生理活性ガラス組成物
【課題】容易に適用されかつ歯構造にすぐに付着するものであって、歯構造と化学的および物理的相互作用できる組成物を提供することである。
【解決手段】90μmより小さい粒径範囲を有する新規なシリカを主成分とする生理活性ガラス組成物であり、この組成物は練り歯磨き、ゲルなどのようなデリバリー剤と共に使用されることができ、中核のシリカ粒子からCaとPの即時および長期のイオン放出による体液との速やかなかつ連続的な反応を起こして、歯の細管の上および中へ析出される安定な結晶性ヒドロキシ炭酸アパタイト層を生成させ、歯の過敏症の即時および長期の回復および歯の表面の再鉱物質化のためになる新規な生理活性ガラス組成物。
【解決手段】90μmより小さい粒径範囲を有する新規なシリカを主成分とする生理活性ガラス組成物であり、この組成物は練り歯磨き、ゲルなどのようなデリバリー剤と共に使用されることができ、中核のシリカ粒子からCaとPの即時および長期のイオン放出による体液との速やかなかつ連続的な反応を起こして、歯の細管の上および中へ析出される安定な結晶性ヒドロキシ炭酸アパタイト層を生成させ、歯の過敏症の即時および長期の回復および歯の表面の再鉱物質化のためになる新規な生理活性ガラス組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は同時係属出願の米国特許出願第08/597,936号(出願日1996年2月7日)の一部継続出願であり、その開示は引用によりここに組み入れられる。本出願はさらに同時係属出願の米国仮特許出願第60/010,795号(出願日1996年1月29日)の一部継続出願であり、その開示は引用によりここに組み入れられる。
(発明の分野)
本発明は生理活性ガラス組成物に関する。さらに詳細には、本発明は従来の組成物よりも著しく低い粒径範囲の組み合わせを有する粒子を含む改良された生理活性ガラスの組成物に関する。本発明はまたそのような生理活性ガラス組成物の使用を含むいろいろな治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトの歯のエナメル質は自然に鉱物質除去の過程を経ることになる。エナメル質の唾液および食物への露出は歯から鉱物質を徐々に浸出して、結局は腐食し易くする。この鉱物質除去の過程は結果として初期の虫歯をもたらすが、この初期の虫歯は典型的なエナメル質表面の極く小さな欠損であり、従ってこれまでは通常治療されないままに放置される。虫歯の象牙質の鉱物質除去もまた、セメント−エナメル質接合の下の欠損から生ずる象牙質の露出された区域を有する患者において起こることがある。従って、フッ化物の塗布およびその他の局所治療を含めて、この自然の鉱物質除去の過程を遅くさせることに関連する多くの研究がなされた。
例えば、米国特許第5,427,768号明細書は、リン酸カルシウム固形物と二酸化炭素に関して過飽和されているリン酸カルシウム溶液を開示している。その溶液は歯の腐食部、露出した歯根、または象牙質のような歯の弱い部分の上または中にフッ化物を含むまたは含まないリン酸カルシウムを析出する。米国特許第5,268,167号および同第5,037,639号明細書は無定形カルシウム化合物、例えば、無定形リン酸カルシウム、無定形フッ化リン酸カルシウム、および無定形炭酸リン酸カルシウム、を歯の再鉱物質化における用途のため使用することを開示している。これらの無定形化合物は、歯の組織に適用されると、歯の弱化を防ぐおよび/または補修する。これらの方法は、(1)適用のために刺激性になり得る低いpHを必要とする、(2)速い反応が結果として非常に短い期間の効果をもたらす、(3)これらの方法は溶液を使用するので、現実の反応は患者から患者へ調節することが難しい、および(4)それらの反応は速やかでありかつ持続の短いものであるから、その効果を維持するために手順を繰り返さなければならない、などの不利な点を含む。また両方法は混合投与の前に少なくとも1種の溶液を加圧二酸化炭素と共に維持することを必要とするので、それはこの方法を処方箋なしの過程に組み入れることを難しくする。
鉱物質除去は結局エナメル質被覆の空洞化を導き、下にある歯の構造体の露出を来す。通例、この型の腐食はその腐食した区域を削りとって半永久的な充填材を挿入することにより処置されている。しかし、腐食の進行を抑えかつ逆進させる、侵害のより少ない方法が求められている。
予防のための穴と裂け目の充填材が、特に腐食の危険にある区域の腐食を予防するために広く使われるようになった。これらの充填材に含まれるのは、乾式塗布と固定材の使用を必要とするポリマーまたはその他のセメントであった。ライナーとベースは、穿孔により露出された表面のような新しく露出された歯の表面を処置するために使用される材料である。空洞が作られた後、空洞に充填材を詰める前にライナーまたはベースを塗布することが慣習である。ライナーは材料の薄い皮膜であり、ベースは比較的厚い皮膜である。ライナーおよびベース材料は歯材界面における象牙質の透過性を低下させかつ充填材の周囲からおよびこれを通過する微小な漏れを防ぎ、象牙質細管を封入するように設計される。初期のライナーまたは「空洞用ワニス」の例は有機溶媒に溶かされた有機「ガム」のような材料を含む。有機溶媒が蒸発すると、そのガムは後に残される。これらの有機ガムに伴われる不利な点はしばしば文献に記載されており、結合部が漏れ易い、付着力に欠ける、酸に侵され易いなどの弱点を含む。他の一つのライニング方法が米国特許第4,538,990号明細書に開示されており、1〜30%w/vの中性シュウ酸塩、例えばシュウ酸二カリウム、を塗層に塗り、次にその層へ0.5〜3%w/vのシュウ酸一水素一カリウムのような酸性シュウ酸塩の溶液を塗布することが記載されている。研究によると、この方法による細管の封入閉塞は貧弱であることが示された。
米国特許第5,296,026号はガラスリン酸塩セメントおよびそれらを骨の中の空洞および歯における溝を充填するための外科用埋め込み材料として使用する方法を記載している。それらのセメント組成物はP2O5、CaO、SrOおよびNa2Oを、治療薬を含むまたは含まない水性液と組み合わせて含む。その粉と液を混合すると硬化反応を生ずる。そのセメントが硬組織の中に埋め込まれると、それは充填材/移植材料として役立ち、そして浸出性成分の放出と共にそれは健康な骨の治療と保全に役立つ。
いろいろな生理活性および生体適合性のガラスが骨の代替材料として既に開発されてきた。若干の研究は、これらのガラスが生理機能系における骨形成を誘導または援助するであろうことを示した。Hench et al., J. Biomed.Mater. Res. 5:117-141(1971).その骨とガラスの間に発現された結合は極めて強くかつ安定であることが証明された。Piotrowsky et al., J. Biomed.Mater. Res. 9:47-61(1975).それらのガラスの毒物学評価は多数の生体外および生体内モデルにおいて骨または軟組織に毒性効果を示さなかった。Wilson et al., J. Biomed. Mater. Res. 805-817 (1981).ガラスは、多分ガラスの表面からのイオンの溶解により誘導されたpHの変化およびガラス表面への細菌の粘着性の欠如に関連して細菌発育抑制性または殺菌性であることが報告された。Stoort al., Bioceramics Vol. 8, p. 253-258 Wilsonet al.(1995).
ガラスの骨への結合はそのガラスの水溶液への露出と共に始まる。ガラス内のNa+は体液からのH+と交換してpHの増加を生ずる。CaとPはガラスから移動してCa−Pに富む表面層を形成する。このCa−Pに富む表面層の下にあるのは、Na,CaおよびPイオンの損失のためにますますシリカに富むようになる層である(米国特許第4,851,046号明細書)。
歯科用の固体埋め込み材としての生理活性ガラスの作用が、Stanley et al., Journal of Prostetic Dentistry, Vol. 58, pp. 607-613 (1987)により報告された。複製の歯型が製作されて、成長したヒヒの抜歯された切歯の穴の中に埋め込まれた。それらの埋め込み物の周囲の骨への成功した付着が6ケ月における組織学的検査の後に見られた。この技術の臨床的応用は現在人体用に利用できる。Endosseous Ridge Maintenance Implant ERMI (登録商標)。微粒子の生理活性ガラスが歯根骨の欠損の修繕のために使用されたが(米国特許第4,851,046号明細書)、その際90〜710μmの粒径範囲および次の表に記載された組成範囲が用いられた。
成分重量百分率
SiO2 40−55
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
前記のデータは、60%のシリカは生理活性な溶融物に由来するガラスの限界を越えることを示した。Okasuki et al., Nippon Seramikbusu Kyokai Gakijutsu Konbuski, Vol. 99, pp. 1-6 (1991).
前記の90〜710μmの粒径範囲は、骨と直接に接触するとき周期的に使用するために最も有効であることが測定された。しかし、90μm以下の粒径範囲はその高度の反応性と人体部位における速やかな吸収のために効果がなかった。さらに、90μm以下の粒径範囲は、これまた比較的小さな粒子が大食細胞により除去されると推定されるので、軟組織部位においては効果がないことが測定された(米国特許第4,851,046号明細書参照)。200μm以下の粒径範囲はまた高度の反応性のためにある骨の欠損において効果がないことも発見された(米国特許第5,204,106号明細書参照)。
米国特許第4,239,113号明細書(「 ▼ 113特許」)もまた骨セメントの使用を記載している。 ▼ 113特許は10−200ミクロンの粒径範囲を有する生理活性ガラス粉を開示しているのみである。さらに、 ▼ 113特許はまたメチルメタクリレート(コ)ポリマーおよびガラス質の鉱物繊維の使用を必要とする。
前述の方法または組成物のどれも、容易に適用できることと非常に小さな歯構造の欠損の中への浸透を含む歯構造へ付着することおよび適用の後に歯構造との化学的および物理的相互作用を継続するための適当な条件の両者の結合されることによる利益を与えるものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、容易に適用されかつ歯構造にすぐに付着するものであって、歯構造と化学的および物理的相互作用できる組成物を提供することである。
さらに本発明の一つの目的は、いろいろな歯のおよびその他の病状を治療するためにそのような生理活性ガラス組成物を使用する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要約)
本発明は、例えば、下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラス、そして90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の10μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスに関する。本発明はまた、再鉱物質化、割れ目および/または穴の密閉、歯構造の被覆、腐食の処置、歯髄の蓋かぶせ、敏感な手術後の歯構造の処置、象牙質細管および組織再生のための表面の密封などを含むいろいろな歯の治療方法に関する。
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は、例えば、エナメル質の再鉱物質化(remineralization)、初期の虫歯の再鉱物質化、腐食象牙質の再鉱物質化、虫歯の予防、腐食の抑止、腐食の回復、虫歯予防剤、穴と裂け目の充填材、予防用ペースト、フッ化物処理、象牙質充填材などにおいて役に立つ生理活性ガラス組成物を提供する。それはまた練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、および修復材料、例えば、パッキング、間接歯髄被覆剤など、の中に含まれることができる。本発明の組成物はまた、象牙質の感受性(感度)を減少させかつ組織の付着を強めるために歯根手術後の表面の処置に有用である。それらの組成物は多様な歯のおよびその他の病状に関連するいろいろな欠損の治療およびそれにより歯構造を再鉱物質化して歯に実際に化学的および物理的に結合することに有効である。
ここで言及されるとき、再鉱物質化とはヒドロキシアパタイトの形成である。ヒドロキシアパタイトの形成は生理活性ガラス組成物の水溶液への露出と共に始まる。生理活性ガラス内のナトリウムイオン(Na+)は体液の中のH+イオンと交換してpHを増加させると信じられている。カルシウムとリンはそれから生理活性ガラスより移動してカルシウムとリンに富んだ表面を形成する。生理活性ガラス内のナトリウムイオンが溶液の水素イオンと交換を続けるに従って下にあるシリカに富む帯域が徐々に増加する。ある時間の後、カルシウムとリンに富んだ層は結晶してヒドロキシアパタイト材になる。コラーゲンはアパタイト凝集体に構造的に統合されることができる。これ以後言及されるとき、有効な再鉱物質化量とはヒドロキシアパタイトを形成できるいかなる量のことである。
用語「歯構造」はここで使用されるとき、エナメル質、象牙質、歯髄、歯根構造、セメント質、歯根象牙質、冠状象牙質、すべての歯の構成物などを含むがそれらに限定されない歯のすべての造作に言及することが意図されている。
本発明の生理活性ガラス組成物は、模擬体液の中に置かれたとき生体外でヒドロキシ炭酸アパタイトの層を形成することになるガラス組成物である。例えば、次の重量による組成は生理活性ガラスを提供するであろう。
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
これらの特性を有する生理活性ガラスは歯構造との相互作用のためさらに有効な材料を提供する。本発明の生体適合性のガラスは圧倒的に逆方向の免疫反応を誘発しないものである。
本発明により、特定の粒径を有する生理活性ガラスは前記の病状の治療に特に有効であることが発見された。特に、小さな粒子と非常に小さな粒子が組み合わされる場合には驚くべき結果が本発明により得られる。例えば、歯構造と結合することのできる小さな粒子(例えば、約90ミクロンより小さい)並びにそれより小さな粒子(約10ミクロンより小さい)を含む組成物が組み合わせて使用されるとき、これらの粒子の比較的大きい粒子は歯構造に付着してイオン貯蔵所の役をするが、比較的小さい粒子はいろいろな歯構造表面の凹凸の内側に宿る。これらの粒子のより大きなものは付加されたカルシウムとリンの貯蔵所を提供するので、鉱物質化、すなわち小さい粒子により始められたリン酸カルシウム層の析出が継続できる。付加されたカルシウムとリンはすべての歯構造に並びに歯細管のような歯構造表面の凹凸の内側または穴のところに付着した粒子に浸出されることができる。これは引き続いて全反応の継続およびそのような表面の凹凸の内側または穴の上に宿ったこれらの粒子の比較的小さいものの継続した成長を与え、そして有効に表面の凹凸の被覆または充填をもたらすことができる。このカルシウムとリンの過剰濃度はこれらの粒子の比較的小さいものの継続した反応が起こるために必要であるが、それは比較的小さい粒子がそれらの比較的高い表面積の結果としてそれらのイオンを速やかに消耗させるからである。これらの粒子の比較的大きいものは長期の効果としてよりゆっくりと反応してそれらのイオンを放出するであろう。さらに、これらの粒子の比較的大きいものは歯の表面を機械的にすり減らして様々な表面の凹凸を開き、小さい粒子を入らせて表面の凹凸と反応させるであろう。
この効果は多種多様の用途において有益である。例えば、虫歯または腐食の予防において、本発明の組成物は最も小さい表面の凹凸の深みに侵入することができ、また近傍の比較的大きい粒子から継続したイオンの供給を受けるのでその蓄えられたイオンの貯蔵を枯渇させた後も成長することができる。これはまた穴と裂け目に封をするのに非常に役立ち、そしてさらにより有効なかつ永続する密封が得られる。
本発明の若干の実施態様において、極めて小さい粒子が使用される。例えば、2μmからサブミクロンの範囲内にある粒子は約1−2μmの直径である歯の細管の内側にぴったりはまる。これらの細管の閉塞は、例えば、周期的手術の後の感受性の著しい減少に導く。より好ましくは、直径で2ミクロンより小さい粒子と45ミクロンより大きい粒子の混合物が使用される。この組み合わせは特に有効な組成物をもたらすことが発見された。
本発明の組成物は一般に凝固するために時間を必要としない。従来の組成物は歯ブラシをかけることにより生ずる機械的摩擦、食物中の弱い酸への露出、唾液の流れまたは通常歯と接触するその他の液体によって容易に洗い去られた。しかし、本発明による組成物は一般に著しい攪拌、水によるすすぎ洗いおよび模擬唾液の中に5日間の長期浸漬に耐えることができた。さらに、本発明の小さい粒子の多くは凝固時間を必要としないが、それはそれらが歯構造の表面および口の中に自然に存在する液体と接触するやいなや歯構造に化学的に反応して付着し始めるからである。本発明の組成物は一回の適用で効果があるが、数回重ねて適用すればさらに有効になることは事実らしい。
驚くべきことに、本発明の比較的小さい生理活性微粒子ガラスは著しい免疫応答を発生しない。さらに、それは一般に大食細胞により呑み込まれないのでこの適用において不活性にされる。
本発明の組成物は、歯構造の継続する再鉱物質化である新しい層を形成することになる生理活性層を提供することができる。このことは、本発明の組成物による処理の後に象牙質表面上にヒドロキシ炭酸アパタイト層が再形成されることによるものであると、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により証明された。
本発明の一実施態様において、その粒子は約30%の10ミクロンより小さい粒子を含めて約20ミクロンの粒径を有する。本発明の他の一つの実施態様においては、その粒子は少なくとも25%の2ミクロンより小さい粒子を含めて10ミクロンの平均粒径を有する。
本発明の組成物は練り歯磨きに配合されることができよう。実際に、それらの粒子は現在練り歯磨きの中に使用されているシリカに取って代わることがあろう。このガラス組成物中にフッ化物を添加すると歯構造を強化することもあろう。その生理活性ガラスを歯に直接適用することに加えて、本発明の生理活性ガラス組成物は食塩水または蒸留水に基づく媒体の中で適用されることもできる。
本発明の組成物はまた口内洗剤、ゲルに配合されることもあり、またはそれらは歯科医師によりペーストとして適用されることもある。
【実施例】
【0006】
次の実施例は限定するものではない。
生体外の実験は抜かれた歯からの人間の歯の象牙質の標準化された板を用いて行われた。これらの円板は抜かれた歯からイソメット(Isomet)ダイアモンド鋸(Buchler Ltd.)を使用して切り取られた。円板は1.0mmの厚さで歯の大きさであった。それらの咬合面は一連の320〜600粗粒範囲の湿った炭化ケイ素紙やすり上で磨かれた。これは試験表面を標準化するために行われた。それらの表面は磨きの過程の間に造られた汚れ層を除くためおよび象牙質細管を開いて広げるために37%リン酸で60秒間処理された(図1および2参照)。その表面は蒸留水で20秒間すすぎ洗いしてから、油を含まない空気流で乾燥された。それぞれの板は半分に割られてから、実験材料が各例に記載のようにその半分に割られた試料の1つの上に置かれた。開いて広げられた細管を有する未処理の板が図1および2に示されている。
走査電子顕微鏡検査が各グループにおいて前記の板の表面上で行われた。それらの板は銀ペーストを用いて走査電子顕微鏡のスタブ上に装着された。すべての試料は真空乾燥され、スパッターコーティングされてから、JEOL−T200走査電子顕微鏡で検査された。
例 1
出発生成物は
SiO2 45
CaO 24.5
Na2O 24.5
P2O5 6
を含む混合物(重量%)であった。その混合物を蓋をした白金坩堝の中で1350℃で2時間溶融して均質化を達成した。その混合物を0℃の脱イオン水の中で急冷した。フリット化したガラスをボールミル、インパクトミルを含む適当な粉砕装置の中に置いた。そのガラスを2時間粉砕してからいくつかの適当な粒径範囲に分離した。
90μmより小さい粒径範囲はこの方法を用いて得られ、そして走査電子顕微鏡とレーザー光散乱法(Coulter LS 100)により確認された。これらの混合物を前記の象牙質板の上に置いた。
象牙質に対する露出時間は液体で洗いながらの2分間から攪拌しないで3日間までの間でいろいろ変わった。細管の閉塞が図3−7に描かれている。図3−7に見ることができるのは存在するいろいろな粒径の小さい(1−5μm)粒子による象牙質細管の全体的および部分的閉塞である。さらに、化学組成物のための貯蔵庫として働くことになる比較的大きい粒子が見える。ヒドロキシアパタイト結晶の初期の形成が象牙質の上で始まっていることがFTIRにより確認されている。
例 2
図8および9は例1に従って造られたサブミクロン粒子を使用することにより得られる結果を示す。図8および9の試料は、リン酸により酸エッチングされ、生理活性ガラスと共に2分間処理されてからリン酸塩緩衝塩類液の中に5日間浸漬された象牙質表面である。貯蔵庫の活動のための大きな粒子に欠けているので、FTIRにより確認されたように改造はより不完全であった。
例 3
例3は本発明による組成物の多重適用に伴われる利点を例証するために行われた。まず初めに、酸エッチングされた象牙質表面は2分間の生理活性微粒子ガラスの1回処理を受けたもので、そして図10に描かれている。酸エッチングされてから2分間づつ3回処理された象牙質表面が図11に描かれている。
図10は象牙質の表面上の結合による著しい浸透と細管の閉塞を示している。図10では大きい粒子は多く見られない。図11では、さらに多くの著しい細管の浸透と閉塞があり、かつより多数の粒子が存在する。これは細管を含む多重適用ならびにCaおよびPイオンの比較的大きい貯蔵庫の増加された存在に伴われた利点を証明する。これはまた既に表面に結合された比較的小さい粒子に対する比較的大きい粒子の粒子間溶接も証明している。
例 4
例4は粒径にして2ミクロン以下の粒子を45ミクロンより大きい粒子と組み合わせて使用することに結びついた利点を例示している。
次の試料についてのFTIRスペクトルは、再鉱物化を例示するために図12に含まれている。
試料番号1 対照(未処理の象牙質表面)
試料番号2 酸エッチングされた象牙質表面
試料番号3 粒径2ミクロンより小さい生理活性ガラスの粒
子と共に2分間処理されたもの
試料番号4 その内40%は2ミクロン未満であり、
15%は8〜2ミクロンの範囲内にあり、
15%は8〜20ミクロンの範囲内にあり、
15%は20〜38ミクロンの範囲内にあり、
そして15%は38〜90ミクロンの範囲内に
ある生理活性ガラスの粒子と共に処理されたも
の。
図12に例示されたように、対照試料はヒドロキシ炭酸アパタイト(HCA)のスペクトルの代表的な図を与える。波数1150〜500の間のピークの形はHCAにつき非常に特徴的なものである。試料2において、それらのピークは酸エッチングによる処理の後に、特に1150〜500の範囲において、分裂している。これは歯構造の鉱物質成分、カルシウムとリン、の損失を示す。試料3は歯構造上のCaとPの部分的再鉱物質化を示す。試料4は最適の粒径と形の生理活性ガラス混合物と共に処理されたもので、殆ど完全な再鉱物質化を示している。試料4の写真は図11として含まれている。
例 5
比較例5は、2ミクロンより小さいまたは53−90μの適当な粒子の使用に比較して、粒径で45ミクロンより大きい粒子と組み合わせて10ミクロンより小さい粒子の使用に関連した利点を示す。下記のように未処理の象牙質表面の対照試料が処理された表面のほかに使用された。
上の表におけるすべての試料は湿った環境に24時間さらされてから、次に48時間乾燥された。
上記に見られるように、2ミクロンより小さい粒子と53〜90μの粒子の組み合わせは最良の結果を与えた。両粒径範囲の粒子の存在は、細管の中に宿った比較的小さい粒子をして、それらが自身所有のCaとPイオンを消耗しきった後に成長を継続することを可能ならしめ、そしてCaとPイオンの貯蔵庫の役をつとめる近くの他の比較的大きい粒子からそのようなイオンを利用することができるものと信じられている。
その他の例
次の諸例のための出発生成物は、SiO2の水準が45%、55%および60%であったことを除いて、例1と同じであった。また、調製の方法は異なった。その混合物は蓋のある白金坩堝の中に1350℃で2時間溶融されて均質化を達成した。その混合物は平板の形に流し込まれ、室温まで冷却させられてからハンマーで砕かれた。砕かれたガラスの砕片は次に標準篩を通すふるい分けにより分別された。砕片はそれから分別されて保存された。
90μm未満の粒径範囲はこの方法を用いて得られ、そして走査電子顕微鏡とレーザー光散乱法(Coulter LS 100)により確認された。これらの混合物は前述の象牙質板の上に置かれた。
それぞれ45%,55%,および60%のSiO2を含む試料がサンプル調製において利用され例1に見られたものと同じ結果を得た。またもや、このデータの理解の手掛かりは粒径範囲の存在であった。これらの例に存在するものは、象牙質表面に例1と同様な反応を示すサブミクロンから90ミクロンまでの粒子に粒径範囲を有するシリカの60%までの範囲である。
本発明は一つまたはより多くの実施態様において記述されたが、この記述はどのみち特許請求の範囲を限定するために意図されているものではない。
【0007】
本発明に関して、更に以下の内容を開示する。
(1)下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約10μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
(2)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を防ぐ方法。
(3)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を治療する方法。
(4)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を予防する方法。
(5)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成るエナメル質を再鉱物質化する方法。
(6)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を再鉱物質化する方法。
(7)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における裂け目を密閉する方法。
(8)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における穴を密閉する方法。
(9)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造にライニングを施す方法。
(10)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯髄に蓋を被せる方法。
(11)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の過敏症を治療する方法。
(12)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯根の手術後に歯構造を処置する方法。
(13)(1)に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
(14)下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは45μmと90μmの間の粒子および有効な再鉱物質化量の約10μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
(15)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を防ぐ方法。
(16)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を治療する方法。
(17)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を予防する方法。
(18)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成るエナメル質を再鉱物質化する方法。
(19)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を再鉱物質化する方法。
(20)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における裂け目を密閉する方法。
(21)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における穴を密閉する方法。
(22)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造にライニングを施す方法。
(23)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯髄に蓋を被せる方法。
(24)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の過敏症を治療する方法。
(25)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯根の手術後に歯構造を処置する方法。
(26)(14)に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
(27)90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約10μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(28)90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約5μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(29)90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(30)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を防ぐ方法。
(31)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を治療する方法。
(32)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を予防する方法。
(33)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成るエナメル質を再鉱物質化する方法。
(34)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を再鉱物質化する方法。
(35)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における裂け目を密閉する方法。
(36)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における穴を密閉する方法。
(37)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造にライニングを施す方法。
(38)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯髄に蓋を被せる方法。
(39)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の過敏症を治療する方法。
(40)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯根の手術後に歯構造を処置する方法。
(41)(27)に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
(42)90μmより小さい粒子および約2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(43)再鉱物質化に有効な量の約90μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物と再鉱物質化の必要ある歯構造を接触させることから成る歯構造を再鉱物質化する方法。
(44)下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは53μmと90μmの間の粒子および有効な再鉱物質化量の約2μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
(45)90μmより小さい粒径範囲を有する新規なシリカを主成分とする生理活性ガラス組成物であり、この組成物は練り歯磨き、ゲルなどのようなデリバリー剤と共に使用されることができ、中核のシリカ粒子からCaとPの即時および長期のイオン放出による体液との速やかなかつ連続的な反応を起こして、歯の細管の上および中へ析出される安定な結晶性ヒドロキシ炭酸アパタイト層を生成させ、歯の過敏症の即時および長期の回復および歯の表面の再鉱物質化のためになる新規な生理活性ガラス組成物。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】臨床感受性(clinical sensitivity) にエミュレート(emulate) するために切断および研磨の後にすべての汚れ層を除去するため37%リン酸と共に30秒間処理された象牙質の対照表面である。その表面は本発明に従って生理活性ガラスと共に処理されていなかった(2000倍拡大)。
【図2】臨床感受性にエミュレートするために切断および研磨の後にすべての汚れ層を除去するため37%リン酸と共に30秒間処理された象牙質の対照表面である。その表面は本発明に従って生理活性ガラスと共に処理されていなかった(3000倍拡大)。
【図3】酸エッチングにより処理されてから水およびグリセリンの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に2分間処理された象牙質表面である(粒径範囲サブミクロン〜90μm、1000倍拡大)。
【図4】酸エッチングされてから次に水およびグリセリンの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に処理された象牙質表面である。それらの表面はその後攪拌されてから2分間水ですすぎ洗いされた(粒径範囲サブミクロン〜20μm、2000倍拡大)。
【図5】酸エッチングされてから次に水およびグリセリンの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に処理され、そして3日間水中に置かれた象牙質表面である。その後攪拌はしなかったが、しかしその表面は2分間水ですすぎ洗いされた(粒径範囲サブミクロン〜90μm、2000倍拡大)。
【図6】酸エッチングされてから次に水と練り歯磨きの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に攪拌しながら2分間処理され、その後2分間水ですすぎ洗いされた象牙質表面である(粒径範囲サブミクロン〜3μm、3000倍拡大)。
【図7】酸エッチングされてから次に水と練り歯磨きの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に攪拌しながら2分間処理され、そして2分間水ですすぎ洗いされた象牙質表面である(粒径範囲サブミクロン〜3μm、3000倍拡大)。
【図8】リン酸で酸エッチングされ、本発明に従い生理活性ガラス組成物と共に2分間処理され、そしてリン酸塩緩衝の塩類溶液の中に5日間浸漬された象牙質表面を含む(粒径範囲サブミクロン)。
【図9】リン酸で酸エッチングされ、本発明に従い生理活性ガラス組成物と共に2分間処理され、そしてリン酸塩緩衝の塩類溶液の中に5日間浸漬された象牙質表面を含む(粒径範囲サブミクロン)。
【図10】酸エッチングされてから次に本発明に従って生理活性ガラス組成物の1回の適用により処理された象牙質表面を描いている。
【図11】酸エッチングされてから本発明に従って生理活性ガラス組成物の3回別々の適用により処理された象牙質表面を描いている。
【図12】最適の粒径を有しかつ成形された微粒子の生理活性ガラスと共に処理された試料に行われたフーリエ変換分光法(FTIR)のグラフである。
【技術分野】
【0001】
本出願は同時係属出願の米国特許出願第08/597,936号(出願日1996年2月7日)の一部継続出願であり、その開示は引用によりここに組み入れられる。本出願はさらに同時係属出願の米国仮特許出願第60/010,795号(出願日1996年1月29日)の一部継続出願であり、その開示は引用によりここに組み入れられる。
(発明の分野)
本発明は生理活性ガラス組成物に関する。さらに詳細には、本発明は従来の組成物よりも著しく低い粒径範囲の組み合わせを有する粒子を含む改良された生理活性ガラスの組成物に関する。本発明はまたそのような生理活性ガラス組成物の使用を含むいろいろな治療方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ヒトの歯のエナメル質は自然に鉱物質除去の過程を経ることになる。エナメル質の唾液および食物への露出は歯から鉱物質を徐々に浸出して、結局は腐食し易くする。この鉱物質除去の過程は結果として初期の虫歯をもたらすが、この初期の虫歯は典型的なエナメル質表面の極く小さな欠損であり、従ってこれまでは通常治療されないままに放置される。虫歯の象牙質の鉱物質除去もまた、セメント−エナメル質接合の下の欠損から生ずる象牙質の露出された区域を有する患者において起こることがある。従って、フッ化物の塗布およびその他の局所治療を含めて、この自然の鉱物質除去の過程を遅くさせることに関連する多くの研究がなされた。
例えば、米国特許第5,427,768号明細書は、リン酸カルシウム固形物と二酸化炭素に関して過飽和されているリン酸カルシウム溶液を開示している。その溶液は歯の腐食部、露出した歯根、または象牙質のような歯の弱い部分の上または中にフッ化物を含むまたは含まないリン酸カルシウムを析出する。米国特許第5,268,167号および同第5,037,639号明細書は無定形カルシウム化合物、例えば、無定形リン酸カルシウム、無定形フッ化リン酸カルシウム、および無定形炭酸リン酸カルシウム、を歯の再鉱物質化における用途のため使用することを開示している。これらの無定形化合物は、歯の組織に適用されると、歯の弱化を防ぐおよび/または補修する。これらの方法は、(1)適用のために刺激性になり得る低いpHを必要とする、(2)速い反応が結果として非常に短い期間の効果をもたらす、(3)これらの方法は溶液を使用するので、現実の反応は患者から患者へ調節することが難しい、および(4)それらの反応は速やかでありかつ持続の短いものであるから、その効果を維持するために手順を繰り返さなければならない、などの不利な点を含む。また両方法は混合投与の前に少なくとも1種の溶液を加圧二酸化炭素と共に維持することを必要とするので、それはこの方法を処方箋なしの過程に組み入れることを難しくする。
鉱物質除去は結局エナメル質被覆の空洞化を導き、下にある歯の構造体の露出を来す。通例、この型の腐食はその腐食した区域を削りとって半永久的な充填材を挿入することにより処置されている。しかし、腐食の進行を抑えかつ逆進させる、侵害のより少ない方法が求められている。
予防のための穴と裂け目の充填材が、特に腐食の危険にある区域の腐食を予防するために広く使われるようになった。これらの充填材に含まれるのは、乾式塗布と固定材の使用を必要とするポリマーまたはその他のセメントであった。ライナーとベースは、穿孔により露出された表面のような新しく露出された歯の表面を処置するために使用される材料である。空洞が作られた後、空洞に充填材を詰める前にライナーまたはベースを塗布することが慣習である。ライナーは材料の薄い皮膜であり、ベースは比較的厚い皮膜である。ライナーおよびベース材料は歯材界面における象牙質の透過性を低下させかつ充填材の周囲からおよびこれを通過する微小な漏れを防ぎ、象牙質細管を封入するように設計される。初期のライナーまたは「空洞用ワニス」の例は有機溶媒に溶かされた有機「ガム」のような材料を含む。有機溶媒が蒸発すると、そのガムは後に残される。これらの有機ガムに伴われる不利な点はしばしば文献に記載されており、結合部が漏れ易い、付着力に欠ける、酸に侵され易いなどの弱点を含む。他の一つのライニング方法が米国特許第4,538,990号明細書に開示されており、1〜30%w/vの中性シュウ酸塩、例えばシュウ酸二カリウム、を塗層に塗り、次にその層へ0.5〜3%w/vのシュウ酸一水素一カリウムのような酸性シュウ酸塩の溶液を塗布することが記載されている。研究によると、この方法による細管の封入閉塞は貧弱であることが示された。
米国特許第5,296,026号はガラスリン酸塩セメントおよびそれらを骨の中の空洞および歯における溝を充填するための外科用埋め込み材料として使用する方法を記載している。それらのセメント組成物はP2O5、CaO、SrOおよびNa2Oを、治療薬を含むまたは含まない水性液と組み合わせて含む。その粉と液を混合すると硬化反応を生ずる。そのセメントが硬組織の中に埋め込まれると、それは充填材/移植材料として役立ち、そして浸出性成分の放出と共にそれは健康な骨の治療と保全に役立つ。
いろいろな生理活性および生体適合性のガラスが骨の代替材料として既に開発されてきた。若干の研究は、これらのガラスが生理機能系における骨形成を誘導または援助するであろうことを示した。Hench et al., J. Biomed.Mater. Res. 5:117-141(1971).その骨とガラスの間に発現された結合は極めて強くかつ安定であることが証明された。Piotrowsky et al., J. Biomed.Mater. Res. 9:47-61(1975).それらのガラスの毒物学評価は多数の生体外および生体内モデルにおいて骨または軟組織に毒性効果を示さなかった。Wilson et al., J. Biomed. Mater. Res. 805-817 (1981).ガラスは、多分ガラスの表面からのイオンの溶解により誘導されたpHの変化およびガラス表面への細菌の粘着性の欠如に関連して細菌発育抑制性または殺菌性であることが報告された。Stoort al., Bioceramics Vol. 8, p. 253-258 Wilsonet al.(1995).
ガラスの骨への結合はそのガラスの水溶液への露出と共に始まる。ガラス内のNa+は体液からのH+と交換してpHの増加を生ずる。CaとPはガラスから移動してCa−Pに富む表面層を形成する。このCa−Pに富む表面層の下にあるのは、Na,CaおよびPイオンの損失のためにますますシリカに富むようになる層である(米国特許第4,851,046号明細書)。
歯科用の固体埋め込み材としての生理活性ガラスの作用が、Stanley et al., Journal of Prostetic Dentistry, Vol. 58, pp. 607-613 (1987)により報告された。複製の歯型が製作されて、成長したヒヒの抜歯された切歯の穴の中に埋め込まれた。それらの埋め込み物の周囲の骨への成功した付着が6ケ月における組織学的検査の後に見られた。この技術の臨床的応用は現在人体用に利用できる。Endosseous Ridge Maintenance Implant ERMI (登録商標)。微粒子の生理活性ガラスが歯根骨の欠損の修繕のために使用されたが(米国特許第4,851,046号明細書)、その際90〜710μmの粒径範囲および次の表に記載された組成範囲が用いられた。
成分重量百分率
SiO2 40−55
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
前記のデータは、60%のシリカは生理活性な溶融物に由来するガラスの限界を越えることを示した。Okasuki et al., Nippon Seramikbusu Kyokai Gakijutsu Konbuski, Vol. 99, pp. 1-6 (1991).
前記の90〜710μmの粒径範囲は、骨と直接に接触するとき周期的に使用するために最も有効であることが測定された。しかし、90μm以下の粒径範囲はその高度の反応性と人体部位における速やかな吸収のために効果がなかった。さらに、90μm以下の粒径範囲は、これまた比較的小さな粒子が大食細胞により除去されると推定されるので、軟組織部位においては効果がないことが測定された(米国特許第4,851,046号明細書参照)。200μm以下の粒径範囲はまた高度の反応性のためにある骨の欠損において効果がないことも発見された(米国特許第5,204,106号明細書参照)。
米国特許第4,239,113号明細書(「 ▼ 113特許」)もまた骨セメントの使用を記載している。 ▼ 113特許は10−200ミクロンの粒径範囲を有する生理活性ガラス粉を開示しているのみである。さらに、 ▼ 113特許はまたメチルメタクリレート(コ)ポリマーおよびガラス質の鉱物繊維の使用を必要とする。
前述の方法または組成物のどれも、容易に適用できることと非常に小さな歯構造の欠損の中への浸透を含む歯構造へ付着することおよび適用の後に歯構造との化学的および物理的相互作用を継続するための適当な条件の両者の結合されることによる利益を与えるものはない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、容易に適用されかつ歯構造にすぐに付着するものであって、歯構造と化学的および物理的相互作用できる組成物を提供することである。
さらに本発明の一つの目的は、いろいろな歯のおよびその他の病状を治療するためにそのような生理活性ガラス組成物を使用する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
(発明の要約)
本発明は、例えば、下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラス、そして90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の10μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスに関する。本発明はまた、再鉱物質化、割れ目および/または穴の密閉、歯構造の被覆、腐食の処置、歯髄の蓋かぶせ、敏感な手術後の歯構造の処置、象牙質細管および組織再生のための表面の密封などを含むいろいろな歯の治療方法に関する。
【0005】
(発明の詳細な説明)
本発明は、例えば、エナメル質の再鉱物質化(remineralization)、初期の虫歯の再鉱物質化、腐食象牙質の再鉱物質化、虫歯の予防、腐食の抑止、腐食の回復、虫歯予防剤、穴と裂け目の充填材、予防用ペースト、フッ化物処理、象牙質充填材などにおいて役に立つ生理活性ガラス組成物を提供する。それはまた練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、および修復材料、例えば、パッキング、間接歯髄被覆剤など、の中に含まれることができる。本発明の組成物はまた、象牙質の感受性(感度)を減少させかつ組織の付着を強めるために歯根手術後の表面の処置に有用である。それらの組成物は多様な歯のおよびその他の病状に関連するいろいろな欠損の治療およびそれにより歯構造を再鉱物質化して歯に実際に化学的および物理的に結合することに有効である。
ここで言及されるとき、再鉱物質化とはヒドロキシアパタイトの形成である。ヒドロキシアパタイトの形成は生理活性ガラス組成物の水溶液への露出と共に始まる。生理活性ガラス内のナトリウムイオン(Na+)は体液の中のH+イオンと交換してpHを増加させると信じられている。カルシウムとリンはそれから生理活性ガラスより移動してカルシウムとリンに富んだ表面を形成する。生理活性ガラス内のナトリウムイオンが溶液の水素イオンと交換を続けるに従って下にあるシリカに富む帯域が徐々に増加する。ある時間の後、カルシウムとリンに富んだ層は結晶してヒドロキシアパタイト材になる。コラーゲンはアパタイト凝集体に構造的に統合されることができる。これ以後言及されるとき、有効な再鉱物質化量とはヒドロキシアパタイトを形成できるいかなる量のことである。
用語「歯構造」はここで使用されるとき、エナメル質、象牙質、歯髄、歯根構造、セメント質、歯根象牙質、冠状象牙質、すべての歯の構成物などを含むがそれらに限定されない歯のすべての造作に言及することが意図されている。
本発明の生理活性ガラス組成物は、模擬体液の中に置かれたとき生体外でヒドロキシ炭酸アパタイトの層を形成することになるガラス組成物である。例えば、次の重量による組成は生理活性ガラスを提供するであろう。
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
これらの特性を有する生理活性ガラスは歯構造との相互作用のためさらに有効な材料を提供する。本発明の生体適合性のガラスは圧倒的に逆方向の免疫反応を誘発しないものである。
本発明により、特定の粒径を有する生理活性ガラスは前記の病状の治療に特に有効であることが発見された。特に、小さな粒子と非常に小さな粒子が組み合わされる場合には驚くべき結果が本発明により得られる。例えば、歯構造と結合することのできる小さな粒子(例えば、約90ミクロンより小さい)並びにそれより小さな粒子(約10ミクロンより小さい)を含む組成物が組み合わせて使用されるとき、これらの粒子の比較的大きい粒子は歯構造に付着してイオン貯蔵所の役をするが、比較的小さい粒子はいろいろな歯構造表面の凹凸の内側に宿る。これらの粒子のより大きなものは付加されたカルシウムとリンの貯蔵所を提供するので、鉱物質化、すなわち小さい粒子により始められたリン酸カルシウム層の析出が継続できる。付加されたカルシウムとリンはすべての歯構造に並びに歯細管のような歯構造表面の凹凸の内側または穴のところに付着した粒子に浸出されることができる。これは引き続いて全反応の継続およびそのような表面の凹凸の内側または穴の上に宿ったこれらの粒子の比較的小さいものの継続した成長を与え、そして有効に表面の凹凸の被覆または充填をもたらすことができる。このカルシウムとリンの過剰濃度はこれらの粒子の比較的小さいものの継続した反応が起こるために必要であるが、それは比較的小さい粒子がそれらの比較的高い表面積の結果としてそれらのイオンを速やかに消耗させるからである。これらの粒子の比較的大きいものは長期の効果としてよりゆっくりと反応してそれらのイオンを放出するであろう。さらに、これらの粒子の比較的大きいものは歯の表面を機械的にすり減らして様々な表面の凹凸を開き、小さい粒子を入らせて表面の凹凸と反応させるであろう。
この効果は多種多様の用途において有益である。例えば、虫歯または腐食の予防において、本発明の組成物は最も小さい表面の凹凸の深みに侵入することができ、また近傍の比較的大きい粒子から継続したイオンの供給を受けるのでその蓄えられたイオンの貯蔵を枯渇させた後も成長することができる。これはまた穴と裂け目に封をするのに非常に役立ち、そしてさらにより有効なかつ永続する密封が得られる。
本発明の若干の実施態様において、極めて小さい粒子が使用される。例えば、2μmからサブミクロンの範囲内にある粒子は約1−2μmの直径である歯の細管の内側にぴったりはまる。これらの細管の閉塞は、例えば、周期的手術の後の感受性の著しい減少に導く。より好ましくは、直径で2ミクロンより小さい粒子と45ミクロンより大きい粒子の混合物が使用される。この組み合わせは特に有効な組成物をもたらすことが発見された。
本発明の組成物は一般に凝固するために時間を必要としない。従来の組成物は歯ブラシをかけることにより生ずる機械的摩擦、食物中の弱い酸への露出、唾液の流れまたは通常歯と接触するその他の液体によって容易に洗い去られた。しかし、本発明による組成物は一般に著しい攪拌、水によるすすぎ洗いおよび模擬唾液の中に5日間の長期浸漬に耐えることができた。さらに、本発明の小さい粒子の多くは凝固時間を必要としないが、それはそれらが歯構造の表面および口の中に自然に存在する液体と接触するやいなや歯構造に化学的に反応して付着し始めるからである。本発明の組成物は一回の適用で効果があるが、数回重ねて適用すればさらに有効になることは事実らしい。
驚くべきことに、本発明の比較的小さい生理活性微粒子ガラスは著しい免疫応答を発生しない。さらに、それは一般に大食細胞により呑み込まれないのでこの適用において不活性にされる。
本発明の組成物は、歯構造の継続する再鉱物質化である新しい層を形成することになる生理活性層を提供することができる。このことは、本発明の組成物による処理の後に象牙質表面上にヒドロキシ炭酸アパタイト層が再形成されることによるものであると、フーリエ変換赤外分光法(FTIR)により証明された。
本発明の一実施態様において、その粒子は約30%の10ミクロンより小さい粒子を含めて約20ミクロンの粒径を有する。本発明の他の一つの実施態様においては、その粒子は少なくとも25%の2ミクロンより小さい粒子を含めて10ミクロンの平均粒径を有する。
本発明の組成物は練り歯磨きに配合されることができよう。実際に、それらの粒子は現在練り歯磨きの中に使用されているシリカに取って代わることがあろう。このガラス組成物中にフッ化物を添加すると歯構造を強化することもあろう。その生理活性ガラスを歯に直接適用することに加えて、本発明の生理活性ガラス組成物は食塩水または蒸留水に基づく媒体の中で適用されることもできる。
本発明の組成物はまた口内洗剤、ゲルに配合されることもあり、またはそれらは歯科医師によりペーストとして適用されることもある。
【実施例】
【0006】
次の実施例は限定するものではない。
生体外の実験は抜かれた歯からの人間の歯の象牙質の標準化された板を用いて行われた。これらの円板は抜かれた歯からイソメット(Isomet)ダイアモンド鋸(Buchler Ltd.)を使用して切り取られた。円板は1.0mmの厚さで歯の大きさであった。それらの咬合面は一連の320〜600粗粒範囲の湿った炭化ケイ素紙やすり上で磨かれた。これは試験表面を標準化するために行われた。それらの表面は磨きの過程の間に造られた汚れ層を除くためおよび象牙質細管を開いて広げるために37%リン酸で60秒間処理された(図1および2参照)。その表面は蒸留水で20秒間すすぎ洗いしてから、油を含まない空気流で乾燥された。それぞれの板は半分に割られてから、実験材料が各例に記載のようにその半分に割られた試料の1つの上に置かれた。開いて広げられた細管を有する未処理の板が図1および2に示されている。
走査電子顕微鏡検査が各グループにおいて前記の板の表面上で行われた。それらの板は銀ペーストを用いて走査電子顕微鏡のスタブ上に装着された。すべての試料は真空乾燥され、スパッターコーティングされてから、JEOL−T200走査電子顕微鏡で検査された。
例 1
出発生成物は
SiO2 45
CaO 24.5
Na2O 24.5
P2O5 6
を含む混合物(重量%)であった。その混合物を蓋をした白金坩堝の中で1350℃で2時間溶融して均質化を達成した。その混合物を0℃の脱イオン水の中で急冷した。フリット化したガラスをボールミル、インパクトミルを含む適当な粉砕装置の中に置いた。そのガラスを2時間粉砕してからいくつかの適当な粒径範囲に分離した。
90μmより小さい粒径範囲はこの方法を用いて得られ、そして走査電子顕微鏡とレーザー光散乱法(Coulter LS 100)により確認された。これらの混合物を前記の象牙質板の上に置いた。
象牙質に対する露出時間は液体で洗いながらの2分間から攪拌しないで3日間までの間でいろいろ変わった。細管の閉塞が図3−7に描かれている。図3−7に見ることができるのは存在するいろいろな粒径の小さい(1−5μm)粒子による象牙質細管の全体的および部分的閉塞である。さらに、化学組成物のための貯蔵庫として働くことになる比較的大きい粒子が見える。ヒドロキシアパタイト結晶の初期の形成が象牙質の上で始まっていることがFTIRにより確認されている。
例 2
図8および9は例1に従って造られたサブミクロン粒子を使用することにより得られる結果を示す。図8および9の試料は、リン酸により酸エッチングされ、生理活性ガラスと共に2分間処理されてからリン酸塩緩衝塩類液の中に5日間浸漬された象牙質表面である。貯蔵庫の活動のための大きな粒子に欠けているので、FTIRにより確認されたように改造はより不完全であった。
例 3
例3は本発明による組成物の多重適用に伴われる利点を例証するために行われた。まず初めに、酸エッチングされた象牙質表面は2分間の生理活性微粒子ガラスの1回処理を受けたもので、そして図10に描かれている。酸エッチングされてから2分間づつ3回処理された象牙質表面が図11に描かれている。
図10は象牙質の表面上の結合による著しい浸透と細管の閉塞を示している。図10では大きい粒子は多く見られない。図11では、さらに多くの著しい細管の浸透と閉塞があり、かつより多数の粒子が存在する。これは細管を含む多重適用ならびにCaおよびPイオンの比較的大きい貯蔵庫の増加された存在に伴われた利点を証明する。これはまた既に表面に結合された比較的小さい粒子に対する比較的大きい粒子の粒子間溶接も証明している。
例 4
例4は粒径にして2ミクロン以下の粒子を45ミクロンより大きい粒子と組み合わせて使用することに結びついた利点を例示している。
次の試料についてのFTIRスペクトルは、再鉱物化を例示するために図12に含まれている。
試料番号1 対照(未処理の象牙質表面)
試料番号2 酸エッチングされた象牙質表面
試料番号3 粒径2ミクロンより小さい生理活性ガラスの粒
子と共に2分間処理されたもの
試料番号4 その内40%は2ミクロン未満であり、
15%は8〜2ミクロンの範囲内にあり、
15%は8〜20ミクロンの範囲内にあり、
15%は20〜38ミクロンの範囲内にあり、
そして15%は38〜90ミクロンの範囲内に
ある生理活性ガラスの粒子と共に処理されたも
の。
図12に例示されたように、対照試料はヒドロキシ炭酸アパタイト(HCA)のスペクトルの代表的な図を与える。波数1150〜500の間のピークの形はHCAにつき非常に特徴的なものである。試料2において、それらのピークは酸エッチングによる処理の後に、特に1150〜500の範囲において、分裂している。これは歯構造の鉱物質成分、カルシウムとリン、の損失を示す。試料3は歯構造上のCaとPの部分的再鉱物質化を示す。試料4は最適の粒径と形の生理活性ガラス混合物と共に処理されたもので、殆ど完全な再鉱物質化を示している。試料4の写真は図11として含まれている。
例 5
比較例5は、2ミクロンより小さいまたは53−90μの適当な粒子の使用に比較して、粒径で45ミクロンより大きい粒子と組み合わせて10ミクロンより小さい粒子の使用に関連した利点を示す。下記のように未処理の象牙質表面の対照試料が処理された表面のほかに使用された。
上の表におけるすべての試料は湿った環境に24時間さらされてから、次に48時間乾燥された。
上記に見られるように、2ミクロンより小さい粒子と53〜90μの粒子の組み合わせは最良の結果を与えた。両粒径範囲の粒子の存在は、細管の中に宿った比較的小さい粒子をして、それらが自身所有のCaとPイオンを消耗しきった後に成長を継続することを可能ならしめ、そしてCaとPイオンの貯蔵庫の役をつとめる近くの他の比較的大きい粒子からそのようなイオンを利用することができるものと信じられている。
その他の例
次の諸例のための出発生成物は、SiO2の水準が45%、55%および60%であったことを除いて、例1と同じであった。また、調製の方法は異なった。その混合物は蓋のある白金坩堝の中に1350℃で2時間溶融されて均質化を達成した。その混合物は平板の形に流し込まれ、室温まで冷却させられてからハンマーで砕かれた。砕かれたガラスの砕片は次に標準篩を通すふるい分けにより分別された。砕片はそれから分別されて保存された。
90μm未満の粒径範囲はこの方法を用いて得られ、そして走査電子顕微鏡とレーザー光散乱法(Coulter LS 100)により確認された。これらの混合物は前述の象牙質板の上に置かれた。
それぞれ45%,55%,および60%のSiO2を含む試料がサンプル調製において利用され例1に見られたものと同じ結果を得た。またもや、このデータの理解の手掛かりは粒径範囲の存在であった。これらの例に存在するものは、象牙質表面に例1と同様な反応を示すサブミクロンから90ミクロンまでの粒子に粒径範囲を有するシリカの60%までの範囲である。
本発明は一つまたはより多くの実施態様において記述されたが、この記述はどのみち特許請求の範囲を限定するために意図されているものではない。
【0007】
本発明に関して、更に以下の内容を開示する。
(1)下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約10μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
(2)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を防ぐ方法。
(3)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を治療する方法。
(4)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を予防する方法。
(5)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成るエナメル質を再鉱物質化する方法。
(6)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を再鉱物質化する方法。
(7)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における裂け目を密閉する方法。
(8)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における穴を密閉する方法。
(9)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造にライニングを施す方法。
(10)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯髄に蓋を被せる方法。
(11)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の過敏症を治療する方法。
(12)(1)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯根の手術後に歯構造を処置する方法。
(13)(1)に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
(14)下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは45μmと90μmの間の粒子および有効な再鉱物質化量の約10μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
(15)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を防ぐ方法。
(16)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を治療する方法。
(17)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を予防する方法。
(18)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成るエナメル質を再鉱物質化する方法。
(19)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を再鉱物質化する方法。
(20)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における裂け目を密閉する方法。
(21)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における穴を密閉する方法。
(22)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造にライニングを施す方法。
(23)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯髄に蓋を被せる方法。
(24)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の過敏症を治療する方法。
(25)(14)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯根の手術後に歯構造を処置する方法。
(26)(14)に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
(27)90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約10μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(28)90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約5μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(29)90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の約2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(30)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を防ぐ方法。
(31)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の腐食を治療する方法。
(32)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を予防する方法。
(33)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成るエナメル質を再鉱物質化する方法。
(34)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る初期の虫歯を再鉱物質化する方法。
(35)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における裂け目を密閉する方法。
(36)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造における穴を密閉する方法。
(37)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯構造にライニングを施す方法。
(38)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯髄に蓋を被せる方法。
(39)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯の過敏症を治療する方法。
(40)(27)に記載の組成物と歯構造を接触させることから成る歯根の手術後に歯構造を処置する方法。
(41)(27)に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
(42)90μmより小さい粒子および約2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
(43)再鉱物質化に有効な量の約90μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物と再鉱物質化の必要ある歯構造を接触させることから成る歯構造を再鉱物質化する方法。
(44)下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは53μmと90μmの間の粒子および有効な再鉱物質化量の約2μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
(45)90μmより小さい粒径範囲を有する新規なシリカを主成分とする生理活性ガラス組成物であり、この組成物は練り歯磨き、ゲルなどのようなデリバリー剤と共に使用されることができ、中核のシリカ粒子からCaとPの即時および長期のイオン放出による体液との速やかなかつ連続的な反応を起こして、歯の細管の上および中へ析出される安定な結晶性ヒドロキシ炭酸アパタイト層を生成させ、歯の過敏症の即時および長期の回復および歯の表面の再鉱物質化のためになる新規な生理活性ガラス組成物。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】臨床感受性(clinical sensitivity) にエミュレート(emulate) するために切断および研磨の後にすべての汚れ層を除去するため37%リン酸と共に30秒間処理された象牙質の対照表面である。その表面は本発明に従って生理活性ガラスと共に処理されていなかった(2000倍拡大)。
【図2】臨床感受性にエミュレートするために切断および研磨の後にすべての汚れ層を除去するため37%リン酸と共に30秒間処理された象牙質の対照表面である。その表面は本発明に従って生理活性ガラスと共に処理されていなかった(3000倍拡大)。
【図3】酸エッチングにより処理されてから水およびグリセリンの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に2分間処理された象牙質表面である(粒径範囲サブミクロン〜90μm、1000倍拡大)。
【図4】酸エッチングされてから次に水およびグリセリンの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に処理された象牙質表面である。それらの表面はその後攪拌されてから2分間水ですすぎ洗いされた(粒径範囲サブミクロン〜20μm、2000倍拡大)。
【図5】酸エッチングされてから次に水およびグリセリンの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に処理され、そして3日間水中に置かれた象牙質表面である。その後攪拌はしなかったが、しかしその表面は2分間水ですすぎ洗いされた(粒径範囲サブミクロン〜90μm、2000倍拡大)。
【図6】酸エッチングされてから次に水と練り歯磨きの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に攪拌しながら2分間処理され、その後2分間水ですすぎ洗いされた象牙質表面である(粒径範囲サブミクロン〜3μm、3000倍拡大)。
【図7】酸エッチングされてから次に水と練り歯磨きの中で本発明に従って生理活性ガラス組成物と共に攪拌しながら2分間処理され、そして2分間水ですすぎ洗いされた象牙質表面である(粒径範囲サブミクロン〜3μm、3000倍拡大)。
【図8】リン酸で酸エッチングされ、本発明に従い生理活性ガラス組成物と共に2分間処理され、そしてリン酸塩緩衝の塩類溶液の中に5日間浸漬された象牙質表面を含む(粒径範囲サブミクロン)。
【図9】リン酸で酸エッチングされ、本発明に従い生理活性ガラス組成物と共に2分間処理され、そしてリン酸塩緩衝の塩類溶液の中に5日間浸漬された象牙質表面を含む(粒径範囲サブミクロン)。
【図10】酸エッチングされてから次に本発明に従って生理活性ガラス組成物の1回の適用により処理された象牙質表面を描いている。
【図11】酸エッチングされてから本発明に従って生理活性ガラス組成物の3回別々の適用により処理された象牙質表面を描いている。
【図12】最適の粒径を有しかつ成形された微粒子の生理活性ガラスと共に処理された試料に行われたフーリエ変換分光法(FTIR)のグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の10μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
【請求項2】
90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の10μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項3】
90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の5μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項4】
90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
【請求項6】
90μmより小さい粒子および2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項1】
下記の重量百分率により、
SiO2 40−60
CaO 10−30
Na2O 10−35
P2O5 2−8
CaF2 0−25
B2O3 0−10
K2O 0−8
MgO 0−5
を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成り、そして前記の微粒子の生理活性および生体適合性のガラスは90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の10μmより小さい粒子を含む生理活性ガラス組成物。
【請求項2】
90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の10μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項3】
90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の5μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項4】
90μmより小さい粒子および有効な再鉱物質化量の2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【請求項5】
請求項2に記載の組成物および練り歯磨き、ライナー、ベース、ゲル、補強材料、グリセリンゲル、口内洗剤、予防用ペースト、または間接歯髄被覆剤、またはそれらの混合物から成る歯を治療するための組成物。
【請求項6】
90μmより小さい粒子および2μmより小さい粒子を含む微粒子の生理活性および生体適合性のガラスから成る生理活性ガラス組成物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2008−120681(P2008−120681A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7010(P2008−7010)
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【分割の表示】特願平9−527131の分割
【原出願日】平成9年1月29日(1997.1.29)
【出願人】(500122329)ユニバーシティ オブ メリーランド、バルティモア (2)
【出願人】(507412885)ユーエス バイオマテリアルズ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年1月16日(2008.1.16)
【分割の表示】特願平9−527131の分割
【原出願日】平成9年1月29日(1997.1.29)
【出願人】(500122329)ユニバーシティ オブ メリーランド、バルティモア (2)
【出願人】(507412885)ユーエス バイオマテリアルズ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】
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