもの(厚さ15μmのポリ乳酸フィルム)を用い、ヒートシール層(II)の材料として、実施例1と同じもの(結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体)を用いた。
実施例1と同じ成形機を用い、溶融・圧縮の条件を変えて熱ラミを行って、実施例1とは厚さが異なるヒートシール層(II)(40〜150μmの範囲)を形成することにより、実施例2〜7の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0076】
(実施例8)
基材層(I)の材料として、厚さ25μmのポリ乳酸フィルム(東セロ(株)製、商品名:パルグリーン)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、実施例1と同じもの(結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体)を用いた。
実施例1と同じ成形機を用い、実施例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ20μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例8の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0077】
(実施例9〜14)
基材層(I)の材料として、実施例8と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用い、ヒートシール層(II)の材料として、実施例8と同じもの(結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体)を用いた。
実施例8と同じ成形機を用い、溶融・圧縮の条件を変えて熱ラミを行って、実施例8とは厚さが異なるヒートシール層(II)(40〜150μmの範囲)を形成することにより、実施例9〜14の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0078】
(実施例15)
基材層(I)の材料として、実施例1と同じもの(厚さ15μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AZ91T)を用いた。
実施例1と同じ成形機を用い、実施例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ20μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例15の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0079】
(実施例16〜21)
基材層(I)の材料として、実施例15と同じもの(厚さ15μmのポリ乳酸フィルム)を用い、ヒートシール層(II)の材料として、実施例15と同じもの(結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/乳酸共重合体)を用いた。
実施例15と同じ成形機を用い、溶融・圧縮の条件を変えて熱ラミを行って、実施例15とは厚さが異なるヒートシール層(II)(40〜150μmの範囲)を形成することにより、実施例16〜21の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0080】
(実施例22)
基材層(I)の材料として、実施例8と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、実施例15と同じもの(結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/乳酸共重合体)を用いた。
実施例1と同じ成形機を用い、実施例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ20μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例22の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0081】
(実施例23〜28)
基材層(I)の材料として、実施例22と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用い、ヒートシール層(II)の材料として実施例22と同じもの(結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/乳酸共重合体)を用いた。
実施例22と同じ成形機を用い、溶融・圧縮の条件を変えて熱ラミを行って、実施例22とは厚さが異なるヒートシール層(II)(40〜150μmの範囲)を形成することにより、実施例23〜28の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0082】
(実施例29)
基材層(I)の材料として、実施例8と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AD92W)と、非結晶性脂肪族ポリエステルである非結晶性ポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:LACEA H280)との混合樹脂を用いた。
上記結晶性脂肪族ポリエステルと上記非結晶性脂肪族ポリエステルとを、混合割合(重量比)を66:34にしてドライブレンドした後、混練器(東洋精機(株)製、商品名:ラボプラストミル)を用いて、温度:180℃、回転数:50rpm、ブレンド時間:2分の条件下で、溶融混練を行なった。
得られた混合樹脂(ブレンド脂肪族ポリエステル樹脂)を、実施例1と同じ成形機を用い、実施例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例29の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0083】
(実施例30〜33)
基材層(I)の材料として、実施例29と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、実施例29と同じ2種類の樹脂を、混合割合を変えて組み合わせた混合樹脂を用いた。すなわち、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AD92W)と、非結晶性脂肪族ポリエステルである非結晶性ポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:LACEA H280)とを、混合割合(重量比)を、80:20(実施例30)、83:17(実施例31)、91:9(実施例32)、95:5(実施例33)にして用いた。
上記結晶性脂肪族ポリエステルと上記非結晶性脂肪族ポリエステルとを、上記所定の混合割合(重量比)にしてドライブレンドした後、実施例29と同じ装置及び条件で溶融混練を行なった。
得られた混合樹脂(ブレンド脂肪族ポリエステル樹脂)を、実施例29と同じ成形機を用い、実施例29と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例30〜33の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0084】
(実施例34)
基材層(I)の材料として、実施例8と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AZ91T)と、非結晶性脂肪族ポリエステルである非結晶性ポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:LACEA H280)との混合樹脂を用いた。
上記結晶性脂肪族ポリエステルと上記非結晶性脂肪族ポリエステルとを、混合割合(重量比)を66:34にしてドライブレンドした後、実施例29と同じ装置及び条件で溶融混練を行なった。
得られた混合樹脂(ブレンド脂肪族ポリエステル樹脂)を、実施例1と同じ成形機を用い、実施例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例34の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0085】
(実施例35〜38)
基材層(I)の材料として、実施例34と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、実施例34と同じ2種類の樹脂を、混合割合を変えて組み合わせた混合樹脂を用いた。すなわち、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AZ91T)と、非結晶性脂肪族ポリエステルである非結晶性ポリ乳酸(三井化学(株)製、商品名:LACEA H280)とを、混合割合(重量比)を、80:20(実施例35)、83:17(実施例36)、91:9(実施例37)、95:5(実施例38)にして用いた。
上記結晶性脂肪族ポリエステルと上記非結晶性脂肪族ポリエステルとを、上記所定の混合割合(重量比)にしてドライブレンドした後、実施例34と同じ装置及び条件で溶融混練を行なった。
得られた混合樹脂(ブレンド脂肪族ポリエステル樹脂)を、実施例34と同じ成形機を用い、実施例34と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、実施例35〜38の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0086】
(比較例1)
基材層(I)の材料として、厚さ25μmのポリ乳酸フィルム(東セロ(株)製、商品名:パルグリーン)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネート(PBS)(昭和高分子(株)製、商品名:ビオノーレ#1003)を用いた。
成形機(東洋精機(株)製、商品名:ミニテストプレス)を用いて、温度;140℃、圧力;10MPa、加圧時間;5分の条件下で、上記ポリブチレンサクシネートを溶融し、基材層(I)用のポリ乳酸フィルム上に熱ラミし、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、比較例1の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0087】
(比較例2)
基材層(I)の材料として、比較例1と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート(PBSA)(昭和高分子(株)製、商品名:ビオノーレ#3003)を用いた。
比較例1と同じ成形機を用い、比較例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、比較例2の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0088】
(比較例3)
基材層(I)の材料として比較例1と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AD92W)と、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸(ユニチカ(株)製、商品名:TP−4000)との混合樹脂を用いた。
上記結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体とポリ乳酸とを、混合割合(重量比)を70:30にしてドライブレンドした後、混練器(東洋精機(株)製、商品名:ラボプラストミル)を用いて、温度:180℃、回転数:50rpm、ブレンド時間:2分の条件下で、溶融混練を行なった。
得られた混合樹脂(ブレンド脂肪族ポリエステル樹脂)を、比較例1と同じ成形機を用い、比較例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、比較例3の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0089】
(比較例4)
基材層(I)の材料として比較例1と同じもの(厚さ25μmのポリ乳酸フィルム)を用いた。
一方、ヒートシール層(II)の材料として、比較例3と同じ2種類の樹脂を、混合割合を変えて組み合わせた混合樹脂を用いた。すなわち、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体(三菱化学(株)製、商品名:GS−Pla AD92W)と、結晶性脂肪族ポリエステルであるポリ乳酸(ユニチカ(株)製、商品名:TP−4000)との混合樹脂を用いた。
上記結晶性脂肪族ポリエステルであるポリブチレンサクシネートアジペート/乳酸共重合体とポリ乳酸とを、混合割合(重量比)を90:10にしてドライブレンドした後、比較例3と同じ装置及び条件で溶融混練を行なった。
得られた混合樹脂(ブレンド脂肪族ポリエステル樹脂)を、比較例1と同じ成形機を用い、比較例1と同じ溶融・圧縮の条件で熱ラミを行って、厚さ40μmのヒートシール層(II)を形成することにより、比較例3の生分解性フィルムを得た。得られた生分解性フィルムを、上記各試験に供した。
【0090】
(結果)
各実施例及び比較例で作製した生分解性フィルム、及び生分解性袋体の試験結果を、表1〜5に示す。
【0091】
【表1】

【0092】
【表2】

【0093】
【表3】

【0094】
【表4】

【0095】
【表5】

【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】本発明の生分解性フィルムの模式的断面図を示す。
【図2】本発明の生分解性フィルムの模式的断面図を示す。
【図3】本発明の生分解性フィルムの模式的断面図を示す。
【図4】本発明の生分解性フィルムの模式的断面図を示す。
【符号の説明】
【0097】
1 基材層
2 ヒートシール層
3 蒸着層
4 生分解性プラスチック層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリ乳酸を含む生分解性樹脂からなる基材層(I)の少なくとも一面側に、脂肪族ポリエステルを含む生分解性樹脂からなるヒートシール層(II)が積層されてなる生分解性フィルムにおいて、
上記基材層(I)の融点Tm(A)と上記ヒートシール層(II)の融点Tm(B)との差(Tm(A)−Tm(B))が、55℃以上であることを特徴とする生分解性フィルム。
【請求項2】
前記脂肪族ポリエステルが、脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の繰り返し単位を有する脂肪族ポリエステル共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の生分解性フィルム。
【請求項3】
前記ヒートシール層(II)は、結晶性脂肪族ポリエステルと非結晶性脂肪族ポリエステルとを混合した生分解性樹脂からなり、
上記結晶性脂肪族ポリエステルの含有量X(重量%)と上記非結晶性脂肪族ポリエステルの含有量Y(重量%)との混合比率(X/Y)が、2〜20であることを特徴とする請求項1又は2に記載の生分解性フィルム。
【請求項4】
前記基材層(I)の厚さT(A)と前記ヒートシール層(II)の厚さT(B)の比(A/B)が、0.1〜1.25であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の生分解性フィルム。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の生分解性フィルムを、そのヒートシール層(II)が内側になるように折り曲げ又は重ね合わせ、開放端の少なくとも一部がヒートシールされた構造を有することを特徴とする生分解性袋体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−302630(P2008−302630A)
【公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−153352(P2007−153352)
【出願日】平成19年6月8日(2007.6.8)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】