説明

生産システム

【課題】 生産システムにおいて、生産する製品の品種に変更が生じても生産ラインを短時間で安価に変更可能とし、かつ部品から製品までをリアルタイムに管理可能にする。
【解決手段】 生産ラインをパレット2を搬送する複数のコンベア3A,3B,3Cによって構成し、パレット2に、無線によって収納された物品の情報を通信する通信手段を有するICチップを設ける。ICチップの情報を読み書きするR/W10の情報に基づき、制御装置14では、コンベアを移動させ、ロボット12によって組立または加工を行うように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産量の変動や生産品種の増加に対して柔軟に対応可能な生産システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の生産システムとしては、複数の工程を連結して部品を順次組付けまたは加工する一連のライン設備によって製造するようにしている。このライン設備によれば、一連の作業の順番に各専用設備を並べて順次組付け等の各作業を行うことにより、大量の製品を効率よく生産している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した従来の生産システムにおいては、一連のライン設備によって製造されているため、生産する製品の品種に変更が生じた場合は、ラインをすべて変更しなければならなくなり、ラインを再構築するまでに時間と費用が多くかかるという問題があった。また、従来の生産システムにおいては、ラインで組付けられたり加工されたりしている半製品の状態を把握することができないため、製品の組付け状態や加工状態を管理できないという問題もあった。
【0004】
本発明は上記した従来の問題に鑑みなされたものであり、その目的とするところは、生産する製品の品種に変更が生じても生産ラインを短時間で安価に変更可能とし、かつ部品から製品までをリアルタイムに管理可能とした生産システムを提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するために、本発明は、物品が収納され無線によって収納された物品の情報を通信する通信手段を有するICチップが設けられたパレットと、このパレットを搬送または固定する複数のコンベアと、このコンベアに設けられ前記ICチップに記録された情報の読み書きを行う情報処理装置と、この情報処理装置によって処理された情報に基づき前記コンベアの制御および前記パレットに収納された物品の処理を無線によって行う制御装置とを備えたものである。
【0006】
本発明は、前記発明において、前記パレットに収納される物品は、部品、半製品、製品、組立用治具、ロボットのいずれかである。
【0007】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記コンベアは、固定式コンベアとターンテーブル式コンベアと自走式コンベアとの少なくともいずれかである。
【0008】
本発明は、前記発明のいずれか一つの発明において、前記パレットに収納された物品の加工または組立を行うロボットを備え、このロボットに前記情報処理装置を設けたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、生産する製品の品種に変更が生じた場合、必要なコンベアと必要な物品のパレットとを選択するだけで生産ラインを再構築することができるため、ラインを短時間で安価に再構築することができる。また、パレットに収納された物品の情報をICチップを介して情報処理装置によって把握することができるため、部品から製品までをリアルタイムに管理することができる。
【0010】
前記発明のうちの一つの発明によれば、パレットに収納された組立用治具またはロボットによって、パレットに収納された部品または半製品を組立または加工することができるため、組立用治具やロボットを生産ラインの必要箇所に自在に配置することが可能になるから、生産ラインの構築をより柔軟に行うことができる。
【0011】
前記発明のうちの一つの発明によれば、コンベアを固定式コンベアまたはターンテーブル式コンベアあるいは自走式コンベアのいずれかを選択することができるため、生産ラインの自由度が増加する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図に基づいて説明する。図1は本発明に係る生産システムの概略の構成図、図2は同じく生産ラインの平面図、図3は同じく構成を示すブロック図、図4は同じく固定式コンベアの外観を示す斜視図、図5は同じくターンテーブル式コンベアの外観を示す斜視図、図6は同じく自走式コンベアの外観を示す斜視図、図7は同じくパレットの外観を示す斜視図である。
【0013】
図1に全体を符号1で示す生産システムは、部品(成形部品、板金部品等)、半製品(表面実装された基板・SMT)、製品等が収納されるパレット2と、このパレット2を搬送および固定させるコンベア3とを備えている。パレット2は、図7(A)、(B)に示すように中敷き4a,4bを交換することにより、収納する物品の種類を変更することができる。すなわち、同図(A)に示す平面視を格子状に形成された中敷き4aを用いた場合は、多数の部品を収納することができる。
【0014】
また、同図(B)に示す平面視を櫛歯状に形成された中敷き4bを用いた場合は、多数のプリント基板等を立てた状態で収納することができる。また、同図(C)に示すように三段重ねで使用する場合は、上段のパレット2Aに収納されている物品が空になると、パレット2Aが取り外され、順次中段のパレット2B、下段のパレット2Cに収納されている物品が取り扱われる。これらパレット2,2A,2B,2Cの側部には、このパレット内に収納される物品の情報、すなわち、物品の種類や数量または物品の加工状態あるいは物品の組立状態等が記録されるICタグ5が取り付けられている。このICタグ5に記録される情報は、無線によって通信する通信手段を介して後述するR/W10によって読み・書きされる。
【0015】
コンベア3は、床等に固定した状態で使用する固定式コンベア3Aと、平面視において時計・反時計方向に回転可能なターンテーブル式コンベア3Bと、自ら保有する駆動源によって床等を移動自在な自走式コンベア3Cとによって構成されている。これらコンベア3A,3B,3Cは、図4ないし図6に示すように、両側部間に回転自在に支持された複数本のローラ6が並べられており、これらローラ6は、ACサーボモータ7の駆動によって一方向へ回転する。8はパレット搬送方向に沿ってコンベア3A,3B,3Cに3個ずつ設けられたパレットセンサであって、コンベア3A,3B,3Cによって搬送されるパレット2を検出する。
【0016】
また、コンベア3A,3B,3Cには、上記したパレット2に設けられたICタグ5に記録された情報の読み・書きを行う情報処理装置として機能するR/W10が備えられている。図3において、11はパレット2を定位置に固定するソレノイドであって、このソレノイド11が作動することにより、電磁ロックによってパレット2が後述するステージ18Aないし18F上に固定される。12A,12B,12Cは後述するライン15に近接して設けられるロボットであって、シーケンサー13のプログラムに基づいて、パレット2に収納された物品の運搬または組立あるいは加工を行う。
【0017】
14はパレットセンサ8によるパレット2の検出結果に基づきACサーボモータ7を作動させ、コンベア3Aないし3C上のパレット2を定位置に搬送するように制御する制御装置である。この制御装置14は、無線によってシーケンサー13のプログラムに沿って、ロボット12Aないし12Cによってパレット2に収納された部品をステージ18Aないしステージ18Fに運搬し、ソレノイド11を作動させてパレット2をステージ18Aないし18F上に固定する。この状態で、ロボット12Aないし12Cによってステージ18Aないし18F上で部品の加工または組立を行い、加工または組立の終了後に、ソレノイド11による固定を解除し、部品が収納されたパレット2を再び処理ライン16Aないし16Fの固定式コンベア3Aに運搬するように制御する。また、制御装置14では、コンベア3Aに設けられたR/W10が、ロボット12Aないし12Cによって組立または加工された物品が収納されたパレット2に設けられたICタグ5に、組立または加工の状態を書き込むように制御する。
【0018】
図2に全体を符号15で示す生産ラインは、六本の処理ライン16Aないし16Fと、処理ライン16C,16D間に設けられた一つの処理ライン17と、処理ライン16A,16B間、処理ライン16B,16C間、処理ライン16D,16E間および処理ライン16E,16F間に設けられた固定式コンベア3Aと、処理ライン16Cと搬送ライン17との間および搬送ライン17と処理ライン16Dとの間に設けられたターンテーブル式コンベア3Bとによって、平面視コ字状に形成されている。各処理ライン16Aないし16Fは、それぞれ三つの固定式コンベア3によって構成されており、各処理ライン16Aないし16Fには、部品を組立または加工するためのステージ18Aないし18Fが備えられている。
【0019】
ステージ18A,18F間には、処理ライン16A,16Fに搬送されてきたパレット2に収納された部品等をステージ18A,18Fに運搬し組立または加工し、組立または加工が終了したら再び処理ライン16A,16Fに運搬するロボット12Aが備えられている。ステージ18B,18E間には、処理ライン16B,16Eに搬送されてきたパレット2に収納された部品等をステージ18B,18Eに運搬し組立または加工し、組立または加工が終了したら再び処理ライン16B,16Eに運搬するロボット12Bが備えられている。ステージ18C,18D間には、処理ライン16C,16Dに搬送されてきたパレット2に収納された部品等をステージ18C,18Dに運搬し組立または加工し、組立または加工が終了したら再び処理ライン16C,16Dに運搬するロボット12Cが備えられている。
【0020】
次に、このように構成された生産システムにおいて、部品を組立または加工して生産する方法について説明する。先ず、制御装置14では、組立または加工する部品が収納されたパレット2を自走式コンベア3C1によって処理ライン16Aの先頭に位置する固定式コンベア3Aに近接した位置まで運搬するように制御する。次いで、制御装置14は、この自走式コンベア3C1のACサーボモータ7を駆動し、パレット2を処理ライン16Aの先頭に位置する固定式コンベア3Aに搬送し、パレットセンサ8によって搬送が完了したことが確認されたらACサーボモータ7の駆動を停止する。
【0021】
処理ライン16Aの先頭に位置する固定式コンベア3Aに設けられたR/W10では、パレット2に設けられたICタグ5に記録された情報を読み取り、読み取った情報を無線によって制御装置14に送信する。制御装置14では、無線によってシーケンサー13のプログラムに沿って、ロボット12Aによってパレット2に収納された部品をステージ18Aに運搬し、ソレノイド11を作動させてパレット2をステージ18A上に固定する。この状態で、ステージ18A上で部品の加工または組立を行い、加工または組立の終了後に、ソレノイド11による固定を解除し、部品が収納されたパレット2を再び処理ライン16Aの固定式コンベア3Aに運搬するように制御する。
【0022】
処理ライン16Aの固定式コンベア3Aに設けられたR/W10では、パレット2に設けられたICタグ5にロボット12Aによって部品に実施された組立内容または加工内容の情報を書き込み、書き込んだ情報を制御装置14に無線によって送信する。次いで、制御装置14では、処理ライン16Aの固定式コンベア3AのACサーボモータ7を駆動し、パレット2を処理ライン16Bの先頭の固定式コンベア3Aに搬送し、パレットセンサ8によって搬送が完了したことが確認されたらACサーボモータ7の駆動を停止する。処理ライン16Bの固定式コンベア3Aに設けられたR/W10によってパレット2に設けられたICタグ5に記録された情報が読み取られ、制御装置14に無線によって送信される。
【0023】
制御装置14では、上記した処理ライン16Aにおいて行われた加工または組立と同様にパレット2に収納された部品の組立または加工を行う。この後、部品が収納されたパレット2は、順次処理ライン16C,16D,16E,16Fによって搬送され、組立または加工が行われた後、自走式コンベア3C2上に搬送され、この自走式コンベア3C2によって所定の場所に運搬される。
【0024】
このように、パレット2に収納された物品の情報をICタグ5を介してR/W10によって読み・書きすることにより、制御装置14では物品の種類や数量または加工状態、組立状態等を正確に把握することができるため、部品から製品までをリアルタイムに管理することができる。また、生産ライン15を多数のコンベア3Aないし3Cによって構成したことにより、生産する製品の品種に変更が生じた場合や組立工程や加工工程に変更が生じた場合は、必要なコンベアと必要な物品のパレットとを選択するだけでラインを再構築することができるため、ラインを短時間で安価に再構築することができる。また、コンベアを固定式コンベア3Aまたはターンテーブル式コンベア3Bあるいは自走式コンベア3Cのいずれかを選択することができるため、生産ラインの自由度が増加する。
【0025】
なお、本実施の形態においては、R/W10をコンベアに設けた例を説明したが、ロボット12Aないし12Cに設けてもよい。また、パレット2に収納される物品を、部品、半製品、製品としたが、部品を組み立てる組立用治具やロボットでもよく、例えばこれら組立用治具やロボットを自走式のコンベア3Cによって必要な位置まで運搬し、ソレノイド11によって固定した状態で使用するようにすれば、より柔軟な生産ラインを構築することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る生産システムの概略の構成図である。
【図2】本発明に係る生産システムの生産ラインの平面図である。
【図3】本発明に係る生産システムの構成を示すブロック図である。
【図4】本発明に係る生産システムにおいて、固定式コンベアの外観を示す斜視図である。
【図5】本発明に係る生産システムにおいて、ターンテーブル式コンベアの外観を示す斜視図である。
【図6】本発明に係る生産システムにおいて、自走式コンベアの外観を示す斜視図である。
【図7】本発明に係る生産システムにおいて、パレットの外観を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1…生産システム、2…パレット、3A…固定式コンベア、3B…ターンテーブル式コンベア、3C,3C1,3C2…自走式コンベア、5…ICタグ、6…ローラ、8…パレットセンサ、10…R/W(情報処理装置)、12A,12B,12C…ロボット、14…制御装置、15…生産ライン、16Aないし16F…処理ライン、17…搬送ライン、18Aないし18F…ステージ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
物品が収納され無線によって収納された物品の情報を通信する通信手段を有するICチップが設けられたパレットと、このパレットを搬送または固定する複数のコンベアと、このコンベアに設けられ前記ICチップに記録された情報の読み書きを行う情報処理装置と、この情報処理装置によって処理された情報に基づき前記コンベアの制御および前記パレットに収納された物品の処理を無線によって行う制御装置とを備えたことを特徴とする生産システム。
【請求項2】
前記パレットに収納される物品は、部品、半製品、製品、組立用治具、ロボットのいずれかであることを特徴とする請求項1記載の生産システム。
【請求項3】
前記コンベアは、固定式コンベアとターンテーブル式コンベアと自走式コンベアとの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1記載の生産システム。
【請求項4】
前記パレットに収納された物品の加工または組立を行うロボットを備え、このロボットに前記情報処理装置を設けたことを特徴とする請求項1記載の生産システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−110382(P2009−110382A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−283463(P2007−283463)
【出願日】平成19年10月31日(2007.10.31)
【出願人】(304020498)サクサ株式会社 (678)
【Fターム(参考)】