説明

用具の出庫管理システム

【課題】複数個ある同種用具の使用頻度を均一化する。
【解決手段】複数個の同種用具に識別用に止着された識別情報の記録担体から識別情報を読み取る情報読取手段1と、情報読取手段1で読み取られた識別情報により特定される用具の使用の可否を判定する管理装置2を備え、管理装置2は、識別情報に関連付けて各用具毎の使用履歴を記録した使用履歴データベース3と、使用履歴データベース3に使用履歴を記録する情報入力手段5と、情報読取手段1で読み取られた識別情報を受信する受信手段6と、受信された識別情報より特定される用具の、使用履歴データベース3に記録された使用履歴と、他の同種用具の使用履歴とを比較して、用具の使用の可否を判定する判定手段7と、この判定結果を表示する判定表示手段8とを有する用具の出庫管理システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個からなる同種用具の出庫管理システムに係り、特に同種用具の使用頻度の平坦化のための管理を行う出庫管理システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
生産や保守、点検等に用いられる各種の用具類は、多種多用にわたると共に使用の便宜のため同種のものが複数個備えられている。これら同種の用具は消耗等に対し、その安全管理を図るため所定期間毎に廃棄されているが、使用期間中はその使用頻度が均一になることが望ましく、特定の用具に使用が集中することは安全管理の面から避ける必要がある。
【0003】
具体的な例として、高所作業である送電線工事においては、鉄塔上から作業員の墜落を防止するためにキーロック方式の安全ロープが使用されており、安全性を確保するためこの安全ロープの耐用年数を設定し、耐用年数を超えたものを廃棄してるが、個々の使用頻度に差が生じると、耐用年数内であっても安全性に相違が出てくることがある。
【0004】
安全ロープは、鉄塔1基あたり数種類のロープが約130本程度使用され、倉庫では通常数十基分に使用される安全ロープが収納ケースに入れられて保管されているが、搬出しやすい位置にある安全ロープが繰り返し出庫される可能性があり、同じ時期に購入、配置した安全ロープであっても使用頻度に差が生じ、使用可能年内であっても安全性は極端に相違するおそれがある。
【0005】
安全ロープの管理については、各安全ロープ毎に固有の番号を設けたバーコード表示を貼着し、使用開始、終了、点検等の項目も別途バーコード表にして入力の便宜を図る管理方法等が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また上記バーコード表示の貼着に代えてIDタグを貼着等する安全ロープの管理方法が提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平5−115573
【特許文献2】特開平7−124266
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の記載によると、製造番号毎に使用時期、使用回数等を入力管理していた従来方法に比して、上記事項をバーコード入力することが可能になり、迅速かつ誤入力防止を図ることができ、さらに上記特許文献2の記載によるとIDタグに記憶された使用履歴等の読取はバーコードよる場合よりさらに正確性に優れたものとなる。
【0008】
しかしながら、上記特許文献1及び2に記載された管理方法は、安全ロープの使用についての記録事項等の記録、読取についての便宜向上を図るものであり、同種の安全ロープの使用頻度の均一化を図る点については、具体的に言及していない。すなわち各安全ロープの識別、使用履歴等の照会等による在庫管理が容易化されたことが特徴となっているものである。
【0009】
本発明は、複数個ある同種用具の使用頻度を均一化する用具の出庫管理システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、記録された同種用具の使用履歴を比較し、使用の可否を判断することによって、前記課題の解決を図ったものである。
【0011】
すなわち、前記目的を達成するために本発明が提案するものは、複数個の同種用具に識別用に止着された識別情報の記録担体から前記識別情報を読み取る情報読取手段と、該情報読取手段で読み取られた識別情報により特定される用具の使用の可否を判定する管理装置とを備えてなる用具の出庫管理システムであって、前記管理装置は、前記識別情報に関連付けて各用具毎の使用履歴を記録した使用履歴データベースと、該使用履歴データベースに各用具の使用履歴を前記識別情報に関連付けて記録する情報入力手段と、前記情報読取手段で読み取られた識別情報を受信する受信手段と、該受信手段で受信された識別情報より特定される用具に関する、前記使用履歴データベースに記録された使用履歴と、他の同種用具の使用履歴とを比較して、前記識別情報により特定される用具の使用の可否を判定する判定手段と、該判定手段による判定結果を表示する判定表示手段とを有することを特徴とする用具の出庫管理システムである。
【0012】
管理装置の使用履歴データベースには、複数個の同種用具を識別する識別情報に関連付けて各用具の使用履歴が記録されている。使用対象である用具の識別情報を情報読取手段で読み取り、使用履歴データベースに記録されている使用履歴と、他の同種用具の使用履歴とを比較し、他の同種用具よりも使用数が所定以上であるときに、使用不可の判定をすることで同種用具の使用の偏りを防止し、使用頻度の平均化を図るものである。なお判定の対象とする使用数は、累積使用時間、累積使用日数、累積使用回数等をいい、用具の種類、使用方法等により使用数の判断対象を上記の累積使用時間、累積使用日数、累積使用回数等のいずれか、あるいはこれらの2以上を判定対象の要素とすることもできる。識別情報は各同種用具の識別が可能であり、かつ情報読取装置で読み取れるものであればよく、例えばバーコード表示のタグやラベル、ICチップのタグその他が対象となる。またタグ等の用具への取り付けは、貼付け、縫付け等により行うことができる。
【0013】
また前記複数個の同種用具は前記識別情報を目視可能な態様で併せて表示されると共に、前記判定手段は、否定的な判定結果を受けた用具に代えて、前記使用履歴に基づき使用数の最も少ない他の同種用具の識別表示を前記目視可能な態様の表示を前記判定結果と併せて表示することが好ましい。
【0014】
識別情報は上記したバーコード表示、ICチップへの記録等による他、目視可能な態様で併せて表示することで、用具が否定的な判定結果を受けたときに、使用数の最も少ない他の同種用具の目視可能な識別情報を表示することで、使用頻度の均一化を図るとともに使用の便宜を図ることができる。なお使用数の少ない順に複数の同種用具の目視可能な識別情報を複数個表示するとも可能である。
【0015】
また前記管理装置は、警告音を発生する警告音発生手段を含み、前記否定的な判定結果と共に該警告音発生手段により警告音を発生することが好ましい。警告音を発生することで注意を喚起することができる。
【0016】
本発明の用具の出庫管理システムは、使用数の均一化を目的とするが、さらに用具の安全点検日を使用履歴データベースに記録し、先の点検日から所定期間経過した場合に、使用不可の判定結果を表示することも可能であり、用具の安全使用が可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、用具の使用履歴の単なる管理にとどまらず、複数個ある同種用具の使用頻度を均一化することができ、耐用年数内の用具の安全使用が可能となるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。図1は本発明の実施形態に係る用具の出庫管理システムのブロック構成図である。図1に示すように用具の出庫管理システムは、複数個からなる同種用具の識別用として各用具毎に付与された識別情報を読み取る情報読取手段1と、情報読取手段1に読み取られた識別情報により特定される用具の使用履歴から使用の可否を判定する管理装置2とを備えてなるものである。
【0019】
この管理装置2は、複数個の同種用具の使用履歴を用具の識別情報に関連付けて記録する使用履歴データベース3と、この使用履歴データベース3に使用履歴情報を入力する情報入力手段5と、情報読取手段1で読み取られた識別情報を受信する受信手段6と、識別情報を受信する受信手段6と、識別情報により特定される用具の使用履歴と他の同種用具の使用履歴とを比較し、使用回数や使用日時等の使用数が所定の範囲内か否か使用の可否を判定する判定手段7と、判定結果を表示する判定表示手段8と、警告音を発生する警告音発生手段9とを備えている。
【0020】
以下本実施形態に係る用具の出庫管理システムを、送電線工事の鉄塔作業に用いる安全ロープを対象の用具として説明する。安全ロープは同種のものが複数個使用されることから、在庫も常時複数個用意されており、耐用年数内であっても安全管理上これらの使用頻度の均一化を図る必要がある。
【0021】
図2は識別情報が記録された担体が止着された安全ロープの一部分を拡大表示した概略図である。安全ロープ10の一端部側に合成樹製の短管11が安全ロープ10の一部を覆うように固着されている。この短管11の内部には識別情報が記録された担体であるICチップ12が止着されている。ICチップ12に記録された識別情報は、各安全ロープ10毎に与えられた文字と数字からなる個別コードであり、この個別コードが目視できるように短管11の表面に刻印表示15されている。このうち文字部分は安全ロープ10の種類別に与えられた表示で、これに続く数字部分がその種類における個別情報である。この短管11の表面への刻印表示15の上に透明な合成樹脂がコーティングされている。安全ロープ10は屋外での長期使用のため、表示部分の剥離等を防止するためである。なお本実施形態では識別情報を記録した担体としてICチップ12を用いているが、代わりに個別コードをバーコード表示したタグ、ラベル等を短管11に止着してもよい。
【0022】
情報読取手段1は、安全ロープ10の端部に止着されたICチップ12に記録された個別コードを読み取るもので、ICチップ12から電波発信された個別コードの情報を受信する公知の読取装置である。なおICチップに代えてバーコード表示したタグ、ラベル等の場合は、ハンドスキャナ等が情報読取手段1として安全ロープ10の識別情報を読み取ることになる。
【0023】
ICチップ12は、電池を内臓したものでもよいが、本実施形態のICチップ12は情報読取手段1である読取装置から受信した電波による信号により直流電流を生成する形式のものを使用している。
【0024】
管理装置2については、本実施形態で使用するための専用機を採用してもよいが、本実施形態では汎用機としてのパーソナルコンピュータを管理装置2として使用する。
【0025】
管理装置2の使用履歴データベース3は、各安全ロープ10の使用履歴をその識別情報である個別コードごとに使用履歴の記録データとして格納している。この使用履歴データベース3は、パーソナルコンピュータのハードディスク、またはその他の各種外部記憶装置が該当する。図3はこの記録データの一覧を示した図である。図3に示すように、記録データは個々の安全ロープ毎に与えられた個別コードに関連付けて記録されている。個別コードは上記したように文字部分と数字部分とからなり、このデータ表では欧文字ASの文字部分が安全ロープの種類を表し、1205の数字部分がその種類での個別表示を表している。さらに記録データには安全ロープにも種類があることからその種類名と、欧文字による表示とを併せて記録されている。安全ロープのメーカーがラベル等に表示する製造番号と製造日もこの記録データに記録しているが、これは個別コードがICチップの損傷等により読取不能となった場合における予備的な識別情報として用いるためのものである。そして実際に使用開始日、保管場所が決まったときにその日時、場所を後述する情報入力手段5により使用履歴データベース3に入力される。
【0026】
以上のデータが初期入力されるものである。そして安全ロープの点検、使用毎に情報入力手段5により使用履歴データベース3に、点検日や、安全ロープの使用のために出庫したときはその日時が、使用が済んで戻ってきたときは納庫の日時が、使用履歴データベース3の記録データに記録される。そして点検と使用はその時々毎に記録データに記録されるとともに、累積使用時間がカウントされて記録される。カウントは累積使用時間であるが、使用回数、使用日数のいずれでもよく、これに限定するものではない。
【0027】
情報入力手段5は、上記したように安全ロープの個別コードや使用履歴を使用履歴データベース3に入力するものであり、データの数値入力そのものはキーボード、マウス等により行うが、使用履歴データベース3への記録は専用ソフトを実効するCPU等により行われる。
【0028】
受信手段6は、情報読取手段2で読み取った識別情報を受信する装置であり、情報読取手段2からは有線でデータを取得するほか、赤外線等によりデータを無線方式で取得してもよい。
【0029】
判定手段7は、受信手段6で受信した安全ロープ10の識別情報である個別コードに基づき、使用履歴データベース3に記録された累積使用時間のデータを取得する。そして他の同種安全ロープの累積使用時間の情報を取得して、先の累積使用時間と比較し、設定された許容時間数の範囲内にあれが使用可の判定をし、許容時間数の範囲を超えるときは使用不可の判定をする。そして判定手段7は、使用不可の判定をしたときは、その安全ロープ10に代えて在庫してある同種のもののうち累積使用時間のもっと少ない安全ロープ10の個別コードを併せて検索するものである。
【0030】
判定表示手段8は、判定手段7による判定結果を表示するものであり、CRTや液晶ディスプレイにその結果を表示する。そして使用不可の判定と共に、判定手段7が検索した累積使用時間のもっと少ない安全ロープ10の個別コードをCRTや液晶ディスプレイに表示するように設定されている。
【0031】
警告音発生手段9は、使用不可の判定結果が表示されたときに、警告音の発生をなすものである。警告音発生手段9としては、スピーカ及びその駆動装置が該当する。
【0032】
以下本実施形態に係る用具出庫管理システムの手順を図4に示したフロー図を参照して説明する。用具は上記した安全ロープであり、同種のものが複数個、倉庫等に保管されている。そして鉄塔作業に使用する安全ロープ10を選択する(S1)。
【0033】
選択された安全ロープ10に止着されているICチップ12から識別情報である個別コードのデータを、情報読取手段1である読取装置で読み取る(S2)。読み取りは上記したように読取装置から発信された電波をICチップが受信し、受信した指令信号に基づいてICチップ12に記録されている個別コードのデータがICチップ12より送信されるので、これを読取装置が受信することにより読み取ることができる。
【0034】
情報読取手段1で読み取られた個別コードは、管理装置2の受信手段6に送信される。そして受信手段6が受信した個別コードに基づいて判定手段7が使用履歴データベース3に記録されているこの安全ロープの累積使用時間を検出する(S3)。
【0035】
個別コードで特定される安全ロープと同種の他の安全ロープの累積使用時間と比較し、予め設定された許容範囲の規定時間内か否かを判定する(S4)。
【0036】
規定時間内にあるときは、この安全ロープの使用を許可する使用可表示を判定表示手段8であるディスプレイ等に表示する(S5)。表示は簡単に、使用可の文字等で行うと共に、出庫使用入力を求める表示をも併せて行う。
【0037】
使用可の表示がされた安全ロープを持ち出す際は、使用履歴データベース3に記録するために出庫使用入力を行う(S6)。入力はマウス、あるいはキーボード等の情報入力手段5を構成する装置から行い、この入力に基づいてCPU等が個別コードで特定される使用履歴データベース3の記録データに出庫日時を記録する。
【0038】
使用の選択がなされた安全ロープが、許容範囲の規定時間を超えて使用されていたときは使用不可の文字等が判定表示手段8であるディスプレイ等に表示されると共に、確実を期すために警告音が警告音発生手段9であるスピーカから発生され、使用不可の安全ロープに代えて在庫してある他の同種安全ロープのうち累積使用時間数が最小である安全ロープの個別コードが併せて判定表示手段8上に表示される(S7)。表示された個別コードをもつ安全ロープを選択し、以後は上記同様に識別情報の読み取りを行い、再度使用の判定を受ける。累積使用時間の最も少ない安全ロープとして表示されたものゆえ、再度の判定を受けずに直接使用してもよいが、選択対象の誤りを防止するためである。
【0039】
このように複数個ある同種の安全ロープを使用する場合、累積使用時間を比較することによって使用の可否を決定するので、安全ロープの使用頻度を平坦化できる。そして特定の安全ロープに使用が偏ることを防止できるので、安全管理の向上を図ることができる。
【0040】
なお使用不可の際に音による警告も併せて行っているが、使用可の場合についてもチャイム等の音を発生してもよい。
【0041】
なお点検日から所定の期間を設定し、この期間内か否かで安全ロープの使用の可否を判定し、その結果を表示すると共に代替品の個別コードを同じく表示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本実施形態に係る用具の出庫管理システムのブロック構成図。
【図2】識別情報が記録された担体が止着された安全ロープの一部分を拡大表示した概略図。
【図3】記録データの一覧を示した図。
【図4】本実施形態に係る用具の出庫管理システムの手順を示したフロー図。
【符号の説明】
【0043】
1 情報読取手段
2 管理装置
3 使用履歴データベース
5 情報入力手段
6 受信手段
7 判定手段
8 判定表示手段
9 警告音発生手段
10 安全ロープ
11 短管
12 ICチップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の同種用具に識別用に止着された識別情報の記録担体から前記識別情報を読み取る情報読取手段と、
該情報読取手段で読み取られた識別情報により特定される用具の使用の可否を判定する管理装置とを備えてなる用具の出庫管理システムであって、
前記管理装置は、前記識別情報に関連付けて各用具毎の使用履歴を記録した使用履歴データベースと、
該使用履歴データベースに各用具の使用履歴を前記識別情報に関連付けて記録する情報入力手段と、
前記情報読取手段で読み取られた識別情報を受信する受信手段と、
該受信手段で受信された識別情報より特定される用具に関する、前記使用履歴データベースに記録された使用履歴と、他の同種用具の使用履歴とを比較して、前記識別情報により特定される用具の使用の可否を判定する判定手段と、
該判定手段による判定結果を表示する判定表示手段とを有することを特徴とする用具の出庫管理システム。
【請求項2】
前記複数個の同種用具は前記識別情報を目視可能な態様で併せて表示されると共に、前記判定手段は、否定的な判定結果を受けた用具に代えて、前記使用履歴に基づき使用数の最も少ない他の同種用具の識別表示を前記目視可能な態様の表示を前記判定結果と併せて表示することを特徴とする請求項1記載の用具の出庫管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、警告音を発生する警告音発生手段を含み、前記否定的な判定結果と共に該警告音発生手段により警告音を発生することを特徴とする請求項2記載の用具の出庫管理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−254110(P2007−254110A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81673(P2006−81673)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(591080678)株式会社中電工 (64)
【Fターム(参考)】