説明

産業用機械

【課題】従来の産業用機械として、インバータ部とモータの間の電流を検出して地絡保護を行うものが知られているが、インバータ部と電流検出器との間で地絡が起こると、検出できないあるいは時間がかかり、インバータ部を構成するスイッチング素子が破損してしまう場合がある。
【解決手段】モータと、交流電力を入力して直流電力を出力するコンバータ部と、複数のスイッチング素子を有しておりコンバータ部の出力を入力してモータに供給するインバータ部と、コンバータ部とインバータ部との間に設けられた第1の電流検出器と、インバータ部とモータとの間に設けられた第2の電流検出器と、第1の電流検出器が検出した電流と第2の電流検出器が検出した電流に基づいて演算を行う演算部と、コンバータ部への交流電力の供給または停止を行うための開閉器と、演算部の演算結果に基づいて開閉器を制御する制御部を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ロボットや工作機械等のモータ制御を伴う産業用機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のモータ制御を行う産業用機械は、モータが地絡した場合に機器を停止するための保護装置を有している。
【0003】
図5は、上記従来の産業用機械の構成の一部であってモータ制御を行う主回路を示しており、産業用機械は、インバータ部102とインバータ部102に接続されたモータ105を有している。
【0004】
図5において、インバータ部102は、複数のダイオードからなり交流を直流に整流する整流部109と、整流部109の出力を平滑する平滑コンデンサ110と、複数のスイッチング素子からなり平滑コンデンサ110の出力を入力して交流に変換するスイッチング部108と、スイッチング部108とモータ105との間に設けられた第1の電流検出器である電流検出器103と、スイッチング部108とモータ105との間に設けられた第2の電流検出器である電流検出器104と、電流検出器103と電流検出器104の出力を入力として地絡を判別する地絡判別付指令部107と、地絡判別付指令部107の出力を入力としてスイッチング部108のオン/オフ制御を行うゲートアンプ部106を備えている。なお、整流部109には、交流を出力する電源101が接続されている。
【0005】
そして、産業用機械で地絡が発生し、電流検出器103または電流検出器104により地絡電流が検出された場合、地絡判別付指令部107において地絡と判別され、ゲートアンプ部106の指令によりスイッチング部108をオフし、インバータ部102を保護するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−239359号公報(図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術では、インバータ部102のスイッチング部108と電流検出器103または電流検出器104の間で地絡が起こると、地絡を検出ができない、あるいは、地絡を検出するまでに時間がかかってしまい、スイッチング部108を構成するスイッチング素子が破損してしまう場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の産業用機械は、モータと、交流電力を入力して直流電力を出力するコンバータ部と、複数のスイッチング素子を有しており前記コンバータ部の出力を入力して前記モータに供給するインバータ部と、前記コンバータ部への交流電力の供給または停止を行うための開閉器と、前記コンバータ部と前記インバータ部との間に設けられた第1の電流検出器と、前記インバータ部と前記モータとの間に設けられた第2の電流検出器と、前記第1の電流検出器が検出した電流と前記第2の電流検出器が検出した電流に基づいて演算を行う演算部と、前記演算部の演算結果に基づいて前記開閉器を制御する制御部を備えたものである。
【0009】
また、本発明の産業用機械は、上記に加えて、複数のインバータ部と、前記複数のインバータ部と同数の複数のモータと、1つのインバータ部と1つのモータとの間に設けられた前記複数のインバータ部と同数の複数の電流検出部を備え、演算部は、複数の電流検出部が検出した電流の合計を演算し、さらに、この合計と第1の電流検出器が検出した電流との差を算出し、この差が予め設定した所定の閾値を越えた場合には、制御部により開閉器を開としてコンバータ部への交流電力の供給を停止するものである。
【0010】
また、本発明の産業用機械は、上記に加えて、インバータ部は複数のスイッチング素子を有しており、前記インバータ部と前記モータとは複数の電線で接続されており、前記インバータ部と前記モータとの間に設けられる電流検出部は、前記複数の電線を流れる電流の合計電流を検出するものである。
【0011】
また、本発明の産業用機械は、上記に加えて、コンバータ部の出力電圧を検出する電圧検出器と、前記電圧検出器が検出した電圧とモータの回生動作時に第1の電流検出器が検出した電流とに基づいて前記モータの回生時の消費電力を演算する演算部と、前記演算部の演算結果を表示する表示部を備えたものである。
【0012】
また、本発明の産業用機械は、上記に加えて、モータを第1の動作速度で動作させる第1の動作モードと、前記モータを前記第1の動作速度よりも遅い第2の動作速度で動作させることにより前記モータの回生時の消費電力を前記第1の動作モード時よりも少なくする第2の動作モードとを有しており、作業者が前記第1の動作モードと前記第2の操作モードとを切り替えるための切替部を備えたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明は、スイッチング部の入力側と出力側に電流検出回路を備え、地絡が起こった場合にスイッチング素子を保護する産業用機械を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態1における産業用機械の概要構成を示す図
【図2】本発明の実施の形態2における産業用機械の概要構成を示す図
【図3】本発明の実施の形態3における産業用機械の概要構成を示す図
【図4】本発明の実施の形態4における産業用機械の概要構成を示す図
【図5】従来の産業用機械の概要を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について、図1から図4用いて説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態における産業用機械の一例である産業用ロボットの概略構成を示すブロック図である。産業用ロボットは主に、マニピュレータと、マニピュレータの動作を制御する制御装置から構成される。
【0017】
マニピュレータは、モータ9を備えている。制御装置は、交流電力を整流するコンバータ部3と、制御装置の外部に設けられた電源1からコンバータ部3への交流電力の供給または停止を行うための開閉器2と、複数のスイッチング素子7を備えておりコンバータ部3の出力を入力して交流に変換するインバータ部6と、コンバータ部3とインバータ部6との間に設けられた第1の電流検出器4と、インバータ部6とモータ9との間に設けられた第2の電流検出器8と、第1の電流検出器4の出力と第2の電流検出器8の出力を入力として第1の電流検出器4の出力と第2の電流検出器8の出力に基づいて演算を行う演算部10と、演算部10の出力を入力とし演算部10の出力に基づいて開閉器2のON/OFF制御とインバータ部6を構成する複数のスイッチング素子7のON/OFF制御を行う制御部5を備えている。
【0018】
なお、交流電力は3相であるため、インバータ部6とモータ9とは3本の接続線により接続されている。そして、第2の電流検出器8は、3本の接続線の合計電流を検出するものである。
【0019】
以上のように構成された産業用ロボットについて、その動作を説明する。
【0020】
産業用ロボットの動作中に、第1の電流検出器4により検出した電流と第2の電流検出器8により検出した電流を演算部10に入力して演算を行う。具体的には、第1の電流検出器4により検出した電流と第2の電流検出器8により検出した電流の差を求める演算を行う。
【0021】
モータ9やインバータ部6からモータ9に至る経路で地絡が発生した場合、第1の電流検出器4が検出した電流と第2の電流検出器8が検出した電流との差が演算部10において演算され、さらに、演算部10においてその差が予め設定された所定の閾値を超えた場合、演算部10はその旨を示す信号を出力する。制御部5は演算部10からの信号を入力し、その信号が前記所定の閾値を超えたことを示す信号である場合、インバータ部6を構成するスイッチング素子7をOFFし、また、開閉器2をOFFして電源1からの交流電源を遮断する。これにより、インバータ部6を構成する複数のスイッチング素子7に過大な電流が流れることを抑制し、複数のスイッチング素子7を保護することができる。
【0022】
(実施の形態2)
本実施の形態において、実施の形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施の形態1と異なる主な点は、マニピュレータが複数のモータを備え、制御装置が複数のインバータ部を備え、制御装置がさらに、1つのインバータ部と1つのモータとの間に設けられる電流検出器を複数備える点である。
【0023】
なお、モータとインバータ部と電流検出部を複数設ける一例として、図2では、モータとしてモータ9とモータ16の2つを備え、インバータ部としてインバータ部6とインバータ部17の2つを備え、インバータ部とモータとの間に設けられる電流検出部として第2の電流検出器8と第3の電流検出器11の2つを備える例を示している。
【0024】
産業用ロボットの動作中において、第1の電流検出器4により検出した電流と第2の電流検出器8により検出した電流と第3の電流検出部11で検出した電流を演算部10に入力して演算を行う。具体的には、第2の電流検出器8で検出した電流と第3の電流検出器11で検出した電流との合計を算出し、この合計と第1の電流検出器4により検出した電流との差を求める演算を行う。
【0025】
モータ9やモータ16あるいはインバータ部6からモータ9に至る経路やインバータ部17からモータ16に至る経路で地絡が発生した場合、第2の電流検出器8が検出した電流と第3の電流検出器11が検出した電流の合計と第1の電流検出器4が検出した電流との差が演算部10において演算され、さらに、演算部10においてその差が予め設定された所定の閾値を超えた場合、演算部10はその旨を示す信号を出力する。制御部5は演算部10からの信号を入力し、その信号が前記所定の閾値を超えたことを示す信号である場合、インバータ部6を構成するスイッチング素子7とインバータ部17を構成するスイッチング素子12をOFFし、また、開閉器2をOFF(開)して電源1からの交流電源を遮断する。これにより、インバータ部6を構成する複数のスイッチング素子7や、インバータ部17を構成する複数のスイッチング素子12に、過大な電流が流れることを抑制し、複数のスイッチング素子7や複数のスイッチング素子12を保護することができる。
【0026】
(実施の形態3)
本実施の形態において実施の形態1と同様の箇所については同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施の形態1と異なる主な点は、図3に示すように、コンバータ部3とインバータ部6との間にインバータ部6の両端間の電圧を検出する電圧検出器13を設けた点と、表示部14を設け、第1の電流検出器4の出力と電圧検出器13の出力に基づいて演算部10で電力の演算を行い、この演算結果を消費電力として表示部14に表示するようにした点である。
【0027】
なお、モータ9の回生動作時には、モータ9に供給される電圧以上に電圧が発生し、余分な電圧は抵抗で熱として消費される。
【0028】
モータ9の回生動作時に、第1の電流検出器4が検出した電流と電圧検出器13が検出した電圧とに基づいてモータ9の回生時の消費電力を演算部10において演算し、この演算結果を表示部14に表示する。これにより、産業用ロボットの操作者等は、産業用ロボットを構成するモータ9の回生動作時の消費電力を視認可能となり、消費電力を把握することが可能となる。
【0029】
(実施の形態4)
本実施の形態において、実施の形態3と同様の箇所については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。実施の形態3と異なる主な点は、インバータ部6を制御する制御部5がモータ9を第1の動作速度で動作させる第1の動作モードと、前記モータを前記第1の動作速度よりも遅い第2の動作速度で動作させることにより前記モータ9の回生時の消費電力を前記第1の動作モード時よりも少なくする第2の動作モードとを備えた点と、図4に示すように、この制御部5に対して第1の動作モードと第2の動作モードを切り替え可能とするための切替部15を設けた点である。
【0030】
モータ9の回生動作時には、モータ9に供給される電圧以上に電圧が発生し、余分な電圧は抵抗で熱として消費される。そして、実施の形態3に示すように、モータ9の回生動作時の消費電力を表示部14に表示して作業者等に視認可能とすることができる。
【0031】
第2の動作モードによるモータ9の回生動作時の消費電力は、第1の動作モードによる消費電力よりも少ない。従って、タクトタイムよりも消費電力の削減を優先したい場合、作業者は切替部15により第2の動作モードに切り替えて産業用ロボットを動作させる。これにより、パワーロスを削減して省エネを実現することができる。
【0032】
一方、第1の動作モードは、第2の動作モードよりも動作速度が速い。従って、省エネよりもタクトタイムを優先させたい場合には、作業者は切替部15により第1の動作モードに切り替えて産業用ロボットを動作させる。これにより、産業用ロボットの作業性を高めることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の産業用機械は、地絡保護機能や省エネ運転モード切替機能を有するものであり、産業用ロボットのみならず、多軸のモータを有する一般の産業用機械として産業上有用である。
【符号の説明】
【0034】
1 電源
2 開閉器
3 コンバータ部
4 第1の電流検出器
5 制御部
6 インバータ部
7 スイッチング素子
8 第2の電流検出器
9 モータ
10 演算部
11 第3の電流検出器
12 スイッチング素子
13 電圧検出器
14 表示部
15 切替部
16 モータ
17 インバータ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、
交流電力を入力して直流電力を出力するコンバータ部と、
複数のスイッチング素子を有しており前記コンバータ部の出力を入力して前記モータに供給するインバータ部と、
前記コンバータ部への交流電力の供給または停止を行うための開閉器と、
前記コンバータ部と前記インバータ部との間に設けられた第1の電流検出器と、
前記インバータ部と前記モータとの間に設けられた第2の電流検出器と、
前記第1の電流検出器が検出した電流と前記第2の電流検出器が検出した電流に基づいて演算を行う演算部と、
前記演算部の演算結果に基づいて前記開閉器を制御する制御部を備えた産業用機械。
【請求項2】
複数のインバータ部と、前記複数のインバータ部と同数の複数のモータと、1つのインバータ部と1つのモータとの間に設けられた前記複数のインバータ部と同数の複数の電流検出部を備え、
演算部は、複数の電流検出部が検出した電流の合計を演算し、さらに、この合計と第1の電流検出器が検出した電流との差を算出し、この差が予め設定した所定の閾値を越えた場合には、制御部により開閉器を開としてコンバータ部への交流電力の供給を停止する請求項1記載の産業用機械。
【請求項3】
インバータ部は複数のスイッチング素子を有しており、前記インバータ部と前記モータとは複数の電線で接続されており、前記インバータ部と前記モータとの間に設けられる電流検出部は、前記複数の電線を流れる電流の合計電流を検出する請求項1または2記載の産業用機械。
【請求項4】
コンバータ部の出力電圧を検出する電圧検出器と、
前記電圧検出器が検出した電圧とモータの回生動作時に第1の電流検出器が検出した電流とに基づいて前記モータの回生時の消費電力を演算する演算部と、
前記演算部の演算結果を表示する表示部を備えた請求項1から3のいずれか1項に記載の産業用機械。
【請求項5】
モータを第1の動作速度で動作させる第1の動作モードと、前記モータを前記第1の動作速度よりも遅い第2の動作速度で動作させることにより前記モータの回生時の消費電力を前記第1の動作モード時よりも少なくする第2の動作モードとを有しており、作業者が前記第1の動作モードと前記第2の操作モードとを切り替えるための切替部を備えた請求項4記載の産業用機械。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−229322(P2011−229322A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98521(P2010−98521)
【出願日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】