説明

生物活性分子の送達のための微粒子化デバイスおよびその使用方法

本発明は、生物活性分子を眼に送達することが可能な微粒子化カプセル化細胞治療デバイスを提供する。こうした治療デバイスを使用して、生物活性分子を眼に送達し、眼科疾患を罹患している患者の疾患を治療する方法も提供する。こうした微粒子化デバイスは、生物活性分子を生成する約5×10個と90x10個との間の生細胞を含むコア、およびこのコアを囲む生体適合性ジャケットを有するカプセルを含み、このジャケットは、生物活性分子が眼内に拡散することを可能にする分子量カットオフを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、一般に、カプセル化細胞治療の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
多くの臨床症状、欠損症、および病状は、生細胞によって生成された1つまたは複数の生物活性分子を患者に供給するか、または生細胞によって代謝される有害な要素を患者から除去することによって、治療または緩和することができる。多くの場合、これらの分子は、器官または組織の機能の欠陥または損失を回復または補償することができる。したがって、多くの研究者が、分泌生成物を提供するか、または代謝機能に作用する全体の器官、器官の組織、および/または細胞を移植することによって、器官または組織の機能を再構成しようと試みてきた。しかし、移植は、目覚しい利点を提供することができる一方、移植に適し、利用可能な器官が比較的少数であるため、移植の応用は限られている。一般に、移植患者は、移植機能の損失を生じ、結果として、移植された組織または細胞の壊死を招く移植の拒絶反応を避けるために免疫反応を抑制しなければならない。同様に、多くの場合、移植は、長期にわたって、さらに患者の残りの生存期間にわたって、機能性を維持しなければならない。患者を相当期間にわたって免疫反応抑制状態に保つことは望ましくなく、かつ費用がかさむ。
【0003】
眼の視力を脅かす多くの疾患が存在し、そのため、さらに良好な治療が今なお必要とされている。こうした疾病を治療する際の1つの大きい問題は、眼に治療薬を送達し、治療上効果的な濃度で治療薬を眼に留めることができないことである。
【0004】
多くの成長因子は、眼の疾病の治療で有望であることが実証されている。たとえば、BDNFおよびCNTFは、様々な動物モデルの神経節細胞の網膜の変性を遅らせ、光受容体の変性を減少させることが実証されている。たとえば、Genetic Technology News,vol.13,no.1(1993年1月)参照。さらに、神経成長因子は、視神経後の網膜神経節細胞の生存を強化することが実証されており、虚血後の網膜神経細胞の回復を促進することも実証されている。たとえば、Siliprandi等、Invest.Ophthalmol.&Vis.ScL,34,3232−3245ページ(1993年)参照。
【0005】
移植手順の望ましい代案は、栄養素、代謝産物、および分泌生成物の拡散を可能にするが、拒絶反応の細胞および分子エフェクタを阻止する物的障壁内への細胞または組織のインプランテーションである。選ばれた生成物を生成する組織または細胞を免疫系から保護する多様なマイクロカプセルデバイスが研究されてきた。たとえば、特許文献1、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照。これらは各々、引用することにより全体的に本明細書に援用する。これらのデバイスは、たとえば、マイクロカプセル化細胞の血管外拡散チャンバ、血管内拡散チャンバ、血管内限外濾過チャンバ、およびインプランテーションを含む。たとえば、非特許文献1参照。たとえば、非特許文献2;非特許文献3;特許文献5;および特許文献6参照。こうしたデバイスは、患者を免疫反応抑制状態に維持する必要性を緩和すると思われる。しかし、これらのどの方法も、長期の移植機能を提供するには不十分だった。
【特許文献1】米国特許第5,158,881号明細書
【特許文献2】国際公開第92/03327号パンフレット
【特許文献3】国際公開第91/00119号パンフレット
【特許文献4】国際公開第93/00128号パンフレット
【特許文献5】国際公開第93/03901号パンフレット
【特許文献6】米国特許第5,002,661号明細書
【非特許文献1】Scharp,D.W.等、World J.Surg.,8,221−9ページ(1984年)
【非特許文献2】Lim等、Science 210:908−910(1980年)
【非特許文献3】Sun,A.M.,Methods in Enzymology 137:575−579(1988年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、必要な物質、たとえば神経栄養因子、抗血管新生因子、抗炎症因子、酵素、ホルモン、その他の因子の適切な量を送達するか、または必要なその他の代謝機能を長期にわたって眼に提供する方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の概要
本発明は、生物活性分子を眼に供給するための微粒子化デバイスを提供する。こうした微粒子化デバイスは、生物活性分子を生成する約5×10個と90x10個との間の生細胞を含むコア、およびこのコアを囲む生体適合性ジャケットを有するカプセルを含み、このジャケットは、生物活性分子が眼内に拡散することを可能にする分子量カットオフを有する。好ましくは、デバイスは、200μmと350μmとの間の外径かつ0.5mmと6mmとの間の長さの円筒として構成される。眼の中に拡散する生物活性分子の投与量は、患者一人の片目当たり1日に0.1pgと1000ngとの間である。様々な実施態様では、BAMの投与量は、患者一人の片目当たり1日に0.1pg〜500ng;患者一人の片目当たり1日に0.1pg〜250ng、0.1pg〜100ng、0.1pg〜50ng、0.1pg〜25ng、0.1pg〜10ng、または0.1pg〜5ngでよい。
【0008】
実施態様によっては、微粒子化デバイスは、任意に、カプセルを眼の構造に固定するように構成されたテザーを有してよい。たとえば、テザーは、ループ、ディスク、および/または縫合糸から選択するとよい。こうしたテザーは、形状記憶材料、または当業者が周知している任意のその他の医療グレードの材料から製造することができる。
【0009】
本発明の微粒子化デバイスのジャケットは、選択透過性膜、免疫隔離性膜でよい。さらに、生体適合性ジャケットは、限外濾過膜または微小孔性膜から製造することができる。一般に、ジャケットはポリマー材料から製造される。適切なポリマー材料としては、ポリアクリロニトリル−ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルジフルオリド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリイミド、および/またはセルロース挙げられるが、これらだけに限らない。
【0010】
本発明の微粒子化デバイスは、硝子体、テノン嚢下鞘、眼周囲の空間、および/または前房にインプラントすることができる。
【0011】
適切な生物活性分子としては、抗血管新生因子、抗炎症因子、神経栄養因子、成長因子、栄養素、抗体および抗体断片、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、並びにリンフォカイン挙げられるが、これらだけに限らない。実施態様によっては、生物活性分子は、サイトカイン、またはリンフォカイン、たとえばTGFβ、GDNF、NGF、CNTF、bFGF、aFGF、IL−1β、IFN−β、IFN−α、BDNF、LIF、NT−4、NTN、NT4/5、CT−I、LEDGF、ニューブラスチン、アキソカイン、IL−23、RdCVF、IL−10、αINF、IL−1Rα、および/またはレミケードである。他の実施態様では、生物活性分子は、抗血管新生因子、たとえばバスキュロスタチン(vasculostatin)、アンギオスタチン、エンドスタチン(endostatin)、抗インテグリン、血管内皮成長因子阻害剤(VEGF阻害剤)、血小板因子4、ヘパリナーゼ、bFGF結合分子、VEGF受容体Flt、VEGF受容体Flk、Lucentis、VEGFトラップ、Tek Δ/Fc(ang1/ang2阻害剤)、2xCon4(C)、可溶性VEGF受容体、およびPEDFである。
【0012】
さらに他の実施態様では、少なくとも1つのその他の生物活性分子は、カプセルから眼に送達される。追加の生物活性分子または分子は、細胞性供給源または非細胞性供給源に由来してよい。少なくとも1つの追加の生物活性分子は、非細胞性供給源由来である場合、微粒子化デバイスの1つまたは複数の成分中にカプセル化するか、分散させるか、またはこうした成分に付着させることができる。非制限的な例として、非細胞性供給源に由来する少なくとも1つの追加の生物活性分子は、核酸、核酸断片、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド摸倣物、炭水化物、脂質、有機分子、無機分子、治療薬、およびこれらの様々な組合せから選択することができる。適切な治療薬としては、抗血管新生薬剤、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症剤、細胞分裂抑制薬、抗癌剤、抗寄生虫剤、眼圧低下剤、ペプチド薬、および眼科用途に認可されたその他の生物活性分子薬剤が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0013】
本発明の微粒子化デバイスのコア内に含まれる生細胞としては、インスリン産生細胞、副腎クロム親和性細胞、抗体分泌細胞、線維芽細胞、星状膠細胞、β細胞株、チャイニーズハムスター卵巣細胞、および/またはARPE−19細胞を挙げることができる。これらの細胞は、同種異系および/または同系でよい。
【0014】
本発明による微粒子化デバイスの生体適合性ジャケットの分子量カットオフは、約1kD〜約150kDである。
【0015】
実施態様によっては、微粒子化デバイスのコアは、0.5μl未満の容量を有する。このコアは、実質的に非分解性の糸状細胞支持マトリックスをさらに含み、このマトリックスは、複数のモノフィラメントから製造され、モノフィラメントは、糸状に撚り合わされるか、メッシュ状に織られるか、または不織ストランド状に撚り合わされる。コア内の細胞は、非分解性糸状細胞支持マトリックス上に分散させることができる。適切な糸状細胞支持マトリックスとしては、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンポリアセトニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテステル、絹、綿、キチン、炭素、および生体適合性金属から選択される生体適合性材料が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0016】
本発明は、本発明による少なくとも1つの微粒子化デバイスを眼の内部または眼の周囲にインプラントすることによって、生物活性分子を眼に送達し、この生物活性分子が、デバイスから硝子体、房水、または眼周囲の空間内に拡散することを可能にする方法も提供する。任意に、インプランテーションは、シリンジを使用して行うことができる。
【0017】
また、本発明による1つまたは複数の微粒子化デバイスを患者の眼の内部にインプラントすることによって、眼科疾患を罹患する患者の眼科疾患を治療する方法を提供する。たとえば、治療対象の眼科疾患は、網膜変性症、たとえば未熟児網膜症、緑内障、白内障形成、網膜芽腫、網膜虚血、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、ウェット型およびドライ型加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、および/またはコロイデレミアであり得る。
【0018】
本発明は、さらに、患者の眼の内部にデバイスをインプラントすることによって、眼科疾患を罹患している患者の眼科疾患を治療する薬剤の製造における、本発明による微粒子化デバイスの使用を提供する。たとえば、こうした眼科疾患は、未熟児網膜症、緑内障、白内障形成、網膜芽腫、網膜虚血症、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、ウェット型およびドライ型加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、および/またはコロイデレミアから選択される網膜変性症であり得る。
【0019】
特に定義されていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および専門用語は、本発明が属する技術の当業者が一般に理解する意味と同じ意味を有する。本明細書に記載する方法および材料に類似するか、これらと等価な方法および材料を本明細書の実施またはテストに使用することができるが、適切な方法および材料を以下で説明する。本明細書に記載するすべての出版物、特許出願、特許、およびその他の文献は、引用することにより全体に本明細書に援用する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先する。さらに、材料、方法、および例は単に具体的に示すためのものであり、制限する意図はない。
【0020】
本発明のその他の特徴および利点は、以下の説明および特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
本発明は、1つまたは複数の生物活性分子(「BAM」)を眼に送達するための微粒子化生体適合性、任意の免疫隔離性デバイスに関する。詳細には、こうした微粒子化デバイスは、BAMを生成または分泌する生細胞を含むコア、およびこのコアを囲む生体適合性ジャケットを含み、ジャケットは、BAMが眼の中に拡散することを可能にする分子量カットオフ(「MWCO」)を有する。
【0022】
本発明はさらに、BAMを眼内(たとえば、前房および硝子体腔)、または眼の周囲に(たとえば、テノン鞘の内部もしくは下)、またはこれらの両方に送達することに関する。本発明は、様々な眼科疾患、眼の疾病、および/または眼の作用を治療する上で効果的な生物活性分子の制御された持続的な放出を提供するために使用してもよい。
【0023】
微粒子化されたカプセル化デバイスの構成に、生体適合性ポリマー材料を生物学的に使用することは、細胞カプセル化療法(「ECT」)の成功に重要である。カプセル化デバイスの重要な構成要素としては、周囲の半透膜、および内部の細胞支持マトリックスまたは足場が挙げられる。
【0024】
微粒子化ECTデバイスは、直径200ミクロン、およびインプラントの全長1ミリメートルを有する50kDa分子量カットオフの透析膜を使用して製造された。こうしたデバイスの全体的な変位量は、約0.5マイクロリットル(たとえば、0.3μl)未満だった。これは、現在のヒト臨床ECTデバイス(本明細書では、「第1世代ECTデバイス」および/または「第1世代デバイス」と呼ぶ)と比べて200倍を超える用量の減少を表す。本発明の微粒子化デバイスのインプラントデバイスの構成は、強膜への挿入および取付けを促進するために開発された。(図1参照。)
「微粒子化ECTデバイス」、「マイクロデバイス」、および「マイクロECTデバイス」などは、本明細書では、本発明のカプセル化細胞治療デバイスを意味するために互換可能に使用される。
【0025】
適切なデバイス膜は、ポリスルホン/ポリビニルピロリドンまたはポリイミドを使用して製造した。様々な細胞足場材料マトリックスは、細胞の付着および細胞の成長を促し、細胞の生存能力を持続させる能力について調査した。テストした足場材料マトリックスは、たとえば、Cacl、マトリゲル、ピュアペプチド(Purapeptide)、およびフィブロネクチンを含むか、または含まない非分解性マイクロスフェアを含んでいた。さらに、PETモノフィラメント糸マトリックスも調査した。膜および足場材料の様々な組合せを評価し、CNTFまたはIL−10を生成する人工ヒト網膜色素上皮細胞(ARPE−19)を使ってカプセル化されたデバイスと比較した。インビトロ評価期間におけるタンパク質分泌物は、ELISAによって定量化した。カプセル化細胞の生存能力は、DNA検定を使用して評価し、酸化還元検定、生細胞の核蛍光標識、アポトーシス細胞組織化学、および区分されたデバイスの組織学的検査を使用して総菌数、代謝活性を決定した。さらに、様々な微粒子化デバイスを齧歯動物の硝子体内にインプラントし、臨床的に評価した。
【0026】
図2に示すように、ヒドロゲルマトリックスを使用した場合、微粒子化デバイスの最初の選別後に適切な細胞の生存能力を可能にしなかった。さらに、ポリイミドデバイス群は、ポリスルホン(「PS」)群と比べて、生存能力が劣っていた。(図3参照)。しかし、フィブロネクチンまたはPET糸を細胞の足場として塗布されたポリスチレンマイクロスフェア(「PSマイクロスフェア」)を使用するポリスルホン/ポリビニルピロリドン膜は、1か月の評価期間にわたって持続したレベルのタンパク質の生成を生じた。PSマイクロスフェア、および微粒子化デバイスのPET群は、壊死またはアポトーシスの徴候がなく、健全な状態を維持した。(図4〜6参照)。さらに、IL−10およびCNTFの用量効果的な送達は、PET糸マトリックスを使って処方された微粒子化デバイスを使用して達成される。(表1参照)。
【0027】
表1.PET糸マトリックスを使用して設計された微粒子化デバイスにおるIL−10およびCNTFの生成結果
【0028】
【表1】

マウスの硝子体内にインプラントした微粒子化デバイスの臨床評価は、これらのデバイスが、一定の位置に維持され、大きいラットの水晶体に対する接触を回避したことを実証した。さらに、1か月追跡期間が経過する間、不都合な結果の報告はなかった。これらの最初の実験に基づいて、持続したレベルのタンパク質を生成可能な微粒子化ECTデバイスの製造および維持管理が可能であり、これらのデバイスは齧歯動物の硝子体内で許容されると思われる。
【0029】
本明細書で使用する「個体」、「受容体」または「宿主」という用語は、ヒトまたは動物の対象を意味する。
【0030】
「生物活性分子」(「BAM」)は、本発明の微粒子化デバイスがインプラントされる個体の身体に生物学的に有用な効果を及ぼすことが可能な物質である。本明細書で使用する場合、BAMは、細胞内にその生物学的活性を与え得るBAMであり、細胞表面に生成されるか、もしくは発現して、その細胞と他の細胞もしくは生物活性分子(たとえば、神経伝達物質受容体、もしくは細胞接着分子)との相互作用を生じ得るか、または、細胞から放出もしくは分泌され得て、別個の標的細胞(たとえば、神経伝達物質、ホルモン、成長因子、可溶性受容体、抗体、抗体断片、抗血管新生因子、もしくはサイトカイン)上に生成され、その作用を与える。BAMは、ウィルス、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、炭水化物、核酸、ヌクレオチド、薬剤、プロドラッグなどの作用物質、または効果が有害、有益、もしくはその他である効果を細胞に与え得るその他の物質である。神経系細胞に有益なBAMは、「神経作用物質」であり、これは、CNSまたは眼の細胞の増殖、分化、もしくは機能、または神経学的もしくは眼科学的疾病もしくは疾患の治療に潜在的に有用であることを実証し得る生物学的または製薬学的に活性の任意の物質を含む用語である。たとえば、この用語は、特定の神経伝達物質、神経伝達物質受容体、成長因子、成長因子受容体、可溶性受容体、抗体、抗体断片、抗血管新生因子など、およびこれらの作用物質の合成に使用される酵素を含む場合がある。
【0031】
「カプセル」、「デバイス」、および「媒体」という用語は、本明細書では、本発明の微粒子化ECTデバイスを意味するために互換可能に使用される。
【0032】
特記しない限り、「細胞」という用語は任意の形式の細胞を意味し、組織内に保持される細胞、細胞集合、および個々に隔離された細胞が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0033】
本明細書で使用する場合、「生体適合性カプセル」、「生体適合性デバイス」、または「生体適合性媒体」は、個体内にインプランテーション後のカプセル、デバイス、または媒体が、カプセルの拒絶を生じるか、またはたとえば劣化により使用不可能にするのに十分な不利な宿主反応を誘発しないことを意味する。
【0034】
本明細書で使用する場合、「免疫隔離性カプセル」、「免疫隔離性デバイス」、または「免疫隔離性媒体」は、個体内にインプランテーション後のカプセルが、そのコア内の細胞に対する宿主の免疫系の悪影響を最小限にすることを意味する。
【0035】
本明細書で使用する場合、「生物活性分子の長期間の安定した発現」とは、1ヶ月を超える期間、好ましくは3か月を超える期間、最も好ましくは6か月を超える期間にわたって、有用な生物学的活性を維持するのに十分なレベルで、生物活性分子の生成を持続することを意味する。微粒子化デバイスのインプラント、およびその内容は、インビボで3か月、多くの場合は1年間を超える期間にわたって、機能性を維持することが可能である。第1世代ECTデバイスは、少なくとも18か月間機能性を維持できることが実証された。したがって、本発明の微粒子化デバイスは、インビボで同等か、より長期間にわたって生存能力および生産量を維持することができるであろう。さらに、本発明のデバイスは、インプラントされて、容易に回収可能な単一またはわずか数個(たとえば、約50未満)のデバイスから薬用量全体の物質を送達するのに十分なサイズで作成し得る。
【0036】
コアを囲むジャケット膜の「半透性」の性質は、細胞によって生成される物質(たとえば、代謝産物、栄養素、および/または治療剤)が、デバイスから周囲の宿主の眼組織内に拡散するが、コア内の細胞が、宿主による不利な免疫学的攻撃から保護する点で十分に不浸透性であることを可能にする。
【0037】
免疫隔離性媒体のコアは、内部に隔離される特定の細胞の生命力および機能に適する局所的な環境を提供するように構成される。コアは、細胞を維持するのに十分な足場または液体培地を含むとよい。
【0038】
本発明の微粒子化デバイスのコアは、成長因子(たとえば、プロラクチン、もしくはインスリン状成長因子2)、変換成長因子β(TGF−β)などの成長調節物質の容器、または網膜芽腫遺伝子タンパク質、もしくは栄養素運搬エンハンサ(たとえば、コア中の溶解酸素の濃縮を強化するペルフルオロカーボン)として機能することができる。また、これらの特定の物質は、液体培地に含むのに適する。
【0039】
さらに、このデバイスは、必要な薬剤または生物学的治療薬の制御された送達のための容器として使用することも可能である。この場合、コアは、高濃度の選ばれた薬剤または生物学的治療薬を含む(単独、または細胞もしくは組織と組み合わせて)。さらに、本発明による微粒子化デバイスがインプラントされる身体領域に、快適な環境を用意または形成する物質を含む衛星媒体を受容体内にインプラントすることも可能である。この場合、免疫隔離細胞を含むデバイスは、たとえば、炎症反応を下方変調または抑制する調節された量の物質(たとえば、消炎ステロイド剤)を受容体から放出する衛星媒体、または毛細管床(たとえば、血管新生因子)の内部成長を刺激する物質とともに、この領域にインプラントされる。
【0040】
この微粒子化デバイスのコアを囲む周囲または周辺領域のジャケットは、選択透過性、生体適合性、および/または免疫隔離性でよい。ジャケットは、隔離細胞がなく、コアを完全に囲み(つまり、隔離し)、それによってコア内の何れかの細胞と受容体の本体との間の接触を防止するように製造される。生体適合性の半透性中空ファイバ膜、およびこれらを製造する方法は、米国特許第5,284,761号および第5,158,881号に開示されている(国際公開第95/05452号も参照)。これらは各々、引用することにより全体を本明細書に援用する。たとえば、カプセルジャケットは、たとえば米国特許第4,976,859号、第4,968,733号、および第5,762,798号に記載されているポリエーテルスルホン中空ファイバから形成することができ、これらの特許は、引用することにより全体を本明細書に援用する。
【0041】
選択透過性にするため、ジャケットは、デバイスがインプラントされた後に遭遇すると予想される免疫学的反応のタイプおよび程度、並びにデバイス内へ、およびデバイスから眼の内部に通過することが望ましい最大物質の分子サイズの両方に適する分子量カットオフ(「MWCO」)の範囲を有するように形成される。デバイスのインプランテーション後に、受容体によって増加し得る免疫学的攻撃のタイプおよび程度は、一部には、デバイス内に隔離される部分のタイプによって決まり、一部には受容体の同一性によって決まる(つまり、受容体が、BAMの供給源に遺伝的にどの程度密接に関連しているか)。インプラントされた組織または細胞が、受容体に対して同種異系である場合、拒絶反応は、主に、インプラントされた細胞に対する受容体の免疫細胞による細胞媒介攻撃を通して生じ得る。組織または細胞が、受容体に対して異種である場合、抗体と補体との相互作用とともに、受容体の細胞溶解性補体攻撃の集合による分子攻撃が優勢である。
【0042】
ジャケットは、予め決められたサイズまでの物質が眼の内部に通過することを可能にするが、それより大きい物質の通貨は妨げる。詳細には、周囲または周辺領域は、予め決められたサイズ範囲の孔または空隙を有し、その結果、デバイスが選択透過性であるように製造される。周囲のジャケットのMWCOは、コアに対する免疫攻撃を行うのに必要な物質の接近を妨げるのに十分に低く、さらに、受容体の眼に対するBAMの送達を可能にするのに十分に高くなければならない。好ましくは、本発明の微粒子化デバイスの生体適合性ジャケットのMWCOは、約1kD〜約150kDである。
【0043】
このデバイスのジャケットに関して本明細書で使用する場合、「生体適合性」という用語は、デバイスおよびその内容の両方を集合的に意味する。特に、この用語は、インプラントされた無傷の微粒子化デバイスおよびその内容が、身体の保護系の不利な影響を防止し、相当期間にわたって効能を維持する能力を意味する。本明細書で使用する場合、「保護系」という用語は、この媒体がインプラントされた個体の免疫系によって生じる可能性がある免疫攻撃のタイプ、並びにその他の拒絶機序、たとえば線維化反応、異物反応、および個体内の異物の存在によって誘発される可能性があるその他のタイプの炎症反応を意味する。免疫系の保護反応、または異物の線維化反応のほかに、「生体適合性」という用語は、本明細書で使用する場合、媒体またはその内容の望ましい効能を妨げると思われる特定の望ましくない細胞傷害性または組織的な作用は、媒体およびその内容によって生じないことを意味する。
【0044】
微粒子化デバイスの外面は、所望の部位におけるインプランテーションに特に適するように選択または設計することができる。たとえば、外面は、周囲組織の細胞による付着が望ましいかどうかに応じて、滑らかであるか、点描されているか、または粗くてよい。この形状または構成は、選択されたインプランテーション部位に特に適するように選択または設計することもできる。
【0045】
微粒子化デバイスの周囲または周辺領域の生体適合性は、要素の結合によって生じる。生体適合性、および持続的な機能性に重要なことは、デバイスの形態、疎水性、デバイス自体の表面における、またはデバイス自体から浸出する可能性がある望ましくない物質が存在しないことである。したがって、異物反応を誘発するブラシ表面、折り目、中間層、またはその他の形状もしくは構造は、防止される。さらに、デバイスを形成する材料は、望ましくない物質がデバイスの材料自体から浸出しないように十分に純粋である。さらに、デバイスの調製後、デバイスに付着するか、またはデバイスによって吸収され、その後、デバイスの生体適合性を損ない得る流体または物質(たとえば、血清)によるデバイスの外面の処理は回避される。
【0046】
第1に、デバイスのジャケットを形成する材料は、インプラントされた微粒子化デバイスの受容体の組織と適合し、こうした組織によって受容される能力に基づいて選択された物質である。受容体または隔離細胞に有害ではない物質が使用される。好ましい物質としては、ポリマー材料、つまり熱可塑性ポリマーが挙げられる。特に好ましい熱可塑性ポリマー物質は、適度に疎水性の物質、つまりBrandrup J.等、Polymer Handbook 3rd Ed.、John Wiley & Sons、ニューヨーク(1989年)に定義されているように、8〜15、より好ましくは9〜14(Joules/m1/2の可溶性パラメータを有する物質である。ポリマー物質は、有機溶剤中で可溶性であるように十分に低く、しかも分離して適切な膜を形成するのに十分に高い可溶性パラメータを有するように選択される。こうしたポリマー物質は、実質的に求核部分がなく、分解防止剤が存在しない場合でも、酸化剤および酵素に対する耐性がきわめて高くなければならない。特定の媒体に意図されるインビボでの滞留期間も考慮しなければならない:物質は、生理学的条件および応力が加わった時に、適切に安定する物質を選択しなければならない。インビボで長期間、たとえば1年または2年を超える期間にわたって滞留した場合でも十分に安定性のある多くの熱可塑性プラスチックは公知である。安定性のある材料の例としては、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(「PAN/PVC」または「熱可塑性プラスチック」),ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルジフルオリド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリイミド、および/またはセルロースが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0047】
デバイスの構成に使用される材料の選択は、引用により本明細書に援用されるDionneの国際公開第92/19195号に詳細に記載されている多くの要素によって決まる。簡潔に述べると、カプセルジャケットを製造するために、様々なポリマーおよびポリマーブレンドを使用することができる。デバイス、およびデバイス内の成長表面を形成するポリマー膜は、ポリアクリレート(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、セルロースアセテート、セルロース硝酸塩、ポリスルホン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/コ塩化ビニル)、並びにこれらの誘導体、コポリマー、および混合物を含んでよい。
【0048】
好ましい膜鋳込成形溶液は、水混和性溶剤のジメチルアセトアミド(DMACSO)中に溶解したポリスルホン、または水混和性溶剤のブチロラクトン中に溶解したポリエーテルスルホンを含む。この鋳込成形溶液は、完成膜の浸透性特性に影響を与える親水性または疎水性添加剤を任意に含むことができる。ポリスルホンまたはポリエーテルスルホンに好ましい親水性添加剤は、ポリビニルピロリドン(PVP)である。その他の適切なポリマーは、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリビニルジフルオリド(PVDF)、ポリエチレンオキシド、ポリオレフィン(たとえば、ポリイソブチレンもしくはポリプロピレン)、ポリアクリロニトリル/ポリ塩化ビニル(PAN/PVC)、および/またはセルロース誘導体(たとえば、セルロースアセテートもしくはセルロースブチレート)を含む。上記およびその他の適切なポリマーおよびコポリマーのための相溶性の水混和性溶剤は、米国特許第3,615,024号の教示に見られる。
【0049】
第2に、デバイスの生体適合性ジャケットを作成する際に使用される物質は、進出可能な発熱性、さもなければ有害な刺激性もしくは免疫原性の物質がないか、またはこうした有害物質を除去するために徹底的に精製される。その後、およびインプランテーション前のデバイスの製造および維持管理の際、デバイスまたはジャケットが、その生体適合性に悪影響を及ぼすと思われる物質によって不純化または汚染されるのを防止するため、細心の注意を払う。
【0050】
第3に、テクスチャを含む、デバイスの外側の構成は、インプランテーション後に、受容体と眼との最適な接触面を提供するように形成される。特定のデバイスの幾何学的形状は、異物の線維化反応を特に誘発することが分かっており、避けるべきである。したがって、デバイスは、ブラシ面または折り目などの中間層を有する構造を含むべきではない。一般に、同じかまたは隣接する媒体から対向する媒体の表面または縁部は、少なくとも1mm、好ましくは2mmを超えて、最も好ましくは5mmを超えて離れているべきである。好ましい実施態様は、外径約200〜350μm、長さ約0.5〜6mmを有する円筒を含む。好ましくは、本発明の微粒子化デバイスのコアは、0.5μl未満(たとえば、約0.3μl)の容量を有する。
【0051】
生体適合性微粒子化デバイスのジャケットは、インプラントされた媒体に対する局所的な炎症反応を減少させるか、もしくは阻止し、および/またはインプラントされた細胞または組織に適する局所的な環境を生成もしくは促進する物質を任意に含むことができる。たとえば、免疫反応の1つまたは複数の媒介物質に対する抗体を含むことができる。利用可能な、洗剤的に有用な抗体、たとえばリンフォカイン腫瘍壊死因子(TNF)、およびインターフェロン(IFN)に対する抗体は、マトリックス前駆体溶液中に含むことができる。同様に、抗炎症ステロイドを含むことができる。Christenson,L.等、J.Biomed.Mat.Res.,23,705−718ページ(1989年);Christenson,L.,Ph.D.の論文、Brown University、1989年を参照。この論文は、引用することにより全体を本明細書に援用する。あるいは、血管系炎症(毛細血管床の内部成長)を促進する物質を含むことができる。
【0052】
実施態様によっては、本発明の微粒子化デバイスのジャケットは免疫隔離性である。つまり、このジャケットは、デバイスのコア内の細胞を、デバイスインプラントされる個体の免疫系から保護する。このジャケットは、(1)個体の有害物質がコアに入るのを防止する、(2)個体と、コア中に存在し得る炎症性、抗原性、さもなければ有害な物質との接触を最小限にする、および(3)個体の免疫系の隔離部分と有害部分との免疫学的接触を防止するのに十分な空間的および物的障壁を設けることによって保護する。
【0053】
外側ジャケットは、限外濾過膜または微小孔性膜でよい。当業者は、限外濾過膜は約1〜約100ナノメートルの細孔サイズ範囲を有する膜であるが、微小孔性膜は約0.05〜約10ミクロンの範囲を有することを評価するであろう。この物的障壁の厚さは異なってよいが、常に、障壁の両側における細胞および/または物質間の直接接触を防止するのに十分な厚さであろう。この領域の厚さは、一般に5〜200ミクロンの範囲であり、10〜100ミクロンの厚さが好ましく、20〜50または20〜75ミクロンの厚さは特に好ましい。このデバイスの使用により防止または最小限にすることが可能な免疫攻撃のタイプとしては、マクロファージ、好中球、細胞免疫反応(たとえば、ナチュラルキラー細胞および抗体依存性T細胞介在性細胞溶解(ADCC)、並びに体液性応答(たとえば、抗体依存性補体媒介細胞溶解)が挙げられる。
【0054】
インプラントされたデバイスに対する受容体による免疫学的反応のタイプおよび程度は、コア内の隔離細胞に対する受容体の関係によって影響されるであろう。たとえば、コアが同系細胞を含む場合、受容体が、デバイス内の特定の細胞または組織に関する自己免疫を受けない限り、これらのコアは活発な免疫学的反応を生じないであろう。同系細胞または組織は、殆ど使用可能ではない。多くの場合、同種異系または異種細胞または組織(つまり、予想される受容体と同じ種の供与体、または予想される受容体と異なる種の供与体の)は使用可能と思われる。免疫隔離性デバイスは、付随して受容体を免疫反応抑制する必要がない状態で、同種異系または異種細胞または組織のインプランテーションを可能にする。免疫隔離性カプセルの使用は、一致しない細胞(異字体)の使用も可能にする。したがって、このデバイスは、従来の移植技術によって治療可能な個体より多くの個体を治療することを可能にする。
【0055】
異種移植組織に対する免疫反応のタイプおよび活力は、同系または同種異系組織を受容体内にインプラントした場合に生じる反応とは異なることが予想される。この拒絶反応は、主に、細胞媒介または補体媒介攻撃によって開始し得る。媒体のコアからのIgGの排除は、免疫保護の試金石ではなく、なぜなら、殆どの場合、IgG単独では、標的細胞または組織の細胞溶解を生じるのに不十分だからである。免疫隔離性微粒子化デバイスを使用すると、免疫攻撃の介在に必要な臨界物質が、免疫隔離性カプセルから排除されるなら、必要な高分子量生成物を供給し、高分子量の物質に関連する代謝機能を提供することが可能である。これらの物質は、補体攻撃複合体の構成要素、Clqを含むか、または食細胞または細胞傷害性細胞を含んでよい。免疫隔離性カプセルを使用すると、これらの有害物質と隔離細胞との間に保護障壁を提供する。
【0056】
以前のデバイスでは、コアおよびジャケットは、2つの方法の1つで、逆帯電ポリマー間のイオン結合によって結合された。たとえば、Rhaのデバイス(米国特許第4,744,933号)は、帯電した内側コア材料、および反対電荷の外側ジャケット材料から構成された。同様にLimおよびSunのデバイス(米国特許第4,352,833号および第4,409,331号)は、負に帯電したコアを負に帯電したジャケット材料と結合するため、正に帯電したポリエルリジン(PLL)の中間層を含んでいた。PLL層の排除は、PLLは宿主において線維形成性であると考えられるという点で有利である。PLLは、ある細胞に対しては望ましくない成長効果も有する場合がある。また、本発明のデバイスのジャケットは、選択透過性が、PLLで製造されたデバイスより良好であるように調節することができる。
【0057】
本発明の微粒子化デバイスは、(1)デバイスの外側層から細胞を完全に排除する、および(2)デバイスの外側層の厚さの点で、Rha,Lim、およびSun(Rha,C.K.等の米国特許第4,744,933号;Sun,A.M.,Methods in Enzymology 137,575−579ページ(1988年))のマイクロカプセルと区別される。この2つの特性は、本発明のカプセル化細胞の免疫隔離に役立つ。Rhaのマイクロカプセルは、イオンコア溶液と、反対電荷のイオンポリマーとのイオン相互作用によって形成される。LimおよびSunのマイクロカプセルは、ポリエルリジン(PLL)の中間層を介したヒドロゲルジャケットとコアとの結合によって形成された。LimおよびSunのマイクロカプセルでは、中間のPLL層は、カプセル化細胞の一部がこの層を貫通して越えないことを保証するには、十分な厚さがなかった。PLL層を貫通する細胞は、免疫反応の潜在的な標的である。
【0058】
さらに、Rha、Lim、およびSunのマイクロカプセルでは、内側物質の化学的同一性は、外側層、つまりPLLの選択によって決まるため、これらのカプセルの内側における成長条件を変更する能力は大幅に制限される。多くの場合、特定の細胞タイプを良好にカプセル化するために満たす必要がある特定の成長条件があるため、これらのカプセルは、一般に、有用性が限られるか、または特定の内部物質に適する外側層を確立するには、相当の実験が必要である。
【0059】
したがって、Rha、Lim、およびSunのマイクロカプセルは、生体不適合性、線維成長、および媒体の劣化の点で、本発明の微粒子化デバイスよりその可能性がおおきい。多様な生物系は、マイクロカプセルの完全性に必要なイオン結合と相互作用し、イオン結合を破壊することが周知されている。PLLは、カプセルに対する望ましくない組織反応を誘発する。特に、これは線維化反応である。したがって、外側層に何らかの破壊がある場合、外側層が十分に厚くない場合、PLL層が劣化し始める場合、および/またはカプセル化細胞が、外側層内の外面付近に閉じ込められる場合、マイクロカプセルは線維化反応をトリガする可能性がある。「線維形成性」という用語は、本明細書では、インプランテーション部位における繊維化反応を誘発するカプセルまたは材料に関して使用される。
【0060】
さらに、本発明の微粒子化デバイスは、5×l0〜90×l0の細胞を含み、これらの細胞を生存可能な状態で維持する微粒子化デバイスの能力の点でも、マイクロカプセルと区別される(上記のSun,A.M.;Rhaの米国特許第4,744,933号参照)。対照的に、先行技術のマイクロカプセルは、一般に、カプセル当たり最大約500個の細胞を含む。
【0061】
本明細書に記載するデバイスの場合、少なくとも一次元では、隔離細胞の生存能力および機能を維持するために、コア内の何れかの隔離細胞が受容体の周囲の眼の組織に対して十分に近くに近接しなければならない。しかし、デバイスの形成に使用される材料の拡散の制限は、あらゆる場合に、その配置の制約を完全には規定しない。基本的な媒体の拡散特性、または栄養素もしくは酸素運搬特性を変更または強化する特定の添加剤を使用することができる。たとえば、コアの内部環境は、酸素飽和ペルフルオロカーボンで補足することが可能であり、その結果、血液で運搬される酸素と直接接触する必要性が減少する。したがって、隔離細胞または組織は、生存能力を維持することが可能であり、一方、アンジオテンシンの勾配が媒体から周囲組織内に放出され、毛細血管の内部成長を刺激する。
ペルフルオロカーボンの使用に関する参考文献および方法は、Faithful,N.S.Anaesthesia,42,234−242ページ(1987年)およびNASA Tech Briefs MSC−21480,U.S.Govt.Printing Office,Washington,D.C.20402に記載されており、これは、引用することにより全体を本明細書に援用する。あるいは、PC12細胞などのクローン細胞株の場合、遺伝子組換えされたヘモグロビン配列は細胞株内に導入されて、より優れた酸素貯蔵を生成し得る。NPO−17517 NASA Tech Briefs,15,54ページ参照。
【0062】
デバイスのジャケットの厚さは、デバイスの存在に対する患者の免疫反応を防止するのに十分でなければならない。そのため、デバイスは、最小厚さ1μm以上を有し、細胞がないことが好ましい。
【0063】
さらに、微粒子化デバイス内には、強化構造要素を組み込むことが可能である。これらの構造要素は、不浸透性であり、デバイスを受容体の眼の組織に拘束または接合可能であるように製造することができる。特定の状況では、これらの要素は、ジャケットを確実に封止し(たとえば、円筒体の端部に)、それによってコア材料(たとえば、成形熱可塑性プラスチックのクリップ)の隔離を完了する。多くの場合、これらの構造要素は、選択透過性ジャケットの相当の領域を閉塞させないことが望ましい。
【0064】
足場は、カプセル化細胞の微環境を画定し、コア内に細胞が良好に分散した状態を維持する。特定のデバイスの最適な内部足場は、使用される細胞タイプに大幅に依存する。足場がない場合、接着細胞が凝集して集団を形成する。
【0065】
糸またはメッシュの内部足場を形成するために使用されるフィラメントは、適切な生体適合性、実質的に非分解性の材料から成形される。(引用により本明細書に援用される米国特許第6,303,136号および第6,627,422号参照)。糸または織られたメッシュに有用な材料としては、ファイバ状に成形することが可能な任意の生体適合性ポリマー、たとえばアクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテステル、または天然繊維、たとえば綿、絹、キチン、もしくは炭素が挙げられる。任意の適切な熱可塑性プラスチックポリマー、熱可塑性プラスチックエラストマー、またはファイバ成形特性を有するその他の合成もしくは天然材料は、既製の中空ファイバ膜、または平坦な膜シートから成形される中空円筒体内に挿入してよい。たとえば、縫合糸材料に使用されるか、または血管移植片の製造に使用される絹、PET、またはナイロンフィラメントは、このタイプの用途に非常に役立つ。他の実施態様では、金属リボンまたはワイヤを使用して織るとよい。これらのフィラメント材料は各々、十分に調製された表面、および幾何学的特性を有し、大量生産することができ、インプラント用途の長い歴史を有する。特定の実施態様では、フィラメントは、細胞の突起が付着し得る粗い表面および「取っ手」を形成するために「テクスチャ加工」してよい。フィラメントには、細胞外マトリックス分子を塗布するか、または表面処理(たとえば、プラズマ照射)を施して、フィラメントに対する細胞の付着を強化するとよい。
【0066】
実施態様によっては、好ましくは無作為ではない単方向の向きに組織化されたフィラメントは、束状に捩られて、様々な厚さおよび空隙容量の糸を形成する。空隙容量は、フィラメント間に存在する空間として定義される。糸内の空隙容量は、20〜95%の間で異なってよいが、好ましくは50〜95%である。フィラメント間の好ましい空隙空間は、足場に、糸の長さに沿って細胞を接種し、細胞がフィラメントに付着することを可能にするのに十分な20〜200μmである。糸と比較したフィラメントの好ましい直径は、5〜100μmである。これらのフィラメントは、糸を構成する束状に捩ることができるように、十分な機械的強度がなければならない。フィラメントの断面形状は様々でよいが、円形、矩形、楕円形、三角形、および星形断面が好ましい。
【0067】
あるいは、フィラメントまたは糸は、メッシュ状に織ることができる。このメッシュは、ボビンに類似する支持体を使用して編組機上で製造することができ、このボビンは、モノフィラメントまたはマルチフィラメントを含み、織る際に糸またはフィラメントをメッシュ状に供給するのに役立つ。支持体の数は調節可能であり、同じフィラメント、または組成および構造が異なるフィラメントの組合せが巻かれる。ピックカウントによって画定される編組角度は、支持体の回転速度、および製造速度によって調節される。一実施態様では、マンドレルを使用して、メッシュの中空管を製造する。特定の実施態様では、編組は単一層として構成され、他の実施態様では多層構造である。編組の引張強度は、個々のフィラメントの引張強度の線形和である。
【0068】
実施態様によっては、管状編組が構成される。この編組は、中空ファイバ膜状に挿入され、その上に細胞が接種される。あるいは、細胞は、メッシュ管の壁部に浸透し、細胞の付着に使用可能な表面積を最大限にすることが可能である。こうした細胞の浸透が生じると、編組は、細胞の足場マトリックス、およびデバイスの内側支持の両方として役立つ。編組支持デバイスの引張強度の増加は、別の方法より著しく大きい。
【0069】
本発明の微粒子化デバイスは、インプランテーション後に完全に回収するのに十分なサイズおよび耐久性がある。本発明の好ましい微粒子化デバイスは、約0.5μl未満(たとえば、約0.3μl)という好ましい最小容量のコアを有する。
【0070】
好ましくは、微粒子化デバイスは、インプラント時にデバイスを所定の位置に維持し、回収するのに役立つテザーを有する。こうしたテザーは、カプセルを所定の場所に固定するように構成された適切な形状を有してよい。たとえば、縫合は、ループ、ディスク、または縫合糸でよい。実施態様によっては、テザーは、はと目状に賦形されるため、縫合糸は、テザーを(ひいては、デバイスを)強膜、またはその他の適切な眼の構造に固定するために使用され得る。他の実施態様では、テザーは、一方の端部がカプセルと連続し、予め糸を通された縫合針を他方端部に形成する。テザーは、形状記憶金属、および/または先行技術で公知のその他の適切な医療グレードの材料から構成してよい。
【0071】
抗体を分泌するように遺伝子組換えされた細胞も、コア内に含んでよい。少なくとも1つの追加のBAMは、微粒子化デバイスから眼に送達することが可能である。たとえば、少なくとも1つのBAMは、細胞性または非細胞性供給源から提供することが可能である。少なくとも1つの追加のBAMを非細胞性供給源から提供する場合、この追加のBAMは、細胞系の1つまたは複数の構成要素中にカプセル化するか、構成要素内部に分散させるか、またはこうした構成要素に付着させてよい。たとえば、最小1つの追加の生物活性分子は、核酸、核酸断片、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド摸倣物、炭水化物、脂質、有機分子、無機分子、治療薬、またはこれらの任意の組合せでよい。特に、治療薬は、抗血管新生薬剤、ステロイド性非ステロイド性抗炎症剤、細胞分裂抑制薬、抗癌剤、抗寄生虫剤、眼圧低下剤、ペプチド薬、および眼科用途に認証された任意のその他の生物活性分子薬剤でよい。
【0072】
この発明は、微粒子化デバイスを製造する方法にも関する。微粒子化デバイスは、先行技術で公知の任意の適切な方法で形成してよい。(たとえば、米国特許第6,361,771号、第5,639,275号、第5,653,975号、第4,892,538号、第5,156,844号、第5,283,138号、および第5,550,050号参照。これらの特許は、引用することにより本明細書に援用する)。
【0073】
カプセル化細胞療法は、宿主内にインプランテーションする前に、半透過性生体適合性材料で細胞を囲むことによって、受容体宿主の免疫系から細胞を隔離するという概念に基づいている。本発明は、ARPE−19細胞が免疫隔離性カプセル内にカプセル化される微粒子化デバイスを含み、この微粒子化デバイスは、受容体宿主中にインプランテーションされた後、デバイスのコア内のARPE−19細胞に対する宿主の免疫系の悪影響を最小限にする。ARPE−19細胞は、微小孔性膜によって形成されたインプラント可能なポリマーカプセル内に隔離することによって、宿主から免疫隔離される。この方法は、宿主と、インプラントされた組織との間の細胞対細胞の接触を防止し、それによって直接的な提示による抗原認識を排除する。
【0074】
使用される膜は、その分子量に基づいて、抗体および補体などの分子の拡散を制御するように調整することも可能である(Lysaght等、56 J.Cell Biochem.196(1996年),Colton,14 Trends Biotechnol.158(1996年)参照)。カプセル化技術を使用すると、細胞は、免疫反応抑制薬剤を使用するかどうかに関わらず、免疫拒絶がない状態で宿主中に移植することが可能である。カプセルは、宿主中にインプランテーション後、カプセルの拒絶反応を生じるか、または劣化などによって動作不能になるのに十分な不利な宿主反応を誘発しない生体適合性材料から製造することが可能である。この生体適合性材料は、宿主の免疫系の成分などの大分子に対しては比較的不浸透性であるが、インスリン、成長因子、および栄養素などの小分子に対しては浸透性であり、代謝廃棄物の除去を可能にする。多様な生体適合性材料が、本発明の構成によって成長因子の送達に適する。様々な外面形態、および構造特性を有する多くの生体適合性材料が公知である。
【0075】
好ましくは、本発明のカプセルは、引用により援用されるPCT国際特許出願公開第92/19195号明細書もしくは第95/05452号明細書、または引用により援用される米国特許第5,639,275号、第5,653,975号、第4,892,538号、第5,156,844号、第5,283,187号、もしくは第5,550,050号に記載されているカプセルに類似する。生体適合性材料の成分は、周囲の半透膜、および内部の細胞支持足場材料を含むとよい。形質転換細胞は、好ましくは足場材料上に接種され、選択透過性膜によってカプセル化される。糸状細胞を支持する足場は、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンポリアセトニトリル,ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン,ポリブテステル、絹、綿、キチン、炭素、または生体適合性金属から成る群から選択される任意の生体適合性材料から製造するとよい。また、接着ファイバ構造は、細胞インプランテーションに使用することが可能である。(たとえば、引用により援用される米国特許第5,512,600号参照)。生分解性ポリマーとしては、ポリ(乳酸)PLA、ポリ(乳酸−コ−グリコール酸)PLGA、およびポリ(グリコール酸)PGA、およびこれらと等価なものをから成るポリマーが挙げられる。発泡体の足場は、移植細胞が付着し得る表面を提供するために使用されていた(引用により援用されるPCT国際特許出願第98/05304号)。織られたメッシュ管は、血管移植片として使用されていた(引用により援用されるPCT国際特許出願公開第99/52573号明細書)。さらに、コアは、ヒドロゲルから形成されて、細胞の位置を安定させる固定化マトリックスから構成することが可能である。ヒドロゲルは、実質的に水分から成るゲルの形態の架橋親水性ポリマーの3次元網である。
【0076】
様々なポリマーおよびポリマーブレンドは、周囲の半透膜を製造するために使用することができ、たとえば、ポリアクリレート(アクリルコポリマーを含む)、ポリビニリデン、ポリ塩化ビニルコポリマー、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアミド、セルロースアセテート、セルロース硝酸塩、ポリスルホン(ポリエーテルスルホンを含む)、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、ポリ(アクリロニトリル/コ塩化ビニル)、並びにこれらの誘導体、コポリマー、および混合物が挙げられる。好ましくは、周囲の半透膜は生体適合性の半透過性中空ファイバ膜である。こうした膜、および膜を製造する方法は、引用により援用される米国特許第5,284,761号、および第5,158,881号に記載されている。周囲の半透膜は、たとえば、引用により援用される米国特許第4,976,859号、または米国特許第4,968,733号に記載されているようなポリエーテルスルホン中空ファイバから形成される。代案の囲半透膜材料はポリスルホンである。
【0077】
カプセルは、生物学的活性を維持し、生成物または作用の送達のための接近手段を提供するのに適する任意の構成でよく、たとえば、円筒形、矩形、ディスク形、眼帯状、卵形、星形、または球がある。さらに、カプセルは、メッシュ状または入れ子状構造として渦巻き状に巻くか、または巻き付けることができる。カプセルをインプラント後に回収する場合、受容体宿主の血管内で移動するのに十分に小さい球状カプセルなど、インプランテーション部位からのカプセルの移動を生じる傾向がある構造は望ましくない。特定の形状、たとえば矩形、眼帯、ディスク、円筒、および平坦なシートは、構造上の完全性が比較的大きく、回収が望ましい場合に好ましい。
【0078】
熱可塑性プラスチックまたはポリマー膜のジャケットを有するデバイスが望ましい場合、細孔のサイズ範囲および分布は、前駆物質溶液(鋳込成形溶液)の固体成分、水混和性溶剤の化学組成を変更するか、または米国特許第3,615,024号に示唆されているように、親水性または疎水性添加剤を鋳込成形溶液に任意に含むことによって決定することができる。細孔サイズは、凝集剤および/または槽の疎水性を変更することによって調節してもよい。
【0079】
一般に、鋳込成形溶液は、溶解した不水溶性ポリマーまたはコポリマーを含む極性有機溶剤を含む。このポリマーまたはコポリマーは、溶剤混和性水相と接触すると沈殿し、接触面の部位に選択透過性膜を形成する。膜内の細孔サイズは、溶剤相中における水相の拡散率によって決まり、親水性または疎水性添加剤は、拡散率を変更することによって細孔サイズに影響を与える。水相が、溶剤中にさらに拡散すると、残りのポリマーまたはコポリマーが沈殿して、完成デバイスに機械的強度を与える索状型支持体を形成する。
【0080】
デバイスの外面は、同様に、溶解ポリマーまたはコポリマーが沈殿する条件によって決定される(つまり、空気に露出されると、開放した索状型または海綿状外皮を生成し、水性沈殿槽中に浸漬されると、滑らかな選択透過性ニ分子層膜が生じるか、または水蒸気が飽和した空気に露出されると、中間構造が生じる)。
【0081】
デバイス表面のテクスチャは、一部には、押出しノズルが槽上に配置されるか、または槽内に浸漬されるかによって決まり、ノズルが槽の表面上に配置される場合、PAN/PVCの粗面化された外皮が形成され、ノズルが槽内に浸漬される場合は、滑らかな外面が形成される。
【0082】
周囲または周辺のマトリックスまたは膜は、コアを形成する材料で予備成形されるか、またはこうした材料を充填され(たとえば、シリンジを使用する)、その後、コア材料が完全に封入されるように封止される。次に、デバイスは、マトリックス前駆物質がコア中に存在する場合、コアマトリックスの形成を生じる条件に暴露することができる。
【0083】
デバイスの封止に適する任意の方法を使用してよく、たとえば、ポリマー接着剤の使用、および/またはクリンプ加工、節止め、および熱融着が挙げられる。これらの封止技術は、先行技術で公知である。さらに、任意の適切な「乾燥」封止方法を使用することも可能である。このような方法では、細胞を含む溶液が導入される実質的に無孔性の取付けが行われる。充填後、デバイスは封止される。こうした方法は、たとえば、米国特許第5,653,688号、第5,713,887号、第5,738,673号、第6,653,687号、第5,932,460号、および第6,123,700号に記載されており、これらの特許は、引用することにより本明細書に援用する。
【0084】
本発明のデバイスは、完全分化、足場依存性、胎児もしくは新生児、または形質転換、足場非依存性細胞もしくは組織など、多様な細胞または組織のタイプのインプランテーションに備えることができる。隔離される細胞は、供与体(つまり、成人、新生児、および胎児の細胞もしくは組織を含む一次細胞または組織)、から作製されるか、またはインビトロで再現する細胞(つまり、遺伝子組換え細胞を含む不死化細胞もしくは細胞株)から作製される。何れの場合も、効果的なレベルの必要な生成物を生成するか、または効果的なレベルの必要な代謝機能を供給するのに十分な量の細胞は、一般に減菌状態で作製され、隔離前に、適切に(たとえば、Hankの塩類などの平衡塩類溶液、またはHamのF12などの培養液中で)維持される。
【0085】
本発明の微粒子化ECTデバイスは、栄養素が患者から細胞内に容易に到達することを可能にするか、または患者のタンパク質が細胞内に入り、代謝機能を提供するように細胞が作用するように、デバイスの中心と、ジャケットの最も近い部分との間の距離を減少させるのに役立つ形状である。この点で、円筒状などの非球形が好ましい。
【0086】
デバイスのコア内に配置される細胞の数、または組織の量(つまり、装填密度)に影響する4つの重要な要素は、(1)デバイスのサイズおよび幾何学的形状、(2)デバイス内の有糸分裂活性、(3)コアの作製および/または装填に関する粘度要件、並びに(4)予備インプランテーション検定、および適性要件である。
【0087】
これらの第1の要素(デバイスのサイズおよび幾何学的形状)に関して、細胞内への重要な栄養素および代謝要件の拡散、並びに細胞から離れた代謝産物の拡散は、細胞の持続低名生存能力に重要である。ARPE−19細胞などのRPE細胞の場合、隣接する細胞は、死にかかっている細胞を食菌し、残骸をエネルギー源とすることが可能である。
【0088】
デバイス中拡散する物質が満たす代謝要件には、酸素要件がある。特定の細胞の酸素要件は、選択される細胞ごとに決定しなければならない。たとえば、Wilson D.F.等、J.Biol.Chem.,263,2712−2718ページ,(1988年)に記載されているMethod and references for determination of oxygen metabolism(酸素代謝の決定に関する方法および基準)参照。
【0089】
第2の要素(細胞分裂)に関して、選択された細胞が、デバイス内で活発に分裂することが予想される場合、細胞は、利用可能な空間を充填するか、または接触阻止などの減少が、さらに分裂することを制限するまで分裂し続ける。複製細胞の場合、デバイスの幾何学的形状およびサイズは、デバイスコアの完全な充填が、拡散の制限によって重要な栄養素の欠乏を生じないように選択されるであろう。
【0090】
第3の要素(コア材料の粘度)に関して、デバイス容量の最大70%を占める密度の細胞が生存可能だが、この濃度の細胞溶液は著しい粘度を有するであろう。非常に粘性の溶液中の細胞をデバイス中に導入することは、きわめて困難である。一般に、2つのステップおよび同時押出し方略では、30%を超える細胞層点密度は殆ど有用ではなく、一般に、最適な装填密度は20%以下であろう。たとえば、組織の断片の場合、内部細胞の生存能力を維持するには、上記と同じ一般的なガイドラインに従うことが重要であり、組織の断片は、直径が250ミクロンを超えるべきではなく、内部細胞は、細胞と最も近い拡散表面との間に、15個未満、好ましくは10個未満の細胞を有する。
【0091】
最後に、第4の要素(予備インプランテーション、および検定要件)に関して、多くの場合、デバイスの用意とインプランテーションとの間には、一定量の時間が必要である。たとえば、デバイスをその生物学的活性の点で適格とすることは、重要である場合がある。したがって、有糸分裂的に活性の細胞の場合、好ましい装填密度は、適性検定を実行するために存在しなければならない。細胞の数も考慮するであろう。
【0092】
殆どの場合、インビボでのインプランテーションの前に、インビトロ検定を使用して、デバイス内のBAMの効果を確立することは重要であろう。デバイスは、細胞ごと、または単位体積基準で媒体の有効性を判断することを可能にするために、モデルシステムを使用して構成し、分析することができる。
【0093】
デバイスの装填、およびデバイスの友好性の判断に関するこれらのガイドラインに従って、次に、特定の用途に必要な生物学的活性の量によって、インプランテーション用の実際のデバイスサイズを決定する。デバイスの数、デバイスサイズは、インプランテーションに治療効果を生じるのに十分であるべきであり、特定の用途に必要な生物学的活性の量によって決定される。治療剤を放出する分泌細胞の場合、先行技術で公知の標準投与量の考察および基準を使用して、必要な分泌物質の量を決定する。考慮すべき要素としては、受容体のサイズおよび重量;細胞の生産性、または機能レベル;および適切な場合、機能が置き換えられるか、または増大される器官または組織の通常の生産性、または代謝活性。また、細胞の断片は、免疫分離およびインプランテーション手順後に生存し得ないことを考慮することも重要である。さらに、受容体が、インプラントの有効性を妨げる可能性がある事前条件を有するかどうかも、考慮しなければならない。何千個もの細胞(たとえば、約5×l0〜約90×l0の細胞)を含む本発明のデバイスは、容易に製造することができる。
【0094】
本明細書に記載されている方法による多くの病状の治療は、適切な薬用量を供給するために、1つの眼に1つのみ、あるいは最大でも50個未満のインプラントされた微粒子化デバイスを必要とする。治療用の投与量は、患者一人の片目当たり1日に約0.1pg〜1000ngでよい(たとえば、患者一人の片目当たり1日に0.1pg〜500ng;患者一人の片目当たり1日に0.1pg〜250ng、0.1pg〜100ng、0.1pg〜50ng、0.1pg〜25ng、0.1pg〜10ng、または0.1pg〜5ng)。本発明の各々のデバイスは、細胞のタイプに応じて個体または集合形式で、約1,000〜約90,000個の細胞を格納することができる。
【0095】
本発明の方法によると、他の分子は、微粒子化デバイスから同時に送達し得る。たとえば、栄養素を抗血管新生因子と一緒に送達することが、好ましい場合がある。
【0096】
同時送達は、多くの方法で行うことが可能である。第1に、細胞は、記述されている分子を符号化する遺伝子を含む別個の構造でトランスフェクトされ得る。第2に、細胞は、2つ以上の遺伝子、および必要な対照要素を含む単一構造でトランスフェクトされ得る。第3に、2つ以上の別個に作られた細胞株を同時にカプセル化することが可能であるか、または複数のデバイスを対象部位にインプラントすることが可能である。
【0097】
複数の転写単位からの発現に対して、単一の転写による複数の遺伝子発現を使用することが可能である。たとえば、Macejak,Nature,353,90−94ページ(1991年);国際公開第94/24870号;Mountford and Smith,Trends Genet.,11,179−84ページ(1995年);Dirks等、Gene,128,247−49ページ(1993年);Martinez−Salas等、J.Virology,67,3748−55ページ(1993年)、およびMountford等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,91,4303−07ページ(1994年)参照。
【0098】
適応症によっては、BAMを眼の内部の2つの異なる部位に同時に送達することが好ましい場合がある。たとえば、神経栄養因子を硝子体に送達して、神経網膜(RPEまでの神経節細胞)に供給し、テノン嚢下の空間を介して抗血管新生因子を送達し、脈絡膜血管系に供給する。
【0099】
さらに、本発明の別の実施態様は、非細胞性供給源からのBAM、および非細胞性供給源からのBAMと賦形剤との混合物を眼の領域に同時に送達することに関し、非細胞性供給源からのBAMは、カプセル化されるか、分散されるか、またはデバイスの構成要素に付着され、こうした構成要素としては、(a)封止剤、(b)足場、(c)ジャケット膜、(d)テザーのアンカー、および/または(e)コア培地が挙げられるが、これらだけに限らない。この実施態様では、非細胞性供給源からのBAMの同時送達は、細胞性供給源からのBAMと同じデバイスから行ってよい。あるいは、2つ以上のカプセル化細胞系を使用することが可能である。非細胞性供給源からのBAMは、治療薬、たとえばステロイド性および非ステロイド性抗炎症剤、細胞分裂抑制薬、抗癌剤、抗寄生虫剤、眼圧低下剤、ペプチド薬、および眼科用途に認証されたその他の生物活性分子を含むことができる。適切な賦形剤としては、任意の非分解性または生分解性ポリマー、ヒドロゲル、溶解性エンハンサ、疎水性分子、タンパク質、塩、または処方を認証されたその他の錯化剤が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0100】
非細胞性の投与量は、治療薬の濃度、および/または片目当たりのデバイス数を変更する、および/またはカプセル化賦形剤の組成を変更するなど、先行技術で公知の任意の適切な方法で変更することができる。細胞性の投与量は、(1)デバイス当たりの細胞数、(2)片目当たりのデバイス数、または(3)細胞当たりのBAM生成レベルを変更することによって変更することができる。細胞性の生成は、たとえば、形質導入された細胞中のBAMの遺伝子のコピー数、またはBAMの発現を推進するプロモータの効果を変更することによって変更することができる。非細胞性供給源からの適切な投与量は、1日当たり約1pg〜約1000ngの範囲でよい。
【0101】
本発明は、治療体系が経過する際に、様々な細胞を使用することも意図している。たとえば、患者は、第1の細胞タイプを含むカプセルデバイスをインプラントされ得る。その後、患者が、その細胞タイプに対して免疫反応を発現した場合、カプセルを回収するか、またはエクスプラントして、第2の細胞タイプを含む第2カプセルをインプラントすることができる。この方法では、患者が、カプセル化細胞タイプの1つに免疫反応を発現する場合でも、治療分子の連続的な提供が可能である。
【0102】
本発明の方法およびデバイスは、高分子量の生成物を含む広範な細胞性生成物を、それらを必要とする個体に送達するか、および/または有害物質を除去するなど、必要な代謝機能を個体に提供するのに有用である。このデバイスを使用して送達可能な生成物としては、様々な器官または組織が通常分泌する多様なBAMを含む。あるいは、カプセル化細胞は、1つまたは複数のBAMを分泌するように遺伝子組換えすることができる。
【0103】
本来の供与体組織を使用して提供することが困難な多くの細胞性生成物は、不死化細胞または細胞株を使用して提供することができる。不死化細胞は、不定数の複製が可能だが、合流後に接触阻止を呈し、腫瘍発生しない細胞である。不死化細胞株の一例は、ラットの褐色細胞腫細胞株PC12である。形質転換細胞または細胞株は、同様に使用することができる。形質転換細胞は、合流後に接触阻止を呈することがなく、同種異系宿主中にインプラントされた時に腫瘍を形成するという点で、単なる不死化細胞とは異なる。不死化は、希少または有名な脆弱な細胞または組織のタイプを、選ばれた生成物または代謝機能の長期間の送達のために使用することを可能にすることができる。細胞の不死化の適切な技術は、Land H.等、Nature 304,596−602ページ(1983年)およびCepko,C.L.,Neuron 1,345−353ページ(1988年)に記載されている。候補となる細胞株としては、たとえば、NTT細胞などのインスリンを分泌する遺伝子組換えされたβ細胞株(Hamaguchi,K.等、Diabetes 40,842ページ(1991年)参照)、RIN細胞(Chick,W.L.等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA,74,628−632ページ(1977年)参照)、ATT細胞(Hughes,S.D.等,Proc.Natl.Acad.Sci.SA,89,688−692ページ(1992年)参照)、CHO細胞(Matsumoto,M.等,1990,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,87,9133−9137ページ(1990年)参照)、βTC−3細胞(TaI,M.等,1992,MoI.Cell Biol.,12,422−432ページ(1992年)参照)、およびARPE−19細胞が挙げられる。さらに、組換え型細胞または細胞株は、当業者が周知している多様な技術を使用して、新しい生成物または効能、およびこれらの組合せを提供するようにエンジニアリングすることができる。
【0104】
多くの生物活性分子を符号化する遺伝子がクローン化され、そのヌクレオチド配列が公表されてきた。こうした多くの遺伝子は、American Type Culture Collection (ATCC)などのデポジトリ、または様々な商業的ソースから公式に利用可能である。本発明に有用で、公式に利用できない生物活性分子符号化遺伝子は、PCR増幅、オリゴヌクレオチドプローブを使ってスクリーニングするゲノムおよびcDNAライブラリなどの標準の組換え型DNA法を使用して入手し得る。生物活性分子を符号化する公知の遺伝子はどれも、本発明に使用し得る。たとえば、米国特許第5,049,493号;Gage 等の米国特許第5,082,670号;およびGenentechの米国特許第5,167,762号参照。
【0105】
対象遺伝子(つまり、適切な生物活性分子を符号化する遺伝子)は、標準の技術を使用して、適切な発現ベクトルのクローン化部位に挿入することができる。複数の遺伝子を適切な発現ベクトルに挿入し得ることは評価されるであろう。これらの技術は、当業者にとって十分に公知である。
【0106】
対象遺伝子を含む発現ベクトルは、次に、本発明の方法に使用される細胞株をトランスフェクトするために使用し得る。リン酸カルシウム共沈、DEAEデキストラントランスフェクテーション、または電気穿孔法などの標準のトランスフェクト技術を使用してよい。商業的に使用可能な哺乳類トランスフェクテーションキットは、たとえばStratageneから調達し得る。
【0107】
多様な宿主/発現ベクトルの組合せは、対象生物活性分子を符号化する遺伝子を発現するために使用し得る。長期にわたる安定したインビボ発現は、発現ベクトル(つまり、組換え型分子)を使用して行われ、生物活性分子符号化遺伝子は、哺乳類の宿主にインビボでインプラントされた後、下方制御が行われないプロモータに動作可能に結合される。したがって、こうした発現ベクトルは、一般に、レトロウィルスプロモータを含まないであろう。適切なプロモータとしては、たとえば、SV40またはアデノウィルスの初期および後期プロモータ、および遺伝子発現を制御できない公知の非レトロウィルスプロモータが挙げられる。
【0108】
有用な発現ベクトルは、たとえば、染色体、非染色体、および合成DNA配列の断片、たとえばSV40の様々な公知の誘導体、および公知のプラスミド、たとえばpBR322、pCRl、pMB9、pUC、pBlue Script(商標)およびこれらの誘導体を含む大腸菌からのpUC,pBlue Script(商標)プラスミドから構成し得る。ジェネティシン(G418)またはハイグロマイシン薬剤選択遺伝子を含む発現ベクトル(Southern,P.J.(1981),In vitro,18,315ページ,Southern,P.J.およびBerg,P.(1982年),J.MoI.Appl.Genet.,1,327ページ参照)も、本発明の実施に有用である。これらのベクトルは、様々な異なるエンハンサ/プロモータ領域を使用して、対象生物学的遺伝子(たとえば、NGF)、および/またはG418またはハイグロマイシンBなどの毒素を含む選択肢に対して耐性を与える遺伝子の両方の発現を促進することができる。G418耐性遺伝子は、培地に添加されるG418(100〜500μg/μl)を酵素的に活性化するアミノグコシドホスフォトランスファーゼ(APH)コード化する。APH遺伝子を発現するこれらの細胞のみが、薬剤の選択後に生存し、一般に、第2の生物学的遺伝子の発現も生じさせる。ハイグロマイシンBホスフォトランスファーゼ(HPH)遺伝子は、特にハイグロマイシン毒素を変更する酵素コード化して不活性化する。ハイグロマイシンBホスフォトランスファーゼ遺伝子と同じプラスミドを使って同時にトランスフェクトされるか、または同じプラスミド上に含まれる遺伝子は、好ましくは、50〜200μg/mlの濃度のハイグロマイシンBの存在下で優先的に発現される。
【0109】
様々な異なる哺乳類のプロモータは、G418およびハイグロマイシンBの遺伝子、および/または対象BAM遺伝子の発現を導くために使用することができる。これらのプロモータとしては、hDBH(ヒトドーパミンBヒドロキシラーゼ)のプロモータ(Mercer等,Neuron,7,703−716ページ,(1991年)参照)、hTH(ヒトチロシンヒドロキシラーゼ)(Kaneda等,Neuron,6,583−594ページ,(1991年)参照)、hPNMT(ヒトフェニルエタノールアミンN−メチルトランスフェラーゼ)(Baetge等,pNAS,85,3648−3652ページ,(1988年)参照)、mGFAP(マウスグリア線維酸性タンパク質)(Besnard等,J.Biol. Chem.,266,18877−18883ページ,(1991年)参照)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)、mNF−L(マウスの神経フィラメントの軽鎖サブユニット)(Nakahira等,J.Biol.Chem.,265,19786−19791ページ,(1990年)参照)、hPo(ヒトPo、末梢神経系の主要ミエリン糖タンパク質をコード化する遺伝子のプロモータ)(Lemke等,Neuron,1,73−83ページ,(1988年)参照)、mMT、rNSE(ラットの神経細胞に特異的なエノラーゼ)(Sakimura等,Gene,60,103−113ページ,(1987年)参照)などが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0110】
使用可能な発現ベクトルの例としては、市販のpRC/CMV、pRC/RSV、およびpCDNA1N EO(InVitrogen)が挙げられるが、これらだけに限らない。薬剤の選択および対象BAM遺伝子の転写を支配するウイルスのプロモータ領域は、CNS内でウイルスプロモータが受ける下方制御の対象にならない上記のプロモータ配列の1つと置換される。たとえば、GFAPプロモータは星状細胞および星状細胞の細胞株のトランスフェクションに使用され、THプロモータはPC12細胞に使用され、あるいはMBPプロモータはオリゴデンドロサイトに使用されるであろう。
【0111】
実施態様によっては、pNUT発現ベクトルが使用される。さらに、pNUT発現ベクトルは、DHFRコード化配列がG418またはハイグロマイシン薬剤耐性のコード化配列に置き換えられるように改変することができる。pNUT発現ベクトル内のSV40プロモータも、上記のように適切に構造的に発現される哺乳動物のプロモーターと置き換えることができる。
【0112】
本発明の微粒子化デバイスに使用するのに適するBAMとしては、抗血管新生因子、抵炎症因子、神経栄養因子、成長因子、栄養素、抗体および抗体断片、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、またはリンフォカインが挙げられるが、これらだけに限らない。特に、BAMは、TGFβ、GDNF、NGF、CNTF、bFGF、aFGF、IL−1β、IFN−β、IFN−α、BDNF、LIF、NT−4、NTN、NT4/5、CT−I、LEDGF、ニューブラスチン、アキソカイン、IL−23、RdCVF、IL−I0、αINF、IL−1Rα、およびレミケードでよい。例示的な抗血管新生因子としては、バスキュロスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチン、抗インテグリン、血管内皮成長因子阻害剤(VEGF阻害剤)、血小板因子4、ヘパリナーゼ、bFGF結合分子、VEGF受容体Fit、VEGF受容体Flk、Lucentis、VEGFトラップ、Tek Δ/Fc(ang1/ang2阻害剤)、2xCon4(C)、可溶性VEGF受容体、およびPEDFが挙げられるが、これらだけに限らない。
【0113】
この微粒子化デバイスを使用して送達可能なその他の生成物としては、赤血球生成促進因子、成長ホルモン、P物質、およびニューロテンシンなどの栄養素が挙げられる。本発明は、鎮痛剤または疼痛緩和物質を個体に送達することによって、急性および/または慢性の疼痛を罹患している個体を治療するのに有用である。こうした疼痛緩和物質としては、エンケファリン、カテコールアミン、およびその他のオピオイドペプチドが挙げられる。こうした化合物は、たとえば副腎クロム親和性細胞によって分泌され得る。この媒体によって送達するのに適する生成物のもう1つの族は、リンフォカインおよびサイトカインなどの生物反応修飾物質を含む。抗体分泌細胞からの抗体を送達してもよい。役立ち得る特異抗体は、腫瘍特異抗体が挙げられる。抗体の放出は、ホルモンまたは成長因子などの化合物の循環レベルを減少させる点でも役立つ。これらの生成物は、眼の多様な疾病、炎症症状、または疾患、および変性疾患の治療に役立つ。
【0114】
上記分子の変性、切頭および/またはムテイン形式も意図されている。さらに、これらの成長因子の活性断片(つまり、治療効果を達成するのに十分な生物学的活性を有する成長因子の断片)も意図されている。また、1つまたは複数のポリエチレングリコール(PEG)、またはその他の反復ポリマー部分の付着によって変更された成長因子の分子も意図されている。これらのタンパク質およびポリシストロンバージョンも意図されている。
【0115】
細胞の選択は、意図される用途に応じて決まる。細胞は、ホルモンの分泌物、サイトカイン、成長因子、栄養素、血管形成因子、抗体、血液凝固因子、リンフォカイン、酵素、およびその他の治療薬またはアゴニスト、先駆物質、活性アナログ、またはこれらの活性断片に対して選択することができる。
【0116】
本発明には、多様な細胞を使用し得る。これらの細胞としては、十分に周知されており、公的に入手可能な不死化細胞株、および一次細胞集合体が挙げられる。公的に入手可能で、本発明を実施するのに適する細胞株としては、新生児ハムスターの腎臓(BHK)、チャイニーズハムスターの卵巣(CHO)、マウスの線維芽細胞(L−M)、NIHスイスマウスの胎児(NIH/3T3)、アフリカミドリザル細胞株(COS−α、COS−7、BSC−1、BSC−40、BMT−10およびVeroを含む)、ラットの副腎褐色細胞腫(PC12)、ラットの神経膠腫(C6)、APRE−19細胞などが挙げられる。本発明により使用し得る一次細胞としては、哺乳類のCNSに由来するbFGF−応答性神経前駆幹細胞(Richards等,PNAS 89,8591−8595ページ(1992年);Ray等,PNAS 90,3602−3606ページ(1993年))、一次線維芽細胞、Schwann細胞、星状細胞、β−TC細胞、Hep−G2細胞、AT T20細胞、オリゴデンドロサイト、およびこれらの前駆細胞、筋芽細胞、副腎クロム親和性細胞などが挙げられる。
【0117】
細胞の選択は、意図される用途によって決まる。カプセル化細胞は、特定のBAMの分泌に応じて選択してよい。活性である、BAMのアゴニスト、アナログ、誘導体、または断片を合成および分泌する細胞を使用することも可能である。
【0118】
カプセル化細胞ベースの送達システムの基盤となる細胞株であるには、細胞株は、細胞株は、以下の特性をできるだけ多く備えなければならない:(1)細胞は、厳密な条件下で頑丈でなければならない(カプセル化細胞は、中枢神経系または眼などの血管がない組織の腔中、特に眼内環境で機能しなければならない)、(2)細胞は、遺伝子組換えが可能でなければならない(細胞内にエンジニアリングする必要がある所望の治療要素)、(3)細胞は、比較的長い寿命スパンを有するべきである(細胞は、バンクを作り、特徴付け、エンジアリングし、安全テストし、臨床上ロット製造するのに十分な子孫を製造しなければならない)、(4)細胞は、ヒト由来でなければならない(カプセル化細胞と宿主との間の生体適合性を高める)、(5)細胞は、1か月を超える期間にわたって、デバイスのインビボで80%を超える生存能力を示さなければならない(長期間の送達を確保する)、(6)カプセル化細胞は、有効量の生物学的生成物を送達しなければならない(治療の効果を確保する)、(7)細胞は、低レベルの宿主免疫反応を有するべきである(移植片の超寿命を確保する)、および(8)細胞は、腫瘍を発生してはならない(デバイスが漏れた場合、宿主に対する安全性を高めるため)。
【0119】
ARPE−19細胞株(Dunn等、62 Exp.Eye Res.155−69(1996年),Dunn等、39 Invest.Ophthalmol.Vis.Sci.2744−9(1998年),Finnemann等、94 Proc.Natl.Acad.Sci.USA12932−7(1997年),Handa等、66 Exp.Eye.411−9(1998年),Holtkamp等、112 Clin.Exp.Immunol.34−43(1998年),Maidji等、70J.Virol.8402−10(1996年);米国特許第6,361,771号参照)は、カプセル化細胞ベースの送達システムの納得の行く基盤細胞の特徴をすべて示している。ARPE−19細胞株は、American Type Culture Collection(ATCC Number CRL−2302)から入手可能である。ARPE−19細胞は、一般的な網膜色素上皮(RPE)細胞であり、網膜色素上皮細胞の特異マーカーCRALBPおよびRPE−65を発現する。ARPE−19細胞は、形態学的および機能的極性を示す安定した単分子層を形成する。
【0120】
本発明の微粒子化デバイスを使用する場合、好ましくは10〜10のARPE−19細胞、最も好ましくは5×l0〜90×10のARPE−19細胞が、各々のデバイス内でカプセル化される。投与量は、比較的少数または比較的多数、好ましくは患者一人当たり1〜50個のカプセルをインプラントすることによって調節し得る。本明細書に記載するデバイスは、患者一人の片目当たり1日に0.1pg〜100ngの所望のBAMを送達することが可能である。第1世代のECTデバイス、および本発明の微粒子化デバイスは、同レベルの保護を眼に提供することが実証されている。
【0121】
選ばれた生成物を生成する細胞または組織を隔離するための技術および手順は、当業者にとって公知であるか、または単に慣例的な実験による公知の手順から適応させることができる。
【0122】
隔離される細胞が、インビトロで成長に適応させた複製細胞または細胞株である場合、これらの細胞の細胞バンクを生成することは特に有利である。細胞バンクの特定の利点は、そのバンクが、同じ細胞培地または槽から用意される供給源であるという点である。つまり、すべての細胞は、同じ細胞供給源に由来し、同じ条件および応力が加えられている。したがって、このバイアルは、同じクローン化として処理することができる。移植に関しては、これは、同じかまたは交換用デバイスの製造を大幅に促進する。また、単純化されたテストプロトコルも可能であり、その結果、インプラントされた細胞はレトロウィルスなどがないことが保証される。また、インビボおよびインビトロで媒体を同時に監視することも可能であるため、インビボでの滞留に特有の効果または要素を調査することが可能である。
【0123】
すべての場合に、デバイス内に含まれる細胞または組織が汚染またはされるか、または純度が劣っていないことは重要である。
【0124】
本明細書に記載する任意の方法で得られ、新たに形成された微粒子化デバイスは、インプランテーション前に、非発熱性、血清を含まない画定培養液、または平衡塩類溶液中において約37℃で減菌状態に維持することが可能である。これより低温であることは(20℃〜37℃)、特定の細胞タイプおよび/または培養条件に最適である場合がある。細胞の生存能力に適するその他の保持温度および培地組成を使用してもよい。あるいは、グリセリンなどの凍結保護剤をマトリックス中に組み入れる場合、デバイスは液体窒素中で低温保存することができる。(Rajotte,R.V.等のTransplantation Proceedings,21,2638−2640ページ(1989年)参照)。この場合、デバイスは、使用前に解凍状態にして、上記の減菌状態で平衡状態に保たれる。
【0125】
本発明の方法およびデバイスは、哺乳類の宿主、受容体、被検体または個体、好ましくは霊長類、最も好ましくはヒトに使用することを意図されている。多くの異なるインプランテーション部位は、本発明のデバイスおよび方法を考慮される。適切なインプランテーション部位としては、眼の房水および硝子体液、眼周囲の空間、前房、および/またはテノン嚢下鞘が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0126】
本発明は、本発明の微粒子化デバイスを患者の眼にインプラントすることによって眼科疾患を治療する方法を提供する。たとえば、眼科疾患は、網膜変性症でよい。例示的な網膜変性症としては、未熟児網膜症、緑内障、白内障形成、網膜芽腫、網膜虚血症、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、ウェット型およびドライ型加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、およびコロイデレミアが挙げられるが、これらだけに限らない。本発明の微粒子化デバイスを使用して治療し得るその他の眼科疾患としては、増殖性網膜症、網膜血管症、血管異常、加齢性黄斑変性症、およびその他の後天的疾患(ドライ型加齢性黄斑変性症、浸出性加齢性黄斑変性症、および変性近視が挙げられるが、これらだけに限らない)、眼内炎、感染症、非伝染性疾患以外の炎症、AIDS関連疾患、眼虚血性症候群、妊娠関連疾患、周囲網膜変性症、網膜変性症、中毒性網膜症、網膜腫瘍、脈絡膜腫瘍、脈絡膜疾患、硝子体疾患、網膜剥離、増殖性硝子体網膜症、非貫通性外傷、貫通性外傷、後期白内障の合併症、および炎症性視神経症が挙げられるが、これらだけに限らない。
【0127】
本発明のデバイスは、眼の新生血管形成、多くの眼の疾病および疾患に関連する症状の治療にも役立ち得る。たとえば、網膜虚血症関連の眼の新生血管形成は、糖尿病性失明、および多くのその他の疾病の主な原因である。本発明は、眼および眼以外の症状の両方を有する疾病または病状から生じる目の症状を治療するためにも使用し得る。いくつかの例としては、AIDSにおけるサイトメガウィルス網膜炎およびその他の病状、並びに硝子体疾患、妊娠の結果として生じる網膜の高血圧性変化、様々な感染症、たとえば結核、梅毒、ライム病、寄生性疾患、イヌ回虫、眼のハエウジ病(ophthalmonyiasis)、嚢中症(cyst cercosis)、および真菌感染症による眼の作用が挙げられる。同様に、本発明は、その他の眼球内新血管形成関連の疾病による症状を治療するためにも使用し得る。角膜の新血管形成は、視覚に影響し、患者の角膜移植が失敗しやすくなるという点で大問題である。重大な視力障害は、眼の新生血管形成を生じる疾患に関連する。たとえば、新血管形成は、糖尿病性網膜症、網膜中心静脈閉塞症、およびおそらく加齢性黄斑変性症などの疾病で生じる。
【0128】
本発明の微粒子化デバイスおよび技術は、他の送達ルートと比べていくつかの利点がある。たとえば、BAMは眼に直接と送達されるため、望ましくない抹消の副作用を減少させるか、または最小限にする。さらに、局所的な用途と比べて、非常に少ない用量のBAM(ミリグラムではなく、ピコグラム、またはナノグラム未満)を送達することができるため、潜在的に副作用も少なくなる。同様に、生存細胞は、新たに合成されるBAMを継続的に生成するため、これらの技術は、薬剤の注入送達より優れているはずであり、注入送達の場合は、BAMの用量が注入ごとに非常に変動し、BAMが継続的に劣化するが、継続的に補充されない。
【0129】
生細胞は、本発明の微粒子化デバイス内にカプセル化され、外科的に(球後麻酔下で)眼の硝子体内に挿入される。好ましくは、微粒子化デバイスは、除去を容易にするために強膜にテザーで固定される。微粒子化デバイスは、所望の予防または治療を行うのに必要な限り、硝子体に滞留することが可能である。こうした治療法としては、たとえば、神経細胞の増殖、光受容体の生存もしくは修復、または網膜または脈絡膜の新血管形成の抑制および/または逆転、並びにブドウ膜、網膜、および視神経の炎症の抑制が挙げられる。
【0130】
硝子体の配置では、生物活性分子、好ましくは栄養素は、網膜またはRPEに送達され得る。さらに、網膜の新血管形成は、抗血管新生因子を硝子体に送達することによって最善の治療を行い得る。
【0131】
他の実施態様では、細胞装填デバイスは、眼の周囲、テノン鞘として周知されている空間内または空間の下にインプラントされる。この実施態様は、硝子体(vitreal)の出血および/または網膜剥離などの合併症が潜在的に排除されるため、硝子体内へのインプランテーションより侵襲的ではない。この送達ルートは、RPEまたは網膜に対するBAM(たとえば、栄養素など)の送達も可能にする。この実施態様は、脈絡膜の新血管形成、および視神経およびブドウ膜の炎症の地用に特に好ましい。一般に、このインプランテーション部位からの送達は、所望の生物活性分子を脈絡膜血管系、網膜の血管系、および視神経に循環させることを可能にする。
【0132】
好ましい実施態様としては、抗血管形成分子、抗炎症分子(サイトカイン、およびホルモンなど)、並びに神経栄養因子を脈絡膜血管系に対し、眼の周囲から送達し、黄斑変性(脈絡膜の新血管形成)を治療することが挙げられるが、これらだけに限らない。本発明のデバイスおよび方法を使用して、抗血管新生因子を脈絡膜血管系(眼の周囲)または硝子体(眼内)に直接送達すると、上記の問題を減少させ得、明確に定義されないか、または潜んでいる脈絡膜新血管形成の治療を可能にし得る。また、本発明のデバイスおよび方法は、補助または維持療法を介して、再発性の脈絡膜新血管形成を減少または予防する方法も提供し得る。
【0133】
生体適合性微粒子化デバイスのインプランテーションは、減菌状態で行われる。微粒子化デバイスは、シリンジ、または当業者が周知している任意のその他の方法を用いてインプラントすることが可能である。一般に、このデバイスは、受容体の本体内のある部位にインプラントされ、分泌される生成物または効能を受容体に、かつインプラントされた細胞または組織に栄養素を適切に送達することを可能にし、回収および/または交換のためにデバイスに接近することも可能にする。多くの異なるインプランテーション部位が想定される。これらの部位は、たとえば房水、硝子体液、テノン嚢下鞘、眼周囲の空間、前房を含む。好ましくは、免疫学的に優先されないインプラント部位、たとえば眼の周囲の部位、および前房(房水)、および後眼房(硝子体)外のその他の領域の場合、カプセルは免疫隔離性である。微粒子化デバイス内で固定化された細胞は、インプランテーションの前後ともに適切に機能することを検証することが好ましい。先行技術で十分に公知の検定または診断テストは、これらの目的に使用することができ、たとえば、ELISA(酵素結合免疫吸着剤検定)、クロマトグラフ、または酵素検定、または分泌生成物に特異の生物学的検定を使用できる。必要な場合、適切なサンプル(たとえば、血清)を受容体から収集し、それらを検定することによって、長期にわたってインプラントの分泌機能を監視することができる。
【0134】
本発明について、以下の例でさらに説明する。これらの説明は、特許請求の範囲に記載されている本発明の範囲を制限するものではない。
【実施例】
【0135】
実施例1:「第1世代」および微粒子化ECTデバイスの材料および方法の比較
ECTデバイスは、眼の内部に対する硝子体内インプランテーションを可能にするように製造した。第1世代デバイスは、排水容積(直径1.1mm、長さ6mm)が合計600μlだった。微粒子化ECTデバイスは、0.05μl(直径200mm、長さ1mm)の合計排水容量で製造された。第1世代と微粒子化ECTデバイスとのサイズの違いの比較を図7に示す。これらの調査に使用したカプセル化細胞種は、毛様体神経栄養因子(CNTF)、またはインターロイキン10(IL−10)を分泌するように遺伝子組換えした。デバイスは、CNTFおよびIL−10の両方の高用量および低用量送達を行うように設計した。インプラント期間は、ウサギモデルで18か月間、ラットモデルで2週間だった。タンパク質の送達レベルは、調査期間中に定量化し、臨床検査を行って眼球刺激および外科創傷の治癒を評価した。
【0136】
結果
CNTFの送達
用量の送達は、第1世代および微粒子化ECTデバイスの両方を、ウサギおよびラットの両方の動物モデルに使用して行った。インプラント前の用量の分割は、両方のサイズのデバイスに関して図8に示す。
【0137】
長期間のインプラントの用量送達は、ウサギモデルで実施し、18か月間のインプラントが経過する間を通して安定した送達が行われた。ウサギモデルにおける高用量のCNTFの送達(ng/デバイス/日)は、2週間で4.42±1.14〜18か月間で2.20±1.08の範囲だった(図9)。低用量の送達(ng/デバイス/日)は、2週間で1.14±0.24〜18か月間で0.11±0.06の範囲だった。高用量および低用量の送達に関する硝子体のCNTFレベルは、デバイス出力の約10%であり、調査期間を通して安定した状態を維持した。
【0138】
エクスプラントされたデバイス(図11)の組織学的検査は、18か月間を通して安定したカプセル化細胞の生存能力を示した。
【0139】
IL−10の送達
微粒子化ECTデバイスは、調査の一環としてラットの硝子体内にインプラントし、インプラント前に高用量156±32(pg/デバイス/日)、または低用量13±11(pg/デバイス/日)でインターロイキン10(「IL−10」)を送達した実験的な自己免疫ブドウ膜炎(EAU)の治療を調査した(図12)。
【0140】
微粒子化ECTデバイス内における細胞の組織学的評価は、デバイス内における堅固な生存能力、および高度の細胞分布を明らかにした(図13)。EAUモデルにおける予備的な結果は、ECTを使用してIL−10を送達する有益な治療効果を示した。
【0141】
これらの調査期間を通して、ECTデバイスを使用して治療のために送達に選ばれた動物モデルに関係なく、定期的な眼底検査後、どの群についても著しく不都合な術後の合併症は報告されなかった。
【0142】
結論
硝子体内レベルの治療薬分子を、ウサギ(第1世代デバイス)およびラット(微粒子化デバイス)モデルの両方に送達するためのECTデバイスの製造を実証した。第1世代および微粒子化インプラントはともに、良好な耐用性を示し、治療薬の送達は、最大18か月のインプラント期間全体が経過する間連続していた。
【0143】
実施例2:小ゲージ針を使用した、カプセル化細胞技術(ECT)微粒子化デバイスの送達
現在は第II段階の網膜色素変性症および加齢性黄斑変性症のためのヒト臨床検査になっている第1世代のインプランテーションは、2.0mmの強膜切開、および切開部位を閉鎖するための3本の縫合糸を必要とする。したがって、小ゲージ針を通してインプラント可能な同程度のタンパク質レベルを生成することが可能なECT微粒子化デバイスの開発によって、外科手順が改善され、外科的なリスクは最小限になるであろう。
【0144】
方法
微粒子化デバイスは、毛様体神経栄養因子(CTNF)、インターロイキン10(IL−10)、または色素上皮由来因子(PEDF)を生成するようにトランスフェクトされたカプセル化細胞を含むように作製した。CNTFを送達するこのような微粒子化デバイスのインプランテーションは、改良シリンジを有する23ゲージ針を使用してテストした。CNTF生成デバイスは、ニュージーランド白ウサギ内に外科的にインプラントし、倒像眼底検査および組織学的検査を使用して、2週間および1か月間評価した。2つの閉鎖方法を調査した:(1)10−0縫合糸、およびデバイスに取り付けた針を使用して切開部を閉鎖し、(2)Jaffe,等,Arch Ophthalmol 114:1273−75(1996年)(引用により援用に記載されている手順を改良した手順を使用し、縫合糸を使用しない閉鎖。硝子体内CNTFレベル、エクスプラントされた微粒子化デバイス、およびカプセル化細胞の生存能力を判断した。
【0145】
結果
微粒子化デバイスは、5.0±0.5、3.0±0.7、および39±4ng/デバイス/日のCNTF、IL−10およびPEDFをそれぞれ2週間の時点で生成した。微粒子化ECTデバイスからのタンパク質分泌は、数か月の期間を通して一定し、安定していた。デバイス容量レベルに対するタンパク質の産出は、第1世代ECTデバイスの容量の10倍だった。
【0146】
微粒子化デバイスのCNTF生成は、インビトロおよびインビボの両方で評価した。第1世代デバイスは、インビトロ評価期間中に比較的高レベルのCNTFを生成した。(図14A参照)。しかし、2〜4週間エクスプラントされた微粒子化CNTFのレベルは、第1世代のECTデバイスが生成するレベルと統計的に等価(P=0.5663およびP=0.6744)だった。(図14B参照)。さらに、硝子体のCNTFレベルも、2〜4週間のインビボ評価時点の両方において、微粒子化デバイス群を第1世代デバイス群と比較して統計的に等価だった。(図14C参照、それぞれP=0.2344およびP=0.8665)。微粒子化デバイスの代謝活性は、第1世代のデバイスと比較して、時間が経過するにつれて増加し、第1世代のデバイスは、8週間のインビトロ保持期間中に低下した。(図14D参照)。
【0147】
CNTF生成微粒子化デバイスは、23ゲージ針を介して正常に射出され(図15参照)、固定方法の術後評価は、微粒子化デバイスの良好な配置および拘束を示した。射出可能な強膜切開閉鎖は著しく非侵襲的であり、第1世代のECTデバイスと比較して、手術時間は半分に減少した。
【0148】
結論
微粒子化デバイスを使用するカプセル化は、現在はECT臨床検査評価に使用されている第1世代デバイス構成に匹敵するレベルの治療用タンパク質レベル提供することが可能である。同様に、23ゲージ針を使用して、デバイスを射出する微粒子化デバイスの外科的インプランテーションは実行可能と思われ、比較的単純で、眼におけるカプセル化細胞療法のために比較的低侵襲性の方法を提供し得る。
【0149】
実施例3:射出可能な微粒子化されたカプセル化細胞技術デバイスの安全性および薬物動態学
毛様体の神経栄養因子(CNTF)を送達する第1世代のカプセル化細胞技術(ECT)デバイスの3つ同時調査は、初期および後期網膜色素変性症および加齢性黄斑変性症のヒト臨床である。これらの検査に使用されるECTデバイスは、結膜切除、強膜切開、および眼内配置を使用して患者の眼にインプラントし、デバイスを固定した後、強膜および結膜を縫合糸で閉鎖する。現在の研究論文は、長期の薬物動態学、および比較的小さいプロファイルの安全性プロファイル、有効な治療薬を送達可能であり、縫合糸を使用しない23ゲージの射出手順を使用してインプラントされる微粒子化ECTデバイスを開発する研究努力を報告している。
【0150】
方法
継続的にCNTFを分泌するように遺伝子組換えされたヒトの網膜色素上皮細胞は、直径300ミクロンの中空ファイバの半透性ポリマー膜内にカプセル化し、ウサギの硝子体腔内に眼内インプランテーションにより送達した。デバイスのインプランテーションは、縫合糸を使用しない改良バージョンの23ゲージの強膜切開技術を使用して行った。1年間が経過する間の安全性およびCNTFタンパク質薬物動態学は、この研究の最終結果の評価項目である。硝子体CNTFレベル、およびエクスプラントされた微粒子化デバイスのCNTF産出量は、市販のELISAで評価した。臨床および病理学的評価は、インプラントの安全性を評価するために、インプランテーション期間中を通して実施した。
【0151】
結果
3か月の時点で、エクスプラントされた微粒子化デバイスの生成、およびCNTFの硝子体レベルは、それぞれ3.2ng/日および0.2ng/mlだった。エクスプラントされたデバイスの予備的に適応させた動力学、および半減期(t1/2)定数は、それぞれk=0.0167週−1およびt1/2=41週だった。硝子体レベルは、k=0.036週−1およびt1/2=19週だった。縫合糸を使用しない強膜切開インプラント法を使用してインプラントされた眼では、眼毒性の徴候は観察されなかった。インプラント部位の臨床および病理学的評価は、外科的切開後に予想される組織反応と一致する通常の創傷治癒反応を示した。さらに、不都合な汎網膜、視神経、または血管毒性は、インプラントされたどの眼にも観察されなかった。
【0152】
結論
したがって、この研究の予備的な結果は、微粒子化ECTデバイスが、ウサギにおけるCNTFの長期にわたる眼球内送達を持続可能であることを示している。さらに、微粒子化デバイスを縫合する必要性を緩和する経結膜インプラント手順の安全性プロファイルも、射出可能な微粒子化ECTデバイスの可能性の見込みを示している。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1】図1は、齧歯動物の眼における外科的な挿入、および強膜への取付けを促進するために使用される微粒子化ECTデバイス、および縫合糸取付け針頭の一連の写真である。図1Aは、30ゲージ針を通して行われるデバイスの供給を示す。図1Bは、カニューレを挿入されたチタニウムロッドを使用した、デバイスの供給を示す。図1Cは、微粒子化デバイスの粘着性端部内に埋め込まれる11−0縫合糸を示す。
【図2】図2は、いくつかの足場材料を比較するデバイスの代謝活性(CCK−8)を示すグラフである。提示されている結果は、ポリスチレンマイクロスフェア、およびPET糸は、さらに他の調査の良い候補だったことを示す。
【図3】図3は、ポリスルホン(親水性)材料およびポリイミド(疎水性)材料の両方が、カプセル化膜として調査されたことを実証する一連の顕微鏡写真である。図3Aは、ポリイミド膜の内壁に細胞を付着させると、拡散が制限されるために、結果として細胞が死亡することを示す。対照的に、図3Bは、ポリスルホン膜は、内壁とカプセル化細胞集団との間に10+ミクロンの分離が生じ、それによって、細胞の生存能力を維持するのに効果的な拡散が可能であることを示す。
【図4】図4は、2週間経過後のマイクロカプセル化デバイスの代謝活性を示すグラフである。これらの結果は、フィブロネクチンを塗布された足場材料が、マイクロスフェアへの細胞の付着を促進したことを示す。さらに、糸成分を増加しても、細胞の成長および活性に利益がある場合がある。
【図5】図5は、微粒子化デバイス内に含まれる細胞のCNTF生成、およびDNA検定細胞番号を示すヒストグラムである。これらの結果は、マイクロスフェアを塗布するためにフィブロネクチンを使用する利点を裏付け、糸密度の増加が、カプセル化細胞の性能に利益をもたらすことを実証した。
【図6】図6は、ポリスルホン膜、およびフィブロネクチンを塗布されたマイクロスフェアのマトリックス、またはPET足場材料のマトリックスを使用するマイクロカプセル化細胞の生存能力を示す一連の顕微鏡写真である。パネルAは、カプセル化から2週間後の押出し細胞−マイクロスフェア組織集団の顕微鏡写真である。パネルBは、生細胞および死細胞を視覚化するために、カルセインおよびエチジウムで着色された押出し細胞集団を示す。パネルC(マイクロスフェア)およびD(PET糸)は、アポトーシス細胞を視覚化するために、DAPIで着色され、蛍光色素12−dUPTで逆着色されたプラスチック埋め込み部分である。いくつかのアポトーシス細胞が、デバイス群で観察された。パネルE(マイクロスフェア)およびF(PET糸)は、ヘモトキシリンおよびエオシンで着色されたプラスチック部分を示す。細胞の生存能力および分布は、調査された細胞マトリックスに関係なく良好だった。
【図7】図7は、第1世代ECTデバイス(1mm×6mm)、および微粒子化ECTデバイス(0.2mm×1mm)のサイズを比較する写真である。
【図8】図8は、第1世代および微粒子化ECTデバイスからのCNTFのインプラント前の用量の送達を示す。
【図9】図9は、ウサギの硝子体内における18か月間の高用量CNTFの放出を示すグラフである(第1世代ECTデバイスを使用する)。
【図10】図10は、ウサギの硝子体における18か月間の低用量CNTFの放出を示すグラフである(第1世代ECTデバイスを使用する)。
【図11】図11は、2週間(図11A)、12か月(図11B)、および18か月(図11C)のインプランテーション期間後のカプセル化細胞を比較する組織学的(H&E)部分(10×倍率)を示す一連の顕微鏡写真である。
【図12】図12は、微粒子化ECTデバイスからのインターロイキン−10(IL−10)の用量送達を示すヒストグラムである。
【図13】図13は、微粒子化デバイス内で細胞を生成するカプセル化IL−10の代表的分布(図13A)、および生存能力(図13B)の一連の顕微鏡写真である。
【図14】図14は、第1世代ECT、および微粒子化ECTデバイスの性能を実証する一連のグラフである。図14Aは、8週間のインビトロ経過後に生成されたCNTFのレベルを示す。図14Bは、8週間にわたるカプセル化細胞の代謝活性を細胞酸化還元検定(CCK−8)によって定量化した実験の結果を示す。図14Cは、2週間および4週間の時点におけるインビボエクスプラントデバイスのCNTFレベルを示す。図14Dは、2週間および4週間の時点におけるエクスプラント硝子体のCNTFレベルを示す。
【図15】図15Aは、23ゲージ針を使用する微粒子化デバイスのインプランテーションを実証する写真である。図15Bは、扁平部を通って強膜の表面に対して30°の切開を示す写真である。図15Cは、針の抜取りを示し、取付けられた縫合糸および針が明らかに露出されている。図15Dは、単一の縫合糸の閉鎖を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生物活性分子を眼に送達するための微粒子化デバイスであって、カプセルを含み、前記カプセルが、
a)生物活性分子を生成する約5×l0個と90×10個との間の生細胞を含むコアと、
b)前記コアの周囲の生体適合性ジャケットであって、前記ジャケットが、前記眼に対する前記生物活性分子の拡散を可能にする分子量カットオフを有する生体適合性ジャケットと
を含み、
前記デバイスが、200μmと350μmとの間の外径、かつ0.5mmと6mmとの間の長さの円筒体として構成され、眼内に拡散する前記生物活性分子の投与量が、患者一人の片目当たり1日に0.1pgと1000ngとの間であるデバイス。
【請求項2】
前記デバイスが、前記カプセルを眼の構造体に固定するように構成されたテザーをさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記テザーが、ループ、ディスク、および縫合糸から成る群から選択される、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記テザーが形状記憶材料を含む、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記生体適合性ジャケットが、選択透過性の免疫隔離性膜を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記生体適合性ジャケットが、限外濾過または微小孔性膜を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記生体適合性ジャケットがポリマー材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記ポリマー材料が、ポリアクリロニトリル−ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルジフルオリド、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリイミド、およびセルロースから成る群から選択される、請求項7に記載のデバイス。
【請求項9】
前記デバイスが、硝子体、テノン嚢下鞘、眼周囲の空間、または前房内にインプラントされる、請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記生物活性分子が、抗血管新生因子、抵炎症因子、神経栄養因子、成長因子、栄養素、抗体および抗体断片、神経伝達物質、ホルモン、サイトカイン、およびリンフォカインから成る群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記生物活性分子がサイトカインまたはリンフォカインである、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記生物活性分子が、TGFβ、GDNF、NGF、CNTF、bFGF、aFGF、IL−1β、IFN−β、IFN−α、BDNF、LIF、NT−4、NTN、NT4/5、CT−1、LEDGF、ニューブラスチン、アキソカイン、IL−23、RdCVF、IL−10、αINF、IL−1Rα、およびレミケードから成る群から選択される、請求項10に記載のデバイス。
【請求項13】
前記生物活性分子は、バスキュロスタチン、アンギオスタチン、エンドスタチン、抗インテグリン、血管内皮成長因子阻害剤(VEGF阻害剤)、血小板因子4、ヘパリナーゼ、bFGF結合分子、VEGF受容体Flt、VEGF受容体Flk、Lucentis、VEGFトラップ、Tek Δ/Fc(ang1/ang2阻害剤)、2×Con4(C)、可溶性VEGF受容体、およびPEDFから成る群から選択される抗血管新生因子である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも1つの追加の生物活性分子が、前記カプセルから眼に送達される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項15】
前記少なくとも1つの追加の生物活性分子が細胞性供給源に由来する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項16】
前記少なくとも1つの追加の生物活性分子が非細胞性供給源に由来する、請求項14に記載のデバイス。
【請求項17】
前記少なくとも1つの追加の生物活性分子が、前記微粒子化デバイスの1つまたは複数の構成要素内にカプセル化されるか、前記構成要素内に分散されるか、または前記構成要素に付着する、請求項16に記載のデバイス。
【請求項18】
前記少なくとも1つの追加の生物活性分子が、核酸、核酸断片、ペプチド、ポリペプチド、ペプチド摸倣物、炭水化物、脂質、有機分子、無機分子、治療薬、およびこれらの組合せから成る群から選択される、請求項16に記載のデバイス。
【請求項19】
前記治療薬が、抗血管新生薬剤、ステロイド性および非ステロイド性抗炎症剤、細胞分裂抑制薬、抗癌剤、抗寄生虫剤、眼圧低下剤、ペプチド薬、および眼科用途に認証されたその他の生物活性分子薬剤から成る群から選択される、請求項18に記載のデバイス。
【請求項20】
前記細胞が、インスリン産生細胞、副腎クロム親和性細胞、抗体分泌細胞、線維芽細胞、星状膠細胞、β細胞株、チャイニーズハムスター卵巣細胞、およびARPE−19細胞から成る群から選択される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項21】
前記細胞が同種異系細胞である、請求項20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記細胞が同系細胞である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項23】
前記生体適合性ジャケットの前記分子量カットオフが、約1kDと約150kDとの間である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項24】
前記コアが0.5μl未満の容量を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項25】
前記コアが、実質的に非分解性の糸状細胞支持マトリックスをさらに含み、前記マトリックスが複数のモノフィラメントを含み、前記モノフィラメントが、
(a)糸状に撚りあわされるか、またはメッシュ状に織られ、
(b)不織ストランドである糸状に撚り合わされ、
前記細胞または組織が上に分布する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項26】
前記糸状細胞支持マトリックスが、アクリル、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンポリアセトニトリル,ポリエチレンテレフタレート、ナイロン、ポリアミド、ポリウレタン,ポリブテステル、絹、綿、キチン、炭素、および生体適合性金属から成る群から選択される生体適合性材料を含む、請求項25に記載のデバイス。
【請求項27】
生物活性分子を眼に送達するための方法であって、前記方法が、請求項1による少なくとも1つのデバイスを前記眼または前記眼の周囲にインプラントすることを含み、前記生物活性分子が、前記デバイスから眼の硝子体、房水、または眼周囲の空間内に拡散する方法。
【請求項28】
前記少なくとも1つのデバイスがシリンジを使用してインプラントされる、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
請求項1に記載のデバイスを前記患者の眼内にインプラントすることを含む眼科疾患を罹患する患者における眼科疾患の治療のための薬剤の製造における、請求項1に記載のデバイスの使用。
【請求項30】
前記眼科疾患が網膜変性症である、請求項29に記載の使用。
【請求項31】
前記網膜変性症が、未熟児網膜症、緑内障、白内障形成、網膜芽腫、網膜虚血症、ブドウ膜炎、網膜色素変性症、ウェット型およびドライ型加齢性黄斑変性症、糖尿病性網膜症、およびコロイデレミアから成る群から選択される、請求項30に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2009−522269(P2009−522269A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548600(P2008−548600)
【出願日】平成18年12月18日(2006.12.18)
【国際出願番号】PCT/US2006/048292
【国際公開番号】WO2007/078922
【国際公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【出願人】(307045711)ニューロテック ユーエスエー, インコーポレイテッド (4)
【Fターム(参考)】