説明

画像処理回路および画像表示装置

【課題】画像のうち高輝度に表示される部分に対しては、より高輝度に表示できるようにした画像処理回路および画像表示装置を提供する。
【解決手段】画像表示装置1は、入力された画像信号の輝度レベルが予め設定された輝度レベルのしきい値を上回っているか否かを判定し、しきい値を上回っている領域を高輝度画素領域として検出する輝度検出部14と、高輝度画像領域の画像信号に対して輝度をさらに高める高輝度補正用のガンマ補正テーブルを適用して、高輝度化ガンマ補正を行うと共に、高輝度画像領域以外の画像信号に対して基本輝度用のガンマ補正テーブルを適用して、通常の輝度補正である基本ガンマ補正を行うガンマ補正部22とを備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶表示素子や有機EL(エレクトロルミネッセンス)素子等を用いて構成される画像表示装置、およびそのような画像表示装置に適用される画像処理回路に係わり、特に、画質改善のための手法が適用される画像処理回路および画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の画像表示装置では、画質の改善のために白潰れ防止技術や白伸長技術等が採用されている。白潰れ防止は、輝度信号から最大輝度を検出し、輝度が飽和している場合に輝度レベルが下がるようにガンマ補正をすることにより、画像のディテールが白く潰れてしまうのを防止する手法である。また、白伸長は、画像信号から表示画面内の輝度分布を求め、100%に近い高輝度レベルの画素領域が一定面積以上存在する場合に、その輝度レベルがさらに上がるようにガンマ補正を行って高輝度レベルを100%に伸長することにより、高輝度画像のコントラストを改善する手法である。このような手法は、従来、画像全体に対して画一的に行われていた。
【0003】
一方、特許文献1に記載された画像表示装置には、表示画面のうちの局所的な部分に対して、他の部分と異なるホワイトバランス調整およびガンマ補正を施す手法が開示されている。この手法によれば、液晶表示素子等の製造ばらつきやバックライトの光量分布等に起因する画面内の輝度むらや色度むら等を防止可能であるとの記載がある。
【特許文献1】特開平11−113019号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した白伸長技術は、必ずしも十分な画質表現を実現し得るものではなかった。例えば、画像中に、夜景のネオンや夜空の月または照明の反射等のような、物体が局所的に明るく輝く部分が存在している場合には、その輝きを十分に表すことができず、コントラスト表現がリアリティを欠くものとなってしまうという問題があった。
【0005】
これは、主として以下の理由による。例えば液晶表示素子等の表示素子において、特段の輝度補正を行わなかったとすると、素子の発光効率や透過特性の差に起因して、赤色、緑色および青色のうち青色が最も輝度が低く、緑色が最も輝度が高くなることが多い。そこで、白バランスを最適化するために、例えば図8に示したように、色光毎に異なるガンマ特性での輝度補正を行うのが通常である。具体的には、緑色については、全輝度範囲にわたって他の色光よりも出力信号レベルが低くなるようにガンマ特性を設定し、青色については、全輝度範囲にわたって他の色光よりも出力信号レベルが高くなるようにガンマ特性を設定する。すなわち、最も効率の悪い青色の輝度に赤色および緑色の輝度を合わせて、赤色および緑色の出力信号レベルを青色の出力信号レベルよりも低くすることが行われている。このため、赤色および緑色に着目すると、より高輝度の表示が可能であるにもかかわらず、結果として、高輝度の表示が行われず、未利用部分が無駄になってしまうことから、3色の混色表現として十分なコントラスト表現ができない。
【0006】
一方、上記の特許文献1では、表示画面のうちの一部分に対して他の部分と異なる調整が行われるようになっている。しかしながら、この技術では、あくまで、表示素子の製造ばらつきやバックライトの光量分布等に起因して画面内に発生する輝度むらや色むらを抑制するために、画面内の予め決まった領域に対して個別に輝度調整を施しているにすぎず、画像の内容に応じてダイナミックに輝度調整を行うものではない。このため、やはり、画像中に、物体が局所的に明るく輝く部分が存在している場合には、その輝きをリアルに表現することは困難である。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、画像のうち特に高輝度に表示されるべき部分のコントラスト表現を改善することができる画像処理回路および画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の画像処理回路は、入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度しきい値を上回るという第1の条件、および、入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度変化量しきい値よりも大きく変化するという第2の条件のうち、少なくとも第1の条件を満たす画素領域を検出する検出手段と、検出された画素領域以外の画像信号に対して基本ガンマ補正を行う一方、画素領域の画像信号に対して輝度をさらに高めるための高輝度化ガンマ補正を行うことにより、入力画像の輝度補正を行う補正手段とを備えたものである。
【0009】
また、本発明の画像表示装置は、入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度しきい値を上回るという第1の条件、および、入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度変化量しきい値よりも大きく変化するという第2の条件のうち、少なくとも第1の条件を満たす画素領域を検出する検出手段と、検出された画素領域以外の画像信号に対して基本ガンマ補正を行う一方、画素領域の画像信号に対して輝度をさらに高めるための高輝度化ガンマ補正を行うことにより、入力画像の輝度補正を行う補正手段と、補正手段により補正された画像信号に基づいて画像を表示する表示手段とを備えたものである。
【0010】
本発明の画像処理回路および画像表示装置では、第1の条件および第2の条件のうち少なくとも第1の条件を満たす画素領域(すなわち、輝度レベルが所定の輝度しきい値を上回るハイライト部分)の画像信号に対して高輝度化ガンマ補正(コントラスト強調処理)が行われ、それ以外の画素領域の画像信号に対しては通常の基本ガンマ補正が行われる。その結果、画像中のハイライト部分がより強調され、コントラスト表現が改善される。
【0011】
本発明の画像処理回路および画像表示装置では、第1の条件および第2の条件の両方を満たす画素領域(ハイライト部分)を検出し、この検出された画素領域に対して高輝度化ガンマ補正を行うようにしてもよい。この場合には、輪郭がはっきりしたハイライト部分に対してのみコントラスト強調処理が行われることになる。
また、画素領域の面積を検出し、この検出された面積が所定の面積しきい値を下回っている場合にのみ、その画素領域(ハイライト部分)に対する高輝度化ガンマ補正を行うようにしてもよい。この場合には、人間の視覚特性上、色ずれがあまり目立たないような比較的小さいハイライト部分に対してのみコントラスト強調処理が行われる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の画像処理回路および画像表示装置によれば、輝度レベルが所定の輝度しきい値を上回る(第1の条件を満たす)画素領域の画像信号に対して高輝度化ガンマ補正を行い、それ以外の画素領域の画像信号に対しては通常の基本ガンマ補正を行うようにしたので、画像中のハイライト部分がより強調され、コントラスト表現が改善される。したがって、例えば、画像中に局所的に明るい部分が存在している場合に、その部分の明るさを十分に表現することが可能になる。
【0013】
また、第1の条件だけでなく、第2の条件(輝度レベルが所定の輝度変化量しきい値よりも大きく変化)をも満たす画素領域を高輝度化ガンマ補正の対象とした場合には、輪郭がはっきりした(輝度が急峻に変化する)ハイライト部分に対してのみコントラスト強調処理が行われるので、輝き感のある物体を十分に表現することが可能となる。さらに、所定の面積しきい値を下回っている画素領域に対してのみ高輝度化ガンマ補正を行うようにした場合には、比較的小さいハイライト部分に対してのみコントラスト強調処理が行われるので、たとえ色バランスを欠くような輝度強調処理が行われたとしても、人間の視覚特性上、色ずれがあまり目立たないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像処理回路を備えた画像表示装置の構成ブロックを表すものである。図2は、後述するガンマ補正テーブルを表すものである。
【0016】
画像表示装置1は、アナログ/ディジタル変換器(ADC)10、スケーラ11、信号判定部13、マイクロコントローラ17、ユーザコントロール部18、マトリクス部19、ホワイトバランス調整部20、記憶部21、ガンマ補正部22および表示デバイス24を備えている。ここで、主として信号判定部13およびガンマ補正部22が、本発明における画像処理回路の一具体例に対応する。
【0017】
ADC10は、アナログのコンポーネント信号をディジタルのコンポーネント信号に変換するものである。スケーラ11は、外部から直接入力されたコンポーネント信号およびADC10から出力されたコンポーネント信号のいずれか一方を選択して、表示デバイス24の表示解像度に合うように画像サイズの拡大縮小を行うものである。スケーラ11は、記憶部12を有する。この記憶部12は、入力されたコンポーネント信号によって伝送された画像信号のうち少なくとも数本分の水平ラインを記憶するラインバッファとして構成されている。
【0018】
信号判定部13には、輝度検出部14、輝度変化検出部15および面積判定部16が設けられている。輝度検出部14は、記憶部12に記憶された画像信号の輝度レベルを抽出し、輝度しきい値と抽出された輝度レベルとを比較して、輝度しきい値を上回る高輝度画素領域を検出するものである。ここで、高輝度画素領域が、本発明の「第1の条件を満たす画素領域」の一具体例に対応する。
【0019】
輝度変化検出部15は、画像信号を高域通過フィルタに通し、輝度の変化を示す輝度変化信号を抽出し、輝度変化量しきい値と輝度変化信号とを比較して、輝度変化量しきい値を上回る画素を境界とする輝度大変化画素領域を検出するものである。ここで、輝度大変化画素領域が、本発明の「第2の条件を満たす画素領域」の一具体例に対応する。また、輝度検出部14および輝度変化検出部15が、本発明の「検出手段」の一具体例に対応する。
【0020】
面積判定部16は、信号判定部13により検出された高輝度画素領域と輝度大変化画素領域とが重なる重複領域の面積を検出し、この重複領域と所定の面積しきい値とを比較して、この重複領域が面積しきい値を下回る場合に、この重複領域を高輝度化補正対象領域として検出するものである。こうして検出される高輝度化補正対象領域は、画像中の面積が小さく、高輝度となっており、かつ、周囲との輝度の差が大きい画素領域である。ここで、面積判定手段16が、本発明の「判定手段」の一具体例に対応する。
【0021】
信号判定部13は、面積判定部16で得られた高輝度化補正対象領域とそれ以外の他の画素領域とに対して異なるガンマ補正をさせるように指示する制御信号CSを出力するようになっている。
【0022】
マイクロコントローラ17は、輝度検出部14、輝度変化検出部15および面積判定部16に対して、それぞれ、しきい値を予め設定するようになっている。各しきい値としては、それぞれ任意の値を設定することができる。また、マイクロコントローラ17は、ユーザコントロール部18およびホワイトバランス調整部20に対して制御を行うようになっている。
【0023】
ユーザコントロール部18は、スケーラ11から出力された画像信号に対して、コントラストおよびブライトネスの調整を行うものである。この調整は、ユーザからの指示を受けたマイクロコントローラ17がユーザコントロール部18に対して制御をすることにより、行われるようになっている。マトリクス部19は、ユーザコントロール部18から出力された画像信号(輝度/色差信号)をRGB信号に変換するものである。ホワイトバランス調整部20は、ユーザコントロール部18から出力されたRGB信号の色調整を行うものである。具体的には、ゲイン調整を行うことにより白側(高輝度側)の色温度を調整し、バイアス調整を行うことにより黒側(低輝度側)の色温度を調整するようになっている。
【0024】
記憶部21には、画像中の高輝度化補正対象領域に対してさらに輝度を高めるための高輝度化ガンマ補正を行う高輝度化ガンマ補正テーブル21aと、他の画素領域に対して通常の基本ガンマ補正を行う基本ガンマ補正テーブル21bとが記憶されている。なお、これらのガンマ補正テーブルの詳細については、後述する。
【0025】
ガンマ補正部22は、スイッチ部23を介して記憶部21と接続されている。スイッチ部23は、信号判定部13から出力された制御信号CSに応じて、スイッチの接続先が切り換わるようになっている。ガンマ補正部22では、ホワイトバランス調整部20から出力されたRGB信号のうち、検出された高輝度化補正対象領域以外の画像信号に対し、基本ガンマ補正テーブル21bを適用して基本ガンマ補正を行う一方、高輝度化補正対象領域の画像信号に対し、高輝度化ガンマ補正テーブル21aを適用して輝度をさらに高めるための高輝度化ガンマ補正を行うことにより、入力画像の輝度補正を行うものである。ここで、ガンマ補正部22が、本発明の「補正手段」の一具体例に対応する。
【0026】
表示デバイス24では、ガンマ補正部22から出力されたRGB信号に基づいて画像を表示するようになっている。表示デバイス24は、液晶ディスプレイパネル、プラズマディスプレイパネル、電界放出型ディスプレイ、有機ELディスプレイパネルおよびブラウン管等のいずれであってもよい。ここで、表示デバイス24が、本発明の「表示手段」の一具体例に対応する。
【0027】
次に、記憶部21に格納されたガンマ補正テーブルについて説明する。ガンマ補正テーブルには、図2(A)に示した基本ガンマ補正テーブル21bと、図2(B)に示した高輝度化ガンマ補正テーブル21aとがある。基本ガンマ補正テーブル21bは、赤色、緑色および青色のそれぞれについて、入力信号レベルと出力信号レベルとを対応付けたものであり、白バランスを最適化するようなガンマ特性をもつ補正テーブルである。すなわち、この基本ガンマ補正テーブル21bが適用された画素では、赤色、緑色および青色が全て同一レベルの入力信号あれば、表示される画像が白色になる。図2(A)に示した基本ガンマ補正テーブル21bでは、表示デバイスの透過特性や発光効率等を考慮して、入力信号に対する出力信号の比を、青色、赤色、緑色の順に高くしてある。
【0028】
高輝度化ガンマ補正テーブル21aは、画像中の高輝度領域(いわゆるハイライト部分)を強調するようなガンマ特性をもつ補正テーブルであり、入力信号における白側(高輝度側25)領域において基本ガンマ補正テーブル21bとは異なる入出力特性を有する。具体的には、高輝度側25の階調領域では、赤色および緑色の出力信号レベルを基本ガンマ補正テーブル21bの場合よりも高くし、青色の出力信号レベルに揃えている。これにより、高輝度化ガンマ補正テーブル21aが適用された画素では、高輝度側25における赤色、緑色および青色のそれぞれの信号を入力すると、表示される画像が基本ガンマ補正テーブル21bを適用した場合よりも高輝度になる。なお、ここでは、高輝度化ガンマ補正テーブル21aが、高輝度側25において赤色および緑色の出力信号レベルを上げて青色の出力信号レベルに揃えるようなガンマ特性をもつようにしたが、高輝度側25の総合輝度をさらに高めることができるものであれば、それ以外のガンマ特性をもつようにしてもよい。
【0029】
次に、図3を参照して、以上のような構成の画像表示装置1の動作を説明する。図3は、信号判定部13の動作を説明するための具体的画像の一例を表すもので、図3(A)は画面全体の画像を示し、図3(B)は図3(A)の画像の一部を拡大したものである。
【0030】
スケーラ11に入力される画像データが、例えば図3(A)に示したように、高輝度で表示される月26を含む夜景であったとする。このときスケーラ11では、表示デバイス24の表示解像度に合うように画像データを拡大または縮小した後、画像データを記憶部12に記憶する。
【0031】
信号判定部13の輝度検出部14は、記憶部12に記憶された画像データのうち水平方向の複数ライン分の画像信号について、画像の水平方向(X−X方向)と垂直方向(Y−Y方向)とのそれぞれにおいて、画像信号の輝度レベルが所定の輝度しきい値よりも大きいかそれ以下かを判断し、輝度しきい値よりも大きい領域を高輝度画素領域として検出する。なお、複数ライン分の画像信号を参照することにより、水平方向に沿った画素列の輝度レベル判定ばかりでなく、垂直方向に沿った画素列の輝度レベル判定をも行うことが可能になっている。
【0032】
具体的には、次のような処理を行う。図3(A)に示した画像には、高輝度の月26(図3(B))が含まれているため、この月26の部分では、図3(C)および図3(F)に示したように、輝度レベルが高くなる。この場合、月26の部分の輝度レベルが所定の輝度しきい値TH1よりも高いので、図の斜線で示したように、月26の部分に対応する領域が高輝度画素領域H1として検出される。
【0033】
信号判定部13の輝度変化検出手段15は、記憶部12に記憶された画像データのうち水平方向の複数ライン分の画像信号を取り込んで、高域通過フィルタに通す。これにより、画像の水平方向と垂直方向とのそれぞれにおいて輝度変化信号(輝度信号を微分した信号)を得る。そして、輝度変化検出手段15は、輝度変化信号が所定の輝度変化量しきい値よりも大きいかそれ以下かを判断し、輝度変化量しきい値よりも大きい画素を境界とする画素領域を輝度大変化画素領域として検出する。なお、複数ライン分の画像信号に高域通過フィルタを適用し、これを通過したものを参照するようにしたので、水平方向の輝度変化ばかりでなく、垂直方向の輝度変化をも検出することができる。
【0034】
具体的には、次のような処理を行う。図3(B)に示したように、月26と夜空27との境界部分では、輝度が、低から高(または高から低)に変化しているので、図3(D)および図3(G)に示したような輝度変化信号が得られる。輝度変化信号の符号が正であることは、輝度が低から高に変化していることを意味し、符号が負であることは、輝度が高から低に変化していることを意味する。また、輝度変化信号の絶対値が大きい(小さい)ということは、輝度変化量が大きい(小さい)ことを意味する。図3(D)および図3(G)においては、月26と夜空27との境界部分で輝度変化信号が所定の輝度変化量しきい値TH2およびTH2を越えている。このため、輝度変化信号のレベルが正方向に大きくなっている画素と、輝度変化信号のレベルが負方向に大きくなっている画素とにより囲まれる領域(月26の部分に対応)が輝度大変化画素領域H2として検出される。この輝度大変化画素領域H2は、周辺画素との間での輝度変化量が大きく、且つ、輝度が低、高、低というように順に変化する領域を示している。
【0035】
信号判定部13は、画像の水平方向と垂直方向とのそれぞれにおいて、輝度検出手段14により検出された高輝度画素領域H1と、輝度変化検出手段15により検出された輝度大変化画素領域H2とが重複した領域H3を、論理積演算により求める。これにより、図3(E)および図3(H)において斜線で示したように、周辺よりも輝度が高く、且つ、周辺に対する輝度変化量がある値よりも大きい画素領域H3を得る。
【0036】
次に、信号判定部13の面積判定手段16は、得られた重複領域(画素領域H3)の面積が所定の面積しきい値以上か未満かを判断し、面積しきい値未満の場合に、これを高輝度化補正対象領域(以下、特定画素領域という。)として決定する。こうして得られた高輝度化補正対象領域は、画像中の面積がある基準値(面積しきい値)よりも小さく、輝度がある基準値(輝度しきい値)以上であり、かつ、周辺に対する輝度変化量がある基準値(輝度変化量しきい値)よりも大きい領域である。
【0037】
信号判定部13は、面積判定手段16で検出した画像中の特定画素領域の画像信号と特定画素領域以外の他の画素領域の画像信号に対して異なるガンマ補正をするように、制御信号CSをスイッチ部23に出力する。
【0038】
ガンマ補正部22は、スイッチ部23の切り換えにより、ホワイトバランス調整部20からのRGB信号のうち特定画素領域の画像信号については、高輝度化ガンマ補正テーブル21aを記憶部21から読み出して適用する一方、特定画素領域以外の画像信号については、基本ガンマ補正テーブル21bを記憶部21から読み出して適用する。これにより、特定画素領域については、より高輝度になるように高輝度化ガンマ補正が行われる一方、他の画素領域については、白バランスを優先させた通常の基本ガンマ補正が行われる。表示デバイス24は、ガンマ補正部22によって補正されたRGB信号に基づいて、画像を表示する。
【0039】
このように、本実施の形態では、画像から特定画素領域を抽出し、特定画素領域に対してのみ高輝度を伸長させるようなガンマ補正を行うようにしたので、特定画素領域の輝き感を最大限に表現することができる。なお、特定画素領域では、赤色および緑色についてのガンマ特性を青色についてのガンマ特性に揃えるようにしていることから、各色の輝度のバランス(白バランス)が崩れている。ところが、人間の目は、小さい領域における色度バランスの崩れを視認しにくく、しかも、特に高輝度の階調領域では色ずれに対する視感度が低い。このため、各色の輝度バランスが崩れていてもさほど気にはならず、むしろ、高輝度化による輝き感の向上を実感することとなる。その結果、表示画像のコントラスト感を高めて、画質を改善することができる。
【0040】
[第2の実施の形態]
次に、本発明の他の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態の説明において、第1の実施の形態と同じ構成要素には、同一番号を付してその詳細な説明を省略または簡略する。
【0041】
図4は、本発明の第2の実施の形態に係る画像表示装置の概略構成を表すものである。図5は、ガンマ補正テーブルおよび補正関数を表すものである。
【0042】
本実施の形態に係る画像表示装置2は、スイッチ部23および記憶部21に代えて、演算制御部31および記憶部30が設けられている点で、第1の実施の形態の画像表示装置2と異なる。
【0043】
記憶部30には、基本ガンマ補正テーブル21bのみが記憶されている。演算制御部31は、記憶部30から基本ガンマ補正テーブル21bを読み出して、ガンマ特性を補正関数によって変調させることによって、高輝度化ガンマ補正テーブル(図5(C))を生成するようになっている。補正関数は、演算制御部31に設けられた補正関数記憶部32に記憶され、演算時にそこから読み出されるようになっている。
【0044】
次に、このような構成の画像表示装置2の動作を説明する。
【0045】
信号判定部13は、面積判定手段16により検出した特定画素領域と特定画素領域以外の他の画素領域に対して異なるガンマ補正をするように、制御信号CSを補正関数記憶部32に出力する。
【0046】
演算制御部31は、制御信号CSに応じて、基本ガンマ補正テーブル21b(図5(A))を記憶部30から読み出すと共に、補正関数(図5(B))を補正関数記憶部32から読み出す。この補正関数は、低輝度側においてゲインが1であり、高輝度側において入力信号レベルの増加と共にゲインも大きくなるような特性を有するものである。演算制御部31は、さらに、基本ガンマ補正テーブル21bを補正関数によって変調する演算(例えば乗算)を行い、高輝度側において赤色および緑色の出力信号レベルを上げて青色の出力信号レベルに揃えるような特性を有する高輝度化ガンマ補正テーブル(図5(C))を生成する。
【0047】
これ以降の動作は、上記第1の実施の形態の場合と同様である。すなわち、ガンマ補正部22は、ホワイトバランス調整部20からのRGB信号のうち特定画素領域の画像信号については、補正関数を用いて生成した高輝度化ガンマ補正テーブルを適用する一方、特定画素領域以外の画像信号については、記憶部30から読み出したままの基本ガンマ補正テーブル21bを適用する。これにより、特定画素領域については、より高輝度になるように高輝度化ガンマ補正が行われる一方、他の画素領域については、白バランスを優先させた通常の基本ガンマ補正が行われる。表示デバイス24は、ガンマ補正部22によって補正されたRGB信号に基づいて、画像を表示する。
【0048】
このように、本実施の形態では、第1の実施の形態と同様に、特定画素領域の輝き感を最大限に表現することができる等により、表示画像のコントラスト感を高めることが可能であり、画質を改善することができる。また、本実施の形態では、記憶部30に記憶しておくデータが基本ガンマ補正テーブル21bのみで良いので、記憶部30を構成するためのメモリを削減することができる。
【0049】
以上、実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、種々変形が可能である。
【0050】
例えば、上記実施の形態では、高輝度ガンマ補正テーブルが1つの場合について説明したが、複数の高輝度化ガンマ補正テーブルを用意し、これらの中から適宜に選択してガンマ補正を行うようにしてもよい。すなわち、面積判定手段16に複数の面積しきい値を設定して特定画素領域の面積の大小を多段階に判定し、その結果に応じて、適用すべき高輝度化ガンマ補正テーブルを変えるようにするのである。より具体的には、例えば次のようにしてガンマ補正処理を行うことができる。
【0051】
図6(A)〜(C)は、表示画像のいくつかの具体例を表し、図7(A)〜(C)は、図6(A)〜(C)の各ケースにおける特定画素領域の面積に応じて適用されるガンマ補正テーブルを表すものである。図6(A)に示した夜空27の画像には特定画素領域が存在しないので、図7(A)に示した基本ガンマ補正テーブルを適用する。また、図6(B)に示した画像では、面積判定手段16において、第1の面積しきい値以上、且つ、第2の面積しきい値未満の面積の特定画素領域(月26)が存在すると判定されるので、その特定画素領域に対して、図7(B)に示した高輝度化ガンマ補正テーブルを適用する。さらに、図6(C)に示した画像では、面積判定手段16において、第2の面積しきい値以上の面積の特定画素領域(星28)が存在すると判定されるので、その特定画素領域に対して、図7(B)に示した高輝度化ガンマ補正テーブルよりもさらに高輝度階調領域を伸長した高輝度化ガンマ補正テーブル(図7(C)を参照)を適用する。このように、特定画素領域の面積に応じて高輝度化ガンマ補正テーブルを取り替えることにより、ハイライト部分の大小に応じて最適な高輝度化ガンマ補正が行われるので、よりきめの細かい制御が可能になる。
【0052】
また、上記実施の形態では、画像中に特定画素領域が1つだけ存在する場合について説明したが、画像中に特定画素領域が複数存在している場合には、そのそれぞれに対して高輝度化ガンマ補正が行われるのはもちろんである。この場合、特定画素領域毎に適用される高輝度化ガンマ補正テーブルが異なっていても良い。
【0053】
また、上記実施の形態では、基本ガンマ補正テーブル21bが1つである場合について説明したが、画像信号の種類に応じて基本ガンマ補正テーブル21bを代えるようにしてもよい。この場合、基本ガンマ補正テーブル21bが変えられるのに対応して、高輝度化ガンマ補正テーブルを代えるようにしてもよい。
【0054】
また、上記実施の形態では、第1および第2の条件の両方を満たす特定画素領域に高輝度化ガンマ補正テーブルを適用する場合について説明したが、これに限定されることはない。すなわち、ある一定以上の輝度の高輝度画素領域(第1の条件のみを満たす領域)の画像信号に対して高輝度化ガンマ補正テーブルを適用して、輝度をさらに高める高輝度化ガンマ補正を行う一方、高輝度画素領域以外の画像信号に対して基本ガンマ補正テーブル21bを適用して基本ガンマ補正を行うようにしてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、高輝度画素領域と輝度大変化画素領域の重複領域がある一定のサイズよりも小さい場合に限って、これを高輝度化補正対象領域とするようにしたが、サイズの制限をせずに、高輝度画素領域と輝度大変化画素領域の重複領域を直ちに高輝度化補正対象領域とするようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像表示装置の構成を表すブロック図である。
【図2】図1の画像表示装置において用いられるガンマ補正テーブルを表す図である。
【図3】信号判定部の動作を説明するための表示画像の一例を表す図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る画像表示装置の構成を表すブロック図である。
【図5】図4の画像表示装置において用いられるガンマ補正テーブルおよび補正関数を表す図である。
【図6】表示画像のいくつかの例を表す図である。
【図7】図6に示した各ケースにおいて、特定画素領域の面積に応じて適用されるガンマ補正テーブルを表すものである。
【図8】従来のガンマ補正テーブルを表す図である。
【符号の説明】
【0057】
1,2…画像表示装置、13…信号判定部、14…輝度検出部、15…輝度変化検出部、16…面積判定部、21…記憶部、22…ガンマ補正部、30…記憶部、31…演算制御部、32…補正関数記憶部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度しきい値を上回るという第1の条件、および、入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度変化量しきい値よりも大きく変化するという第2の条件のうち、少なくとも前記第1の条件を満たす画素領域を検出する検出手段と、
検出された前記画素領域以外の画像信号に対して基本ガンマ補正を行う一方、前記画素領域の画像信号に対して輝度をさらに高めるための高輝度化ガンマ補正を行うことにより、入力画像の輝度補正を行う補正手段と
を備えた画像処理回路。
【請求項2】
前記検出手段は、前記第1の条件に加えて前記第2の条件をも満たす画素領域を検出する
請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項3】
前記画素領域の面積を検出し、この検出された面積が所定の面積しきい値を下回っているか否かを判定する判定手段をさらに備え、
前記補正手段は、前記検出された面積が前記面積しきい値を下回っていると判定された場合に限り、前記入力画像の輝度補正を行う
請求項1または請求項2に記載の画像処理回路。
【請求項4】
前記画素領域の面積を検出する検出手段をさらに備え、
前記補正手段は、検出された面積の大小に応じて、異なる特性での高輝度化ガンマ補正を行う
請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項5】
前記補正手段は、前記基本ガンマ補正に用いるガンマ補正テーブルと、前記高輝度化ガンマ補正に用いるガンマ補正テーブルとをそれぞれ別個に有する
請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項6】
前記補正手段は、前記基本ガンマ補正に用いるガンマ補正テーブルと、少なくとも1つの関数とを有し、前記ガンマ補正テーブルを前記関数によって変調させることによって、前記高輝度化ガンマ補正に用いるガンマ補正テーブルを生成する
請求項1に記載の画像処理回路。
【請求項7】
入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度しきい値を上回るという第1の条件、および、入力された画像信号の輝度レベルが所定の輝度変化量しきい値よりも大きく変化するという第2の条件のうち、少なくとも前記第1の条件を満たす画素領域を検出する検出手段と、
検出された前記画素領域以外の画像信号に対して基本ガンマ補正を行う一方、前記画素領域の画像信号に対して輝度をさらに高めるための高輝度化ガンマ補正を行うことにより、入力画像の輝度補正を行う補正手段と、
前記補正手段により補正された画像信号に基づいて画像を表示する表示手段と
を備えた画像表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−38954(P2010−38954A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−198307(P2008−198307)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】