説明

生産管理装置および生産管理プログラム

【課題】利用者がサプライヤで実施される工程を含めた全体の工程の状況を把握することを可能にすること。
【解決手段】生産管理装置10は、通信部11と、納品される部品に対して実施される工程と、それぞれの工程の所要時間とを対応づけて記憶する記憶部13と、発注された部品の発注日と記憶部13に記憶されている所要時間とに基づいて、発注された部品に対して工程のそれぞれの実施が完了する予定日を算出するとともに、通信部11による通信を介して部品に対して工程のそれぞれを実施するサプライヤから工程の実施状況に関する情報を取得する制御部12とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産管理装置および生産管理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プル生産方式(カンバン方式)と呼ばれる生産方式が知られている。プル生産方式では、各工程が、後工程の需要に応じて、部品等の生産物を生産し、生産物を後工程に納品する。特許文献1では、プル生産方式に基づいた生産計画作成方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−105854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プル生産方式では、需要に応じて前工程から生産物が確実に納品されることを前提として各工程での作業が行われるが、現実には、生産トラブル等の諸事情によって生産に変動が発生し、自工程で必要な数の生産物が前工程から納品されない場合が起こりうる。このような予定外の事態が生じると、自工程および後工程において納期の遅延等の重大な支障が生じる可能性がある。そのような重大な支障が生じることを回避するには、サプライヤで実施される工程を含めた全体の工程の状況を把握することが重要である。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、利用者がサプライヤで実施される工程を含めた全体の工程の状況を把握することを可能にする生産管理装置および生産管理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る生産管理装置は、通信部と、納品される部品に対して実施される工程と、それぞれの工程の所要時間とを対応づけて記憶する記憶部と、発注された前記部品の発注日と前記記憶部に記憶されている前記所要時間とに基づいて、前記発注された部品に対して前記工程のそれぞれの実施が完了する予定日を算出するとともに、前記通信部による通信を介して前記部品に対して前記工程のそれぞれを実施するサプライヤから工程の実施状況に関する情報を取得する制御部とを備える。
【0007】
ここで、本発明の望ましい態様として、前記制御部は、前記予定日に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の予定上の進捗状況を判定するとともに、前記実施状況に関する情報に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の実際の進捗状況を判定し、前記予定上の進捗状況と前記実際の進捗状況とを対比して表示する。
【0008】
また、本発明の望ましい態様として、前記制御部は、前記実施状況に関する情報に基づいて、前記発注された部品のうち、当日発注する部品が納品される日に納品される予定数を算出し、当該予定数に基づいて当日発注する部品の数を調整する。
【0009】
また、本発明の望ましい態様として、前記制御部は、前記予定数が当日発注する部品が納入される日に必要な部品数よりも多い場合には、当日発注する部品の数を0個にする。
【0010】
また、本発明の望ましい態様として、前記制御部は、前記実施状況に関する情報に基づいて、当日発注する部品が納品される日までのそれぞれの日に納品される部品の数を算出し、納品される部品の数が必要な部品の数よりも少ない日があれば、その日の不足分をその日に納品される部品の発注先とは異なるサプライヤへ発注する。
【0011】
また、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る生産管理プログラムは、納品される部品に対して実施される工程と、それぞれの工程の所要時間とを対応づけて保持する情報と、発注された前記部品の発注日とに基づいて、前記発注された部品に対して前記工程のそれぞれの実施が完了する予定日を算出するステップと、通信部による通信を介して前記部品に対して前記工程のそれぞれを実施するサプライヤから工程の実施状況に関する情報を取得するステップとをコンピュータに実行させる。
【0012】
ここで、本発明の望ましい態様として、本発明に係る生産管理プログラムは、前記予定日に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の予定上の進捗状況を判定するステップと、前記実施状況に関する情報に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の実際の進捗状況を判定するステップと、前記予定上の進捗状況と前記実際の進捗状況とを対比して表示するステップとをさらにコンピュータに実行させる。
【0013】
また、本発明の望ましい態様として、本発明に係る生産管理プログラムは、前記実施状況に関する情報に基づいて、前記発注された部品のうち、当日発注する部品が納品される日に納品される予定数を算出するステップと、前記予定数に基づいて当日発注する部品の数を調整するステップとをさらにコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る生産管理装置および生産管理プログラムは、利用者がサプライヤで実施される工程を含めた全体の工程の状況を把握することを可能にするという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本実施例に係る生産管理装置の構成と、本実施例に係る生産管理装置を含む生産管理システムの構成とを示すブロック図である。
【図2】図2は、工程マスタの一例を示す図である。
【図3】図3は、発注数情報の一例を示す図である。
【図4】図4は、進捗情報の一例を示す図である。
【図5】図5は、生産管理プログラムの構成を示すブロック図である。
【図6】図6は、進捗管理装置から送信される通知の一例を示す図である。
【図7】図7は、視覚化された進捗情報の一例を示す図である。
【図8】図8は、発注数決定処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図9】図9は、優先経路発注数算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】図10は、代替経路発注数算出処理の処理手順を示すフローチャートである。
【図11】図11は、障害発生時の状況の一例を示す図である。
【図12】図12は、発注数を抑制する例を示す図である。
【図13】図13は、部品が不足する例を示す図である。
【図14】図14は、部品の不足が解消した例を示す図である。
【図15】図15は、各社の関係を示す図である。
【図16】図16は、発注数を調整せずに発注を行った例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る生産管理装置および生産管理プログラムの実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、この実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【実施例】
【0017】
まず、本実施例に係る生産管理装置10の構成と、生産管理装置10を含む生産管理システム1の構成とについて説明する。なお、以下では、説明を簡単にするために、1種類の部品を対象として生産管理を行う例について説明するが、当業者であれば、生産管理システム1を複数の部品を対象として生産管理を行うようにすることは容易である。
【0018】
図1は、生産管理装置10の構成と、生産管理装置10を含む生産管理システム1の構成とを示すブロック図である。図1に示す生産管理システム1は、X社に設置された生産管理装置10と、A社に設置された進捗管理装置20aと、B社に設置された進捗管理装置20bと、C社に設置されたWEB端末30とを含む。生産管理装置10は、インターネット等のネットワーク2を介して、進捗管理装置20a、進捗管理装置20bおよびWEB端末30と通信可能に接続される。なお、サプライヤの数および各種装置の数は図1の通りでなくてもよい。
【0019】
ここで、X社と、A社、B社およびC社との関係について説明しておく。図15は、X社と、A社およびB社の関係を示す図である。A社、B社およびC社は、X社で製品を生産するために必要な部品を供給するサプライヤである。具体的には、B社は、部品に対して加工、熱処理および出荷検査という3つの工程を実施し、その後、部品をA社に納品する。図示していないが、C社もB社と同様に、部品に対して加工、熱処理および出荷検査という3つの工程を実施し、その後、部品をA社に納品する。
【0020】
A社は、納品された部品に対して、洗浄、表面処理および出荷検査という3つの工程を実施し、その後、部品をX社に納品する。X社は、納品された部品と他の部品とを用いて製品を組み立てる。なお、本実施例における「製品」とは、必ずしも最終製品を意味しない。すなわち、本実施例における「製品」には、最終製品に部品として組み込まれるものも含まれる。
【0021】
X社と各サプライヤでは、プル生産方式による生産管理が行われている。すなわち、各工程は、後工程の需要に応じて部品を後工程に納めるように管理されている。最先の工程を担当するB社およびC社には、X社での製品の生産数を調整するため、X社から発注数を指定して部品が発注される。
【0022】
図1の説明に戻る。進捗管理装置20aは、A社の各工程での作業の進捗状況を管理する。進捗管理装置20bは、B社の各工程での作業の進捗状況を管理する。進捗管理装置20aおよび進捗管理装置20bは、例えば、各工程での作業の開始時および完了時に作業者が入力する情報と情報が入力された日時とに基づいて、各工程での作業の進捗状況を部品毎に記録する。WEB端末30は、WEBブラウジング機能を有し、WEBページを取得して表示したり、WEBページに含まれる入力フォームに対して入力された情報をサーバへ送信したりする。
【0023】
生産管理装置10は、X社およびサプライヤでの各工程の進捗状況を総合的に管理する。生産管理装置10は、通信部11と、制御部12と、記憶部13と、表示部14と、入力部15と、媒体読取部16とを備える。
【0024】
通信部11は、所定の通信プロトコルに基づいて、他の装置との間での情報の送受信を制御する。通信部11は、WEBサーバとしての機能も有する。表示部14は、液晶パネルや有機EL(Organic Electro−Luminescence)パネル等の表示装置を有し、文字や図形等の各種情報を表示する。入力部15は、キーボード等の入力装置を有し、利用者からの情報や指示の入力を受け付ける。媒体読取部16は、CD−ROM等の記憶媒体からプログラムやデータを読み出す。
【0025】
制御部12は、演算手段であるCPU(Central Processing Unit)121と、記憶手段であるメモリ122とを備え、これらのハードウェア資源を用いてプログラムを実行することによって各種の機能を実現する。具体的には、制御部12は、記憶部13に記憶されているプログラムを読み出してメモリ122に展開し、メモリ122に展開されたプログラムに含まれる命令をCPU121に実行させる。そして、制御部12は、CPU121による命令の実行結果に応じて、メモリ122および記憶部13に対してデータの読み書きを行ったり、通信部11等の動作を制御したりする。
【0026】
記憶部13は、磁気記憶装置や半導体記憶装置等の不揮発性を有する記憶装置からなり、各種のプログラムやデータを記憶する。記憶部13に記憶されるプログラムには、生産管理プログラム131が含まれる。記憶部13に記憶されるデータには、工程マスタ132と、発注数情報133と、進捗情報134とが含まれる。
【0027】
生産管理プログラム131は、X社およびサプライヤでの各工程の進捗状況を総合的に管理するための各種の機能を提供する。生産管理プログラム131が提供する機能には、例えば、各工程の進捗状況に関する情報を収集する機能、収集した情報を視覚化する機能、収集した情報に基づいて部品の発注数を調整する機能等が含まれる。
【0028】
工程マスタ132は、X社およびサプライヤで実施される工程に関する情報を保持する。図2は、工程マスタ132の一例を示す図である。図2に示す工程マスタ132は、工程コード、工程名、実施順序、サプライヤ名、所要時間という項目を有し、工程ごとにデータが格納される。また、サプライヤ名および所要時間は、優先経路と代替経路とで異なる値を設定できるようになっている。
【0029】
ここで、優先経路とは、平常時において各工程が実施される経路である。代替経路は、生産トラブル等の諸事情により、優先経路から十分な数の部品が供給されない場合に、各工程が実施される経路である。本実施例では、B社→A社→X社の順に各工程が実施される経路を優先経路とし、C社→A社→X社の順に各工程が実施される経路を代替経路とする。なお、代替経路は複数あってもよい。
【0030】
工程コードは、工程を識別するためのコードである。工程名は、工程の名称である。実施順序は、工程が実施される順序を示す。サプライヤ名は、工程を実施するサプライヤの名称である。所要時間は、工程の実施に要する計画上の時間である。
【0031】
図2に示すに工程マスタ132は、「P01」というコードで識別される「加工」という名称の工程と、「P02」というコードで識別される「熱処理」という名称の工程と、「P03」というコードで識別される「出荷検査」という名称の工程と、「P04」というコードで識別される「洗浄」という名称の工程と、「P05」というコードで識別される「表面処理」という名称の工程と、「P06」というコードで識別される「出荷検査」という名称の工程とがこの順序で実施されることを示している。
【0032】
また、図2に示す工程マスタ132は、「P01」、「P02」および「P03」というコードで識別される工程は、優先経路ではB社で実施され、代替経路ではC社で実施されることを示している。また、図2に示す工程マスタ132は、「P04」、「P05」および「P06」というコードで識別される工程は、優先経路においても代替経路においてもA社で実施されることを示している。
【0033】
また、図2に示す工程マスタ132は、優先経路では各工程の実施にそれぞれ1日を要するが、代替経路では、「P01」、「P02」および「P03」というコードで識別される3つの工程を1日で実施できることを示している。すなわち、図2に示すに工程マスタ132は、優先経路のリードタイムは6日であり、代替経路のリードタイムは4日であることを示している。
【0034】
なお、図2に示す例では、工程マスタ132は、サプライヤで実施される工程についての情報のみを保持しているが、工程マスタ132は、X社内で実施される工程についての情報を保持することもできる。
【0035】
発注数情報133は、最先の工程を担当するB社およびC社への部品の発注数に関する情報を保持する。図3は、発注数情報133の一例を示す図である。図3に示す発注数情報133は、日付、必要数、発注数という項目を有し、日付ごとにデータが格納される。また、発注数は、優先経路と代替経路とで異なる値を設定できるようになっている。
【0036】
必要数は、対応する日付においてX社が必要とする部品の数である。発注数は、対応する日付においてX社が最先の工程を担当するサプライヤに対して発注する部品の数である。図3に示す発注数情報133は、X社が必要とする部品の数が、2011年3月7日までは1日あたり3個であり、2011年3月8日以降は1日あたり5個であることを示している。また、図3に示す発注数情報133は、優先経路のリードタイムが6日であるために、2011年3月8日の7日前である2011年3月1日から優先経路への発注数が3個から5個へ増加することを示している。
【0037】
進捗情報134は、X社およびサプライヤでの各工程の進捗状況に関する情報を保持する。図4は、進捗情報134の一例を示す図である。図4に示す進捗情報134は、発注番号、枝番、発注日、工程コード、サプライヤ名、完了予定日、完了日、遅延日数という項目を有し、発注番号および枝番の組み合わせに対して、工程コードから遅延日数の組み合わせを複数対応づけることができるように設定されている。
【0038】
発注番号は、発注毎に発番される番号である。枝番は、発注される個々の部品を識別するための番号である。発注番号および枝番の組み合わせにより、発注した個々の部品を特定することができる。発注日は、発注が行われた日付である。
【0039】
工程コードから遅延日数の組み合わせは、発注された部品に対して実施される工程の数分だけ作成される。工程コードは、工程を識別するためのコードである。サプライヤ名は、工程を実施するサプライヤの名称である。完了予定日は、工程が完了する計画上の日付である。完了予定日は、発注日と、工程マスタ132に登録されている当該工程までの所要時間の合計とに基づいて設定される。完了日は、工程が実際に完了した日付である。遅延日数は、設備の障害等により工程を実施できないと予想される日数である。遅延日数は、1以上の値が設定されている場合、日次処理によって毎日1ずつ減算される。
【0040】
次に、生産管理装置10が記憶する生産管理プログラム131についてより詳細に説明する。図5は、生産管理プログラム131の構成を示すブロック図である。図5に示すように、生産管理プログラム131は、進捗管理部131aと、視覚化部131bと、発注数決定部131cとを有する。
【0041】
進捗管理部131aは、各工程の進捗状況を管理する機能を提供する。具体的には、進捗管理部131aは、工程マスタ132および発注数情報133に基づいて、発注された部品に対して実行される各工程に対応するデータを進捗情報134に追加する処理を制御部12に実行させる。初期状態では、進捗情報134の完了日は未設定のままとされ、遅延日数は0に設定される。
【0042】
また、進捗管理部131aは、進捗管理装置20a、進捗管理装置20bおよびWEB端末30から送信される情報に基づいて進捗情報134の完了日および遅延日数を更新する処理を制御部12に実行させる。
【0043】
進捗管理装置20aおよび進捗管理装置20bからは、どの部品に対してどの工程が完了したかを示す通知が送信される。図6は、進捗管理装置20aおよび進捗管理装置20bから送信される通知の一例を示す図である。図6に示す通知には、発注番号と、枝番と、工程コードと、完了日とが含まれている。この通知が通信部11で受信されると、制御部12は、通知に含まれる発注番号、枝番および工程コードに対応する進捗情報134内のデータを選択し、通知に含まれる完了日を選択したデータの完了日に上書きする。遅延日数の更新も同様の仕組みによって実現される。
【0044】
また、進捗管理装置20aおよび進捗管理装置20bのようなシステムをもたないC社では、WEB端末30が、通信部11のWEB機能によって提供される進捗報告用のWEBページを表示する。そして、WEB端末30は、WEBページに含まれる入力フォームに入力された発注番号、枝番、工程コード、完了日等をHTTP(HyperText Transfer Protocol)等により生産管理装置10へ送信する。制御部12は、送信された枝番および工程コードに対応する進捗情報134内のデータを選択し、選択したデータの完了日等を更新する。
【0045】
なお、各サプライヤから生産管理装置10へ進捗状況に関する情報を送信する仕組みは、上記の仕組みに限定されない。例えば、進捗状況に関する情報が電子メールによって生産管理装置10へ送信されてもよい。
【0046】
視覚化部131bは、各工程の進捗状況を視覚化する機能を提供する。具体的には、視覚化部131bは、進捗情報134に登録されている情報を理解しやすい形式で表示する処理を制御部12に実行させる。なお、視覚化された情報は、生産管理装置10が備える表示部14に表示されてもよいし、WEBページ等の形式で他の装置の表示部に表示されてもよい。また、視覚化された情報がWEBページ等の形式でサプライヤ内に設置されたWEB端末の表示部に表示されるようにしてもよい。
【0047】
図7は、視覚化された進捗情報134の一例を示す図である。図7に示す例では、各工程の進捗状況が、計画と現状とを対比させる形式で視覚化されている。具体的には、各工程に対応する計画の枠と現状の枠とが、工程の実施順序に従って配置され、それらの枠の中に部品に対応する矩形のオブジェクトが図示されている。部品に対応する矩形のオブジェクトの内部には、発注番号が図示されている。
【0048】
部品に対応する矩形のオブジェクトは、計画の枠のうち、進捗情報134において対応する部品の完了予定日が当日である工程の枠内、すなわち、計画上では対応する部品に対して当日実施されることになっている工程の枠内に図示されている。また、部品に対応する矩形のオブジェクトは、現状の枠のうち、進捗情報134において対応する部品の完了日が設定されている最後の工程の枠、すなわち、実際に完了している最後の工程の枠内に図示されている。
【0049】
このように、各工程の進捗状況を計画と現状とを対比させる形式で視覚化することにより、管理者等は、計画に対する変動状況を容易に把握することができ、その結果、対策を迅速に講じることができる。例えば、図7に示す例では、発注番号が「2」の部品の1つに1工程分(1日分)の遅れが生じていることが容易に理解できる。この場合、例えば、発注番号が「2」の部品を用いて組立を行う日の生産量を1台分翌日に遅らせ、さらに、翌日の要員を増員する等して翌日の生産量を1台分増加させる対策を事前に講じることにより、変動による影響を抑制することができる。
【0050】
発注数決定部131cは、発注数情報133に登録されている必要数と進捗情報134に登録されている各工程の進捗状況とに基づいて発注数を決定する機能を提供する。このように、各工程の進捗状況を考慮して発注数を決定することにより、いずれかの工程において生じた変動にともなう部品の供給量の変化の影響を抑制することができる。
【0051】
次に、生産管理装置10の動作について説明する。なお、進捗管理部131aが提供する機能に基づく動作と、視覚化部131bが提供する機能に基づく動作とについては、既に説明したため、ここでは発注数決定部131cが提供する機能に基づく動作について説明する。
【0052】
図8は、発注数決定処理の処理手順を示すフローチャートである。図8に示す処理手順は、発注数決定部131cが提供する機能に基づいて、例えば、日時処理の一部として実行される。図8に示すように、生産管理装置10の制御部12は、まず、後述する優先経路発注数算出処理を実行して優先経路への対象日(例えば、当日)以降の発注数を算出する(ステップS101)。そして、制御部12は、算出された発注数に基づいて求められる対象日以降の各日の予想入荷数と発注数情報133に登録されている部品の必要数との差である不足数を日ごとに求め、不足数の累計値を算出する(ステップS102)。
【0053】
不足数の累計値が0でない場合(ステップS103,No)、制御部12は、不足分を補うために、後述する代替経路発注数算出処理を実行して代替経路への発注数を算出する(ステップS104)。部品の不足数の累計値が0の場合(ステップS103,Yes)、代替経路発注数算出処理は実行されない。
【0054】
図9は、優先経路発注数算出処理の処理手順を示すフローチャートである。図9に示すように、制御部12は、まず、日付を示す変数である発注日を対象日に初期設定する(ステップS201)。また、制御部12は、進捗の変動に伴って過剰に納品された状態となっている部品の数を示す変数である余剰数を0に設定する(ステップS202)。
【0055】
続いて、制御部12は、発注数情報133に登録されている発注数と、進捗情報134に登録されている各工程の進捗状況と、工程マスタ132に登録されている各工程の所要時間とに基づいて、発注日以降の優先経路および代替経路からの部品の予想入荷数を日ごとに算出する(ステップS203)。ここでは、例えば進捗が1日分遅れている部品は納品が1日遅れるというように、現状の進捗がそのまま維持されるものとして、各日の予想入荷数が算出される。また、遅延日数に1以上の日数が設定される部品は、その日数分だけ納品が遅れるものとして、各日の予想入荷数が算出される。
【0056】
続いて、制御部12は、優先経路のリードタイムに基づいて、発注日に対応する納品日、すなわち、発注日に発注された部品が納品される予定の日付を算出する(ステップS204)。そして、制御部12は、ステップS203の算出結果から納品日の予想入荷数を取得する(ステップS205)。また、制御部12は、発注数情報133から納品日の部品の必要数を取得する(ステップS206)。
【0057】
ここで、予想入荷数と余剰数の合計が必要数よりも多い場合、すなわち、何も発注しなくても納品日に過剰な数の部品が納品される場合(ステップS207,Yes)、制御部12は、発注数情報133の発注日における優先経路への発注数に0を設定する(ステップS208)。このように、発注数を0に設定することにより、余剰在庫の発生を最小限に抑制することができる。
【0058】
続いて、制御部12は、余剰数を、現状の余剰数に予想入荷数を加算した値から必要数を減算した値に更新する(ステップS209)。そして、制御部12は、発注日を翌日に設定し(ステップS210)、ステップS203以降を再実行する。このように余剰数を更新しながらステップS203以降を再実行することにより、進捗の変動に伴って過剰に納品される部品の影響を複数の日に分散させることができる。
【0059】
一方、予想入荷数と余剰数の合計が必要数以下の場合、すなわち、過剰な数の部品が納品されることがない場合(ステップS207,No)、制御部12は、発注数情報133の発注日における優先経路への発注数に、必要数から予想入荷数と余剰数の和を減算した値を設定する(ステップS211)。そして、制御部12は、優先経路発注数算出処理を終了させる。
【0060】
図10は、代替経路発注数算出処理の処理手順を示すフローチャートである。図10に示すように、制御部12は、まず、日付を示す変数である発注日を対象日に初期設定する(ステップS301)。そして、制御部12は、代替経路のリードタイムに基づいて、発注日に対応する納品日、すなわち、発注日に発注された部品が納品される予定の日付を算出する(ステップS302)。
【0061】
続いて、制御部12は、発注数情報133に基づいて、発注日から納品日までの部品の不足数を算出する(ステップS303)。そして、制御部12は、発注数情報133の発注日における代替経路への発注数に、算出した不足数を設定する(ステップS304)。そして、制御部12は、不足数の累計から発注日の発注数を減算する(ステップS305)。不足数の累計は、ステップS102で算出された値である。
【0062】
減算後の不足数の累計が0になっていない場合(ステップS306,No)、制御部12は、発注日を翌日に設定し(ステップS307)、ステップS302以降を再実行する。減算後の不足数の累計が0になっている場合(ステップS306,Yes)、制御部12は、代替経路発注数算出処理を終了させる。このように、優先経路の各工程の進捗状況に応じて不足する部品を代替経路に自動的に発注することにより、優先経路において障害等による納品の遅れが生じた場合にも、当初計画していた通りの数の製品を生産することができる。
【0063】
次に、発注数決定処理の具体例について説明する。まず、これから説明する例の前提について説明する。優先経路および代替経路の構成および所要時間は、図2に示した工程マスタ132の通りであるものとする。また、X社の部品の必要数は、現在は1日あたり4個であるが、7日後から1日あたり5個になるものとする。また、図11に示すように、各工程の進捗状況は、B社の出荷検査の工程以降は計画通りであるが、B社の熱処理の工程で2日の修理期間を要する障害が発生しているものとする。
【0064】
この場合、生産管理システム1が導入されておらず、B社の障害をX社が知ることができなかったとすると、優先経路のリードタイムは6日なので、X社は、7日後の必要数である5個の部品をB社に発注することになる。その結果、図16に示すように、B社の熱処理の工程の障害のために5日後および6日後の2日に渡って入荷数が0になった後、2日分の8個の部品と本日発注する5個の部品という計13個の部品が一度に納品されることになる。これでは、5日後と6日後に製品を生産できない上に、7日後には多数の余剰在庫を抱えることとなり、生産管理上好ましくない。
【0065】
一方、生産管理システム1が導入されていれば、余剰在庫が発生することが予め検知されて余剰在庫を最小にするように発注数が調整される。そのため、図12に示すように、優先経路への発注数は、本日は0個に、1日後は2個に抑制され、その結果、8日後には余剰在庫がなくなる。
【0066】
ただし、優先経路への発注数を調整しただけでは、図13に示すように、5日後および6日後の入荷数が0個のままのため、8個の製品を生産することができなくなってしまう。そこで、生産管理システム1では、図14に示すように、5日後および6日後にそれぞれ4個の部品が納品されるように代替経路に対して発注が行われる。その結果、X社では当初の計画通りの数の製品を生産できるようになる。
【0067】
上述してきたように、本実施例では、サプライヤで実施される工程を含めて進捗状況を管理することとしたので、利用者がサプライヤで実施される工程を含めた全体の工程の状況を把握することができる。
【符号の説明】
【0068】
1 生産管理システム
2 ネットワーク
10 生産管理装置
11 通信部
12 制御部
121 CPU
122 メモリ
13 記憶部
131 生産管理プログラム
131a 進捗管理部
131b 視覚化部
131c 発注数決定部
132 工程マスタ
133 発注数情報
134 進捗情報
14 表示部
15 入力部
16 媒体読取部
20a、20b 進捗管理装置
30 WEB端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信部と、
納品される部品に対して実施される工程と、それぞれの工程の所要時間とを対応づけて記憶する記憶部と、
発注された前記部品の発注日と前記記憶部に記憶されている前記所要時間とに基づいて、前記発注された部品に対して前記工程のそれぞれの実施が完了する予定日を算出するとともに、前記通信部による通信を介して前記部品に対して前記工程のそれぞれを実施するサプライヤから工程の実施状況に関する情報を取得する制御部と
を備えることを特徴とする生産管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記予定日に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の予定上の進捗状況を判定するとともに、前記実施状況に関する情報に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の実際の進捗状況を判定し、前記予定上の進捗状況と前記実際の進捗状況とを対比して表示することを特徴とする請求項1に記載の生産管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記実施状況に関する情報に基づいて、前記発注された部品のうち、当日発注する部品が納品される日に納品される予定数を算出し、当該予定数に基づいて当日発注する部品の数を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の生産管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記予定数が当日発注する部品が納入される日に必要な部品数よりも多い場合には、当日発注する部品の数を0個にすることを特徴とする請求項3に記載の生産管理装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記実施状況に関する情報に基づいて、当日発注する部品が納品される日までのそれぞれの日に納品される部品の数を算出し、納品される部品の数が必要な部品の数よりも少ない日があれば、その日の不足分をその日に納品される部品の発注先とは異なるサプライヤへ発注することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の生産管理装置。
【請求項6】
納品される部品に対して実施される工程と、それぞれの工程の所要時間とを対応づけて保持する情報と、発注された前記部品の発注日とに基づいて、前記発注された部品に対して前記工程のそれぞれの実施が完了する予定日を算出するステップと、
通信部による通信を介して前記部品に対して前記工程のそれぞれを実施するサプライヤから工程の実施状況に関する情報を取得するステップと
をコンピュータに実行させることを特徴とする生産管理プログラム。
【請求項7】
前記予定日に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の予定上の進捗状況を判定するステップと、
前記実施状況に関する情報に基づいて前記発注された部品に対して実施される工程の実際の進捗状況を判定するステップと、
前記予定上の進捗状況と前記実際の進捗状況とを対比して表示するステップと
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6に記載の生産管理プログラム。
【請求項8】
前記実施状況に関する情報に基づいて、前記発注された部品のうち、当日発注する部品が納品される日に納品される予定数を算出するステップと、
前記予定数に基づいて当日発注する部品の数を調整するステップと
をさらにコンピュータに実行させることを特徴とする請求項6または7に記載の生産管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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