説明

用紙搬送装置

【課題】用紙の厚みの違いとは無関係にフィラーの傾動タイミングを一定にして、レジストローラによる用紙の斜行補正を常に的確に行うことができる用紙搬送装置を提供する。
【解決手段】用紙搬送部30にフィラー31と、センサー57と、レジストローラ23を配置する。用紙搬送部30は、対向配置した第1ガイド壁32と第2ガイド壁33とで区画し、斜行補正時の用紙10の撓み変形を許す第1搬送部34と、第1搬送部34に連続してレジストローラ23を指向する第2搬送部35とで構成する。フィラー31は、フィラー腕47が第2搬送部35と交差する待機姿勢と、第2搬送部35から退避する作動姿勢とに傾動できるよう支持し、ばね52で待機付勢する。待機姿勢に保持されたフィラー腕47において、第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32の延長線と交差する部分に、用紙10の搬送始端縁を受止める紙受部55を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コピー機、スキャナー、ファクシミリなどの画像形成装置に適用される用紙搬送装置に関する。用紙搬送装置は、用紙の斜行を補正するレジストローラと、用紙の搬送状態を検知するフィラーを備えている。なお、本発明における用紙とは記録紙と原稿を含む概念である。
【背景技術】
【0002】
この種の用紙搬送装置を備えている画像形成装置は、例えば特許文献1に公知である。そこでは、レジストローラより上流側の搬送部に揺動可能なレジストセンサ(フィラー)が設けてあり、給紙カセットから搬送されてきた記録紙でレジストセンサを傾動させることにより、記録紙が搬送されてきたことを検知している。記録紙は、レジストローラで斜行補正されたのち、画像記録ユニットへ向かって搬送され、画像記録ユニットでトナー像が転写され、さらに定着ユニットで定着処理される。
【0003】
本発明の用紙搬送装置では、レジストローラより上流側の用紙搬送部を、第1ガイド壁と第2ガイド壁の対向間隔が大きな第1搬送部と、両ガイド壁の対向間隔が小さな第2搬送部とで構成するが、この種の搬送部構造は特許文献2に公知である。そこでは、プリレジストローラ装置とレジストローラ装置との間に、それぞれ逆L字状に湾曲する上ガイド板と下ガイド板を配置して、レジストローラへ向かって先すぼまり状の記録紙搬送部を形成している。上ガイド板と下ガイド板のプリレジストローラ装置側には、斜行補正時の記録紙の撓み変形を許す搬送部が設けられており、その入口寄りに記録紙の移動方向を矯正する一対の絞り部がくびれ状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−19050号公報(段落番号0014、図2)
【特許文献2】特開平06−271139号公報(段落番号0015、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の用紙搬送装置によれば、レジストセンサ(フィラー)が傾動することで記録紙が搬送されてきたことを検知でき、この検知信号によってレジストローラの駆動タイミングを決定できる。しかし、レジストローラより上流側の搬送部における記録紙の搬送軌跡は必ずしも一様ではなく、そのためレジストセンサが傾動するタイミングにばらつきを生じやすい。例えば、記録紙が厚紙である場合には、記録紙がレジストセンサの揺動基端寄りに接当するのに対し、記録紙が薄紙である場合には、記録紙がレジストセンサの揺動先端寄りに接当するため、レジストセンサの傾動タイミングにばらつきが生じてしまう。また、こうしたレジストセンサの傾動タイミングのばらつきに伴って、レジストローラの駆動タイミングに差が生じてしまい、記録紙の斜行を的確に補正できないことがある。
【0006】
上記のようなレジストセンサの傾動タイミングのずれを解消するために、本発明者はレジストローラより上流側の搬送部の下側を区画する第2ガイド壁に、記録紙を案内するガイドリブを付加して、紙厚が異なる記録紙の搬送軌跡を揃えるようにした。この原稿搬送構造によれば、レジストセンサの傾動タイミングを略一定にして、記録紙の斜行補正を概ね確実に行うことができるものの、ガイドリブを付加する分だけ用紙搬送構造の構成部品点数が増え、コストが嵩む点に問題がある。
【0007】
本発明の目的は、用紙の厚みの違いとは無関係にフィラーの傾動タイミングを一定にして、レジストローラによる用紙の斜行補正を常に的確に行うことができる用紙搬送装置を提供することにある。
本発明の目的は、部品点数の増加を伴うこともなくフィラーの傾動タイミングを一定にすることができ、従って、レジストローラによる用紙の斜行補正を行う用紙搬送装置を低コスト化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る用紙搬送装置は、用紙搬送部30に、用紙10の搬送状態を検知するフィラー31と、フィラー31の作動状態を検知して検知信号を出力するセンサー57と、用紙10の斜行を補正するレジストローラ23とを配置する。図1に示すように、用紙搬送部30は、対向配置した第1ガイド壁32と第2ガイド壁33とで区画する。用紙搬送部30は、斜行補正時の用紙10の撓み変形を許す第1搬送部34と、第1搬送部34の搬送方向に対して屈曲する状態でレジストローラ23へ向かって指向される第2搬送部35とで構成する。フィラー31は、フィラー腕47が第2搬送部35と交差する待機姿勢と、フィラー腕47が用紙10で傾動操作されて第2搬送部35から退避する作動姿勢とに傾動できるよう支持されて、ばね52で待機姿勢に付勢する。待機姿勢に保持されたフィラー腕47において、第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32の延長線と交差する部分に、用紙10の搬送始端縁を受止める紙受部55を形成する。第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32で用紙10を紙受部55に向かって搬送案内して、フィラー31を作動姿勢に切換える。
【0009】
第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32の延長線と、待機姿勢に保持されたフィラー腕47とは鋭角なる状態で交差している。紙受部55を先の交差部分に面して設ける。
【0010】
用紙搬送部30に臨む第1ガイド壁32は、第1搬送部34を区画する第1前段壁37と、第2搬送部35を区画する第1後段壁38とで構成する。両段壁37・38は屈折する状態で連続している。用紙搬送部30に臨む第2ガイド壁33は、用紙10の搬送方向と略平行に配置されて第1搬送部34を区画する第2前段壁41と、第2搬送部35を区画する第2後段壁42とで構成する。両段壁41・42は屈折する状態で連続している。第1前段壁37と第1後段壁38との屈折部39を、第2前段壁41と第2後段壁42との屈折部43より上流側に配置して、第1後段壁38の一部を第1搬送部34に臨ませる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、斜行補正時の用紙10の撓み変形を許す第1搬送部34と、第1搬送部34の搬送方向に対して屈曲する状態でレジストローラ23へ向かって指向される第2搬送部35とで用紙搬送部30を構成した。また、第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32の延長線とフィラー腕47との交差部分に紙受部55を設けて、第1搬送部34に搬送された用紙10を、第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32で、紙受部55に向かって強制的に搬送案内できるようにした。このように、本発明に係る用紙搬送装置によれば、搬送される全ての用紙10を第1ガイド壁32で案内して、用紙10の搬送始端縁を常にフィラー腕47の紙受部55に接当させることができる。従って、用紙10の厚みが種々に異なる場合であってもフィラー31の傾動タイミングを一定にして、レジストローラ23による用紙10の斜行補正を的確に行うことができる。
【0012】
第2搬送部35に臨む第1ガイド壁32の延長線とフィラー腕47との鋭角の交差部分に面して紙受部55が設けられていると、用紙10の搬送始端が紙受部55から離れた位置でフィラー腕47に接当する場合であっても、搬送始端の接当位置を適正な状態に矯正できる。これは、紙受部55から離れた位置でフィラー腕47に接当した用紙10の搬送始端を、フィラー腕47に沿って腕先端側へスライド案内して、いずれ紙受部55に接当できるからである。また、第2搬送部35に臨むフィラー腕47のうち、モーメントアームが最も大きくなる紙受部55に用紙10を接当させるので、より小さな力でフィラー31を作動姿勢に移行することができる。用紙10がフィラー腕47から受ける負荷を軽減できる利点もある。
【0013】
また、本発明によれば、第1ガイド壁32を構成する第1前段壁37と第1後段壁38との屈折部39を、第2ガイド壁33を構成する第2前段壁41と第2後段壁42との屈折部43より上流側に配置したので、第1後段壁38の一部を第1搬送部34に臨ませることができる。従って、第1搬送部34における用紙10の搬送姿勢に少々のばらつきがあったとしても、その搬送始端縁を第1後段壁38で確実に受止めて、第2搬送部35を介してレジストローラ23へ向かって的確に案内することができる。さらに、第2搬送部35へ搬送された用紙10の全てを第1後段壁38で案内して、その搬送始端縁をフィラー腕47の紙受部55に的確に接当させて、フィラー31の傾動タイミングを一定にできる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る用紙搬送装置の縦断正面図である。
【図2】画像形成装置の概略正面図である。
【図3】ADFの概略構造を示す縦断正面図である。
【図4】本発明に係る用紙搬送装置の斜行補正動作を示す縦断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(実施例) 図1ないし図4は本発明に係る用紙搬送装置を、コピー機能とファクシミリ機能とを備えた複合機に適用した実施例を示す。なお、本発明における前後、左右、上下とは、図2に示す交差矢印と、各矢印の近傍に表記した前後、左右、上下の表示に従う。
【0016】
図2において複合機は、記録部1と、記録部1の上側に配置される画像読取装置2とを備えている。記録部1には、画像記録ユニット3や定着ユニット4などが設けられている。画像読取装置2の上面には、原稿読取面を開閉するプラテンカバー5が設けられ、その上部にADF(自動原稿搬送部)6が組み込んである。画像読取装置2の前面には、操作パネル7が設けられている。記録部1の下方には給紙カセット8が配置されている。画像記録ユニット3や定着ユニット4を経由して画像がプリントされた記録紙は、画像読取装置2の下方の排紙部9へ排出される。プラテンカバー5は、その後端に設けたヒンジ(図示省略)を中心にして上下に揺動して、原稿載置台の上面に被さる状態と、原稿載置台の上面を開放する状態とに姿勢を変更できる。
【0017】
図3において、符号10は原稿(用紙)である。原稿載置台の上面はプラテンガラス11で覆われている。原稿載置台の内部には、原稿10を読み取る読取ユニットと、読取ユニットを支持するキャリッジ12と、キャリッジ12を図3に向かって右方(副走査方向)へ移動させて原稿を走査する移動機構などが配置されている。主走査方向は、前後方向に長い光源13と平行な方向である。読取ユニットは、キセノンランプ(光源)13と、レンズアレイ14と、イメージセンサー基板15などで構成される。読取ユニットをコンタクトガラス16の真下に位置させておくことにより、コンタクトガラス16の上面に沿って搬送される原稿10の画像を読み込むことができる。また、プラテンガラス11の上面に載置された固定原稿を読み込む場合には、読取ユニットをプラテンガラス11の側縁の下方に位置させた状態をスタート位置にして、キャリッジ12で読取ユニットを副走査方向へ移動させて原稿10を走査する。
【0018】
ADF6には、上側の原稿トレイ18と下側の排紙トレイ19との間に、横臥U字状の搬送経路20が配置されている。搬送経路20には、給紙口に臨んで配置されるピックアップローラ21および給紙ローラ22と、原稿10の斜行を補正するレジストローラ23と、2組の送給ローラ対24と、排紙口に臨んで配置される排紙ローラ対25が設けられている。給紙ローラ22の下側には、ばねで押し上げ付勢されて原稿10を給紙ローラ22に押し付けるパッド27が配置されている。ピックアップローラ21および給紙ローラ22とパッド27との協同作用によって、原稿トレイ18から一枚ずつ原稿10を取り出して搬送経路20へ送り出すことができる。レジストローラ23は、下側の駆動ローラと上側の従動ローラとで構成されている。
【0019】
搬送経路20に沿って搬送される原稿10の搬送始端を検知するために、給紙ローラ22とレジストローラ23との間の用紙搬送部30にフィラー31が配置されている。図1に示すように用紙搬送部30は、対向配置した上側の第1ガイド壁32と、下側の第2ガイド壁33とで区画されている。具体的には、楔状に形成される上流側の第1搬送部34と、第1搬送部34の搬送方向に対して屈曲する状態でレジストローラ23へ向かって指向される下流側の第2搬送部35とで、用紙搬送部30は構成されている。第1搬送部34における、第1ガイド壁32と第2ガイド壁33との対向間隔は、第2搬送部35における、第1ガイド壁32と第2ガイド壁33との対向間隔より大きく設定されている。これは、レジストローラ23で斜行補正を行うときに、原稿10の撓み変形を許して紙詰まり状態に陥るのを避けるためである
【0020】
用紙搬送部30に臨む第1ガイド壁32は、第1搬送部34を区画する第1前段壁37と、第2搬送部35を区画する第1後段壁38を備えている。両段壁37・38は、それぞれレジストローラ23へ向かって下り傾斜する状態で、山形に屈折するように連続している。第1前段壁37が緩やかに傾斜しているのに対し、第1後段壁38は第1前段壁37より大きな角度で傾斜している。両段壁37・38の屈折部を符号39で示している。
【0021】
同様に、用紙搬送部30に臨む第2ガイド壁33は、給紙ローラ22による原稿10の搬送方向と略平行に配置されて、第1搬送部34を区画する水平の第2前段壁41と、第2搬送部35を区画する第2後段壁42とを備えている。両段壁41・42の屈折部を符号43で示している。先に説明した屈折部39は、第2前段壁41と第2後段壁42との屈折部43より上流側に配置してあり、これに伴い第1後段壁38の一部が第1搬送部34に臨んでいる。このように、第1後段壁38の上部側を、第1搬送部34に被さるように配置すると、第1搬送部34における原稿10の搬送姿勢に少々のばらつきがあったとしても、その搬送始端縁を第1後段壁38で確実に受止めて、レジストローラ23へ向かって案内することができる。
【0022】
フィラー31は、フィラー軸45が前後に形成してあるボス46と、ボス46の周面から第2搬送部35を横断する状態で連出されるフィラー腕47と、ボス46の周面からフィラー腕47とは逆向きに連出されるセンサー腕48を一体に備えている。フィラー軸45は、第2前段壁41の下方(外方)に設けたベース壁50のブラケット51で軸支されている。これによりフィラー31は、フィラー腕47が第2搬送部35と交差する待機姿勢と、フィラー腕47が第2搬送部35の下側へ退避する作動姿勢との間を傾動できる。フィラー31は、フィラー軸45に外嵌したキックばね(ばね)52で、待機姿勢を保持する向きに付勢されている。
【0023】
フィラー腕47の上下傾動を許すために、第2後段壁42のフィラー腕47との交差部分に逃げ溝53を形成し、さらに第1後段壁38のフィラー腕47との交差部分に腕収容部54を形成している。フィラー腕47に対する原稿10の接当位置を常に一定化するために、待機姿勢におけるフィラー腕47は、腕先端へ向かって僅かに上り傾斜する状態で第2後段壁42で受止められており、これにより、第1後段壁38の下面の延長線とフィラー腕47の上面とが鋭角(40度)に交差している。この交差部分に面するフィラー腕47の上面に原稿10の搬送始端縁を受止める紙受部55が設けられている。
【0024】
フィラー31の作動状態を検知するために、ベース壁50の前後に光センサー(センサー)57が設けられている。光センサー57は、前後に隙間を介して対向配置された発光部58と受光部59とで構成される。これら発光部58と受光部59の間をセンサー腕48が上下に傾動して検知光路を開放する状態と、検知光路を遮断する状態とに切換える。図1に示すように、フィラー31が待機姿勢にある状態では、センサー腕48は検知光路を開放しており、図4に示すように、フィラー31が作動姿勢に切換わると、センサー腕48は検知光路を遮断する。このときの受光部59の出力信号をトリガーにして、図示していない制御部がレジストローラ23の駆動タイミングを決定する。
【0025】
次に、フィラー31による原稿検知動作とレジストローラ23による斜行補正動作を説明する。原稿10が給紙ローラ22で用紙搬送部30へ送出されると、図1に示すように原稿10は概ね水平に搬送されて第1搬送部34を通過し、その搬送始端縁が第1後段壁38で受止められたのち変向されて第2搬送部35へと案内される。このとき、給紙ローラ22の搬送力が作用している原稿10の搬送始端縁は、第1後段壁38に接触した状態のままで第2搬送部35を移動し、第1後段壁38の延長線と交差する紙受部55に接当する。以後、原稿10から搬送力を受けたフィラー腕47は、キックばね52の付勢力に抗して反時計回転方向へ傾動し、同時にセンサー腕48が上向きに傾動して、図4に示すように光センサー57の検知光路を遮断する。このとき、原稿10の搬送始端縁は、フィラー腕47の下向き傾動に連動して、紙受部55からフィラー腕47の先端へ向かってスライドする。
【0026】
上記の状態では、原稿10の搬送始端縁がレジストローラ23のニップ部に受止められるので、原稿10が斜行していた場合には、斜行姿勢が補正されて適正な搬送姿勢に矯正される。レジストローラ23のニップ部に受止められた原稿10の中途部は、図4に示すように、第1搬送部34内で上向きに撓み変形して搬送力を逃がす。光センサー57の検知光路が遮断されたのち、一定時間(0.8ミリ秒)が経過すると、レジストローラ23が駆動されて、原稿10を送給ローラ対24へ向かって搬送する。以後、原稿10はコンタクトガラス16の上面側を通過する間に、読取ユニットによって画像が読込まれたのち、画像記録ユニット3へと読込み信号が送られ、トナー画像の形成と定着ユニット4による定着処理とが行なわれる。画像の読込みが終了した原稿10は、排紙ローラ対25で排紙トレイ19へ排出される。原稿10が通過したのちのフィラー31は、キックばね52の付勢力で待機姿勢に戻されて、その状態を保持する。
【0027】
以上のように構成した用紙搬送装置によれば、給紙ローラ22で搬送された原稿10を第1後段壁38で受止めて、第2搬送部35へと変向し案内するので、原稿10の厚みの違いとは無関係に、原稿10の搬送始端を紙受部55に的確に接当させることができる。換言すると、搬送される全ての原稿10を第1後段壁38で案内して、搬送始端縁を常にフィラー腕47の紙受部55に接当させることができる。従って、原稿10の厚みが種々に異なる場合であってもフィラー31の傾動タイミングを一定にして、レジストローラ23による原稿10の斜行補正を的確に行うことができる。
【0028】
また、第1後段壁38の延長線と、待機姿勢に保持されたフィラー腕47との鋭角の交差部分に紙受部55を設けるので、原稿10の搬送始端が紙受部55から離れた位置でフィラー腕47に接当する場合であっても、搬送始端の接当位置を適正な状態に矯正することができる。例えば、フィラー腕47と第2後段壁42の延長線とが交差する部分に原稿10の搬送始端が接当したとしても、搬送始端をフィラー腕47に沿って腕先端側へスライド案内して、紙受部55に接当させることができるからである。第1前段壁37および第1後段壁38と、第2前段壁41および第2後段壁42との構造を好適化して、フィラー31の傾動タイミングを一定にできるので、用紙搬送装置の構造を簡素化して低コスト化できる。
【0029】
上記の実施例では、用紙搬送装置をADF6に適用した実施例について説明したが、本発明に係る用紙搬送装置は、画像記録部において記録紙の斜行補正を行う場合にも適用できる。また、用紙10の搬送方向は上下方向であってもよく、上り傾斜し、あるいは下り傾斜する斜め方向であってもよい。また、上記の実施例では、第1前段壁37と第1後段壁38、および第2前段壁41と第2後段壁42をそれぞれ山形に屈折する状態で連続させたがその必要はなく、隣接する各段壁は、円弧壁あるいは湾曲壁を介して滑らかに連続させてあってもよい。要は、第1搬送部34に搬送された用紙10の搬送始端縁を、第1後段壁38で変向して第2搬送部35へ案内できる構造であればよい。フィラー腕47と第1後段壁38の延長線との交差角度は鋭角であることが好ましく、さらに好ましくは40度前後とすることが好ましい。
【符号の説明】
【0030】
22 給紙ローラ
23 レジストローラ
30 用紙搬送部
31 フィラー
32 第1ガイド壁
33 第2ガイド壁
34 第1搬送部
35 第2搬送部
37 第1前段壁
38 第1後段壁
39 第1前段壁と第1後段壁の屈折部
41 第2前段壁
42 第2後段壁
43 第2前段壁と第2後段壁の屈折部
47 フィラー腕
48 センサー腕
55 紙受部
57 センサー(光センサー)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙搬送部に、用紙の搬送状態を検知するフィラーと、フィラーの作動状態を検知して検知信号を出力するセンサーと、用紙の斜行を補正するレジストローラとが配置してある用紙搬送装置であって、
前記用紙搬送部は、対向配置した第1ガイド壁と第2ガイド壁とで区画されて、斜行補正時の用紙の撓み変形を許す第1搬送部と、前記第1搬送部の搬送方向に対して屈曲する状態で前記レジストローラへ向かって指向される第2搬送部とで構成されており、
前記フィラーは、フィラー腕が前記第2搬送部と交差する待機姿勢と、前記フィラー腕が用紙で傾動操作されて前記第2搬送部から退避する作動姿勢とに傾動できるよう支持されて、ばねで待機姿勢に付勢されており、
待機姿勢に保持された前記フィラー腕において、前記第2搬送部に臨む前記第1ガイド壁の延長線と交差する部分に、用紙の搬送始端縁を受止める紙受部が形成されており、
前記第2搬送部に臨む前記第1ガイド壁で用紙を前記紙受部へ向かって搬送案内して、前記フィラーを作動姿勢に切換えることを特徴とする用紙搬送装置。
【請求項2】
前記第2搬送部に臨む前記第1ガイド壁の延長線と、待機姿勢に保持された前記フィラー腕とが鋭角なる状態で交差しており、
前記紙受部が前記交差部分に面して設けられている請求項1に記載の用紙搬送装置。
【請求項3】
前記用紙搬送部に臨む第1ガイド壁が、前記第1搬送部を区画する第1前段壁と、前記第2搬送部を区画する第1後段壁とで構成されて、前記両段壁が屈折する状態で連続されており、
前記用紙搬送部に臨む第2ガイド壁が、用紙の搬送方向と略平行に配置されて前記第1搬送部を区画する第2前段壁と、前記第2搬送部を区画する第2後段壁とで構成されて、前記両段壁が屈折する状態で連続されており、
前記第1前段壁と前記第1後段壁との屈折部が、前記第2前段壁と前記第2後段壁との屈折部より上流側に配置されて、前記第1後段壁の一部が前記第1搬送部に臨ませてある請求項1に記載の用紙搬送装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−43758(P2013−43758A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−183603(P2011−183603)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】