画像処理装置、画像処理方法及びプログラム
【課題】
高速化し得る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提案する。
【解決手段】
画像処理装置であって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極小値をとる画素を検出する検出手段を設けるようにした。従って、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
高速化し得る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提案する。
【解決手段】
画像処理装置であって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極小値をとる画素を検出する検出手段を設けるようにした。従って、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関し、バイオメトリクス認証に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の指紋をバイオメトリクス認証の対象とした認証装置が数多く提案されているが、近年、生体における血管自体がバイオメトリクス認証の対象の1つとして着目されている。
【0003】
具体的には、血管の撮像結果として得られる画像データに対してエッジ抽出処理を施すことによって血管を抽出し、モルフォロジーと呼ばれる線状化処理を実行することによって血管の中心を通る線を検出するようになされた装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−70247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでかかる線状化処理においては、ある処理単位ごとに複雑な関数演算を要する結果、低速化が生じるといった問題があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高速化し得る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明は、画像処理装置であって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する検出手段を設けるようにした。
【0007】
従って、この画像処理装置では、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【0008】
また本発明は、画像処理方法であって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、画素値を計測する第1のステップと、走査方向に対応する画素列ごとに計測される画素値に基づいて、当該画素列ごとに極値をとる画素を検出する第2のステップとを設けるようにした。
【0009】
従ってこの画像処理方法では、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【0010】
さらに本発明は、プログラムであって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像を処理する装置の制御を担うコンピュータに対して、当該画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する処理を実行させるようにした。
【0011】
従ってこのプログラムでは、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、画素列単位で、極値をとる画素を所定の方向から検出するようにしたことにより、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができ、かくして高速化し得る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面について、本発明を適用した実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)生体情報生成装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による生体情報生成装置1を示し、生体の指に内在する血管を撮像する血管撮像部2と、当該撮像結果から生体を識別するためのデータ(以下、これを生体識別データと呼ぶ)を生成する情報生成部3とがケーブルを介して相互に接続されることにより構成される。
【0015】
(2)血管撮像部の構成
この血管撮像部2は、生体情報生成装置1の筺体1Aの所定位置に指FGを模るようにして形成された湾曲形状のガイド溝11を有し、当該ガイド溝11の底面には撮像開口部12が配設されている。
【0016】
撮像開口部12の表面には、所定材質でなる無色透明の開口カバー部13が設けられている一方、筺体1Aの内部における撮像開口部12の直下には、カメラ部14が配設されている。
【0017】
またガイド溝11の側面には、ヘモグロビンに対して特異的に吸収される近赤外光を血管の撮像光として照射する1対の近赤外光光源15(15A及び15B)が、ガイド溝11の短手方向と平行に撮像開口部12を挟み込むようにして配置されており、当該ガイド溝11に接触された指FGの指腹側部分に近赤外光を照射し得るようになされている。
【0018】
従ってこの血管撮像部2では、指FGの指腹底に近赤外光を照射する場合に比して、指FG表面で反射する近赤外光の割合が格段に抑えられる。また指FG表面を介してその内方に入射する近赤外光は、血管を通るヘモグロビンに吸収されると共に血管以外の組織において散乱するようにして指FG内方を経由し、当該指FGから血管を投影する近赤外光(以下、これを血管投影光と呼ぶ)として、撮像開口部12及び開口カバー部13を順次介してカメラ部14に入射する。
【0019】
カメラ部14においては、マクロレンズ16と、酸素化及び脱酸素化双方のヘモグロビンに依存性の有する波長域(およそ900[nm]〜1000[nm])の近赤外光だけを透過する近赤外光透過フィルタ17と、CCD撮像素子18とが順次配設されており、開口カバー部13から入射する血管投影光をマクロレンズ16及び近赤外光透過フィルタ17を順次介してCCD撮像素子18の撮像面に導光する。これによりこのカメラ部14は、近接する指FGの内方に混在する静脈系及び動脈系双方の毛細血管を忠実に結像し得るようになされている。
【0020】
CCD撮像素子18は、情報生成部3による制御のもとに、撮像面に結像される血管等を撮像し、当該撮像結果を画像信号として情報生成部3に出力するようになされている。
【0021】
このようにしてこの血管撮像部2は、生体の指に内在する血管を撮像することができるようになされている。
【0022】
(3)情報生成部の構成
一方、情報生成部3は、図2に示すように、制御部20に対して、血管撮像駆動部21と、画像処理部22とをそれぞれ接続することにより構成されている。
【0023】
この制御部20は、生体情報生成装置1全体の制御を司るCPU(Central
Processing Unit)と、各種プログラムが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータ構成でなり、当該制御部20には、各種命令が与えられる。
【0024】
そして制御部20は、操作部(図示せず)から血管を抽出する旨の血管抽出命令COMが与えられた場合には、ROMに格納された対応するプログラムに基づいて、動作モードを血管抽出モードに遷移して血管撮像駆動部21及び画像処理部22をそれぞれ制御する。
【0025】
この場合、血管撮像駆動部21は、近赤外光光源15と、カメラ部14のCCD撮像素子18とをそれぞれ駆動するようにして血管撮像部2を起動する。この結果、血管撮像部2では、近赤外光光源15からこのときガイド溝11(図1)に接触される撮像者の指FG(図1)の指腹側部に近赤外光が照射され、当該指FG(図1)を経由してCCD撮像素子18の撮像面に導光される血管投影光がこのCCD撮像素子18から血管投影画像信号S1として画像処理部22に出力される。
【0026】
この画像処理部22は、図3に示すように、A/D(Analog/Digital)変換部31、平滑化処理部32及び中心線検出部33によって構成されており、CCD撮像素子18から供給される血管投影画像信号S1をA/D変換部31に入力する。
【0027】
A/D変換部31は、血管投影画像信号S1に対してA/D変換処理を施し、この結果得られる血管投影画像データD1を平滑化処理部32に送出する。
【0028】
平滑化処理部32は、血管投影画像データD1に対して、当該画像内における所定の画素を着目画素としてある定められた順に平滑化処理を施す。具体的には、平滑化処理部32は、図4に示すように、画像IM内の着目画素NPを中心とする固定範囲FAR内における画素群の輝度平均値を算出する。
【0029】
ここで、この画素群の輝度平均値は、その値が高ければ高いほど固定範囲FAR内におけるノイズ成分が相対的に少ないことを表す。このため、着目画素NPを中心として比較的近傍の範囲をみるだけでも血管に相当する画素を特定することができる。これに対して画素群の輝度平均値が低ければ低いほど固定範囲FAR内におけるノイズ成分が相対的に少ないことを表す。このため、着目画素NPを中心として比較的近傍の範囲をみるだけでは血管に相当する画素の特定が困難となる。
【0030】
従って平滑化処理部32は、基準として予め設定された闘値未満となる輝度平均値を固定範囲FARにおいて得た場合には、当該NP着目画素を中心とする第1の平滑化対象範囲STAR1及びその第1の平滑化対象範囲STAR1よりも大きい第2の平滑化対象範囲STAR2のうち、第2の平滑化対象範囲STAR2を選択し、当該着目画素NPの輝度値を、第2の平滑化対象範囲STAR2内における画素群の輝度平均値に置き換える。
【0031】
一方、平滑化処理部32は、闘値以上となる輝度平均値を固定範囲FARにおいて得た場合には、第2の平滑化対象範囲STAR2よりも小さい第1の平滑化対象範囲STAR1を選択し、当該着目画素NPの輝度値を、第1の平滑化対象範囲STAR1内における画素群の輝度平均値に置き換える。
【0032】
このようにして平滑化処理部32は、画像IM内における所定の着目画素NPごとに、当該画素周辺の輝度に応じて平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えると共に、着目画素NPの輝度値を、当該平滑化対象範囲STAR内の画素群の輝度平均値に置き換え、当該置き換えた画像をデータ(以下、これを平滑化血管投影画像データと呼ぶ)D2(図3)として中心線検出部33に送出するようになされている。
【0033】
この結果、平滑化処理部32は、画像IM内に有するノイズ成分を散在させるようにして除去できることとなる。
【0034】
中心線検出部33は、平滑化血管投影画像データD2の画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極小値をとる画素(以下、これを極小画素と呼ぶ)を検出する。この実施の形態の場合、中心線検出部33は、図5(A)に示すように、水平の走査方向に対応する画素列HPL1、HPL2、……、HPLnごとに、当該画素列における各画素(以下、これをライン画素群と呼ぶ)の輝度値を計測して極小画素を検出する。
【0035】
また中心線検出部33は、図5(B)に示すように、水平の走査方向とは異なる例えば垂直の走査方向に対応する画素列PPL1、PPL2、……、PPLnごとに、当該画素列における各画素(以下、これをライン画素群と呼ぶ)の輝度値を計測して極小画素を検出する。
【0036】
ここで、例えば図6に示すように、平滑化血管投影画像データD2の画像IM内における血管BLの中心は、走査線上での輝度値の極小点になる。すなわち、ある画素列HPLにおけるライン画素群の極小画素MP1、MP2は、その画素列HPLと交わる血管BLの中心位置を表すことになる。
【0037】
しかし、水平の走査方向の画素列HPLごとに極小画素を検出する場合、当該走査方向と同じ水平方向を向いた血管部分BLpについては、本来その血管部分BLpにおける中心に対応する全ての画素が極小画素として検出されるべきであるが、実際には、当該全ての画素のうち1つの画素だけしか極小画素MP1として検出されないといった状態(以下、これを極小画素とりこぼし状態と呼ぶ)が発生することになる。また、垂直の走査方向の画素列HPLごとに極小画素を検出する場合、当該走査方向と同じ垂直方向となる血管部分(図示せず)についても同様に、極小画素とりこぼし状態が発生することになる。
【0038】
そこでこの中心線検出部33は、かかる検出結果として得た水平の走査方向の各画素列HPL1〜HPLnにおける極小画素の集合を単位とする一方、垂直の走査方向の各画素列PPL1〜PPLnにおける極小画素の集合を単位とし、これら集合同士を論理和により組み合わせ、当該論理和により組み合わせた極小画素のデータを生体識別データD3として制御部20に送出するようになされている。
【0039】
これにより中心線検出部33は、互いの走査方向の画素列HPL、PPLにおける極小画素としての取りこぼしを補足することができ、この結果、極小画素とりこぼし状態を未然に防止できるようになされている。
【0040】
制御部20は、かかる画像処理部22から生体識別データD3を受け取ると、この識別データD3を登録データとして内部若しくは外部に設けられた記録媒体(図示せず)に登録し、又は登録データとの比較対象として内部若しくは外部に設けられた照合器(図示せず)に送出すると共に、血管撮像駆動部21及び画像処理部22に対する制御を解除する。
【0041】
このようにしてこの情報生成部3は、撮像結果から生体を識別するための生体識別データを生成することができるようになされている。
【0042】
(4)動作及び効果
以上の構成において、この生体情報生成装置1は、生体に内在する血管の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列HPL(図5(A))、PPL(図5(B))ごとに、極小画素を検出する。
【0043】
従って、この生体情報生成装置1では、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表される血管の中心位置を把握できるため、例えばモルフォロジー等の複雑なフィルタ演算を施すことなく画素列HPL、PPLの走査だけで血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができ、かくして高速化を図ることができる。
【0044】
またこの生体情報生成装置1は、第1の走査方向(水平の走査方向)に対応する画素列HPL1〜HPLnと、第2の走査方向(垂直の走査方向)に対応する画素列PPL1〜PPLnとの極小画素をそれぞれ検出し、当該画素列HPL1〜HPLnにおける極小画素及び画素列PPL1〜PPLnにおける極小画素同士を論理和により組み合わせる。
【0045】
従って、この生体情報生成装置1では、図6で上述したように、互いの走査方向の画素列HPL、PPLにおける極小画素としての取りこぼしを補足することができるため、一段と正確に、血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができる。このことは、図7に示すように、2つの走査方向に対応する各画素列の極小画素の論理和をとったときの画像(図7(A))と、1つの走査方向に対応する画素列の極小画素をとったときの画像(図7(B))とを視覚的に比較しても明らかである。
【0046】
さらに、この生体情報生成装置1は、かかる極小画素を検出する前に、血管の撮像結果として得られる画像を平滑化する。従って、この生体情報生成装置1では、ノイズに相当する画素を極小画素として検出することを回避することができるため、正確に、血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができる。
【0047】
さらにこの生体情報生成装置1は、かかる平滑化処理として、着画素NP(図4)周辺における大局的変化に応じて平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えると共に、着画素NPの輝度値を、当該切り換えた平滑化対象範囲STAR内の画素群の輝度平均値に置き換えるといった手法を採用する。
【0048】
従って、この生体情報生成装置1では、メディアンと呼ばれる平滑化処理を採用する場合に比して、処理単位ごとに中間値を検出するためのソート処理を施すといったことを回避することができるため、より高速化を図ることができる。
【0049】
実際上、平滑化対象範囲STARにおける大きさの具体的な切換手法として、この生体情報生成装置1は、着画素NP(図4)を中心とした固定範囲FAR内における画素群の輝度平均値が闘値未満となるときには、第1の平滑化対象範囲STAR1よりも大きい第2の平滑化対象範囲STAR2に切り換え、これに対して闘値以上となるときには、第2の平滑化対象範囲STAR2よりも小さい第1の平滑化対象範囲STAR1に切り換える。
【0050】
従って、この生体情報生成装置1では、図8(A)に示すように、明るい部分は血管のディテールを損なわずに、暗い部分はノイズの影響を受けずに血管を表出しすることができる。なお、平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えることなく単一の平滑化対象範囲のもとで平滑化を行った場合、カーネルサイズが小さい条件下では暗い部分についてノイズの影響を受けて血管を表出しすることができず(図8(B))、カーネルサイズが大きい条件下では明るい部分について血管のディテールを損なうこととなり(図8(C))、当該平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えた場合(図8(A))と視覚的に比較してもその差は明らかであることが分かる。
【0051】
以上の構成によれば、生体に内在する血管の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにしたことにより、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表される血管の中心位置を把握できるため、例えばモルフォロジー等の複雑なフィルタ演算を施すことなく画素列の走査だけで血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができ、かくして高速化し得る生体情報生成装置1を実現できる。
【0052】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、識別対象として、生体に内在する血管を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、紋様と呼ばれる紙の模様や、生体に表在する指紋、耳若しくは顔又は生体に内在する神経等を適用するようにしても良い。要は、その用途等に応じて適応的に識別対象を選択することができる。因みに、神経を認証対象とする場合には、例えば神経に特異的なマーカを体内に注入し、当該マーカを撮像するようにすれば、上述の実施の形態と同様にして神経を識別対象とすることができる。なお、かかる識別対象のうち、紋様、血管及び指紋等の網状の識別対象を適用するようにすれば、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0053】
また、かかる識別対象の範囲として、生体部位の一部となる指を適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、掌、腕、眼底又は足指等の種々の生体部位を適用するようにしても良く、生体全体を適用するようにしても良い。また識別対象が生体でない場合であってもその識別対象の全体又は一部を範囲とすることができる。
【0054】
さらに、かかる識別対象を撮像する撮像手段として、図1に示す構成のものを適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、その用途や識別対象の種類等に応じて、種々の構成のものを幅広く適用することができる。
【0055】
また上述の実施の形態においては、撮像画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する検出手段として、2つの走査方向(水平の走査方向及び垂直の走査方向)に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、1つの走査方向に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにしても良く、3以上の走査方向に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにしても良い。
【0056】
また、走査方向として、水平の走査方向及び垂直の走査方向を適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、画像を中心とする360[°]いずれの走査方向であってもこれを選択することができる。なお、例えば生体部位を指とする血管又は指紋が識別対象である場合に、CCD撮像素子18に結像される生体部位(指)の指差し方向及びそれとは逆方向となる長手方向と鈍角未満の角度をなす方向、より好ましくは45[°]若しくは135[°]又はその前後の角度をなす方向に選定すれば、主に長手方向に走る血管の形成パターンを表す中心線をより精度よく抽出できる。
【0057】
さらに、極小画素の検出指標として、輝度値を適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば色差値等、この他種々の画素値を検出指標とすることができる。なお、撮像手法や識別対象の種類によっては、撮像画像に有する識別対象に相当する画素が黒く、それ以外の背景に相当する画素が白くなる場合もあるため、この場合には、極大値をとる画素を検出することができる。
【0058】
さらに上述の実施の形態においては、画像を平滑化する平滑化手段として、固定範囲FARにおける画素群の輝度平均値に応じて平滑化対象範囲STAR1又はSTAR2を選択し、当該着画素NP(図4)の輝度値を、選択した平滑化対象範囲STAR内の画素群の輝度平均値に置き換えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該固定範囲FAR及び又は平滑化対象範囲STARにおける輝度平均値を、例えば輝度中間値や最低輝度値等に変更するようにしても良い。このようにしても上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えるための指標として、固定範囲FAR内の画素群のうち着目画素NPを除いた状態の輝度平均値を採用するようにしても良い。このようにすれば、着目画素NP自体がノイズであることに起因して、平滑化対象範囲STARの誤選択を回避することができるため、より適切に血管に相当する画素を特定することができる。
【0060】
さらに、かかる上述の実施の形態の平滑化手段に代えて、メディアンフィルタ等、通常一般的に用いられる平滑化手段を適用するようにしても良い。
【0061】
さらに上述の実施の形態においては、同一の走査方向に対応する各画素列で検出された極小値をとる画素の集合を単位とし、当該単位とした集合同士を組み合わせる組合手段として、第1の走査方向(水平の走査方向)に対応する画素列HPL1〜HPLnの極小画素、及び、第2の走査方向(垂直の走査方向)に対応する画素列PPL1〜PPLnの極小画素同士を論理和により組み合わせるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該極小画素同士の合算の有無をその輝度値も加味して決定する等、種々の組み合わせルールに従って組み合わせることができる。
【0062】
さらに上述の実施の形態においては画像処理部22をハードウェア的に動作するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該画像処理部22における平滑化処理部32及び中心線検出部33の各種処理を実行させるプログラムによりソフトウェア的に動作させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、生体を識別する技術を用いる分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態による生体情報生成装置の全体構成を示す略線図である。
【図2】情報生成部の構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】平滑化対象範囲の切り換えの説明に供する略線図である。
【図5】極小画素の検出の説明に供する略線図である。
【図6】極小画素と、血管の中心位置との関係の説明に供する略線図である。
【図7】平滑化処理結果の画像を示す略線図である。
【図8】中心線検出処理結果の画像を示す略線図である。
【符号の説明】
【0065】
1……生体情報生成装置、2……血管撮像部、3……情報生成部、14……カメラ部、15A、15B……近赤外光光源、16……マクロレンズ、17……近赤外光透過フィルタ、18……CCD撮像素子、20……制御部、21……血管撮像駆動部、22……画像処理部、31……A/D変換部、32……平滑化処理部、33……中心線検出部、COM……命令、S1……血管投影画像信号、D1……血管投影画像データ、D2……平滑化血管投影画像データ、D3……生体識別データ、FAR……固定領域、STAR1、STAR2……平滑化対象領域、NP……着目画素、画素列……HPL、PPL、MP1、MP2……極小値。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理方法及びプログラムに関し、バイオメトリクス認証に適用して好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、生体の指紋をバイオメトリクス認証の対象とした認証装置が数多く提案されているが、近年、生体における血管自体がバイオメトリクス認証の対象の1つとして着目されている。
【0003】
具体的には、血管の撮像結果として得られる画像データに対してエッジ抽出処理を施すことによって血管を抽出し、モルフォロジーと呼ばれる線状化処理を実行することによって血管の中心を通る線を検出するようになされた装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−70247号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところでかかる線状化処理においては、ある処理単位ごとに複雑な関数演算を要する結果、低速化が生じるといった問題があった。
【0005】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、高速化し得る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる課題を解決するため本発明は、画像処理装置であって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する検出手段を設けるようにした。
【0007】
従って、この画像処理装置では、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【0008】
また本発明は、画像処理方法であって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、画素値を計測する第1のステップと、走査方向に対応する画素列ごとに計測される画素値に基づいて、当該画素列ごとに極値をとる画素を検出する第2のステップとを設けるようにした。
【0009】
従ってこの画像処理方法では、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【0010】
さらに本発明は、プログラムであって、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像を処理する装置の制御を担うコンピュータに対して、当該画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する処理を実行させるようにした。
【0011】
従ってこのプログラムでは、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、画素列単位で、極値をとる画素を所定の方向から検出するようにしたことにより、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表わされる生体の識別対象を把握できるため、複雑な関数演算を施すことなく画素列の走査により生体の識別対象を抽出することができ、かくして高速化し得る画像処理装置、画像処理方法及びプログラムを実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下図面について、本発明を適用した実施の形態を詳述する。
【0014】
(1)生体情報生成装置の構成
図1において、1は全体として本実施の形態による生体情報生成装置1を示し、生体の指に内在する血管を撮像する血管撮像部2と、当該撮像結果から生体を識別するためのデータ(以下、これを生体識別データと呼ぶ)を生成する情報生成部3とがケーブルを介して相互に接続されることにより構成される。
【0015】
(2)血管撮像部の構成
この血管撮像部2は、生体情報生成装置1の筺体1Aの所定位置に指FGを模るようにして形成された湾曲形状のガイド溝11を有し、当該ガイド溝11の底面には撮像開口部12が配設されている。
【0016】
撮像開口部12の表面には、所定材質でなる無色透明の開口カバー部13が設けられている一方、筺体1Aの内部における撮像開口部12の直下には、カメラ部14が配設されている。
【0017】
またガイド溝11の側面には、ヘモグロビンに対して特異的に吸収される近赤外光を血管の撮像光として照射する1対の近赤外光光源15(15A及び15B)が、ガイド溝11の短手方向と平行に撮像開口部12を挟み込むようにして配置されており、当該ガイド溝11に接触された指FGの指腹側部分に近赤外光を照射し得るようになされている。
【0018】
従ってこの血管撮像部2では、指FGの指腹底に近赤外光を照射する場合に比して、指FG表面で反射する近赤外光の割合が格段に抑えられる。また指FG表面を介してその内方に入射する近赤外光は、血管を通るヘモグロビンに吸収されると共に血管以外の組織において散乱するようにして指FG内方を経由し、当該指FGから血管を投影する近赤外光(以下、これを血管投影光と呼ぶ)として、撮像開口部12及び開口カバー部13を順次介してカメラ部14に入射する。
【0019】
カメラ部14においては、マクロレンズ16と、酸素化及び脱酸素化双方のヘモグロビンに依存性の有する波長域(およそ900[nm]〜1000[nm])の近赤外光だけを透過する近赤外光透過フィルタ17と、CCD撮像素子18とが順次配設されており、開口カバー部13から入射する血管投影光をマクロレンズ16及び近赤外光透過フィルタ17を順次介してCCD撮像素子18の撮像面に導光する。これによりこのカメラ部14は、近接する指FGの内方に混在する静脈系及び動脈系双方の毛細血管を忠実に結像し得るようになされている。
【0020】
CCD撮像素子18は、情報生成部3による制御のもとに、撮像面に結像される血管等を撮像し、当該撮像結果を画像信号として情報生成部3に出力するようになされている。
【0021】
このようにしてこの血管撮像部2は、生体の指に内在する血管を撮像することができるようになされている。
【0022】
(3)情報生成部の構成
一方、情報生成部3は、図2に示すように、制御部20に対して、血管撮像駆動部21と、画像処理部22とをそれぞれ接続することにより構成されている。
【0023】
この制御部20は、生体情報生成装置1全体の制御を司るCPU(Central
Processing Unit)と、各種プログラムが格納されるROM(Read Only Memory)と、当該CPUのワークメモリとしてのRAM(Random Access Memory)とを含むコンピュータ構成でなり、当該制御部20には、各種命令が与えられる。
【0024】
そして制御部20は、操作部(図示せず)から血管を抽出する旨の血管抽出命令COMが与えられた場合には、ROMに格納された対応するプログラムに基づいて、動作モードを血管抽出モードに遷移して血管撮像駆動部21及び画像処理部22をそれぞれ制御する。
【0025】
この場合、血管撮像駆動部21は、近赤外光光源15と、カメラ部14のCCD撮像素子18とをそれぞれ駆動するようにして血管撮像部2を起動する。この結果、血管撮像部2では、近赤外光光源15からこのときガイド溝11(図1)に接触される撮像者の指FG(図1)の指腹側部に近赤外光が照射され、当該指FG(図1)を経由してCCD撮像素子18の撮像面に導光される血管投影光がこのCCD撮像素子18から血管投影画像信号S1として画像処理部22に出力される。
【0026】
この画像処理部22は、図3に示すように、A/D(Analog/Digital)変換部31、平滑化処理部32及び中心線検出部33によって構成されており、CCD撮像素子18から供給される血管投影画像信号S1をA/D変換部31に入力する。
【0027】
A/D変換部31は、血管投影画像信号S1に対してA/D変換処理を施し、この結果得られる血管投影画像データD1を平滑化処理部32に送出する。
【0028】
平滑化処理部32は、血管投影画像データD1に対して、当該画像内における所定の画素を着目画素としてある定められた順に平滑化処理を施す。具体的には、平滑化処理部32は、図4に示すように、画像IM内の着目画素NPを中心とする固定範囲FAR内における画素群の輝度平均値を算出する。
【0029】
ここで、この画素群の輝度平均値は、その値が高ければ高いほど固定範囲FAR内におけるノイズ成分が相対的に少ないことを表す。このため、着目画素NPを中心として比較的近傍の範囲をみるだけでも血管に相当する画素を特定することができる。これに対して画素群の輝度平均値が低ければ低いほど固定範囲FAR内におけるノイズ成分が相対的に少ないことを表す。このため、着目画素NPを中心として比較的近傍の範囲をみるだけでは血管に相当する画素の特定が困難となる。
【0030】
従って平滑化処理部32は、基準として予め設定された闘値未満となる輝度平均値を固定範囲FARにおいて得た場合には、当該NP着目画素を中心とする第1の平滑化対象範囲STAR1及びその第1の平滑化対象範囲STAR1よりも大きい第2の平滑化対象範囲STAR2のうち、第2の平滑化対象範囲STAR2を選択し、当該着目画素NPの輝度値を、第2の平滑化対象範囲STAR2内における画素群の輝度平均値に置き換える。
【0031】
一方、平滑化処理部32は、闘値以上となる輝度平均値を固定範囲FARにおいて得た場合には、第2の平滑化対象範囲STAR2よりも小さい第1の平滑化対象範囲STAR1を選択し、当該着目画素NPの輝度値を、第1の平滑化対象範囲STAR1内における画素群の輝度平均値に置き換える。
【0032】
このようにして平滑化処理部32は、画像IM内における所定の着目画素NPごとに、当該画素周辺の輝度に応じて平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えると共に、着目画素NPの輝度値を、当該平滑化対象範囲STAR内の画素群の輝度平均値に置き換え、当該置き換えた画像をデータ(以下、これを平滑化血管投影画像データと呼ぶ)D2(図3)として中心線検出部33に送出するようになされている。
【0033】
この結果、平滑化処理部32は、画像IM内に有するノイズ成分を散在させるようにして除去できることとなる。
【0034】
中心線検出部33は、平滑化血管投影画像データD2の画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極小値をとる画素(以下、これを極小画素と呼ぶ)を検出する。この実施の形態の場合、中心線検出部33は、図5(A)に示すように、水平の走査方向に対応する画素列HPL1、HPL2、……、HPLnごとに、当該画素列における各画素(以下、これをライン画素群と呼ぶ)の輝度値を計測して極小画素を検出する。
【0035】
また中心線検出部33は、図5(B)に示すように、水平の走査方向とは異なる例えば垂直の走査方向に対応する画素列PPL1、PPL2、……、PPLnごとに、当該画素列における各画素(以下、これをライン画素群と呼ぶ)の輝度値を計測して極小画素を検出する。
【0036】
ここで、例えば図6に示すように、平滑化血管投影画像データD2の画像IM内における血管BLの中心は、走査線上での輝度値の極小点になる。すなわち、ある画素列HPLにおけるライン画素群の極小画素MP1、MP2は、その画素列HPLと交わる血管BLの中心位置を表すことになる。
【0037】
しかし、水平の走査方向の画素列HPLごとに極小画素を検出する場合、当該走査方向と同じ水平方向を向いた血管部分BLpについては、本来その血管部分BLpにおける中心に対応する全ての画素が極小画素として検出されるべきであるが、実際には、当該全ての画素のうち1つの画素だけしか極小画素MP1として検出されないといった状態(以下、これを極小画素とりこぼし状態と呼ぶ)が発生することになる。また、垂直の走査方向の画素列HPLごとに極小画素を検出する場合、当該走査方向と同じ垂直方向となる血管部分(図示せず)についても同様に、極小画素とりこぼし状態が発生することになる。
【0038】
そこでこの中心線検出部33は、かかる検出結果として得た水平の走査方向の各画素列HPL1〜HPLnにおける極小画素の集合を単位とする一方、垂直の走査方向の各画素列PPL1〜PPLnにおける極小画素の集合を単位とし、これら集合同士を論理和により組み合わせ、当該論理和により組み合わせた極小画素のデータを生体識別データD3として制御部20に送出するようになされている。
【0039】
これにより中心線検出部33は、互いの走査方向の画素列HPL、PPLにおける極小画素としての取りこぼしを補足することができ、この結果、極小画素とりこぼし状態を未然に防止できるようになされている。
【0040】
制御部20は、かかる画像処理部22から生体識別データD3を受け取ると、この識別データD3を登録データとして内部若しくは外部に設けられた記録媒体(図示せず)に登録し、又は登録データとの比較対象として内部若しくは外部に設けられた照合器(図示せず)に送出すると共に、血管撮像駆動部21及び画像処理部22に対する制御を解除する。
【0041】
このようにしてこの情報生成部3は、撮像結果から生体を識別するための生体識別データを生成することができるようになされている。
【0042】
(4)動作及び効果
以上の構成において、この生体情報生成装置1は、生体に内在する血管の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列HPL(図5(A))、PPL(図5(B))ごとに、極小画素を検出する。
【0043】
従って、この生体情報生成装置1では、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表される血管の中心位置を把握できるため、例えばモルフォロジー等の複雑なフィルタ演算を施すことなく画素列HPL、PPLの走査だけで血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができ、かくして高速化を図ることができる。
【0044】
またこの生体情報生成装置1は、第1の走査方向(水平の走査方向)に対応する画素列HPL1〜HPLnと、第2の走査方向(垂直の走査方向)に対応する画素列PPL1〜PPLnとの極小画素をそれぞれ検出し、当該画素列HPL1〜HPLnにおける極小画素及び画素列PPL1〜PPLnにおける極小画素同士を論理和により組み合わせる。
【0045】
従って、この生体情報生成装置1では、図6で上述したように、互いの走査方向の画素列HPL、PPLにおける極小画素としての取りこぼしを補足することができるため、一段と正確に、血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができる。このことは、図7に示すように、2つの走査方向に対応する各画素列の極小画素の論理和をとったときの画像(図7(A))と、1つの走査方向に対応する画素列の極小画素をとったときの画像(図7(B))とを視覚的に比較しても明らかである。
【0046】
さらに、この生体情報生成装置1は、かかる極小画素を検出する前に、血管の撮像結果として得られる画像を平滑化する。従って、この生体情報生成装置1では、ノイズに相当する画素を極小画素として検出することを回避することができるため、正確に、血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができる。
【0047】
さらにこの生体情報生成装置1は、かかる平滑化処理として、着画素NP(図4)周辺における大局的変化に応じて平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えると共に、着画素NPの輝度値を、当該切り換えた平滑化対象範囲STAR内の画素群の輝度平均値に置き換えるといった手法を採用する。
【0048】
従って、この生体情報生成装置1では、メディアンと呼ばれる平滑化処理を採用する場合に比して、処理単位ごとに中間値を検出するためのソート処理を施すといったことを回避することができるため、より高速化を図ることができる。
【0049】
実際上、平滑化対象範囲STARにおける大きさの具体的な切換手法として、この生体情報生成装置1は、着画素NP(図4)を中心とした固定範囲FAR内における画素群の輝度平均値が闘値未満となるときには、第1の平滑化対象範囲STAR1よりも大きい第2の平滑化対象範囲STAR2に切り換え、これに対して闘値以上となるときには、第2の平滑化対象範囲STAR2よりも小さい第1の平滑化対象範囲STAR1に切り換える。
【0050】
従って、この生体情報生成装置1では、図8(A)に示すように、明るい部分は血管のディテールを損なわずに、暗い部分はノイズの影響を受けずに血管を表出しすることができる。なお、平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えることなく単一の平滑化対象範囲のもとで平滑化を行った場合、カーネルサイズが小さい条件下では暗い部分についてノイズの影響を受けて血管を表出しすることができず(図8(B))、カーネルサイズが大きい条件下では明るい部分について血管のディテールを損なうこととなり(図8(C))、当該平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えた場合(図8(A))と視覚的に比較してもその差は明らかであることが分かる。
【0051】
以上の構成によれば、生体に内在する血管の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにしたことにより、画素列における隣接する画素同士の関係から、画像に表される血管の中心位置を把握できるため、例えばモルフォロジー等の複雑なフィルタ演算を施すことなく画素列の走査だけで血管の形成パターンを表す中心線を抽出することができ、かくして高速化し得る生体情報生成装置1を実現できる。
【0052】
(5)他の実施の形態
なお上述の実施の形態においては、識別対象として、生体に内在する血管を適用するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、紋様と呼ばれる紙の模様や、生体に表在する指紋、耳若しくは顔又は生体に内在する神経等を適用するようにしても良い。要は、その用途等に応じて適応的に識別対象を選択することができる。因みに、神経を認証対象とする場合には、例えば神経に特異的なマーカを体内に注入し、当該マーカを撮像するようにすれば、上述の実施の形態と同様にして神経を識別対象とすることができる。なお、かかる識別対象のうち、紋様、血管及び指紋等の網状の識別対象を適用するようにすれば、本発明の効果が顕著に発揮される。
【0053】
また、かかる識別対象の範囲として、生体部位の一部となる指を適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、掌、腕、眼底又は足指等の種々の生体部位を適用するようにしても良く、生体全体を適用するようにしても良い。また識別対象が生体でない場合であってもその識別対象の全体又は一部を範囲とすることができる。
【0054】
さらに、かかる識別対象を撮像する撮像手段として、図1に示す構成のものを適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、その用途や識別対象の種類等に応じて、種々の構成のものを幅広く適用することができる。
【0055】
また上述の実施の形態においては、撮像画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する検出手段として、2つの走査方向(水平の走査方向及び垂直の走査方向)に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、1つの走査方向に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにしても良く、3以上の走査方向に対応する画素列ごとに極小画素を検出するようにしても良い。
【0056】
また、走査方向として、水平の走査方向及び垂直の走査方向を適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、画像を中心とする360[°]いずれの走査方向であってもこれを選択することができる。なお、例えば生体部位を指とする血管又は指紋が識別対象である場合に、CCD撮像素子18に結像される生体部位(指)の指差し方向及びそれとは逆方向となる長手方向と鈍角未満の角度をなす方向、より好ましくは45[°]若しくは135[°]又はその前後の角度をなす方向に選定すれば、主に長手方向に走る血管の形成パターンを表す中心線をより精度よく抽出できる。
【0057】
さらに、極小画素の検出指標として、輝度値を適用するようにしたが、本発明はこれに限らず、例えば色差値等、この他種々の画素値を検出指標とすることができる。なお、撮像手法や識別対象の種類によっては、撮像画像に有する識別対象に相当する画素が黒く、それ以外の背景に相当する画素が白くなる場合もあるため、この場合には、極大値をとる画素を検出することができる。
【0058】
さらに上述の実施の形態においては、画像を平滑化する平滑化手段として、固定範囲FARにおける画素群の輝度平均値に応じて平滑化対象範囲STAR1又はSTAR2を選択し、当該着画素NP(図4)の輝度値を、選択した平滑化対象範囲STAR内の画素群の輝度平均値に置き換えるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該固定範囲FAR及び又は平滑化対象範囲STARにおける輝度平均値を、例えば輝度中間値や最低輝度値等に変更するようにしても良い。このようにしても上述の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0059】
また、平滑化対象範囲STARの大きさを切り換えるための指標として、固定範囲FAR内の画素群のうち着目画素NPを除いた状態の輝度平均値を採用するようにしても良い。このようにすれば、着目画素NP自体がノイズであることに起因して、平滑化対象範囲STARの誤選択を回避することができるため、より適切に血管に相当する画素を特定することができる。
【0060】
さらに、かかる上述の実施の形態の平滑化手段に代えて、メディアンフィルタ等、通常一般的に用いられる平滑化手段を適用するようにしても良い。
【0061】
さらに上述の実施の形態においては、同一の走査方向に対応する各画素列で検出された極小値をとる画素の集合を単位とし、当該単位とした集合同士を組み合わせる組合手段として、第1の走査方向(水平の走査方向)に対応する画素列HPL1〜HPLnの極小画素、及び、第2の走査方向(垂直の走査方向)に対応する画素列PPL1〜PPLnの極小画素同士を論理和により組み合わせるようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該極小画素同士の合算の有無をその輝度値も加味して決定する等、種々の組み合わせルールに従って組み合わせることができる。
【0062】
さらに上述の実施の形態においては画像処理部22をハードウェア的に動作するようにした場合について述べたが、本発明はこれに限らず、当該画像処理部22における平滑化処理部32及び中心線検出部33の各種処理を実行させるプログラムによりソフトウェア的に動作させるようにしても良い。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、生体を識別する技術を用いる分野に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本実施の形態による生体情報生成装置の全体構成を示す略線図である。
【図2】情報生成部の構成を示すブロック図である。
【図3】画像処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】平滑化対象範囲の切り換えの説明に供する略線図である。
【図5】極小画素の検出の説明に供する略線図である。
【図6】極小画素と、血管の中心位置との関係の説明に供する略線図である。
【図7】平滑化処理結果の画像を示す略線図である。
【図8】中心線検出処理結果の画像を示す略線図である。
【符号の説明】
【0065】
1……生体情報生成装置、2……血管撮像部、3……情報生成部、14……カメラ部、15A、15B……近赤外光光源、16……マクロレンズ、17……近赤外光透過フィルタ、18……CCD撮像素子、20……制御部、21……血管撮像駆動部、22……画像処理部、31……A/D変換部、32……平滑化処理部、33……中心線検出部、COM……命令、S1……血管投影画像信号、D1……血管投影画像データ、D2……平滑化血管投影画像データ、D3……生体識別データ、FAR……固定領域、STAR1、STAR2……平滑化対象領域、NP……着目画素、画素列……HPL、PPL、MP1、MP2……極小値。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する検出手段
を具えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
生体における識別対象の撮像結果として得られる画像を平滑化する平滑化手段
をさらに具え、
上記検出手段は、
上記平滑化手段により平滑化された画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記検出手段は、
複数の走査方向に対応する画素列ごとに、上記極値をとる画素を検出し、
同一の上記走査方向に対応する各上記画素列で検出された上記極値をとる画素の集合を単位とし、当該単位とした上記集合同士を組み合わせる組合手段
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記組合手段は、
上記集合同士を論理和により組み合わせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記識別対象は、生体における識別対象である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記識別対象は、網状の識別対象である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記方向は、撮像素子に結像される生体部位の長手方向と45[°]若しくは135[°]又はその前後をなす方向である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、画素値を計測する第1のステップと、
上記走査方向に対応する画素列ごとに計測される上記画素値に基づいて、当該画素列ごとに極値をとる画素を検出する第2のステップと
を具えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像を処理する装置の制御を担うコンピュータに対して、
上記画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する処理
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する検出手段
を具えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
生体における識別対象の撮像結果として得られる画像を平滑化する平滑化手段
をさらに具え、
上記検出手段は、
上記平滑化手段により平滑化された画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記検出手段は、
複数の走査方向に対応する画素列ごとに、上記極値をとる画素を検出し、
同一の上記走査方向に対応する各上記画素列で検出された上記極値をとる画素の集合を単位とし、当該単位とした上記集合同士を組み合わせる組合手段
をさらに具えることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記組合手段は、
上記集合同士を論理和により組み合わせる
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記識別対象は、生体における識別対象である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記識別対象は、網状の識別対象である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記方向は、撮像素子に結像される生体部位の長手方向と45[°]若しくは135[°]又はその前後をなす方向である
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項8】
生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、画素値を計測する第1のステップと、
上記走査方向に対応する画素列ごとに計測される上記画素値に基づいて、当該画素列ごとに極値をとる画素を検出する第2のステップと
を具えることを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
生体に有する識別対象の撮像結果として得られる画像を処理する装置の制御を担うコンピュータに対して、
上記画像について、走査方向に対応する画素列ごとに、極値をとる画素を検出する処理
を実行させることを特徴とするプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公開番号】特開2007−18248(P2007−18248A)
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−198951(P2005−198951)
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年7月7日(2005.7.7)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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