説明

画像の変更箇所抽出装置、画像の変更箇所表示装置及びプログラム

【課題】2つの画像間の変更箇所を抽出するにあたり、かかる画像がラスタイメージである場合にも両者間の変更箇所を抽出する。
【解決手段】本発明に係る画像の変更箇所抽出装置1は、第1の画像と第2の画像に含まれる個別の図形である個別図形を取得する個別図形取得手段3と、前記個別図形間の幾何学的関係に基づき、前記個別図形同士を関連付け、関連付けられた前記個別図形を含む統合図形を取得する統合図形取得手段5と、前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する対応関係取得手段24と、前記対応関係に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像間の変更箇所を抽出する変更箇所抽出手段25と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の変更箇所抽出装置、画像の変更箇所表示装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、相違個所チェック対象となる2つの図面のベクトルデータを各々比較し、その偏差分が誤差許容範囲を越えるときに該部分のベクトルを色分けして表示する図面情報のチェック方式が記載されている。
【0003】
特許文献2には、比較対象である新版図面データと旧版図面データがベクタ情報で格納されている場合に、両者をビットマップイメージとして展開し、それらの差異を抽出し表示する図面表示装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−89190号公報
【特許文献2】特開平10−312407号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は、2つの画像間の変更箇所を抽出するにあたり、かかる画像がラスタイメージである場合にも両者間の変更箇所を抽出することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の画像の変更箇所抽出装置は、第1の画像と第2の画像に含まれる個別の図形である個別図形を取得する個別図形取得手段と、前記個別図形間の幾何学的関係に基づき、前記個別図形同士を関連付け、関連付けられた前記個別図形を含む統合図形を取得する統合図形取得手段と、前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する対応関係取得手段と、前記対応関係に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像間の変更箇所を抽出する変更箇所抽出手段と、を有する。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項1記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記個別図形の種別を判定する種別判定手段を有し、前記統合図形取得手段は、前記個別図形の種別に応じた基準により前記個別図形同士を関連付ける。
【0008】
また、本発明の請求項3に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項2記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記統合図形取得手段は、前記個別図形の種別が枠である場合に、少なくとも当該個別図形に囲まれる領域のうち最大のものを除き、当該個別図形に囲まれる領域中の前記個別図形と当該個別図形を関連付ける。
【0009】
また、本発明の請求項4に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項1乃至3のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記第1の画像と前記第2の画像の差分を抽出する差分抽出手段を有し、前記統合図形取得手段は、前記差分抽出手段により抽出された差分に係る前記個別図形について、他の前記個別図形と関連付ける。
【0010】
また、本発明の請求項5に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項1乃至4のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記統合図形の特徴情報を取得する特徴情報取得手段を有し、前記対応関係取得手段は、前記特徴情報に基づいて前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する。
【0011】
また、本発明の請求項6に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項1乃至5のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記対応関係取得手段は、パターンマッチングにより、前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する。
【0012】
また、本発明の請求項7に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項1乃至6のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記対応関係取得手段は、一の前記統合図形に対し、多くとも1つの他の前記統合図形を対応付ける。
【0013】
また、本発明の請求項8に記載の画像の変更箇所抽出装置は、請求項4に記載の画像の変更箇所抽出装置であって、前記統合図形取得手段は、前記差分に係らない前記個別図形を、前記差分に係る個別図形と直接又は間接に関連付ける。
【0014】
また、本発明の請求項9に記載の画像の変更箇所表示装置は、請求項1乃至8のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置と、前記変更箇所を表示する変更箇所表示手段と、を有する。
【0015】
また、本発明の請求項10に記載のプログラムは、コンピュータを、第1の画像と第2の画像に含まれる個別の図形である個別図形を取得する個別図形取得手段と、前記個別図形間の幾何学的関係に基づき、前記個別図形同士を関連付け、関連付けられた前記個別図形を含む統合図形を取得する統合図形取得手段と、前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する対応関係取得手段と、前記対応関係に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像間の変更箇所を抽出する変更箇所抽出手段と、を有する画像の変更箇所抽出装置として動作させる。
【発明の効果】
【0016】
上記請求項1に記載の画像の変更箇所抽出装置によれば、2つの画像間の変更箇所を抽出するにあたり、かかる画像がラスタイメージである場合にも両者間の変更箇所を抽出することができる。
【0017】
また、上記請求項2に記載の画像の変更箇所抽出装置によれば、個別図形の種別によらない基準により統合図形を所得するものに比して、正確に統合図形を所得できる。
【0018】
また、上記請求項3に記載の画像の変更箇所抽出装置によれば、枠と枠に付随する個別図形からなる統合図形を取得できる。
【0019】
また、上記請求項4に記載の画像の変更箇所抽出装置によれば、効率よく変更箇所を抽出できる。
【0020】
また、上記請求項5に記載の画像の変更箇所抽出装置によれば、特徴情報に基づいて前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得できる。
【0021】
また、上記請求項6に記載の画像の変更箇所抽出装置によれば、パターンマッチングにより前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得できる。
【0022】
また、上記請求項7に記載の画像の変更箇所表示装置によれば、2つの画像間で移動した統合図形の対応関係を誤って変更箇所として抽出することを防止できる。
【0023】
また、上記請求項8に記載の画像の変更箇所表示装置によれば、2つの画像間で移動した統合図形を移動しないものとして誤って変更箇所として抽出することを防止できる。
【0024】
また、上記請求項9に記載の画像の変更箇所表示装置によれば、2つの画像間の変更箇所を表示するにあたり、かかる画像がラスタイメージである場合にも両者間の変更箇所を正しく表示することができる。
【0025】
また、上記請求項10に記載のプログラムによれば、コンピュータを、2つの画像間の変更箇所を抽出するにあたり、かかる画像がラスタイメージである場合にも両者間の変更箇所を正しく抽出する画像の変更箇所抽出装置として動作させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置の機能ブロック図である。
【図2A】対象とする個別図形が点である場合の関連付けの手法を説明する図である。
【図2B】点6aの周囲の画像にハフ変換を施して得られるグラフである。
【図2C】対象とする個別図形が線分である場合の関連付けの手法を説明する図である。
【図2D】対象とする個別図形が円弧である場合の関連付けの手法を説明する図である。
【図2E】対象とする個別図形が文字である場合の関連付けの手法を説明する図である。
【図2F】対象とする個別図形が枠である場合の関連付けの手法を説明する図である。
【図2G】対象とする個別図形がその他である場合の関連付けの手法を説明する図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置の機能ブロック図である。
【図4A】一例としての第1の画像を示す図である。
【図4B】一例としての第2の画像を示す図である。
【図4C】変更箇所の表示の例である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置の機能ブロック図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置の機能ブロック図である。
【図7A】対応関係取得部による対応付けの例を示す図である。
【図7B】対応関係取得部が、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるようになされている場合の対応関係取得部による対応付けの例を示す図である。
【図8】対応関係取得部が、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるアルゴリズムの例を示すフロー図である。
【図9】第1の画像及び第2の画像の例を示す図である。
【図10】差分画像の例を示す図である。
【図11】差分に係る個別図形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置1の機能ブロック図である。
【0028】
画像の変更箇所抽出装置1は、物理的には汎用の情報処理装置である、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、入出力インタフェースを有する一般的なコンピュータを用いて実現される。そして、かかるコンピュータ上で、コンピュータを画像の変更箇所抽出装置1として動作させるためのコンピュータプログラムを実行することにより、画像の変更箇所抽出装置1は仮想的に実現される。コンピュータを画像の変更箇所抽出装置1として動作させるためのコンピュータプログラムは、たとえばDVD−ROM(DVD−Read Only Memory)やCD−ROM(Compact Disk Read Only Memory)等の任意の情報記録媒体に記録して提供しても、インターネットに代表される公衆回線等の電気通信回線を介して、コンピュータ読み取り可能な電気信号として提供してもよい。もちろん、画像の変更箇所抽出装置1を実現するにあたり用いる情報処理装置は一般的なコンピュータに限られず、マイクロコントローラにより実現しても、またDSP(デジタルシグナルプロセッサ)等を用いて専用の装置を製作してもよい。また、画像の変更箇所抽出装置1は、単独で動作可能な機器として構成しても、コピー機やファクシミリ等の事務機器に実装あるいは追加されるモジュールとして構成してもよい。
【0029】
なお、図示された画像の変更箇所抽出装置1の機能ブロックは、コンピュータプログラムにより実現される画像の変更箇所抽出装置1を、その機能に着目して説明の便宜上示したものであり、必ずしも各機能ブロックが物理的に存在する必要はない。
【0030】
画像受付手段として機能する画像受付部2は、変更箇所を抽出する第1の画像と、第2の画像を外部より受け付けるインタフェースである。第1の画像と、第2の画像は、画像受付部2により電子データとして受け付けられる。この画像受付部2は、画像の情報を受け付けるものであればどのようなものであってもよく、例えば、コンピュータ上で実行されているプロセス間で情報の入出力を行う、いわゆるソケットであっても、LAN(Local Area Network)やインターネット等の公衆回線を含むWAN(Wide Area Network)等に接続された電気通信回線、任意の情報記録媒体読取装置等であってもよいし、紙あるいはマイクロフィルム等の媒体上の図面情報を電子化して読み取るスキャナなどの装置であってもよく、これらの複数を備えていてもよい。また、受け付けられる電子データの形式はどのようなものであってもよく、ベクトルデータであっても、ラスタデータであってもよい。電子データの形式がベクトルデータである場合には、以降の処理の都合により、ラスタデータに展開してもよいが、必須のものではない。
【0031】
なお、本明細書でいう変更箇所とは、2つの画像に含まれる図形が、2つの画像間において変更されたと観察する者が認識する差異を指している。すなわち、2つの画像間において対応する図形の位置の差異は、単なるレイアウトの変更であり、図形の差異としては認識されないため、本明細書でいう変更箇所にはあたらない。図形の追加、削除や大きさの変化等は図形自体の差異として認識されるため変更箇所に該当する。
【0032】
画像受付部2により受け付けられた第1の画像と第2の画像は、個別図形取得手段として機能する個別図形取得部3に受け渡される。個別図形取得手段は、第1の画像及び第2の画像に含まれる個別図形を取得する手段である。個別図形とは、画像中に含まれる図形のうち、個々に分離されて認識される図形の単位を意味している。具体的には、画像の背景色により他の図形と隔てられ、互いに連結している点の集合は個別図形である。このような個別図形を認識する手法は特に限定されず、どのようなものを用いてもよいが、ここでは、個別図形取得部3は、いわゆるラベリングの手法により個々の個別図形を認識し取得する。
【0033】
個別図形取得部3により取得された個別図形は、種別判定手段として機能する種別判定部4に受け渡される。種別判定手段は、個別図形の種別を判定する手段である。種別判定部4は各個別図形が予め定められた特徴を満たすか否かを調べることにより、各個別図形の種別を判定する。個別図形の種別としてどのようなものを採用するかは特に限定されないが、ここでは、点、線分、円弧、文字(記号を含む)、枠、その他、等が挙げられる。これらの判定方法は、一例として、例えば次のようにして良い。点は、ある個別図形の外接矩形のサイズが予め定められた基準値以下である場合に判定される。線分は、ある個別図形の外接矩形の短辺の幅が予め定められた基準値以下であり、かつ、そのアスペクト比(長辺と短辺の長さの比)が予め定められた基準値以上である場合に判定される。円弧の判定は公知のいかなる方法によってもよいが、一例として、一般化ハフ変換を用いたパターン認識により判定される。文字は、ある個別図形の縦幅と横幅(すなわち、各辺が垂直または水平方向である外接矩形の垂直辺と水平辺の長さ)の大きさが予め定められた基準値以下であり、かつ、そのアスペクト比が予め定められた範囲に含まれる場合に判定される。枠は、個別図形の外形が予め定められた基準以上の大きさである場合、例えば、外形の縦横の幅がそれぞれ画像自体の縦横の幅の80%以上である場合などに判定される。その他は、ある個別図形が以上のいずれの条件にも合致しない場合である。なお、以上説明した判定方法は例示であり、これらに限定されない。また、これ以外の種別を採用してもよく、その場合には、種別に応じた判定方法を用いればよい。例えば、楕円、矩形や正多角形の断片であるような個別図形に対し、上述の円弧同様に一般化ハフ変換を用いて判定してよい。また、文字の判定は、ここでは、一般的に、画像に含まれる文字は可読性や画像の作成基準等の都合上、文字の大きさ(ポイント数)が定められていることが多いことに基づき上述の基準としたが、これ以外にも、例えば、OCR(Optical Character Recognition)等に用いられる文字認識をおこない、文字として認識された個別図形の種別を文字として判定してもよい。
【0034】
個別図形取得部3により取得された個別図形および種別判定部4により判定された各個別図形の種別は、統合図形取得手段として機能する統合図形取得部5に受け渡される。統合図形取得手段は、個別図形同士を関連付け、関連付けられた個別図形を含む統合図形を取得する手段である。より具体的に説明すると、互いに独立した個別図形であっても、それらの個別図形同士がある関係を持って配置されていることにより、複数の個別図形が全体としてなんらかの意味を持つ場合がある。そのような場合に、それらの個別図形を統合して一の統合図形を得るのである。例えば、破線は、個別図形としては、個々の短い線分が並んで配置されているものであるが、それらの個々の短い線分である個別図形を関連付け、統合して一の統合図形である破線を得ることになる。各個別図形が他の個別図形と関連付けられるかどうかは、その幾何学的関係に基づいて判断される。
【0035】
以下に、図2A乃至図2Fを参照して、個別図形の種別毎の関連付けの手法の例を説明する。
【0036】
図2Aは、対象とする個別図形が点6aである場合の関連付けの手法を説明する図である。図中の点6a乃至6dは全て種別が点であると判定された個別図形である。ここで、点6aに注目する。なお、どの個別図形に注目するかは任意であってよく、点6aに注目するのは単なる例示である。統合図形取得部5(図1参照)は、かかる点6aを中心として予め定められた探索範囲7、例えば、ある半径を有する円形の領域内に少なくとも一部が含まれる他の個別図形を探す。この探索範囲7は、図中破線に囲まれた領域として示されている。そうすると、点6bが発見される。統合図形取得部5(図1参照)は、ここで示したように、さらに種別が点である個別図形が発見されると、これらの点6a及び6bは、点線を構成する一部である可能性が高いことから、これらの点を結ぶ直線に沿って延びる領域を新たな探索範囲8として、さらに他の個別図形を探索する。この探索範囲8は、図中点線に囲まれた領域として示されている。この探索範囲8により、新たな点6cが発見され、以降同様に繰り返すことにより、点線を構成する個別図形である点6a乃至6dが全て発見される。これらの個別図形は統合図形取得部5(図1参照)により関連付けられ、関連付けられた点6a乃至6dからなる点線として、一の統合図形が取得される。
【0037】
なお、点線を統合図形として取得するにあたっては、他の方法を用いてもよい。ここでは、その一例として、ハフ変換を用いる方法を説明する。図2Aで示した例を用いて説明すると、まず、注目した個別図形が点(ここでは点6a)である場合には、少なくともその点の周囲の画像にハフ変換を施す。計算量を減らすという点で、注目している点の周囲、例えばその点を中心とする予め定められた半径の円内等の領域をハフ変換の対象とすることが好ましいが、画像全体にハフ変換を施しても差し支えない。図2Bは、点6aの周囲の画像にハフ変換を施して得られるグラフである。任意の点は、ハフ変換を施すことにより、ハフ空間中の正弦曲線としてあらわされる。ここでは、正弦曲線9aが点6aに対応している。なお、グラフの縦軸は点をとおる直線の任意の原点からの距離r、横軸は点をとおる直線の角度θを示している。同様に点6b乃至6cはそれぞれ正弦曲線9b乃至9dとしてプロットされ、点6a乃至6dが一直線上に並んでいる場合には、これらの正弦曲線9a乃至9bは点10において交わる。従って、点6aにハフ変換を施して得られたハフ空間中の正弦曲線9a上に投票数の多い(すなわち、他の正弦曲線が数多く通過する)点10が存在すれば、かかる点6aは直線上に多数の点が並ぶ図形の一部、すなわち、点線を構成する一点である可能性が高い。そして、その点線の角度は、ハフ空間中の点10のθ座標となる。そこで、得られた点線の角度に沿って伸びる領域を探索範囲として他の個別図形を探索することにより、先の例と同様に点線が統合図形として取得される。このときの探索範囲は、図2A中探索範囲8として示したものと同様の形状である。
【0038】
図2Cは、対象とする個別図形が線分11aである場合の関連付けの手法を説明する図である。図中の線分11a乃至11dは全て種別が線分であると判定された個別図形である。ここで、線分11aに注目すると、統合図形取得部5(図1参照)は、かかる線分11aの周囲に、線分11aの長手方向に延びる探索範囲12を設定し、探索範囲12中に少なくとも一部が含まれる個別図形を探索する。この例では、線分11bが発見される。以下同様に線分11bに対しても新たな探索範囲を設定し、線分11a乃至11dの全てを発見し、関連付ける。その結果、線分11a乃至11dからなる一の統合図形である破線が取得される。なお、一般に破線を構成する線分の長さはある一定の範囲内にあることが多いので、個別図形が線分である場合に、上述した取り扱いをするにあたり、線分の長さの上限を設けてもよい。かかる上限を超える線分は、下で述べるその他の個別図形と同様の取り扱いとすればよい。
【0039】
図2Dは、対象とする個別図形が円弧13aである場合の関連付けの手法を説明する図である。図中の円弧13a乃至13dは全て種別が円弧であると判定された個別図形である。ここで、円弧13aに注目すると、統合図形取得部5(図1参照)は、円弧13aをその一部とする円の周上に延びる探索範囲14を設定する。そうすると、円弧13aと共通の中心及び半径を有する個別図形である円弧13b乃至13dが発見され、関連付けられる。これにより、同一の中心を有する同一の半径を有する円弧13a乃至13dは一の統合図形として取得される。なお、種別判定部4(図1参照)による円弧の判定を一般化ハフ変換により行う場合には、判定しようとする円弧をその一部とする円の中心座標及び半径が得られるので、探索範囲14の設定は容易である。
【0040】
図2Eは、対象とする個別図形が文字である場合の関連付けの手法を説明する図である。図中の文字15a乃至15dは全て種別が文字であると判定された個別図形である。ここで、文字15aに注目すると、ここで取り扱う画像においては、文字は横書きされることから、統合図形取得部5(図1参照)は、文字15aの外接矩形16をその左右方向に延長した探索範囲17を設定する。また、文字は回転されることが少ないことから、外接矩形16の各辺の方向は、画像の縦方向または横方向に一致するものとすることが好ましい。これにより、文字15bが発見され、関連付けられる。文字15bに対しても同様の処理を行い、以下繰り返すことにより、一連の文字15a乃至15d全てが発見され関連付けられるとともに、一の統合図形として取得される。なお、ここでは文字が横書きであることを前提に探索範囲17を左右に延びるものとして説明したが、文字が縦書きされる場合には、探索範囲17を上下に延びるものとすればよい。
【0041】
図2Fは、対象とする個別図形が枠である場合の関連付けの手法を説明する図である。図中の枠18には、当該枠に囲まれた領域、ここでは、領域19a,19b及び19cが存在する。そして、一般的な図面などでは、枠に囲まれた最大の領域19aは、他の図形を種々描画するべき領域であるのに対し、他の領域19b,19cは枠に付随するもの、例えば、タイトルであったり、事業所名であったり、作成者や日付といった情報を記入するべき領域であることが多い。そこで、統合図形取得部5(図1参照)は、枠18に囲まれた領域19a,19b及び19cのうち、少なくとも最大の領域19aを除き、他の領域19b及び19cに含まれる個別図形20a及び20bは枠18に付随するものとして関連付ける。なお、領域が最大であるか否かは、いかなる方法を用いて判断してもよい。例えば、各領域の外形のサイズの比較によってもよいし、各領域の面積の比較によってもよい。
【0042】
図2Gは、対象とする個別図形がその他である場合の関連付けの手法を説明する図である。この場合には、統合図形取得部5(図1参照)は、対象とする個別図形21aの周囲に、予め定められた幅の探索範囲22を設定する。これにより、個別図形21aから予め定められた距離より近くに位置する個別図形が発見され、関連付けられる。図示の例では、個別図形21bが発見され、関連付けられる。関連付けられた個別図形21bに対しても同様の処理が行われ、ここでは、個別図形21a乃至21cからなる一の統合図形が取得される。
【0043】
以上のように、本実施形態においては、統合図形取得部5(図1参照)は、種別判定部4が判定した個別図形の種別に応じた基準を用い、個別図形同士の幾何学的関係に基づいて個別図形同士を関連付け、関連付けられた個別図形からなる統合図形を取得する。しかしながら、個別図形の種別に応じた基準を用いることは必須ではなく、全ての個別図形について同一の基準、例えば、上述のその他である場合の基準を用いてもよい。その場合には、種別判定部4は不要である。また、個別図形同士の関連付けは、どのように行ってもよい。例えば、各個別図形を示すデータに、関連づけられた個別図形間に共通する識別情報を付与したり、あるいは、得られた統合図形を示すデータに、当該統合図形に含まれる個別図形を識別する識別情報を含ませるなどが例示される。さらに、個別図形として、個々に挙げたもの以外の種別、例えば、楕円、矩形や正多角形の断片を判定する場合には、上述の円弧の場合同様の処理を行ってもよい。
【0044】
図1に戻り、統合図形取得部5により取得された統合図形は、特徴情報取得手段として機能する特徴情報取得部23に受け渡される。特徴情報取得手段は、統合図形の特徴情報を取得する手段である。特徴情報は、統合図形の何らかの特徴を示す情報であり、例えば、統合図形の縦幅、横幅、重心の座標、外接矩形のアスペクト比、外接矩形の面積、有色画素(すなわち、背景色でない色の画素)の数、外接矩形中に占める有色画素の割合、含有する個別図形の数、含有する個別図形の種別の構成比、といった幾何学的特徴を含む種々のものが例示される。特徴情報取得部23は、それぞれの統合図形について、これら種々の特徴情報の任意の一または複数を取得する。本実施形態では、特徴情報取得部23は、統合図形の縦幅、横幅、重心の座標及び有色画素の数を取得するものとするが、これに限定されるものではない。
【0045】
続いて、統合図形取得部5により取得された統合図形及び特徴情報取得部23により取得された特徴情報は、対応関係取得手段として機能する対応関係取得部24に受け渡される。対応関係取得手段は、第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる統合図形との対応関係を取得する手段である。より詳しく説明すると、第1の画像に何らかの変更がされ、第2の画像が生成された場合に、第1の画像に含まれる統合図形のうち、何ら変更がなされなかった統合図形は、第2の画像に同一の統合図形が対応して存在する。また、第1の画像に含まれる統合図形のうち、何らかの変更、例えば一部分の追加もしくは削除が行われた統合図形は、第2の画像に一部分が異なるものの、その大部分が共通する統合図形が存在することとなる。このような第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる統合図形は対応づけられる。さらに、第1の画像に含まれる統合図形が削除された場合には、第2の画像中に対応する統合図形は存在しないこととなり、第1の画像に存在しない統合図形が新たに追加された場合にも、同様に、第1の画像中に対応する統合図形が存在しない統合図形が第2の画像中に存在することとなる。すなわち、対応関係取得手段は、一の画像に含まれる統合図形に対応づけられる他の画像に含まれる統合図形が存在するのか否か、存在する場合には、それはどの統合図形であるのかを対応関係として取得する手段である。
【0046】
本実施形態では、対応関係取得部24は、第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる統合図形のうち、特徴情報取得部23により取得された特徴情報から対応が予想されるものに対し、パターンマッチングの手法を適用して対応関係を取得する。すなわち、特徴情報に基づくと共に、さらにパターンマッチングにより第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる統合図形の対応関係を取得するものである。
【0047】
まず、対応関係取得部24は、第1の画像に含まれる任意の統合図形に注目する。そして、かかる統合図形が有する特徴情報に対し、第2の画像に含まれる統合図形のうち、特徴情報が似ている統合図形を探す。このとき、用いる特徴情報の種類や数は任意に設定してよく、また、統合図形が似ている程度を示す指標(以下、類似指標と称する)をどのように定めるかも任意である。ここでは、特徴情報として、統合図形の縦幅、横幅、重心の座標及び有色画素の数が取得されているためこれらを用いることとする。そして、統合図形の縦幅及び横幅の差の絶対値、重心の座標間の距離、有色画素の数の差の絶対値を合計したものを類似指標とする。この場合、類似指標の値が小さいものほど統合図形が似ていることを示している。そして、第2の画像に含まれる統合図形それぞれについて類似指標を求めると、注目している統合図形により似ているものほど類似指標の値が小さく、異なっているものほど類似指標の値が大きくなると推定される。
【0048】
続いて、対応関係取得部24は、いわゆるパターンマッチングの手法を用いて、注目している第1の画像に含まれる統合図形と、第2の画像に含まれる統合図形のそれぞれとがどの程度の共通性があるかを求める。このとき、第2の画像に含まれる統合図形のうち、類似指標の値が小さいものから順番にパターンマッチングを行う。すなわち、注目している統合図形により似ていると推定されるものから順にパターンマッチングを行う。そして、パターンマッチングの結果が肯定的、すなわち、注目している第1の画像に含まれる統合図形と、選択された第2の画像に含まれる統合図形とが、ある一定程度以上の共通性を持つと判断された場合に、それらの統合図形は対応しているものと判断される。この判断基準は任意に設定してよいが、一例として、第1の画像または第2の画像に含まれる統合図形のいずれかの統合図形に対し、他方の統合図形が80%以上の共通部分を有する場合に両者は対応するものと判断してよい。また、このときに、対応する第1の画像及び第2の画像の相対的な位置のずれを取得しておくことが好ましい。そして、第1の画像に含まれる統合図形の第1の画像に含まれる全ての統合図形に対し対応する統合図形を探した後、対応する統合図形が発見されなかった統合図形は、対応する統合図形を有しないものと判断される。
【0049】
なお、以上説明した対応関係取得部24による第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる統合図形の対応関係の取得方法は一例である。合理性のある対応関係の取得方法であれば、どのような手法を用いてもよい。例えば、特徴情報のみに基づいて対応関係を取得してもよい。あるいは、特徴情報を用いず、パターンマッチングのみにより対応関係を取得してもよい。さらに、本実施形態で説明したと同様に、特徴情報に基づき、かつ、パターンマッチングを行う方法において、特徴情報から得られる共通性に関する指標と、パターンマッチングの結果として得られる共通性に関する指標とを合算するなどして、特徴情報及びパターンマッチングの結果の双方に基づく総合指標を求め、かかる総合指標が最も優れた統合図形を対応づけるようにしてもよい。
【0050】
そして、対応関係取得部24により取得された対応関係は、変更箇所抽出手段として機能する変更箇所抽出部25に受け渡される。変更箇所抽出手段は、対応関係に基づいて、第1の画像と第2の画像間の変更箇所を抽出する手段である。変更箇所抽出部25は、対応関係に基づき、対応する第1の画像と第2の画像に含まれる統合図形の差分をとる。このとき、対応する第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる統合図形の相対的な位置のずれが無くなるよう、第1の画像に含まれる統合図形と第2の画像に含まれる画像のいずれかまたは両方を平行移動させる。これにより、単なる位置の差異でない、実質的な統合図形の差異、すなわち、変更箇所が抽出される。ここでいう相対的な位置のずれは、例えば、対応関係取得部24が第1の画像と第2の画像に含まれる統合図形のパターンマッチングを行う際に、両統合図形が最もよく共通する際の相対的な位置関係として取得されるが、これに必ずしも限定されない。他にも、特徴情報から相対的な位置のずれを求めてもよい。
【0051】
得られた差分は、第1の画像と第2の画像との間の変更箇所である。変更箇所抽出部25は、かかる変更箇所を、更に後段の他の機器あるいは機能ブロックへと出力する。後段の他の機器あるいは機能ブロックは、特に限定されないものの、変更箇所を表示するモニタ等の表示機器、変更箇所を印刷するプリンタ等の印刷機器、変更箇所を保存するハードディスクドライブ等の情報記録媒体、変更箇所を用いる他のコンピュータに接続される通信回線等が例示される。
【0052】
なお、対応関係取得部24は一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるようにしてもよい。
【0053】
このことについて図7A及び図7Bを用いて説明する。図7Aは、対応関係取得部24による対応付けの例を示す図である。同図に示す例では、対応関係取得部24は、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるようになされていないものとする。
【0054】
図7Aに示す第1の画像48は、その外形が図示の通り矩形であり、統合図形49a、49b及び49cを含む。統合図形49a乃至49cはその位置が異なる以外は同一の図形である。第2の画像50は、第1の画像48と等しい外形を有し、統合図形51a,51b及び51cを含む。ここで、統合図形49a、49b及び49cに対し、統合図形51a,51b及び51cは図中右側に平行移動した関係にあるものとする。
【0055】
このとき、対応関係取得部24は、第1の画像48の統合図形49aに対し、上記した特徴情報の差が最も小さく(すなわち、類似指標の値が最も小さい)、かつ、パターンマッチングの結果、ある一定程度以上の共通性を持つと判断される統合図形を第2の画像50より選び対応付ける。この場合、重心の位置が最も近い統合図形51aが選ばれることになる。この対応付けを、図中矢印52aで示した。
【0056】
対応関係取得部24は、続いて統合図形49b及び49cについても同様に対応付ける。この場合も同様に、重心の位置が最も近い統合図形51aが選ばれることとなる(矢印52b及び52c)。
【0057】
この結果、統合図形49a、49b及び49cの全てが統合図形51aと対応付けられ、統合図形51b及び51cには第1の画像48に含まれる統合図形49a、49b及び49cと対応付けられない。そのため、後段の変更箇所抽出部25(図1参照)では、統合図形51b及び51cは、第1の画像48に対し、第2の画像50において追加された(もしくは、第2の画像50において、第1の画像48において削除された)変更箇所として抽出されることになる。
【0058】
これに対し、対応関係取得部24が、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるようになされている場合の対応関係取得部24による対応付けの例を図7Bを用いて説明する。
【0059】
この場合においても、先の例と同じく、対応関係取得部24は、第1の画像48の統合図形49aに対し、特徴情報の差が最も小さく(すなわち、類似指標の値が最も小さい)、かつ、パターンマッチングの結果、ある一定程度以上の共通性を持つと判断される統合図形51aを第2の画像50より選び対応付ける(矢印52a)。そして、続く統合図形49bに対しては、特徴情報の差が最も小さくなる第2の画像50中の統合図形は統合図形51aであるが、統合図形51aには既に統合図形49aが対応付けられているため、次に特徴情報の差が小さくなる統合図形51bが選択され、対応づけられる(矢印52b)。同様に、統合図形49cに対しては統合図形51cが対応づけられる(矢印52c)。
【0060】
その結果、後段の変更箇所抽出部25(図1参照)では、統合図形49aと統合図形51a、統合図形49bと統合図形51b、統合図形49cと統合図形51cの差分がそれぞれとられる。この例では差分は得られないため、変更箇所は抽出されないことになる。
【0061】
対応関係取得部24が、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付ける手法は種々のものが考えられ、いかなる手法を用いてもよいが、本実施形態では、次に説明するアルゴリズムを用いる。
【0062】
図8は、対応関係取得部24が、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるアルゴリズムの例を示すフロー図である。まずステップS1において、第1の画像に含まれる統合図形の一つに注目する。続くステップS2では、注目された統合図形について、第2の画像に含まれる統合図形のうち、特徴情報が最も近いものを選択する。そして、ステップS3で、選択された統合図形が、すでに他の統合図形に対応づけられているか否かを判断する。
【0063】
選択された統合図形が、いまだ他の統合図形に対応付けられていない場合にはステップS4へと進み、注目している統合図形と、選択された統合図形とのパターンマッチングを行いその結果を判断する。前述の通り、パターンマッチングの結果が良好、すなわち、両者がある一定程度以上の共通性を持つと判断された場合、ステップS5へと進み、両者を対応付ける。一方、パターンマッチングの結果が良好でない場合、及び、ステップS3で選択された統合図形がすでに他の統合図形に対応付けられていると判断された場合にはステップS6へと進む。
【0064】
ステップS6では、第2の画像中の全ての統合図形が選択されたか否か判断する。今だ第2の画像中の全ての統合図形が選択されていない場合には、ステップS7へと進み、第2の画像中に含まれる統合図形のうち、直前に選択されたものの次に特徴情報が近いものを選択する。そして、ステップS3へと戻り、以下同様に繰り返す。
【0065】
ステップS6で、第2の画像中の全ての統合図形が選択されたと判断された場合には、ステップS8へと進み、注目された統合図形には、対応する統合図形がないとして、統合図形は対応付けられない。
【0066】
ステップS5において統合図形が対応づけられた場合、ステップS8において統合図形が対応づけられなかった場合のいずれの場合も、ステップS9へと進み、第1の画像に含まれる全ての統合図形が注目されたか否か判断される。未だ全ての統合図形が注目されていない場合には、ステップS1へと戻り、新たな統合図形が注目され、以下同様に繰り返す。全ての統合図形が注目されている場合には処理を終える。
【0067】
なお、以上示したアルゴリズムは、対応関係取得部24が、一の統合図形に対し、多くとも1つの他の統合図形を対応付けるアルゴリズムの一例である。他にも、第1の画像に含まれる全ての統合図形について、対応づけられる第2の画像に含まれる統合図形の候補を特徴情報の近いものの順に並べ、最も特徴情報の近いものから順にパターンマッチングを行い対応付けるようにしてもよい。この場合、すでに対応付けがなされた統合図形は、候補から除外される。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置26を図3を用いて説明する。図3は、本発明の第2の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置26の機能ブロック図である。なお、本実施形態に係る画像の変更箇所表示装置26は、先に説明した第1の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置1を含んでいるため、両者に共通する構成要素に対しては同符号を付し、それら構成要素に対する重複する説明は省略する。
【0069】
画像の変更箇所表示装置26は、画像の変更箇所抽出装置1に、さらに変更箇所表示手段として機能する変更箇所表示部27を付加したものである。変更箇所表示手段は、変更箇所を表示する手段である。本実施形態においては、変更箇所表示部27は、変更箇所抽出部25から受け渡された変更箇所を、画像受付部2により受け付けられた第1の画像または第2の画像上に重ね合わせ、画像の変更箇所表示装置26の使用者が変更箇所を認識できるように、モニタ等の表示機器上に表示する。ここで、変更箇所を第1の画像上に重ね合わせることとすると、変更箇所表示部27は、第1の画像が第2の画像に更新されたとして、第1の画像に追加された箇所及び、第1の画像から削除された箇所が認識できるように変更箇所を表示する。そのような表示として、例えば、第1の画像から削除された箇所を赤で、追加された箇所を青で表示するなど色彩を変更することにより表示してよい。その他にも、変更箇所の輝度や線種を変更したり、変更箇所を点滅表示したりするなど種々の表示方法を用いてよい。このとき、第1の画像に含まれる統合図形と、対応する第2の画像に含まれる統合図形との間に相対的な位置のずれがある場合には、その相対的な位置のずれが無くなるように第2の画像を平行移動させたものとして、変更箇所が表示される。すなわち、第1の画像に含まれる統合図形に対して追加あるいは削除された箇所は、第1の画像に含まれる統合図形に対して正しい位置に表示される。この相対的な位置のずれは、対応関係取得部24が第1の画像と第2の画像に含まれる統合図形のパターンマッチングを行う際に、両統合図形が最もよく共通する際の相対的な位置関係として取得されるものを用いて良いが、これに限定されない。
【0070】
次に、理解をより容易にするため、具体的な例により画像の変更箇所表示装置26の動作を図3及び図4A乃至図4Cを参照して説明する。なお、ここでの説明は画像の変更箇所表示装置26の動作の一例であり、本発明の趣旨をこの例に限定するものではない。
【0071】
図4Aは、一例としての第1の画像28を示す図である。第1の画像28には、統合図形29乃至32が含まれている。そして、図4Bは、一例としての第2の画像33を示す図である。第2の画像33には、統合図形34乃至38が含まれている。第2の画像33は、第1の画像28の一部を変更したものである。具体的には、両者は、統合図形29に含まれる円の大きさが変更され新たな統合図形34となっている、統合図形30自体の画像中の位置が右に移動するとともに、同統合図形中の破線の位置が変更されている、統合図形36が追加されている、といった差異を有している。
【0072】
ここで図3に戻り、画像の変更箇所表示装置26は画像受付部2により第1の画像28と第2の画像33を受け付け、個別図形取得部3、種別判定部4、統合図形取得部5により統合図形29乃至32及び34乃至38を取得し、各統合図形の特徴情報を特徴情報取得部23により取得する。そして、対応関係取得部24は、特徴情報及びパターンマッチングの結果に基づき、統合図形29に対し統合図形34が対応し、統合図形30に対し統合図形35が対応すると判断する。統合図形31に対しては、統合図形36乃至38のいずれもパターンマッチングでは等しい結果を得ることになるが、特徴情報として、統合図形の位置の情報である重心の座標を用いているため、統合図形37が対応すると判断される。同様に統合図形32に対しては統合図形38が対応すると判断される。統合図形36は対応する統合図形が無いものと判断される。これら判断の結果は、対応関係として変更箇所表示部27に受け渡される。
【0073】
変更箇所表示部27は、第1の画像28に、受け渡された変更箇所を重ね合わせて図4Cのように表示する。図4Cは、変更箇所の表示の例である。図中、太線で示した部分が変更箇所として表示されている部分である。図中では明らかではないが、第1の画像28に対し削除された部分と追加された部分が区別できるよう表示してもよい。例えば、前述のように、削除された部分を赤で、追加された部分を青で表示するなどである。ここでは、円39は削除された部分、円40は追加された部分として示される。また、破線41は削除された部分として示され、破線42は追加した部分として示される。同時に、破線42は、第1の画像28に含まれる統合図形30と、それに対応する第2の画像33に含まれる統合図形35との相対的な位置のずれをなくすよう平行移動され、第1の画像28に含まれる統合図形30に対する位置が正しく表示される。円43は追加された部分として表示される。
【0074】
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置44を図5を参照して説明する。図5は、本実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置44の機能ブロック図である。画像の変更箇所抽出装置44は、第1の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置1(第1図参照)に対し、差分抽出手段として機能する差分抽出部45が付加されている点が異なっており、その他の大部分については共通している。そのため、両者において共通する構成要素に対しては同符号を付し、それら構成要素に対する重複する説明は省略する。なお、差分抽出手段は、第1の画像と第2の画像の差分を抽出する手段である。
【0075】
差分抽出部45は、画像受付部2により受け付けられた第1の画像と第2の画像の差分を抽出し、統合図形取得部46に受け渡す。ここで、第1の画像と第2の画像の差分には、第1の画像が第2の画像に更新されたとして、第1の画像から削除された部分及び第1の画像に追加された部分が含まれる。このとき、第1の画像と第2の画像との間で位置の変更がなされた図形も差分として抽出されることになる。
【0076】
統合図形取得部46は、第1の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置1における統合図形取得部5(第1図参照)と同様に、個別図形取得部3により取得された個別図形および種別判定部4により判定された各個別図形の種別に基づいて統合図形を取得する。このとき、統合図形取得部46は、差分抽出部45により抽出された差分に係る個別図形について、他の個別図形と関連付ける。すなわち、差分抽出部45により抽出された差分である、第1の画像から削除された部分及び/または第1の画像に追加された部分をその一部分に含む個別図形に注目し、上述の第1の実施形態にて説明した方法により、他の個別図形と関連付ける。このとき、差分抽出部45により抽出された差分を含まない個別図形は注目されないため、他の注目された個別図形と直接又は間接に関連付けられない限り、統合図形を構成する一部として取得されない。
【0077】
この点について、図9乃至図11を用いてより詳細に説明する。図9に示す第1の画像53は、文字54a乃至54fに対し、第2の画像55に含まれる文字56a乃至56fはそれぞれの文字を一文字分ずつ右側に移動させたものとなっている。
【0078】
このとき、本実施形態における差分抽出部45(図5参照)は、第1の画像53及び第2の画像55の差分をとり、図10に示す差分画像57を得る。ここで、第1の画像53に含まれる文字54a乃至54fに係る差分58は差分画像57中の実線で示し、第2の画像55に含まれる文字56a乃至56fに係る差分59は差分画像57中の破線で示した。
【0079】
図11は、差分に係る個別図形を示す図である。すなわち、第1の画像53のうち、文字54a,54b,54d及び54fが、第2の画像55のうち、文字56b,56d,56e及び56fが差分に係る個別図形となる。
【0080】
ここで、統合図形取得部46(図5参照)が、差分に係る個別図形についてのみ統合図形を取得するものとすると、取得される統合図形は図11に示した通りとなる。この結果に基づいて特徴情報取得部23、対応関係取得部24及び変更箇所抽出部25(いずれも図5参照)での処理が行われると、文字54b,54d及び54fと文字56b,56d及び56fはそれぞれ対応付けられ変更箇所なしと判断される一方、第1の画像53における文字54aは第2の画像55において存在しないものと、また、第2の画像55における文字56fは第1の画像53において存在しないものと判断され、変更箇所として抽出されることになる。
【0081】
これに対し、統合図形取得部46が、差分に係らない個別図形を、差分に係る個別図形と直接又は間接に関連付けるものとすると、図9の第1の画像53において、文字54cは、差分に係る文字54b及び54dと隣接しているため、関連付けられることになる。すなわち、直接関連付けられる。また、文字54eも同様に直接関連付けられる。この結果、文字54a乃至54fの全てが関連付けられ、一の統合図形として取得される。第2の画像55においても、文字56a及び文字56cが他の文字56b,56d,56e及び56fと関連付けられ、一の統合図形として取得される。
【0082】
そのため、後段の処理では、統合図形同士が対応付けられることとなるから、第1の画像53と第2の画像55の間には変更箇所は抽出されないことになる。
【0083】
なお、以上の例では、差分に係らない個別図形はいずれも差分に係る個別図形と直接関連付けられたが、間接に関連付けられるようにすることが好ましい。すなわち、差分に係らない個別図形が任意の差分に係る個別図形と関連付けられたなら、当該差分に係らない個別図形との幾何学的な関係に基づき、さらに他の差分に係らない個別図形を関連付けるようにするとよい。
【0084】
以上の本実施形態に係る変更箇所抽出装置44の処理の具体例を、第2の実施形態に関連して例示した図4Aに示す第1の画像28及び図4Bに示す第2の画像33に即して説明する。統合図形29,30,34及び35は第1の画像28と第2の画像33の間で差分を含んでいる。すなわち、統合図形29及び34における円の大きさの変化と、統合図形30と統合図形35の位置の変化及び破線の位置の変化である。そのため、これらの統合図形29,30,34及び35は統合図形取得部46により取得される。さらに、統合図形36は、第1の画像28に追加された差分であるので、やはり統合図形取得部46により取得される。統合図形31,32,37及び38に関しては、第1の画像28と第2の画像33の間で変化がなく、また、第1の画像28と第2の画像33の間で変化のある個別図形に直接にも間接にも関連付けられないため、統合図形取得部46により統合図形として取得されない。その結果、特徴情報取得部23及び対応関係抽出部24に受け渡される統合図形は、統合図形29,30及び34乃至36である。このように、本実施形態では、第1の実施形態に比して特徴情報取得部23及び対応関係抽出部24で処理されるべき統合図形の数が減少する場合がある。なお、この説明は差分抽出部45及び統合図形取得部46の動作の理解を容易にするための例であり、本発明の趣旨をこの例に限定するものではない。
【0085】
さらに、本発明の第4の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置47を図6を用いて説明する。図6は、本発明の第4の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置47の機能ブロック図である。なお、本実施形態に係る画像の変更箇所表示装置47は、先に説明した第3の実施形態に係る画像の変更箇所抽出装置44に、第2の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置26(図3参照)における変更箇所表示部27を追加したものである。そこで、これら先に説明した実施形態と共通する構成要素に対しては同符号を付し、それら構成要素に対する重複する説明は省略する。
【0086】
本実施形態に係る変更箇所表示装置47においても、第2の実施形態に係る画像の変更箇所表示装置26(図3参照)と同様に、変更箇所表示部27により、変更箇所抽出部25から受け渡された変更箇所が、画像受付部2により受け付けられた第1の画像または第2の画像上に重ね合わせられ、画像の変更箇所表示装置26の使用者が変更箇所を認識できるように、モニタ等の表示機器上に表示される。
【0087】
以上説明した実施形態において示した機能ブロック図やフロー図は、それぞれの実施形態を実施する上での一例であり、機能ブロックの構成や配置或いは制御のフローを例示したものに限定するものではない。
【符号の説明】
【0088】
1 画像の変更箇所抽出装置、2 画像受付部、3 個別図形取得部、4 種別判定部、5 統合図形取得部、6a乃至6d 点、7,8 探索範囲、9a乃至9d 正弦曲線、10 点、11a乃至11d 線分、12 探索範囲、13a乃至13d 円弧、14 探索範囲、15a乃至15d 文字、16 外接矩形、17 探索範囲、18 枠、19a乃至19c 領域、20a,20b 個別図形、21a乃至21c 個別図形、22 探索範囲、23 特徴情報取得部、24 対応関係取得部、25 変更箇所抽出部、26 画像の変更箇所表示装置、27 変更箇所表示部、28 第1の画像、29乃至32 統合図形、33 第2の画像、34乃至38 統合図形、39,40 円、41,42 破線、43 円、44 画像の変更箇所抽出装置、45 差分抽出部、46 統合図形取得部、47 画像の変更箇所表示装置、48 第1の画像、49a、49b及び49c 統合図形、50 第2の画像、51a,51b及び51c 統合図形、52a,52b及び52c 矢印、53 第1の画像、54a乃至54f 文字、55 第2の画像、56a乃至56f 文字、57 差分画像、58,59 差分。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の画像と第2の画像に含まれる個別の図形である個別図形を取得する個別図形取得手段と、
前記個別図形間の幾何学的関係に基づき、前記個別図形同士を関連付け、関連付けられた前記個別図形を含む統合図形を取得する統合図形取得手段と、
前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する対応関係取得手段と、
前記対応関係に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像間の変更箇所を抽出する変更箇所抽出手段と、
を有する画像の変更箇所抽出装置。
【請求項2】
前記個別図形の種別を判定する種別判定手段を有し、
前記統合図形取得手段は、前記個別図形の種別に応じた基準により前記個別図形同士を関連付ける請求項1記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項3】
前記統合図形取得手段は、前記個別図形の種別が枠である場合に、少なくとも当該個別図形に囲まれる領域のうち最大のものを除き、当該個別図形に囲まれる領域中の前記個別図形と当該個別図形を関連付ける請求項2記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項4】
前記第1の画像と前記第2の画像の差分を抽出する差分抽出手段を有し、
前記統合図形取得手段は、前記差分抽出手段により抽出された差分に係る前記個別図形について、他の前記個別図形と関連付ける請求項1乃至3のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項5】
前記統合図形の特徴情報を取得する特徴情報取得手段を有し、
前記対応関係取得手段は、前記特徴情報に基づいて前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する請求項1乃至4のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項6】
前記対応関係取得手段は、パターンマッチングにより、前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する請求項1乃至5のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項7】
前記対応関係取得手段は、一の前記統合図形に対し、多くとも1つの他の前記統合図形を対応付ける請求項1乃至6のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項8】
前記統合図形取得手段は、前記差分に係らない前記個別図形を、前記差分に係る個別図形と直接又は間接に関連付ける請求項4記載の画像の変更箇所抽出装置。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の画像の変更箇所抽出装置と、
前記変更箇所を表示する変更箇所表示手段と、
を有する画像の変更箇所表示装置。
【請求項10】
コンピュータを、
第1の画像と第2の画像に含まれる個別の図形である個別図形を取得する個別図形取得手段と、
前記個別図形間の幾何学的関係に基づき、前記個別図形同士を関連付け、関連付けられた前記個別図形を含む統合図形を取得する統合図形取得手段と、
前記第1の画像に含まれる前記統合図形と前記第2の画像に含まれる前記統合図形との対応関係を取得する対応関係取得手段と、
前記対応関係に基づいて、前記第1の画像と前記第2の画像間の変更箇所を抽出する変更箇所抽出手段と、
を有する画像の変更箇所抽出装置として動作させるためのプログラム。


【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図2F】
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【図2G】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−64191(P2012−64191A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10269(P2011−10269)
【出願日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】