説明

用紙搬送エミュレータ装置及び用紙搬送エミュレータプログラム

【課題】計算量を軽減しつつ、用紙間の近づき又は用紙同士の重なりを検知できる用紙搬送エミュレータ装置及び用紙搬送エミュレータプログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】用紙搬送エミュレータ装置であって、複数の部品11〜16を介して繋がれた複数の路1〜5を、部品11〜16のうち用紙の動力源となる部品11,12,14及び16で区切って仮想的な区間とし、用紙と用紙が存在している区間とを対応付ける第1の対応付け手段と、区間と路1〜5とを対応付ける第2の対応付け手段と、路1〜5に存在する用紙を順次選択して、選択した第1の用紙と対応付けられた第1の区間、及び、選択した第2の用紙と対応付けられた第2の区間を、第1及び第2の区間と対応付けられた路1〜5で比較し、比較した路1〜5が同一であれば、第1の用紙と第2の用紙との間を検知する用紙間検知手段とを有することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙搬送経路内における用紙の搬送を解析する用紙搬送エミュレータ装置及び用紙搬送エミュレータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合機,プリンタ,FAX等の画像形成装置の開発段階においては、用紙搬送経路内における用紙の搬送を、用紙搬送エミュレータ装置により実機レス環境で解析することが多くなっている。例えば画像形成装置の紙搬送経路内における紙挙動を解析する解析システムは従来から知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の用紙搬送エミュレータ装置は、用紙間の近づきや用紙同士の重なりを検知しようとする場合、用紙搬送経路内における搬送を解析している全ての用紙の間隔を計算する必要があり、計算量が膨大になるという問題があった。
【0004】
さらに、従来の用紙搬送エミュレータ装置は、用紙間の近づきや用紙同士の重なりを検知しようとする場合、画像形成装置の用紙搬送経路に含まれる分岐や合流を考慮しようとすると、更に計算量が膨大になるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、計算量を軽減しつつ、用紙間の近づき又は用紙同士の重なりを検知できる用紙搬送エミュレータ装置及び用紙搬送エミュレータプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は、用紙搬送経路における用紙の搬送を解析する用紙搬送エミュレータ装置であって、複数の部品を介して繋がれた複数の用紙搬送経路を、前記部品のうち前記用紙の動力源となる部品で区切って仮想的な区間とし、前記用紙と前記用紙が存在している前記区間とを対応付ける第1の対応付け手段と、前記区間と前記用紙搬送経路とを対応付ける第2の対応付け手段と、前記複数の用紙搬送経路に存在する前記用紙を順次選択して、前記選択した第1の用紙と対応付けられた第1の区間、及び、前記選択した第2の用紙と対応付けられた第2の区間を、前記第1及び第2の区間と対応付けられた前記用紙搬送経路で比較し、比較した前記用紙搬送経路が同一であれば、前記第1の用紙と前記第2の用紙との間を検知する用紙間検知手段とを有する。
【0007】
なお、本発明の構成要素、表現または構成要素の任意の組合せを、方法、装置、システム、コンピュータプログラム、記録媒体、データ構造などに適用したものも本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、計算量を軽減しつつ、用紙間の近づき又は用紙同士の重なりを検知できる用紙搬送エミュレータ装置及び用紙搬送エミュレータプログラムを提供可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施例の用紙搬送エミュレータ装置の一例のハードウェア構成図である。
【図2】画像形成装置の用紙搬送経路の一例のイメージ図である。
【図3】区間と路との関係を表したイメージ図である。
【図4】用紙と区間との関係を表したイメージ図である。
【図5】用紙の移動に伴う用紙と区間との関係の変化を表したイメージ図である。
【図6】本実施例の用紙搬送エミュレータ装置の一例の処理ブロック図である。
【図7】用紙情報に含まれる用紙と区間との対応関係の情報と、区間情報に含まれる区間と路との対応関係の情報とを視覚的に表した説明図である。
【図8】用紙間検知部の処理手順を表した一例のフローチャートである。
【図9】用紙Aと用紙Bとを確認する処理手順を表した一例のフローチャートである。
【図10】区間αと区間βとを確認する処理手順を表した一例のフローチャートである。
【図11】路内での用紙の状態を表したイメージ図である。
【図12】路内で用紙AとBとが重なっている場合と重なっていない場合とを表したイメージ図である。
【図13】用紙Aの先頭区間及び後端区間での用紙の長さに、用紙間の近づきを判断する長さを加算する処理の一例のイメージ図である。
【図14】用紙Aと用紙Bとの近付きの検知と、用紙Aと用紙Bとの重なりジャムの検知とを表した一例のイメージ図である。
【図15】区間内での用紙の長さに、その区間での「たるみ量」を考慮した例を表すイメージ図である。
【図16】分岐切替処理部の処理を表した一例のイメージ図である。
【図17】分岐切替処理部の処理を表した一例のイメージ図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための最良の形態を、以下の実施例に基づき図面を参照しつつ説明していく。
【0011】
図1は本実施例の用紙搬送エミュレータ装置の一例のハードウェア構成図である。用紙搬送エミュレータ装置50はスタンドアローンの形態でも良いし、インターネットやLAN等のネットワーク経由でユーザ端末にデータ通信可能に接続された形態でもよい。図1に示すように用紙搬送エミュレータ装置50のハードウェアはPC等の計算機システムにより実現される。
【0012】
用紙搬送エミュレータ装置50はバス59で相互に接続されている入力装置51,出力装置52,ドライブ装置53,補助記憶装置54,主記憶装置55,演算処理装置56及びインターフェース装置57を含む。
【0013】
入力装置51はキーボードやマウス等である。入力装置51は各種信号を入力するために用いられる。出力装置52はディスプレイ装置等である。出力装置52は各種ウインドウやデータ等を表示するために用いられる。インターフェース装置57は、モデム,LANカード等である。インターフェース装置57は、ネットワークに接続するために用いられる。
【0014】
本実施例の用紙搬送エミュレータプログラムは、用紙搬送エミュレータ装置50を制御する各種プログラムの少なくとも一部である。用紙搬送エミュレータプログラムは例えば記録媒体58の配布やネットワークからのダウンロードなどによって提供される。
【0015】
記録媒体58はCD−ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等の様に情報を光学的,電気的或いは磁気的に記録する記録媒体、ROM、フラッシュメモリ等の様に情報を電気的に記録する半導体メモリ等、様々なタイプの記録媒体を用いることができる。
【0016】
また、用紙搬送エミュレータプログラムを記録した記録媒体58がドライブ装置53にセットされると、用紙搬送エミュレータプログラムは記録媒体58からドライブ装置53を介して補助記憶装置54にインストールされる。ネットワークからダウンロードされた用紙搬送エミュレータプログラムはインターフェース装置57を介して補助記憶装置54にインストールされる。
【0017】
補助記憶装置54はインストールされた用紙搬送エミュレータプログラムを格納すると共に、必要なファイル,データ等を格納する。主記憶装置55は用紙搬送エミュレータプログラムの起動時に補助記憶装置54から用紙搬送エミュレータプログラムを読み出して格納する。演算処理装置56は主記憶装置55に格納された用紙搬送エミュレータプログラムに従って、後述するような各種処理を実現している。
【0018】
図2は画像形成装置の用紙搬送経路の一例のイメージ図である。以下では用紙搬送経路を単に路と呼ぶ。図2の路は、路1〜5がローラ,分岐,合流,中継等の部品11〜16で繋がれている様子を表している。本実施例の用紙搬送エミュレータ装置50は図2に示した路1〜5から仮想的な区間を構成する。
【0019】
例えば図2の部品11,12,14及び16が用紙の動力源であるローラであり、部品13が用紙の動力源の無い分岐であり、部品15が用紙の動力源の無い中継である場合は図3に示すように仮想的な区間(以下、単に区間と呼ぶ)が構成される。図3は区間と路との関係を表したイメージ図である。図3に示す区間は部品11,12,14及び16で区切られている。つまり、区間は用紙の動力源であるローラ間に構成される。
【0020】
部品11と12との間の区間は路1から構成される。部品12と14との間の区間は路2,3から構成される。また、部品12と16との間の区間は路2,4及び5から構成される。つまり、区間は1つ以上の路から構成される。
【0021】
また、区間は、用紙の動力源の無い分岐である部品13,用紙の動力源の無い中継である部品15を跨ぐように構成される為、用紙の動力源の無い分岐,合流,中継等で区切られることがない。さらに、図3に示すように、部品12と14との間の区間と、部品12と16との間の区間とは、同じ路2を構成要素としている。このように、路は複数の区間の構成要素となる場合もある。
【0022】
図4は用紙と区間との関係を表したイメージ図である。図4は用紙Aが区間IV,Vに跨って存在している様子を表している。このとき、用紙Aは区間IV,Vと対応付けられている。なお、図4の区間は他の用紙に対応付けられた区間と区別できるようにIV〜Vが識別子として付けられている。
【0023】
例えば図4において、用紙Bが区間Vの位置に存在している場合、用紙Bは用紙Aに対応付けられた区間Vと区別できるような識別子が付けられた例えば区間Xなどと対応付けられる。この場合、区間Vと区間Xとは同じ路を構成要素としている。
【0024】
図5は用紙の移動に伴う用紙と区間との関係の変化を表したイメージ図である。例えば図5(A)は用紙Aが図4の位置から搬送され、区間IV〜VIに跨って存在するようになった様子を表している。図5(A)の状態では、用紙Aが区間IV〜VIと対応付けられている。なお、区間VIは用紙Aが区間VIの位置に到達したときに用紙Aと対応付けられる。
【0025】
また、図5(B)は用紙Aが図5(A)の位置から搬送され、区間V〜VIに跨って存在するようになった様子を表している。図5(B)の状態では、用紙Aが区間V〜VIと対応付けられている。なお、区間IVは用紙Aが区間IVの位置を通り過ぎたときに用紙Aとの対応付けを解除される。
【0026】
以下では、路,区間及び用紙の関係を利用し、路に存在する用紙の用紙間を検知する本実施例の用紙搬送エミュレータ装置50の詳細について説明していく。図6は本実施例の用紙搬送エミュレータ装置の一例の処理ブロック図である。
【0027】
図6の用紙搬送エミュレータ装置50は、用紙情報作成部21,区間情報作成部22,パラメータ管理部23,用紙間検知部24,分岐切替処理部25,用紙情報DB31,区間情報DB32,パラメータDB33,レイアウト情報DB34を有する。
【0028】
用紙情報作成部21は路を移動している用紙の用紙情報を作成し、用紙情報DB31に格納する。用紙情報には、用紙の位置情報、用紙の長さ情報、用紙と区間との対応関係の情報等が含まれている。
【0029】
区間情報作成部22は路を移動している用紙の区間情報を作成し、区間情報DB32に格納する。区間情報には、区間の位置情報、区間の長さ、路の位置情報、路の長さ、区間と路との対応関係の情報等が含まれている。
【0030】
パラメータ管理部23は用紙間の検知に必要な各種パラメータをパラメータDB33に格納する。パラメータには、後述の用紙のたるみ量や、用紙間の近づきを判断する長さの情報等が含まれている。
【0031】
用紙間検知部24は用紙情報DB31に格納されている用紙情報,区間情報DB32に格納されている区間情報,パラメータDB33に格納されているパラメータ,レイアウト情報DB34に格納されているレイアウト情報を利用し、後述のように用紙間の近づきや用紙同士の重なりジャムを検知する。なお、レイアウト情報には用紙間の検知を行う画像形成装置の部品,路の配置情報が含まれる。
【0032】
分岐切替処理部25は路を繋ぐ分岐が切り替えられたとき、後述のように用紙情報及び区間情報の再作成が必要か否かを判定し、用紙情報及び区間情報の再作成が必要と判定したとき、用紙情報作成部21及び区間情報作成部22に用紙情報及び区間情報の再作成を要求する。
【0033】
図7は、用紙情報に含まれる用紙と区間との対応関係の情報と、区間情報に含まれる区間と路との対応関係の情報とを視覚的に表した説明図である。用紙Aは区間I〜IIIと対応付けられている。言い換えれば用紙Aは区間I〜IIIに跨って存在している。用紙Bは区間IV〜Vと対応付けられている。言い換えれば用紙Bは区間IV〜Vに跨って存在している。
【0034】
また、区間Iは路1,2と対応付けられている。言い換えれば区間Iは路1及び2から構成される。区間IIは路3と対応付けられている。言い換えれば区間IIは路3から構成される。区間IIIは路4,5と対応付けられている。言い換えれば区間IIIは路4及び5から構成される。区間IVは路5〜7と対応付けられている。言い換えれば区間IVは路5〜7から構成される。区間Vは路8と対応付けられている。言い換えれば区間Vは路8から構成される。
【0035】
図8は用紙間検知部の処理手順を表した一例のフローチャートである。用紙間検知部24は用紙情報DB31に格納されている用紙情報を参照し、路に存在する用紙の用紙枚数を取得する。用紙間検知部24はステップS1〜S4の処理と、ステップS2〜S4の処理とを、取得した用紙枚数分だけ繰り返す。
【0036】
ステップS1に進み、用紙間検知部24は路に存在する用紙を1枚ずつ順番に選択して確認対象の用紙Aとする。ステップS2に進み、用紙間検知部24は路に存在する用紙を1枚ずつ順番に選択して用紙Bとする。ステップS3に進み、用紙間検知部24は用紙Aと用紙Bとを比較し、同一か否かを判定する。用紙Aと用紙Bとは、路に存在する用紙から選択されるため、用紙Aと用紙Bとが同一の用紙であることもある。
【0037】
用紙Aと用紙Bとが同一でなければ、用紙間検知部24はステップS4に進み、後述のように用紙Aと用紙Bとを確認する。用紙Aと用紙Bとが同一であれば、用紙間検知部24はステップS4の処理を省略する。ステップS3の処理は、用紙Aと用紙Bとが同一の用紙であるときに、ステップS4の処理を省略する為のものである。
【0038】
図9は用紙Aと用紙Bとを確認する処理手順を表した一例のフローチャートである。図9のフローチャートは図8のステップS4の処理手順を表している。用紙間検知部24は用紙情報DB31に格納されている用紙情報を参照し、用紙Aに対応付けられている区間の区間数を取得する。用紙間検知部24はステップS11,S12の処理を取得した区間数だけ繰り返す。
【0039】
ステップS11に進み、用紙間検知部24は用紙情報DB31に格納されている用紙情報を参照し、用紙Aに対応付けられている区間を確認対象の区間として1つずつ順番に選択する。また、用紙間検知部24は用紙情報を参照し、用紙Bに対応付けられている区間のうち先頭区間を選択する。用紙間検知部24は、後述のように用紙Bの先頭区間と用紙Aの確認対象の区間とを確認する。
【0040】
また、ステップS12に進み、用紙間検知部24は用紙情報を参照し、用紙Bに対応付けられている区間のうち後端区間を選択する。用紙間検知部24は、後述のように用紙Bの後端区間と用紙Aの確認対象の区間とを確認する。図9のフローチャートの処理は用紙Aの全区間と用紙Bの先頭区間及び後端区間とを比較するものである。
【0041】
また、図10は区間αと区間βとを確認する処理手順を表した一例のフローチャートである。図10のフローチャートは図9のステップS11,S12の処理手順を表したものである。例えば図9のステップS11の場合、図10のフローチャートは区間αを用紙Aの確認対象の区間と読み替え、区間βを用紙Bの先頭区間と読み替える。また、例えば図9のステップS12の場合、図10のフローチャートは区間αを用紙Aの確認対象の区間と読み替え、区間βを用紙Bの後端区間と読み替える。
【0042】
用紙間検知部24は区間情報DB32に格納されている区間情報を参照し、区間αに対応付けられている区間αの路の数と、区間βに対応付けられている区間βの路の数とを取得する。用紙間検知部24はステップS21〜S27の処理を、取得した区間αの路の数分だけ繰り返す。また、用紙間検知部24はステップS22〜S27の処理を、取得した区間βの路の数分だけ繰り返す。
【0043】
ステップS21に進み、用紙間検知部24は区間αの路を1つずつ順番に選択して路αとする。ステップS22に進み、用紙間検知部24は区間βの路を1つずつ順番に選択して路βとする。ステップS23に進み、用紙間検知部24は路αと路βとを比較し、同一か否かを判定する。なお、ステップS23の処理は路が区間に対応する共通の存在であるため、同一の路であるか否かを判定するものである。一方、区間は用紙に対応する唯一の存在である。例えば図7に示した説明図の場合は、区間IIIの路5と区間IVの路5とが路α,βとして選択されたときに、同一の路であると判定される。
【0044】
路αと路βとが同一でなければ、用紙間検知部24はステップS24〜S27の処理を省略する。路αと路βとが同一であれば、ステップS24に進み、用紙間検知部24は区間α内の用紙Aの位置情報を路α内の位置情報に変換し、区間β内の用紙Bの位置情報を路β内の位置情報に変換する。
【0045】
なお、路α内の位置情報には、路α内での用紙Aの状態と路α内での用紙A端の位置とが含まれる。路β内の位置情報には、路β内での用紙Bの状態と路β内での用紙B端の位置とが含まれる。なお、路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態は、例えばなし/跨ぎ/先端側/後端側で表される。ステップS24の処理は、用紙情報DB31に格納されている用紙情報及び区間情報DB32に格納されている区間情報を利用して行われる。
【0046】
図11は、路内での用紙の状態を表したイメージ図である。図11(A)は路内での用紙の状態「なし」を表している。図11(B)は路内での用紙の状態「跨ぎ」を表している。図11(C)は路内での用紙の状態「先端側」を表している。図11(D)は路内での用紙の状態「後端側」を表している。
【0047】
ステップS25に進み、用紙間検知部24は路α内での用紙Aの状態と、路β内での用紙Bの状態とを確認する。もし、路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態のどちらかが「なし」であれば、用紙間検知部24はステップS26〜S27の処理を省略する。路内での用紙の状態「なし」は路内に用紙が存在しないことを表す為である。
【0048】
路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態のどちらも「なし」でなく、路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態のどちらかが「跨ぎ」又は両方とも「先端側」又は両方とも「後端側」であれば、ステップS27に進み、用紙間検知部24は用紙A,Bの重なりジャムを警告する。
【0049】
路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態のどちらも「なし」でなく、路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態のどちらかが「跨ぎ」又は両方とも「先端側」又は両方とも「後端側」であれば、用紙A及びBは重なりあっている為である。
【0050】
路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態の片方が「先端側」であり、もう片方が「後端側」であれば、用紙間検知部24はステップS26に進み、路α内での用紙A端の位置と路β内での用紙B端の位置とを判断し、用紙Aと用紙Bとが重なっているか否かを判定する。
【0051】
路α内での用紙Aの状態及び路β内での用紙Bの状態の片方が「先端側」であり、もう片方が「後端側」であれば、用紙Aと用紙Bとが重なっている場合と重なっていない場合とがあるからである。
【0052】
図12は、路内で用紙AとBとが重なっている場合と重なっていない場合とを表したイメージ図である。図12(A)は、路内で用紙Aと用紙Bとが重なっていない例を表している。図12(B)は路内で用紙Aと用紙Bとが重なっている例を表している。
【0053】
用紙Aと用紙Bとが重なっていなければ、用紙間検知部24はステップS27の処理を省略する。また、用紙Aと用紙Bとが重なっていれば、用紙間検知部24はステップS27に進み、用紙Aと用紙Bとの重なりジャムを警告する。
【0054】
図10に示したフローチャートの処理により、用紙間検知部24は用紙Aと用紙Bとの重なりジャムを検知して警告できる。なお、用紙間検知部24は用紙Aの先頭区間及び後端区間での用紙の長さに、用紙間の近づきを判断する長さを加算することで、ステップS27において、用紙Aと用紙Bとの間の近づきを検知して警告できる。
【0055】
図13は用紙Aの先頭区間及び後端区間での用紙の長さに、用紙間の近づきを判断する長さを加算する処理の一例のイメージ図である。図13のイメージ図は用紙Aに対応付けられた区間IV内での用紙Aの長さ及び区間VI内での用紙Aの長さに、それぞれ用紙間の近づきを判断する長さを加算したものである。
【0056】
用紙Aの先頭区間及び後端区間での用紙の長さに、用紙間の近づきを判断する長さを加算することで、用紙間検知部24は図14(A)に示すように用紙Aに加算された用紙間の近づきを判断する部分と、用紙Bとの重なりを検知できる。言い換えれば、用紙間検知部24は用紙Aと用紙Bとの近づきを検知できる。
【0057】
図14は用紙Aと用紙Bとの近付きの検知と、用紙Aと用紙Bとの重なりジャムの検知とを表した一例のイメージ図である。図14(B)は用紙Aの先頭区間及び後端区間での用紙の長さに用紙間の近づきを判断する長さを加算しないことで、用紙Aと用紙Bとの重なりを検知できる。言い換えれば、用紙間検知部24は用紙Aと用紙Bとの重なりジャムを検知できる。
【0058】
また、用紙情報作成部21は図15に示すように、区間内での用紙の長さに、その区間での「たるみ量」を考慮することもできる。図15は、区間内での用紙の長さに、その区間での「たるみ量」を考慮した例を表すイメージ図である。図15では区間V内の用紙Bの長さを、区間Vの長さ+たるみ量とすることを表している。
【0059】
図16及び図17は分岐切替処理部の処理を表した一例のイメージ図である。分岐切替処理部25は例えばユーザの操作等により路を繋ぐ分岐が切り替えられたとき、分岐を用紙Aが通過中であるのか、用紙Aの近づきを判断する部分が通過中であるのかで、異なる処理を行う。
【0060】
図16は、路を繋ぐ分岐が切り替えられたとき、分岐を用紙が通過中である例を表している。用紙Aが通過中に分岐が切り替えられても用紙Aの進行方向は変わらない。図16のように用紙Aが通過中に分岐が切り替えられても、分岐切替処理部25は用紙情報及び区間情報の再作成が必要でないと判定する。
【0061】
図17(A)は、路を繋ぐ分岐が切り替えられたとき、分岐を、用紙Aの近づきを判断する部分が通過中である例を表している。用紙Aの近づきを判断する部分が通過中に分岐が切り替えられると図17(B)に示すように用紙Aの進行方向は変わる。近付きを判断する路が切り替わる為、分岐切替処理部25は用紙情報及び区間情報の再作成が必要であると判定し、用紙情報作成部21及び区間情報作成部22に用紙情報及び区間情報の再作成を要求する。
【0062】
以上、本実施例の用紙搬送エミュレータ装置50によれば、用紙と区間とを対応付けると共に、区間と路とを対応付けることにより、用紙が共通して存在する可能性のある路を絞り込むことができるため、路内における搬送を解析している全ての用紙の間隔を計算することなく、用紙間の近づき又は用紙同士の重なりを検知できる。
【0063】
本発明は、具体的に開示された実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
1〜5 路
11〜16 部品
21 用紙情報作成部
22 区間情報作成部
23 パラメータ管理部
24 用紙間検知部
25 分岐切替処理部
31 用紙情報DB
32 区間情報DB
33 パラメータDB
34 レイアウト情報DB
50 用紙搬送エミュレータ装置
51 入力装置
52 出力装置
53 ドライブ装置
54 補助記憶装置
55 主記憶装置
56 演算処理装置
57 インターフェース装置
58 記録媒体
59 バス
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2009−87134号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送経路における用紙の搬送を解析する用紙搬送エミュレータ装置であって、
複数の部品を介して繋がれた複数の用紙搬送経路を、前記部品のうち前記用紙の動力源となる部品で区切って仮想的な区間とし、前記用紙と前記用紙が存在している前記区間とを対応付ける第1の対応付け手段と、
前記区間と前記用紙搬送経路とを対応付ける第2の対応付け手段と、
前記複数の用紙搬送経路に存在する前記用紙を順次選択して、前記選択した第1の用紙と対応付けられた第1の区間、及び、前記選択した第2の用紙と対応付けられた第2の区間を、前記第1及び第2の区間と対応付けられた前記用紙搬送経路で比較し、比較した前記用紙搬送経路が同一であれば、前記第1の用紙と前記第2の用紙との間を検知する用紙間検知手段と
を有する用紙搬送エミュレータ装置。
【請求項2】
前記用紙間検知手段は、比較した前記用紙搬送経路が同一であれば、前記第1の用紙の前記第1の区間内の位置情報及び前記第2の用紙の前記第2の区間内の位置情報を、比較した前記用紙搬送経路内の位置情報に変換して、比較した前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の重なりを検知する
請求項1記載の用紙搬送エミュレータ装置。
【請求項3】
前記第1の対応付け手段は、用紙間の近づきを判断する長さを加算した前記用紙と用紙間の近づきを判断する長さを加算した前記用紙が存在している前記区間とを対応付け、
前記用紙間検知手段は、比較した前記用紙搬送経路が同一であれば、前記第1の用紙の前記第1の区間内の位置情報及び前記第2の用紙の前記第2の区間内の位置情報を、比較した前記用紙搬送経路内の位置情報に変換して、比較した前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の近づきを検知する
請求項1記載の用紙搬送エミュレータ装置。
【請求項4】
前記用紙間検知手段は、前記第1の用紙の前記第1の区間内の位置情報及び前記第2の用紙の前記第2の区間内の位置情報を、比較した前記用紙搬送経路内の位置情報に変換するとき、前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の状態を表す情報として、なし/跨ぎ/先端側/後端側の何れかであるかを示す情報を含ませ、
前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の少なくとも一方の状態が「なし」であるとき前記比較した前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の重なり又は近づきが無いと判定し、
前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の少なくとも一方の状態が「跨ぎ」であるか、両方の状態が「先端側」又は「後端側」であるとき前記比較した前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の重なり又は近付きがあると判定し、
前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の片方の状態が「先端側」であり、もう片方の状態が「後端側」であるとき、比較した前記用紙搬送経路内の前記第1の用紙及び前記第2の用紙の位置情報に基づき、前記比較した前記用紙搬送経路内における前記第1の用紙及び前記第2の用紙の重なり又は近付きがあると判定する
請求項2又は3記載の用紙搬送エミュレータ装置。
【請求項5】
前記複数の部品のうち前記用紙搬送経路を繋ぐ分岐が切り替えられたとき、前記分岐を前記用紙に加算された前記用紙間の近づきを判断する長さの部分が通過中であれば、前記第1の対応付け手段に前記用紙と前記用紙が存在している前記区間との対応付けを再度行わせ、前記第2の対応付け手段に前記区間と前記用紙搬送経路との対応付けを再度行わせる分岐切替処理手段を更に有する
請求項1記載の用紙搬送エミュレータ装置。
【請求項6】
用紙搬送経路における用紙の搬送を解析する用紙搬送エミュレータ装置を、
複数の部品を介して繋がれた複数の用紙搬送経路を、前記部品のうち前記用紙の動力源となる部品で区切って仮想的な区間とし、前記用紙と前記用紙が存在している前記区間とを対応付ける第1の対応付け手段と、
前記区間と前記用紙搬送経路とを対応付ける第2の対応付け手段と、
前記複数の用紙搬送経路に存在する前記用紙を順次選択して、前記選択した第1の用紙と対応付けられた第1の区間、及び、前記選択した第2の用紙と対応付けられた第2の区間を、前記第1及び第2の区間と対応付けられた前記用紙搬送経路で比較し、比較した前記用紙搬送経路が同一であれば、前記第1の用紙と前記第2の用紙との間を検知する用紙間検知手段と
して機能させる用紙搬送エミュレータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−188104(P2011−188104A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49360(P2010−49360)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】