説明

生理活性物、それを用いた免疫調整活性剤、アレルギー抑制活性剤、抗ガン活性剤、活性酸素消去活性剤、食品、飲料、サプリメントおよび医薬品

【課題】 免疫疾患やガン等の疾病の治療、予防に有効で安全なソルガム由来の生理活性物を提供する。
【解決手段】 ホワイト・ソルガムの全粒粉およびふすま部分除去物をリン酸緩衝液に浸漬して得られた抽出物は、図1Aのグラフに示すように、IgM抗体産生促進活性を有する。このほか、ホワイト・ソルガムのリン酸緩衝液抽出物は、IgE抗体産生抑制活性、大腸ガンに対する抗ガン活性、活性酸素消去活性等の各種の生理活性を有する。本発明の生理活性物は、食品、飲料、サプリメント、医薬品等に適用可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生理活性物、それを用いた免疫調整活性剤、アレルギー抑制活性剤、抗ガン活性剤、活性酸素消去活性剤、食品、飲料、サプリメントおよび医薬品に関する。
【背景技術】
【0002】
ソルガムは、アメリカ、インド、中国、メキシコ、ナイジェリア等の国々で生産量が多い穀物である。ソルガムは、イネ科の一年生草で、モロコシキビ、カオリャン、マイロ等とも呼ばれている。ソルガムは、グレイン・ソルガム、スイート・ソルガム、ブルーム・ソルガムおよびグラス・ソルガムの4種類に大別される。最近、小麦アレルギー対策のための穀物として、グルテンを含まないホワイト・ソルガムが注目されている。ホワイト・ソルガムは、グレイン・ソルガムの一種であり、グルテンを含まないという特性の他に、必須アミノ酸を含み、ミネラル、ビタミンB群、食物繊維および不飽和脂肪酸が豊富であるという特性を有する。このような特性に鑑み、ホワイト・ソルガムを利用した食品の開発が行われている。ホワイト・ソルガムを利用した食品としては、例えば、パフスナック菓子(特許文献1)、麺類(特許文献2)、発泡性飲料(特許文献3)およびシロップ(特許文献4)等がある。
【0003】
【特許文献1】特開2004−135530号公報
【特許文献2】特開2004−337095号公報
【特許文献3】特開2005−40045号公報
【特許文献4】特開2005−323555号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のホワイト・ソルガムの利用方法は、その栄養特性に着目したものが多かったが、ホワイト・ソルガムの性能を十分に引き出す技術が開発されたとはいえない。一方、免疫疾患やガン等の疾病において、安全で有効な医薬品、健康食品、サプリメント等の開発が求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、免疫疾患やガン等の疾病の治療、予防に有効で安全なソルガム由来の生理活性物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の生理活性物は、ソルガムの一部、ソルガムの全部およびソルガム抽出物からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明者は一連の研究を重ねたところ、ソルガムに、免疫調製活性、アレルギー抑制活性、抗ガン活性および活性酸素消去活性等の各種の生理活性があることを見出し、本発明に到達した。本発明の生理活性物は、長年食用として利用されてきたソルガムを利用したものであるから、安全性に優れる。また、本発明は、免疫疾患やガン等の各種疾病の治療、予防に有効である。なお、本発明の生理活性物は、前述の4つの生理活性に限定されず、その他の生理活性を有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において、前記抽出物が、ソルガムの一部およびソルガムの全部の少なくとも一方を水含有溶媒で抽出したものであることが好ましい。
【0009】
本発明において、前記ソルガムは、特に制限されず、グレイン・ソルガム、スイート・ソルガム、ブルーム・ソルガムおよびグラス・ソルガム等の各種のソルガムであってもよいが、このなかで、ホワイト・ソルガムが好ましい。
【0010】
本発明において、前記水含有溶媒は、水および緩衝液の少なくとも一方であることが好ましい。前記緩衝液としては、特に制限されず、例えば、生体に対する安全性に優れるものが好ましく、この見地から、リン酸緩衝液等が好ましい。
【0011】
本発明の免疫調整活性剤は、前記本発明の生理活性物を含むことを特徴とする。前記生理活性物は、ふすま部分除去ソルガムおよびふすま部分除去ソルガムの水含有溶媒抽出物の少なくとも一方を含むことが好ましい。また、前記免疫調整活性は、例えば、IgM抗体の産生を促進する活性である。前記生理活性物中の前記IgM抗体産生促進因子は、例えば、分子量1万以上で、トリプシン処理により失活し、かつ100℃加熱処理でも完全に失活しないタンパク質である。
【0012】
本発明のアレルギー抑制活性剤は、前記本発明の生理活性物を含むことを特徴とする。前記生理活性物は、ソルガムのふすま部分およびソルガムのふすま部分の水含有溶媒抽出物の少なくとも一方を含むことが好ましい。前記アレルギー抑制活性は、例えば、IgE抗体産生の抑制活性である。前記生理活性物中の前記IgE抗体産生抑制因子は、例えば、分子量1万以上の高分子因子若しくは分子量1000以下の低分子因子である。
【0013】
本発明の抗ガン活性剤は、前記本発明の生理活性物を含むことを特徴とする。前記生理活性物質は、ソルガムのふすま部分およびソルガムのふすま部分の水含有溶媒抽出物の少なくとも一方を含むことが好ましい。前記抗ガン活性は、例えば、大腸ガンに対する抗ガン活性である。前記生理活性物中の抗大腸ガン活性因子は、例えば、分子量1万以上の高分子因子若しくは分子量1000以下の低分子因子であって、トリプシン処理により失活せず、かつ100℃加熱処理でも完全に失活しない非タンパク質物質である。
【0014】
本発明の活性酸素消去活性剤は、前記本発明の生理活性物を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明の食品は、前記本発明の生理活性物、前記本発明の免疫調整活性剤、前記本発明のアレルギー抑制活性剤、前記本発明の抗ガン活性剤および前記本発明の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0016】
本発明の飲料は、前記本発明の生理活性物、前記本発明の免疫調整活性剤、前記本発明のアレルギー抑制活性剤、前記本発明の抗ガン活性剤および前記本発明の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0017】
本発明のサプリメントは、前記本発明の生理活性物、前記本発明の免疫調整活性剤、前記本発明のアレルギー抑制活性剤、前記本発明の抗ガン活性剤および前記本発明の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0018】
本発明の医薬品は、前記本発明の生理活性物、前記本発明の免疫調整活性剤、前記本発明のアレルギー抑制活性剤、前記本発明の抗ガン活性剤および前記本発明の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明において、前述のように、ソルガムは、その全体を用いてもよいし、その一部を用いてもよいし、それらの抽出物を用いてもよい。
【0020】
前記ソルガムの一部としては、例えば、ふすま部分、ふすま部分を除いたソルガム、ふすま部分の外皮、ふすま部分の内皮がある。
【0021】
前記ソルガム抽出物は、例えば、ソルガムの一部若しくは全部を、水若しくは緩衝液に一定時間浸漬することにより得ることができる。前記浸漬において、浸漬液を攪拌することが好ましい。また、本発明の生理活性物が熱安定性である場合は、前記水若しくは緩衝液を加熱して浸漬してもよい。
【0022】
本発明の生理活性物ないし前記各種活性剤の形態は、特に制限されず、例えば、液状、ゾル状、ゲル状、固体状、粒状、粉末状等の各種の形態をとることができる。また、本発明の生理活性物ないし前記各種活性剤は、必要に応じて、薬学的若しくは食品安全上許容される各種の添加剤等を含んでいてもよい。
【0023】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記の実施例によってなんら限定されない。
【実施例1】
【0024】
本実施例は、本発明の生理活性物の免疫調整活性に関する実施例である。
【0025】
ホワイト・ソルガムの全粒およびふすまを除去したサンプルの粉末5gを10mMリン酸緩衝液(pH=7.4)(以下、「NaPB」という)20mLに懸濁し、4℃で1晩撹拌後、不溶物を遠心により除去し、可溶性画分を得た。得られた可溶性画分の一部を10mMのNaPBに対して透析した。このようにして得られた、(a)全粒(透析有り)、(b)全粒(透析無し)、(c)ふすま除去(白:透析有り)(d)ふすま除去(白:透析無し)の計4サンプルについて、ヒトハイブリドーマ細胞株HB4C5細胞のIgM抗体産生に及ぼす効果を確認した。HB4C5細胞は、10μg/mlインスリン、20μg/mlトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したERDF培地(極東製薬社製)で培養した。免疫調節活性は、6時間培養後、前記培地中に分泌されたIgM量を酵素抗体法により測定して評価した。また、タンパク質量はLowry法にて測定した。これらの結果を図1のグラフ(A)および(B)に示す。同図において、(A)が、前記サンプル(a)および(b)の結果を示し、(B)が、前記サンプル(c)および(d)の結果を示す。
【0026】
図1のグラフ(A)および(B)に示すように、前記全てのサンプルにおいて、IgM抗体産生の促進が確認でき、特に、ふすまを除去したサンプル(c)および(d)において活性が高かった。ふすま除去サンプル(c)および(d)は、タンパク質量換算で約200μg/mlの添加において、HB4C5細胞の抗体産生量は3.8倍促進した。また、活性に対する透析の影響は無いことが確認され、活性物質の分子量はおよそ1万以上の分子であることが確認された。
【0027】
つぎに、前記ふすま除去(白:透析無し)のサンプル(d)を,30、37、50、60、70、85、95、121℃の各温度で、それぞれ20分間処理し、その後、HB4C5細胞に対するIgM産生促進効果を確認した。その結果を、図2のグラフ(A)に示す。図示のように、前記サンプル(d)は、85℃の加熱処理においても活性は完全に保持され、95℃処理においてわずかな活性低下が認められた。このことから、活性因子は熱に安定な物質であることが確認された。ただし、121℃処理では失活した。
【0028】
つぎに、100℃で30分間熱処理した前記サンプル(d)および非加熱の前記サンプル(d)を、種々の濃度で前記培地中に添加し、HB4C5細胞のIgM抗体産生に及ぼす影響を確認した。この結果を、図2のグラフ(B)に示す。図示のように、加熱サンプル(d)は、非加熱サンプル(d)に対して活性の低下は認めたれたものの、完全な失活には至らなかった。
【0029】
つぎに、前記サンプル(d)に対し、トリプシン処理を行い、IgM産生促進効果に及ぼすトリプシンの影響を調べた。すなわち、ホワイト・ソルガム(白)抽出液(前記サンプル(d))に種々の濃度のトリプシン溶液を等量加え、37℃で15分間反応させた。その後、100℃で2分間の加熱によりトリプシンを失活させ、その後速やかに氷冷し、IgM産生促進活性を検討した。この結果を、図2のグラフ(C)に示す。図示のように、トリプシンの濃度が増えるに従い、IgM産生促進効果が低下し、トリプシン濃度が100μg/mLで、IgM産生促進活性が失活した。
【0030】
本実施例の結果をまとめると、ホワイト・ソルガム中に、免疫調整活性因子が存在し、この因子は、ふすま除去ホワイト・ソルガムに多く含有され、前記因子は熱安定性であり、透析によって活性が低下しなかたことから、前記因子の分子量は1万以上であり、トリプシン処理で失活したことから、前記因子はタンパク質であることが確認された。
【実施例2】
【0031】
本実施例は、本発明の生理活性物のアレルギー抑制活性に関する実施例である。
【0032】
ホワイト・ソルガムの全粒およびふすまを除去したサンプルの粉末5gを10mMのNaPB20mLに懸濁し、4℃で1晩撹拌後、不溶物を遠心により除去し、可溶性画分を得た。得られた可溶性画分の一部を10mMのNaPBに対して透析した。このようにして得られた、(a)全粒(透析有り)、(b)全粒(透析無し)、(c)ふすま除去(白:透析有り)(d)ふすま除去(白:透析無し)の計4サンプルについて、ヒトミエローマ細胞株U266細胞のIgE抗体産生に及ぼす効果を確認した。U266細胞は、10μg/mlインスリン、20μg/mlトランスフェリン、20μMエタノールアミン、25nM亜セレン酸ナトリウムを添加したERDF培地(極東製薬社製)で培養した。アレルギー抑制活性は、24時間培養後、培地中に分泌されたIgE量を酵素抗体法により測定して行った。タンパク質量はLowry法にて測定した。この結果を、図3のグラフ(A)および(B)に示す。同図において、(A)が、前記サンプル(a)および(b)の結果を示し、(B)が、前記サンプル(c)および(d)の結果を示す。
【0033】
図3のグラフ(A)に示すように、全粒サンプルであるサンプル(a)および(b)にIgE産生抑制効果が確認された。一方、図3のグラフ(B)に示すように、ふすま除去サンプルであるサンプル(c)および(d)には抑制効果がなかった。この結果から、IgE産生抑制因子は、ふすま部分に存在するといえる。また、前記活性は透析による影響を受けないことから、前記活性因子は、分子量1万以上の高分子であるといえる。
【0034】
つぎに、ホワイト・ソルガムのふすま部分(内皮・外皮)の粉末5gを10mMのNaPB20mLに懸濁し、4℃で1晩撹拌後、不溶物を遠心により除去し、可溶性画分の二種類のサンプルを得た。なお、前記サンプル調製において、透析は行っていない。得られたサンプルについて、上述の方法により、IgE産生抑制効果を確認した。その結果を、図4のグラフ(A)に示す。
【0035】
図示のように、内皮および外皮双方のサンプルにおいて、IgE産生抑制効果が認められた。タンパク質量あたりの活性で比較すると、外皮抽出物サンプルの方が高い比活性を示した。
【0036】
つぎに、内皮抽出物サンプル(425μg/ml)と外皮抽出物サンプル(180μg/ml)を添加した培地でU266細胞のIgE産生の経時変化を確認した。その結果を、図4のグラフ(B)に示す。図示のように、内皮抽出物サンプルの添加でIgE産生が培養1日目以降、ほぼ完全に抑制されていることが確認された。また、この時、細胞の生存率を測定したところ、細胞の生存率はコントロールとほぼ同等レベルであることから、ホワイト・ソルガムのふすま中の因子による処理でのU266細胞のIgE産生量の低下は、細胞に対する細胞傷害性によるものではなく、IgE生産性の抑制効果であることが確認された。
【0037】
つぎに、外皮抽出液を分画分子量1000の限外濾過膜により分画したところ、ろ液側(分子量1000以下)にもIgE産生抑制活性が認められた。
【0038】
本実施例の結果をまとめると、ホワイト・ソルガムふすま部分にはIgE産生を抑制する因子が存在し、その存在量は外皮より内皮に多く、前記因子として、分子量1万以上の高分子量因子および分子量1000以下の低分子因子が存在することが確認された。
【実施例3】
【0039】
本実施例は、本発明の生理活性物の抗ガン活性に関する実施例である。
【0040】
ホワイト・ソルガムのふすま部分(内皮・外皮)の粉末5gを10mMのNaPB20mLに懸濁し、4℃で1晩撹拌後、不溶物を遠心により除去し、可溶性画分の二種類のサンプルを得た。なお、前記サンプル調製において透析は行っていない。得られた抽出液サンプルの抗ガン活性を、マウス大腸ガン細胞株Colon26細胞を用いて確認した。Colon26細胞は、ウシ胎児血清を5%添加したERDF培地(極東製薬社製)中で培養した。培養2日後、WST−8(キシダ化学社製)を用いた色素還元による吸光度法にて行った。前記WST−8は、2−(2−methoxy−4−nitrophenyl)−3−(4−nitrophenyl)−5−(2,4−disulfophenyl)−2H− tetrazolium, monosodium saltであり、細胞内脱水素酵素により還元され、水溶性のホルマザンを生成するテトラゾリウム塩である。生成したホルマザンの450nmの吸光度を測定することにより、生細胞数を計測することができる。細胞数と生成するホルマザンの量は、直線的な比例関係にある。この結果を、図5のグラフ(A)に示す。
【0041】
図示のように、内皮および外皮のサンプル双方に、濃度依存的なColon26細胞の生細胞数の低下が確認された。タンパク質量を指標とした活性の比較においては、内皮抽出物サンプルと外皮抽出物サンプルとの間には、明確な活性の差は認められなかった。
【0042】
つぎに、内皮サンプル(1000μg/ml)および外皮サンプル(500μg/ml)を添加した前記培地で、Colon26細胞を培養し、前述と同様の手法により、細胞増殖に対する経時的な影響を確認した。その結果を、図5のグラフ(B)に示す。図示のように、双方のサンプルとも大腸ガン細胞の増殖を強く抑制した。
【0043】
つぎに、外皮抽出液サンプルを分画分子量1000の限外濾過膜により分画したところ、ろ液側(分子量1000以下)にも抗ガン活性が認められた。一方、限外濾過膜により濾過されなかった画分を10mMのNaPBに対して透析後、前記抗ガン活性を測定したところ、抗ガン活性が確認された。この結果から、抗ガン活性因子として、分子量1万以上の高分子因子と分子量1000以下の低分子因子の存在が確認された。つぎに、実施例1と同様の手法により、高分子活性因子および低分子活性因子のそれぞれをタンパク質分解酵素であるトリプシンにより消化処理した後、前述のようにして吸光度を測定して抗ガン活性を評価した。この結果を、図5のグラフ(C)に示す。図示のように、高分子活性因子および低分子活性因子の双方において、トリプシン処理による抗ガン活性の低下は認められなかった。また、高分子活性因子および低分子活性因子のそれぞれについて、熱安定性を検討するために、30、37、50、60、70、85、95、121℃の各温度で、それぞれ20分間処理し、その後、前述のようにして吸高度を測定して抗ガン活性を評価した。この結果を図5のグラフ(D)に示す。図示のように、熱処理による抗ガン活性の低下は起こらなかった。
【0044】
本実施例の結果をまとめると、ホワイト・ソルガムふすま部分には大腸ガンに対する抗ガン活性因子が存在し、前記因子として、分子量1万以上の高分子量因子および分子量1000以下の低分子因子が存在し、これらの因子は、非タンパク質であり、かつ熱安定性であることが確認された。
【実施例4】
【0045】
本実施例は、本発明の生理活性物の活性酸素消去活性に関する実施例である。
【0046】
ホワイト・ソルガムのふすま除去粉末およびホワイト・ソルガムのふすま部分外皮の粉末の各5gを10mMのNaPB20mLに懸濁し、4℃で1晩撹拌後、不溶物を遠心により除去し、可溶性画分のふすま除去サンプルおよびふすま外皮サンプルを得た。前記ふすま外皮サンプルを、分画分子量1000の限外濾過膜により分画してろ液(分子量1000以下)を得て、これを低分子サンプルとした。このようにして得られたサンプルについて、SOD Assy Kit−WST(同仁化学研究所社製)を用い、その取り扱い説明書に従って、スーパーオキサイド ジスムターゼ(SOD)様活性を測定した。その結果を、下記表1に示す。
【0047】
(表1)
抽出タンパク質1mg当たりのSOD様活性(unit/mg)
ふすま除去サンプル 50.7
ふすま外皮サンプル 46.9
低分子サンプル 1.1
【0048】
前記表1に示すように、ふすま除去サンプルおよびふすま外皮サンプルの双方に、高いSOD様活性が確認された。一方、低分子サンプルの活性が低かったことから、SDO様活性因子は、高分子であるといえる。
【0049】
本実施例の結果をまとめると、ホワイト・ソルガムのふすま以外の部分およびふすま部分の双方にSDO様活性因子が存在され、前記活性因子は、高分子であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上のように、本発明の生理活性物は、免疫調整活性、アレルギー抑制活性、抗ガン活性、活性酸素消去活性等の各種の活性を有し、かつ安全である。したがって、本発明によれば、免疫疾患やガン等の疾病の予防ないし治療に有用な食品、飲料、サプリメントおよび医薬品等を提供することができ、その適用分野は制限されず広い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1A】図1(A)は、本発明の一実施例の免疫調整活性を示すグラフである。
【図1B】図1(B)は、前記実施例の免疫調整活性を示すグラフである。
【図2A】図2(A)は、前記実施例の熱安定性を示すグラフである。
【図2B】図2(B)は、前記実施例の熱安定性を示すグラフである。
【図2C】図2(C)は、前記実施例のトリプシン処理の結果を示すグラフである。
【図3A】図3(A)は、本発明のその他の実施例のアレルギー抑制活性を示すグラフである。
【図3B】図3(B)は、前記その他の実施例のアレルギー抑制活性を示すグラフである。
【図4A】図4(A)は、前記その他の実施例のアレルギー抑制活性を示すグラフである。
【図4B】図4(B)は、前記その他の実施例のアレルギー抑制活性を示すグラフである。
【図5A】図5(A)は、本発明のさらにその他の実施例の抗ガン活性を示すグラフである。
【図5B】図5(B)は、前記さらにその他の実施例の抗ガン活性を示すグラフである。
【図5C】図5(C)は、前記さらにその他の実施例のトリプシン処理の結果を示すグラフである。
【図5D】図5(D)は、前記さらにその他の実施例の熱安定性を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソルガムの一部、ソルガムの全部およびソルガム抽出物からなる群から選択される少なくとも一つを含む生理活性物。
【請求項2】
前記抽出物が、ソルガムの一部およびソルガムの全部の少なくとも一方を水含有溶媒で抽出したものである請求項1記載の生理活性物質。
【請求項3】
前記ソルガムが、ホワイト・ソルガムである請求項1または2に記載の生理活性物。
【請求項4】
前記水含有溶媒が、水および緩衝液の少なくとも一方である請求項1ないし3のいずれか一項に記載の生理活性物。
【請求項5】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物を含む免疫調整活性剤。
【請求項6】
前記生理活性物が、ふすま部分除去ソルガムおよびふすま部分除去ソルガムの水含有溶媒抽出物の少なくとも一方を含む請求項3記載の免疫調整活性剤。
【請求項7】
前記免疫調整活性が、IgM抗体の産生を促進する活性である請求項5または6記載の生理活性物。
【請求項8】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物を含むアレルギー抑制活性剤。
【請求項9】
前記生理活性物が、ソルガムのふすま部分およびソルガムのふすま部分の水含有溶媒抽出物の少なくとも一方を含む請求項8記載のアレルギー抑制活性剤。
【請求項10】
前記アレルギー抑制活性が、IgE抗体産生の抑制活性である請求項8または9記載のアレルギー抑制活性剤。
【請求項11】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物を含む抗ガン活性剤。
【請求項12】
前記生理活性物質が、ソルガムのふすま部分およびソルガムのふすま部分の水含有溶媒抽出物の少なくとも一方を含む請求項11記載の抗ガン活性剤。
【請求項13】
前記抗ガン活性が、大腸ガンに対する抗ガン活性である請求項11または12記載の抗ガン活性剤。
【請求項14】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物を含む活性酸素消去活性剤。
【請求項15】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の免疫調整活性剤、請求項8ないし10のいずれか一項に記載のアレルギー抑制活性剤、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の抗ガン活性剤および請求項14記載の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む食品。
【請求項16】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の免疫調整活性剤、請求項8ないし10のいずれか一項に記載のアレルギー抑制活性剤、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の抗ガン活性剤および請求項14記載の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む飲料。
【請求項17】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の免疫調整活性剤、請求項8ないし10のいずれか一項に記載のアレルギー抑制活性剤、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の抗ガン活性剤および請求項14記載の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含むサプリメント。
【請求項18】
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の生理活性物、請求項5ないし7のいずれか一項に記載の免疫調整活性剤、請求項8ないし10のいずれか一項に記載のアレルギー抑制活性剤、請求項11ないし13のいずれか一項に記載の抗ガン活性剤および請求項14記載の活性酸素消去活性剤からなる群から選択される少なくとも一つを含む医薬品。



【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【図5D】
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【公開番号】特開2007−254338(P2007−254338A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79787(P2006−79787)
【出願日】平成18年3月22日(2006.3.22)
【出願人】(504147254)国立大学法人愛媛大学 (214)
【出願人】(506096431)中野産業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】