説明

画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷システム

【課題】カラー画像をモノクロ画像に変換する場合に、画像に含まれる文字の誤認識を回避する。
【解決手段】画像処理装置100は、文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよび印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カラー画像データをモノクロ画像データに変換するため、下記の式(1)に従ってカラー画像データのRGB値からグレー値を算出し、グレー値で表されるモノクロ画像データを得る手法が広く用いられている。グレー値には、元のカラー画像の明度情報が反映されるため、この手法によれば、元のカラー画像の明度が反映されたモノクロ画像の画像データを得ることができる。なお、式(1)の「R」,「G」,「B」は、それぞれ、カラー画像データのレッドの階調値、グリーンの階調値、ブルーの階調値であり、「Gray」はグレー値、すなわち黒単色の濃度である。
Gray=0.3R+0.59G+0.11B ・・・(1)
【0003】
また、式(1)に従うグレー変換によってカラー画像データをモノクロ画像データに変換した場合、例えば、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,128,0)などの複数のRGB値は同等のグレー値に変換される。このように、変換前のカラー画像においては異なっていた2つの色が、モノクロ画像においては同じグレー値で表現されることとなり、変換後のモノクロ画像から変換前の元のカラー画像の色を区別できなくなることがあった。
【0004】
そこで、特許文献1には、カラー画像をシアン、マゼンタ、イエローの各色画像に変換し、各色画像に対して異なるパターンを生成させるディザマトリクスを適用することによって各色のドットパターンを生成し、各色のドットパターンを合成することによりモノクロ画像データを得る手法が提案されている。特許文献1に記載の手法によれば、シアン、マゼンタ、イエローの各色についての互いに異なるパターンを重畳したモノクロ画像が得られるので、例えば、(R,G,B)=(255,0,0)、(0,128,0)など、グレー値に変換した場合には同等の値となる色であっても、元のカラー画像における色の違いが、異なるパターンの模様となってモノクロ画像に反映される。したがって、変換前のカラー画像に、グレー変換した場合には区別がつかなくなる色が用いられていたとしても、元のカラー画像における色の違いを区別可能なモノクロ画像の画像データに変換できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−23895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、カラー領域内に文字画像が含まれている場合、文字画像の周囲にはカラー領域に対応したドットパターンが配置されるが、ドットパターンは文字の線画と交差して配置されるため、例えば、ドットパターンで点画や線画を形成している場合のように、文字と交差して配置されるドットパターンによって文字を誤認識してしまうことがあった。
そこで本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、カラーの画像をモノクロの画像に変換する場合に、画像に含まれる文字の誤認識を回避することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる画像処理装置は、文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用することを特徴とする。
【0009】
このような構成によれば、第1のハッチパターンを、グラフィック画像の色に対応し、文字画像から所定距離以内の第1の領域を除いた画像領域に対して適用するため、文字画像と第1のハッチパターンとの間に第1の領域が形成されることから、文字画像の視認性が向上し、文字の誤認識を回避できる。
【0010】
[適用例2]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記第1の領域には、いかなるハッチパターンも適用しないことが好ましい。
【0011】
このような構成によれば、文字画像の視認性が更に向上する。
【0012】
[適用例3]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記第1の領域には、第2のハッチパターンを適用しても良い。
【0013】
[適用例4]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記第2のハッチパターンは、前記第1のハッチパターンよりも濃度が小さいことが好ましい。
【0014】
このような構成によれば、第1のハッチパターンよりも濃度が小さいため、文字画像の視認性が向上する。
【0015】
[適用例5]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記第1のハッチパターンは、前記グラフィック画像のカラー色に対応する模様を単色の濃度で表しても良い。
【0016】
[適用例6]
上記適用例にかかる画像処理装置において、前記グラフィック画像の色に対応する画像領域と、前記第1の領域とが近似する大きさである場合、前記所定距離の値を更に小さくして前記第1の領域を狭くすることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、第1のハッチパターンの視認性が向上する。
【0018】
[適用例7]
本適用例にかかる画像処理方法は、文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用することを特徴とする。
【0019】
このような方法によれば、第1のハッチパターンを、グラフィック画像の色に対応し、文字画像から所定距離以内の第1の領域を除いた画像領域に対して適用するため、文字画像と第1のハッチパターンとの間に第1の領域が形成されることから、文字画像の視認性が向上し、文字の誤認識を回避できる。
【0020】
[適用例8]
本適用例にかかる画像処理プログラムは、文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対する適用をコンピューターに実行させることを特徴とする。
【0021】
このような機能によれば、第1のハッチパターンを、グラフィック画像の色に対応し、文字画像から所定距離以内の第1の領域を除いた画像領域に対して適用するため、文字画像と第1のハッチパターンとの間に第1の領域が形成されることから、文字画像の視認性が向上し、文字の誤認識を回避できる。
【0022】
[適用例9]
本適用例にかかる印刷システムは、文字画像を含むカラー画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを決定し、決定した前記第1のハッチパターンの背景となる背景領域と前景であるパターン領域の濃度を決定し、決定した前記濃度を有する前記第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用して単色画像を生成し、生成した前記単色画像を印刷することを特徴とする。
【0023】
このような構成によれば、第1のハッチパターンを、グラフィック画像の色に対応し、文字画像から所定距離以内の第1の領域を除いた画像領域に対して適用するため、文字画像と第1のハッチパターンとの間に第1の領域が形成されることから、文字画像の視認性が向上し、文字の誤認識を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本実施形態に係る印刷システムの概略構成を示す図。
【図2】画像処理装置のソフトウェア構成を示す図。
【図3】パターン選択テーブルの一例を示す図。
【図4】ハッチパターンの割り当ての一例を示す図。
【図5】色相環上の色相とハッチパターンの対応例を示す図。
【図6】画像処理装置が実行する処理の流れを示すフローチャート。
【図7】第2のハッチパターンの一例を示す図。
【図8】矩形領域の大きさを変更する一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0026】
(実施形態)
【0027】
図1は、本実施形態に係る印刷システムの概略構成を示した図である。図1に示すように、印刷システム1は、ホストコンピューター10と、プリンター20と、を備え、ホストコンピューター10とプリンター20とは相互にデータ通信可能に接続されている。
【0028】
プリンター20は、用紙などの媒体に印刷する印刷エンジン21と、印刷エンジン21の動作などを制御するコントローラー22と、を備えている。プリンター20は、コントローラー22の制御により、ホストコンピューター10から印刷ジョブデータを受信する処理、印刷ジョブデータに従う印刷を印刷エンジン21に実行させる処理などを行う。尚、本実施形態では、プリンター20はレーザー光を利用して感光体にトナーを付着させ、それを熱と圧力で紙に転写して印刷を行うレーザープリンターを想定する。
【0029】
ホストコンピューター10は、プリンター20に対応するプリンタードライバー40(図2)が予めインストールされた汎用のパーソナルコンピューターであり、プリンター20に対して印刷ジョブデータを送信するプリンター20のホスト装置である。このホストコンピューター10は、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)11と、ROM(Read Only Memory)12と、RAM(Random Access Memory)13と、ハードディスクドライブ14と、データ取得装置15と、通信I/F16と、を備えている。ホストコンピューター10のこれらの構成は、バス17に接続されており、バス17を介してデータ通信可能になっている。
【0030】
CPU11は、ホストコンピューター10の各構成を制御する制御装置である。ROM12はホストコンピューター10を制御するための所定のプログラムなどが記録された不揮発性のメモリー、RAM13はワーキングメモリーなどとして用いられる汎用のメモリーである。
【0031】
データ取得装置15は、CD−ROM等の記録媒体の読み取りや、外部のサーバーとのネットワーク通信等を介して、プリンター20のドライバープログラムDP、後述するパターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDB等のデータを取得する。
ハードディスクドライブ14には、データ取得装置15が取得したドライバープログラムDP、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDB等が格納される。
【0032】
通信I/F16は、ケーブルまたは無線通信によってプリンター20と接続するインターフェイス部分である。プリンター20とホストコンピューター10との通信は、通信I/F16を介して行われる。
【0033】
また、ホストコンピューター10のCPU11は、ハードディスクドライブ14に格納されたドライバープログラムDPのデータをインストール処理することで、ホストコンピューター10を画像処理装置100として機能させる。以下、画像処理装置100について説明する。
【0034】
図2は、画像処理装置100のソフトウェア構成を示した図である。図2に示すように、画像処理装置100は、アプリケーション30と、プリンタードライバー40と、を有している。
【0035】
アプリケーション30は、文書作成ソフトウェアやウェブブラウザーなど、プリンター20に対する印刷要求元となるソフトウェアである。アプリケーション30は、印刷要求および印刷の対象とするカラー画像データを生成してプリンタードライバー40に受け渡す。
本実施形態では、アプリケーション30は、ホストコンピューター10の基本動作を制御するソフトウェアであるオペレーティングシステム(OS)のグラフィック処理機能(GDI)に対して印刷処理を行い、これを受けて、GDIがプリンタードライバー40に対して描画命令を送ることで、プリンタードライバー40は印刷要求および印刷の対象とするカラー画像データを取得するが、これには限定されない。
【0036】
プリンタードライバー40は、プリンター20による印刷を制御するためのソフトウェアである。このプリンタードライバー40は、アプリケーション30から受け取った印刷要求およびカラー画像データから、プリンター20が処理可能なデータ形式の印刷ジョブデータを生成し、通信I/F16を介してプリンター20に印刷ジョブデータを送信する。これにより、プリンタードライバー40は、プリンター20に印刷を実行させる。
【0037】
また、本実施形態のプリンタードライバー40は、カラー画像データを、ハッチ模様付きのモノクロ画像(単色画像)データに変換することにより、元のカラー画像における色の違いをハッチングの模様によって区別可能とするモノクロ画像をプリンター20に印刷させる機能を有している。尚、カラー画像中に文字画像が含まれる場合、文字画像は濃度が変化しないモノクロ画像に変換されると共に、ハッチ模様よりも上に配置されるため、モノクロ画像におけるハッチ模様は文字画像と重畳する部分が隠れる。
このようなハッチ模様付きモノクロ印刷の機能を実現するため、プリンタードライバー40は、パターン決定部41、パターン濃度決定部42およびモノクロ画像データ生成部43を有している。尚、これらの機能は、上述したハードウェアとドライバープログラムDP等のソフトウェアが協働することで実現している。
【0038】
パターン決定部41は、カラー画像データのカラー画像の色、特に色相に応じて、カラー画像データの画像領域に対して適用するハッチパターン(第1のハッチパターン)を決定する処理を行う。なお、本実施形態では、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などのハッチ模様を単色の濃度で表した複数種類のハッチパターン(単色パターン)が用いられる。パターン決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して複数種類のハッチパターンの中から、カラー画像CPに適用するハッチ模様のハッチパターンを選択する。
【0039】
パターン濃度決定部42は、カラー画像データのカラー画像の色、特に明度に応じて、ハッチパターンの濃度を決定する処理を行う。尚、本実施形態のハッチパターンは、ハッチ模様の背景となる背景領域、および、背景領域に重畳して描かれ背景に対しての前景となるハッチ模様自体のパターン領域を有する。
本実施形態では、パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTやパターン画像データベースPDBを参照して領域毎の濃度を決定する。即ち、パターン選択テーブルPTは、パターン選択テーブルPTの一例を示す図3に示すように、背景領域における単色の濃度(以下、「背景濃度」という)およびパターン領域における単色の濃度(以下、「前景濃度」という)を含んでいる。
【0040】
モノクロ画像データ生成部43は、パターン決定部41によって決定されたハッチ模様を有するとともに、パターン濃度決定部42によって決定された濃度を有するハッチパターンを、カラー画像CPの画像領域に適用し、カラー画像CPの色をハッチ模様に置き換えたモノクロ画像データを生成する。
また、モノクロ画像データ生成部43は、文字近傍判定部44を備える。文字近傍判定部44は、注目する領域がパターン領域の上に重畳された文字画像との距離に基づいて近傍であるか、否かを判定する機能を備える。文字近傍判定部44が近傍であると判定した場合、モノクロ画像データ生成部43は注目する領域(第1の領域)に対してはハッチパターンを適用しない。尚、本実施形態では、単色画像として黒をベースとしたモノクロ画像を想定するが、これには限定されない。赤色や青色等をベースとした画像も想定できる。
【0041】
次に、カラー画像データをハッチ模様付きのモノクロ画像データに変換する手法を説明するため、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBについて説明する。なお、以下の説明においては、カラー画像データは、カラー画像の各画素について、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の各色を8ビットの階調値「0〜255」で表すRGB値を有するものとする。モノクロ画像データは、モノクロ画像の各画素について、K(ブラック)の色を8ビットの階調値「0〜255」で表したK値、すなわちK単色の濃度を有するものとする。さらに、カラー画像データのRGB値に関して、(R,G,B)=(255,255,255)が白、(R,G,B)=(0,0,0)が黒に対応し、K値に関して、K=255が黒、K=0が白に対応するものとする。
【0042】
図3に示すように、パターン選択テーブルPTは、カラー値であるRGB値に対して、パターン種類、前景濃度、および背景濃度が予め対応付けられている。
【0043】
パターン選択テーブルPTのパターン種類の欄には、上述したように、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などの複数種類のハッチパターンのうちから、カラー値に対応させるハッチパターンの種類が指定されている。前景濃度の欄には、カラー値に対応させる前景濃度の値が指定されている。また、背景濃度の欄には、カラー値に対応させる背景濃度の値が指定されている。
【0044】
このパターン選択テーブルPTにより、カラー画像CPのRGB値に対応するハッチ模様のハッチパターンと、背景濃度および前景濃度が定まる。具体的には、カラー画像データをモノクロ画像データに変換する際、パターン決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して、カラー画像データの画像領域に対して、パターン選択テーブルPTのパターン種類の欄に指定されたハッチ模様のハッチパターンを選択する。パターン濃度決定部42は、パターン選択テーブルPTを参照して、ハッチパターンの背景濃度を、パターン選択テーブルPTの背景濃度の欄によって指定された濃度に決定するとともに、ハッチパターンの前景濃度を、パターン選択テーブルPTの前景濃度の欄に指定された前景濃度に決定する。
【0045】
パターン画像データベースPDBには、縦線、横線、格子線、斜め線、斜め格子線などのパターン種類ごとに、該当するハッチパターンの画像データが予め格納されている。ハッチパターンは、例えば、32×32画素などの所定サイズの画像であり、少なくとも、ハッチパターンの画像領域における背景の領域と前景の領域とを示す情報が含まれている。したがって、後述するように、パターン濃度決定部42は、パターン画像データベースPDBを参照することにより、画像領域に対してハッチパターンを適用した場合に、その画像領域において注目する画素(例えば、1画素分)が、背景領域とパターン領域とのいずれに該当するかの判断が可能になっている。
【0046】
次に、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBを用いた処理の概要について、ハッチパターンの割り当てを示す図4を参照して説明する。ここでは、画像全域に(R,G,B)=(239,0,0)であって、色相角が0度から30度未満のカラー値を有し、画像の略中央に黒色の文字画像「ABC」が配置されたカラー画像CPを例にして説明する。
【0047】
図4に示すように、ハッチパターンは、カラー画像CPの画像領域を、ハッチパターンと同じサイズで区画した単位領域UAごとに割り当てられる。単位領域UAに割り当てるハッチパターンの種類は、パターン選択テーブルPTに従って決められる。図3に示したパターン選択テーブルPTによれば、カラー画像CPのRGB値、すなわち(R,G,B)=(239,0,0)のカラー値に対応するパターン種類は「格子」であるため、カラー画像CPに対して格子線のハッチパターンP1(図5)が適用される。尚、ハッチパターンP1はベクトル画像であっても良く、ビットマップ画像であっても良い。
【0048】
また、図3に示したパターン選択テーブルPTには、(R,G,B)=(239,0,0)に対応する前景濃度はK=232、背景濃度はK=177と規定されていることから、パターン濃度決定部42は、モノクロ画像MPの前景濃度をK=232、背景濃度をK=177に決定する。
このようにして、パターン選択テーブルPTおよびパターン画像データベースPDBにより定まる格子線のハッチパターンPは、カラー画像CP全面に対して単位領域UAごとに適用され、格子線のハッチパターンPをグラフィック画像とするモノクロ画像MPが生成される。
【0049】
その際、文字近傍判定部44は文字画像からの距離を算出して予め決められた所定距離と比較することにより、近傍であるか、否かを判定し、モノクロ画像データ生成部43は、文字画像から所定距離以内で規定する領域(第1の領域)を近傍と判定し、ハッチパターンの適用を除外する。
より詳細には、文字画像の近傍である場合、モノクロ画像データ生成部43はハッチパターンの前景濃度に替えて近傍領域に対応する近傍濃度を割り当てる。尚、近傍濃度は、所定のグレー濃度に固定されていても良く、パターン選択テーブルPTで規定されていても良い。また、プリンタードライバー40が文字画像の濃度、背景濃度および前景濃度等に基づいて近傍濃度を決定しても良い。
【0050】
本実施形態では、図4に示すように、文字画像に含まれる文字の端部から横方向の所定距離(LX)と縦方向の所定距離(LY)を基準とし、それぞれの所定距離で規定される矩形の領域内が近傍に該当する。例えば、「ABC」の場合、左方の端部は「A」の左端位置が該当する。また、右方の端部は「C」の右端位置が該当する。また、上下の端部は「ABC」で共通するため、何れかの文字の端部位置が該当する。
本実施形態では、モノクロ画像データ生成部43は、規定された矩形内において文字の線画画素を除く全ての画素が近傍濃度になるように割り当てる。この場合、近傍濃度は背景濃度と同一濃度である。尚、所定距離は予め設定されるが、縦方向と横方向のように方向別に設定されても良く、方向に拠らず一定値が設定されても良い。
また、文字画像の周囲を矩形で規定することには限定されず、各文字の線画曲線に沿った線画画素単位で近傍の領域を規定しても良い。
尚、本実施形態では、パターン選択テーブルPTからハッチパターンを選択する基準は、色相環上の色相とハッチパターンの対応例を示す図5に示すようなハッチパターンP1〜P12の対応例に従い、以下の要件を満たすように予め設定されているが、これに限定されるものではない。
【0051】
(1)色相に応じたハッチ模様の割り当てに関する要件
(2)カラー値の明度に応じた背景濃度の変化に関する要件
(3)明度に応じたハッチ模様の線密度に関する要件
(4)補色の関係となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
(5)隣りあう色領域となる色間におけるハッチ模様の割り当てに関する要件
【0052】
次に、以上に説明した画像処理装置100が行う処理<画像処理方法および画像処理プログラム>について、図6のフローチャートに従って説明する。
【0053】
例えば、プリンタードライバー40が、アプリケーション30からカラー画像データのモノクロ印刷の印刷指示を受け取ると、図6の処理が開始される。処理を開始すると、パターン決定部41は、カラー画像データの画像領域に対して注目画素を設定し(ステップS10)、カラー画像データから注目画素のRGB値を取得する(ステップS11)。
次に、文字近傍判定部44は、注目画素から所定距離以内に文字属性を有する画素が存在するか、否かを判定する(ステップS12)。
【0054】
ここで、所定距離以内に文字属性を有する画素が存在すると判定した場合(ステップS12でYes)、近傍濃度を取得し(ステップS13)、ステップS18に進む。
他方で、所定距離以内には文字属性を有する画素が存在しないと判定した場合(ステップS12でNo)、パターン決定部41は、パターン選択テーブルPTを参照して、取得したRGB値に対応するパターン種類を決定する(ステップS14)。
次に、パターン濃度決定部42は、注目画素の座標がハッチパターンの背景位置か否かを判定する(ステップS15)。
【0055】
前述したように、ハッチパターンは、カラー画像CPの画像領域のうち、所定サイズの単位領域UAに対して割り当てられるので、ここでは、注目画素が、単位領域UAごとに割り当てられるハッチパターンにおいて背景に該当する位置にあるのか、前景に該当する位置にあるのかを判定する。具体的には、注目画素の座標を(a,b)、ハッチパターンの大きさをN×N画素とすると、ハッチパターンにおける注目画素の相対座標(x、y)は、次式(2)、(3)により求められる。なお、下記の式において、「mod」は除算した余りを返す演算子である。パターン濃度決定部42は、パターン画像データベースPDBに登録されたハッチパターンの画像データを参照して、相対座標(x、y)がハッチパターンにおける背景と前景のいずれに該当するかを判断する。
【0056】
x=a mod N ・・・(2)
y=b mod N ・・・(3)
【0057】
判断の結果、注目画素がハッチパターンの背景である場合(ステップS15でYes)、背景濃度のK値を取得し(ステップS16)、ステップS18に進む。
他方で、注目画素がハッチパターンの背景でない場合(ステップS15でNo)、前景濃度のK値を取得し(ステップS17)、ステップS18に進む。
【0058】
ステップS18では、モノクロ画像の画像領域のうち注目画素に対応する画素に、取得した濃度のK値を適用する。
次に、カラー画像CPの全画素についてステップS10〜S18の処理を行ったか否かを判断する(ステップS19)。全画素について処理を終えていない場合(ステップS19でNo)、ステップS10に戻って、例えば、注目画素をラスター方向にスキャンすることにより新たな注目画素を設定し、新たな注目画素に対してステップS11以降の処理を行う。
【0059】
他方で、全画素について処理を終えると(ステップS19でYes)、モノクロ画像の全画素について、ステップS12にて決定された種類のハッチパターンに対応する濃度のK値を有した状態となり、モノクロ画像データ生成部43は、このモノクロ画像のモノクロ画像データを生成する(ステップS20)。生成されたモノクロ画像データは、プリンタードライバー40によって印刷ジョブデータとしてプリンター20に出力される(ステップS21)。この結果、プリンター20は、アプリケーション30から受け渡されたカラー画像データのモノクロ印刷として、カラー画像の色に応じたハッチ模様付きのモノクロ画像を印刷する。
【0060】
以上述べた実施形態によれば、以下のような効果を奏する。
(1)カラー画像データから、カラー画像の色相に応じたモノクロのハッチパターンに置き換えたモノクロ画像データを生成する際、文字画像の近傍にはハッチパターンのパターン領域が配置されないため、文字画像の線画とパターン領域の線画との交差が回避されて文字画像が読み易くなることから、モノクロ画像を視認する人物は文字画像を明瞭に認識できる。
【0061】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明したが、具体的な構成は、この実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、近傍濃度は背景濃度と同一な濃度に限定されない。また、近傍濃度は、第2のハッチパターンPPの一例を示す図7のように、矩形領域に第2のハッチパターンPPを生成するためのハッチパターン情報を伴っても良い。この場合、文字画像の視認性を向上させるべく、第2のハッチパターンPPは格子線のハッチパターンP1よりも濃度が小さく淡色であることが好ましい。尚、本実施形態では、第2のハッチパターンPPは、斜め線のハッチパターンP5を採用するが、これには限定されない。また、第2のハッチパターンPPの濃度に関する情報は、格子線のハッチパターンP1と同様にパターン選択テーブルPTに規定されていても良い。
また、矩形領域の大きさを変更する一例を示す図8のように、文字画像からの所定距離で規定される矩形領域が第1のモノクロ画像MP1の画像領域と比較して近似する大きさである場合、プリンタードライバー40は、文字画像からの所定距離の値を更に小さくして矩形領域が狭くなるように矩形サイズを変更しても良い。また、このような場合、矩形に換えて、各文字の線画曲線に沿った線画画素単位で近傍の領域を規定するように変更して良い。これらの結果、第2のモノクロ画像MP2のように、格子線のハッチパターンP1と文字領域がバランス良く配置され、モノクロ画像の視認性の向上を図れる。
【0062】
また、以上のような手法を実施する装置は、単独の装置によって実現される場合もあれば、複数の装置を組み合わせることによって実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、ホストコンピューター10側にプリンタードライバー40を組み込んだ様態には限定されず、プリンター20側でプリンタードライバー40を保持し、プリンター20単体で印刷の設定や指示が可能な、所謂、スタンドアローンな様態も想定できる。
【符号の説明】
【0063】
1…印刷システム、10…ホストコンピューター、11…CPU、12…ROM、13…RAM、14…ハードディスクドライブ、15…データ取得装置、16…通信I/F、17…バス、20…プリンター、21…印刷エンジン、22…コントローラー、30…アプリケーション、40…プリンタードライバー、41…パターン決定部、42…パターン濃度決定部、43…モノクロ画像データ生成部、44…文字近傍判定部、100…画像処理装置、CP…カラー画像、MP…モノクロ画像、MP1…第1のモノクロ画像、MP2…第2のモノクロ画像、PP…第2のハッチパターン、PT…パターン選択テーブル、PDB…パターン画像データベース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第1の領域には、いかなるハッチパターンも適用しないことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記第1の領域には、第2のハッチパターンを適用することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の画像処理装置において、
前記第2のハッチパターンは、前記第1のハッチパターンよりも濃度が小さいことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記第1のハッチパターンは、前記グラフィック画像のカラー色に対応する模様を単色の濃度で表したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記グラフィック画像の色に対応する画像領域と、前記第1の領域とが近似する大きさである場合、前記所定距離の値を更に小さくして前記第1の領域を狭くすることを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
文字画像を含むグラフィック画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対する適用をコンピューターに実行させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項9】
文字画像を含むカラー画像の色に対応する模様を有する第1のハッチパターンを決定し、決定した前記第1のハッチパターンの背景となる背景領域と前景であるパターン領域の濃度を決定し、決定した前記濃度を有する前記第1のハッチパターンを、前記グラフィック画像の色に対応し、前記文字画像から所定距離以内の第1の領域を除外した画像領域に対して適用して単色画像を生成し、生成した前記単色画像を印刷することを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−81015(P2013−81015A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−218984(P2011−218984)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】