説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および表示装置

【課題】入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することが可能な画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および表示装置を提供する。
【解決手段】Nビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、周波数成分検出部が検出した各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化する検出値平滑部と、平滑化した検出信号に基づいてグラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、制御信号に基づいて入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号または入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部とを備える画像処理装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CRTディスプレイ(Cathode Ray Tube display)に替わる表示装置として、有機ELディスプレイ(organic ElectroLuminescence display。または、OLEDディスプレイ(Organic Light Emitting Diode display)ともよばれる。)、FED(Field Emission Display。電界放出ディスプレイ)、LCD(Liquid Crystal Display。液晶ディスプレイ)、PDP(Plasma Display Panel。プラズマディスプレイ)、プロジェクターなど様々な表示装置が開発されている。
【0003】
また、例えば放送局などから送信される画像信号は一般的に8ビットで256階調を表すことができるが、上記のような表示装置の中には、10ビットや12ビットなどの階調性能を有する表示パネルを備えるものが登場している。
【0004】
このような中、表示パネルの階調性能を引き出すために入力された画像信号の階調数を拡張する補正を行う技術が開発されている。入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換する技術としては、例えば、特許文献1が挙げられる。
【0005】
また、ブロック歪やモスキートノイズなどのノイズを除去する技術も開発されている。エッジの平滑化を防ぎながら時間的な平滑化処理を行う技術としては、例えば、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−124451号公報
【特許文献2】特開平10−229546号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
表示パネルの階調性能を引き出すために入力された画像信号の階調数を拡張する補正を行う従来の技術(以下、「従来の技術1」とよぶ場合がある。)は、入力された画像信号に基づいてグラデーションを示す領域(近接する画素間における差分値が所定の値以下の領域であって、凹凸の数が少ない領域。以下、「グラデーション領域」という。)を検出し、検出されたグラデーション領域を空間的に平滑化する。つまり、従来の技術1を用いる場合には、エッジを示す領域(以下、「エッジ領域」という。)や、テクスチャを示す領域(近接する画素間における差分値が所定の値以下の領域であって、凹凸の数が多い領域。以下、「テクスチャ領域」という。)では、画像信号の補正が行われず、グラデーション領域では、グラデーション領域がより滑らかになるように画像信号が補正される。したがって、従来の技術1を用いることによってより高画質化を図ることができる。
【0008】
しかしながら、従来の技術1を用いる場合、空間的に検出したグラデーション領域を空間的に平滑化するので、検出される可能性があるグラデーション領域が大きくなればなるほど(グラデーションが緩やかなほど)、空間的な参照範囲が広いフィルタが必要となる。そのため、従来の技術1を用いる場合には、検出される可能性があるグラデーション領域が大きくなればなるほど、より大きなタップのフィルタを設けなければならないのでフィルタの回路規模が大きくなってしまう。また、上記フィルタをソフトウェアで実現する場合には、検出されたグラデーション領域が大きくなればなるほどステップ数が増えることから、処理時間の増大へと繋がる恐れがある。
【0009】
また、ノイズを除去する従来の技術(以下、「従来の技術2」とよぶ場合がある。)は、1フレーム前の平滑化された画像と入力された画像信号が示す画像の同じ位置の画素同士を比較して、差分値が小さい、すなわち時間的な変化が小さい場合に、時間的な平滑化をに行う。また、従来の技術2は、上記差分値が大きい、すなわち時間的な変化が大きい場合は、表示画面内をエッジが動いている領域と判断して平滑化を行わない。よって、従来の技術2を用いる場合には、表示画面内で位置が変化するエッジ領域を保護することができるので、画質の低下をある程度は防止できる可能性はある。
【0010】
しかしながら、従来の技術2は、上記差分値に応じて選択的に平滑化を行うので、エッジ領域以外の領域であるグラデーション領域およびテクスチャ領域とを区別することなく平滑化を行ってしまう。また、従来の技術は、ノイズを除去することを目的とする技術であるため、グラデーション領域をより滑らかに補正すること(階調改善)については、何らの考慮もなされていない。よって、従来の技術2を用いる場合には、平滑化により細かい凹凸が失われるため、例えば、壁や遠い山などの質感が損なわれ、画質が低下する。
【0011】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することが可能な、新規かつ改良された画像処理装置、画像処理方法、プログラム、および表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の第1の観点によれば、入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、上記周波数成分検出部が検出した検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化する検出値平滑部と、上記検出値平滑部が平滑化した検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、Nビットの上記入力画像信号が入力され、上記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、上記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいは上記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部とを備え、上記階調数拡張部は、上記入力画像信号の時間的な変化量に応じて上記入力画像信号の時間的な平滑化を選択的に行う画像処理装置が提供される。
【0013】
かかる構成では、グラデーション領域が空間的に検出され、検出結果に基づいて選択的に入力画像信号に対する時間的な平滑化が行われる。よって、かかる構成により、平滑化に係るフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、高画質化を図ることが可能となる。
【0014】
また、上記階調数拡張部は、上記第1出力画像信号または上記第2出力画像信号を記憶し、上記入力画像信号の1フレーム前の遅延画像信号を出力するフレームメモリと、上記入力画像信号と上記遅延画像信号とに基づく上記入力画像信号の時間的な変化量に応じて、上記入力画像信号の時間的な平滑化を画素ごとに選択的に行う時間的平滑演算部と、上記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、上記制御信号がグラデーション領域を示す場合には上記時間的平滑演算部において選択的に平滑化された入力画像信号を上記第2出力画像信号として出力し、上記制御信号がグラデーション領域以外を示す場合には、上記入力画像信号をkビットシフトさせて上記第1出力画像信号として出力する選択部とを備えてもよい。
【0015】
また、上記制御信号生成部は、上記検出値平滑部が平滑化した検出信号と複数の閾値とを用いて、対応する画素それぞれにおける上記第1出力画像信号と上記第2出力画像信号との混合比率を規定する制御信号を出力し、上記階調数拡張部は、上記第1出力画像信号または上記第2出力画像信号を記憶し、上記入力画像信号の1フレーム前の遅延画像信号を出力するフレームメモリと、上記入力画像信号と上記遅延画像信号とに基づく上記入力画像信号の時間的な変化量に応じて、上記入力画像信号の時間的な平滑化を画素ごとに選択的に行う時間的平滑演算部と、上記入力画像信号と、上記時間的平滑演算部において選択的に平滑化された入力画像信号とが入力され、上記画素ごとに混合比率が規定された上記制御信号に基づいて、対応する各画素における上記第1出力画像信号と上記第2出力画像信号との比率が上記制御信号が規定する混合比率と同一となるように、上記入力画像信号をkビットシフトさせた上記第1出力画像信号と、上記時間的平滑演算部において選択的に平滑化された入力画像信号である上記第2出力画像信号とを画素ごとに混合して出力する混合部とを備えてもよい。
【0016】
また、上記時間的平滑演算部は、上記遅延画像信号から階調数がN+kビットに拡張された入力画像信号を減算し、画素ごとの差分値を算出する減算部と、画素ごとの上記差分値と、上記入力画像信号の時間的な変化量を判定するための所定の閾値とを比較し、画素ごとの上記差分値を比較結果に応じた値に変換する非線形変換部と、上記非線形変換部から出力される画素ごとの差分値と、上記階調数がN+kビットに拡張された入力画像信号とを画素ごとに加算する加算部と、上記階調数がN+kビットに拡張された入力画像信号と、上記加算部から出力される画像信号とに基づいて画素ごとに加重平均演算を行うことにより上記第2出力画像信号を出力する加重平均演算部とを備えてもよい。
【0017】
また、上記目的を達成するために、本発明の第2の観点によれば、Nビット(Nは正の整数)の入力画像信号が複数入力される画像信号処理装置であって、上記入力画像信号それぞれから所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、上記周波数成分検出部が検出した検出信号に基づいて、複数の入力画像信号それぞれが対応する各画素における検出信号が最大の検出信号を選択する最大値選択部と、上記最大値選択部が選択した検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号それぞれを空間的に平滑化する検出値平滑部と、上記検出値平滑部が平滑化した検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、Nビットの上記入力画像信号が複数入力され、上記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、入力された複数の上記入力画像信号それぞれに対して上記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいは上記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部とを備え、上記階調数拡張部は、上記複数の入力画像信号それぞれの時間的な変化量に応じて、上記複数の入力画像信号それぞれの時間的な平滑化を選択的に行う画像処理装置が提供される。
【0018】
かかる構成では、グラデーション領域が空間的に検出され、検出結果に基づいて選択的に複数の入力画像信号それぞれに対する時間的な平滑化が行われる。よって、かかる構成により、平滑化に係るフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、高画質化を図ることが可能となる。
【0019】
また、上記目的を達成するために、本発明の第3の観点によれば、入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出するステップと、上記検出するステップにおいて検出された検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化するステップと、上記平滑化するステップにおいて平滑化された検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成するステップと、上記生成するステップにおいて生成された制御信号に基づいて、Nビットの上記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいはNビットの上記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力するステップとを有し、上記出力するステップでは、上記入力画像信号の時間的な変化量に応じて上記入力画像信号の時間的な平滑化が選択的に行われる画像処理方法が提供される。
【0020】
かかる方法では、グラデーション領域が空間的に検出され、検出結果に基づいて選択的に入力画像信号に対する時間的な平滑化が行われる。よって、かかる方法を用いることにより、平滑化に係るフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、高画質化を図ることが可能となる。
【0021】
また、上記目的を達成するために、本発明の第4の観点によれば、入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出するステップ、上記検出するステップにおいて検出された検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化するステップ、上記平滑化するステップにおいて平滑化された検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成するステップ、上記生成するステップにおいて生成された制御信号に基づいて、Nビットの上記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいはNビットの上記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力するステップをコンピュータに実行させ、上記出力するステップでは、上記入力画像信号の時間的な変化量に応じて上記入力画像信号の時間的な平滑化が選択的に行われるプログラムが提供される。
【0022】
かかるプログラムを実行するコンピュータでは、グラデーション領域が空間的に検出され、検出結果に基づいて選択的に入力画像信号に対する時間的な平滑化が行われる。よって、かかるプログラムを用いることにより、平滑化に係るフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、高画質化を図ることが可能となる。
【0023】
また、上記目的を達成するために、本発明の第5の観点によれば、入力された画像信号を補正する画像信号補正部と、上記画像信号補正部が補正した画像信号に基づいて、N+kビット(N、kは正の整数)の画像信号が示す画像を表示可能な画像表示部とを備え、上記画像信号補正部は、入力されたNビットの入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、上記周波数成分検出部が検出した検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化する検出値平滑部と、上記検出値平滑部が平滑化した検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、Nビットの上記入力画像信号が入力され、上記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、上記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビットの第1出力画像信号、あるいは上記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部とを備え、上記階調数拡張部は、上記入力画像信号の時間的な変化量に応じて上記入力画像信号の時間的な平滑化を選択的に行う表示装置が提供される。
【0024】
かかる構成では、グラデーション領域が空間的に検出され、検出結果に基づいて選択的に入力画像信号に対する時間的な平滑化が行われる。よって、かかる構成により、平滑化に係るフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、高画質化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態に係る表示装置における時間的平滑フィルタによるグラデーション領域の補正の一例を示す説明図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る表示装置を示すブロック図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る画像処理部を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る周波数成分検出部の構成の一例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係るバンドパス・フィルタの周波数特性の一例を示す説明図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る検出値平滑部における平滑化処理の一例を説明するための説明図である
【図7】本発明の第1の実施形態に係る制御信号生成部における閾値処理を説明するための説明図である。
【図8】本発明の第1の実施形態に係る制御部が生成する制御信号Dcの一例を示す説明図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る階調数拡張部の構成の一例を示すブロック図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る時間的平滑演算部の構成の一例を示すブロック図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る非線形変換部の処理の第1の例を示す説明図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る非線形変換部の処理の第2の例を示す説明図である。
【図13】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る周波数成分検出部を示すブロック図である。
【図14】本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る周波数成分検出部を説明するための説明図である。
【図15】本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る周波数成分検出部を示すブロック図である。
【図16】本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る制御信号生成部における閾値処理を説明するための説明図である。
【図17】本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る階調数拡張部を示すブロック図である。
【図18】本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る表示装置を示すブロック図である。
【図19】本発明の第2の実施形態に係る表示装置を示すブロック図である。
【図20】本発明の第2の実施形態に係る画像処理部を示すブロック図である。
【図21】本発明の第2の実施形態に係る画像処理部における各信号の一例を示す説明図である。
【図22】本発明の第3の実施形態に係る画像処理部を示すブロック図である。
【図23】本発明の第4の実施形態に係る表示装置を示すブロック図である。
【図24】本発明の第4の実施形態に係る擬似階調処理部における擬似階調処理の一例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0028】
(本発明の実施形態に係る表示装置の処理の概要)
本発明の実施形態に係る表示装置について説明する前に、まず、本発明の実施形態に係る表示装置の処理の概要について説明する。以下では、本発明の実施形態に係る表示装置に画像信号が入力されるものとして説明するが、表示装置に入力される画像信号は、動画像(いわゆる映像)である。なお、本発明の実施形態に係る表示装置に静止画像を示す画像信号が入力された場合に、本発明の実施形態に係る表示装置が当該静止画像を表示させることができることは、言うまでもない。
【0029】
また、以下では、本発明の実施形態に係る表示装置に入力される画像信号がデジタル信号であるとして説明する。なお、本発明の実施形態に係る画像信号は、例えば、アナログ放送などで用いられるアナログ信号がA/Dコンバータ(Analog to Digital converter)でデジタル信号に変換されたものであってもよい。また、本発明の実施形態に係る表示装置に入力される画像信号としては、例えば、放送局から送信され表示装置が受信した画像信号が挙げられる。なお、本発明の実施形態に係る表示装置に入力される画像信号は、例えば、LAN(Local Area Network)などのネットワークを介して外部装置から送信されて表示装置が受信したものであってもよく、また、表示装置が備える記憶部に保持された映像ファイルや画像ファイルを表示装置が読み出したものであってもよい。
【0030】
本発明の実施形態に係る表示装置における処理は、〔1〕入力された画像信号を補正する画像処理フェーズと、〔2〕補正された画像信号を表示する表示フェーズ、とに分けられる。
【0031】
〔1〕画像処理フェーズ
本発明の実施形態に係る表示装置は、画像処理フェーズにおいて、例えば以下の〔1−1〕、〔1−2〕の処理を行い、入力されたNビット(Nは正の整数)の画像信号(以下、「入力画像信号」という。)を、N+k(kは正の整数)の画像信号(以下、「出力画像信号」という。)に変換する。ここで、上記kの値は、本発明の実施形態に係る表示装置が画像を表示する表示部の階調性能に応じた値である。なお、本発明の実施形態に係る表示装置が画像を表示する表示部の階調性能が入力画像信号と同じNビットの場合には、本発明の実施形態に係る表示装置は、例えば、N+kビットの出力画像信号をさらにNビットに補正する。
【0032】
〔1−1〕グラデーション領域の判定
本発明の実施形態に係る表示装置は、入力画像信号が示す画像を、エッジを示す「エッジ領域」、エッジ領域以外で凹凸の数が少ない領域を示す「グラデーション領域」、およびエッジ領域以外で凹凸の数が多い領域を示す「テクスチャ領域」に大きく分類し、入力画像信号に基づいてグラデーション領域を判定する。ここで、本発明の実施形態に係る表示装置は、入力画像信号に基づいてグラデーション領域を空間的に検出することによって、入力画像信号が対応する画素ごとにグラデーション領域の判定を行う。
【0033】
〔1−2〕画像信号の補正
本発明の実施形態に係る表示装置は、上記〔1−1〕における判定結果に基づいて、画素ごとに以下の(A)、(B)のように画像信号の補正を行う。
【0034】
(A)グラデーション領域ではないと判定された場合
本発明の実施形態に係る表示装置は、グラデーション領域ではないと判定した場合(すなわち、エッジ領域またはテクスチャ領域の場合)には、例えば、入力された画像信号をkビット左へシフトさせ、入力画像信号の下位にkビットの固定値を付加した画像信号(以下、「第1出力画像信号」とよぶ場合がある。)を出力する。
【0035】
(B)グラデーション領域と判定した場合
本発明の実施形態に係る表示装置は、空間的な検出によりグラデーション領域と判定した場合には、入力された画像信号が時間的に平滑化され、N+kビットに拡張された画像信号(以下、「第2出力画像信号」とよぶ場合がある。)を出力する。
【0036】
上述したように、検出したグラデーション領域を空間的に平滑化する場合には、検出される可能性があるグラデーション領域が大きくなればなるほど、より大きなタップのフィルタを設けなければならないなどの問題が生じる恐れがある。そこで、本発明の実施形態に係る表示装置は、時間的なフィルタ(以下「時間的平滑フィルタ」という。)を用いることによって、検出したグラデーション領域を平滑化する。また、本発明の実施形態に係る表示装置は、入力画像信号の時間的な変化量(現フレームの画像信号と、1フレーム前の出力画像信号とにおける画素ごとの変化量)に応じて入力画像信号の時間的な平滑化を選択的に行う。
【0037】
〔時間的平滑フィルタによるグラデーション領域の補正〕
図1は、本発明の実施形態に係る表示装置における時間的平滑フィルタによるグラデーション領域の補正の一例を示す説明図である。
【0038】
グラデーション領域のような画像が緩やかに変化している領域では、量子化によって階調の段差が生じる。そして、上記階調の段差が擬似輪郭(Contouring)として視認される(図1(a))。
【0039】
特に、画像信号が高い圧縮率で圧縮された映像を示す場合には、擬似輪郭の位置が時間的に大きく変動するという現象が見られる。ここで、例えば、MPEG−2(ISO/IEC13818)などのようにブロック単位の圧縮方式では、ブロック単位で画像信号の高域成分が省略される。よって、画像信号が、ブロック単位の圧縮方式に係る画像信号である場合には、特にグラデーション領域では高域成分が省略されやすい傾向があり、残ったDC(Direct Current)成分の寄与が支配的となる。そのため、上記の場合には、ブロックの境界で階調の段差が生じやすくなり、さらにランダムノイズの混入によって、ブロックのDC成分の値が時間的に変動することによって、階調段差の位置がブロック単位で時間的に変動する。その結果として、グラデーション領域に生じた擬似輪郭の位置が時間的に大きく変動するように見えることとなる(図1(b))。
【0040】
上記のようなグラデーション領域では、画像信号を時間的に平滑化することによって、時間的な変動を抑制するだけでなく、空間的に滑らかなグラデーションを表示画面に表示させることができる(図1(c)。
【0041】
また、時間的平滑フィルタは、空間的に対応する位置にあって時間的に異なる画像信号(画像データ)を用いるため、階調段差が時間的に変動する範囲が広い場合であっても、空間的な参照範囲を広げることなく時間的な平滑化を行うことができる。時間的平滑フィルタが用いられる場合には、検出されたグラデーション領域が大きな領域であったとしても(グラデーションが緩やかであったとしても)、空間的に平滑化する場合のように、フィルタの回路規模や処理時間の増大を招く恐れはない。
【0042】
本発明の実施形態に係る表示装置は、空間的に検出したグラデーション領域を、時間的平滑フィルタを用いて平滑化することによって、フィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、グラデーション領域を選択的に平滑化することができる。
【0043】
本発明の実施形態に係る表示装置は、各画素に対応する入力画像信号に対して上記(A)または(B)の補正を行うことによって、Nビットの入力画像信号をN+kビットの出力画像信号に補正する。
【0044】
また、本発明の実施形態に係る表示装置は、入力画像信号に基づいてグラデーション領域を判定し、当該判定結果に基づいて、グラデーション領域に対しては入力画像信号を平滑化し、エッジ領域またはテクスチャ領域に対しては入力画像信号を平滑化しない。したがって、本発明の実施形態に係る表示装置では、入力画像信号の補正によって細かい凹凸が失われることはなく、例えば、壁や遠い山などの質感も損なわれないので、高画質化を図ることができる。
【0045】
〔2〕表示フェーズ
本発明の実施形態に係る表示装置は、上記〔1〕の画像処理フェーズにおいて補正された画像信号(出力画像信号)に基づいて、画像を表示する。
【0046】
本発明の実施形態に係る表示装置は、上述した処理によって、入力画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して入力画像信号を時間的に平滑化し、入力画像信号よりも階調数の多い出力画像信号に変換して画像を表示する。
【0047】
したがって、本発明の実施形態に係る表示装置は、表示部の階調性能が入力画像信号よりも高い場合であっても、表示部の表示性能を引き出すことができ、また、入力画像信号の補正によって細かい凹凸が失われることはないので、高画質化を図ることができる。
【0048】
また、本発明の実施形態に係る表示装置は、入力画像信号基づいてグラデーション領域を空間的に検出し、検出結果に基づいて入力画像信号に対して時間的な平滑化を選択的に行う。したがって、本発明の実施形態に係る表示装置は、フィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、高画質化を図ることができる。
【0049】
以下、本発明の実施形態に係る表示装置の構成について、具体的に説明する。また、以下では、本発明の実施形態に係る表示装置として、上記〔1〕画像処理フェーズを担う「画像処理部」と、上記〔2〕表示フェーズを担う「表示部」とを備える構成を示す。なお、本発明の実施形態は、例えば、以下に示す画像処理部を独立の装置(画像処理装置)として実現してもよい。
【0050】
(第1の実施形態)
図2は、本発明の第1の実施形態に係る表示装置1000を示すブロック図である。なお、図2では、表示装置1000として、画像処理部100が、モノクロ画像の処理、あるいはカラー画像の複数チャンネルのうちの1チャンネル分の処理を行う構成を示している。
【0051】
[表示装置1000の構成]
図2を参照すると、表示装置1000は、画像処理部100と、表示部190とを備える。
【0052】
また、表示装置1000は、例えば、MPU(Micro Processing Unit)などで構成され表示装置1000全体を制御することが可能な制御部(図示せず)や、制御部が使用するプログラムや演算パラメータなどの制御用データが記録されたROM(Read Only Memory。図示せず)、制御部により実行されるプログラムなどを一次記憶するRAM(Random Access Memory。図示せず)、放送局などから送信される画像信号を受信する受信部(図示せず)、映像ファイルや画像ファイルなどを記憶可能な記憶部(図示せず)、ユーザが操作可能な操作部(図示せず)、外部装置(図示せず)と通信を行うための通信部(図示せず)などを備えてもよい。表示装置1000は、例えば、データの伝送路としてのバス(bus)により上記各構成要素間を接続する。
【0053】
ここで、記憶部(図示せず)としては、例えば、ハードディスク(Hard Disk)などの磁気記録媒体や、EEPROM(Electrically Erasable and Programmable Read Only Memory)、フラッシュメモリ(flash memory)、MRAM(Magnetoresistive Random Access Memory)、FeRAM(Ferroelectric Random Access Memory)、PRAM(Phase change Random Access Memory)などの不揮発性メモリ(nonvolatile memory)が挙げられる。また、操作部(図示せず)としては、例えば、キーボードやマウスなどの操作入力デバイスや、ボタン、方向キー、あるいは、これらの組み合わせなどが挙げられる。
【0054】
また、表示装置1000と外部装置(図示せず)とは、例えば、USB(Universal Serial Bus)端子やIEEE1394規格の端子、DVI(Digital Visual Interface)端子、あるいはHDMI(High-Definition Multimedia Interface)端子などを介して物理的に接続されてもよいし、また、WUSB(Wireless Universal Serial Bus)やIEEE802.11などを利用して無線で接続されてもよい。さらに、表示装置1000と外部装置(図示せず)とは、例えば、ネットワークを介して接続されてもよい。ネットワークとしては、例えば、LANやWAN(Wide Area Network)など有線ネットワーク、MIMO(Multiple-Input Multiple-Output)を用いたWLAN(Wireless Local Area Network)などの無線ネットワーク、あるいは、TCP/IP(Transmission Control Protocol/Internet Protocol)などの通信プロトコルを用いたインターネットなどが挙げられる。したがって、通信部(図示せず)は、外部装置(図示せず)との接続形態に応じたインタフェースを有する。
【0055】
画像処理部100は、入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号Diを、N+k(kは正の整数)の出力画像信号Do(第1出力画像信号、または第2出力画像信号。以下同様とする。)に変換する。より具体的には、画像処理部100は、入力画像信号Diが示す画像を画素ごとにグラデーション領域の判定を行う制御部102と、制御部102から出力される制御信号Dcに基づいて画素ごとに階調数の拡張、または、入力画像信号Diの補正および階調数の拡張を行う階調数拡張部104とを備える。画像処理部100の詳細については後述する。
【0056】
表示部190は、N+kビットの階調性能を有し、画像処理部100から出力されるN+kビットの出力画像信号Doが示す画像を表示する。
【0057】
〔表示部190の構成例〕
表示部190は、例えば、画像表示部(図示せず)と、行駆動部(図示せず)と、列駆動部(図示せず)と、電源供給部(図示せず)と、表示制御部(図示せず)とを備える。
【0058】
画像表示部は、例えば、マトリクス状(行列状)に配置された複数の画素を備える。例えば、SD(Standard Definition)解像度の映像を表示する画像表示部は、少なくとも640×480=307200(データ線×走査線)の画素を有し、カラー表示のために当該画素が赤(Red)、緑(Green)、青(Blue)のサブピクセル(sub pixel)からなる場合には、640×480×3=921600(データ線×走査線×サブピクセルの数)のサブピクセルを有する。同様に、例えば、HD(High Definition)解像度の映像を表示する表示部は、1920×1080の画素を有し、カラー表示の場合には、1920×1080×3のサブピクセルを有する。
【0059】
また、画像表示部は、例えば、画素ごとに印加する電圧量/電流量を制御するための画素回路を備えていてもよい。画素回路は、例えば、印加される走査信号および電圧信号により電流量を制御するためのスイッチ素子およびドライブ素子と、電圧信号を保持するためのキャパシタで構成される。上記スイッチ素子および上記ドライブ素子は、例えば、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor)で構成される。
【0060】
行駆動部および列駆動部は、例えば、画像表示部が有する複数の画素に電圧信号を印加して各画素を発光させる。ここで、行駆動部および列駆動部は、一方が画素のON/OFFを決定する電圧信号(走査信号)を印加し、他方が表示させる映像に応じた電圧信号(画像信号)を印加する役割を果たす。また、行駆動部および列駆動部の駆動方式としては、例えば、上記マトリクス状に配置された画素ごとに発光させる点順次駆動走査方式、上記マトリクス状に配置された画素を一列ごとに発光させる線順次駆動走査方式、そして、上記マトリクス状に配置された全ての画素を発光させる面順次駆動走査方式などが挙げられる。
【0061】
電源供給部は、行駆動部および列駆動部に電源を供給し、行駆動部および列駆動部には電圧が印加される。また、電源供給部が、行駆動部および列駆動部に印加する電圧の大きさは、画像処理部100から出力される出力画像信号Doに応じて可変する。
【0062】
表示制御部は、例えば、MPUなどで構成され、画像処理部100から出力される出力画像信号Doに応じて、行駆動部および列駆動部の一方に画素のON/OFFを決定する電圧を画素に印加するための制御信号を入力し、また、他方に画像信号を入力する。また、表示制御部は、画像処理部100から出力される出力画像信号Doに応じて、電源供給部による行駆動部および列駆動部への電源の供給を制御する。
【0063】
表示部190は、上記のような構成により、出力画像信号Doに応じた画像を表示する。ここで、表示部190としては、例えば、有機ELディスプレイや、FED、PDPなどの自発光型の表示デバイスや、LCDなどのバックライト型の表示デバイスが挙げられる。
【0064】
本発明の第1の実施形態に係る表示装置1000は、図2に示すような構成により、入力画像信号に基づいて対応する画素ごとにグラデーション領域を判定し、当該判定結果に応じて入力画像信号Diの補正(階調数の拡張、または、入力画像信号Diの補正および階調数の拡張)を行う。そして、表示装置1000は、補正された画像信号、すなわち、出力画像信号Doに基づいて画像を表示する。次に、本発明の第1の実施形態に係る画像処理部100について、より詳細に説明する。なお、以下では、説明の簡単化のために、水平方向の処理を例に挙げて説明を行う。
【0065】
[第1の実施形態に係る画像処理部100]
図3は、本発明の第1の実施形態に係る画像処理部100を示すブロック図である。図3を参照すると、画像処理部100は、制御部102と、階調数拡張部104とを備える。また、制御部102は、周波数成分検出部106と、検出値平滑部108と、制御信号生成部110とを備える。
【0066】
周波数成分検出部106は、入力画像信号Diから所定の周波数成分を画素ごとに検出し、検出結果を周波数成分検出値Dfとして出力する。
【0067】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る周波数成分検出部106の構成の一例を示すブロック図である。図4を参照すると、周波数成分検出部106は、バンドパス・フィルタ112(Band-Pass Filter。以下、「BPF」とよぶ場合もある。)と絶対値変換部114とで構成される。
【0068】
バンドパス・フィルタ112は、特定の周波数帯域の画像信号のみを通過させ、その他の帯域の画像信号を減衰させることによって、BPF出力Dbpfを画素ごとに出力する。図5は、本発明の第1の実施形態に係るバンドパス・フィルタ112の周波数特性の一例を示す説明図である。図5を参照すると、バンドパス・フィルタ112は、周波数fをピークとする通過帯域を有する。ここで周波数fは、例えば、テクスチャ領域の周波数特性に応じて、周波数f付近の成分がテクスチャ領域に多く含まれるように定められる。また、周波数fは、例えば、表示部190の画面サイズと画素数、そして想定される視距離に応じて設定される。
【0069】
絶対値変換部114は、BPF出力Dbpfの絶対値を算出して周波数成分検出値Dfとして出力する。
【0070】
再度図3を参照して画像処理部100の構成要素について説明する。検出値平滑部108は、周波数成分検出部106から出力された各画素に対応する周波数成分検出値Dfに基づいて、周波数成分検出値Dfの平滑化を画素ごとに行い、平滑化された平均検出値Daveを出力する。
【0071】
検出値平滑部108は、平滑化を行う画素に対応する注目画素を含む所定の平滑領域を画素ごとに設定し、当該平滑領域内に含まれる画素に対応する周波数成分検出値Dfの平均値を算出することによって、平均検出値Daveを画素ごとに出力する。図6は、本発明の第1の実施形態に係る検出値平滑部108における平滑化処理の一例を説明するための説明図であり、平滑領域として水平方向に8画素分の大きさの領域が設定された例を示している。なお、検出値平滑部108が設定する平滑領域は、例えば、水平方向および/または垂直方向に任意の大きさの領域であってもよい。また、平滑領域は、例えば、画面上の位置に応じて大きさが変えられてもよい。
【0072】
また、検出値平滑部108は、例えば、相加平均や、相乗平均、所定の重み付けをした重み付け平均により平均値を算出する。
【0073】
再度図3を参照して画像処理部100の構成要素について説明する。制御信号生成部110は、検出値平滑部108から出力される平均検出値Daveに基づいて、グラデーション領域の判定を閾値処理によって画素ごとに行う。
【0074】
〔平均検出値Daveに基づいて判定を行う意義〕
ここで、画像処理部100が、平均検出値Daveに基づいてグラデーション領域の判定を行う意義について説明する。
【0075】
エッジ領域では周波数成分検出値Dfの値が大きくなり、一方、グラデーション領域やテクスチャ領域では、ともに周波数成分検出値Dfの値は小さくなる。したがって、周波数成分検出値Dfの値の大小だけに注目した場合、グラデーション領域とテクスチャ領域とを区別することができない。
【0076】
ここで、平滑領域における周波数成分検出値Dfの検出の頻度に着目すると、グラデーション領域では周波数成分検出値Dfの検出の頻度は低いが、テクスチャ領域では比較的検出の頻度が高くなる。また、平滑領域に含まれる周波数成分検出値Dfの値は、グラデーション領域およびテクスチャ領域ともに同程度の大きさである。つまり、平滑領域における平均的な周波数成分検出値Dfの値、すなわち平均検出値Daveに着目すると、グラデーション領域の平均検出値Daveよりもテクスチャ領域の平均検出値Daveの方が大きくなる。
【0077】
したがって、平均検出値Daveと、グラデーション領域とテクスチャ領域とを区別するための適切な閾値THとに基づく閾値処理を行えば、平均検出値Daveが閾値THより小さい場合はグラデーション領域、また、平均検出値Daveが閾値THより大きい場合はテクスチャ領域またはエッジ領域として、区別することができる。ここで、閾値THの値は、例えば、明らかにグラデーションを示す領域を有する画像を示す画像信号と、明らかにテクスチャを示す領域を有する画像を示す画像信号とを用いて決定される。
【0078】
図7は、本発明の第1の実施形態に係る制御信号生成部110における閾値処理を説明するための説明図である。制御信号生成部110は、図7に示すように、平均検出値Daveが閾値THより小さいときにはグラデーション領域を示す「1」を制御信号Dcとして出力し、平均検出値Daveが閾値TH以上のときにはテクスチャ領域またはエッジ領域、すなわちグラデーション領域以外を示す「0」を制御信号Dcとして出力する。
【0079】
ここで、制御信号生成部110がグラデーション領域を判定するために用いる閾値THの情報は、例えば、画像処理部100が備える記憶手段に記憶され、当該記憶手段から入力される。画像処理部100が備える記憶手段としては、例えば、EEPROMやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリが挙げられる。なお、閾値THの情報は、例えば、制御信号生成部110が記憶手段を備えて保持してもよく、また、表示装置1000の記憶部(図示せず)に記憶され、制御信号生成部110が当該記憶部(図示せず)から適宜読み出してもよいことは、言うまでもない。
【0080】
図8は、本発明の実施形態に係る制御部102が生成する制御信号Dcの一例を示す説明図である。ここで、図8(a)は入力画像信号Diを示し、図8(b)は、BPF出力Dbpfを示している。同様に、図8(c)〜図8(e)は、周波数成分検出値Df、平均検出値Dave、制御信号Dcをそれぞれ示している。以下、図8を参照して、グラデーション領域(図8の(1))、テクスチャ領域(図8(2))、およびエッジ領域(図8の(3))において、制御部102がどのような制御信号Dcを生成するのかについて説明する。
【0081】
〔A〕グラデーション領域(図8の(1))
(A−1)図8(a)
入力画像信号Diとして、1階調ずつ階段状に変化するグラデーション領域を例に挙げる。
【0082】
(A−2)図8(b)
バンドパスフィルタ112から出力されるBPF出力Dbpfの振幅は小さく、検出される頻度も低い。
【0083】
(A−3)図8(c)
BPF出力Dbpfは、絶対値変換部114において絶対値に変換され、周波数成分検出値Dfが出力される。周波数成分検出値Dfの値は小さく、検出される頻度も低い。
【0084】
(A−4)図8(d)
検出値平滑部108において、対応する画素ごとに平滑領域における周波数成分検出値Dfの平均値が算出され、平均検出値Daveが出力される。また、平均検出値Daveの値は、閾値THよりも小さな値となる。
【0085】
(A−5)図8(e)
制御信号生成部110において閾値処理が行われることによって、制御信号Dcが出力される。図8(d)に示す平均検出値Daveが閾値THより小さいため、制御信号Dcは、グラデーション領域を表す「1」を示す。
【0086】
〔B〕テクスチャ領域(図8(2))
(B−1)図8(a)
入力画像信号Diとして、1階調ずつ変化しながら凹凸を形成するテクスチャ領域を例に挙げる。
【0087】
(B−2)図8(b)
図8(1)のグラデーション領域と比較して、バンドパスフィルタ112から出力されるBPF出力Dbpfの振幅は同程度であるが、検出される頻度は高い。
【0088】
(B−3)図8(c)
BPF出力Dbpfは、絶対値変換部114において絶対値に変換され、周波数成分検出値Dfが出力される。図8(1)のグラデーション領域と比較して、周波数成分検出値Dfの値は同程度であるが、検出される頻度は高い。
【0089】
(B−4)図8(d)
検出値平滑部108において、対応する画素ごとに平滑領域における周波数成分検出値Dfの平均値が算出され、平均検出値Daveが出力される。また、平均検出値Daveの値は、閾値THよりも比較的大きな値となる。
【0090】
(B−5)図8(e)
制御信号生成部110において閾値処理が行われることによって、制御信号Dcが出力される。図8(d)に示す平均検出値Daveが閾値THより大きいため、制御信号Dcは、グラデーション領域以外の領域を表す「0」を示す。
【0091】
〔C〕エッジ領域(図8(3))
(C−1)図8(a)
入力画像信号Diとして、急峻に変化するエッジ領域を例に挙げる。
【0092】
(C−2)図8(b)
バンドパスフィルタ112から出力されるBPF出力Dbpfは、振幅の大きさに幅がある。
【0093】
(C−3)図8(c)
BPF出力Dbpfは、絶対値変換部114において絶対値に変換され、周波数成分検出値Dfが出力される。図8(1)のグラデーション領域、図8(2)のテクスチャ領域と比較して、周波数成分検出値Dfの値は非常に大きくなる。
【0094】
(C−4)図8(d)
検出値平滑部108において、対応する画素ごとに平滑領域における周波数成分検出値Dfの平均値が算出され、平均検出値Daveが出力される。また、平均検出値Daveの値は、エッジの近傍において閾値THよりも十分に大きな値となる。
【0095】
(C−5)図8(e)
制御信号生成部110において閾値処理が行われることによって、制御信号Dcが出力される。エッジ近傍の領域では図8(d)に示す平均検出値Daveが閾値THより大きいため、制御信号Dcはグラデーション領域以外の領域を表す「0」を示す。また、エッジ近傍から遠い領域では、図8(d)に示す平均検出値Daveが閾値THより小さくなるため制御信号Dcはグラデーション領域を表す「1」を示す。
【0096】
制御部102は、上記のような周波数成分検出部106、検出値平滑部108、および制御信号生成部110を備えることによって、入力画像信号に基づいてグラデーション領域を画素ごとに判定する。
【0097】
次に、階調数拡張部104について説明する。図9は、本発明の第1の実施形態に係る階調数拡張部104の構成の一例を示すブロック図である。階調数拡張部104は、フレームメモリ130と、時間的平滑演算部116と、選択部118とを備える。
【0098】
フレームメモリ130は、出力画像信号Do(第1出力画像信号、または第2出力画像信号)を記憶し、1フレーム遅延したタイミングで記憶した出力画像信号Doを遅延画像信号Dmとして出力する。なお、フレームメモリ130からの遅延画像信号Dmの出力制御は、例えば、制御部(図示せず)などの他の構成要素により行われてもよい。
【0099】
時間的平滑演算部116には、入力画像信号Diと遅延画像信号Dmとが入力され、時間的平滑演算部116は、入力画像信号Diの時間的な変化量に応じて入力画像信号Diの時間的な平滑化を選択的に行う。より具体的には、時間的平滑演算部116は、入力画像信号Diが示す画像のうち、時間的な変化量が大きい部分(例えば、動きがある部分)に対しては、時間的な平滑化を行わず、また、時間的な変化量が小さい部分(例えば、静止部分)に対しては、時間的な平滑化を行う。
【0100】
図10は、本発明の第1の実施形態に係る時間的平滑演算部116の構成の一例を示すブロック図である。時間的平滑演算部116は、シフト部132と、減算部134と、非線形変換部136と、加算部138と、加重平均演算部140とを備える。
【0101】
シフト部132は、入力画像信号Diをkビット左へシフトさせて、入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加したN+kビットの入力画像信号Di’を出力する。
【0102】
なお、本発明の実施形態に係る階調数拡張部104は、シフト部132を時間的平滑演算部116ではなく、時間的平滑演算部116と選択部118との前段に備える構成であってもよい。上記の構成をとる場合には、後述する選択部118は、シフト部132から出力される入力画像信号Di’を、第1出力画像信号として選択的に出力することとなる。
【0103】
減算部134は、下記の数式1に示すように、遅延画像信号Dmから入力画像信号Di’を減算し、画素ごとの差分値DIFを算出する。そして、減算部134は、画素ごとの差分値DIFを非線形変換部136へ出力する。
【0104】
DIF=Dm−Di’
・・・(数式1)
【0105】
非線形変換部136は、画素ごとの差分値DIFと、入力画像信号Diの時間的な変化量を判定するための所定の閾値とを比較し、画素ごとの差分値DIFを比較結果に応じた差分値DIF’に変換する。
【0106】
図11は、本発明の第1の実施形態に係る非線形変換部136の処理の第1の例を示す説明図である。図11では、横軸に非線形変換部136の入力である差分値DIFを示しており、縦軸に非線形変換部136の出力である差分値DIF’を示している。
【0107】
図11に示すように、非線形変換部136は、差分値DIFを、閾値Limによって制限された差分値DIF’に変換する。より具体的には、非線形変換部136は、|DIF|≦Limでは、DIF’=DIFを出力し、|DIF|>LimではDIF’=0を出力する。
【0108】
ここで、|DIF|≦Limの場合には、非線形変換部136は、入力画像信号Diの時間的な変化量が小さい、すなわち静止部分であるとみなす。また、|DIF|>Limの場合には、入力画像信号Diの時間的な変化量が大きい、すなわち動き部分であるとみなす。|DIF|>Limである場合としては、例えば、画像内のオブジェクトや画像全体が移動する場合や、シーンチェンジがあるような場合が挙げられる。
【0109】
非線形変換部136は、例えば、図11に示す処理を行うことによって、画素ごとの差分値DIFを、入力画像信号Diの時間的な変化量に応じて非線形に変換することができる。
【0110】
図12は、本発明の第1の実施形態に係る非線形変換部136の処理の第2の例を示す説明図である。図12では、図11と同様に、横軸に非線形変換部136の入力である差分値DIFを示しており、縦軸に非線形変換部136の出力である差分値DIF’を示している。
【0111】
図12に示すように、非線形変換部136は、Lim<|DIF|≦2Limの範囲で、差分値DIF’を閾値Limから0の間を連続的に変化させる。したがって、非線形変換部136は、図12に示す処理を行うことによって、例えば、変換特性の不連続性に起因するような映像のちらつきを防止しつつ、画素ごとの差分値DIFを、入力画像信号Diの時間的な変化量に応じて非線形に変換することができる。
【0112】
非線形変換部136は、例えば、図11、図12に示す処理を行うことによって、画素ごとの差分値DIFを、入力画像信号Diの時間的な変化量に応じて非線形に変換する。
【0113】
加算部138は、下記の数式2に示すように、入力画像信号Di’と、非線形変換部136から出力される画素ごとの差分値DIF’とを加算して、加算された画像信号Dm’を加重平均演算部140へ出力する。ここで、加算部138は、遅延画像信号Dmが入力画像信号Di’に対して±Limの範囲内の場合は、画像信号Dm’として遅延画像信号Dmを出力し、また、遅延画像信号Dmが入力画像信号Di’に対して±Limの範囲外の場合は、画像信号Dm’として入力画像信号Di’を出力することとなる。
【0114】
Dm’=Di’+DIF’
・・・(数式2)
【0115】
加重平均演算部140は、例えば下記の数式3に示すように、入力画像信号Di’と、加算部138から出力される画像信号Dm’とに基づいて画素ごとに、α:1−αの比率で加重平均演算を行う(ここで、αは、0≦α≦1。)。そして、加重平均演算部140は、加重平均演算の結果を時間的平滑画像信号Dsとして出力する。加重平均演算部140が出力する時間的平滑画像信号Dsは、上述した第2出力画像信号に該当する。
【0116】
Ds=(1−α)XDi’+αXDm’
・・・(数式3)
【0117】
ここで、αが大きいほど画像信号Dm’の寄与が大きくなるため、加重平均演算部140が出力する時間的平滑画像信号Dsに対する時間的平滑化の強度は大きくなる。また、逆にαが小さいほど、加重平均演算部140が出力する時間的平滑画像信号Dsに対する時間的平滑化の強度は小さくなる。例えば、α=0の場合には、Ds=Di’となり入力画像信号Di’がそのまま出力されるため、時間的な平滑化は行われない。
【0118】
加重平均演算部140は、例えば、予め規定されたαの値に応じて処理を行う。なお、加重平均演算部140は、例えば、操作部(図示せず)から伝達されるユーザ操作に応じた操作信号に応じて、αの値を適宜設定して処理を行ってもよい。
【0119】
時間的平滑演算部116は、例えば図10に示す構成によって、入力画像信号Diの時間的な変化量に応じて入力画像信号Diの時間的な平滑化を選択的に行う。ここで、時間的平滑演算部116は、遅延画像信号Dmと入力画像信号Di’の差分値が所定の閾値(±Lim)を超える部分では、Dm’=Di’に変換するので、入力画像信号Di’と画像信号Dm’の加重平均演算結果である時間的平滑画像信号Dsは入力画像信号Di’のままとなる。したがって、時間的平滑演算部116は、入力画像信号Diが示す画像のうち、時間的な変化量が大きい部分(例えば、動きがある部分)に対しては、時間的な平滑化を行わず、また、時間的な変化量が小さい部分(例えば、静止部分)に対しては、時間的な平滑化を行うことができる。
【0120】
再度図9を参照して、階調数拡張部104の構成の一例について説明する。選択部118は、制御信号生成部110から出力される制御信号Dcに基づいて、以下の(i)または(ii)に示すように、N+kビットの出力画像信号Doを対応する画素ごとに選択的に出力する。
【0121】
(i)制御信号Dcがグラデーション領域以外の領域を示す「0」である場合
制御信号Dcがグラデーション領域以外の領域を示す「0」である場合には、選択部118は、入力画像信号Diをkビット左へシフトさせ、入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加したN+kビットの第1出力画像信号を、出力画像信号Doとして出力する。なお、上述したように、階調数拡張部104が選択部118の前段にシフト部132を備える構成である場合には、選択部118は、シフト部132から出力される入力画像信号Di’を、出力画像信号Do(第1出力画像信号)として出力する。
【0122】
(ii)制御信号Dcがグラデーション領域を示す「1」である場合
制御信号Dcがグラデーション領域を示す「1」である場合には、選択部118は、時間的平滑演算部116から出力されたN+kビットの第2出力画像信号(時間的平滑画像信号Ds)を出力画像信号Doとして出力する。
【0123】
階調数拡張部104は、例えば図9に示す構成によって、制御部102から出力される制御信号Dcに応じて第1出力画像信号または第2出力画像信号を選択的に出力画像信号Doとして出力する。
【0124】
以上のように、本発明の第1の実施形態に係る表示装置1000は、Nビットの入力画像信号DiをN+kビットの出力画像信号Doに補正する画像処理部100と、N+kビットの階調性能を有する表示部190とを備える。画像処理部100は、制御部102と階調数拡張部104とを備える。制御部102は、入力画像信号Diに基づいてグラデーション領域を空間的に検出することにより、グラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを出力する。また、階調数拡張部104は、制御信号Dcに基づいて、入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Diが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を選択的に出力画像信号Doとして出力する。したがって、表示装置1000は、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換して表示することができる。
【0125】
また、表示装置1000は、グラデーション領域を判定して選択的にグラデーション領域をより滑らかに補正するため、グラデーション領域の階調性能を向上させることができる。また、表示装置1000は、エッジ領域やテクスチャ領域では入力画像を補正しないため、出力画像信号Doが示す画像は鮮鋭感を損なわない。
【0126】
また、一般的に、階調性能が不足する場合には、視覚的には、グラデーション領域では等高線状に偽輪郭が生じるなどの画質劣化がユーザにより視認され、エッジ領域やテクスチャ領域では画質劣化が目立ちにくい。表示装置1000は、選択的にグラデーション領域の階調性能を向上させるので、視覚的には画像全体に階調性能が向上したのと同様な効果を得ることができる。
【0127】
また、表示装置1000は、所定の周波数帯域の信号(BPF出力Dbpf)を検出し、所定の平滑領域で検出値を平滑した結果に基づいて閾値処理を行う。したがって、表示装置1000は、テクスチャ領域とグラデーション領域を的確に判別することができるので、誤ってテクスチャ領域を平滑化することによる鮮鋭度の低下という画質劣化を防止することができる。
【0128】
さらに、表示装置1000の画像処理部100は、空間的に検出したグラデーション領域を、時間的平滑フィルタを用いて平滑化する。したがって、表示装置1000は、空間的に平滑化する場合のようにフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、グラデーション領域を選択的に平滑化することができる。
【0129】
[表示装置1000の変形例]
〔第1の変形例〕
上記では、第1の実施形態に係る表示装置1000として、図4に示すように周波数成分検出部106が一つのバンドパス・フィルタ112を備えることにより周波数成分検出値Dfを出力する構成を示したが、本発明の第1の実施形態に係る周波数成分検出部は、複数のバンドパス・フィルタを備える構成であってもよい。
【0130】
図13は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る周波数成分検出部を示すブロック図である。なお、図13では、バンドパス・フィルタを2つ備える構成を例を示しているが、本発明の第1の実施形態に係る周波数成分検出部の変形例が、2つのバンドパス・フィルタを備える構成に限られないことは、言うまでもない。
【0131】
図13を参照すると、第1の変形例に係る周波数成分検出部は、第1のバンドパス・フィルタ112a、第1の係数乗算部120a、および第1の絶対値変換部114aと、第2のバンドパス・フィルタ112b、第2の係数乗算部120b、および第2の絶対値変換部114bと、最大値選択部122とを備える。
【0132】
第1のバンドパス・フィルタ112aには入力画像信号Diが入力され、第1のバンドパス・フィルタ112aは、周波数f1をピークとする周波数特性に基づいてBPF出力Dbpf1を出力する。
【0133】
第1の係数乗算部112aは、BPF出力Dbpf1に所定の係数K1を乗算し、重み付けがなされたBPF出力Dk1を出力する。ここで、第1の係数乗算部112aが乗算に用いる係数K1の情報は、例えば、画像処理部100が備える記憶手段に記憶され、当該記憶手段から入力される。なお、係数K1の情報は、例えば、第1の係数乗算部112aが記憶手段を備えて保持することができ、また、表示装置の記憶部(図示せず)に記憶されて第1の係数乗算部112aが当該記憶部(図示せず)から適宜読み出してもよい。
【0134】
第1の絶対値変換部114aは、重み付けがなされたBPF出力Dk1の絶対値を算出して第1周波数成分検出値Df1を出力する。
【0135】
また、第2のバンドパス・フィルタ112bには入力画像信号Diが入力され、第2のバンドパス・フィルタ112bは、周波数f2をピークとする周波数特性に基づいてBPF出力Dbpf2を出力する。第2の係数乗算部120bは、BPF出力Dbpf2に所定の係数K2を乗算し、重み付けがなされたBPF出力Dk2を出力する。また、第2の絶対値変換部114bは、重み付けがなされたBPF出力Dk2の絶対値を算出して第2周波数成分検出値Df2を出力する。ここで、第2の係数乗算部112bが乗算に用いる係数K2の情報は、第1の係数乗算部112aが乗算に用いる係数K1と同様に、例えば、画像処理部100が備える記憶手段に記憶されて当該記憶手段から入力される。
【0136】
最大値選択部122は、対応する画素ごとに周波数成分検出値Df1、Df2のうち大きい方の値を選択して、周波数成分検出値Dfとして出力する。
【0137】
ここで、第1の変形例に係る周波数成分検出部が図13の構成をとる意義について説明する。図14は、本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る周波数成分検出部を説明するための説明図である。図14では、例えば、係数K1=1、係数K2=0.5に設定した場合を示している。
【0138】
図14に示すFBはテクスチャ領域に多く含まれる主な周波数成分の帯域であり、テクスチャ領域の主な周波数成分が周波数f1となるように、第1のバンドパス・フィルタ112aが設定される。ここで、第1のバンドパス・フィルタ112aは周波数f1をピークとする特性を持つが、第1のバンドパス・フィルタ112aだけでは周波数帯域FBの範囲をすべてカバーすることができない。例えば、テクスチャ領域が周波数f2付近の成分を多く含む場合には、BPF出力Dbpf1がほとんど0(ゼロ)に近い値をとり、周波数成分検出値Dfもほとんど0(ゼロ)となるので、テクスチャ領域がグラデーション領域として誤検出される恐れがある。
【0139】
図14に示すDk1は、BPF出力Dbpf1に係数K1=1を乗じた特性を示し、Dk2はBPF出力Dbpf2に係数K2=0.5を乗じた特性を示している。Dk1とDk2を絶対値に変換した第1周波数成分検出値Df1および第2周波数成分検出値Df2の最大値を選択することによって、周波数f1付近では第1周波数成分検出値Df1が選択され、周波数f2付近では第2周波数成分検出値Df2が選択される。
【0140】
したがって、図14に示すように周波数特性の異なる複数のバンドパス・フィルタを用いることによって、帯域FB全体をカバーすることができる。
【0141】
本発明の第1の実施形態の第1の変形例に係る表示装置は、周波数成分検出部の構成が、図4に示す周波数成分検出部106と異なるが、入力画像信号Diに基づいて周波数成分検出値Dfを出力することができる。また、第1の変形例に係る表示装置のその他の構成は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様である。したがって、第1の変形例に係る表示装置は、上述した第1の実施形態に係る表示装置1000と同様の効果を奏することができる。
【0142】
〔第2の変形例〕
図15は、本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る周波数成分検出部を示すブロック図である。
【0143】
図15を参照すると、第2の変形例に係る周波数成分検出部は、基本的に図13に示す第1の変形例に係る周波数成分検出部と同様の構成を有するが、図13の最大値選択部122が加算部124に置き換わっている。
【0144】
加算部124は、対応する画素ごとに第1周波数成分検出値Df1および第2周波数成分検出値Df2を加算して周波数成分検出値Df(=Df1+Df2)を出力する。このとき、周波数f1付近では周波数成分検出値Dfに対する第1周波数成分検出値Df1の割合が高く、また、周波数f2付近では周波数成分検出値Dfに対する第2周波数成分検出値Df2の割合が高くなる。したがって、上記の場合であっても図14に示す帯域FB全体にわたって良好に周波数成分検出値Dfを出力することができる。
【0145】
本発明の第1の実施形態の第2の変形例に係る表示装置は、周波数成分検出部の構成が、図4に示す周波数成分検出部106と異なるが、図13に示す第1の変形例に係る周波数成分検出部と同様に、入力画像信号Diに基づいて周波数成分検出値Dfを出力することができる。また、第2の変形例に係る表示装置のその他の構成は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様である。したがって、第2の変形例に係る表示装置は、上述した第1の実施形態に係る表示装置1000と同様の効果を奏することができる。
【0146】
〔第3の変形例〕
本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る表示装置として、画像処理部が第1出力画像信号と第2出力画像信号との混合比率を規定する制御信号Dcを生成し、制御信号Dcが示す混合比率に応じた出力画像信号Doを出力する構成について説明する。なお、第3の変形例に係る表示装置の画像処理部は、図3と同様の構成を有する。
【0147】
図16は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る制御信号生成部における閾値処理を説明するための説明図である。第3の変形例に係る制御信号生成部は、閾値TH1、TH2および検出値平滑部から出力される平均検出値Daveを用いた閾値処理により制御信号Dcを出力する。
【0148】
具体的には、第3の変形例に係る制御信号生成部は、平均検出値Daveが閾値TH1より小さいとき、グラデーション領域を表す制御信号「1」を生成し、平均検出値Daveが閾値TH2より大きいとき、グラデーション領域以外の領域を示す制御信号「0」を生成する。また、第3の変形例に係る制御信号生成部は、平均検出値Daveが閾値TH1と閾値TH2との間である場合には、例えば、Dc=1とDc=0とを結ぶ直線(すなわち、閾値TH1、TH2の設定により一意に定まる。)に基づいて、中間的な値の制御信号Dcを生成する。上記のように生成される制御信号Dcは、第2出力画像信号(平滑化画像信号Ds)の混合比率を示す。
【0149】
ここで、第3の変形例に係る制御信号生成部がグラデーション領域を判定するために用いる閾値TH1、TH2の情報は、例えば、画像処理部が備える記憶手段に記憶され、当該記憶手段から入力される。なお、閾値TH1、TH2の情報は、例えば、制御信号生成部が記憶手段を備えて当該記憶手段に保持されてもよいし、また、表示装置の記憶部(図示せず)に記憶されて制御信号生成部が当該記憶部(図示せず)から適宜読み出してもよい。
【0150】
図17は、本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る階調数拡張部を示すブロック図である。第3の変形例に係る階調数拡張部は、フレームメモリ130と、時間的平滑演算部116と、混合部126とを備える。
【0151】
フレームメモリ130および時間的平滑演算部116は、それぞれ図9に示すフレームメモリ130および時間的平滑演算部116と同様の機能、構成を有する。
【0152】
混合部126は、制御信号Dcが示す混合比率に応じて、対応する画素ごとに時間的平滑画像信号Ds(第2出力画像信号)と、入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加したN+kビットの第1出力画像信号とを、Dc:(1−Dc)の割合で混合し、出力画像信号Doとして出力する。
【0153】
ここで、第3の変形例に係る階調数拡張部が、時間的平滑画像信号Ds(第2出力画像信号)と、第1出力画像信号とを混合して出力する意義について説明する。入力画像信号Diに微小なノイズが混じることによって同様の画像の同じ表示位置に対応する平均検出値Daveが時間的に変化し、閾値THを上回ったり下回ったりする場合がある。このとき、単純な閾値処理では、制御信号Dcがグラデーション領域を示す「1」とグラデーション領域以外の領域を示す「0」とを交互に行き来するため、第1出力画像信号と時間的平滑画像信号Ds(第2出力画像信号)とが交互に選択されて、ちらつきとなってユーザに視認される恐れがある。
【0154】
一方、混合処理では、混合比率を示す制御信号Dcが「1」と「0」の中間の値をとりうるため、第1出力画像信号と時間的平滑画像信号Ds(第2出力画像信号)との比率が極端に変化することはない。したがって、第3の変形例に係る表示装置は、第1の実施形態に係る表示装置1000よりも、ちらつきの発生を抑制することができる。
【0155】
本発明の第1の実施形態の第3の変形例に係る表示装置は、制御信号生成部における制御信号Dcの生成手段、および階調数拡張部の構成が、上述した第1の実施形態に係る表示装置1000と異なるが、表示装置1000と同様に、制御信号Dcに基づいて出力画像信号Doを出力して表示することができる。したがって、第3の変形例に係る表示装置は、上述した第1の実施形態に係る表示装置1000と同様の効果を奏することができる。
【0156】
〔第4の変形例〕
本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る表示装置として、画像処理部が水平方向、垂直方向それぞれに対して処理を行う構成について説明する。
【0157】
図18は、本発明の第1の実施形態の第4の変形例に係る表示装置1500を示すブロック図である。図18を参照すると、表示装置1500は、画像処理部150と、表示部190を備える。ここで、表示部190は、図1に示す表示部190と同様の構成をとり、N+kビットの階調性能を有する。
【0158】
画像処理部150は、水平制御部102hと、垂直制御部102vと、階調数拡張部142とを備える。
【0159】
水平制御部102hは、入力された入力画像信号Diに基づいて、水平方向のグラデーション領域であるか否かを示す水平制御信号Dhcを画素ごとに出力する。ここで、水平制御部102hは、例えば、図3に示す制御部102と同様の構成をとることによって、水平制御信号Dhcを出力する。
【0160】
垂直制御部102vは、入力された入力画像信号Diに基づいて、垂直方向のグラデーション領域であるか否かを示す垂直制御信号Dvcを画素ごとに出力する。ここで、垂直制御部102vは、例えば、図3に示す制御部102と同様の構成をとることによって、垂直制御信号Dvcを出力する。
【0161】
階調数拡張部142は、水平制御信号Dhcおよび垂直制御信号Dvcに基づいて、第1出力画像信号、または、時間的に平滑化された第2出力画像信号を出力画像信号Doとして画素ごとに選択的に出力する。より具体的には、階調数拡張部142は、水平制御信号Dhcおよび垂直制御信号Dvcの双方がグラデーション領域を示す場合に、第2出力画像信号を出力画像信号Doとして出力する。ここで、階調数拡張部142は、図9に示す階調数拡張部104と基本的に同様の構成をとり、階調数拡張部142の選択部が水平制御信号Dhcおよび垂直制御信号Dvcに基づいて出力画像信号Doを出力する点が、図9に示す階調数拡張部104と異なる。
【0162】
画像処理部150は、図18に示す構成を有することによって、水平方向、垂直方向の両方についてテクスチャ領域やエッジ領域の鮮鋭度を損なうことを防止することができる。
【0163】
(第1の実施形態に係る画像処理装置)
上記では、第1の実施形態に係る表示装置について説明したが、上述した第1の実施形態に係る表示装置(変形例も含む)が備える画像処理部は、表示部とは別体の独立の装置、すなわち、画像処理装置であってもよい。
【0164】
(第1の実施形態に係るプログラム)
[表示装置に係るプログラム]
本発明の第1の実施形態に係る表示装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0165】
[画像処理装置に係るプログラム]
本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0166】
(第1の実施形態に係る画像処理方法)
次に、本発明の第1の実施形態に係る画像処理方法について説明する。以下では、第1の実施形態に係る画像処理方法を表示装置1000が行うとして説明するが、本発明の第1の実施形態に係る画像処理装置に適用することができることは、言うまでもない。
【0167】
表示装置1000は、Nビットの入力画像信号Diから所定の周波数成分を画素ごとに検出する(S100)。ステップS100の検出は、例えば、1または複数のバンドパス・フィルタを用いて行われる。
【0168】
表示装置1000は、ステップS100において検出された検出値(周波数成分検出値Df)を空間的に平滑化し(S102)、平滑化された検出値(平均検出値Dave)に基づいて制御信号Dcを生成する(S104)。
【0169】
表示装置1000は、入力画像信号DiとステップS104において生成された制御信号Dcとに基づいて、入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Diが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を選択的に出力する(S106)。また、ステップS106では、表示装置1000は、入力画像信号Diの時間的な変化量に応じて入力画像信号Diの時間的な平滑化を選択的に行う。
【0170】
表示装置1000は、上記ステップS100〜S106の処理を行うことによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0171】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態に係る表示装置として、カラー画像の複数チャンネルを処理する構成について説明する。なお、以下では、カラー画像の複数チャンネルとして、赤(以下「R」という。)、緑(以下、「G」という。)、青(以下、「B」という。)の画像信号が入力される例を示す。
【0172】
図19は、本発明の第2の実施形態に係る表示装置2000を示すブロック図である。図19を参照すると、表示装置2000は、画像処理部200と表示部190とを備え、画像処理部200は、制御部202と、階調数拡張部204とを備える。
【0173】
画像処理部200にはNビットのR/G/Bの入力画像信号Ri、Gi、Biがそれぞれ入力され、画像処理部200は、入力画像信号Ri、Gi、BiをN+kビットの出力画像信号Ro、Go、Boに変換して出力する。また、表示部190は、図1に示す第1の実施形態に係る表示部190と同様にN+kビットの階調性能を有し、N+kビットの出力画像信号Ro、Go、Boに基づいて画像を表示する。以下、画像処理部200の構成について、具体的に説明する。
【0174】
[画像処理部200の構成例]
図20は、本発明の第2の実施形態に係る画像処理部200を示すブロック図である。図20を参照すると、制御部202は、第1の周波数成分検出部106aと、第2の周波数成分検出部106bと、第3の周波数成分検出部106cと、最大値選択部206と、検出値平滑部108と、制御信号生成部110とを備える。また、階調数拡張部204は、第1の階調数拡張部204aと、第2の階調数拡張部204bと、第3の階調数拡張部204cとを備える。
【0175】
〔制御部202〕
第1の周波数成分検出部106aには入力画像信号Riが、第2の周波数成分検出部106bには入力画像信号Giが、そして第3の周波数成分検出部106cには入力画像信号Biがそれぞれ入力される。ここで、第1の周波数成分検出部106a〜第3の周波数成分検出部106cそれぞれは、図4に示す第1の実施形態に係る周波数成分検出部106と同様の構成をとることができる。したがって、第1の周波数成分検出部106aは、入力画像信号Riから所定の周波数成分を検出して周波数成分検出値Rfを出力し、同様に、第2の周波数成分検出部106bは周波数成分検出値Gf、第3の周波数成分検出部106cは周波数成分検出値Bfを出力する。
【0176】
最大値選択部206は、周波数成分検出値Rf、GfおよびBfの中から対応する画素ごとに最大値を選択して、最大検出値Dmaxを出力する。
【0177】
検出値平滑部108は、図3に示す第1の実施形態に係る検出値平滑部108と同様に、平滑領域における最大検出値Dmaxの平均値を算出して、平均検出値Daveを出力する。
【0178】
制御信号生成部110は、図3に示す第1の実施形態に係る検出値平滑部108と同様に、平均検出値Daveと閾値THを用いた閾値処理によってグラデーション領域を判定し、判定結果を制御信号Dcとして出力する。
【0179】
〔階調数拡張部204〕
第1の階調数拡張部204a、第2の階調数拡張部204b、および第3の階調数拡張部204cそれぞれは、図3に示す第1の実施形態に係る階調数拡張部204と同様の構成を有する。したがって、第1の階調数拡張部204aは、制御信号Dcに基づいて、Nビットの入力画像信号Riの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Riが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を選択的に出力画像信号Roとして出力する。また同様に、第2の階調数拡張部204b、第3の階調数拡張部204cは、それぞれ出力画像信号Go、Boを出力する。
【0180】
画像処理部200は、例えば図20の構成によって、出力画像信号Ro、Go、Boを出力する。
【0181】
次に、画像処理部200が、R/G/Bの周波数成分検出結果の最大値を用いることの意義について説明する。図21は、本発明の第2の実施形態に係る画像処理部200における各信号の一例を示す説明図である。ここで、図20では、テクスチャ領域における各信号の一例を示している。カラー画像におけるテクスチャ領域では、3色のR/G/B画像信号が同様な頻度で変化するとは限らず、むしろR/G/Bで変化の頻度に差があるのが一般的であるからである。
【0182】
図21(a)〜図21(c)は、入力画像信号Ri、Gi、Biをそれぞれ示している。また、図21(d)〜図21(f)は、周波数成分検出値Rf、Gf、Bfをそれぞれ示している。ここで、図21(a)の入力画像信号Riは、比較的凹凸が多いため、図21(d)の周波数成分検出値Rfは比較的高い頻度で検出されている。また、図21(b)、図21(c)の入力画像信号Gi、Biは変化が少ないため、図21(e)の周波数成分検出値Gfおよび図21(f)の周波数成分検出値Bfの検出の頻度は低い。
【0183】
図21(g)は、最大検出値Dmaxを示している。ここで、画像処理部200は、各画素ごとに周波数成分検出値Rf、Gf、Bfの最大値を選択するので、周波数成分検出値Rf、Gf、Bf単独の場合よりも、最大検出値Dmaxの検出の頻度が高くなる。
【0184】
図21(h)は平均検出値Daveを示し、図21(i)は制御信号Dcを示している。ここで、最大検出値Dmaxの検出の頻度が高いため、平均検出値Daveは閾値THよりも大きな値をとり、制御信号Dcはグラデーション領域以外の領域を示す「0」となる。
【0185】
ここで、仮に周波数成分検出値Rf、Gf、Bfに対して、最大値を選択することなく、各色ごとに領域の判別を行うとすると、入力画像信号の変化の少ないGとBについてはグラデーション領域として検出され、画像が平滑化される恐れがある。図21に示す入力画像信号Gi、Biのように変化が少ない画像信号であっても、テクスチャ領域ではそもそも画像信号の変化の幅が小さいため、鮮鋭感への寄与は無視できない。つまり、テクスチャ領域では、変化の少ない入力画像信号が平滑化されることによって、鮮鋭感が損なわれてしまう。画像処理部200は、R/G/Bの周波数成分検出結果の最大値を用いることにより、上記の問題の発生を防止することができる。
【0186】
画像処理部200は、周波数成分検出値Rf、Gf、Bfの最大値Dmaxに対して検出値の平滑化と閾値処理を行うことによって、グラデーション領域をテクスチャ領域と間違えることなく検出することができる。そのため、テクスチャ領域を平滑化することによる鮮鋭度の低下という画質劣化を抑制することができる。
【0187】
以上のように、本発明の第2の実施形態に係る表示装置2000は、カラー画像を示す複数チャンネルの入力画像信号Ri、Gi、Bi(それぞれNビットの入力画像信号)を、それぞれN+kビットの出力画像信号Ro、Go、Boに補正する画像処理部200と、N+kビットの階調性能を有する表示部190とを備える。画像処理部200は、制御部202と階調数拡張部204とを備える。制御部202は、入力画像信号Ri、Gi、Biに基づいてグラデーション領域を空間的に検出することにより、グラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを出力する。また、階調数拡張部204は、制御信号Dcに基づいて入力画像信号の下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号が時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を、選択的に出力画像信号Ro、Go、Boとして出力する。したがって、表示装置2000は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換して表示することができる。
【0188】
また、表示装置2000は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、グラデーション領域を判定して選択的にグラデーション領域をより滑らかに補正するので、グラデーション領域の階調性能を向上させることができる。また、表示装置2000は、エッジ領域やテクスチャ領域では入力画像を補正しないため、出力画像信号Ro、Go、Boが示す画像は鮮鋭感を損なわない。
【0189】
また、表示装置2000は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、選択的にグラデーション領域の階調性能を向上させるので、視覚的には画像全体に階調性能が向上したのと同様な効果を得ることができる。
【0190】
また、表示装置2000は、周波数成分検出値Rf、Gf、Bfの最大値Dmaxに対して検出値の平滑化と閾値処理を行うことによって、グラデーション領域をテクスチャ領域と間違えることなく検出することができる。そのため、テクスチャ領域を平滑化することによる鮮鋭度の低下という画質劣化を抑制することができる。
【0191】
さらに、表示装置2000の画像処理部200は、第1の実施形態に係る表示装置1000の画像処理部100と同様に、空間的に検出したグラデーション領域を、時間的平滑フィルタを用いて平滑化する。したがって、表示装置2000は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、空間的に平滑化する場合のようにフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、グラデーション領域を選択的に平滑化することができる。
【0192】
[表示装置2000の変形例]
第2の実施形態に係る表示装置は、上述した第1の実施形態に係る表示装置の変形例と同様の変形例をとることができる。
【0193】
(第2の実施形態に係る画像処理装置)
上記では、第2の実施形態に係る表示装置について説明したが、上述した第2の実施形態に係る表示装置(変形例も含む)が備える画像処理部は、表示部とは別体の独立の装置、すなわち、画像処理装置であってもよい。
【0194】
(第2の実施形態に係るプログラム)
[表示装置に係るプログラム]
本発明の第2の実施形態に係る表示装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して画像信号を選択的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0195】
[画像処理装置に係るプログラム]
本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して画像信号を選択的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0196】
(第2の実施形態に係る画像処理方法)
次に、本発明の第2の実施形態に係る画像処理方法について説明する。以下では、本発明の第2の実施形態に係る画像処理方法を表示装置2000が行うとして説明するが、本発明の第2の実施形態に係る画像処理装置に適用することもできる。
【0197】
表示装置2000は、Nビットの入力画像信号Ri、Gi、Biそれぞれから所定の周波数成分を画素ごとに検出する(S200)。
【0198】
表示装置2000は、ステップS200において検出された検出値(周波数成分検出値Rf、Gf、Bf)に基づいて、画素ごとに最大値を選択する(S202)。
【0199】
表示装置2000は、ステップS202において選択された最大値Dmaxを空間的に平滑化し(S204)、平滑化された検出値(平均検出値Dave)に基づいて制御信号Dcを生成する(S206)。
【0200】
表示装置2000は、各チャンネルごとの入力画像信号Ri、Gi、Biと、ステップS206において生成された制御信号Dcとに基づいて、入力画像信号の下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号が時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を、各チャンネルごとに選択的に出力する(S208)。
【0201】
表示装置2000は、上記ステップS200〜S208の処理を行うことによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0202】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態に係る表示装置として、カラー画像の複数チャンネルを処理する他の構成について説明する。なお、以下では、カラー画像の複数チャンネルとして、輝度信号(以下「Y」という。)、輝度信号と青色成分の差を示す信号(以下「U」という。)、および輝度信号と赤色成分の差を示す信号(以下「V」という。)が、画像信号として入力される例を示す。
【0203】
第3の実施形態に係る表示装置(図示せず)は、画像処理部250と、表示部190とを備える。画像処理部250にはNビットのY/U/Vの入力画像信号Yi、Ui、Viがそれぞれ入力され、画像処理部250は、入力画像信号Yi、Ui、ViをN+kビットの出力画像信号Yo、Uo、Voに変換して出力する。また、表示部190は、図1に示す第1の実施形態に係る表示部190と同様にN+kビットの階調性能を有し、N+kビットの出力画像信号Yo、Uo、Voに基づいて画像を表示する。以下、画像処理部250の構成について、具体的に説明する。
【0204】
[画像処理部250の構成例]
図22は、本発明の第3の実施形態に係る画像処理部250を示すブロック図である。図22を参照すると、画像処理部250は、制御部252と、階調数拡張部254とを備える。
【0205】
〔制御部202〕
制御部252は、図3に示す第1の実施形態に係る制御部102と同様の構成を有する。制御部252には入力画像信号Yiが入力され、制御部252は、入力画像信号Yiに基づいてグラデーション領域を空間的に検出することにより、グラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを出力する。ここで、第3の実施形態に係る画像処理部250が入力画像信号Yiに基づいてグラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを出力する理由は、色に係る入力画像信号Ui、Viが帯域圧縮された信号である可能性があるからである。
【0206】
なお、本発明の実施形態に係る画像処理部は、入力画像信号Yi、Ui、Viに基づいてグラデーション領域を空間的に検出することにより、グラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを出力してもよい。上記の場合、本発明の実施形態に係る画像処理部の制御部は、図20に示す第2の実施形態に係る制御部202と同様の構成をとる。また、上記の構成は、例えば、色に係る入力画像信号Ui、Viの帯域が高い場合に特に有効である。
【0207】
〔階調数拡張部254〕
階調数拡張部254は、第1の階調数拡張部254aと、第2の階調数拡張部254bと、第3の階調数拡張部254cとを備える。第1の階調数拡張部254a、第2の階調数拡張部254b、および第3の階調数拡張部254cそれぞれは、図3に示す第1の実施形態に係る階調数拡張部204と同様の構成を有する。したがって、第1の階調数拡張部254aは、制御信号Dcに基づいて、Nビットの入力画像信号Yiの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Yiが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を選択的に出力画像信号Roとして出力する。また同様に、第2の階調数拡張部254b、第3の階調数拡張部254cは、それぞれ出力画像信号Uo、Voを出力する。
【0208】
画像処理部250は、例えば図22の構成によって、出力画像信号Yo、Uo、Voを出力する。
【0209】
以上のように、本発明の第3の実施形態に係る表示装置は、カラー画像を示す複数チャンネルの入力画像信号Yi、Ui、Vi(それぞれNビットの入力画像信号)を、それぞれN+kビットの出力画像信号Yo、Uo、Voに補正する画像処理部250と、N+kビットの階調性能を有する表示部190とを備える。画像処理部250は、制御部252と階調数拡張部254とを備える。制御部252は、入力画像信号Yiに基づいてグラデーション領域を空間的に検出することにより、グラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを出力する。また、階調数拡張部254は、制御信号Dcに基づいて入力画像信号の下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号が時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を、選択的に出力画像信号Yo、Uo、Voとして出力する。したがって、第3の実施形態に係る表示装置は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換して表示することができる。
【0210】
また、第3の実施形態に係る表示装置は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、グラデーション領域を判定して選択的にグラデーション領域をより滑らかに補正するので、グラデーション領域の階調性能を向上させることができる。また、第3の実施形態に係る表示装置は、エッジ領域やテクスチャ領域では入力画像を補正しないため、出力画像信号Yo、Uo、Voが示す画像は鮮鋭感を損なわない。
【0211】
また、第3の実施形態に係る表示装置は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、選択的にグラデーション領域の階調性能を向上させるので、視覚的には画像全体に階調性能が向上したのと同様な効果を得ることができる。
【0212】
さらに、第3の実施形態に係る表示装置の画像処理部250は、第1の実施形態に係る表示装置1000の画像処理部100と同様に、空間的に検出したグラデーション領域を、時間的平滑フィルタを用いて平滑化する。したがって、第3の実施形態に係る表示装置は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、空間的に平滑化する場合のようにフィルタの回路規模や処理時間の増大を招くことなく、グラデーション領域を選択的に平滑化することができる。
【0213】
[第3の実施形態に係る表示装置の変形例]
第3の実施形態に係る表示装置は、上述した第1の実施形態に係る表示装置の変形例と同様の変形例をとることができる。
【0214】
(第3の実施形態に係る画像処理装置)
上記では、第3の実施形態に係る表示装置について説明したが、上述した第3の実施形態に係る表示装置(変形例も含む)が備える画像処理部は、表示部とは別体の独立の装置、すなわち、画像処理装置であってもよい。
【0215】
(第3の実施形態に係るプログラム)
[表示装置に係るプログラム]
本発明の第3の実施形態に係る表示装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して画像信号を選択的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0216】
[画像処理装置に係るプログラム]
本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して画像信号を選択的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0217】
(第3の実施形態に係る画像処理方法)
次に、本発明の第3の実施形態に係る画像処理方法について説明する。以下では、本発明の第3の実施形態に係る画像処理方法を、第3の実施形態に係る表示装置が行うとして説明するが、本発明の第3の実施形態に係る画像処理装置に適用することもできる。
【0218】
第3の実施形態に係る表示装置は、Nビットの入力画像信号Yiから所定の周波数成分を画素ごとに検出する(S300)。
【0219】
第3の実施形態に係る表示装置は、ステップS300において検出された検出値(周波数成分検出値Df)を空間的に平滑化し(S302)、平滑化された検出値(平均検出値Dave)に基づいて制御信号Dcを生成する(S304)。
【0220】
第3の実施形態に係る表示装置は、各チャンネルごとの入力画像信号Yi、Ui、Viと、ステップS304において生成された制御信号Dcとに基づいて、入力画像信号の下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号が時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を、各チャンネルごとに選択的に出力する(S306)。
【0221】
第3の実施形態に係る表示装置は、上記ステップS300〜S306の処理を行うことによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0222】
(第4の実施形態)
次に、本発明の第4の実施形態に係る表示装置として、表示部がNビットの階調性能を有する場合の構成について説明する。
【0223】
図23は、本発明の第4の実施形態に係る表示装置3000を示すブロック図である。図23を参照すると、表示装置3000は、画像処理部300と、表示部390とを備える。
【0224】
画像処理部300は、制御部102と、階調数拡張部104と、擬似階調処理部302とを備える。制御部102および階調数拡張部104は、図2に示す第1の実施形態に係る画像処理部100が備える制御部102および階調数拡張部104と同様の構成を有する。つまり、制御部102は、入力画像信号Diに基づいて制御信号Dcを生成し、階調数拡張部104は、制御信号Dcに基づいて入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Diが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を、選択的に画像信号Deとして出力する。
【0225】
擬似階調処理部302は、擬似的な中間階調を使ってN+kビットの画像信号DeをNビットの出力画像信号Doに変換する。
【0226】
ここで、擬似階調処理部302における擬似階調処理について説明する。図24は、本発明の第4の実施形態に係る擬似階調処理部302における擬似階調処理の一例を説明するための説明図であり、擬似階調処理としてディザ処理を用いる場合の例を示している。図24(a)はディザ処理を行う2×2画素の領域を示しており、図24(b)はディザパターンの一例を示している。
【0227】
ディザ処理は、図24(a)のN+kビットの画像信号Deにおける画素a〜dに対して、図24(b)のディザパターンの各画素位置に対応する値を加算した後に、下位kビットを丸めることにより、上位Nビットを出力画像信号として出力する処理である。ここで、ディザ処理は擬似階調処理の一種であり、少ないビット数でより多くのビット数の階調を擬似的に表示することができることが知られている。
【0228】
擬似階調処理部302は、擬似階調処理としてディザ処理を用いることによって、N+kビットの画像信号Deを変換してグラデーション領域の階調性能を向上させたNビットの出力画像信号Doを出力する。
【0229】
[擬似階調処理の他の例]
なお、擬似階調処理部302は、例えば、擬似階調処理として誤差拡散処理を用いてもよい。ここで、誤差拡散処理とは、N+kビットの画像信号をNビットに丸めたときの下位kビット(「誤差データ」という。)の値を周囲の画素信号に加算あるいは減算して、誤差データを拡散していくことによって、擬似的な中間階調を得る方法である。擬似階調処理部302は、誤差拡散処理を用いて擬似階調処理を行ったとしても、上記ディザ処理を用いる場合と同様の効果を得ることができる。
【0230】
再度図23を参照して、表示装置3000の構成要素について説明する。表示部390は、Nビットの階調性能を有し、画像処理部300から出力されるNビットの出力画像信号Doが示す画像を表示する。
【0231】
上述したように、表示装置3000は、画像処理部300がNビットの入力画像信号Diを一旦階調数を拡張してN+kビットの画像信号Deに変換した後に、ディザ処理などの擬似階調処理を用いてNビットの出力画像信号Doに変換することによって、グラデーション領域の階調性能を向上させる。したがって、表示装置3000は、表示部390の階調性能がNビットであったとしても、グラデーション領域の階調性能を向上させた画像を表示することができる。
【0232】
なお、図23では、入力される画像信号がモノクロ画像の入力画像信号(あるいはカラー画像の複数チャンネルのうちの1チャンネルに対応する画像信号)Diを例に説明を行ったが、第2の実施形態に係る表示装置2000や第3の実施形態に係る表示装置のように、例えば、R/G/BやY/U/Vからなるカラー画像の画像信号に対しても、同様の効果を得ることができる。
【0233】
以上のように、本発明の第4の実施形態に係る表示装置3000は、Nビットの入力画像信号DiをN+kビットの画像信号Deに変換した後に擬似階調処理を用いてNビットのDoに変換する画像処理部300と、Nビットの階調性能を有する表示部390とを備える。画像処理部300は、第1の実施形態に係る制御部102および階調数拡張部104と同様の構成を有する制御部102と階調数拡張部104とを備える。つまり、画像処理部300は、入力画像信号Diに基づいてグラデーション領域を空間的に検出することにより、グラデーション領域を画素ごとに判定して制御信号Dcを生成する。そして、画像処理部300は、制御信号Dcに基づいて入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Diが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を、選択的に画像信号Deとして出力する。したがって、表示装置3000は、第1の実施形態に係る表示装置1000と同様に、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換することができる。
【0234】
また、表示装置3000は、画像処理部300が擬似階調処理部302を備え、ディザ処理などの擬似階調処理を用いてN+kビットの画像信号DeをNビットの出力画像信号Doに変換することにより、グラデーション領域の階調性能を向上させる。したがって、表示装置3000は、表示部390の階調性能がNビットであったとしても、グラデーション領域の階調性能を向上させた画像を表示することができる。
【0235】
[表示装置3000の変形例]
第3の実施形態に係る表示装置は、上述した第1の実施形態に係る表示装置の変形例と同様の変形例をとることができる。
【0236】
(第4の実施形態に係る画像処理装置)
上記では、第4の実施形態に係る表示装置について説明したが、上述した第4の実施形態に係る表示装置(変形例も含む)が備える画像処理部は、表示部とは別体の独立の装置、すなわち、画像処理装置であってもよい。
【0237】
(第4の実施形態に係るプログラム)
[表示装置に係るプログラム]
本発明の第4の実施形態に係る表示装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して画像信号を選択的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換した上でさらに擬似階調処理を行うことにより階調性能を向上させることができる。
【0238】
[画像処理装置に係るプログラム]
本発明の第4の実施形態に係る画像処理装置をコンピュータとして機能させるためのプログラムによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して画像信号を選択的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換した上でさらに擬似階調処理を行うことにより階調性能を向上させることができる。
【0239】
(第4の実施形態に係る画像処理方法)
次に、本発明の第4の実施形態に係る画像処理方法について説明する。なお、以下では、本発明の第4の実施形態に係る画像処理方法を表示装置3000が行うとして説明するが、本発明の第4の実施形態に係る画像処理装置に適用することもできる。
【0240】
表示装置3000は、上述した第1の実施形態に係るステップS100と同様に、Nビットの入力画像信号Diから所定の周波数成分を画素ごとに検出する(S400)。
【0241】
表示装置3000は、上述した第1の実施形態に係るステップS102、S104と同様に、ステップS400において検出された検出値(周波数成分検出値Df)を空間的に平滑化し(S402)、平滑化された検出値(平均検出値Dave)に基づいて制御信号Dcを生成する(S404)。
【0242】
表示装置3000は、上述した第1の実施形態に係るステップS106と同様に、入力画像信号DiとステップS404において生成された制御信号Dcとに基づいて、入力画像信号Diの下位にkビットの固定値を付加してN+kビットに変換した第1出力画像信号、または入力画像信号Diが時間的に平滑化されたN+kビットの第2出力画像信号を選択的に出力する(S406)。
【0243】
表示装置3000は、ステップS406において出力された画像信号(第1出力画像信号または第2出力画像信号)に対して擬似階調処理を行い、Nビットの画像信号(出力画像信号Do)に変換する(S408)。ここで、表示装置3000は、例えば、ディザ処理や誤差拡散処理を用いることにより、ステップS408の擬似階調処理を行う。
【0244】
表示装置3000は、上記ステップS400〜S408の処理を行うことによって、入力される画像信号に基づいてグラデーション領域を判定して選択的に画像信号を時間的に平滑化し、入力される画像信号よりも階調数の多い画像信号に変換した上でさらに擬似階調処理を行うことにより階調性能を向上させることができる。
【0245】
以上、第1〜第4の実施形態として表示装置を挙げて説明したが、上述した本発明の第1〜第4実施形態は、例えば、有機ELディスプレイや、FED、PDPなどの自発光型の表示装置や、LCDなどのバックライト型の表示装置、テレビジョン(Television)放送を受信する受信装置に適用することができる。また、上述した本発明の第1〜第4実施形態に係る表示装置は、PC(Personal Computer)、サーバ(Server)などのコンピュータ、携帯電話などの携帯型通信装置など、様々な機器に適用することができる。
【0246】
また、第1〜第4の実施形態に係る画像処理装置は、有機ELディスプレイやLCDなどの表示装置や、PCなどのコンピュータ、携帯電話などの携帯型通信装置など、様々な機器に適用することができる。
【0247】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0248】
例えば、第4の実施形態に係る表示装置では、入力される画像信号としてモノクロ画像の処理、あるいはカラー画像の複数チャンネルのうちの1チャンネル分の処理を行う構成を示したが、本発明の実施形態に係る表示装置は、例えば、第2の実施形態または第3の実施形態と、第4の実施形態それぞれとを組み合わせることによって、カラー画像の複数チャンネルを処理することもできる。
【0249】
また、上記では、コンピュータを、本発明の実施形態に係る情報処理装置としてそれぞれ機能させるためのプログラム(コンピュータプログラム)が提供されることを示したが、本発明の実施形態は、さらに、上記プログラムを記憶させた記憶媒体も併せて提供することができる。
【0250】
上述した構成は、本発明の実施形態の一例を示すものであり、当然に、本発明の技術的範囲に属するものである。
【符号の説明】
【0251】
100、150、200、250、300 画像処理部
102、202、252 制御部
104、142、204、254 階調数拡張部
106 周波数成分検出部
108 検出値平滑部
110 制御信号生成部
116 時間的平滑演算部
118 選択部
122、206 最大値選択部
124、138 加算部
126 混合部
130 フレームメモリ
132 シフト部
134 減算部
136 非線形変換部
140 加重平均演算部
190、390 表示部
302 擬似階調処理部
1000、1500、2000、3000 表示装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、
前記周波数成分検出部が検出した検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化する検出値平滑部と、
前記検出値平滑部が平滑化した検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、
Nビットの前記入力画像信号が入力され、前記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、前記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいは前記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部と、
を備え、
前記階調数拡張部は、前記入力画像信号の時間的な変化量に応じて前記入力画像信号の時間的な平滑化を選択的に行うことを特徴とする、画像処理装置。
【請求項2】
前記階調数拡張部は、
前記第1出力画像信号または前記第2出力画像信号を記憶し、前記入力画像信号の1フレーム前の遅延画像信号を出力するフレームメモリと、
前記入力画像信号と前記遅延画像信号とに基づく前記入力画像信号の時間的な変化量に応じて、前記入力画像信号の時間的な平滑化を画素ごとに選択的に行う時間的平滑演算部と、
前記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、前記制御信号がグラデーション領域を示す場合には前記時間的平滑演算部において選択的に平滑化された入力画像信号を前記第2出力画像信号として出力し、前記制御信号がグラデーション領域以外を示す場合には、前記入力画像信号をkビットシフトさせて前記第1出力画像信号として出力する選択部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記制御信号生成部は、前記検出値平滑部が平滑化した検出信号と複数の閾値とを用いて、対応する画素それぞれにおける前記第1出力画像信号と前記第2出力画像信号との混合比率を規定する制御信号を出力し、
前記階調数拡張部は、
前記第1出力画像信号または前記第2出力画像信号を記憶し、前記入力画像信号の1フレーム前の遅延画像信号を出力するフレームメモリと、
前記入力画像信号と前記遅延画像信号とに基づく前記入力画像信号の時間的な変化量に応じて、前記入力画像信号の時間的な平滑化を画素ごとに選択的に行う時間的平滑演算部と、
前記入力画像信号と、前記時間的平滑演算部において選択的に平滑化された入力画像信号とが入力され、前記画素ごとに混合比率が規定された前記制御信号に基づいて、対応する各画素における前記第1出力画像信号と前記第2出力画像信号との比率が前記制御信号が規定する混合比率と同一となるように、前記入力画像信号をkビットシフトさせた前記第1出力画像信号と、前記時間的平滑演算部において選択的に平滑化された入力画像信号である前記第2出力画像信号とを画素ごとに混合して出力する混合部と、
を備えることを特徴とする、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記時間的平滑演算部は、
前記遅延画像信号から階調数がN+kビットに拡張された入力画像信号を減算し、画素ごとの差分値を算出する減算部と、
画素ごとの前記差分値と、前記入力画像信号の時間的な変化量を判定するための所定の閾値とを比較し、画素ごとの前記差分値を比較結果に応じた値に変換する非線形変換部と、
前記非線形変換部から出力される画素ごとの差分値と、前記階調数がN+kビットに拡張された入力画像信号とを画素ごとに加算する加算部と、
前記階調数がN+kビットに拡張された入力画像信号と、前記加算部から出力される画像信号とに基づいて画素ごとに加重平均演算を行うことにより前記第2出力画像信号を出力する加重平均演算部と、
を備えることを特徴とする、請求項2または3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
Nビット(Nは正の整数)の入力画像信号が複数入力される画像信号処理装置であって、
前記入力画像信号それぞれから所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、
前記周波数成分検出部が検出した検出信号に基づいて、複数の入力画像信号それぞれが対応する各画素における検出信号が最大の検出信号を選択する最大値選択部と、
前記最大値選択部が選択した検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号それぞれを空間的に平滑化する検出値平滑部と、
前記検出値平滑部が平滑化した検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、
Nビットの前記入力画像信号が複数入力され、前記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、入力された複数の前記入力画像信号それぞれに対して前記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいは前記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部と、
を備え、
前記階調数拡張部は、前記複数の入力画像信号それぞれの時間的な変化量に応じて、前記複数の入力画像信号それぞれの時間的な平滑化を選択的に行うことを特徴とする、画像処理装置。
【請求項6】
入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出するステップと、
前記検出するステップにおいて検出された検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化するステップと、
前記平滑化するステップにおいて平滑化された検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成するステップと、
前記生成するステップにおいて生成された制御信号に基づいて、Nビットの前記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいはNビットの前記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力するステップと、
を有し、
前記出力するステップでは、前記入力画像信号の時間的な変化量に応じて前記入力画像信号の時間的な平滑化が選択的に行われることを特徴とする、画像処理方法。
【請求項7】
入力されたNビット(Nは正の整数)の入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出するステップ、
前記検出するステップにおいて検出された検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化するステップ、
前記平滑化するステップにおいて平滑化された検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成するステップ、
前記生成するステップにおいて生成された制御信号に基づいて、Nビットの前記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビット(kは正の整数)の第1出力画像信号、あるいはNビットの前記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力するステップ、
をコンピュータに実行させ、
前記出力するステップでは、前記入力画像信号の時間的な変化量に応じて前記入力画像信号の時間的な平滑化が選択的に行われることを特徴とする、プログラム。
【請求項8】
入力された画像信号を補正する画像信号補正部と、
前記画像信号補正部が補正した画像信号に基づいて、N+kビット(N、kは正の整数)の画像信号が示す画像を表示可能な画像表示部と、
を備え、
前記画像信号補正部は、
入力されたNビットの入力画像信号から所定の周波数帯域の信号を画素ごとに検出する周波数成分検出部と、
前記周波数成分検出部が検出した検出信号に基づいて各画素に対応する検出信号をそれぞれ空間的に平滑化する検出値平滑部と、
前記検出値平滑部が平滑化した検出信号に基づいて、グラデーション領域を規定する制御信号を画素ごとに生成する制御信号生成部と、
Nビットの前記入力画像信号が入力され、前記画素ごとに生成された制御信号に基づいて、前記入力画像信号の階調数が所定数拡張されたN+kビットの第1出力画像信号、あるいは前記入力画像信号が時間的に平滑化されて階調数が所定数拡張されたN+kビットの第2出力画像信号を画素ごとに出力する階調数拡張部と、
を備え、
前記階調数拡張部は、前記入力画像信号の時間的な変化量に応じて前記入力画像信号の時間的な平滑化を選択的に行うことを特徴とする、表示装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2011−133683(P2011−133683A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−293469(P2009−293469)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】