説明

画像処理装置、画像処理方法及び撮像装置

【課題】合成画像の彩度の低下を招くことなく、ダイナミックレンジを拡張することができるようにする。
【解決手段】階調圧縮前の合成画像の輝度C1、彩度C1及び収まり度合情報C1と、階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2とから、輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを算出するコントラスト強調パラメータ算出部14を設け、コントラスト強調部15が、輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを用いて、階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高露出値画像と低露出値画像を合成して、デジタルカメラのダイナミックレンジを拡張する画像処理装置及び画像処理方法と、その画像処理装置を実装している撮像装置とに関するものである。
【背景技術】
【0002】
撮像装置であるデジタルカメラ等で使用されているイメージセンサは、ダイナミックレンジが狭いため、撮影画像の中に、白飛びや黒つぶれが発生することがある。
以下の特許文献1に開示されている画像処理装置では、デジタルカメラのダイナミックレンジを拡張するために、露出が異なる2枚の画像を合成するようにしている。
【0003】
図9は特許文献1に開示されている画像処理装置を示す構成図である。
図9において、CCD101は撮像素子であり、タイミング制御手段109の指示の下で露光時間を切り替えて、2枚の画像(白飛びが少ない高露出値画像と、黒つぶれが少ない低露出値画像)を時分割で撮影する。
メモリ102はCCD101により撮影された高露出値画像を格納するバッファメモリであり、メモリ102は時分割で撮影された2枚の画像を合成する際のタイミングを調整するために使用される。
【0004】
乗算器103はメモリ102に格納された高露出値画像の信号レベルを定数倍する。
レベル重み手段104は乗算器103により信号レベルが定数倍された高露出値画像に対して、その高露出値画像の信号レベルに応じた重み係数Hを付加する。
レベル重み手段105はCCD101により撮影された低露出値画像に対して、その低露出値画像の信号レベルに応じた重み係数Lを付加する。
【0005】
加算器106はレベル重み手段104により重み係数Hが付加された高露出値画像とレベル重み手段105により重み係数Lが付加された低露出値画像とを加算して画像を合成する。
速度変換手段107はタイミング制御手段109の指示の下、加算器106による合成画像の速度を調整する。
レベル圧縮手段108は速度変換手段107により速度が調整された合成画像の信号レベルを出力段の階調に合わせるために、その合成画像の信号レベルを圧縮する。
【0006】
図9の画像処理装置は、上記のように構成されているので、CCD101により時分割で撮影された2枚の画像が合成されて、デジタルカメラのダイナミックレンジが拡張される。
ここで、図10は高露出値画像の最も低い階調と、低露出値画像の最も高い階調とが同じ明るさである場合の図9の画像処理装置のダイナミックレンジ拡張方法を表している。
図10では、高露出値画像の各階調は、合成画像の高階調側半分に割り当てられ、低露出値画像の各階調は、合成画像の低階調側半分に割り当てられることを表している。
【0007】
RGBの3原色で表されるデジタル画像の場合、一般的に高階調端付近及び低階調端付近では、彩度が低くなり、彩度を高くするためには、明るさが中間の階調である必要がある。
しかし、図10に示すように、高露出値画像で中間の階調であった部分は、合成画像では高階調側にマッピングされ、低露出値画像で中間であった部分は、合成画像では低階調側にマッピングされる。
このため、高露出値画像及び低露出値画像において、高い彩度を出せる階調であった部分が、合成画像では高い彩度を出せる階調にマッピングされず、合成画像の彩度の低下が発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第3074967号(段落番号[0015]、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の画像処理装置は以上のように構成されているので、CCD101により時分割で撮影された2枚の画像が合成されて、デジタルカメラのダイナミックレンジが拡張されるが、その合成画像の信号レベルが圧縮されることで、彩度が低下することがある課題があった。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたもので、合成画像の彩度の低下を招くことなく、ダイナミックレンジを拡張することができる画像処理装置、画像処理方法及び撮像装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係る画像処理装置は、高露出値画像の輝度及び彩度を特定するとともに、高露出値画像と異なる露出条件で同一の被写体が撮影された低露出値画像の輝度及び彩度を特定する輝度彩度特定手段と、輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第1の収まり度合情報を出力するとともに、輝度彩度特定手段により特定された低露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第2の収まり度合情報を出力する収まり度合特定手段と、輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像及び低露出値画像の輝度から合成比率を算出する合成比率算出手段と、合成比率算出手段により算出された合成比率にしたがって高露出値画像と低露出値画像を合成するとともに、その合成比率にしたがって高露出値画像の輝度、彩度及び第1の収まり度合情報と、低露出値画像の輝度、彩度及び第2の収まり度合情報とを合成する合成手段と、合成手段による合成画像の階調を圧縮する階調圧縮手段とを設け、コントラスト強調手段が合成手段による合成後の輝度、彩度及び収まり度合情報と階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像からコントラスト強調用のパラメータを算出し、そのパラメータを用いて、階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調するようにしたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、高露出値画像の輝度及び彩度を特定するとともに、高露出値画像と異なる露出条件で同一の被写体が撮影された低露出値画像の輝度及び彩度を特定する輝度彩度特定手段と、輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第1の収まり度合情報を出力するとともに、輝度彩度特定手段により特定された低露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第2の収まり度合情報を出力する収まり度合特定手段と、輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像及び低露出値画像の輝度から合成比率を算出する合成比率算出手段と、合成比率算出手段により算出された合成比率にしたがって高露出値画像と低露出値画像を合成するとともに、その合成比率にしたがって高露出値画像の輝度、彩度及び第1の収まり度合情報と、低露出値画像の輝度、彩度及び第2の収まり度合情報とを合成する合成手段と、合成手段による合成画像の階調を圧縮する階調圧縮手段とを設け、コントラスト強調手段が合成手段による合成後の輝度、彩度及び収まり度合情報と階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像からコントラスト強調用のパラメータを算出し、そのパラメータを用いて、階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調するように構成したので、合成画像の彩度の低下を招くことなく、ダイナミックレンジを拡張することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1による画像処理装置を示す構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による画像処理装置の処理内容を示すフローチャートである。
【図3】高露出値画像の輝度A1と輝度収まり度合SYAの対応関係を示す説明図である。
【図4】高露出値画像の彩度A1と彩度収まり度合SCAの対応関係を示す説明図である。
【図5】低露出値画像の輝度B1と輝度収まり度合SYBの対応関係を示す説明図である。
【図6】低露出値画像の彩度B1と彩度収まり度合SCBの対応関係を示す説明図である。
【図7】(A)は加算結果(A3+B3)と合成比率Aの対応関係を示し、(B)は加算結果(A3+B3)と合成比率Bの対応関係を示す説明図である。
【図8】この発明の実施の形態2による画像処理装置が搭載されている撮像装置を示す構成図である。
【図9】特許文献1に開示されている画像処理装置を示す構成図である。
【図10】高露出値画像の最も低い階調と、低露出値画像の最も高い階調とが同じ明るさである場合の図9の画像処理装置のダイナミックレンジ拡張方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1による画像処理装置を示す構成図である。
図1において、輝度/彩度算出部1は例えばCCDなどの撮像素子により撮影された高露出値画像を示す画像データAを入力して、その高露出値画像を構成している画素の値を特定し、その画素値を用いて、高露出値画像の輝度A1及び彩度A1を算出する処理を実施する。
輝度/彩度算出部2は例えばCCDなどの撮像素子により撮影された低露出値画像(低露出値画像は、高露出値画像と異なる露出条件で同一の被写体が撮影された画像であり、高露出値画像と低露出値画像は、例えば、上記撮像素子により時分割で撮影される)を示す画像データBを入力して、その低露出値画像を構成している画素の値を特定し、その画素値を用いて、低露出値画像の輝度B1及び彩度B1を算出する処理を実施する。
なお、輝度/彩度算出部1,2は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、輝度/彩度算出部1,2が輝度彩度特定手段を構成している。
【0015】
収まり度合特定部3は輝度/彩度算出部1により算出された高露出値画像の輝度A1が指定の範囲内に収まっている度合(以下、「輝度収まり度合SYA」と称する)を特定するとともに、輝度/彩度算出部1により算出された高露出値画像の彩度A1が指定の範囲内に収まっている度合(以下、「彩度収まり度合SCA」と称する)を特定し、その輝度収まり度合SYAと彩度収まり度合SCAの乗算値を収まり度合情報A1(第1の収まり度合情報)として合成比率乗算部9に出力する処理を実施する。
【0016】
収まり度合特定部4は輝度/彩度算出部2により算出された低露出値画像の輝度B1が指定の範囲内に収まっている度合(以下、「輝度収まり度合SYB」と称する)を特定するとともに、輝度/彩度算出部2により算出された低露出値画像の彩度B1が指定の範囲内に収まっている度合(以下、「彩度収まり度合SCB」と称する)を特定し、その輝度収まり度合SYBと彩度収まり度合SCBの乗算値を収まり度合情報B1(第2の収まり度合情報)として合成比率乗算部10に出力する処理を実施する。
なお、収まり度合特定部3,4は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、収まり度合特定部3,4が収まり度合特定手段を構成している。
【0017】
露出比率変換部5は入力される画像データA及び輝度/彩度算出部1により算出された高露出値画像の輝度A1に対して、高露出値画像と低露出値画像における露出比率分の値を乗算して、乗算後の画像データA1を合成比率乗算部9に出力し、乗算後の輝度A1である輝度A3を輝度加算部7に出力する処理を実施する。
ここでは、露出比率変換部5が露出比率分の値を乗算して画像データA及び輝度A1を変換する例を示しているが、単純な乗算による変換ではなく、ルックアップテーブルを参照して、階調毎に倍率を可変しながら画像データA及び輝度A1の変換を行うようにしてもよい。
【0018】
露出比率変換部6は入力される画像データB及び輝度/彩度算出部2により算出された低露出値画像の輝度B1に対して、高露出値画像と低露出値画像における露出比率分の値を乗算して、乗算後の画像データB1を合成比率乗算部10に出力し、乗算後の輝度B1である輝度B3を輝度加算部7に出力する処理を実施する。
ここでは、露出比率変換部6が露出比率分の値を乗算して画像データB及び輝度B1を変換する例を示しているが、単純な乗算による変換ではなく、ルックアップテーブルを参照して、階調毎に倍率を可変しながら画像データB及び輝度B1の変換を行うようにしてもよい。
【0019】
図1の例では、上記の通り、露出比率変換部5及び露出比率変換部6の双方が露出比率の変換処理を実施しているが、どちらか一方が他方の露出比率に合わせればよいため、例えば、露出比率変換部5が低露出値画像の露出比率に合うように、画像データA及び輝度A1を変換する場合には、露出比率変換部6が画像データB及び輝度B1を変換せずに、その画像データB及び輝度B3(=輝度B1)を出力すればよい。
一方、露出比率変換部6が高露出値画像の露出比率に合うように、画像データB及び輝度B1を変換する場合には、露出比率変換部5が画像データA及び輝度A1を変換せずに、その画像データA及び輝度A3(=輝度A1)を出力すればよい。
なお、露出比率変換部5,6は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されている。
【0020】
輝度加算部7は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、露出比率変換部5から出力された高露出値画像の輝度A3と露出比率変換部6から出力された低露出値画像の輝度B3とを加算し、その加算結果(A3+B3)を合成比率算出部8に出力する処理を実施する。
合成比率算出部8は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、輝度加算部7から出力された加算結果(A3+B3)から合成比率A,Bを算出して、その合成比率Aを合成比率乗算部9に出力するとともに、その合成比率Bを合成比率乗算部10に出力する処理を実施する。
なお、露出比率変換部5,6、輝度加算部7及び合成比率算出部8から合成比率算出手段が構成されている。
【0021】
合成比率乗算部9は輝度/彩度算出部1により算出された高露出値画像の輝度A1及び彩度A1、収まり度合特定部3から出力された収まり度合情報A1及び露出比率変換部5から出力された画像データA1に対して、合成比率算出部8により算出された合成比率Aを乗算し、乗算後の輝度A1、彩度A1、収まり度合情報A1及び画像データA1を、輝度A2、彩度A2、収まり度合情報A2及び画像データA2として合成部11に出力する処理を実施する。
【0022】
合成比率乗算部10は輝度/彩度算出部2により算出された低露出値画像の輝度B1及び彩度B1、収まり度合特定部4から出力された収まり度合情報B1及び露出比率変換部6から出力された画像データB1に対して、合成比率算出部8により算出された合成比率Bを乗算し、乗算後の輝度B1、彩度B1、収まり度合情報B1及び画像データB1を、輝度B2、彩度B2、収まり度合情報B2及び画像データB2として合成部11に出力する処理を実施する。
なお、合成比率乗算部9,10は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されている。
【0023】
合成部11は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、合成比率乗算部9から出力された輝度A2、彩度A2、収まり度合情報A2及び画像データA2と、合成比率乗算部10から出力された輝度B2、彩度B2、収まり度合情報B2及び画像データB2とを加算して、その加算結果である画像データC1(=画像データA2+画像データB2)を階調圧縮部12に出力するとともに、その加算結果である輝度C1(=輝度A2+輝度B2)、彩度C1(=彩度A2+彩度B2)及び収まり度合情報C1(=収まり度合情報A2+収まり度合情報B2)をコントラスト強調パラメータ算出部14に出力する処理を実施する。
なお、合成比率乗算部9,10及び合成部11から合成手段が構成されている。
【0024】
階調圧縮部12は合成部11から出力された画像データC1が示す合成画像の階調を圧縮する処理を実施する。
なお、階調圧縮部12は、例えば、CPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、階調圧縮部12が階調圧縮手段を構成している。
【0025】
輝度/彩度算出部13は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、階調圧縮部12による階調圧縮後の合成画像を構成している画素の値を特定し、その画素値を用いて、階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2を算出する処理を実施する。
コントラスト強調パラメータ算出部14は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、合成部11から出力された階調圧縮前の合成画像の輝度C1、彩度C1及び収まり度合情報C1と、輝度/彩度算出部13により算出された階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2とから、輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQC(コントラスト強調用のパラメータ)を算出する処理を実施する。
【0026】
コントラスト強調部15は例えばCPUを実装している半導体集積回路やワンチップマイコンなどのハードウェアで構成されており、コントラスト強調パラメータ算出部14により算出された輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを用いて、階調圧縮部12による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調し、コントラスト強調後の合成画像を示す画像データDを出力する処理を実施する。
なお、輝度/彩度算出部13、コントラスト強調パラメータ算出部14及びコントラスト強調部15からコントラスト強調手段が構成されている。
【0027】
図1の例では、画像処理装置の構成要素である輝度/彩度算出部1,2、収まり度合特定部3,4、露出比率変換部5、露出比率変換部6、輝度加算部7、合成比率算出部8、合成比率乗算部9、合成比率乗算部10、合成部11、階調圧縮部12、輝度/彩度算出部13、コントラスト強調パラメータ算出部14及びコントラスト強調部15のそれぞれが専用のハードウェアで構成されているものを想定しているが、画像処理装置がコンピュータで構成される場合、輝度/彩度算出部1,2、収まり度合特定部3,4、露出比率変換部5、露出比率変換部6、輝度加算部7、合成比率算出部8、合成比率乗算部9、合成比率乗算部10、合成部11、階調圧縮部12、輝度/彩度算出部13、コントラスト強調パラメータ算出部14及びコントラスト強調部15の処理内容が記述されているプログラムをコンピュータのメモリに格納し、当該コンピュータのCPUが当該メモリに格納されているプログラムを実行するようにしてもよい。
図2はこの発明の実施の形態1による画像処理装置の処理内容を示すフローチャートである。
【0028】
次に動作について説明する。
この実施の形態1では、画像処理装置が、高露出値画像及び低露出値画像の画像データを1画素ずつ処理して、合成画像を示す画像データを出力する構成となっている。
高露出値画像、低露出値画像及び合成画像の画像形式としては、CCDなどのイメージセンサから出力されるRAWデータであってもよいし、RAWデータ以外のRGB4:4:4のデータであってもよい。
この実施の形態1の画像処理装置が、従来の画像処理装置と相違している点は、階調圧縮後の合成画像の輝度及び彩度が、階調圧縮前の合成画像の輝度及び彩度より低下している場合、階調圧縮後の合成画像の輝度及び彩度を補正するようにしていることである。
【0029】
まず、高露出値画像を示す画像データAと、低露出値画像を示す画像データBとがラスタスキャンの順に1ラインずつ入力される。
図1の例では、高露出値画像を示す画像データAが輝度/彩度算出部1に入力されて、低露出値画像を示す画像データBが輝度/彩度算出部2に入力されているが、画像データAと画像データBは対象な構成であるため、画像データAが輝度/彩度算出部2に入力されて、画像データBが輝度/彩度算出部1に入力されてもよい。
【0030】
輝度/彩度算出部1は、高露出値画像を示す画像データAを入力すると、その画像データAを参照して、高露出値画像を構成している画素の値を特定する。
輝度/彩度算出部1は、高露出値画像の画素値を特定すると、下記の式(1)に示すように、その画素値を用いて、高露出値画像の輝度A1を算出する(ステップST1)。
Y=0.299×R+0.587×G+0.114×B (1)
ただし、Y:輝度値(高露出値画像の輝度A1の値)
R:RGB画像における赤色の画素値
G:RGB画像における緑色の画素値
B:RGB画像における青色の画素値
【0031】
また、輝度/彩度算出部1は、下記の式(2)に示すように、高露出値画像の画素値を用いて、高露出値画像の彩度A1を算出する(ステップST2)。
C=SQRT(Cb×Cb+Cr×Cr) (2)
Cb=−0.169×R−0.331×G+0.5×B
Cr=0.5×R−0.419×G−0.114×B
ただし、C:彩度値(高露出値画像の彩度A1の値)
Cb,Cr:色差値
SQRT(A):Aの平方根を算出する関数
【0032】
輝度/彩度算出部2は、低露出値画像を示す画像データBを入力すると、その画像データBを参照して、低露出値画像を構成している画素の値を特定する。
輝度/彩度算出部2は、低露出値画像の画素値を特定すると、下記の式(3)に示すように、その画素値を用いて、低露出値画像の輝度B1を算出する(ステップST3)。
Y=0.299×R+0.587×G+0.114×B (3)
ただし、Y:輝度値(低露出値画像の輝度B1の値)
【0033】
また、輝度/彩度算出部2は、下記の式(4)に示すように、低露出値画像の画素値を用いて、低露出値画像の彩度B1を算出する(ステップST4)。
C=SQRT(Cb×Cb+Cr×Cr) (4)
Cb=−0.169×R−0.331×G+0.5×B
Cr=0.5×R−0.419×G−0.114×B
ただし、C:彩度値(低露出値画像の彩度B1の値)
【0034】
ここでは、画像データAがRGB画像である例を示したが、画像データAがRAW画像である場合、近傍の画素を参照して、1画素あたり3色分のデータを生成してから、上記の式(1)〜式(4)を用いて、輝度A1,B1及び彩度A1,B1を算出すればよい。
【0035】
収まり度合特定部3は、輝度/彩度算出部1が高露出値画像の輝度A1及び彩度A1を算出すると、高露出値画像の輝度A1が指定の範囲内に収まっている度合(輝度収まり度合SYA)を特定するとともに、高露出値画像の彩度A1が指定の範囲内に収まっている度合(彩度収まり度合SCA)を特定し、その輝度収まり度合SYAと彩度収まり度合SCAの乗算値を収まり度合情報A1として合成比率乗算部9に出力する(ステップST5)。
【0036】
以下、収まり度合特定部3の処理内容を具体的に説明する。
ここで、図3は高露出値画像の輝度A1と輝度収まり度合SYAの対応関係を示す説明図である。
図3において、YTA[0]はユーザによる指定の範囲の下限を示す閾値であり、YTA[3]はユーザによる指定の範囲の上限を示す閾値である。
また、YTA[1]、YTA[2]は輝度収まり度合SYAを算出するために、ユーザにより指定された閾値である。
輝度収まり度合SYAは、下記に示すように、高露出値画像の輝度A1とYTA[0]〜YTA[3]の関係で、0.0〜1.0の範囲で算出される。
【0037】
(1)輝度A1≦YTA[0]の場合
SYA=0.0
(2)YTA[0]<輝度A1<YTA[1]の場合
SYA=(輝度A1−YTA[0])÷(YTA[1]−YTA[0])
(3)YTA[1]≦輝度A1≦YTA[2]の場合
SYA=1.0
(4)YTA[2]<輝度A1<YTA[3]の場合
SYA=(YTA[3]−輝度A1)÷(YTA[3]−YTA[2])
(5)YTA[3]≦輝度A1の場合
SYA=0.0
【0038】
また、図4は高露出値画像の彩度A1と彩度収まり度合SCAの対応関係を示す説明図である。
図4において、CTA[0]はユーザによる指定の範囲の下限を示す閾値であり、CTA[3]はユーザによる指定の範囲の上限を示す閾値である。
また、CTA[1]、CTA[2]は彩度収まり度合SCAを算出するために、ユーザにより指定された閾値である。
彩度収まり度合SCAは、下記に示すように、高露出値画像の彩度A1とCTA[0]〜CTA[3]の関係で、0.0〜1.0の範囲で算出される。
【0039】
(1)彩度A1≦CTA[0]の場合
SCA=0.0
(2)CTA[0]<彩度A1<CTA[1]の場合
SCA=(彩度A1−CTA[0])÷(CTA[1]−CTA[0])
(3)CTA[1]≦彩度A1≦CTA[2]の場合
SCA=1.0
(4)CTA[2]<彩度A1<CTA[3]の場合
SCA=(CTA[3]−彩度A1)÷(CTA[3]−CTA[2])
(5)CTA[3]≦彩度A1の場合
SCA=0.0
【0040】
収まり度合特定部3は、上記のようにして、輝度収まり度合SYAと彩度収まり度合SCAを算出すると、下記の式(5)に示すように、その輝度収まり度合SYAと彩度収まり度合SCAから収まり度合情報A1を算出する。
収まり度合情報A1=SYA×SCA (5)
【0041】
収まり度合特定部4は、輝度/彩度算出部2が低露出値画像の輝度B1及び彩度B1を算出すると、低露出値画像の輝度B1が指定の範囲内に収まっている度合(輝度収まり度合SYB)を特定するとともに、低露出値画像の彩度B1が指定の範囲内に収まっている度合(彩度収まり度合SCB)を特定し、その輝度収まり度合SYBと彩度収まり度合SCBの乗算値を収まり度合情報B1として合成比率乗算部10に出力する(ステップST6)。
【0042】
以下、収まり度合特定部4の処理内容を具体的に説明する。
ここで、図5は低露出値画像の輝度B1と輝度収まり度合SYBの対応関係を示す説明図である。
図5において、YTB[0]はユーザによる指定の範囲の下限を示す閾値であり、YTB[3]はユーザによる指定の範囲の上限を示す閾値である。
また、YTB[1]、YTB[2]は輝度収まり度合SYBを算出するために、ユーザにより指定された閾値である。
輝度収まり度合SYBは、下記に示すように、低露出値画像の輝度B1とYTB[0]〜YTB[3]の関係で、0.0〜1.0の範囲で算出される。
【0043】
(1)輝度B1≦YTB[0]の場合
SYB=0.0
(2)YTB[0]<輝度B1<YTB[1]の場合
SYB=(輝度B1−YTB[0])÷(YTB[1]−YTB[0])
(3)YTB[1]≦輝度B1≦YTB[2]の場合
SYB=1.0
(4)YTB[2]<輝度B1<YTB[3]の場合
SYB=(YTB[3]−輝度B1)÷(YTB[3]−YTB[2])
(5)YTB[3]≦輝度B1の場合
SYB=0.0
【0044】
また、図6は低露出値画像の彩度B1と彩度収まり度合SCBの対応関係を示す説明図である。
図6において、CTB[0]はユーザによる指定の範囲の下限を示す閾値であり、CTB[3]はユーザによる指定の範囲の上限を示す閾値である。
また、CTB[1]、CTB[2]は彩度収まり度合SCBを算出するために、ユーザにより指定された閾値である。
彩度収まり度合SCBは、下記に示すように、低露出値画像の彩度B1とCTB[0]〜CTB[3]の関係で、0.0〜1.0の範囲で算出される。
【0045】
(1)彩度B1≦CTB[0]の場合
SCB=0.0
(2)CTB[0]<彩度B1<CTB[1]の場合
SCB=(彩度B1−CTB[0])÷(CTB[1]−CTB[0])
(3)CTB[1]≦彩度B1≦CTB[2]の場合
SCB=1.0
(4)CTB[2]<彩度B1<CTB[3]の場合
SCB=(CTB[3]−彩度B1)÷(CTB[3]−CTB[2])
(5)CTB[3]≦彩度B1の場合
SCB=0.0
【0046】
収まり度合特定部4は、上記のようにして、輝度収まり度合SYBと彩度収まり度合SCBを算出すると、下記の式(6)に示すように、その輝度収まり度合SYBと彩度収まり度合SCBから収まり度合情報B1を算出する。
収まり度合情報B1=SYB×SCB (6)
【0047】
露出比率変換部5は、輝度/彩度算出部1が高露出値画像の輝度A1を算出すると、画像データA及び高露出値画像の輝度A1に対して、高露出値画像と低露出値画像における露出比率分の値を乗算して、乗算後の画像データA1を合成比率乗算部9に出力し、乗算後の輝度A1である輝度A3を輝度加算部7に出力する(ステップST7)。
ここでは、露出比率変換部5が露出比率分の値を乗算して画像データA及び輝度A1を変換する例を示しているが、単純な乗算による変換ではなく、ルックアップテーブルを参照して、階調毎に倍率を可変しながら画像データA及び輝度A1の変換を行うようにしてもよい。
【0048】
露出比率変換部6は、輝度/彩度算出部2が低露出値画像の輝度B1を算出すると、画像データB及び低露出値画像の輝度B1に対して、高露出値画像と低露出値画像における露出比率分の値を乗算して、乗算後の画像データB1を合成比率乗算部10に出力し、乗算後の輝度B1である輝度B3を輝度加算部7に出力する(ステップST8)。
ここでは、露出比率変換部6が露出比率分の値を乗算して画像データB及び輝度B1を変換する例を示しているが、単純な乗算による変換ではなく、ルックアップテーブルを参照して、階調毎に倍率を可変しながら画像データB及び輝度B1の変換を行うようにしてもよい。
【0049】
上記の通り、露出比率変換部5及び露出比率変換部6の双方が露出比率の変換処理を実施しているが、どちらか一方が他方の露出比率に合わせればよいため、例えば、露出比率変換部5が低露出値画像の露出比率に合うように、画像データA及び輝度A1を変換する場合には、露出比率変換部6が画像データB及び輝度B1を変換せずに、その画像データB及び輝度B3(=輝度B1)を出力すればよい。
一方、露出比率変換部6が高露出値画像の露出比率に合うように、画像データB及び輝度B1を変換する場合には、露出比率変換部5が画像データA及び輝度A1を変換せずに、その画像データA及び輝度A3(=輝度A1)を出力すればよい。
【0050】
なお、画像データA,BがRAW画像である場合には、1画素あたり1色の画像データに対して露出比率の変換処理を実施する。
また、画像データA,BがRGB画像である場合には、1画素3色の画像データに対して露出比率の変換処理を実施する。
【0051】
輝度加算部7は、下記の式(7)に示すように、露出比率変換部5から出力された高露出値画像の輝度A3と、露出比率変換部6から出力された低露出値画像の輝度B3とを加算し、その加算結果(A3+B3)を合成比率算出部8に出力する(ステップST9)。
加算結果=輝度A3+輝度B3 (7)
【0052】
合成比率算出部8は、輝度加算部7から加算結果(A3+B3)を受けると、その加算結果(A3+B3)から合成比率A,Bを算出して、その合成比率Aを合成比率乗算部9に出力し、その合成比率Bを合成比率乗算部10に出力する(ステップST10)。
ここで、図7(A)は合成比率Aの算出概要を表しており、図7(B)は合成比率Bの算出概要を表している。
即ち、図7(A)は、加算結果(A3+B3)と合成比率Aの対応関係を示すルックアップテーブルに相当しており、合成比率算出部8は、当該ルックアップテーブルを参照することで、加算結果(A3+B3)に対応する合成比率A(0.0〜1.0の値)を特定することができる。
図7(B)は、加算結果(A3+B3)と合成比率Bの対応関係を示すルックアップテーブルに相当しており、合成比率算出部8は、当該ルックアップテーブルを参照することで、加算結果(A3+B3)に対応する合成比率B(0.0〜1.0の値)を特定することができる。
【0053】
なお、加算結果(A3+B3)と合成比率A,Bの対応関係が演算式の形で表すことができる場合には、ルックアップテーブルではなく、演算式を利用して、合成比率A,Bを算出するようにしてもよい。
ただし、合成比率Aと合成比率Bの和が“1.0”である必要があるため、下記の式(8)が成立するように、合成比率A,Bを算出する。
合成比率B=1.0−合成比率A (8)
【0054】
合成比率乗算部9は、合成比率算出部8が合成比率Aを算出すると、輝度/彩度算出部1により算出された高露出値画像の輝度A1及び彩度A1、収まり度合特定部3から出力された収まり度合情報A1及び露出比率変換部5から出力された画像データA1(R,G,Bの3色成分)に対して、その合成比率Aを乗算し、乗算後の輝度A1、彩度A1、収まり度合情報A1及び画像データA1を、輝度A2、彩度A2、収まり度合情報A2及び画像データA2として合成部11に出力する(ステップST11)。
【0055】
合成比率乗算部10は、合成比率算出部8が合成比率Bを算出すると、輝度/彩度算出部2により算出された低露出値画像の輝度B1及び彩度B1、収まり度合特定部4から出力された収まり度合情報B1及び露出比率変換部6から出力された画像データB1(R,G,Bの3色成分)に対して、その合成比率Bを乗算し、乗算後の輝度B1、彩度B1、収まり度合情報B1及び画像データB1を、輝度B2、彩度B2、収まり度合情報B2及び画像データB2として合成部11に出力する(ステップST12)。
【0056】
合成部11は、合成比率乗算部9から輝度A2、彩度A2、収まり度合情報A2及び画像データA2を受けて、合成比率乗算部10から輝度B2、彩度B2、収まり度合情報B2及び画像データB2を受けると、下記の式(9)に示すように、輝度A2、彩度A2、収まり度合情報A2及び画像データA2と、輝度B2、彩度B2、収まり度合情報B2及び画像データB2とを加算する(ステップST13)。
・R色成分
画像データC1(R)=画像データA2(R)+画像データB2(R)
・G色成分
画像データC1(G)=画像データA2(G)+画像データB2(G)
・B色成分
画像データC1(B)=画像データA2(B)+画像データB2(B)
・輝度C1=輝度A2+輝度B2
・彩度C1=彩度A2+彩度B2
・収まり度合情報C1=収まり度合情報A2+収まり度合情報B2
(9)
【0057】
合成部11は、加算結果である画像データC1を階調圧縮部12に出力し、加算結果である輝度C1、彩度C1及び収まり度合情報C1をコントラスト強調パラメータ算出部14に出力する。
【0058】
階調圧縮部12は、合成部11から画像データC1を受けると、階調毎に圧縮倍率を可変にできるルックアップテーブルを参照することで、下記の式(10)〜(12)に示すように、その画像データC1が示す合成画像の階調圧縮を実施し、階調圧縮後の合成画像を示す画像データC2を輝度/彩度算出部13及びコントラスト強調部15に出力する(ステップST14)。
・R色成分
画像データC2(R)
=(LOUT_R[N+1]−LOUT_R[N])
×(画像データC1(R)−LIN_R[N])
÷(LIN_R[N+1]−LIN_R[N])
+LOUT_R[N] (10)
LIN_R[N] :階調圧縮LUTの入力値テーブルのN番目の要素
LOUT_R[N]:階調圧縮LUTの出力値テーブルのN番目の要素
NはLIN_R[N]≦画像データC1(R)<LIN_R[N+1]を満たす値
【0059】
・G色成分
画像データC2(G)
=(LOUT_G[N+1]−LOUT_G[N])
×(画像データC1(G)−LIN_G[N])
÷(LIN_G[N+1]−LIN_G[N])
+LOUT_G[N] (11)
LIN_G[N] :階調圧縮LUTの入力値テーブルのN番目の要素
LOUT_G[N]:階調圧縮LUTの出力値テーブルのN番目の要素
NはLIN_G[N]≦画像データC1(G)<LIN_G[N+1]を満たす値
【0060】
・B色成分
画像データC2(B)
=(LOUT_B[N+1]−LOUT_B[N])
×(画像データC1(B)−LIN_B[N])
÷(LIN_B[N+1]−LIN_B[N])
+LOUT_B[N] (12)
LIN_B[N] :階調圧縮LUTの入力値テーブルのN番目の要素
LOUT_B[N]:階調圧縮LUTの出力値テーブルのN番目の要素
NはLIN_B[N]≦画像データC1(B)<LIN_B[N+1]を満たす値
【0061】
ここでは、階調圧縮部12が、階調毎に圧縮倍率を可変にできるルックアップテーブルを参照して、画像データC1が示す合成画像の階調を圧縮するものについて示したが、圧縮倍率を階調値の多項式等で算出することができる場合には、ルックアップテーブルではなく、多項式等を利用して、画像データC1が示す合成画像の階調を圧縮するようにしてもよい。
【0062】
輝度/彩度算出部12は、階調圧縮部12による階調圧縮後の合成画像を示す画像データC2を入力すると、その画像データC2を参照して、階調圧縮後の合成画像を構成している画素の値を特定する。
輝度/彩度算出部12は、階調圧縮後の合成画像の画素値を特定すると、下記の式(13)に示すように、その画素値を用いて、階調圧縮後の合成画像の輝度C2を算出する(ステップST15)。
Y=0.299×R+0.587×G+0.114×B (13)
ただし、Y:輝度値(階調圧縮後の合成画像の輝度C2の値)
R:RGB画像における赤色の画素値
G:RGB画像における緑色の画素値
B:RGB画像における青色の画素値
【0063】
また、輝度/彩度算出部12は、下記の式(14)に示すように、階調圧縮後の合成画像の画素値を用いて、階調圧縮後の合成画像の彩度C2を算出する(ステップST16)。
C=SQRT(Cb×Cb+Cr×Cr) (14)
Cb=−0.169×R−0.331×G+0.5×B
Cr=0.5×R−0.419×G−0.114×B
ただし、C:彩度値(階調圧縮後の合成画像の彩度C2の値)
Cb,Cr:色差値
SQRT(A):Aの平方根を算出する関数
【0064】
コントラスト強調パラメータ算出部14は、合成部11から階調圧縮前の合成画像の輝度C1、彩度C1及び収まり度合情報C1を受けて、輝度/彩度算出部13から階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2を受けると、階調圧縮前の合成画像の輝度C1、彩度C1及び収まり度合情報C1と、階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2とから、輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを算出する(ステップST17)。
具体的には、以下のようにして、輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを算出する。
【0065】
[条件1] 彩度C2≠0 かつ 彩度C1>彩度C2の場合
QC=(彩度C1÷彩度C2−1)×CLV×収まり度合情報C1+1
[条件2] 彩度C2=0 または 彩度C1≦彩度C2の場合
QC=1
ただし、CLV:彩度補正係数
【0066】
[条件1] 輝度C2<最大輝度値÷3 かつ 輝度C1>輝度C2の場合
QY
=(MIN(輝度C1、最大輝度値÷3)÷輝度C2−1)×YLV
×収まり度合情報C1+1
[条件2] 2×最大輝度値÷3<輝度C2 かつ 輝度C1>輝度C2の場合
QY
=(MAX(輝度C1、2×最大輝度値÷3)÷輝度C2−1)×YLV
×収まり度合情報C1+1
[条件3] 条件1,2以外の場合
QY=1
ただし、YLV:輝度補正係数
MIN(A,B):AとBの最小値を返す関数
MAX(A,B):AとBの最大値を返す関数
最大輝度値:輝度が取り得る最大値(例えば12ビットデータの場合、4095)
【0067】
なお、彩度用コントラスト強調パラメータQCの算出の条件1において、彩度補正係数CLVを大きくすることで、彩度を上げる度合いを大きくすることができる。
また、輝度用コントラスト強調パラメータQYの算出の条件1,2において、輝度補正係数YLVを大きくすることで、輝度を中間階調に変化させて、彩度を上げ易くすることができる。
【0068】
コントラスト強調部15は、コントラスト強調パラメータ算出部14が輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを算出すると、その輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを用いて、階調圧縮部12による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調し、コントラスト強調後の合成画像を示す画像データDを出力する(ステップST18)。
階調圧縮後の合成画像のコントラスト強調は、下記の式(15)〜(17)を算出することで行われる。
【0069】
RO=((19595×QY+45941×QC)×RI
+(38470×QY−38470×QC)×GI
+( 7471×QY− 7471×QC)×BI)÷65536
(15)
GO=((19595×QY−19595×QC)×RI
+(38470×QY+27066×QC)×GI
+( 7471×QY− 7471×QC)×BI)÷65536
(16)
BO=((19595×QY−19595×QC)×RI
+(38470×QY−38470×QC)×GI
+( 7471×QY+58065×QC)×BI)÷65536
(17)
【0070】
ただし、 RO:画像データDのR成分
GO:画像データDのG成分
BO:画像データDのB成分
RI:画像データC2のR成分
GI:画像データC2のG成分
BI:画像データC2のB成分
【0071】
なお、コントラスト強調部15によるコントラスト強調後の合成画像を示す画像データDとして、RGB画像データを出力する場合には、その画像データDのR成分、G成分及びB成分をそのまま出力する。
また、RAW画像データを出力する場合には、その画像データDのR成分、G成分及びB成分のうち、ベイヤー配列に該当する色成分のみを出力する。
【0072】
以上で明らかなように、この実施の形態1によれば、階調圧縮部12による階調圧縮後の合成画像を構成している画素の値を特定し、その画素値を用いて、階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2を算出する輝度/彩度算出部13と、合成部11から出力された階調圧縮前の合成画像の輝度C1、彩度C1及び収まり度合情報C1と、輝度/彩度算出部13により算出された階調圧縮後の合成画像の輝度C2及び彩度C2とから、輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを算出するコントラスト強調パラメータ算出部14とを設け、コントラスト強調部15が、コントラスト強調パラメータ算出部14により算出された輝度用コントラスト強調パラメータQY及び彩度用コントラスト強調パラメータQCを用いて、階調圧縮部12による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調し、コントラスト強調後の合成画像を示す画像データDを出力するように構成したので、合成画像の彩度の低下を招くことなく、ダイナミックレンジを拡張することができる効果を奏する。
【0073】
実施の形態2.
図8はこの発明の実施の形態2による画像処理装置が搭載されている撮像装置を示す構成図である。
図8において、図1と同一符号は同一または相当部分を示すので説明を省略する。
CCD21は撮像素子であり、図示せぬタイミング制御部の指示の下で露光時間を切り替えて、2枚の画像(白飛びが少ない高露出値画像と、黒つぶれが少ない低露出値画像)を時分割で撮影し、高露出値画像を示す画像データA及び低露出値画像を示す画像データBを出力する。
メモリ22はCCD21により撮影された高露出値画像を示す画像データAを格納するバッファメモリであり、メモリ22は時分割で撮影された2枚の画像を合成する際のタイミングを調整するために使用される。
なお、CCD21及びメモリ22から撮像手段が構成されている。
【0074】
上記実施の形態1では、画像処理装置が外部から高露出値画像を示す画像データAと低露出値画像を示す画像データBを入力するものについて示したが、CCD21により撮影された画像データA,Bを入力するようにしてもよい。
画像処理装置の処理内容は、上記実施の形態1と同様であるため説明を省略する。
なお、図8では、撮像素子がCCD21である例を示したが、デジタルカメラ等に搭載可能な素子であれば、CCD21以外の撮像素子であってもよい。
【0075】
なお、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0076】
1,2 輝度/彩度算出部(輝度彩度特定手段)、3,4 収まり度合特定部(収まり度合特定手段)、5,6 露出比率変換部(合成比率算出手段)、7 輝度加算部(合成比率算出手段)、8 合成比率算出部(合成比率算出手段)9,10 合成比率乗算部(合成手段)、11 合成部(合成手段)、12 階調圧縮部(階調圧縮手段)、13 輝度/彩度算出部(コントラスト強調手段)、14 コントラスト強調パラメータ算出部(コントラスト強調手段)、15 コントラスト強調部(コントラスト強調手段)、21 CCD(撮像手段)、22 メモリ(撮像手段)、101 CCD、102 メモリ、103 乗算器、104 レベル重み手段、105 レベル重み手段、106 加算器、107 速度変換手段、108 レベル圧縮手段、109 タイミング制御手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高露出値画像の輝度及び彩度を特定するとともに、上記高露出値画像と異なる露出条件で同一の被写体が撮影された低露出値画像の輝度及び彩度を特定する輝度彩度特定手段と、上記輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第1の収まり度合情報を出力するとともに、上記輝度彩度特定手段により特定された低露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第2の収まり度合情報を出力する収まり度合特定手段と、上記輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像及び低露出値画像の輝度から合成比率を算出する合成比率算出手段と、上記合成比率算出手段により算出された合成比率にしたがって上記高露出値画像と上記低露出値画像を合成するとともに、上記合成比率にしたがって上記高露出値画像の輝度、彩度及び上記第1の収まり度合情報と、上記低露出値画像の輝度、彩度及び上記第2の収まり度合情報とを合成する合成手段と、上記合成手段による合成画像の階調を圧縮する階調圧縮手段と、上記合成手段による合成後の輝度、彩度及び収まり度合情報と上記階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像からコントラスト強調用のパラメータを算出し、上記パラメータを用いて、上記階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調するコントラスト強調手段とを備えた画像処理装置。
【請求項2】
コントラスト強調手段は、階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像の彩度を特定し、階調圧縮後の合成画像の彩度が階調圧縮前の合成画像の彩度より低下していれば、コントラスト強調用のパラメータとして、階調圧縮後の合成画像の彩度を高めるパラメータを算出し、階調圧縮後の合成画像の彩度が階調圧縮前の合成画像の彩度より低下していなければ、コントラスト強調用のパラメータとして、階調圧縮後の合成画像の彩度を維持するパラメータを算出することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
コントラスト強調手段は、階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像の輝度を特定し、階調圧縮後の合成画像の輝度が階調圧縮前の合成画像の輝度より低下していれば、コントラスト強調用のパラメータとして、階調圧縮後の合成画像の輝度を中間階調に変化させるパラメータを算出し、階調圧縮後の合成画像の輝度が階調圧縮前の合成画像の輝度より低下していなければ、コントラスト強調用のパラメータとして、階調圧縮後の合成画像の輝度を維持するパラメータを算出することを特徴とする請求項1または請求項2記載の画像処理装置。
【請求項4】
輝度彩度特定手段が高露出値画像の輝度及び彩度を特定するとともに、上記高露出値画像と異なる露出条件で同一の被写体が撮影された低露出値画像の輝度及び彩度を特定する輝度彩度特定処理ステップと、収まり度合特定手段が上記輝度彩度特定処理ステップで特定された高露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第1の収まり度合情報を出力するとともに、上記輝度彩度特定処理ステップで特定された低露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第2の収まり度合情報を出力する収まり度合特定処理ステップと、合成比率算出手段が上記輝度彩度特定処理ステップで特定された高露出値画像及び低露出値画像の輝度から合成比率を算出する合成比率算出処理ステップと、合成手段が上記合成比率算出処理ステップで算出された合成比率にしたがって上記高露出値画像と上記低露出値画像を合成するとともに、上記合成比率にしたがって上記高露出値画像の輝度、彩度及び上記第1の収まり度合情報と、上記低露出値画像の輝度、彩度及び上記第2の収まり度合情報とを合成する合成処理ステップと、階調圧縮手段が上記合成処理ステップで合成された画像の階調を圧縮する階調圧縮処理ステップと、コントラスト強調手段が上記合成処理ステップによる合成後の輝度、彩度及び収まり度合情報と上記階調圧縮処理ステップによる階調圧縮後の合成画像からコントラスト強調用のパラメータを算出し、上記パラメータを用いて、上記階調圧縮処理ステップによる階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調するコントラスト強調処理ステップとを備えた画像処理方法。
【請求項5】
所定の露出条件で被写体を撮影して、その撮影画像である高露出値画像を出力するとともに、上記高露出値画像と異なる露出条件で上記被写体を撮影して、その撮影画像である低露出値画像を出力する撮像手段と、上記撮像手段から出力された高露出値画像の輝度及び彩度を特定するとともに、上記撮像手段から出力された低露出値画像の輝度及び彩度を特定する輝度彩度特定手段と、上記輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第1の収まり度合情報を出力するとともに、上記輝度彩度特定手段により特定された低露出値画像の輝度及び彩度が指定の範囲内に収まっている度合を特定して、その度合を示す第2の収まり度合情報を出力する収まり度合特定手段と、上記輝度彩度特定手段により特定された高露出値画像及び低露出値画像の輝度から合成比率を算出する合成比率算出手段と、上記合成比率算出手段により算出された合成比率にしたがって上記高露出値画像と上記低露出値画像を合成するとともに、上記合成比率にしたがって上記高露出値画像の輝度、彩度及び上記第1の収まり度合情報と、上記低露出値画像の輝度、彩度及び上記第2の収まり度合情報とを合成する合成手段と、上記合成手段による合成画像の階調を圧縮する階調圧縮手段と、上記合成手段による合成後の輝度、彩度及び収まり度合情報と上記階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像からコントラスト強調用のパラメータを算出し、上記パラメータを用いて、上記階調圧縮手段による階調圧縮後の合成画像のコントラストを強調するコントラスト強調手段とを備えた撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−93965(P2012−93965A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−240859(P2010−240859)
【出願日】平成22年10月27日(2010.10.27)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】