説明

画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体

【課題】入力画像中の画素をクラスタリングすることにより、各クラスタの色情報から重要度を判定して、重要度に基づいてトナーセーブを行う色変換を行い、画質の低下を抑制しつつ効果的にトナー消費量を削減する。
【解決手段】クラスタリング部101は入力画像をクラスタに分類し、削減率決定部102は、クラスタの色情報の重要度に応じたトナーの削減率を決定する。色変換部103はクラスタの削減率に基づいてトナー量が削減できるように色変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナーの消費量を削減した画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷コストを削減するために、使用するトナーの消費量を抑えたトナーセーブモードがある。トナーの消費量を抑える技術として、γ変換テーブルにより印字濃度を下げることでトナーの使用量を低減させる技術や、画像形成装置によって色再現可能な範囲を、色材量が抑制されるように狭小化し、狭小化された色再現領域内に収まるように入力画像データを出力画像データに色変換する技術がある(特許文献1を参照)。
【0003】
前者の方法は、印字された出力画像が全体的に薄くなり、通常モードでの出力画像の色再現の画質と比べて大きく低下し、通常の用途では利用できない。
【0004】
また、後者の方法は、印字された出力画像全体が薄くなるという課題が解決できるが、狭小化した色再現領域へ色変換するための色変換テーブルが予め定められたテーブルであるため、例えば、入力画像中に存在する色の重要性を判定し、その重要度に基づいて、重要度の低い色に対して削減率を高く設定できない。
【0005】
一般に彩度の高い色は、ユーザーに例えば注意を喚起する目的で使用されることが多く、その重要度は高く、彩度の低い色は他と区別できる程度に色がついていればよく、その重要度は彩度の高い色に比べると相対的に低い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の方法では、重要度の高低に関わらず狭小化した色再現領域へ色変換してトナーセーブしているので、結果的に重要度の高い色が薄くなり、画質が低下してしまうという問題がある。また、重要度の低い色に対しては、トナー削減率をより高くしてよいにも関わらず、予め定められた色変換テーブルを使用しているため、該当する色の削減率を上げることができない。
【0007】
本発明は、上記した課題に鑑みてなされたもので、
本発明の目的は、入力画像中の画素をクラスタリングすることにより、各クラスタの色情報から重要度を判定して、重要度に基づいてトナーセーブを行う色変換を行い、画質の低下を抑制しつつ効果的にトナー消費量を削減する画像処理装置、画像処理方法、プログラムおよび記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、入力画像データの各画素を、色差に基づいてクラスタに分類するクラスタリング手段と、前記分類されたクラスタの色情報に基づいて前記クラスタの重要度を判定し、前記重要度に応じた色材削減率を決定する削減率決定手段と、前記クラスタの画像データにおける色材の使用量を、前記決定された色材削減率に従って削減した後、画像形成手段で印字するための画像データに色変換する色変換手段を備えたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、入力画像の各画素を色差に基づいてクラスタに分類し、クラスタの色情報からクラスタの重要度を判定してトナー削減率を決定するため、クラスタの重要度に基づいて適切なトナーセーブを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の画像処理装置の構成を示す。
【図2】クラスタリング部の処理フローチャートを示す。
【図3】重要度判定処理のフローチャートを示す。
【図4】削減率の決定を説明する図である。
【図5】入力RGB値をL*a*b*値に変換する色空間を示す。
【図6】色変換における処理フローチャートを示す。
【図7】図6のステップ402の処理を説明する図である。
【図8】本発明の実施例2の画像処理装置の構成を示す。
【図9】削減率決定のための処理フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態について図面により詳細に説明する。
【実施例1】
【0012】
図1(a)は、本発明の実施例1の画像処理装置の構成を示す。画像処理装置は、クラスタリング部101、削減率決定部102、色変換部103、画像形成部104から構成される。
【0013】
以下の説明で、入力画像データは、基本的にRGBデータにより構成されるものとし、各処理部では、必要に応じて適宜、RGB値をCIE L*a*b*値やL*C*H*値(CIE L*a*b*表色系におけるa*b*平面上の座標(a*,b*)を極座標表示(C*,H*)に変換したもの)に変換し、処理を行うものとする。
【0014】
図1(b)は、クラスタリング部101の構成を示す。カラー変換部201は、RGB色空間で表されるカラー画像データをCIELAB色空間で表される画像データに色空間変換を行う。この変換のために、RGB色空間における各色要素信号からなる色値に対応するCIELAB色空間における色値を予め求めておき、RGB値に対応するL*a*b*値をLUTとして保持しておき、このLUTに基づいて色空間変換を行う。さらに、この色空間変換は、画像形成部104で色再現可能な領域内へ色変換されているとする。このような色再現可能な領域内への変換処理については、従来のガマットマッピング処理の手法を用いればよい。
【0015】
クラスタ分類部202では、入力画素のL*a*b*値に基づいて各画素を実質的に同一とみなせるクラスタに分類する。実質的に同一であるとは、明るさ、彩度、色相が略同一であることを示している。クラスタ分類部202によるクラスタリング結果として、クラスタを構成する画素に基づいて算出したクラスタの色情報が得られる。
【0016】
図2は、クラスタリング部101の処理フローチャートである。初めて注目画素が入力された時点では、クラスタ数NはN=0に初期化された状態であるため(ステップS201)、色差による条件分岐(ステップS206)で“No”の方に進んでクラスタ番号1を新規クラスタとして追加し、クラスタ数をN=1に設定、クラスタ番号1の画素数をn(1)=0に設定する(ステップS209)。
【0017】
さらに、クラスタ番号1の平均L*a*b*に注目画素のL*a*b*値が設定される(ステップS210)。その後は、順次入力される注目画素のL*a*b*値に対して、各クラスタの平均L*a*b*との色差を求め(ステップS204)、その中で色差最小のクラスタ番号jと色差dE_minの組を取得する(ステップS205)。
【0018】
色差を式(1)により算出する。
色差=|ΔL*|+|Δa*|+|Δb*| 式(1)
ここで、ΔL*、Δa*、Δb*は、注目画素と各クラスタごとの明度成分L*、a成分a*、b成分b*のそれぞれの差分値である。
【0019】
色差による条件分岐(ステップS206)で色差dE_minが予め設定された閾値dE_th以下であれば(ステップS206でYES)、ステップS207の方に進んでクラスタjに入力画素を追加し、平均L*a*b*を再計算する。クラスタjの画素数n(j)を+1して、L*a*b*の平均値を以下の式に従い再計算する。
(再計算後の平均L*)=((再計算前の平均L*)×(n(j)−1)+(入力画素のL*))/n(j)
(再計算後の平均a*)=((再計算前の平均a*)×(n(j)−1)+(入力画素のa*))/n(j)
(再計算後の平均b*)=((再計算前の平均b*)×(n(j)−1)+(入力画素のb*))/n(j)
色差による条件分岐(ステップS206)で色差dE_minが予め設定された閾値dE_thより大きければ(ステップS206でNo)、ステップS209の方に進んで新規クラスタを追加し、クラスタ数Nをカウントアップして新規クラスタの画素数を0に設定し、平均L*a*b*に入力画素のL*a*b*を設定する(ステップS209、ステップS210)。
【0020】
新規クラスタを追加するか否かの境界色差を表しているのがdE_thであり、どの程度の色差境界をひとつのクラスタとしてまとめるかを考慮して、dE_thを予め設定する。
【0021】
注目画素が何れかのクラスタに属する場合は、その画素の色情報とともに、クラスタ番号が付与される(ステップS211)。全ての画素において処理を終了した時点(ステップS202でYES)で、クラスタリング終了となる。まだ終了していない場合は、ステップS203以降の処理を繰り返す。
【0022】
クラスタリングが終了した時点で、入力画像におけるクラスタ数、クラスタを構成する画素数、各クラスタの色情報(クラスタを構成する画素に基づいて算出した平均L*a*b*値)が得られる。
【0023】
削減率決定部102は、クラスタの色情報を用いて重要度の判定を行った後、重要度に従ったトナー削減率の決定を行う。重要度は、クラスタの色情報(平均L*a*b*値)から彩度値を求め、予め定めた彩度閾値以上であれば重要であるとの判定を行う。
【0024】
図3は、重要度判定処理のフローチャートである。ステップ301において、クラスタの色情報を取得し、彩度値Cを算出する。彩度値Cは以下の式により算出する。
C=(a*b*0.5
【0025】
ステップ302において、彩度値Cと彩度閾値(th_C)を比較し、閾値以上であれば、ステップ303に進む。彩度閾値は、重要であるか否かを2値的に判定するための閾値となる。そうでない場合はステップ304に進む。
【0026】
ステップ303では、重要度判定結果として、重要であることを表す“1”をクラスタの重要度情報として設定する。ステップ304では、重要度判定結果として、重要でないことを表す“0”をクラスタの重要度情報として設定する。
【0027】
ステップ305では、全てのクラスタにおいて重要度判定が終わったか否かを判定し、終わっていない場合にはステップ302に戻り以降の処理を繰り返す。全てのクラスタにおいて重要度判定が終わった場合は処理を終了する。
【0028】
次に、削減率を決定する(削減率決定の例1)。
削減率は、クラスタの色情報であるL*a*b*値を、CIELAB空間上でトナー量を削減するL*a*b*に変更するための変更量となる。
【0029】
図4(a)は、削減率決定の例1を説明する図である。点Aは、クラスタ(例えばクラスタAとする)の色情報であるL*a*b*値をL*C*H*へ変換し、彩度C*を横軸に、明度L*を縦軸にした平面上にプロットしたものである。
【0030】
トナーの消費量を削減するために、白点に対するL*a*b*距離(ここでは、点Aと紙白点との距離)を減少させるように、点Aを白点の方向へ修正した色点A’に変換するように削減率Rを決定する。
【0031】
削減率Rは、クラスタAの重要度判定結果に基づいて決定され、重要度判定結果が“1”の場合、
R=r1
重要度判定結果が“0”の場合、
R=r0
となる。
【0032】
上記の係数値(r1、r0)は、0から1までの値をとり、少なくとも重要度判定結果が“1”である削減率が、“0”の場合よりもが小さくなるようにr1<r0となるような値を設定する。
(削減率決定の例2)
削減率決定の例1では、クラスタの彩度値により重要度を2値的に判断した後、削減率を決定する方法を説明したが、クラスタの彩度値そのものを用いて削減率を決定する例2を説明する。
【0033】
図4(b)は、クラスタの彩度値Cに従って削減率Rを求めるためのグラフの一例を示す。彩度値Cminを最大削減率ratio1として、彩度値が増加するに従い、削減率が下がり、Cmax以上では一定値ratio2となる。
【0034】
彩度値Cmin未満の場合は、トナー量を削減することにより、紙上でほとんどトナーが打たれず白くなることを防止するために、削減率が小さくなるように設定する。
【0035】
このようなグラフに基づいて、クラスタの彩度値と削減率Rの対応関係を表すLUTを予め作成し、LUTに従った削減率Rの算出を行ってもよい(なお、上記グラフは一例であり、これ以外の形状のグラフでもかまわない)。
(削減率決定の例3)
削減率決定の例1、2では、クラスタの彩度値により重要度を判断した後、削減率を決定する方法を説明したが、クラスタを構成する画素数で用いて削減率を決定する例3を説明する。
【0036】
図4(c)は、クラスタを構成する画素数に従って削減率Rを求めるためのグラフの一例を示す。画素数の多いクラスタは、画素数の少ないクラスタよりも重要度が高いと判断して、重要度の高いクラスタの削減率が低くなるように設定する。
【0037】
画素数N_minを最大削減率ratio1として、画素数が多くなるに従い、削減率が下がるように設定し、画素数N_max以上は、削減率ratio2で一定とする。
【0038】
このようなグラフに基づいて、クラスタを構成する画素数と削減率Rの対応関係を表すLUTを作成し、LUTに従った削減率Rの算出を行ってもよい(なお、上記グラフは一例であり、これ以外の形状のグラフでもかまわない)。また、画素数における閾値を予め設定しておき、画素数が閾値未満の場合と閾値以上の場合とで削減率を切り替えるようにしてもよい。
【0039】
その他、クラスタを構成する画素数とクラスタの彩度とを組み合わせて重要度を判断し、構成画素数が少なく、彩度が低い、重要度の低いクラスタについては削減率を高くするような設定をしても良い。
【0040】
色変換部103は、クラスタの削減率に基づいて、クラスタに含まれる色領域におけるトナー量が削減できるように色変換を行う。
【0041】
色変換においては、入力RGB色空間を複数に分割する格子の各格子点に対応づけて、出力CIELAB色空間における色値を保持している多次元LUTを用いて、入力画像色空間における入力画像信号の色値を、出力画像色空間における色値に変換する。
【0042】
図5に示すように、RGB色空間を複数の単位立方体に分割し、各単位立方体の各格子点に対応付けて、当該格子点の座標軸(RGB値)に対応するL*a*b*値を保持するLUTを用いる。
【0043】
入力画像のRGB色空間の格子点と入力画像信号の色値(RGB値)が一致することはまれであるため、多次元LUTの格子点から入力RGB値が含まれる8個の参照格子点を選択し、多次元LUTによって求められる複数の参照格子点に対応づけられた、出力CIELAB色空間における色値を用いて、入力画像色空間における入力画像信号の色値と各参照格子点との位置関係に応じた重み付け係数を用いた補間演算を行い、入力RGB値に対応するL*a*b*値を求める。
【0044】
図6は、色変換における処理フローチャートを示す。ステップ401では、RGB色空間で表される入力画像データを、上記LUTを用いてCIELAB色空間で表される画像データに色空間変換を行う。なお、この色変換LUTは、画像形成装置で色再現可能な範囲へと色変換するパラメータが予め設定されている。
【0045】
次に、ステップ402で、削減率決定部102で求めた削減率Rを変更量として用いて、クラスタの色再現値(L*a*b*)を、白点の方向へ変更されるように、クラスタの含まれる格子点のL*a*b*値を変更する。
【0046】
変更値の算出は、以下のように行う。対象クラスタのRGB値が含まれる8個の格子点を抽出して、L*a*b*値の変更を行う。ここでは、簡単のために8個の格子点のうちの1つを変更する場合について説明する。
【0047】
対象格子点(格子点Aとする)に対応するL*a*b*値をL*C*H*へ変換する。図7(a)は、削減率決定部102で決めた削減率Rを変更量として、格子点Aを変更する場合の図を示す。格子点AのL*C*H*値をそれぞれ、A_L,A_C,A_Hとし、白点のL*C*H*値をW_L,W_C,W_Hとすると、格子点Aと白点とのL*方向、C*方向の距離D_L、D_Cは、
D_L=|A_L−W_L|
D_C=|A_C−W_C|
格子点Aの変更後のL*C*H*値を、A’_L,A’_C,A’_Hとすると、変更量=Rを用いて以下のように算出する。
【0048】
A’_L=(R×D_L)+A_L
A’_C=A_C−(R×D_C)
A’_H=A_H
とする。
求めたA’_L,A’_C,A’_Hに基づき変換したL*a*b*値を格子点Aの変更後のL*a*b*値とする。その他の7つの格子点についても同様の方法で変更後のL*a*b*値を求める。
【0049】
さらに、格子点AのL*a*b*値の変更により、全体的な色の変化の連続性が失われないように、格子点Aから白点の方向に存在する格子点のL*a*b*値も変更する。
【0050】
先に修正した格子点Aの変更値(点A’とする)から白点の方向に存在する格子点において、A’の明度(L_A’)よりも低い明度をもつ格子点(図7(b)における格子点B)を選択する。次に、点Bから白点の方向に存在する格子点(図7(b)における点C)を選択し、点A’と点Cを結ぶ直線の間に位置するように、格子点BのL*a*b*値を変更する。変更値の算出は、先に説明した格子点Aの変更後のL*a*b*を求めるときの方法と同様である。点A’と格子点Cの間に格子点Bの変更値が位置するように適切な変更量R’を設定して、変更後のL*a*b*値(図7(b)における点B’)を求めればよい。
【0051】
ステップ403では、全てのクラスタにおいて修正が完了したか否かを判断し、終了した場合はステップ404に進む。そうでない場合は、ステップ402〜403を繰り返す。
【0052】
ステップ404では、RGB色空間で表されるカラー画像データを、ステップ402で修正したLUTを用いてCIELAB空間の画像データに色変換を行う。
【0053】
ステップ405では、CIELAB空間の画像データを画像形成装置のCMYK色空間へ変換する。この色空間変換については、CIELAB空間における色度値とCMYKの各値との対応関係を表すLUTを予め保持しておき、このLUTを用いて変換する。
【0054】
画像形成部104は、色変換部103から送られるCMYK画像データに基づいて、各色トナーにより記録用紙に画像形成を行う。
【0055】
このように、本実施例によれば、クラスタの彩度値に従って彩度値が高いクラスタの方が、彩度値の低いクラスタよりも削減率を低くできるので、重要度の高い色がトナーセーブされることにより、薄く再現されてしまうことを防止できる。
【0056】
また、クラスタの構成画素数に基づいて重要度を判定し、削減率を決定することができるので、相対的に画素数の少ないクラスタを重要度が低いと判断して削減率を高く設定することができる。
【実施例2】
【0057】
実施例1では、入力画像をクラスタリングし、各クラスタの色情報に基づいて重要度を求め、重要度に応じてトナー消費量を削減する色修正量を決定した。
【0058】
本実施例では、入力画像のオブジェクト属性に基づいて重要度を求め、重要度に応じてトナー消費量を削減する色修正量を決定する実施例を説明する。
【0059】
図8は、本発明の実施例2の画像処理装置の構成を示す。PC105は、画像処理装置をコントロールするPCであり、オペレータから出力命令を受け取ると、画像を撮像するなどして取り込まれた画像データや、各種DTPソフトで作成された写真、グラフィック、テキスト等の複合ドキュメントの画像データなどを画像処理装置106に送信する。
【0060】
画像処理部106は、PC105から送信された画像データに基づいて、入力画像をCMYKのカラートナー画像へ変換して、画像形成部103に転送する。画像形成部103では、送信されたCMYKデータに基づいて記録用紙に画像形成を行う。
【0061】
画像処理部106は、オブジェクト判別部107と、クラスタリング部108と、削減率決定部109と、色変換部110から構成される。
【0062】
オブジェクト判別部107は、画像データを受け取り、描画オブジェクトのタイプ(文字コード、図形コード、ラスタ画像データ)やその内容(種類、サイズ、色、太さ等)の解析により、文字として描画するオブジェクトかどうかを認識し、オブジェクト認識結果と、画像データを、クラスタリング部108、削減率決定部109へそれぞれ送る。
【0063】
クラスタリング部108は、オブジェクト判別部107から送られた、オブジェクト認識結果と画像データを受け取り、描画オブジェクトのタイプが、グラフィックスオブジェクト(図形コード)とそれ以外のオブジェクトに分けて、各オブジェクトごとに、オブジェクトに含まれる各画素を実質的に同一とみなせるクラスタに分類する。オブジェクトごとに分けた後に実施するクラスタリングの方法は、実施例1と同一の処理であるのでその説明を省略する。
【0064】
削減率決定部109は、クラスタリング部108から送られた、オブジェクトごとのクラスタリング結果に基づいて削減率を決定する。削減率は、グラフィックオブジェクト(図形コード)の方が、他のオブジェクトよりも削減率が高くなるように設定し、さらに、グラフィックスオブジェクトにおいては、彩度値の低い色が彩度値の高い色よりも削減率が高くなるように設定する。
【0065】
図9は、削減率決定のための処理フローチャートである。ステップ501において、入力されたクラスタのオブジェクトがグラフィックスオブジェクトである場合は、ステップ502に移行し、そうでない場合は、ステップ503へ移行する。
【0066】
ステップ502では、グラフィックスオブジェクトに対する削減率D1の決定をクラスタの色情報を用いて実施する。クラスタの色情報により削減率を決定する方法は、実施例1の削減率決定部102で説明した決定方法と同様の方法であるので省略する。
【0067】
ステップ503では、クラスタがグラフィックオブジェクト以外の場合の削減率を決定する。この場合は、一律の削減率D2を設定する。ただし、D2の値は、グラフィックスオブジェクトの削減率D1よりも小さい値を設定する。
【0068】
色変換部110は、決定した削減率に基づいて、クラスタに含まれる色領域におけるトナー量が削減できるように色変換を行う。この方法についても実施例1の色変換部103で説明した方法と同一であるので省略する。画像形成部103は、色変換部110から送られるCMYK画像データに基づいて、各色トナーにより記録用紙に画像形成を行う。
【0069】
実施例2によれば、入力画像におけるオブジェクトに従って、グラフィックスオブジェクトの方が他のオブジェクトよりも高い削減率を設定することができるので、相対的に重要度の低いグラフィックスの色の削減率を高く設定することができる。
【0070】
本発明は、前述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システムあるいは装置に供給し、そのシステムあるいは装置のコンピュータ(CPUやMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても達成される。この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施例の機能を実現することになる。プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、不揮発性のメモリカード、ROMなどを用いることができる。また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施例の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)などが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPUなどが実際の処理の一部または全部を行い、その処理によって前述した実施例の機能が実現される場合も含まれる。また、本発明の実施例の機能等を実現するためのプログラムは、ネットワークを介した通信によってサーバから提供されるものでも良い。
【符号の説明】
【0071】
101 クラスタリング部
102 削減率決定部
103 色変換部
104 画像形成部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0072】
【特許文献1】特開2007−324900号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データの各画素を、色差に基づいてクラスタに分類するクラスタリング手段と、前記分類されたクラスタの色情報に基づいて前記クラスタの重要度を判定し、前記重要度に応じた色材削減率を決定する削減率決定手段と、前記クラスタの画像データにおける色材の使用量を、前記決定された色材削減率に従って削減した後、画像形成手段で印字するための画像データに色変換する色変換手段を備えたことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記重要度の判定は、前記クラスタの色情報から求めた彩度値に基づいて判定し、重要度の低いクラスタの色材削減率を、重要度の高いクラスタの色材削減率よりも高くすることを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記入力画像データのオブジェクトを判定するオブジェクト判定手段を備え、前記削減率決定手段は、前記オブジェクト判定手段の判定結果に基づいて前記色材削減率を決定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記削減率決定手段は、前記オブジェクトの内、グラフィックスオブジェクトの色材削減率を、それ以外のオブジェクトの色材削減率よりも高くすることを特徴とする請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記削減率決定手段は、前記クラスタの構成画素数に基づいて前記色材削減率を決定することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項6】
入力画像データの各画素を、色差に基づいてクラスタに分類するクラスタリング工程と、前記分類されたクラスタの色情報に基づいて前記クラスタの重要度を判定し、前記重要度に応じた色材削減率を決定する削減率決定工程と、前記クラスタの画像データにおける色材の使用量を、前記決定された色材削減率に従って削減した後、画像形成工程で印字するための画像データに色変換する色変換工程を備えたことを特徴とする画像処理方法。
【請求項7】
請求項6記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラム。
【請求項8】
請求項6記載の画像処理方法をコンピュータに実現させるためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−60459(P2012−60459A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202162(P2010−202162)
【出願日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】