説明

生理学的履歴データ格納および提供するための方法ならびに回路

【課題】患者と共に移動する生理学的履歴データを格納および提供する方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、例えば、血液酸素飽和度データ等の、患者に対する生理学的履歴データを格納および提供するメカニズムである。特に、生理学的履歴データは、患者と共に「移動し」、患者がどこに移動されてもアクセスできる格納媒体に格納される。このことは、センサアセンブリ内の生理学的データを格納することによって達成される。目的地で、センサエレクトロニクスとインタフェース接続できるモニタまたは装置が、データを回収し、表示し得る。生理学的履歴データによって、目的地の臨床医または医療従事者は、患者がモニタされた全時間にわたって患者の状態にアクセスできる。血液酸素飽和度、心拍数、および体温データを含むがこれらに限定されない種々の型の生理学的データが、格納され得る。データの圧縮は、格納能力を高めるために行われ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、生理学的検査機器に関し、特に、血液酸素飽和度データなどの生理学的履歴データをモニタに格納および提供するためのメカニズムを含むセンサに関する。
【背景技術】
【0002】
脈拍酸素測定法は一般的に、動脈血中のヘモグロビンの血液酸素飽和度、一回の拍動で組織に供給される血液量、および患者の各心拍に対応する血液拍動率を含む(これらに限定されない)、様々な血流の特徴を測定するために用いられる。これらの特徴の測定は、患者の血液灌流組織の一部に光を通し、そしてその組織に光が吸収ならびに散乱されることを光電気的に感知する非侵襲性センサを用いることによって達成されてきた。次に、吸収された光の量を使用して組織内の血液成分量を測定する。脈拍酸素飽和度測定法における「脈拍」は、心拍周期中の組織内の動脈血の時間変化量から生じる。感知された光信号から処理された信号は、光減衰の周期によるよく知られたプレチスモグラフ波形である。
【0003】
患者の血液酸素飽和度を測定するために、従来の2波長の脈拍酸素計は、2つの発光ダイオード(LED)から光を拍動組織床へ出射し、そして反対側の表面上(すなわち透過型脈拍酸素測定法の場合)、または隣接表面上(すなわち反射脈拍酸素測定法の場合)に位置する光ダイオード(または光検出器)で伝播光を収集する。2つのLEDの主波長の一つは、オキシヘモグロビン(HbO2)の吸収が低減したヘモグロビン(Hb)の吸収と異なるような電磁波スペクトルの点で選択される。2つのLEDのもう一方は、HbおよびHbO2の吸収がまた互いに異なり、および最初の波長の吸収ともさらに異なるようなスペクトルの異なる点で選択される。市販の脈拍酸素計は一般的に、660ナノメータ(nm)付近の可視スペクトルの近赤色部分における一波長、および880〜940nmの範囲のスペクトルの近赤外線(IR)部分の一波長を利用する。
【0004】
酸素飽和度は、種々の技術を使用して測定され得る。1つの一般的な方法では、光検出器によって生成された光電流を調整および処理して赤色信号と赤外線信号との変調比を決定する。この変調比を観測して動脈酸素飽和度に良好に関係づけてきた。脈拍酸素計およびセンサは、一集団の患者、健常なボランティア、または動物に対するインビボ測定された動脈酸素飽和度(SaO2)の範囲にわたって変調比を測定することによって、実験的に尺度設定される。観測された関係を逆に使用して、患者の変調比の測定値に基づき血中酸素飽和度(SpO2)を測定する。変調比を用いる酸素飽和度測定は、「METHOD AND APPARATUS FOR ESTIMATING PHYSIOLOGICAL PARAMETERS USING MODEL−BASED ADAPTIVE FILTERING」という名称の、1998年12月29日に発行された米国特許第5,853,364号、および「METHOD AND APPARATUS FOR DETECTING OPTICAL PULSES」という名称の、1990年3月27日に発行された米国特許第4,911,167号に記載される。酸素飽和度と変調比との関係は、「MEDICAL SENSOR WITH MODULATED ENCODING SCHEME」という名称の、1997年7月8日に発行された米国特許第5,645,059号にさらに記載される。この3つの特許はすべて、本発明の譲受人に譲渡され、参考のため本明細書中で援用される。
【0005】
LEDおよび光検出器は一般的に、脈拍酸素計エレクトロニクスならびにディスプレイユニット(以後モニタと呼ぶ)に結合する再使用可能または使い捨ての酸素計センサ内に収納されている。センサは、しばしば長期間患者に接続される。従来は、患者の生理学的履歴データは、仮にあるとして、センサに結合されたモニタによって収集されている。履歴データは、診断およびモニタ目的のために臨床医または医療従事者にとって価値があり得る。
【0006】
患者は治療中に種々の場所に移動されることがよくある。例えば、患者は救急車に乗せられ、救急室に運ばれ、手術室に移され、手術回復室へ送られ、集中治療室へ送られ、そして次に看護フロアまたは他の場所へ移動される。このようにして、患者は同じ病院内の種々の場所の間、または異なる病院間を移動され得る。多くの例では、患者の状態をモニタするのに用いられるセンサは、取り付け器具に付着して、したがって患者に装着されたままである。しかし、モニタは一般的に、施設内の特定の場所に局在する。センサは、出発地のモニタと通常切り離されて、目的地の別のモニタと再接続される。結果的に、出発地のモニタによって収集されたすべての生理学的履歴データは、目的地で患者を診療する臨床医には、通常利用できない。
【0007】
医療技術において、カテーテルセンサおよびメモリユニットの組合せが、「CATHETER SENSOR AND MEMORY UNIT」という名称の1989年8月22日に発行された米国特許第4,858,615号に開示される。この特許において、センサアセンブリ(34)はカテーテル(32)の遠位端に位置し、およびメモリユニット(38)は、マルチコンダクタリード(40)によってセンサに接続されている(図5を参照)。カテーテルは、一般的に特定の場所で使用され、そして移動中に取り外される侵襲性の器具である。患者を異なる場所に移動する場合、カテーテルおよびメモリユニットのいずれも患者と共に移動しない。よって、カテーテルが患者から取り外される場合、メモリユニット(38)で取得および格納されたすべてのデータも、利用できない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、患者と共に移動する生理学的履歴データを格納および提供するメカニズムを提供することが非常に望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(発明の要旨)
本発明は、血液酸素飽和度データなどの患者の生理学的履歴データを格納および提供するメカニズムを提供する。特に、生理学的履歴データは、患者と共に「移動する」格納媒体中に格納され、そして患者が移動されたいかなる場所でもアクセスできる。これは、センサアセンブリ内に生理学的データを格納することによって達成される。目的地で、センサエレクトロニクスとインタフェース接続できるモニタまたは装置は、データを回収しおよび表示し得る。生理学的履歴データによって、目的地の臨床医および医療従事者は、患者がモニタされてきたすべての時間に対する患者の状態にアクセス可能となる。本発明は、血液酸素飽和度、心拍数、および体温データを含むがこれらに限定されない、種々のタイプの生理学的データを格納および提供するために使用され得る。
【0010】
本発明の具体的実施形態は、多くの光源、少なくとも一つの光検出器、およびメモリ回路を含む生理学的センサを提供する。光源は、異なる波長で動作するよう選択される。光検出器は、複数の光源によって出射された光を受け取る。そして、メモリ回路は、生理学的データを格納し、そして要求された場合にデータを提供する。生理学的データは、センサによってモニタされている患者の生理学的状態を示す。
【0011】
本発明の別の具体的実施形態は、モニタおよびセンサを含む生理学的検査機器を提供する。モニタは、調整回路および処理回路を含む。調整回路は、電気信号を受け取り、そしてその電気信号を処理して、サンプルデータを提供する。処理回路は、サンプルデータを処理して生理学的データを提供する。この生理学的データは、患者の生理学的状態を示す。センサはモニタに結合し、そして多くの光源、少なくとも1つの光検出器、およびメモリ回路を含む。光源は、異なる波長で動作するよう選択される。光検出器は、光源によって出射された光を受け取る。メモリ回路は、生理学的データを格納し、要求された場合にデータを提供する。エンコーダは、必要に応じて処理回路に結合され、メモリ回路に格納する前に生理学的データを符号化および圧縮し得る。検査機器は、患者の飽和度履歴データを格納および提供するための酸素計システムであり得る。
【0012】
本発明のさらに別の具体的実施形態は、生理学的データを格納する方法を提供する。本方法は、センサを介して、生理学的状態を示す少なくとも1つの信号を検出し、そして検出した信号を調整してデータサンプルを生成する。データサンプルは、生理学的データを生成するように処理される。この生理学的データは生理学的状態を説明する。生理学的データは、センサ内に位置するメモリ内部に格納される。生理学的データは、メモリに格納される前に符号化および圧縮され得る。
【0013】
本発明の他の局面と共に、前述のことは、後述の明細書、請求の範囲および添付の図面を参照することによってより明白となる。
例えば、本発明は、以下の項目を提供する。
(項目1)
リモートモニタに接続するための生理学的センサであって、
患者の生理学的状態を示す患者からの信号を得るための手段と、
該リモートモニタへ該信号を送信するための手段と、
該信号から得られ、および該生理学的状態を示す患者の生理学的データを格納し、ならびに遠隔装置によって要求のある場合に該装置にデータを提供する、該センサと関連するメモリ回路と
を包含するセンサ。
(項目2)
上記センサが上記メモリ回路に結合されたインタフェース回路をさらに包含し、該インタフェース回路が該メモリ回路へおよび該メモリ回路からのデータ転送を容易にする、項目1に記載のセンサ。
(項目3)
上記メモリ回路は、追記メモリ、フラッシュメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)、消去可能メモリ、または電気的消去可能プログラム可能読み出し専用メモリ(EEPROM)として実施される、項目1に記載のセンサ。
(項目4)
上記メモリ回路は、マルチ書き込みメモリーとして実施される、項目1に記載のセンサ。
(項目5)
上記生理学的データは、血液酸素飽和度データを含む、項目1に記載のセンサ。
(項目6)
上記生理学的データは、脈拍数データを含む、項目5に記載のセンサ。
(項目7)
上記生理学的データは、上記メモリ回路に格納される前に圧縮される、項目1に記載のセンサ。
(項目8)
上記生理学的データは、差分符号化またはランレングス符号化を用いて圧縮される、項目7に記載のセンサ。
(項目9)
上記生理学的データは、上記メモリ回路に格納される場合に解凍される、項目7に記載のセンサ。
(項目10)
上記生理学的データは、各エポックに対する1つのデータサンプルを提供するためにサブサンプリングされ、エポックは格納されている該生理学的データの特徴に部分的に基づいて選択される所定の期間である、項目1に記載のセンサ。
(項目11)
上記メモリ回路は、該記憶回路がいつ一杯になったかを示す情報を提供する、項目1に記載のセンサ。
(項目12)
上記メモリ回路は、上記生理学的データの特定のサンプルの各々に関連する時間の情報をさらに格納する、項目1に記載のセンサ。
(項目13)
上記メモリ回路は、上記センサのモニタからの切断を示す情報をさらに格納する、項目1に記載のセンサ。
(項目14)
遠隔モニタに接続するためもの生理学的センサであって、
少なくとも1つの光源であって、各光源が異なった波長で動作するよう選択される、光源と、
該少なくとも1つの光源によって出射される光を受け取るよう動作する少なくとも1つの光検出器と、
生理学的データを格納し、そして要求された場合に該データを提供するメモリ回路であって、該生理学的データが該センサによってモニタされている患者の生理学的状態を示す、メモリ回路と、
該メモリ回路に結合されたインタフェース回路であって、該インタフェース回路が該メモリ回路へおよび該メモリ回路からのデータ転送を調整する、インタフェース回路と
を包含するセンサ。
(項目15)
生理学的データを格納する方法であって、
センサを介して生理学的状態を示す少なくとも1つの信号を検出する工程と、
該検出された少なくとも1つの信号を調整してデータサンプルを生成する工程と、
該データサンプルを処理して該生理学的データを生成する工程であって、該生理学的データは該生理学的状態を記述する、工程と、
該生理学的データを該センサ内に位置するメモリ内に格納する工程と
を包含する、方法。
(項目16)
上記生理学的データを符号化して、圧縮された生理学的データを生成する工程をさらに包含する、項目15に記載の方法。
(項目17)
上記生理学的データをサンプリングまたは再処理して、圧縮された生理学的データを生成する工程をさらに包含する、項目15に記載の方法。
(項目18)
上記生理学的データは、血液酸素飽和度データを含む、項目15に記載の方法。
(項目19)
モニタと該モニタに結合されたセンサとを包含する生理学的検査機器であって、
該モニタは、
電気信号を受け取り、そして該電気信号を処理してサンプリングデータを提供する調整回路と、
該サンプリングデータを処理して生理学的データを提供する処理回路であって、該生理学的データは患者の生理学的状態を示す、工程とを含み、
該センサは、
少なくとも1つの光源であって、各光源が異なった波長で動作するよう選択される、光源と、
該少なくとも1つの光源によって出射された光を受け取るよう動作する少なくとも1つの光検出器と、
該生理学的データの少なくともいくつかを格納し、そして要求された場合に該データを提供するメモリ回路とを含む、
検査機器。
(項目20)
上記モニタは、ユーザ入力に応答して、該少なくともいくつかの生理学的データを上記感覚メモリ回路へ転送するための、ユーザ入力に応答する手段を含む、項目19に記載の検査機器。
(項目21)
上記モニタは、上記患者の酸素脱飽和イベントに応答して、上記少なくともいくつかの生理学的データを上記感覚メモリ回路に転送するための、酸素脱飽和イベントに応答する方法をさらに含む、項目19に記載の検査機器。
(項目22)
上記モニタは、上記患者の酸素飽和度が該患者の前回の酸素飽和度から所定量より多く異なる場合に、上記少なくともいくつかの生理学的データを上記感覚メモリ回路へ転送するための、しきい値交差に応答する手段をさらに含む、項目19に記載の検査機器。
(項目23)
上記モニタは、上記処理回路に結合された符号化器をさらに含み、該符号化器が上記生理学的データを符号化して、圧縮された生理学的データを提供する、項目19に記載の検査機器。
(項目24)
上記モニタは、上記メモリ回路から圧縮された生理学的データを受け取り、そして該データを復号化する復号化器をさらに含む、項目23に記載の検査機器。
(項目25)
上記生理学的データは血液酸素飽和度データを含む、項目19に記載の検査機器。
(項目26)
患者の飽和度履歴データを格納および提供するための酸素計システムであって、
該患者に光を通す2つ以上の光源であって、該光源が異なった波長で動作する、光源と、
該光源から光信号を検出し、そして該検出された光信号を示す電気信号を提供する検出器と、
該電気信号を処理して該電気信号に対応するデータサンプルを提供する調節回路と、
該データサンプルを受け取り、そして該データサンプルを処理して飽和度データを提供する処理回路と、
該飽和度データを格納するセンサ内のメモリと、
該格納された飽和度データを回収し、そして該飽和度データの表示を命令する回路と
を包含する酸素計システム。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、生理学的測定システムの実施形態の簡略ブロック図である。
【図2】図2は、モニタおよびセンサの実施形態のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(具体的実施の説明)
図1は、生理学的測定システム100の実施形態の簡略ブロック図を示す。システム100は、電気ケーブル122を介してディスプレイユニット120に結合するモニタ110を含む。モニタ110は、第2の電気ケーブル128を介して患者132に適用されるセンサ130に、さらに結合する。センサ130は、光源(例えばLED)および電子光学構成要素を電気ケーブル128に結合するための適切な構成要素と共に光検出器を含む。センサ130は、クリップ留めのセンサとして図1に示される。しかし、本発明は、接着剤および他の取り付け手段によって患者に付けられるものも含め、多くのセンサ実施例に適用し得る。具体的実施形態においては、モニタ110は脈拍酸素計である。
【0016】
血液酸素飽和度を測定するために、光源から2つ以上の波長の光(例えば、赤色および赤外線)が、患者の血液灌流組織(例えば、指の中)を通して伝送され、光検出器によって検出される。波長の選択は、多くの要因に基づいている。そのような要因は、患者および伝送媒体の吸収特性を含む。光源および光検出器は一般的に、モニタ(例えば脈拍酸素計)に結合するセンサ内に収納される。検出された光信号は、次に処理のためにモニタに提供される。
【0017】
図2は、モニタ110およびセンサ130の実施形態のブロック図を示す。モニタ110内において、時間処理ユニット(TPU)220は、制御信号222をLEDドライバ224に提供する。LEDドライバ224は、データ線226を介して、センサ130内のLED230を交互に起動させたり停止したりする。特定の実施例によっては、LED230は、2つ以上のLEDを含み、およびLEDドライバ224は、LEDに必要な駆動信号を提供する。起動されると、LED230からの光は、媒体(例えば、空気または光ファイバケーブルなど実施例による)を通して患者の組織234へ送られる。光は、組織を透過または組織から反射された後、別の媒体(例えば、空気または別の光ファイバケーブル)を介して光検出器240によって受け取られる。光検出器240は、受け取った光を光電流に変換する。光電流は、次に光電流を増幅するアンプ250に提供される。
【0018】
図2に示されるように、アンプ250からの増幅された信号は、2つの異なるチャネルのための回路に提供される。赤色と赤外線の波長それぞれに対して一つのチャネルが対応する。3つの波長の実施例では、3つのチャネルのための回路が提供される。各チャネル回路はローパスフィルタ254と直列に結合されるアナログスイッチ252を含み、さらにローパスフィルタ254はアナログ−ディジタルコンバータ(ADC)256と直列に結合される。時間処理ユニット220からの制御線258は、起動されているLEDに対応するチャネルからのサンプルデータを選択する。すなわち、ADC256aからのサンプルデータは、赤色LEDが起動される場合に選択され、およびADC256bからのサンプルデータは、赤外線LEDが起動される場合に選択される。ADC256からのサンプルデータは、さらに処理するためにそのデータを格納するバッファ260に提供される。1つの実施例において、バッファ260が周期的に一杯になると、バス264に結合されたプロセッサ262は、バッファ260からメモリ266へデータの転送を命令する。図2に示されたモニタの実施例は、多くの実施例の1つである。別の脈拍酸素計の実施例は、前述の米国特許第5,853,364号に開示されている。本発明は、種々のモニタの実施例に応用するために改変され得る。
【0019】
本発明のセンサは、生理学的履歴データを格納し、そして要求された場合にデータを提供する回路をさらに含む。図2に示されるように、センサ130は、インタフェース回路238に結合されたメモリ236を含む。インタフェース回路238は、信号調整を提供し、そして、アドレス復号化等の他の機能も提供し得る。インタフェース回路238は、バス270を介して、モニタ110内のデータインタフェース回路268に結合する。インタフェース回路238および268を通して、生理学的データは、モニタ110とセンサ130との間で転送される。
【0020】
1つの実施形態においては、本発明のセンサと従来のセンサおよび従来のモニタとの互換性を高めるために、バス270は、新しい信号線を使用して(すなわち、従来のセンサの既存の信号線を使用も共用もせずに)実施される。バス270は、シリアルバス、パラレルバス、または他のバスアーキテクチャとして実施され得る。この実施例を用いると、本発明のセンサ130が本発明の特徴に対応できないモニタと接続される場合に、インタフェース回路238上の信号はモニタによって単に無視されるか、あるいはモニタによって要求されない。
【0021】
別の実施形態において、インタフェース回路238および268は、従来のセンサおよびモニタに既存の信号線または信号ワイヤを介して相互作用する。例えば、インタフェース回路238および268は、データ線226およびタイムマルチプレックスを介してLEDドライバ224からのLEDドライブ信号に結合し得る。
【0022】
時間処理ユニット220、バッファ260、プロセッサ262、メモリ266、およびデータインタフェース回路268は、種々の方法で実施され得る。例えば、これら構成要素は、MotorolaのDMC68HC16マイクロコントローラなどの一つの集積回路内で実施され得る。これら構成要素は、またアプリケーション特定集積回路(ASIC)、ディジタル信号プロセッサ、マイクロコントローラ、または他の回路内でも実施され得る。
【0023】
メモリ236は、ランダムアクセスメモリ(RAM)、フラッシュメモリ、プログラム可能読み出し専用メモリ(PROM)、消去可能PROM(EPROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、同様のプログラム可能および/または消去可能メモリ、あらゆる種類の消去可能メモリ、追記型メモリ、あるいは他の書き込み動作可能メモリ技術、として実施され得る。メモリ236およびインタフェース回路238は、大きさおよびコスト低減のために1つの集積回路内に統合され得る。
【0024】
1つの具体的実施形態において、履歴データを保存しそして偶発的な消去を防止するために、センサメモリは、一回だけ書き込みされ得る。このメモリ特性は、またセンサ処理中のデータ消去を防止する。一回だけ書き込みされ得るメモリ装置の1具体例は、Dallas Semiconductor Corpから入手可能な2ワイヤEPROMデバイスがある。
【0025】
別の実施形態において、メモリは複数回にわたって消去および上書きされ得る。このメモリ特性は、例えば、大量のメモリを含み得る使い捨てでないセンサにとっては好都合であり得る。そのような「特別」センサは、例えば手術室または集中治療室内部、あるいは救急車搬送中などの、再使用可能センサを使用する傾向の高いアプリケーションにより適し得る。消去および上書きされ得るメモリ装置の具体例は、フラッシュ、EEPOM、バッテリバックアップ付きRAM、および他の技術である。
【0026】
本発明は、種々の酸素計システムの実現に適用可能である。例えば、1つの実施形態において、アダプタモジュールおよび光ファイバケーブルが、ケーブル128とセンサ130との間に配置され得る(図1参照)。アダプタモジュールは、電子光学構成要素を光ファイバケーブルに結合させる光源、検出器、および適切なオプティクスを含む。光ファイバケーブルは、光を患者に導いたり、患者から光を受け取ったりする。光ファイバケーブルは、また長い延長ケーブルおよび比較的短い「センサ」ケーブルに区分され得る。光ファイバケーブルはガラスまたはプラスチックファイバのいずれかであり得る。この実施形態によって、電子光構成要素は再使用され得、および短いセンサケーブルのみを患者毎に取り替える。
【0027】
図2は、2波長の光を使用する酸素計の実施例を示す。しかし、2つより多いLEDからの光も使用され得る(すなわち精度改善のため)。1つの光源からの光も、一般的に適切な光学フィルタと共に使用され得る。さらに、LED以外の光源も使用され得る。例えば、レーザまたは白色光源が、送信または受信端のいずれかで適切なフィルタと共に使用され得る。
【0028】
センサは、センサの実施例またはセンサが使用されるアプリケーションに応じて、異なる数の要素が含まれ得る。1つの実施例において、センサはLEDおよび光検出器を含む。この実施例で、光源および検出器を患者の近くに設置することによって伝送ロスを低減する。別の実施例において、センサは、伝送媒体(例えば、短い光ファイバケーブル)のみを含み、LEDまたは光検出器は含まない。この実施例はコストを低減する、なぜならLEDおよび光検出器は、アダプタモジュール内に含まれ、そして再使用可能であるからである。しかし別の実施例では、コストおよび伝送ロスを低減する妥協として、センサはLEDまたは光検出器を含み得る。これらの種々の変形例に対して、センサは生理学的履歴データを格納するためのメモリを含む。
【0029】
通常の動作中は、センサがモニタに接続されると、モニタはセンサ内の光検出器から信号を受け取り、そしてこの信号を処理して所望の生理学的データを得る。従来のモニタの中には、生理学的データがモニタ内のメモリに格納され、そして後に要求された場合に回収されるものがある。しかし、患者が新しい場所に移動され、および異なるモニタが使用される場合は、前回の場所でモニタに格納されたデータは、一般的に現在の場所では利用可能でない。
【0030】
本発明に従えば、生理学的データは、通常の方法でモニタ内で処理され、表示され、および格納される。加えて、データは、センサ内に位置するメモリ236に格納されるために、圧縮され、そしてセンサに提供される。センサが別のモニタと接続されると、新しいモニタは、センサメモリ内に格納されたデータを回収し、回収されたデータを解凍し、そして解凍されたデータを表示し得る。1つの実施形態では、センサがまず新しいモニタに接続されると、モニタは、最新の所定の期間(すなわち、直前の20または30分間)に対する生理学的履歴データを回収し、そして表示する。この所定の期間は、臨床医によってプログラムされ得るか、またはセンサメモリへプログラムされ得る。
【0031】
あるいは、モニタは、健康管理者が単に制御ノブをモニタに起動させることによって、健康管理者(または臨床医)によって要求があればいつでも、生理学的履歴データを回収し、そして表示するよう構成され得る。制御ノブは、例えばセンサがモニタに接続されるなどの所定のイベントが生じた場合にデータを自動的に回収するために、必要に応じてプリセットされ得るし、または健康管理者による明確な命令時にデータが回収されるだけになるようにあらかじめ構成され得る。
【0032】
上記のように、本発明は、血液酸素飽和度および心拍数データを含むがこれらに限定されない種々の生理学的データを格納および提供するために使用され得る。明確のため、本発明は、血液酸素飽和度(SpO2)データの格納および回収に関連して記載される。光検出器240によって検出された光の強度を表す受信信号に基づき、プロセッサ262は、当該技術分野で公知のアルゴリズムを使用して酸素飽和度を測定する。これらアルゴリズムは、経験的に決定され、そして、例えば使用される光の波長に相当し得るキャリブレーション係数を用いる。
【0033】
特定の患者に対する飽和度データは、センサに取り付けられたモニタによって処理され、そして処理されたデータは、センサメモリ内に格納されるためにセンサに提供される。センサメモリの選択は、コスト、特定のアプリケーションのために格納される必要のあるデータ量、達成可能なデータ圧縮量、物理的大きさなどの多くの要因に依存している。酸素飽和度に関しては、約7日間の履歴データを格納すれば多くのアプリケーションに対して十分である。
【0034】
1つの実施形態において、センサメモリ内に格納されるべきデータ量を低減するために、生理学的データは格納する前に圧縮される。1つの実施形態において、圧縮はモニタ内にある機能によって行われる。あるいは、符号化回路は、センサ自体上にあり得る。モニタは、センサメモリから回収されたデータを解凍する機能をさらに含む。圧縮することで、センサ内により小規模メモリを使用することが可能となる。このことは、とくに好都合である、なぜならセンサは一般的に、患者に対して使用された後に廃棄されるからである。圧縮で、またより多くのデータを一定の大きさのメモリに格納できる。大量のデータを格納する能力は、数時間または数日にわたってデータが収集されること要求する多くの診断アプリケーションにとって重要である。
【0035】
圧縮方式は、格納されている生理学的データの公知の特徴を利用するよう設計され得る。例えば、酸素飽和度が一般に急速には変化しないことは、公知である。この特徴は、以下に記載するように、大幅な圧縮を行うのに活用され得る。
【0036】
図3は、酸素飽和度データに対する1つの圧縮方法のブロック図である。飽和度データは、データをフィルタするフィルタ312に提供される。フィルタされたデータは、連続なフィルタされたデータサンプル間の差分値を決定する差分脈拍符号エンコーダ(DPCM)314に提供される。差分データは、差分データを「再量子化する」量子化器316に提供される。量子化されたデータは、効率的なセットの符号を使用して量子化されたデータを符号化するランレングス符号化器(RLC)318に提供される。これらの要素はさらに以下に記載される。
【0037】
1つの実施形態において、酸素飽和度は、急速には変化しないことが公知であるため、飽和度データは、所定の時間(本明細書中ではエポックと呼ぶ)にわたって平均され、かつ1つの平均化された飽和度サンプルは、そのエポック中の飽和度を表すものとして提供される。1つの具体的実施形態において、エポックは、1分から5分間の継続時間を有する時間であるが、任意の異なる継続時間が用いられ得る。エポックはまた、格納されている生理学的データの特徴(すなわちゆっくり変化する生理学的データに対するより長いエポック、および速く変化するデータに対するより短いエポック)に基づいても設定され得る。
【0038】
フィルタ312は、飽和度データをフィルタする。フィルタ312は、当該分野で公知の方法で設計されたディジタルフィルタであり得る。1つの実施形態において、フィルタ312は、エポックに関する帯域幅を有するローパスフィルターである(すなわち、BW≒α/tEPOCH、ここでBWはフィルタ帯域幅、αは比例定数、およびtEPOCHはエポック期間、である)。フィルタ312の特徴は、またフィルタされるデータの特徴に合わせてもイコライズされ(すなわちスペクトルに形成される)得る。
【0039】
さらにデータを滑らかにし、そして圧縮量を増加させるために、飽和度データは、数エポック期間にわたってフィルタされ得る。しかし、長時間にわたって飽和度データを平均化することは、飽和度の急速な変化をマスクし、また飽和度の急速な変化は、平均化処理中に滑らかにされ、そして失われてしまう。急速な変化イベントを捕らえるために、移動平均フィルタが使用され得る。
【0040】
1つの実施形態において、移動平均フィルタは、1つのエポックにわたる飽和度データをフィルタするフィルタ(すなわち、シングルエポックフィルタ)、および複数のエポックにわたるデータをフィルタする別のフィルタ(すなわち、マルチエポックフィルタ)を含む。移動平均フィルタは、シングルエポックフィルタから平均化された飽和度データをモニタし、そして所定のウィンドウの範囲外の平均化された飽和度サンプルを検出する。所定のウィンドウは、現在の平均化された飽和値からプラスおよびマイナス数飽和ポイントに設定され得る。例えば、現在の平均化された飽和度サンプルが90の飽和度ポイント値を有するならば、所定のウィンドウは、90を中心とする±2の飽和ポイント(例えば、88〜92)に設定され得る。次に、移動平均フィルタは、次の平均化された飽和度サンプルが88より下、または92より大きい値を有する場合、フラッグを起動する。シングルエポックフィルタからの平均化された飽和度サンプルが、ウィンドウ内にあれば、マルチエポックフィルタからの平均化された飽和サンプルが使用される。そうでない場合、ウインドウから外れたシングルエポックフィルタからの平均化されたサンプルが飽和度の急速な変化を示す。この検出されたサンプルを使用して、移動平均を再開させ、そしてシングルエポックフィルタからの新しい値に対する平均化された飽和度サンプルの変化を引き起こす。移動平均フィルターは、公称データの圧縮を高めるフィルタされたデータストリームを維持しつつ、急速変化の探知および急速変化の大きさの検出に対応する。
【0041】
酸素飽和度のゆっくり変化する性質は、差分符号化の使用を示唆する、なぜならサンプル間の差を表すのに必要なビットが実際のサンプル値より少ないからである。差分符号化を用いることで、最初の飽和度サンプルは、実際のサンプル値を使用して格納される。次の飽和度サンプルは、前の飽和度サンプルからのデルタ値として表される。周期的に、実際のサンプル値が、差分符号化におけるエラーの蓄積を防止するため、およびエラーの伝搬を制限するために格納される。DPCM314は、連続した飽和度サンプル間の差分値を決定する。差分値は、前の飽和度サンプルから現在の飽和度サンプルを引き算することによって計算される。
【0042】
多くのアプリケーションのために、非常に高い精度で飽和度データを格納する必要がない。例えば、いくつかのアプリケーションのために、±1の飽和ポイントの変化は、飽和度において変化無しと示しても充分かつ受け入れられ得る。このように、DPCM314からの差分値は、量子化器316によって再量子化され得る。
【0043】
1つの実施形態において、量子化器316は、例えば±1の飽和ポイントの量子化ウィンドウを有するウィンドウコンパレータである。もし、差分値が量子化ウィンドウの範囲内にあれば、量子化器316は、飽和度において「変化無し」を示し、そしてゼロを出力する。もし、差分値が量子化ウィンドウの範囲外であれば、量子化器316は、追加処理せずこの値を通す。量子化器316はまた、例えば、飽和度サンプルの2倍の段幅(step size)を有する量子化器などのように、他の方法でも実施され得る。
【0044】
量子化器316による再量子化は、再構築されたデータに量子化エラーを導入する。このエラーは、連続したサンプルにわたって蓄積され得、そして許容可能なしきい値を超え得る。この現象を回避するため、量子化器316に結合されたエラーアキュムレータ320は、量子化器316によって導入されたエラーを蓄積し、そして蓄積されたエラーをDPCM314に提供する。DPCM314は、差分値を計算する際に、蓄積されたエラーを考慮する。
【0045】
酸素飽和度のゆっくり変化する性質ならびに差分符号化および再量子化の使用により、量子化器316からのデータ値の多くは、ゼロである。1つの実施形態において、ランレングス符号化器(RLC)318は、量子化器316から量子化されたデータ受け取り、非ゼロ値を送信し、および非ゼロ値間のゼロ値の数を表す符号を送信する。例えば、(3、0、0、0、0、0、0、4、...)のシーケンスに対しては、RLC318は、最初の「3」、次に6つの連続したゼロを示す符号、次に「4」を送信する。1つの実施形態において、連続したゼロの数を表す符号は、連続したゼロの最も起こりそうなシーケンスにより短い符号幅を有する符号が与えられ、かつあまり起こりそうにないシーケンスにより長い符号幅を有する符号が与えられるように生成される。この符号の特徴は、当該技術分野で公知のHuffman符号のものと類似している。
【0046】
図3に示される要素は、種々の方法で実施され得る。例えば、これらの要素は、プロセッサ(すなわち、図2のプロセッサ262)、ディジタル信号プロセッサ、ASIC、または他の回路内で実施され得る。図3の要素の機能は、メモリ266のサポートを用いてプロセッサ262上で実行されるプログラムコードによってもまた提供され得る。
【0047】
図3は、1つの圧縮実施形態を示す。別の圧縮実施形態において、非ゼロ差分値は、エポック数と共に転送される。上で示したシーケンスに対して、送信された値は、(3、1)、(4、8)、などであり得る。対の最初の数字は、差分値であり、かつ2番目の数字は、エポック数である。いくつかのアプリケーションに対しては、この実施形態は、図3に示される実施形態に対してさらなる圧縮を提供し得る。
【0048】
さらに別の圧縮実施形態において、飽和値、および飽和値が所定の量子化ウィンドウ内にあるエポックの数が記録される。この実施形態において、差分値を計算する必要はない。また、この実施形態は、あるタイプの生理学的データに対するデータ格納要求を著しく低減し得る。
【0049】
いくつかの圧縮実施形態は、酸素飽和度データに対して記載されてきた。本発明は、圧縮を使用することなく実用化され得るが、さらなる機能が、圧縮の適切な使用によって提供される。本明細書中で使用されるように、圧縮は、たとえわずかでも、モニタによって(公称の方法で)生成される際に生理学的データの原形を変更するすべての処理を含む。他の圧縮方式もまた使用され得、そして本発明の範囲内にある。当然ながら、非圧縮が必要に応じて使用され得る。
【0050】
酸素飽和度データ以外のさらなるデータは、センサメモリ内に格納され得る(すなわち、患者の診断またはモニタの助けになるために)。例えば、データのタイムスタンプが格納され得る。この場合、最初のデータサンプルは、データが記録される特定の時間(例、日付および時間)を含む。次のデータサンプルは、最初(または前回)のデータサンプルから離れたエポックの数によって示され得る。センサメモリは、モニタからのセンサの切断指示もまた格納し得る。このデータによって、臨床医または医療従事者は、センサメモリから回収されたイベントを叙述することができる。
【0051】
センサメモリは、センサメモリが一杯である場合を示すフィールドをまた含み得る。このフィールドにおける情報は、モニタに提供され、モニタにセンサメモリへのデータ送信を中止するように命令し得る。このフィールドにおける情報は、臨床医または医療従事者を公知するようモニタによってはっきりと表示され得る。また、応答において、モニタは、警告を生成し(すなわち、明滅光もしくは音声警告、または両方)、臨床医の注意をセンサの動作状態に引きつける。
【0052】
1つの具体的実施形態において、飽和度データは、Nビットのデータフィールド、およびデータ値が保存されるエポック数を含むフィールドを含むデータフォーマットに格納される。しかし、多くの他のデータフォーマットが使用され得、そして本発明の範囲内にある。
【0053】
上記のように、1つの具体的実施形態において、センサメモリは、追記メモリ装置として実施される。センサメモリ内のフィールドは、センサが再処理され得る際に、モニタが再処理されるセンサに結合されることを決定するように設定され得る。モニタは、このフィールドにおける情報を使用して、履歴データの表示をディセーブルし得る(例えば、メモリが追記型であり、かつ比較的一杯である場合)。あるいは、メモリが消去可能であれば、生理学的履歴データを格納するためのフィールドは、センサ再処理中に消去され得る。
【0054】
データのディセーブルは、収集されたデータの統合を確実にするいくつかのアプリケーションに好適であり得る。一回だけ書き込みされ得、そして固定されたメモリサイズを有するメモリデバイスに対して、「古い」データがどこから来たか、または再処理されたセンサ上でどれだけのメモリがまだ利用でき得るかを決定することは不可能であり得る。さらに、古い患者からのデータが表示され、そしてセンサに結合する患者に対する有効なデータとして間違えられる可能性を避けることが非常に望まれる。使用後利用できる書き込み未のメモリの量を制御または決定することは、そのメモリ量がゼロから一杯まで変化し得るため、容易でないので、利用できるメモリの量が広範囲に変化するセンサを用いる結果、一貫性がなかったり、ひいては顧客の不満を生じ得る。再処理されたセンサからデータを表示しないことによって、これらの起こり得る問題は回避される。
【0055】
本発明は、血液酸素飽和度データの格納に関して記載した。しかし、センサメモリは、例えば、心拍、体温などの他の生理学的特徴のためのデータも格納し得る。例えば、特に、センサメモリは、NIBP、IBP、およびECG波形を格納するために使用され得る。さらに、メモリコストが下がり続け、かつ大規模メモリが入手可能となるにつれ、より複雑な生理学的パラメータが測定および格納され得る。
【0056】
さらに、モニタに関する情報が、生理学的データと共に格納されるか、または埋め込まれ得る。このさらなる情報は、例えば、センサが結合するモニタのシリアル番号、センサ接続/切断時間、モニタ診断、およびその他を含み得る。この情報によって、臨床医は、例えば訴訟または問題解決において有用であり得る、機器および生理学的データに関する履歴情報、、ならびに機器にアクセスし得る。
【0057】
本発明は、従来のモニタおよびセンサにおいて利用できない利点を提供する。例えば、本発明は、一定の時間にわたって2つ以上のモニタに接続し得る移動中の患者をモニタすることに対応する。1つのそのような状況は、救急処置室へ救急車で搬送され、後で集中治療室へ転送される患者である。本発明は、こういったアプリケーションに特に有益である、なぜならこの特定の患者は細心のモニタリングをもっとも必要とする可能性があるからである。
【0058】
本発明はまた、生理学的特徴を記録するために使用され得る。例えば、酸素の必要な家庭介護の患者にとって、酸素飽和度の記録は、一般的に必要である。この場合、本発明のセンサは、所定の期間(すなわち、1週間)にわたり患者の飽和度データを格納するのに使用され得る。この期間終了時に、介護人は、センサを単に取り外し得、そして患者の飽和度の記録としてセンサを遠方に送り得る。本発明はまた、例えば睡眠診断、脱飽和などの他のアプリケーションのためのデータを収集するために使用され得る。
【0059】
本発明のセンサは、検出した信号の信号処理および処理されたデータの圧縮を行うモニタ組み合わせて使用する目的で記載した。別の実施形態において、本発明のセンサは、検出した信号を処理する(および、必要または所望ならば、圧縮する)ための機能を含む。この実施形態は、好都合にも、モニタからの補助なしににセンサの独立な動作に対応する。センサ内に格納されたデータは、表示のためにモニタに提供され得る。センサ内の回路によって行われ得る信号処理および圧縮の量は、利用できる技術によって制限されるのみであり、このことも時が経てば必ず改良される。近い将来、大規模な信号処理および圧縮を必要としない生理学的データ(例えば、体温、波形の最高幅、心拍数など)が、センサによって収集および格納され得る。
【0060】
血液酸素飽和度データの格納のために使用される本発明をさらに理解するために、光検出された信号から酸素飽和度を導き出す記載は、前述の米国特許番号第4,911,167号、5,645,059号、および5,853,364号に含まれる。
【0061】
格納されたデータは、実際の生理学的状態(すなわち、酸素飽和度)の値に相当し得るか、または状態値を示し得る、そしてこの状態値は、ルックアップテーブルを参照してモニタによって決定可能であるか、または所定のアルゴリズムを使用して格納されたデータから状態値を計算するモニタによって、決定可能である。
【0062】
好適な実施形態の前述の記載は、当業者が本発明を作成、または使用し得るように提供される。これらの実施形態の種々の変更は、当業者に対して容易に明白であり、本明細書中に定義された全般的原則は、発明的機能を使用せずに他の実施形態に適用され得る。例えば、本発明は、患者の心拍、体温、組織に供給する個々の血液拍動値、または血液拍動速度などの他の生理学的データの格納に適用され得る。このように、本発明は、本明細書中に示された実施形態に限定される意図はなく、本明細書中に開示された原則および新規の特徴と一致する最も広範な範囲にしたがう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−227640(P2010−227640A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−161111(P2010−161111)
【出願日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【分割の表示】特願2000−603575(P2000−603575)の分割
【原出願日】平成12年3月7日(2000.3.7)
【出願人】(591191572)ネルコー ピューリタン ベネット エルエルシー (22)
【Fターム(参考)】