生物学的細胞の同定および計数のための方法
【課題】本発明の目的は、従来の短所を回避した生物学的細胞の同定および計数のための試薬を提供することである。
【解決手段】本発明はサンプル中の生物学的細胞を同定および計数するための試薬および方法に関する。試薬はサンプル中の規定の型の細胞を特異的に溶解することができる濃度の少なくとも1つのデタージェントから選択される細胞溶解剤、および残りの未溶解細胞の細胞内核酸をマークできる色素を含む。とりわけフローサイトメトリーに基づいた自動分析系を用いて細胞を同定および計数するために用いる。
【解決手段】本発明はサンプル中の生物学的細胞を同定および計数するための試薬および方法に関する。試薬はサンプル中の規定の型の細胞を特異的に溶解することができる濃度の少なくとも1つのデタージェントから選択される細胞溶解剤、および残りの未溶解細胞の細胞内核酸をマークできる色素を含む。とりわけフローサイトメトリーに基づいた自動分析系を用いて細胞を同定および計数するために用いる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的分析、とりわけ血液分析に関する。
【0002】
本発明はより具体的にはサンプル、とりわけ血液サンプル中の生物学的細胞の同定および計数のための試薬および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的サンプルはヒトまたは動物の血液でよく、またはその他の生物学的液体または生物学的調製物でもよい。
【0004】
生物学的分析の分野では、診断時における異なる細胞集団の確定および正確な計数の重要性が長期にわたって認識されている。実際に、血中の正常な細胞集団間の平衡比率の異常の発現は特定の医学的症状の発現、例えば免疫反応、炎症反応等と相関し得る。同様に異常細胞集団の発現はまたその他の症状、例えば白血病等の発現とも相関し得る。
【0005】
細胞学的分析には染色後、および必要な場合には、沈降または凝集後の顕微鏡的検査など種々の慣用される方法がある。血液細胞の自動測定は1960年代の初頭、主要な正常白血球集団の分離で始まった(非特許文献1参照)。
【0006】
細胞の光学および化学的特性などの種々の原理を利用するフローサイトメトリーにより白血球の分離を実施した。種々の技術、例えば容量を確定するためのCoulterの原理、大きさを推定するための回析光の測定、細胞の内部構造を確定するための90°における拡散光の測定、および種々の色素に対する細胞の親和性を確定するための蛍光または吸収の測定を用いて、いくつかの自動血液分析が生み出された(非特許文献2〜5参照)。
【0007】
細胞サイクルの初期段階における細胞の特徴づけは、長い間科学者の興味の的であり、各細胞のRNA含量の定量は長い間このサイクルの代表的なパラメーターとして認識されていた(非特許文献2〜5および6、7参照)。
【0008】
特許文献1では、出願者はこの型の分析の実施を可能にする組成物、より具体的には染色試薬についてすでに記載している。
【0009】
かかる技術を自動化するために、まず第一に種々の問題を解決すべきであり、とりわけ処理時間およびサンプル調製のためのコストを削減すべきである。かかる削減は種々の方法により達成でき、最も明解であるのはチャネル数を削減して、いかなる時でも一度に1つの調製のみが実行されるようにすることである。この型の技術はLeon W.Terstappen(非特許文献4)によりすでに報告されているが、とりわけ、その数がしばしば赤血球数のよりも千倍少ない有核細胞の正確な計数のために長時間の処理および分析が必要となる。
【0010】
この難点を回避するために生物学的サンプルをしばしば少なくとも2つのアリコート部分に分離し、その1つを赤血球および血小板の研究が可能な特定の濃度で調製し、もう1つを有核細胞の分析用の高濃度に調製する。
【非特許文献1】Hallerman L.,Thom R.,Gerharts H.,「Elecktronische Differentialzahlzung von Granulocyten und Lymphocyten nach intervaler Fluochromierung mit Acridinorange」(「アクリジンオレンジでの周期蛍光色素染色による顆粒球およびリンパ球の電気的分別計数」)、Verh Deutsch Ges Inn Med,70:217(1964)
【非特許文献2】Adams L.R.,Kamensky L.A.,「ヒト白血球の6つのクラスの蛍光分析による特徴づけ」、Acta Cytol,18:389(1974)
【非特許文献3】Shapiro H.M.ら、「蛍光色素並びにフロー測定を用いた血液細胞計数および分類」、J.Histochem Cytochem,24:396−411(1976)
【非特許文献4】Terstappen L.W.ら、「赤血球溶解を起こさない多次元フローサイトメトリー血液細胞分別」、Blood Cells,17;585−602(1991)
【非特許文献5】Terstappen L.W.,Levin J.「多次元フローサイトメトリーにより得られた骨髄細胞分別計数」、Blood Cells,18(2);311−330(1992)
【非特許文献6】Traganos F.,Darzynkiewicz Z.,Sharpless T.,Melamed M.R.,「蛍光フローサイトメトリーシステムにおけるアクリジンオレンジを用いた未固定細胞のリボ核酸およびデオキシリボ核酸の同時染色」、J.Histochem Cytochem,25:46(1977)
【非特許文献7】Pollack A.ら、「ピロニンYおよびメチルグリーンを用いた、異なる細胞集団におけるRNA含量のフローサイトメトリー分析」、Cytometry,Vol. 3, No.1:28−35(1982)
【特許文献1】1997年1月31日付けフランス特許第97 01090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの公知の技術には様々な短所がある。
【0012】
残りの細胞の測定を容易にするために、分析の前にこのアリコート部分を処理することによりしばしば赤血球を特異的に破壊させる。かかる方法により測定結果がより迅速に得られるようになるが、それにもかかわらず、望ましい調製物を得るための反応、移動および染色に関与する時間とで相殺されてしまう。
【0013】
試薬溶液中での細胞懸濁液のインキュベーション時間はとりわけ活性成分が細胞内部に浸透するのに必要な時間と関係がある。本明細書に前記するフランス特許第97 01090号では出願者は添加物、とりわけイオノフォア型添加物を使用して細胞浸透を補助するなど、この浸透を促進する方法について記載している。
【0014】
処理時間はアリコート部分が通過する連続した段階の数の関数でもある。細胞溶解および染色をしばしば2つの連続した段階で、ある順序でまたは別の順序で実施する(米国特許第6004816号を参照のこと)。
【0015】
これらの2つの希釈段階では素材に経費が少なからずかかり、最低処理時間が長くなる。
【0016】
従って本発明の目的は、前記の短所を回避した生物学的細胞の同定および計数のための試薬を提供することである。
【0017】
本発明の目的はとりわけ、特定の細胞、特に赤血球の溶解、有核細胞の固定および細胞内物質の染色を同時に実施することを可能にするような試薬を提供することである。
【0018】
本発明の目的はまた、分析の経費および時間並びに関係する試薬数を大幅に削減するために、便宜的に短時間でこれらの操作を実施することを可能にするような試薬を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、本発明はサンプル中の有核の生物学的細胞の同定および計数のための方法を提供することであって、該方法は、サンプル中の規定の型の細胞を特異的に溶解するのに十分な濃度の、少なくとも1つのデタージェントから選択される細胞溶解剤、および残りの未溶解細胞の細胞内核酸をマークするように設計された色素を使用する。
【0020】
このように本発明は生物学的サンプルを同時に溶解および染色し、例えばフローサイトメトリーシステムにより分析され得る単一の段階で細胞の溶液を得ることが可能になる方法を提供する。この分析により、このように処理した細胞を分類および計数することが可能になる。
【0021】
従って、本発明の方法はフランス特許第97 01090号で記載される型の試薬溶液と、サンプルの規定の型の細胞、とりわけ赤血球を特異的に溶解することができる細胞溶解剤とを組み合わせたものを使用する。
【0022】
フランス特許第97 01090号で記載された染色試薬溶液それ自体は、続くサンプルの生物学的細胞の染色のために、膜浸透を促進することができるものである。研究する細胞の型に依存して、赤血球の溶解の前および後でこの染色溶液を使用することができる。この染色溶液の試薬の本質はこのように保持され、溶解溶液に導入されることにより、赤血球を破壊し、残りの細胞を染色した後、計数することを可能にする。
【0023】
有利には、細胞溶解剤は少なくとも1つのイオン性および/または非イオン性デタージェントを赤血球を溶解できる濃度で含有する。
【0024】
有利には、本発明のデタージェントは、
1級アミン、アミン酢酸塩および塩酸塩、4級アンモニウム塩、並びに臭化トリメチルエチルアンモニウム、
ジアミン置換アミド、ジエタノールアミノプロピルアミンまたはジエチルアミノプロピルアミド、環式ジエチレントリアミンのアミド、
スルホン酸アルキルアリル、石油スルホン酸、スルホン酸グリセリド
コラミド、スルホベタイン、
アルキルグリコシド、サポニン、
ポリオキシエチレンエーテルおよびソルビタン、ポリグリコールエーテル、
から選択される。
【0025】
1つの実施形態では、このデタージェントは0.05(w/v)%濃度のTriton X100および0.0001(v/v)%濃度のTween 20の混合物を含む。
【0026】
本明細書において「w/v」なる表現は「重量/容量」を表し、「v/v」なる表現は「容量/容量」を表す。
【0027】
使用する色素は蛍光型色素であることが有利である。
【0028】
有利には、色素を細胞内リボ核酸と特異的に結合でき、それと一度結合するとその蛍光が増強されるものから選択する。
【0029】
本発明では色素をとりわけ以下の色素から選択できる。
【0030】
チアゾールオレンジまたはp−トシル化1−メチル−4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]キノリニウム、
チアゾールブルー、
二ヨウ化4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]−1−[3−(トリメチルアンモニウム)プロピル]キノリニウム、
ヨウ化3,3’−ジメチルオキサカルボシアニンまたはヨウ化3−メチル−2−[3−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリルイデン−1−プロペニル]ベンゾキサゾリウム、
チオフラビンT、
SYTO(登録商標)およびTOTO(登録商標)色素(Molecular Probes(商標))、
臭化エチジウム、
ヨウ化プロピジウム、
アクリジンオレンジ、
コリホスフィン O、
アウラミン O、
HOECHST 33258およびHOECHST 33342色素、
二塩酸4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)、
二塩酸4’,6−(ジイミダゾリン−2−イル)−2−フェニルインドール(DIPI)、
7−アミノアクチノマイシン D、
アクチノマイシン D、および
LDS 751。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、試薬はさらに、色素の細胞内への浸透を促進させてマークさせることができる少なくとも1つの膜浸透物質を含む。
【0032】
有利には、膜浸透を促進する物質はプロトノフォアおよび/または抗生物質型のイオノフォア化合物である。
【0033】
この物質は一般に0.005(w/v)%以下の濃度で存在する。使用できる抗生物質の例としてはバリノマイシンがある。
【0034】
試薬がさらに0.1(w/v)%ないし10(w/v)%の濃度で存在する少なくとも1つの膜固定剤を含むことが好ましい。この固定剤は少なくとも1つのアルコールおよび/または1つのアルデヒドを含むのが好ましい。この目的で例えばパラホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを使用するのが好ましい。
【0035】
試薬にその他の添加物または成分を含有することもまた本発明の範囲内において可能である。
【0036】
従ってこの試薬はまた錯化剤、無機塩およびバッファー系から選択される少なくとも1つの化合物を含むこともできる。
【0037】
別の態様によれば、本発明はサンプル中、とりわけ血液サンプル中の有核の生物学的細胞の同定および計数の方法に関し、この方法は以下の操作からなる。
【0038】
サンプルを前記で定義する試薬と混合し、インキュベートして、単一の段階で規定の型の細胞、とりわけ赤血球の溶解、細胞内核酸の染色、および有核細胞の固定を行うこと、
抵抗性容量、軸方向の発光回析、軸方向の発光透過、垂直方向発光移入、および蛍光から選択される少なくとも2つの測定パラメーターを用いて、得られた溶液をフローサイトメトリーにより測定すること、並びに
測定したパラメーターにより集団における有核細胞を分類および計数すること。
【0039】
フローサイトメトリー測定では、軸方向発光回析パラメーターは小角度回析および大角度回析から選択される少なくとも1つのパラメーターである。
【0040】
慣用されるパラメーター、例えば軸方向回析すなわち「FSC」(前方向散乱)、垂直方向拡散すなわち「SSC」(側方向散乱)、および垂直方向蛍光(FL1)、軸方向蛍光、エピ蛍光のいずれかを有するフローサイトメーターにより測定を実施でき、概パラメーターは全て極性化または脱極性化されており、さらに別の測定パラメーターとしては、1989年10月27日のフランス特許第89 14120号に記載される、例えば透過光測定または抵抗性容量などがある。
【0041】
直流電流により抵抗性を測定し、エレメントの容量を表現でき、および/またはパルス化すなわち交流電流により、内部密度の差異を表現でき、構造の確定に近づくことができる。
【0042】
これらのパラメーターを用いることで、分析された細胞の各々に関する複数のパラメーターデータのセットを得ることができ、これにより細胞を分類することが可能になる。細胞を規定するパラメーターがより相関的であり非常に多くなるほど分類が正確になる。この型の複数のパラメーター実験はすでに以前に報告されている(前記の非特許文献4および5を参照のこと)。
【0043】
本発明の範囲内で分類された有核細胞は成熟したものでも未成熟なものでもよく、または正常細胞でも異常細胞でもよい。
【0044】
有核細胞の分類は公知の方法により実施される。ソフトウェアまたはその他のニューロン技術を用いて、または用いずに、多次元分析ソフトウェアプログラムにより分類を実施できる。
【0045】
本発明の範囲では、生物学的サンプルはヒトもしくは動物血液のサンプルでよく、またはヒトもしくは動物起源の細胞の生物学的液体もしくは懸濁液のサンプルでもよい。
【0046】
このサンプルを特定の温度条件下にて試薬溶液と混合する。反応速度論では、赤血球がまず最初に破壊され、色素の浸透が細胞の固定の並行して行われ、これがより緩徐に起こるとしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明はここで以下の実施例を参考として記載する。
【実施例】
【0048】
この実施例の範囲内で使用する試薬は以下の組成を有する。
【0049】
錯化剤 EDTA 0.02% (w/v)
無機塩 NaCl 0.85% (w/v)
バッファー系 リン酸塩 0.5% (w/v)
デタージェント Triton X100 0.05% (w/v)
Tween 20 0.0001% (v/v)
イオノフォア バリノマイシン 0.003% (w/v)
色素 チアゾールオレンジ 0.005% (w/v)
アルデヒド パラホルムアルデヒド 1% (w/v)
全血液サンプルを前記の試薬溶液と混合する。数秒間(典型的には15ないし30秒のオーダー)インキュベートした後、少なくとも以下のパラメーターを含むフローサイトメトリー系により溶液を分析する。すなわち、大きさの解釈を提示する軸方向回析「FSC」、観察したエレメントの構造を表現する垂直方向拡散「SSC」、および測定すべき細胞内リボ核酸の表現を可能にする垂直方向蛍光(FL1)。
【0050】
このように得られた結果を多次元モードで観察し、各パラメーター間の種々の集団の相互関係を確定する。
【0051】
ここで正常なヒト血液で得られた結果を示す図1ないし4を参考とする。
【0052】
図1は2つのパラメーター、軸方向回析「FSC」および垂直方向拡散「SSC」により得られたマトリックスを示す。4つの異なる集団が明らかに認められる。Lはリンパ球を示し、Mは単球を示し、Nは多核好中球を示し、およびEは多核好酸球を示す。未成熟顆粒球のIG集団、未分化胚芽細胞のBL、多核好塩基球のBおよび赤芽球のErBが示されているが、2次元だけでは分別できない。
【0053】
図2は軸方向回析(FSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す。図1に示すように同一の4つの集団が認められるが、異なって配置されている。単核細胞LおよびMは平均的な蛍光の上位群を成し、多核白血球N、EおよびBは弱い蛍光の下位群を成す。赤芽球のErB集団は2群の頂点で明らかに分かれ、形成されている。BLおよびIG集団の正常な位置が示される。
【0054】
図3は垂直方向拡散(SSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す。同一の集団が異なる方法で作られることが見出されるが、IGおよびBL集団を単離することが可能である(正常なサンプル中で極少量)。
【0055】
図4は得られた集団の3次元表示を示す。
【0056】
図5ないし8は各々図1ないし4の結果と同一の型であることを示しているが、芽細胞(BL)を含有するサンプルで得られ、本発明に従って処理されたものである。
【0057】
図9ないし12は各々図1ないし4と同一の型の結果であることを示しているが、未成熟顆粒球(IG)を含有するサンプルで得られ、本発明に従って処理されたものである。
【0058】
このように本発明の試薬および方法により、サンプル中、とりわけヒトまたは動物の血液のサンプル中の生物学的細胞の特異的溶解および同時染色を単一の段階で実施することが可能になる。
【0059】
従ってフローサイトメトリーに基づく自動分析系を用いて細胞を迅速に同定および計数できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】2つのパラメーター、軸方向回析(FSC)および垂直方向拡散(SSC)により得られたマトリックスを示す図である。
【図2】軸方向回析(FSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す図である。
【図3】垂直方向拡散(SSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す図である。
【図4】得られた集団の3次元表示を示す図である。
【図5】軸方向回析(FSC−H)および垂直方向拡散(SSC−H)により得られたマトリックスを示す図である。
【図6】軸方向回析(FSC−H)および蛍光(FL1−Height)により得られたマトリックスを示す図である。
【図7】垂直方向拡散(SSC−H)および蛍光(FL1−Height)により形成されたマトリックスを示す図である。
【図8】得られた集団の3次元表示を示す図である。
【図9】軸方向回析(FSC−H)および垂直方向拡散(SSC−H)により得られたマトリックスを示す図である。
【図10】軸方向回析(FSC−H)および蛍光(FL1−Height)により得られたマトリックスを示す図である。
【図11】垂直方向拡散(SSC−H)および蛍光(FL1−Height)により形成されたマトリックスを示す図である。
【図12】得られた集団の3次元表示を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は生物学的分析、とりわけ血液分析に関する。
【0002】
本発明はより具体的にはサンプル、とりわけ血液サンプル中の生物学的細胞の同定および計数のための試薬および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
生物学的サンプルはヒトまたは動物の血液でよく、またはその他の生物学的液体または生物学的調製物でもよい。
【0004】
生物学的分析の分野では、診断時における異なる細胞集団の確定および正確な計数の重要性が長期にわたって認識されている。実際に、血中の正常な細胞集団間の平衡比率の異常の発現は特定の医学的症状の発現、例えば免疫反応、炎症反応等と相関し得る。同様に異常細胞集団の発現はまたその他の症状、例えば白血病等の発現とも相関し得る。
【0005】
細胞学的分析には染色後、および必要な場合には、沈降または凝集後の顕微鏡的検査など種々の慣用される方法がある。血液細胞の自動測定は1960年代の初頭、主要な正常白血球集団の分離で始まった(非特許文献1参照)。
【0006】
細胞の光学および化学的特性などの種々の原理を利用するフローサイトメトリーにより白血球の分離を実施した。種々の技術、例えば容量を確定するためのCoulterの原理、大きさを推定するための回析光の測定、細胞の内部構造を確定するための90°における拡散光の測定、および種々の色素に対する細胞の親和性を確定するための蛍光または吸収の測定を用いて、いくつかの自動血液分析が生み出された(非特許文献2〜5参照)。
【0007】
細胞サイクルの初期段階における細胞の特徴づけは、長い間科学者の興味の的であり、各細胞のRNA含量の定量は長い間このサイクルの代表的なパラメーターとして認識されていた(非特許文献2〜5および6、7参照)。
【0008】
特許文献1では、出願者はこの型の分析の実施を可能にする組成物、より具体的には染色試薬についてすでに記載している。
【0009】
かかる技術を自動化するために、まず第一に種々の問題を解決すべきであり、とりわけ処理時間およびサンプル調製のためのコストを削減すべきである。かかる削減は種々の方法により達成でき、最も明解であるのはチャネル数を削減して、いかなる時でも一度に1つの調製のみが実行されるようにすることである。この型の技術はLeon W.Terstappen(非特許文献4)によりすでに報告されているが、とりわけ、その数がしばしば赤血球数のよりも千倍少ない有核細胞の正確な計数のために長時間の処理および分析が必要となる。
【0010】
この難点を回避するために生物学的サンプルをしばしば少なくとも2つのアリコート部分に分離し、その1つを赤血球および血小板の研究が可能な特定の濃度で調製し、もう1つを有核細胞の分析用の高濃度に調製する。
【非特許文献1】Hallerman L.,Thom R.,Gerharts H.,「Elecktronische Differentialzahlzung von Granulocyten und Lymphocyten nach intervaler Fluochromierung mit Acridinorange」(「アクリジンオレンジでの周期蛍光色素染色による顆粒球およびリンパ球の電気的分別計数」)、Verh Deutsch Ges Inn Med,70:217(1964)
【非特許文献2】Adams L.R.,Kamensky L.A.,「ヒト白血球の6つのクラスの蛍光分析による特徴づけ」、Acta Cytol,18:389(1974)
【非特許文献3】Shapiro H.M.ら、「蛍光色素並びにフロー測定を用いた血液細胞計数および分類」、J.Histochem Cytochem,24:396−411(1976)
【非特許文献4】Terstappen L.W.ら、「赤血球溶解を起こさない多次元フローサイトメトリー血液細胞分別」、Blood Cells,17;585−602(1991)
【非特許文献5】Terstappen L.W.,Levin J.「多次元フローサイトメトリーにより得られた骨髄細胞分別計数」、Blood Cells,18(2);311−330(1992)
【非特許文献6】Traganos F.,Darzynkiewicz Z.,Sharpless T.,Melamed M.R.,「蛍光フローサイトメトリーシステムにおけるアクリジンオレンジを用いた未固定細胞のリボ核酸およびデオキシリボ核酸の同時染色」、J.Histochem Cytochem,25:46(1977)
【非特許文献7】Pollack A.ら、「ピロニンYおよびメチルグリーンを用いた、異なる細胞集団におけるRNA含量のフローサイトメトリー分析」、Cytometry,Vol. 3, No.1:28−35(1982)
【特許文献1】1997年1月31日付けフランス特許第97 01090号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
これらの公知の技術には様々な短所がある。
【0012】
残りの細胞の測定を容易にするために、分析の前にこのアリコート部分を処理することによりしばしば赤血球を特異的に破壊させる。かかる方法により測定結果がより迅速に得られるようになるが、それにもかかわらず、望ましい調製物を得るための反応、移動および染色に関与する時間とで相殺されてしまう。
【0013】
試薬溶液中での細胞懸濁液のインキュベーション時間はとりわけ活性成分が細胞内部に浸透するのに必要な時間と関係がある。本明細書に前記するフランス特許第97 01090号では出願者は添加物、とりわけイオノフォア型添加物を使用して細胞浸透を補助するなど、この浸透を促進する方法について記載している。
【0014】
処理時間はアリコート部分が通過する連続した段階の数の関数でもある。細胞溶解および染色をしばしば2つの連続した段階で、ある順序でまたは別の順序で実施する(米国特許第6004816号を参照のこと)。
【0015】
これらの2つの希釈段階では素材に経費が少なからずかかり、最低処理時間が長くなる。
【0016】
従って本発明の目的は、前記の短所を回避した生物学的細胞の同定および計数のための試薬を提供することである。
【0017】
本発明の目的はとりわけ、特定の細胞、特に赤血球の溶解、有核細胞の固定および細胞内物質の染色を同時に実施することを可能にするような試薬を提供することである。
【0018】
本発明の目的はまた、分析の経費および時間並びに関係する試薬数を大幅に削減するために、便宜的に短時間でこれらの操作を実施することを可能にするような試薬を提供することでもある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
従って、本発明はサンプル中の有核の生物学的細胞の同定および計数のための方法を提供することであって、該方法は、サンプル中の規定の型の細胞を特異的に溶解するのに十分な濃度の、少なくとも1つのデタージェントから選択される細胞溶解剤、および残りの未溶解細胞の細胞内核酸をマークするように設計された色素を使用する。
【0020】
このように本発明は生物学的サンプルを同時に溶解および染色し、例えばフローサイトメトリーシステムにより分析され得る単一の段階で細胞の溶液を得ることが可能になる方法を提供する。この分析により、このように処理した細胞を分類および計数することが可能になる。
【0021】
従って、本発明の方法はフランス特許第97 01090号で記載される型の試薬溶液と、サンプルの規定の型の細胞、とりわけ赤血球を特異的に溶解することができる細胞溶解剤とを組み合わせたものを使用する。
【0022】
フランス特許第97 01090号で記載された染色試薬溶液それ自体は、続くサンプルの生物学的細胞の染色のために、膜浸透を促進することができるものである。研究する細胞の型に依存して、赤血球の溶解の前および後でこの染色溶液を使用することができる。この染色溶液の試薬の本質はこのように保持され、溶解溶液に導入されることにより、赤血球を破壊し、残りの細胞を染色した後、計数することを可能にする。
【0023】
有利には、細胞溶解剤は少なくとも1つのイオン性および/または非イオン性デタージェントを赤血球を溶解できる濃度で含有する。
【0024】
有利には、本発明のデタージェントは、
1級アミン、アミン酢酸塩および塩酸塩、4級アンモニウム塩、並びに臭化トリメチルエチルアンモニウム、
ジアミン置換アミド、ジエタノールアミノプロピルアミンまたはジエチルアミノプロピルアミド、環式ジエチレントリアミンのアミド、
スルホン酸アルキルアリル、石油スルホン酸、スルホン酸グリセリド
コラミド、スルホベタイン、
アルキルグリコシド、サポニン、
ポリオキシエチレンエーテルおよびソルビタン、ポリグリコールエーテル、
から選択される。
【0025】
1つの実施形態では、このデタージェントは0.05(w/v)%濃度のTriton X100および0.0001(v/v)%濃度のTween 20の混合物を含む。
【0026】
本明細書において「w/v」なる表現は「重量/容量」を表し、「v/v」なる表現は「容量/容量」を表す。
【0027】
使用する色素は蛍光型色素であることが有利である。
【0028】
有利には、色素を細胞内リボ核酸と特異的に結合でき、それと一度結合するとその蛍光が増強されるものから選択する。
【0029】
本発明では色素をとりわけ以下の色素から選択できる。
【0030】
チアゾールオレンジまたはp−トシル化1−メチル−4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]キノリニウム、
チアゾールブルー、
二ヨウ化4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]−1−[3−(トリメチルアンモニウム)プロピル]キノリニウム、
ヨウ化3,3’−ジメチルオキサカルボシアニンまたはヨウ化3−メチル−2−[3−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリルイデン−1−プロペニル]ベンゾキサゾリウム、
チオフラビンT、
SYTO(登録商標)およびTOTO(登録商標)色素(Molecular Probes(商標))、
臭化エチジウム、
ヨウ化プロピジウム、
アクリジンオレンジ、
コリホスフィン O、
アウラミン O、
HOECHST 33258およびHOECHST 33342色素、
二塩酸4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)、
二塩酸4’,6−(ジイミダゾリン−2−イル)−2−フェニルインドール(DIPI)、
7−アミノアクチノマイシン D、
アクチノマイシン D、および
LDS 751。
【0031】
本発明の好ましい実施形態では、試薬はさらに、色素の細胞内への浸透を促進させてマークさせることができる少なくとも1つの膜浸透物質を含む。
【0032】
有利には、膜浸透を促進する物質はプロトノフォアおよび/または抗生物質型のイオノフォア化合物である。
【0033】
この物質は一般に0.005(w/v)%以下の濃度で存在する。使用できる抗生物質の例としてはバリノマイシンがある。
【0034】
試薬がさらに0.1(w/v)%ないし10(w/v)%の濃度で存在する少なくとも1つの膜固定剤を含むことが好ましい。この固定剤は少なくとも1つのアルコールおよび/または1つのアルデヒドを含むのが好ましい。この目的で例えばパラホルムアルデヒドまたはグルタルアルデヒドを使用するのが好ましい。
【0035】
試薬にその他の添加物または成分を含有することもまた本発明の範囲内において可能である。
【0036】
従ってこの試薬はまた錯化剤、無機塩およびバッファー系から選択される少なくとも1つの化合物を含むこともできる。
【0037】
別の態様によれば、本発明はサンプル中、とりわけ血液サンプル中の有核の生物学的細胞の同定および計数の方法に関し、この方法は以下の操作からなる。
【0038】
サンプルを前記で定義する試薬と混合し、インキュベートして、単一の段階で規定の型の細胞、とりわけ赤血球の溶解、細胞内核酸の染色、および有核細胞の固定を行うこと、
抵抗性容量、軸方向の発光回析、軸方向の発光透過、垂直方向発光移入、および蛍光から選択される少なくとも2つの測定パラメーターを用いて、得られた溶液をフローサイトメトリーにより測定すること、並びに
測定したパラメーターにより集団における有核細胞を分類および計数すること。
【0039】
フローサイトメトリー測定では、軸方向発光回析パラメーターは小角度回析および大角度回析から選択される少なくとも1つのパラメーターである。
【0040】
慣用されるパラメーター、例えば軸方向回析すなわち「FSC」(前方向散乱)、垂直方向拡散すなわち「SSC」(側方向散乱)、および垂直方向蛍光(FL1)、軸方向蛍光、エピ蛍光のいずれかを有するフローサイトメーターにより測定を実施でき、概パラメーターは全て極性化または脱極性化されており、さらに別の測定パラメーターとしては、1989年10月27日のフランス特許第89 14120号に記載される、例えば透過光測定または抵抗性容量などがある。
【0041】
直流電流により抵抗性を測定し、エレメントの容量を表現でき、および/またはパルス化すなわち交流電流により、内部密度の差異を表現でき、構造の確定に近づくことができる。
【0042】
これらのパラメーターを用いることで、分析された細胞の各々に関する複数のパラメーターデータのセットを得ることができ、これにより細胞を分類することが可能になる。細胞を規定するパラメーターがより相関的であり非常に多くなるほど分類が正確になる。この型の複数のパラメーター実験はすでに以前に報告されている(前記の非特許文献4および5を参照のこと)。
【0043】
本発明の範囲内で分類された有核細胞は成熟したものでも未成熟なものでもよく、または正常細胞でも異常細胞でもよい。
【0044】
有核細胞の分類は公知の方法により実施される。ソフトウェアまたはその他のニューロン技術を用いて、または用いずに、多次元分析ソフトウェアプログラムにより分類を実施できる。
【0045】
本発明の範囲では、生物学的サンプルはヒトもしくは動物血液のサンプルでよく、またはヒトもしくは動物起源の細胞の生物学的液体もしくは懸濁液のサンプルでもよい。
【0046】
このサンプルを特定の温度条件下にて試薬溶液と混合する。反応速度論では、赤血球がまず最初に破壊され、色素の浸透が細胞の固定の並行して行われ、これがより緩徐に起こるとしている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
本発明はここで以下の実施例を参考として記載する。
【実施例】
【0048】
この実施例の範囲内で使用する試薬は以下の組成を有する。
【0049】
錯化剤 EDTA 0.02% (w/v)
無機塩 NaCl 0.85% (w/v)
バッファー系 リン酸塩 0.5% (w/v)
デタージェント Triton X100 0.05% (w/v)
Tween 20 0.0001% (v/v)
イオノフォア バリノマイシン 0.003% (w/v)
色素 チアゾールオレンジ 0.005% (w/v)
アルデヒド パラホルムアルデヒド 1% (w/v)
全血液サンプルを前記の試薬溶液と混合する。数秒間(典型的には15ないし30秒のオーダー)インキュベートした後、少なくとも以下のパラメーターを含むフローサイトメトリー系により溶液を分析する。すなわち、大きさの解釈を提示する軸方向回析「FSC」、観察したエレメントの構造を表現する垂直方向拡散「SSC」、および測定すべき細胞内リボ核酸の表現を可能にする垂直方向蛍光(FL1)。
【0050】
このように得られた結果を多次元モードで観察し、各パラメーター間の種々の集団の相互関係を確定する。
【0051】
ここで正常なヒト血液で得られた結果を示す図1ないし4を参考とする。
【0052】
図1は2つのパラメーター、軸方向回析「FSC」および垂直方向拡散「SSC」により得られたマトリックスを示す。4つの異なる集団が明らかに認められる。Lはリンパ球を示し、Mは単球を示し、Nは多核好中球を示し、およびEは多核好酸球を示す。未成熟顆粒球のIG集団、未分化胚芽細胞のBL、多核好塩基球のBおよび赤芽球のErBが示されているが、2次元だけでは分別できない。
【0053】
図2は軸方向回析(FSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す。図1に示すように同一の4つの集団が認められるが、異なって配置されている。単核細胞LおよびMは平均的な蛍光の上位群を成し、多核白血球N、EおよびBは弱い蛍光の下位群を成す。赤芽球のErB集団は2群の頂点で明らかに分かれ、形成されている。BLおよびIG集団の正常な位置が示される。
【0054】
図3は垂直方向拡散(SSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す。同一の集団が異なる方法で作られることが見出されるが、IGおよびBL集団を単離することが可能である(正常なサンプル中で極少量)。
【0055】
図4は得られた集団の3次元表示を示す。
【0056】
図5ないし8は各々図1ないし4の結果と同一の型であることを示しているが、芽細胞(BL)を含有するサンプルで得られ、本発明に従って処理されたものである。
【0057】
図9ないし12は各々図1ないし4と同一の型の結果であることを示しているが、未成熟顆粒球(IG)を含有するサンプルで得られ、本発明に従って処理されたものである。
【0058】
このように本発明の試薬および方法により、サンプル中、とりわけヒトまたは動物の血液のサンプル中の生物学的細胞の特異的溶解および同時染色を単一の段階で実施することが可能になる。
【0059】
従ってフローサイトメトリーに基づく自動分析系を用いて細胞を迅速に同定および計数できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】2つのパラメーター、軸方向回析(FSC)および垂直方向拡散(SSC)により得られたマトリックスを示す図である。
【図2】軸方向回析(FSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す図である。
【図3】垂直方向拡散(SSC)および蛍光(FL1)パラメーターにより形成されたマトリックスを示す図である。
【図4】得られた集団の3次元表示を示す図である。
【図5】軸方向回析(FSC−H)および垂直方向拡散(SSC−H)により得られたマトリックスを示す図である。
【図6】軸方向回析(FSC−H)および蛍光(FL1−Height)により得られたマトリックスを示す図である。
【図7】垂直方向拡散(SSC−H)および蛍光(FL1−Height)により形成されたマトリックスを示す図である。
【図8】得られた集団の3次元表示を示す図である。
【図9】軸方向回析(FSC−H)および垂直方向拡散(SSC−H)により得られたマトリックスを示す図である。
【図10】軸方向回析(FSC−H)および蛍光(FL1−Height)により得られたマトリックスを示す図である。
【図11】垂直方向拡散(SSC−H)および蛍光(FL1−Height)により形成されたマトリックスを示す図である。
【図12】得られた集団の3次元表示を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の操作からなるサンプル中(血液サンプル中を含む)の生物学的細胞を同定および計数する方法であって、
サンプルをサンプル中の有核の生物学的細胞を同定し計数するための試薬と混合し、インキュベートする操作において、
赤血球を溶解するのに適した濃度の少なくとも1つのイオン性および/または非イオン性デタージェントから選択される細胞溶解剤と、残りの未溶解細胞の細胞内核酸をマークするように設計された色素とを含み、
規定の型の細胞(赤血球を含む)の溶解、細胞内核酸の染色、および有核細胞の固定を単一の段階で行うことを特徴とし、
抵抗性容量、軸方向の発光回折、軸方向の発光透過、軸方向発光移入、および蛍光から選択される少なくとも2つの測定パラメーターを用いてフローサイトメトリーにより得られた溶液を測定し、並びに、
測定したパラメーターにより集団における有核細胞を分類および計数すること、
からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デタージェントが、
1級アミン、アミン酢酸塩および塩酸塩、4級アンモニウム塩、並びに臭化トリメチルエチルアンモニウム、
ジアミン置換アミド、ジエタノールアミノプロピルアミンまたはジエチルアミノプロピルアミド、環式ジエチレントリアミンのアミド、
スルホン酸アルキルアリル、石油スルホン酸、スルホン酸グリセリド、
コラミド、スルホベタイン、
アルキルグリコシド、サポニン、
ポリオキシエチレンエーテルおよびソルビタン、ポリグリコールエーテル、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記色素が蛍光型色素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記色素が細胞内リボ核酸と特異的に結合でき、一度リボ核酸と結合するとその蛍光を増強させることができることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記色素が、
チアゾールオレンジまたはp−トシル化1−メチル−4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]キノリニウム、
チアゾールブルー、
二ヨウ化4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]−1[3−(トリメチルアンモニウム)プロピル]キノリニウム、
ヨウ化3,3’−ジメチルオキサカルボシアニンまたはヨウ化3−メチル−2−[3−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリルイデン−1−プロペニル]ベンゾキサゾリウム、
チオフラビンT、
SYTO(登録商標)およびTOTO(登録商標)色素(MolecularProbes(商標))、
臭化エチジウム、
ヨウ化プロピジウム、
アクリジンオレンジ、
コリホスフィン O、
アウラミン O、
HOECHST 33258およびHOECHST33342色素、
二塩酸4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)、
二塩酸4’,6−(ジイミダゾリン−2−イル)−2−フェニルインドール(DIPI)、
7−アミノアクチノマイシン D、
アクチノマイシン D、および
LDS 751、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
色素が細胞へ浸透することを促進してマークさせることができる少なくとも1つの膜浸透物質をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
膜浸透を促進する前記物質がプロトノフォアおよび/または抗生物質型のイオノフォア化合物であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
0.1(重量/容量)%ないし10(重量/容量)%の濃度で存在する少なくとも1つの膜固定剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜固定剤がパラホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドから選択される少なくとも1つのアルコールおよび/またはアルデヒドを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試薬が錯化剤、無機塩およびバッファー系から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抵抗性の測定が直流電流およびパルス化すなわち交流電流から選択される少なくとも1つの電流により実施されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記軸方向発光回析パラメーターが小角度回析および大角度回析から選択される少なくとも1つのパラメーターであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記分類された有核細胞が成熟したものであるかまたは未成熟なものであり、正常細胞であるかまたは異常細胞であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
有核細胞の分類がソフトウェアまたはその他のニューロン技術を用いるまたは用いない多次元分析ソフトウェアプログラムにより実施されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルがヒトまたは動物の血液のサンプルであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルがヒトまたは動物起源の細胞の生物学的液体または懸濁液のサンプルであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項1】
以下の操作からなるサンプル中(血液サンプル中を含む)の生物学的細胞を同定および計数する方法であって、
サンプルをサンプル中の有核の生物学的細胞を同定し計数するための試薬と混合し、インキュベートする操作において、
赤血球を溶解するのに適した濃度の少なくとも1つのイオン性および/または非イオン性デタージェントから選択される細胞溶解剤と、残りの未溶解細胞の細胞内核酸をマークするように設計された色素とを含み、
規定の型の細胞(赤血球を含む)の溶解、細胞内核酸の染色、および有核細胞の固定を単一の段階で行うことを特徴とし、
抵抗性容量、軸方向の発光回折、軸方向の発光透過、軸方向発光移入、および蛍光から選択される少なくとも2つの測定パラメーターを用いてフローサイトメトリーにより得られた溶液を測定し、並びに、
測定したパラメーターにより集団における有核細胞を分類および計数すること、
からなることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記デタージェントが、
1級アミン、アミン酢酸塩および塩酸塩、4級アンモニウム塩、並びに臭化トリメチルエチルアンモニウム、
ジアミン置換アミド、ジエタノールアミノプロピルアミンまたはジエチルアミノプロピルアミド、環式ジエチレントリアミンのアミド、
スルホン酸アルキルアリル、石油スルホン酸、スルホン酸グリセリド、
コラミド、スルホベタイン、
アルキルグリコシド、サポニン、
ポリオキシエチレンエーテルおよびソルビタン、ポリグリコールエーテル、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記色素が蛍光型色素であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記色素が細胞内リボ核酸と特異的に結合でき、一度リボ核酸と結合するとその蛍光を増強させることができることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記色素が、
チアゾールオレンジまたはp−トシル化1−メチル−4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]キノリニウム、
チアゾールブルー、
二ヨウ化4−[(3−メチル−2−(3H)−ベンゾチアゾリルイデン)メチル]−1[3−(トリメチルアンモニウム)プロピル]キノリニウム、
ヨウ化3,3’−ジメチルオキサカルボシアニンまたはヨウ化3−メチル−2−[3−(3−メチル−2(3H)−ベンゾチアゾリルイデン−1−プロペニル]ベンゾキサゾリウム、
チオフラビンT、
SYTO(登録商標)およびTOTO(登録商標)色素(MolecularProbes(商標))、
臭化エチジウム、
ヨウ化プロピジウム、
アクリジンオレンジ、
コリホスフィン O、
アウラミン O、
HOECHST 33258およびHOECHST33342色素、
二塩酸4’,6−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)、
二塩酸4’,6−(ジイミダゾリン−2−イル)−2−フェニルインドール(DIPI)、
7−アミノアクチノマイシン D、
アクチノマイシン D、および
LDS 751、
からなるグループから選択されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
色素が細胞へ浸透することを促進してマークさせることができる少なくとも1つの膜浸透物質をさらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
膜浸透を促進する前記物質がプロトノフォアおよび/または抗生物質型のイオノフォア化合物であることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
0.1(重量/容量)%ないし10(重量/容量)%の濃度で存在する少なくとも1つの膜固定剤をさらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記膜固定剤がパラホルムアルデヒドおよびグルタルアルデヒドから選択される少なくとも1つのアルコールおよび/またはアルデヒドを含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記試薬が錯化剤、無機塩およびバッファー系から選択される少なくとも1つの化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記抵抗性の測定が直流電流およびパルス化すなわち交流電流から選択される少なくとも1つの電流により実施されることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記軸方向発光回析パラメーターが小角度回析および大角度回析から選択される少なくとも1つのパラメーターであることを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記分類された有核細胞が成熟したものであるかまたは未成熟なものであり、正常細胞であるかまたは異常細胞であることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
有核細胞の分類がソフトウェアまたはその他のニューロン技術を用いるまたは用いない多次元分析ソフトウェアプログラムにより実施されることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプルがヒトまたは動物の血液のサンプルであることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記サンプルがヒトまたは動物起源の細胞の生物学的液体または懸濁液のサンプルであることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−256713(P2008−256713A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−157006(P2008−157006)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【分割の表示】特願2002−46658(P2002−46658)の分割
【原出願日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(596022226)
【氏名又は名称原語表記】ABX
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【分割の表示】特願2002−46658(P2002−46658)の分割
【原出願日】平成14年2月22日(2002.2.22)
【出願人】(596022226)
【氏名又は名称原語表記】ABX
【Fターム(参考)】
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