説明

生産ラインシステムにおける生産計画決定方法

【課題】消費電力量を低減することができる新たな手段を有する生産ラインシステムにおける生産計画決定方法を提供する。
【解決手段】生産計画決定方法は、装着ヘッド26に装着されているノズル27の少なくとも一部が選択された集約元となるモジュール2のノズル27と同一種類であり、かつ、装着ヘッド26が装着可能なノズル27の数が集約元のモジュール2のノズル27の数と同数以上であるモジュール2を集約候補として抽出する集約候補抽出工程と、集約した場合のサイクルタイムが初期生産計画のサイクルタイムに基づいて設定された閾値以下である場合には、集約元のモジュール2における電子部品の実装処理を集約候補としてのモジュール2に集約した変更生産計画を生成する変更生産計画生成工程とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品実装基板を生産する生産ラインシステムにおける生産計画決定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
当該生産ラインシステムは、複数の電子部品実装装置を並べて配置して、各電子部品実装装置による実装処理を順次実行することで電子部品実装基板を生産するシステムである。この種の生産ラインシステムにおける生産計画は、電子部品実装基板が生産されるサイクルタイムを設定された時間内に収まるように決定している。そして、従来は、いかにサイクルタイムを短縮するかについて検討を重ね、効率化を求めてきた。
【0003】
しかし、近年、環境問題などが注目されるようになり、二酸化炭素の排出削減などの環境への取り組みが重要となってきた。例えば、特許文献1,2などには、生産ラインを構成する電子部品実装装置(以下、「モジュール」とも称する)の生産速度を落とすことで、消費電力量の削減を行うことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−261647号公報
【特許文献2】特開2008−28262号公報(段落[0042])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術は、各電子部品実装装置における実装速度、すなわち移動速度を低減することにより、消費電力量の低減を図るというものである。上述したように近年の環境問題からも、消費電力量をさらに低減することのできる手段が求められている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、消費電力量を低減することができる新たな手段を有する生産ラインシステムにおける生産計画決定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に係る発明は、
複数の電子部品実装装置を並べて配置して、各前記電子部品実装装置による実装処理を順次実行することで回路基板に複数の電子部品を実装した電子部品実装基板を生産する生産ラインシステムにおける生産計画決定方法において、
各前記電子部品実装装置は、前記電子部品を収容する部品フィーダと、前記電子部品を保持するノズルと、一つまたは複数の前記ノズルを装着すると共に前記部品フィーダと前記回路基板との間を相対的に移動可能に設けられる装着ヘッドと、を備え、
前記生産計画決定方法は、
既に設置された前記生産ラインシステムにおいて全ての前記電子部品実装装置による実装処理を実行させる初期生産計画を決定する初期生産計画決定工程と、
前記装着ヘッドに装着されている前記ノズルの少なくとも一部が選択された集約元となる前記電子部品実装装置の前記ノズルと同一種類であり、かつ、前記装着ヘッドが装着可能な前記ノズルの数が前記集約元となる前記電子部品実装装置の前記ノズルの数と同数以上である前記電子部品実装装置を集約候補として抽出する集約候補抽出工程と、
前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した場合における前記生産ラインシステムのサイクルタイムを計算するサイクルタイム計算工程と、
前記サイクルタイム計算工程にて計算された前記サイクルタイムが、前記初期生産計画のサイクルタイムに基づいて設定された閾値以下である場合には、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した変更生産計画を生成する変更生産計画生成工程と、
を備え、
前記変更生産計画に基づいて実行することにより、前記集約元の前記電子部品実装装置による前記電子部品の実装処理を停止して消費電力量を低減することを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記変更生産計画生成工程は、さらに、集約した場合の前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの搬送動作時間が、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記部品フィーダから前記回路基板への搬送動作時間と前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記搬送動作時間との合計時間より短くなる場合に、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した変更生産計画を生成することを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記変更生産計画生成工程が、さらに、集約した場合の前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記部品フィーダから前記回路基板への搬送動作回数が、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記部品フィーダから前記回路基板への搬送動作回数と前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記搬送動作回数との合計回数より減少している場合に、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した変更生産計画を生成することを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記集約候補抽出工程が、前記装着ヘッドに装着されている前記ノズルの全てが前記集約元の前記電子部品実装装置の前記ノズルと同一種類である前記電子部品実装装置を前記集約候補とすることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記集約候補抽出工程が、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置における実装処理を、一つの前記電子部品実装装置に集約する場合における前記集約候補としての第一集約候補を抽出し、前記サイクルタイム計算工程および前記変更生産計画生成工程が、前記集約候補を前記第一集約候補として集約処理を行うことを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記集約候補抽出工程が、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置における実装処理を、複数の前記電子部品実装装置に集約する場合における前記集約候補としての第二集約候補を抽出し、前記サイクルタイム計算工程および前記変更生産計画生成工程が、前記集約候補を前記第二集約候補として集約処理を行うことを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記集約候補抽出工程が、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置における実装処理を、一つの前記電子部品実装装置に集約する場合における前記集約候補としての第一集約候補を抽出し、前記サイクルタイム計算工程および前記変更生産計画生成工程は、前記集約候補を前記第一集約候補として行う集約処理を、前記集約候補を前記第二集約候補として行う集約処理よりも優先して行うことを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明は、前記変更生産計画生成工程が、既に設置されている前記生産ラインシステムにおける前記電子部品実装装置の前記装着ヘッドをそのまま用いつつ、集約した前記変更生産計画を生成することを特徴とする。
請求項9に係る発明は、前記変更生産計画生成工程が、既に設置されている前記生産ラインシステムにおける前記電子部品実装装置の前記装着ヘッドを他の前記装着ヘッドに変更して、集約した前記変更生産計画を生成することを特徴とする。
【0015】
請求項10に係る発明は、前記変更生産計画生成工程が、既に設置されている前記生産ラインシステムにおける前記電子部品実装装置の前記装着ヘッドよりも消費電力量が少ない前記他の前記装着ヘッドに変更することを特徴とする。
請求項11に係る発明は、前記変更生産計画生成工程が、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置に対して複数の前記集約候補がある場合に、前記ノズルの数が相対的に多い前記電子部品実装装置から優先して前記集約候補として集約処理を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に係る発明によれば、一部の電子部品実装装置における実装処理を他の電子部品実装装置に集約することができる。その結果、当該一部の電子部品実装装置における実装処理を停止することができる。これにより、実装処理を停止する電子部品実装装置における消費電力量を低減することができる。従って、生産ラインシステム全体としての消費電力量を低減することができる生産計画を決定できる。
【0017】
ここで、各電子部品実装装置は、実装処理の他、前後に並べて配置されている電子部品実装装置との間で回路基板の搬送処理を行う。そのため、実装処理を停止したとしても、搬送処理を実行する必要がある。ただし、実装処理に要する消費電力量は、搬送処理に要する消費電力量よりも非常に大きいため、消費電力量の低減効果は非常に大きい。
【0018】
ところで、実装処理に要する消費電力量は、主として、実装処理に伴って装着ヘッドを動作させるための電気モータの消費電力量、および、ノズルによる電子部品の保持力を発生させるための例えば吸着装置の消費電力量がある。そして、前者における、実装処理に伴って装着ヘッドを動作させるための電気モータの消費電力量は、実装処理に伴って装着ヘッドを動作させている時間に依存する。つまり、装着ヘッドを動作させる時間を短縮することができれば、消費電力量の低減を図ることができる。
【0019】
そこで、請求項2に係る発明によれば、一部の電子部品実装装置における実装処理を他の電子部品実装装置に集約した場合に、集約後における電子部品実装装置の装着ヘッドの搬送動作時間が、集約する前における二つの電子部品実装装置の装着ヘッドの動作時間の合計時間よりも短くなる場合に、集約処理を行っている。従って、生産ラインシステムの消費電力量を確実に低減できる生産計画を決定できる。
【0020】
装着ヘッドの搬送動作時間は、装着ヘッドによる部品フィーダから回路基板への搬送動作回数に大きく依存する。そこで、請求項3に係る発明によれば、集約した場合の装着ヘッドの搬送動作回数が、初期生産計画における装着ヘッドの搬送動作回数より減少している場合となる変更生産計画を決定している。従って、生産ラインシステムの消費電力量を確実に低減できる生産計画を決定できる。
【0021】
請求項4に係る発明によれば、装着ヘッドに装着されている全てのノズルが同一種類の電子部品実装装置を集約候補とすることで、確実に集約を行うことができ、結果として、確実に消費電力量を低減することができる。
請求項5に係る発明によれば、一つの集約元の電子部品実装装置の実装処理を、一つの電子部品実装装置に集約することができる。これにより、確実に、消費電力量を低減できる生産計画を決定できる。また、確実に且つ容易に、集約先を決定することができる。
【0022】
請求項6に係る発明によれば、一つの集約元の電子部品実装装置の実装処理を、複数の電子部品実装装置に集約することができる。これにより、確実に、消費電力量を低減できる生産計画を決定できる。
請求項7に係る発明によれば、第一集約候補を第二集約候補よりも優先して集約処理を行うことで、集約先を確実に且つ容易に決定することができ、確実に消費電力量を低減できる。
【0023】
請求項8に係る発明によれば、装着ヘッドを変更せずに集約処理を行うため、容易に変更生産計画を生成でき、段取り替えを行うことなく変更生産計画を実行できる。
請求項9に係る発明によれば、確実にさらなる消費電力量を低減できる。
【0024】
請求項10に係る発明によれば、確実に消費電力量を低減できる。
請求項11に係る発明によれば、サイクルタイムをより効果的に短縮することができ、結果として消費電力量を確実に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】生産ラインシステムの一部を構成する二つの電子部品実装装置を並設した状態を示す斜視図である。
【図2】装着ヘッドにおけるノズルの装着数および1部品当たりの消費電力量を示す表である。
【図3】各装着ヘッドにおける電子部品の適用大きさ範囲と、各ノズルにおける電子部品の適用大きさ範囲を示す図である。
【図4】生産計画決定方法のメイン処理を示すフローチャートである。
【図5】図4のステップS4の集約処理を示すフローチャートである。
【図6】図4のステップS4の集約処理を示すフローチャートである。
【図7】図4のステップS5の集約処理を示すフローチャートである。
【図8】図4のステップS5の集約処理を示すフローチャートである。
【図9】初期生産計画を示す表である。
【図10】変更生産計画を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の生産ラインシステムの生産計画決定方法を具体化した実施形態について図面を参照しつつ説明する。
【0027】
(本実施形態の概要)
本実施形態の生産計画決定方法は、効率を重視して予め計画された初期生産計画に基づいて複数の電子部品実装装置2,2を配置した状態を前提とし、この前提の元で生産計画を変更した変更生産計画を生成する方法である。そして、変更生産計画は、初期生産計画に比べて消費電力量を低減することを目的とし、かつ、目標のサイクルタイム内に収まるように計画されたものである。以下に詳細に説明する。
【0028】
(生産ラインシステム1の機械構成)
まず、生産ラインシステム1の機械構成について、図1を参照して説明する。この生産ラインシステム1は、電子部品実装基板を生産するラインである。電子部品実装基板は、回路基板30に複数の電子部品を実装したものである。そして、図1に示すように、生産ラインシステム1は、複数の電子部品実装装置2,2を並べて配置して構成される。なお、図1においては、二つの電子部品実装装置2,2を連結した部分を示したものであり、実際の生産ラインシステム1は、さらに多くの電子部品実装装置2を並べて配置して構成する。
【0029】
そして、各電子部品実装装置2,2による実装処理を順次実行することで電子部品実装基板を生産する。ここで、電子部品実装装置2は生産ラインシステム1におけるモジュールを構成するため、以下の説明においては、電子部品実装装置2をモジュールと称する。
【0030】
各モジュール2は、基体21と、一対のコンベア22,22と、部品フィーダ23と、Yスライド部24と、Xスライド部25と、装着ヘッド26と、ノズル27と、ノズルステーション(図示せず)とを備えて構成される。
【0031】
基体21は、モジュール2のフレームを構成し、床上に固定される。そして、X方向の隣りに連設されるモジュール2の基体21と連結可能な構成とされている。一対のコンベア22,22は、基体21に固定され、コンベア22の上面に載置されたX方向に回路基板30を搬送する。つまり、コンベア22は、X方向の一方側に配置されたモジュール2からX方向の他方側に配置されたモジュール2へ向かって、回路基板30を搬送する。そして、このコンベア22が、Y方向に並んで配置されている。
【0032】
部品フィーダ23は、モジュール2のY方向一端部に設けられ、回路基板30に実装するための電子部品を収容している。部品フィーダ23のタイプは、テープフィーダやトレイフィーダなど存在する。図1においては、テープフィーダを示している。
【0033】
Yスライド部24は、基体21にY方向に延びるように設けられたY方向レールと、該Y方向レールに沿って移動するY移動体と、Y移動体を移動するためのY駆動部とを備える。Y駆動部は、例えば、電気モータとボールねじの構成や、リニアモータなどにより構成される。つまり、Y駆動部の駆動により、Y移動体が基体21に対してY方向レールに沿って移動する。
【0034】
Xスライド部25は、Yスライド部24のY移動体にX方向に延びるように設けられたX方向レールと、該X方向レールに沿って移動するX移動体と、X移動体を移動するためのX駆動部とを備える。X駆動部は、例えば、電気モータとボールねじの構成や、リニアモータなどにより構成される。つまり、X駆動部の駆動により、X移動体がX方向レールに沿って基体21に対して移動する。つまり、Xスライド部25のX移動体は、基体21に対して、X方向およびY方向に移動可能となる。
【0035】
装着ヘッド26は、Xスライド部25のX移動体に設けられている。つまり、装着ヘッド26は、基体21に対して、X方向およびY方向に移動可能となる。詳細には、装着ヘッド26は、部品フィーダ23とコンベア22上を搬送される回路基板30との間を相対的に移動可能となる。この装着ヘッド26の下端側には、ノズル27が交換可能に装着される。この装着ヘッド26は、1つのノズル27のみを装着するタイプと、複数のノズル27を装着するタイプとが存在する。これは、実装する電子部品の大きさや、電子部品の全体数、種類数などに応じて適宜選択する。
【0036】
ノズル27は、装着ヘッド26の下端側に装着される。このノズル27は、コンベア22上を搬送される回路基板30に対して複数の電子部品を実装するために、部品フィーダ23に収容されている電子部品を例えば吸着などによって保持できる。つまり、装着ヘッド26を基体21に対してX方向およびY方向に移動させることで、ノズル27により部品フィーダ23に収容される電子部品を回路基板30へ搬送することができる。
【0037】
ノズルステーションは、装着ヘッド26に装着されていない複数種類のノズル27を保管する。装着ヘッド26に装着するノズル27を交換する場合には、装着ヘッド26をノズルステーションへ移動させ、装着しているノズル27をノズルステーションで取り外し、ノズルステーションに保管されている他のノズル27を装着する。
【0038】
(装着ヘッド26の種類および適用サイズ)
次に、装着ヘッド26の種類、および、装着ヘッド26における電子部品の適用サイズについて図2〜図3を参照して説明する。本実施形態においては、装着ヘッド26は、図2に示すように、タイプA,タイプB,タイプC,タイプD,タイプEの5種類を例に挙げて説明する。装着ヘッド「タイプA」は、ノズル27の装着数が12個で、一つの電子部品当たりの消費電力量2.0Wである。装着ヘッド「タイプB」は、ノズル27の装着数が12個で、一つの電子部品当たりの消費電力量2.2Wである。装着ヘッド「タイプC」は、ノズル27の装着数が8個で、一つの電子部品当たりの消費電力量3.5Wである。装着ヘッド「タイプD」は、ノズル27の装着数が2個で、一つの電子部品当たりの消費電力量7.75Wである。装着ヘッド「タイプE」は、ノズル27の装着数が1個で、一つの電子部品当たりの消費電力量14.5Wである。ここで、一つの電子部品当たりの消費電力量とは、各装着ヘッド26に装着可能な数のノズル27を装着した状態で、装着ヘッド26を部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間を往復するために装着ヘッド26自身が必要な消費電力量を、ノズル27の数で除算した概算値である。つまり、この消費電力量は、ノズル27により電子部品を例えば吸着するために必要な消費電力量が相当する。この消費電力量には、装着ヘッド26をYスライド部24およびXスライド部25により搬送動作するための消費電力量は含まれない。
【0039】
また、上述したように、電子部品の大きさによって、ノズル27の種類が異なると共に、それぞれの装着ヘッド26が装着可能なノズル27が異なる。本実施形態においては、図3に示すように、ノズル27を、N1,N2,N3,N4,N5,N6の6種類用いるものとする。そして、ノズル27は、N1,N2,N3,N4,N5,N6の順に、保持可能な電子部品の大きさが小さくなる。
【0040】
そして、装着ヘッド「タイプA」,「タイプB」は、比較的小さい電子部品に適用され、「タイプC」,「タイプD」の順に、適用される電子部品の大きさの範囲が大きくなる。ただし、「タイプA」「タイプB」と、「タイプC」の適用範囲が一部重なっており、また、「タイプC」と「タイプD」の適用範囲が一部重なっている。装着ヘッド「タイプE」は、最小の範囲から「タイプA」の適用範囲の中間付近までの間の大きさの電子部品に適用可能である。
【0041】
装着ヘッド26とノズル27との関係については、以下の通りです。すなわち、ノズル「N1」は、装着ヘッド「タイプA」「タイプB」「タイプC」「タイプE」が適用可能である。ノズル「N2」は、装着ヘッド「タイプA」「タイプB」「タイプC」「タイプD」「タイプE」が適用可能である。ノズル「N3」は、装着ヘッド「タイプC」「タイプD」「タイプE」が適用可能である。ノズル「N4」「N5」は、装着ヘッド「タイプD」「タイプE」が適用可能である。ノズル「N6」は、装着ヘッド「タイプE」が適用可能である。
【0042】
(モジュール2による消費電力)
次に、モジュール2による消費電力について説明する。モジュール2による消費電力は、回路基板30をコンベア22,22により搬送する搬送処理に伴う消費電力と、電子部品を回路基板30に実装する実装処理に伴う消費電力とが主である。
【0043】
前者の搬送処理に伴う消費電力は、例えば、200〜300Whである。後者の実装処理に伴う消費電力は、装着ヘッド26を部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で搬送動作するためにYスライド部24およびXスライド部25の消費電力と、電子部品を吸着などにより保持するための消費電力が含まれる。ここで、電子部品を吸着などにより保持するための消費電力は、図2に示す通りである。ノズル27により電子部品を保持するためには、一つの装着ヘッド26当たり、20〜30Whである。また、装着ヘッド26を部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で搬送動作するための消費電力量は、例えば、1000Wh前後である。つまり、装着ヘッド26の搬送動作に伴う消費電力量は、搬送処理に伴う消費電力量に比べて非常に大きく、ノズル27により電子部品を保持するための消費電力量に比べるとさらに大きな差を有する。
【0044】
(生産計画決定方法)
次に、上述した生産ラインシステムにおける生産計画決定方法、特に、初期生産計画に対して変更された変更生産計画の決定方法について、図4〜図10を参照して説明する。図9および図10を適宜参照しながら、図4〜図8に示すフローチャートに沿って説明する。
【0045】
図4に示すように、メイン処理は、まず初期生産計画を決定する(S1)。初期生産計画は、図9に示す通りである。この初期生産計画は、効率を重視して設計されている。すなわち、初期生産計画は、現在の生産ラインの構成、各モジュールのヘッド構成、ノズル構成をもとに、全モジュールの負荷を均等化してサイクルタイムを可能な限り短縮しつつ、部品フィーダ23の交換の容易化や、部品フィーダ23の交換するタイミングなどを考慮して設計されている。なお、初期生産計画では、消費電力量については考慮されていない。
【0046】
具体的には、初期生産計画は、図9に示すように、12個のモジュール2(モジュール番号1〜12で示す)により構成されており、モジュール番号1から12へ順次並べて配置するものである。図9には、装着ヘッド26の種類、ノズルの種類とその数、部品供給形態、各ノズル27に応じた装着する電子部品の点数、装着ヘッド26における部品フィーダ23からコンベア22上の回路基板30までの搬送動作回数、サイクルタイムを示す。この初期生産計画におけるボトルネックモジュール、すなわちサイクルタイムが最も長いモジュール2は、モジュール番号「2」のモジュール2である。
【0047】
続いて、初期生産計画における装着ヘッド26に対して、同一ノズル27を同数装着可能で、消費電力量が低い装着ヘッド26が存在するか否かを判断する(S2)。例えば、本実施形態においては、初期生産計画において装着ヘッド「タイプB」が装着されているとした場合には、装着ヘッド「タイプA」がそれに該当する。図2に示したように、装着ヘッド「タイプB」の電子部品一つ当たりの消費電力量は、2.2Whであるのに対して、装着ヘッド「タイプA」の当該消費電力量は、2.0Whである。
【0048】
続いて、ステップS2において、該当する装着ヘッド26が存在する場合には、消費電力量の低い装着ヘッド26に変更する計画とする(S3)。つまり、図10に示す変更生産計画は、装着ヘッド26の種類の欄において、図9に示す初期生産計画における「タイプB」のモジュールを「タイプA」に変更している。一方、ステップS2において、該当する装着ヘッド26が存在しない場合には、S3を飛ばして、次のステップへ進む。
【0049】
続いて、モジュール2の実装処理を他のモジュール2に集約するための処理を行う。具体的には、まず、集約先のモジュール2の装着ヘッド26が集約元のモジュール2の装着ヘッド26と同一種類の場合についての集約処理を行う(S4)。その後に、集約先のモジュール2の装着ヘッド26が集約元のモジュール2の装着ヘッド26と異なる種類の場合についての集約処理を行う(S5)。そして、メイン処理を終了する。
【0050】
メイン処理のステップS4における装着ヘッド26が同一種類の場合における集約処理について、図5および図6を参照して説明する。この集約処理は、まず、各モジュール2に対して、同一種類の装着ヘッド26およびノズル27を有する集約候補(以下、この集約候補を「第一集約候補」という)を抽出する(S11)。
【0051】
具体的には、第一集約候補には、集約元のモジュール2における装着ヘッド26と同一種類の装着ヘッド26を装着しており、かつ、集約元のモジュール2において装着されているノズル27に対して種類および数の全てが同一種類である場合が該当する。さらに、集約元のモジュール2における装着ヘッド26と同一種類の装着ヘッド26を装着しており、かつ、集約元のモジュール2において装着されているノズル27の種類を一部に含む場合が該当する。
【0052】
例えば、図9の初期生産計画において、モジュール番号「3」に対する第一集約候補の前者の場合としては、モジュール番号「1」「2」「4」「5」が該当し、第一集約候補の後者の場合としては、モジュール番号「6」が該当する。また、モジュール番号「8」に対する第一集約候補の後者の場合としては、モジュール番号「7」が該当する。
【0053】
続いて、一つの集約元のモジュール2を選択する。選択した集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第一集約候補のうち一つの集約先のモジュール2へ集約した時において、第一集約候補のモジュール2におけるサイクルタイムを計算する(S12)。このサイクルタイムの計算方法は、以下の2種類がある。第一の方法として、初期生産計画におけるそれぞれのモジュール2におけるサイクルタイムを合算して得る方法である。例えば、モジュール番号「3」を「1」に集約した場合、第一の方法を用いると、サイクルタイムは26.5秒となる。第二の方法として、電子部品の種類およびその数に応じて装着するノズル27の数を設計し直した上で実際に要するサイクルタイムを計算する方法である。例えば、モジュール番号「3」を「1」に集約した場合、第二の方法を用いると、サイクルタイムは25秒となる。第二のサイクルタイムの計算方法を用いる方がより正確に算出できる。
【0054】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第一集約候補のうち一つの集約先のモジュール2へ集約した時において、第一集約候補のモジュール2における、部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で装着ヘッド26の搬送動作回数を計算する(S13)。例えば、モジュール番号「3」を「1」に集約した場合、搬送動作回数は、7回となる。
【0055】
続いて、ステップS12にて計算したサイクルタイムが予め設定した閾値以下であるか否かを判断する(S14)。ここで、閾値は、変更生産計画の際の新たに設定されたサイクルタイムを用いてもよいし、初期生産計画におけるボトムネックモジュールのサイクルタイムを用いてもよいし、ボトムネックモジュールのサイクルタイムに対して現状を鑑みて効率を悪くできる時間を加算した時間を用いても良い。これらは、適宜選択できるものである。例えば、本実施形態においては、初期生産計画におけるボトムネックモジュール、すなわちモジュール番号「2」のサイクルタイムを閾値と設定する。
【0056】
さらに、サイクルタイムが閾値以下であると共に、ステップS13にて計算した装着ヘッド26の搬送動作回数が、初期生産計画における集約元と集約先のモジュール2における搬送動作回数の合計値より減少しているか否かを判断する(S14)。例えば、初期生産計画における両者のモジュール「1」「3」の搬送動作回数の合計値は8回であり、モジュール番号「3」を「1」に集約した場合の搬送動作回数は7回となり、回数が減少している。
【0057】
続いて、ステップS14の条件を満たす場合には(S14:Y)、集約元のモジュール2の実装処理を、第一集約候補としての集約先のモジュール2に集約する処理を実行する(S15)。例えば、モジュール番号「3」を「1」に集約する。また、同様の処理により、モジュール番号「8」を「7」に集約する。一方、ステップS14の条件を満たさない場合には(S14:N)、ステップS15の集約処理を行わずに次に進む。
【0058】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2に対して他の第一集約候補が存在するか否かを判断し(S16)、存在すればステップS12から繰り返す。一方、他の第一集約候補が存在しなければ、まだステップS12〜S16までの処理を行っていない他の集約元のモジュール2が存在するか否かを判断する(S17)。そして、他の集約元のモジュール2が存在すれば、ステップS12から処理を繰り返し、存在しなければ次に進む。
【0059】
続いて、再び、一つの集約元のモジュール2を選択する。選択した集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第一集約候補のうち複数の集約先のモジュール2へ集約した時において、第一集約候補のモジュール2におけるサイクルタイムを計算する(S21)。このサイクルタイムの計算方法は、上述したステップS12における方法で説明した通りである。なお、ここでいう第一集約候補を、本発明における「第二集約候補」と称している。
【0060】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第一集約候補のうち複数の集約先のモジュール2へ集約した時において、第一集約候補のモジュール2における、部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で装着ヘッド26の搬送動作回数を計算する(S22)。例えば、モジュール番号「5」をモジュール番号「4」「6」の二つに分散して集約した場合、モジュール番号「4」「6」の搬送動作回数は共に7回となる。
【0061】
続いて、ステップS21にて計算したサイクルタイムが予め設定した閾値以下であるか否かを判断する(S23)。ここで、閾値は、変更生産計画の際の新たに設定されたサイクルタイムを用いてもよいし、初期生産計画におけるボトムネックモジュールのサイクルタイムを用いてもよいし、ボトムネックモジュールのサイクルタイムに対して現状を鑑みて効率を悪くできる時間を加算した時間を用いても良い。これらは、適宜選択できるものである。例えば、本実施形態においては、初期生産計画におけるボトムネックモジュール、すなわちモジュール番号「2」のサイクルタイムを閾値と設定する。
【0062】
さらに、サイクルタイムが閾値以下であると共に、ステップS22にて計算した装着ヘッド26の搬送動作回数が、初期生産計画における集約元と集約先のモジュール2における搬送動作回数の合計値より減少しているか否かを判断する(S23)。例えば、初期生産計画における両者のモジュール「4」「5」「6」の搬送動作回数の合計値は15回であり、モジュール番号「5」を「4」「6」に分算して集約した場合のこれらの搬送動作回数は14回となり、回数が減少している。
【0063】
続いて、ステップS23の条件を満たす場合には(S23:Y)、集約元のモジュール2の実装処理を、第一集約候補として選択された複数の集約先のモジュール2に分算して集約する処理を実行する(S24)。例えば、モジュール番号「5」をモジュール番号「4」「6」に分散して集約する。一方、ステップS23の条件を満たさない場合には(S23:N)、ステップS24の集約処理を行わずに次に進む。
【0064】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2に対して他の第一集約候補の組み合わせが存在するか否かを判断し(S25)、存在すればステップS21から繰り返す。一方、他の第一集約候補の組み合わせが存在しなければ、まだステップS21〜S25までの処理を行っていない他の集約元のモジュール2が存在するか否かを判断する(S26)。そして、他の集約元のモジュール2が存在すれば、ステップS21から処理を繰り返し、存在しなければメイン処理のステップS4の集約処理を終了する。
【0065】
次に、メイン処理のステップS5における装着ヘッド26が異なる種類の場合における集約処理について、図7および図8を参照して説明する。この集約処理は、まず、各モジュール2に対して、適用可能な他種装着ヘッド候補を抽出する(S31)。図3を参照すると、例えば、モジュール番号「12」の場合は、現在装着ヘッド「タイプE」が装着されておりノズル「N4」が装着されているため、他種装着ヘッド候補には、装着ヘッド「タイプD」が存在する。
【0066】
続いて、各モジュール2に対して、ステップS31にて抽出した他種装着ヘッド候補となる装着ヘッド26を有する集約候補(以下、この集約候補を「第三集約候補」という)を抽出する(S32)。例えば、図9の初期生産計画において、モジュール番号「12」に対する第三集約候補としては、装着ヘッド「タイプD」を有するモジュール番号「9」が該当する。このとき、一つのモジュール2に対する第三集約候補が複数存在する場合には、その順位を決定する。具体的には、装着可能なノズル27の数が多いモジュール2が上位となり、装着可能なノズル27の数が少ないモジュール2が下位となるように順位付けがされる。
【0067】
続いて、一つの集約元のモジュール2を選択する。選択した集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第三集約候補となるモジュール2へ集約した時において、第三集約候補のモジュール2におけるサイクルタイムを計算する(S33)。この計算の順序は、ステップS32にて設定された順位に基づいて行われる。このサイクルタイムの計算方法は、上述したとおりである。例えば、モジュール番号「12」を「9」に集約した場合、サイクルタイムは24秒となる。
【0068】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第三集約候補となるモジュール2へ集約した時において、第三集約候補のモジュール2における、部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で装着ヘッド26の搬送動作回数を計算する(S34)。この計算の順序は、ステップS32にて設定された順位に基づいて行われる。例えば、モジュール番号「12」を「9」に集約した場合、搬送動作回数は、11回となる。
【0069】
続いて、ステップS33にて計算したサイクルタイムが予め設定した閾値以下であるか否かを判断する(S35)。ここで、閾値は、変更生産計画の際の新たに設定されたサイクルタイムを用いてもよいし、初期生産計画におけるボトムネックモジュールのサイクルタイムを用いてもよいし、ボトムネックモジュールのサイクルタイムに対して現状を鑑みて効率を悪くできる時間を加算した時間を用いても良い。これらは、適宜選択できるものである。例えば、本実施形態においては、初期生産計画におけるボトムネックモジュール、すなわちモジュール番号「2」のサイクルタイムを閾値と設定する。
【0070】
さらに、サイクルタイムが閾値以下であると共に、ステップS34にて計算した装着ヘッド26の搬送動作回数が、初期生産計画における集約元と集約先のモジュール2における搬送動作回数の合計値より減少しているか否かを判断する(S35)。例えば、初期生産計画における両者のモジュール「9」「12」の搬送動作回数の合計値は11回であり、モジュール番号「12」を「9」に集約した場合の搬送動作回数は11回となり、回数が減少していない。
【0071】
続いて、ステップS35の条件を満たす場合には(S35:Y)、集約元のモジュール2の実装処理を、第三集約候補としての集約先のモジュール2に集約する処理を実行する(S36)。つまり、装着可能なノズル27が多いモジュール2から優先して集約処理が行われることになる。上記した例として、モジュール番号「12」を「9」に集約することを考えると、搬送動作回数が低減していないため、この集約処理は行わない。一方、ステップS35の条件を満たさない場合には(S35:N)、ステップS36の集約処理を行わずに次に進む。
【0072】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2に対して他の第三集約候補が存在するか否かを判断し(S37)、存在すればステップS33から繰り返す。一方、他の第三集約候補が存在しなければ、まだステップS33〜S37までの処理を行っていない他の集約元のモジュール2が存在するか否かを判断する(S38)。そして、他の集約元のモジュール2が存在すれば、ステップS33から処理を繰り返し、存在しなければ次に進む。
【0073】
続いて、各モジュール2に対して、各モジュール2において適用可能な他種装着ヘッド候補と同一の他種装着ヘッド候補を有する第四集約候補を抽出する(S41)。図3を参照すると、例えば、モジュール番号「11」の場合は、現在装着ヘッド「タイプE」が装着されておりノズル「N4」「N5」が装着されているため、他種装着ヘッド候補には、装着ヘッド「タイプD」が存在する。また、モジュール番号「12」の場合は、現在装着ヘッド「タイプE」が装着されておりノズル「N4」が装着されているため、他種装着ヘッド候補には、装着ヘッド「タイプD」が存在する。従って、図9の初期生産計画において、モジュール番号「12」に対する第四集約候補としては、同一の他種装着ヘッド候補を有するモジュール番号「11」が該当する。
【0074】
続いて、一つの集約元のモジュール2を選択する。選択した集約元のモジュール2の実装処理を、当該集約元のモジュール2に対する第四集約候補となるモジュール2へ集約し、且つ、装着ヘッド「タイプD」に変更した時において、第四集約候補のモジュール2におけるサイクルタイムを計算する(S42)。このサイクルタイムの計算方法は、上述したとおりである。例えば、モジュール番号「12」を「11」に集約し、且つ、装着ヘッド「タイプD」に変更した場合、サイクルタイムは18秒となる。
【0075】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2の実装処理を当該集約元のモジュール2に対する第四集約候補となるモジュール2へ集約し、且つ、選択された他種装着ヘッドに変更した時において、第四集約候補のモジュール2における、部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で装着ヘッド26の搬送動作回数を計算する(S43)。例えば、モジュール番号「12」を「11」に集約し、且つ、装着ヘッド「タイプD」に変更した場合、搬送動作回数は、6回となる。
【0076】
続いて、ステップS42にて計算したサイクルタイムが予め設定した閾値以下であるか否かを判断する(S44)。ここで、閾値は、変更生産計画の際の新たに設定されたサイクルタイムを用いてもよいし、初期生産計画におけるボトムネックモジュールのサイクルタイムを用いてもよいし、ボトムネックモジュールのサイクルタイムに対して現状を鑑みて効率を悪くできる時間を加算した時間を用いても良い。これらは、適宜選択できるものである。例えば、本実施形態においては、初期生産計画におけるボトムネックモジュール、すなわちモジュール番号「2」のサイクルタイムを閾値と設定する。
【0077】
さらに、サイクルタイムが閾値以下であると共に、ステップS43にて計算した装着ヘッド26の搬送動作回数が、初期生産計画における集約元と集約先のモジュール2における搬送動作回数の合計値より減少しているか否かを判断する(S44)。例えば、初期生産計画における両者のモジュール「11」「12」の搬送動作回数の合計値は8回であり、モジュール番号「12」を「11」に集約し、且つ、装着ヘッド「タイプD」に変更した場合の搬送動作回数は6回となり、回数が減少している。
【0078】
続いて、ステップS44の条件を満たす場合には(S44:Y)、集約元のモジュール2の実装処理を、第四集約候補としての集約先のモジュール2に集約し、且つ、装着ヘッドを変更する処理を実行する(S45)。例えば、モジュール番号「12」を「11」に集約し、且つ、装着ヘッド26を「タイプE」から「タイプD」に変更する。一方、ステップS44の条件を満たさない場合には(S44:N)、ステップS45の集約処理を行わずに次に進む。
【0079】
続いて、選択した一つの集約元のモジュール2に対して他の第四集約候補が存在するか否かを判断し(S46)、存在すればステップS42から繰り返す。一方、他の第四集約候補が存在しなければ、まだステップS42〜S46までの処理を行っていない他の集約元のモジュール2が存在するか否かを判断する(S47)。そして、他の集約元のモジュール2が存在すれば、ステップS42から処理を繰り返し、存在しなければメイン処理のステップS5の集約処理を終了する。
【0080】
(本実施形態の効果)
上述した変更生産計画により実装処理を実行することで、以下の効果を奏する。まず、実装処理を行わないモジュール2が、モジュール番号「3」「5」「8」「12」となる。これらのモジュール2は、実装処理に要する消費電力量がゼロとなり、搬送処理に要する消費電力量のみとなる。従って、初期生産計画に比べて変更生産計画は、当該モジュール2の実装処理に要する消費電力量が低減する。この実装処理に要する消費電力量は、上述したように、装着ヘッド26を部品フィーダ23とコンベア22上の回路基板30との間で搬送動作するためにYスライド部24およびXスライド部25の消費電力と、電子部品を吸着などにより保持するための消費電力が含まれる。そして、前者の消費電力量は、1000Wh前後と非常に大きい。従って、低減効果が非常に大きい。
【0081】
さらに、本実施形態においては、集約したときに装着ヘッド26の搬送動作回数が低減する場合に、集約処理を実行することとしている。装着ヘッド26の搬送動作回数は、装着ヘッド26の動作時間に依存するものである。つまり、集約前後において装着ヘッド26の搬送動作回数が同一以上であると、装着ヘッド26を動作させる駆動部の消費電力量は、同一以上となる可能性がある。しかし、本実施形態においては、装着ヘッド26の搬送動作回数を低減する場合に集約しているため、集約した場合に、消費電力量が確実に低減する。
【0082】
また、サイクルタイムが設定されて閾値以下である場合に集約処理を行っている。ここで、初期生産計画は、サイクルタイムの短時間化、部品フィーダ23の交換の容易化、部品フィーダ23の交換するタイミングなど、効率を重視して計画されたものである。従って、初期生産計画を変更すると、効率が低下するおそれがある。例えば、サイクルタイムが延長するおそれがある。しかし、集約した場合のサイクルタイムが設定された閾値以下の場合に、集約処理を実行するとしているため、サイクルタイムが閾値より長くなることを防止しつつ、上述したように消費電力量を低減することができる。特に、ボトムネックモジュールに着目することで、サイクルタイムを延長することなく集約処理を行うことができる。また、仮に、サイクルタイムを延長したとしても、消費電力量の低減効果を得る必要のある場合には、設定する閾値を初期生産計画のボトムネックモジュールのサイクルタイムよりも長い時間に設定することで、より集約による消費電力量の低減効果を奏することができる。
【0083】
<その他>
上記実施形態においては、サイクルタイムが閾値以下であって、装着ヘッド26の搬送動作回数が集約前の合計回数より減少している場合に、集約処理を行った。これを、装着ヘッド26の搬送動作回数が集約前の合計回数より減少しているか否かに関わらず、サイクルタイムが閾値以下の場合に、集約処理を行うようにしてもよい。また、装着ヘッド26の搬送動作回数について集約前後で比較したが、これに代えて集約前後の該当モジュール2のサイクルタイムを比較してもよい。ここで、集約前後の該当モジュール2のサイクルタイムの比較は、実質的に、装着ヘッド26の搬送動作回数に依存するものである。従って、実質的な効果は同様である。ただし、サイクルタイムを比較することで、より高精度に消費電力量の低減を図ることができる。
【0084】
上記実施形態において、初期生産計画は、全モジュールの負荷を均等化してサイクルタイムを可能な限り短縮するような計画とした。この他に、各モジュールの消費電力量の割合に応じて初期生産計画を設定してもよい。具体的には、消費電力量の少ない装着ヘッド26の負荷を、消費電力量の多い装着ヘッド26の負荷よりも大きくなるように設定する。
【0085】
例えば、各モジュールの負荷を均等化した場合を基準負荷として、消費電力量の大きな装着ヘッド26の負荷を基準負荷の0.8倍となるようにし、消費電力量の小さな装着ヘッド26の負荷を基準負荷の1.2倍となるようにする。このようにすることで、生産効率は低下するけれども、消費電力量の低減を確実に図ることができる。
なお、各モジュールの消費電力量の割合に応じて各モジュールの負荷を変更する処理は、変更生産計画決定工程においても行うことができる。つまり、上記実施形態において決定された変更生産計画に対して、各モジュールの消費電力量の割合に応じて変更する。
【符号の説明】
【0086】
1:生産ラインシステム
2:電子部品実装装置(モジュール)
21:基体
22:コンベア
23:部品フィーダ
24:Yスライド部
25:Xスライド部
26:装着ヘッド
27:ノズル
30:回路基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品実装装置を並べて配置して、各前記電子部品実装装置による実装処理を順次実行することで回路基板に複数の電子部品を実装した電子部品実装基板を生産する生産ラインシステムにおける生産計画決定方法において、
各前記電子部品実装装置は、前記電子部品を収容する部品フィーダと、前記電子部品を保持するノズルと、一つまたは複数の前記ノズルを装着すると共に前記部品フィーダと前記回路基板との間を相対的に移動可能に設けられる装着ヘッドと、を備え、
前記生産計画決定方法は、
既に設置された前記生産ラインシステムにおいて全ての前記電子部品実装装置による実装処理を実行させる初期生産計画を決定する初期生産計画決定工程と、
前記装着ヘッドに装着されている前記ノズルの少なくとも一部が選択された集約元となる前記電子部品実装装置の前記ノズルと同一種類であり、かつ、前記装着ヘッドが装着可能な前記ノズルの数が前記集約元となる前記電子部品実装装置の前記ノズルの数と同数以上である前記電子部品実装装置を集約候補として抽出する集約候補抽出工程と、
前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した場合における前記生産ラインシステムのサイクルタイムを計算するサイクルタイム計算工程と、
前記サイクルタイム計算工程にて計算された前記サイクルタイムが、前記初期生産計画のサイクルタイムに基づいて設定された閾値以下である場合には、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した変更生産計画を生成する変更生産計画生成工程と、
を備え、
前記変更生産計画に基づいて実行することにより、前記集約元の前記電子部品実装装置による前記電子部品の実装処理を停止して消費電力量を低減することを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記変更生産計画生成工程は、さらに、集約した場合の前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの搬送動作時間が、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記部品フィーダから前記回路基板への搬送動作時間と前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記搬送動作時間との合計時間より短くなる場合に、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した変更生産計画を生成することを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項3】
請求項2において、
前記変更生産計画生成工程は、集約した場合の前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記部品フィーダから前記回路基板への搬送動作回数が、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記部品フィーダから前記回路基板への搬送動作回数と前記集約候補の前記電子部品実装装置における前記装着ヘッドの前記搬送動作回数との合計回数より減少している場合に、前記集約元の前記電子部品実装装置における前記電子部品の実装処理を前記集約候補としての前記電子部品実装装置に集約した変更生産計画を生成することを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、
前記集約候補抽出工程は、前記装着ヘッドに装着されている前記ノズルの全てが前記集約元の前記電子部品実装装置の前記ノズルと同一種類である前記電子部品実装装置を前記集約候補とすることを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記集約候補抽出工程は、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置における実装処理を、一つの前記電子部品実装装置に集約する場合における前記集約候補としての第一集約候補を抽出し、
前記サイクルタイム計算工程および前記変更生産計画生成工程は、前記集約候補を前記第一集約候補として集約処理を行うことを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項において、
前記集約候補抽出工程は、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置における実装処理を、複数の前記電子部品実装装置に集約する場合における前記集約候補としての第二集約候補を抽出し、
前記サイクルタイム計算工程および前記変更生産計画生成工程は、前記集約候補を前記第二集約候補として集約処理を行うことを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項7】
請求項6において、
前記集約候補抽出工程は、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置における実装処理を、一つの前記電子部品実装装置に集約する場合における前記集約候補としての第一集約候補を抽出し、
前記サイクルタイム計算工程および前記変更生産計画生成工程は、前記集約候補を前記第一集約候補として行う集約処理を、前記集約候補を前記第二集約候補として行う集約処理よりも優先して行うことを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項8】
請求項5〜7の何れか一項において、
前記変更生産計画生成工程は、既に設置されている前記生産ラインシステムにおける前記電子部品実装装置の前記装着ヘッドをそのまま用いつつ、集約した前記変更生産計画を生成することを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項9】
請求項5〜7の何れか一項において、
前記変更生産計画生成工程は、既に設置されている前記生産ラインシステムにおける前記電子部品実装装置の前記装着ヘッドを他の前記装着ヘッドに変更して、集約した前記変更生産計画を生成することを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項10】
請求項9において、
前記変更生産計画生成工程は、既に設置されている前記生産ラインシステムにおける前記電子部品実装装置の前記装着ヘッドよりも消費電力量が少ない前記他の前記装着ヘッドに変更することを特徴とする生産計画決定方法。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項において、
前記変更生産計画生成工程は、一つの前記集約元の前記電子部品実装装置に対して複数の前記集約候補がある場合に、前記ノズルの数が相対的に多い前記電子部品実装装置から優先して前記集約候補として集約処理を行うことを特徴とする生産計画決定方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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