説明

生分解性広告素材及びその製造方法

【課題】本発明は、表面フィルム層/粘着層/離型層が順次積層されてなり、前記表面フィルム層はポリ乳酸系重合体5〜40重量%と脂肪族ポリエステル95〜60重量%からなる生分解性フィルム層である広告素材及びその製造方法に関するものである。
【解決手段】本発明に係る生分解性フィルム層を含む広告用素材は、短期間に使用されて廃棄される印刷広告物製作用として容易であり、廃棄時に土壌によって6ヶ月以内にセルロースに対して60%以上の生分解能力を有し、既存のポリビニルクロライド(PVC)による有害な環境ホルモンの排出がなく、自然環境を保護することによって人体や地球環境に非常に親和的な特徴を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生分解性広告素材及びその製造方法に関するもので、印刷広告物製作用として表面印刷性、多様な被着剤に対する優れた粘着力、施工性を有し、土壌に埋めた時に自然に分解される生分解性広告素材に関するもので、より具体的には、生分解性原料であるポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルを混合した生分解性フィルム層、被着剤との接着を付与するための粘着層、及び前記粘着層を保護する離型層を含む生分解性広告素材及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
屋内・外の広告素材に使用される粘着フィルムの表面素材は、ほとんどがポリビニルクロライド(PVC)であって、この素材には、フィルムの柔軟性を与えるためにジオクチルフタレート(DOP)などの可塑剤を使用する。最近、前記のような可塑剤を含む粘着フィルムは、焼却・廃棄時における塩化水素及びダイオキシンなどの有害物質の排出により、先進国を中心にポリビニルクロライドの使用を制限しており、製造企業ではその代替素材の開発に心血を注いでいる。また、前記素材は、土壌に埋めたときに自然環境で分解される期間が非常に長いので、環境汚染及び自然破壊などの問題を有している。
【0003】
このような問題を改善するために、従来の素材に取り替えられる素材として、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン樹脂を適用しようとする試みがあったが、印刷適性を付与する表面処理剤との接着性が不良であり、速い時間内に水と二酸化炭素に完全に分解されて自然界に循環されることから公害がなく、かつ人体にも無害な特徴を有する生分解性という目的を達成するには困難な面があった。
【0004】
また、ポリビニルクロライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレンのような高分子化合物などに澱粉、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)などの生分解性樹脂を混合した形態の素材が開発されている。しかし、前記生分解性樹脂は、微生物によって分解されるが、ポリビニルクロライド、ポリエチレンのような合成高分子は自然に分解されるのに相当長い時間が要され、2次残留物が生じるおそれがあるので望ましくない。(例えば、特許文献1などを参照)
【0005】
したがって、前記のような部分的に生分解性樹脂が混合された生崩壊性プラスチックは、環境保存の面で完全な解決策とは言えないので、これに取って代わる素材開発が必要な実情にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−113269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明は、前記のような問題を解決するためのもので、デジタルプリンター及びシルクスクリーンの印刷時に表面印刷性、多様な被着剤に対する優れた粘着力、施工性を有し、土壌に埋めた時に自然に分解される生分解性広告素材を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明の他の目的は、前記のような特性を有する自然親和的な生分解性広告素材の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明では、表面フィルム層/粘着層/離型層が順次積層されてなる構造を有し、前記表面フィルム層が生分解性高分子5〜40重量%と脂肪族ポリエステル95〜60重量%からなる生分解性フィルム層になるように構成することによって前記のような問題を解決できるようになった。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、屋内外の広告素材に使用される印刷広告製作用広告素材であって、生分解性高分子フィルム層を表面フィルム層として含み、これを短期間に使用して廃棄し、廃棄時に土壌によって6ヶ月以内にセルロースに対して60%以上の生分解能力を有することから、既存のポリビニルクロライド(PVC)による有害な環境ホルモンの排出がなく、自然環境を保護することによって人体や地球環境に非常に親和的な特徴があるという効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施例に係る生分解性広告素材の断面図である。
【図2】図1において表面処理層が追加された生分解性広告素材の断面図である。
【図3】図1において2層以上の生分解性フィルム層を含む生分解性広告素材の断面図である。
【図4】図2において2層以上の生分解性フィルム層を含む生分解性広告素材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の目的を達成するための生分解性広告素材は、表面フィルム層/粘着層/離型層が順次積層されてなり、前記表面フィルム層は、ポリ乳酸系重合体5〜40重量%と脂肪族ポリエステル95〜60重量%からなる生分解性フィルム層であることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の目的を達成するための生分解性広告素材の製造方法は、表面フィルム層を製造し、離型層に粘着層をコーティングし、前記粘着層がコーティングされた離型層と前記表面フィルム層を合板することによって製造されることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の生分解性広告素材を構成する各層を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明に係る生分解性広告素材の構造を示した図で、図1に示すように、表面フィルム層10/粘着層20/離型層30が順次形成されており、必要に応じて、図2に示すように、前記表面フィルム層10の上部に表面処理層40をさらに含むこともできる。
【0016】
前記表面フィルム層は、ポリ乳酸系重合体5〜40重量%と脂肪族ポリエステル樹脂95〜60重量%からなる生分解性フィルム層である。前記ポリ乳酸系重合体は、比重が1〜2で、融点が100〜150℃であるポリ乳酸(PLA)透明樹脂である。
【0017】
前記脂肪族ポリエステル樹脂は、ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート
(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ乳酸(PLA)、ポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)、セルロース、キチン質(Chitin)、及びこれらの共重合体からなるグループから選択された1種以上の生分解性高分子からなるものである。これらのうち、ポリ乳酸系重合体とポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)の共重合体がフィルムの柔軟性確保のために最も望ましい。
【0018】
一般に、高分子物質の分解とは、高分子主鎖を含む化学的反応によって発生する高分子物質の物理的な物性変化を意味し、このとき、物理的な物性変化と化学的な変化を起こす原因は、熱、光、微生物の代謝作用などによる。このうち、一般に微生物や光によって混合又は分解される高分子を生分解性高分子といい、生分解性広告素材として使用するためのフィルムの柔軟性確保のために、ポリ乳酸(PLA)と脂肪族ポリエステルであるポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)を混合したコンパウンドを使用することが望ましい。
【0019】
すなわち、前記ポリ乳酸系重合体と脂肪族ポリエステルを混合した生分解性樹脂を押出機でシーティング(sheeting)し、本発明の表面フィルム層である生分解性フィルム層を製造する。
【0020】
本発明に係る前記生分解性フィルム層は、二酸化チタン(TiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(Talc)、硫酸バリウム(BaSO)及び珪灰石(CaSiO)からなるグループから選択された1種以上の隠蔽力改善物質を含むことによって隠蔽力を確保する。前記隠蔽力改善物質は、前記生分解性フィルム層を構成する生分解性樹脂100重量部に対して10〜40重量部で含むことが望ましい。
【0021】
また、本発明の生分解性フィルム層は、図3に示すように、色相が異なる2層10a、10b以上で構成することもでき、2層以上で構成される場合、これら層を合わせた厚さは、1層で構成される場合と同一に維持することが望ましい。
【0022】
前記のように色相を与えた生分解性フィルム層の製造のための顔料としては、二酸化チタン(TiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(Talc)、カーボンブラック、硫酸バリウム(BaSO)及び珪灰石(CaSiO)からなるグループから選択された1種以上を含む。前記のように顔料を添加する場合は、前記生分解性フィルム層を構成する樹脂100重量部に対して20重量部以内で含むことが望ましい。
【0023】
前記生分解性フィルム層の厚さは50〜200μmであることが望ましく、7〜150μmであることがより望ましい。
【0024】
具体的には、図3に示すように、上述したポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルからなる生分解性樹脂にそれぞれの色相を示す顔料を添加した後、共押出機で白色生分解性フィルム層10aと灰色生分解性フィルム層10bで構成された2重のフィルムを一つの生分解性フィルム層10として形成する。このとき、白色生分解性フィルム層10aが主押出機で厚く形成され、灰色生分解性フィルム層が補助押出機で薄く形成されることによって、全体の厚さが50〜200μmである一つのフィルム状に形成される。補助押出機で形成されるフィルムの厚さは、主押出機で形成されたフィルムの10〜30%水準の厚さであることが望ましい。
【0025】
本発明のような前記生分解性フィルム層は、廃棄時に土壌によって6ヶ月以内にセルロースに対して60%以上の生分解能力を有し、既存のポリビニルクロライド(PVC)による有害な環境ホルモンの排出がなく、自然環境を保護することによって人体や地球環境に非常に親和的な特徴があるという効果を有する。
【0026】
粘着層
【0027】
本発明に係る生分解性広告素材は、前記生分解性フィルム層の裏面にコーティングされるアクリル系油性又は水性粘着剤を含む。本発明の生分解性広告素材は、前記生分解性フィルム層を多様な被着剤に付着するために前記のような油性又は水性粘着剤を使用し、例えば、エチルヘキシルアクリレート、ビニルアクリレート、アクリル酸などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
前記粘着層は、必要に応じて隠蔽力確保のために白色、黒色及び灰色顔料からなるグループから選択された1種以上の隠蔽力改善物質を添加して使用することもできる。本発明の粘着層の厚さは、10〜50μm、望ましくは20〜30μmである。
【0029】
離型層
【0030】
本発明の生分解性広告素材は、前記粘着層の裏面に形成される離型層(Release Paper)を含む。前記離型層は、ロールで巻く場合に粘着剤が生分解性フィルムにくっ付くので、これを保護するために付着するものであって、最終的に使用するときは、前記離型層を除去して被着剤に付着する。
【0031】
したがって、前記離型層は、保管時には粘着剤とよくくっ付き、使用するために剥離するときはきれいに剥がれなければならないので、適切な離型性が要求される。また、前記離型層は、製品のカーリング(Curling)を防止することもあり、厚さによってカーリング性に差が発生する。
【0032】
本発明の前記離型層は、紙又はポリエステル基材フィルム上にシリコン樹脂を塗布したもので、使用される離型層の厚さは、50〜200μmであることが望ましく、80〜150μmであることがより望ましい。
【0033】
表面処理層
【0034】
本発明に係る生分解性広告素材は、前記表面フィルム層の上部には表面処理剤コーティングを追加し、実写印刷(digital printing)による印刷適性を向上させることができる。
【0035】
前記実写印刷時には、通常、バイオインク、油性インク、水性インクなどを使用するが、油性インクを使用する場合、前記生分解性フィルム層単独でもある程度の印刷適性を示すが、前記バイオインクと水性インクを使用する場合は、前記表面処理層が必ず含まれることが望ましい。
【0036】
前記表面処理層には、ポリビニルクロライド(PVC)やアクリル系油性又は水性処理剤を使用する。向上した印刷適性を確保するためには、前記表面処理層は、グラビアロールを用いて1〜10μmの厚さ、望ましくは2〜5μmの厚さであることが望ましい。
【0037】
前記のような構造を有する本発明に係る生分解性広告素材の製造方法を説明すると、まず、ポリ乳酸重合体と脂肪族ポリエステルからなる生分解性樹脂を押出機でシーティングし、本発明の表面フィルム層である生分解性フィルム層を製造する。前記生分解性フィルム層は、図1に示すように1層で構成することもでき、図3に示すように、互いに異なる色相を有する2層以上で構成することもできる。
【0038】
図3と図4に示すように、前記生分解性フィルム層が2層以上で構成される場合、透明な白色生分解性フィルム層10aは主押出機で厚く形成され、灰色生分解性フィルム層10bは補助押出機で薄く形成されるので、全体の厚さが50〜200μmである一つのフィルム状に形成される。通常、補助押出機で形成されるフィルムの厚さは、主押出機で形成されたフィルムの10〜30%水準の厚さであることが望ましい。
【0039】
その次に、離型層に粘着層をコーティングする段階では、前記離型層としては、紙又はポリエステル基材フィルム上にシリコン樹脂を塗布したものを使用し、これに前記粘着層をコーティングする。
【0040】
また、前記の製造された生分解性フィルム層と前記粘着層がコーティングされた離型層を合板する3段階を経ると、図1のような構造の生分解性フィルム層である表面フィルム層10/粘着層20/離型層30が順次積層された構造の広告素材を得ることができる。
【0041】
選択的に、前記生分解性フィルム層からなる表面フィルム層10の上部に表面処理層40を含むこともできるが、前記表面処理剤層には、ポリビニルクロライド(PVC)やアクリル系油性又は水性処理剤を使用する。
【0042】
前記生分解性フィルム層が単一層からなり、表面処理層を含む場合、図2に示すように形成することができ、生分解性フィルム層10が透明の白色生分解性フィルム層10aと灰色の生分解性フィルム層10bからなり、表面処理層を含む場合は図4のような構造を有する。
【0043】
本発明の範囲は、上述した詳細な説明よりは、後述する特許請求の範囲によって示されるもので、特許請求の範囲及びその等価概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本発明の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【符号の説明】
【0044】
10:表面フィルム層、20:粘着層、30:離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面フィルム層/粘着層/離型層が順次積層されてなり、前記表面フィルム層は、ポリ乳酸系重合体5〜40重量%と脂肪族ポリエステル95〜60重量%からなる生分解性フィルム層であることを特徴とする広告素材。
【請求項2】
前記ポリ乳酸系重合体は、比重が1〜2で、融点が100〜150℃であるポリ乳酸(PLA)透明樹脂であることを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルは、
ポリヒドロキシブチレート(PHB)、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、及びポリブチレンアジペートテレフタレート(PBAT)からなるグループから選択された1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項4】
前記生分解性フィルム層の厚さは50〜200μmであることを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項5】
前記生分解性フィルム層は、二酸化チタン(TiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(Talc)及び硫酸バリウム(BaSO)、珪灰石(CaSiO)からなるグループから選択された1種以上の隠蔽力改善物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項6】
前記生分解性フィルム層は異なる色相を有する2層以上で構成されることを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項7】
前記生分解性フィルム層は、二酸化チタン(TiO)、炭酸カルシウム(CaCO)、タルク(Talc)、カーボンブラック、硫酸バリウム(BaSO)及び珪灰石(CaSiO)からなるグループから選択された1種以上の顔料を含むことを特徴とする、請求項6に記載の広告素材。
【請求項8】
前記生分解性フィルム層の上部に表面処理層をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項9】
前記表面処理層は、アクリル系樹脂及びフッ素系樹脂からなるグループから選択された1種以上であることを特徴とする、請求項8に記載の広告素材。
【請求項10】
前記粘着層は、10〜50μm厚のアクリル系油性又は水性粘着剤であることを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項11】
前記粘着層は、白色、黒色及び灰色顔料からなるグループから選択された1種以上の隠蔽力改善物質を含むことを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項12】
前記離型層は、紙又はポリエステル基材フィルム上にシリコン樹脂で塗布されたことを特徴とする、請求項1に記載の広告素材。
【請求項13】
表面フィルム層を製造し、
離型層に粘着層をコーティングし、
前記粘着層がコーティングされた離型層と前記表面フィルム層を合板することを含む請求項1による広告素材の製造方法。
【請求項14】
前記表面フィルム層は、ポリ乳酸系重合体5〜40重量%と脂肪族ポリエステル95〜60重量%からなる生分解性フィルム層であることを特徴とする、請求項13に記載の広告素材の製造方法。
【請求項15】
前記表面フィルム層の上部に表面処理層をコーティングすることをさらに含むことを特徴とする、請求項13に記載の広告素材の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公表番号】特表2012−512053(P2012−512053A)
【公表日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−540599(P2011−540599)
【出願日】平成21年11月13日(2009.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006685
【国際公開番号】WO2010/071302
【国際公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(509286787)エルジー・ハウシス・リミテッド (49)
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
【住所又は居所原語表記】20,Yoido−dong,youngdungpo−gu,Seoul150−721,Republic of Korea
【Fターム(参考)】