説明

生産予測方法、生産管理システム、プログラム、記録媒体

【課題】被生産物の仕上がり時を精度良く予測できる生産予測方法、生産管理システム、および、これらに関するプログラム、記録媒体を提供すること。
【解決手段】被生産物の流動状況を管理する生産管理システム1は、被生産物の流動データと、工程負荷演算部14で演算された数量とに基づいて仕上がり時の予測演算を行い、第1予測値として取得する予測演算部15と、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて第1予測値を補正する補正部16とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工業製品の生産における生産予測方法、生産管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ロット(被生産物)の流動状況を管理する生産管理は、効率的、安定的な製品生産を行う上で欠かせないものである。そこで、生産管理を効率的に行うため、オンラインシステムを用いた生産管理方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平6−266413号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、生産計画を効率的に進めるためには、現状の流動状況を把握するだけではなく、流動状況から製品の仕上がり時を高精度に予測することが必要である。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、被生産物の仕上がり時を精度良く予測できる生産予測方法、生産管理システム、および、これらに関するプログラム、記録媒体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のサブ工程間を被生産物が流動することによって得られる製品の生産において、被生産物の流動状況に基づいて、被生産物の仕上がり時を予測する生産予測方法であって、被生産物の仕上がり時を予測し、第1予測値として取得するステップと、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて、前記第1予測値を補正するステップと、を有する。
また好ましくは、前記相関関数が1次関数である。
【0007】
被生産物の仕上がり時の予測誤差は、一般的に、その仕上がりをどのくらい前のタイミングで予測したか、すなわちその予測実施時から仕上がり時までの時間と相関があると考えることができる。この発明の例によれば、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて予測値を補正するので、精度良く予測を行うことができる。
【0008】
本発明は、複数のサブ工程間を被生産物が流動することによって得られる製品の生産において、被生産物の流動状況を管理する生産管理システムであって、被生産物の仕上がり時について予測演算し、第1予測値として取得する予測演算部と、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて前記第1予測値を補正する補正部と、を備える。
また好ましくは、前記相関関数が1次関数である。
【0009】
被生産物の仕上がり時の予測誤差は、一般的に、その仕上がりをどのくらい前のタイミングで予測したか、すなわちその予測実施時から仕上がり時までの時間と相関があると考えることができる。この発明の例によれば、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて予測値を補正するので、精度良く予測を行うことができる。
【0010】
また好ましくは、前記生産管理システムは、さらに、前記第1予測値に係るデータをサンプルデータとして記憶するサンプル記憶部と、流動済みの被生産物に係る前記サンプルデータと当該被生産物の流動実績とに基づいて、回帰分析により、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数を取得する回帰分析部と、を備えており、前記補正部が、前記回帰分析部で取得された相関関数を、前記補正に係る相関関数として再設定する。
この発明の例によれば、流動済みの被生産物に係る予測データ(サンプルデータ)と流動実績に基づいて補正に係る相関関数の演算、再設定を行うので、被生産物の製品種構成等の変化に追従して精度良く予測を行うことができる。
【0011】
本発明は、複数のサブ工程間を被生産物が流動することによって得られる製品の生産において、被生産物の流動状況に基づいて、被生産物の仕上がり時をコンピュータに予測させるプログラムであって、被生産物の仕上がり時について予測演算し、第1予測値として取得するステップと、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて、前記第1予測値を補正するステップと、を実行させる。
また好ましくは、前記相関関数が1次関数である。
【0012】
被生産物の仕上がり時の予測誤差は、一般的に、その仕上がりをどのくらい前のタイミングで予測したか、すなわちその予測実施時から仕上がり時までの時間と相関があると考えることができる。この発明の例によれば、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて予測値を補正するので、精度良く予測を行うことができる。
【0013】
本発明の記録媒体は、前記プログラムを格納する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。
尚、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるから、技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0015】
(生産管理システムの構成について)
まずは、図1〜図3を参照して、本発明に係る生産管理システムの構成について説明する。
図1は、生産管理システムを実現するハードウェア構成の一例を示す図である。図2は、生産管理システムの機能ブロック図である。図3は、流動データの内容を示すイメージ図である。
【0016】
図1に示す生産管理システム1は、管理端末2と、工程端末3A〜3Eと、中央サーバ4と、を備えており、これらがネットワーク回線5を介して接続された構成となっている。工程端末3A〜3Eは、所定単位の被生産物(以下、ロットとする)に対して各種処理を行うためのサブ工程A〜Eに付属して設置されており、各サブ工程A〜Eに係るロットの流動データをタイムリーに入力することができる。また、管理端末2は、複数の工程端末3A〜3Eで流動データを集約して、これを一元的に管理、表示することができる。
【0017】
尚、本実施形態の生産管理システム1は、半導体部品(IC)の生産工程に適用されることを想定したものであるが、説明を簡略化するため、生産の全工程はサブ工程A〜Eのみで構成されるものとする。また、この生産工程では、複数の機種に係るロットが、サブ工程A〜Eを共有して流動するものとする。
【0018】
管理端末2および工程端末3A〜3Eには、汎用のパーソナルコンピュータが用いられており、内部バスにより互いに接続されたCPU101、ROM102、RAM103、ハードディスク装置(HDD)104と、キーボードやマウス等の入力装置105と、表示装置106とを備えている。
【0019】
CPU101は、ハードディスク装置104に格納されたアプリケーションプログラム(本発明に係るプログラムに相当する)を読み出し、RAM103やハードディスク装置104をワーキングメモリとして当該アプリケーションプログラムを実行する。これにより、図1に示す生産管理システム1のハードウェア構成は、図2において機能ブロック図で示す生産管理システム1として機能することになる。
【0020】
尚、所定のアプリケーションプログラムは、例えばCD−ROM、DVDディスク、光磁気ディスクなどの記録媒体によって外部から供給されるようになっていてもよい。また、ネットワーク回線5を介して、アプリケーションプログラムがダウンロードされるようになっていてもよい。
【0021】
図2において、生産管理システム1は、各ロットに関する流動データD1および予測データD4を格納するロットデータベース10と、各サブ工程に関する工程能力データD2および工程負荷データD3を格納するサブ工程データベース11と、流動データD1、工程能力データD2を入力するための入力部12と、データ表示を行うための表示部18とを備えている。
【0022】
流動データD1は、そのロットのID、対応機種、付記情報(優先度など)などに加えて、図3にイメージとして示す情報、すなわち、投入から仕上がりまでに経るサブ工程の構成を規定する情報(工程設計情報)と、各サブ工程をどのタイミングで実施してきたかを示す情報(工程履歴情報)と、現在の進捗を示す情報(進捗情報)とを含んでいる。尚、各サブ工程は、予備段階と実処理段階とに区別して認識されるようになっている。ここで、予備段階とは、前のサブ工程からの移動や処理待ち(待機)を行っている段階のことであり、実処理段階とは、実処理を受けている段階のことである。
【0023】
流動データD1は、生産現場の流動状況に合わせて、入力部12からの入力により適宜更新される。この更新は、作業者が入力装置105(図1参照)を用いて定期的に行ってもよいし、ロットに付属させたタグにより自動的に行うようにしてもよい。
【0024】
工程能力データD2は、そのサブ工程におけるロット毎の実処理時間を示す実処理時間T1と、一度の処理で同時に処理可能なロットの数量を示すキャパシティCと、を含んでいる。工程能力データD2は、設備装置の動作設定や稼働率の変更に合わせて、入力部12からの入力により適宜更新される。この更新は、作業者が入力装置105(図1参照)を用いて定期的に行ってもよいし、設備装置との通信手段を介して自動的に行うようにしてもよい。尚、工程能力データD2は、過去分に追記されてその履歴が残る形式となっている。
【0025】
生産管理システム1はまた、二次処理部13と、工程負荷演算部14と、予測演算部15と、補正部16と、回帰分析部17とを備えている。これらの各部は、上述した所定のアプリケーションプログラムの他、汎用のオペレーションシステム、表計算アプリケーションプログラム、Web閲覧のためのブラウザアプリケーションプログラム等を利用して構成することができる。
【0026】
工程負荷演算部14は、流動データD1に基づいて工程負荷データD3を生成し、サブ工程データベース11に格納する。また、予測演算部15は、工程能力データD2、工程負荷データD3に基づいて各ロットの仕上がり時の第1予測値t1を予測演算する。補正部16は、第1予測値t1を補正して第2予測値t2を算出し、第1予測値t1、予測実施時tsと共に予測データD4としてロットデータベース10に格納する。また、回帰分析部17は、流動データD1、予測データD4に基づく回帰分析を行い、得られた相関関数(回帰関数)を補正部16に渡す。また、二次処理部13は、データD1〜D4に含まれる情報を抽出、演算し、作業者が扱いやすい表示形式にするための機能ブロックである。
【0027】
尚、生産管理システム1を実現するハードウェア構成は、図1に示すようなネットワークシステムに限られるものではなく、スタンドアローン形式のハードウェア構成とすることも可能である。
【0028】
(生産管理システムのデータ処理について)
次に、図2、図4、図5、図6を参照して、生産管理システムのデータ処理について説明する。
図4は、データ処理のフローを示すフローチャートである。
【0029】
生産管理システム1は、流動データD1、工程能力データD2の入力を受けつづける一方で、定期的に(例えば1時間おきに)、図4に示すデータ処理のフローを実行する。
【0030】
ステップS1では、各サブ工程について、予備段階に属するロットの数量(予備数量Q1)、実処理段階に属するロットの数量(実処理数量Q2)が取得される。このステップは、流動中のロットの流動データD1に基づいて、工程負荷演算部14で行われ、取得された予備数量Q1、実処理数量Q2は、工程負荷データD3としてサブ工程データベース11に格納される。尚、工程負荷データD3は、過去分に追記されてその履歴が残る形式となっている。
【0031】
次のステップS2では、流動済みのロットについて、仕上がり時の予測誤差に関するデータ分析を行うか否かの判定が行われる。この分析は、例えば週に一度のタイミングで行うように設定することができる。
【0032】
ステップS2において分析を行うと判定された場合は、回帰分析部17で回帰分析(ステップS3)が行われた上で、ステップS4に移行する。また、分析を行わないと判定された場合は、そのままステップS4に移行する。
【0033】
次のステップS4では、流動中の各ロットについて、仕上がり時の予測を行うか否かの判定が行われる。この予測は、例えば日に一度のタイミングで行うように設定することができる。
【0034】
ステップS4において予測を行うと判定された場合は、予測演算部15および補正部16で予測演算(ステップS5)が行われた上でフローが終了する。また、予測を行わないと判定された場合は、そのままフローが終了する。
【0035】
ステップS5では、流動中の各ロットについて、仕上がり時の第1予測値t1、第2予測値t2の演算がなされ、第1予測値t1、第2予測値t2は、予測実施時ts(ステップS4の実行時)と共に予測データD4としてロットデータベース10に格納される。尚、予測データD4は、過去分に追記されてその履歴が残る形式となっている。この予測データD4は、ロットの仕上がり時(予測値)を把握する目的の他、回帰分析(ステップS3)におけるサンプルデータとしても活用されるものである。
【0036】
入力部12から入力された流動データD1、工程能力データD2、および、上述のデータ処理により生成された工程負荷データD3、予測データD4は、二次処理部13で適宜処理されて、表示部18上に表示される(この表示処理は図4のフローとは独立して随時行われる)。作業者は、この表示結果に基づいて、ロットの流動状況やサブ工程の負荷状況の把握、生産予測を行うことができる。尚、データの表示は、Web閲覧のための汎用のブラウザアプリケーションプログラムを利用して行うことができる。
【0037】
図5は、ロットに関するデータの表示例を示す図である。図中、「ロットID」は各ロットに付された識別IDを、「枚数」はロットに含まれる小単位の個数を、「小工程名」はロットが属しているサブ工程名を、「大工程名」は小工程(サブ工程)が属している大分類の工程名を、「状態」はサブ工程内におけるロットの状態を、「仕上がり予測」はロットの仕上がり時の予測値(第2予測値t2)を示している。
【0038】
図6は、サブ工程に関するデータの表示例を示す図である。図の棒グラフは、各サブ工程A〜Eに係るロット数量を示すものであり、塗り潰し部分は実処理数量(Q2)を、白抜き部分は予備数量(Q1)を、網掛け部分はキャパシティの余剰分(C−Q2)を、それぞれ示している。また、棒グラフの先に付されている数値は、キャパシティCに対する予備段階、実処理段階を合わせたロット数量の割合((Q1+Q2)/C)を示すものである。
【0039】
尚、データD1〜D4の表示態様は、図5、図6のようなものに限定されない。例えば、流動中のロットの予測データD4に基づき、日毎、週毎の生産数量を予測演算、表示するような生産管理システムとすることも可能である。このような生産管理システムによれば、後工程における生産計画を好適に行うことができる。
【0040】
(仕上がり時の予測について)
次に、図2、図7を参照して、仕上がり時の予測の具体的なフローについて説明する。
図7は、仕上がり時の予測のフローを示すフローチャートである。
【0041】
図7に示すステップS11〜S17は、ステップS5(図4参照)のタイミング(予測実施時ts)において実行されるフローであり、流動中の全てのロットを対象ロットとして、その仕上がり時の第1予測値t1、第2予測値t2の予測演算が行われる。ここで、ステップS11〜S16は予測演算部15により、ステップS17は補正部16により、それぞれ実行される。
【0042】
まず、ステップS11では、対象ロットの流動データD1に基づき、実施中および実施予定のサブ工程A〜Eが特定される。例えば、流動データD1の内容が図3に係るものである場合、実施中のサブ工程はサブ工程Dであり、実施予定のサブ工程は、サブ工程A、サブ工程B、サブ工程C、サブ工程Eである。
【0043】
次のステップS12では、ステップS11で特定された実施中および実施予定のサブ工程について、工程能力データD2、工程負荷データD3に基づき、実処理時間T1、キャパシティC、予備数量Q1が取得される。
【0044】
次のステップS13では、対象ロットが実処理段階であるか否かの判定がなされ、判定がNo(予備段階である)の場合は、式(1)により第1予測値t1が取得され(ステップS14)、ステップS17に移行する。また、判定がYes(実処理段階である)の場合は、流動データD1から現サブ工程における実処理の進行時間T2の取得(ステップS15)を経て、式(2)により第1予測値t1が取得され(ステップS16)、ステップS17に移行する。
【0045】
【数1】

【0046】
【数2】

【0047】
式1、式2が示すように、第1予測値t1は、予測実施時ts以後、実施中または実施予定の各サブ工程に要する所用時間が、実処理時間(T1)と予備数量に応じた待ち時間(T1・Q1/C)との和で与えられるとの仮定に基づいた予測値である。また、対象ロットが実処理段階にある場合(式2のケース)の第1予測値t1は、実施中のサブ工程に要する所要時間が、実処理時間T1から既に進行している実処理の時間(T2)を差し引いた時間(T1−T2)であるとの仮定に基づいた予測値である。
【0048】
このように、本実施形態では、各サブ工程における予備数量Q1、キャパシティCに基づく待ち時間(T1・Q1/C)を考慮して仕上がり時の予測を行うので、他のロットの流動状況によって変化する流動のしやすさや、工程の稼働率の変化等を勘案して、仕上がり時を精度良く予測することができる。
【0049】
ところで、第1予測値t1は、ステップS12で取得された実処理時間T1、キャパシティC、予備数量Q1によって、将来における平均的な実処理時間T1、キャパシティC、予備数量Q1が擬制されるとの仮定に基づいた予測値である。このことに鑑みると、ステップS12で取得する実処理時間T1、キャパシティC、予備数量Q1の値は、予測実施時tsになるべく近いタイミングのものを採用することが好ましく、また、統計的な観点を考慮して、所定期間内で平均化したものを採用することが好ましいと言える。このため本実施形態のステップS12では、予測実施時tsの前、一日内の平均に係る実処理時間T1、キャパシティC、予備数量Q1が取得されるようになっている。
【0050】
第1予測値t1は、上述のような仮定の下での予測値であるから、当然予測誤差を含んでいる。そしてこの予測誤差は、その仕上がりをどのくらい前のタイミングで予測したか、すなわちその予測実施時から仕上がり時までの時間(以下、予測距離Dと表現する)と相関があると考えることができる。
【0051】
ステップS17では、このような考え方の下、式3により第1予測値t1が補正され、第2予測値t2が取得される。式3において、Fは、サンプルデータに基づく予測距離D(=t1−ts)と予測誤差との相関関数であり、本実施形態では予測距離D(=t1−ts)を引数とする1次関数となっている。
【0052】
【数3】

【0053】
式3の相関関数Fには、過去に予測した特定のサンプルデータを分析して求めたものを採用することもできるが、このような相関関数Fは、ロットの機種構成等に応じて長期的に変動する可能性がある。このことに鑑みて、本実施形態の生産管理システム1は、サンプルデータとして格納されている予測データD4に基づく回帰分析(ステップS3(図4参照))により、式3(補正部16)に係る相関関数Fを再設定する機能を有している。尚、この機能については、この後詳しく説明する。
【0054】
(予測誤差の回帰分析について)
次に、図2、図8、図9を参照して、予測誤差の回帰分析について説明する。
図8は、回帰分析のフローを示すフローチャートである。図9は、サンプルデータにおける予測距離と予測誤差との相関を示す図である。
【0055】
図8に示すステップS21〜S24は、ステップS3(図4参照)のタイミングにおいて、回帰分析部17で実行されるフローであり、流動済みのロットについてなされた仕上がり時予測(第1予測値t1)のサンプルデータ(D4)と流動実績(D1)とに基づいて、予測誤差と予測距離との関係の回帰分析を行うものである。
【0056】
まず、ステップS21では、過去分の予測データD4と対応するロットの流動データD1とに基づき、各予測についての第1予測値t1および予測実施時tsと、当該予測に係るロットの仕上がり時実績値t3が抽出される。尚、抽出対象となる予測は、比較的最近なされたもの、例えば、前1ヶ月内に流動が完了したロットについてのもの、とすることが好ましい。
【0057】
次のステップS22では、ステップS21で抽出された各予測について、予測距離D(=t1−ts)と、予測誤差Δt(=t1−t3)が取得される。
【0058】
次のステップS23では、予測距離Dを変数X、予測誤差Δtを変数Yとして、回帰分析によりX−Yの相関関数F(Y=F(X))が取得される。
【0059】
例えば、図9に係るサンプルデータの場合、相関関数Fは、正の切片と負の傾きを有する一次関数として取得される。この相関関数Fは、予測距離Dが小さくなるほど、第1予測値t1に係る予測誤差Δtが正となる傾向があること、つまり実際よりも遅れて予測される傾向があることを示している。
【0060】
このように、予測距離Dが小さくなるほど予測(第1予測値t1)が遅れる傾向を示す理由としては、例えば、生産工程の終盤にあるロット(このようなロットの予測に係る予測距離Dは小さくなる)は、数量確保等のために相対的に優先度を上げて流動される傾向があり、仕上がりが相対的に早まる、つまり予測が相対的に遅れるという仮説が考えられる。
【0061】
最後のステップS24では、ステップS23で得られた相関関数を補正部16(式3)に係る相関関数Fとして再設定する処理が行われる。尚、図9に示すように、原点付近では、一般的に予測サンプルと相関関数Fとの相関性が悪くなってしまうため、例えば、がX<1の場合は、F(X)=0とするような変則処理を行うようにしてもよい。
【0062】
かくして、先に説明した第1予測値t1の補正(ステップS17(図7参照))は、このように再設定された相関関数Fに基づいて行われる。このため、ロットの機種構成や優先品の比率等が大きく変更された場合であっても、適切な相関関数Fに基づいた補正を行うことができる。
【0063】
尚、図9で示すような予測距離Dと予測誤差Δtとの相関図を、作業者が予測の誤差を認識するための情報源として表示部18に表示させるようにすることも可能である。この場合において、予測距離Dと標準偏差(±2σ)との関係を合わせて表示するようにしても良い。
【0064】
本発明は上述の実施形態に限定されない。
例えば、相関関数は、多項次式としてもよいし、引数(X)の範囲ごとに設定してもよい。
また、第1予測値の演算の方法(演算式)は上述した態様に限られるものではない。例えば、実処理時間の単なる総和として第1予測値を演算し、その方法に係る予測のサンプルデータに基く相関関数により、予測値の補正を行うようにしてもよい。
また、実施形態の各構成はこれらを適宜組み合わせたり、省略したり、図示しない他の構成と組み合わせたりすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】生産管理システムを実現するハードウェア構成の一例を示す図。
【図2】生産管理システムの機能ブロック図。
【図3】流動データの内容を示すイメージ図。
【図4】データ処理のフローを示すフローチャート。
【図5】ロットに関するデータの表示例を示す図。
【図6】サブ工程に関するデータの表示例を示す図。
【図7】仕上がり時の予測のフローを示すフローチャート。
【図8】回帰分析のフローを示すフローチャート。
【図9】サンプルデータにおける予測距離と予測誤差との相関を示す図。
【符号の説明】
【0066】
1…生産管理システム、2…管理端末、3A〜3E…工程端末、4…中央サーバ、5…ネットワーク回線、10…ロットデータベース、11…サブ工程データベース、12…入力部、13…二次処理部、14…工程負荷演算部、15…予測演算部、16…補正部、17…回帰分析部、18…表示部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のサブ工程間を被生産物が流動することによって得られる製品の生産において、被生産物の流動状況に基づいて、被生産物の仕上がり時を予測する生産予測方法であって、
(a)被生産物の仕上がり時を予測し、第1予測値として取得するステップと、
(b)予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて、前記第1予測値を補正するステップと、を有する生産予測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の生産予測方法であって、
前記相関関数が1次関数である、生産予測方法。
【請求項3】
複数のサブ工程間を被生産物が流動することによって得られる製品の生産において、被生産物の流動状況を管理する生産管理システムであって、
(a)被生産物の仕上がり時について予測演算し、第1予測値として取得する予測演算部と、
(b)予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて前記第1予測値を補正する補正部と、
を備える生産管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の生産管理システムであって、
前記相関関数が1次関数である、生産管理システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の生産管理システムであって、さらに、
(c)前記第1予測値に係るデータをサンプルデータとして記憶するサンプル記憶部と、
(d)流動済みの被生産物に係る前記サンプルデータと当該被生産物の流動実績とに基づいて、回帰分析により、予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数を取得する回帰分析部と、を備えており、
前記補正部が、前記回帰分析部で取得された相関関数を、前記補正に係る相関関数として再設定する、生産管理システム。
【請求項6】
複数のサブ工程間を被生産物が流動することによって得られる製品の生産において、被生産物の流動状況に基づいて、被生産物の仕上がり時をコンピュータに予測させるプログラムであって、
(a)被生産物の仕上がり時について予測演算し、第1予測値として取得するステップと、
(b)予測実施時から仕上がり時までの時間と予測誤差との相関関数に基づいて、前記第1予測値を補正するステップと、を実行させるプログラム。
【請求項7】
請求項6に記載のプログラムであって、
前記相関関数が1次関数である、プログラム。
【請求項8】
請求項6または7に記載のプログラムを格納する記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−234525(P2008−234525A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−76120(P2007−76120)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】