説明

画像処理装置、画像処理方法

【課題】
本発明は、システムリソースを効率的に利用し、作業効率の高い画像処理装置、画像処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
本発明に係る画像処理装置は、一の画像処理の実行中に、該一の画像処理に優先して実行すべき他の画像処理に対する実行要求を受け付けた場合であって、かつ、該他の画像処理を行うために必要な作業領域より、全ての作業領域から一の画像処理に割り当てた作業領域を除いた残りの作業領域が小さいとき、一の画像処理に対する作業領域の割り当てを解除する割当解除手段と、割当解除手段により作業領域の割り当てを解除した後、余剰の作業領域において他の画像処理を実行する画像処理手段と、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
画像処理装置におけるジョブ間で作業領域を融通し合う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年におけるプリンタ、コピー機、スキャナ、ファクシミリ、又はこれらの機能を一台の筐体で実現する複合機(MFP:MultiFunction Printer)などの画像処理装置では、メモリなどの制限は厳しいものの、汎用的なコンピュータと同様にCPU(Central Processing Unit)を備え、各機能はアプリケーションの制御によって実現されるようになっている(特許文献1等)。
【0003】
また、最近の複合機においては、プリンタ機能、コピー機能、ファクシミリ機能等を並行して実行し作業効率を高めることで、ユーザの利便性を高めている。
【特許文献1】特許3679349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のように複合機で複数のジョブを同時に実行する場合、当該複合機では十分な作業領域を確保できないため、各処理は作業領域の不足が解消するまで待機させられる事態となり、作業効率が低下するという問題点があった。特に、画像データを印刷媒体上に出力させる処理については、多くの処理(例えば、プリンタ処理、コピー処理、ファクシミリの受信処理等)で同様の処理を実行するため、こういった問題が発生する頻度が高い。
【0005】
そこで、本発明では、上記問題点に鑑み、システムリソースを効率的に利用し、作業効率の高い画像処理装置、画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る画像処理装置は、複数の画像処理を実行するための作業領域として使用する記憶装置を有し、該画像処理毎に割り当てた前記作業領域において各画像処理を実行する画像処理装置であって、一の画像処理の実行中に、該一の画像処理に優先して実行すべき他の画像処理に対する実行要求を受け付けた場合であって、かつ、該他の画像処理を行うために必要な前記作業領域より、全ての前記作業領域から前記一の画像処理に割り当てた前記作業領域を除いた残りの前記作業領域が小さいとき、前記一の画像処理に対する前記作業領域の割り当てを解除する割当解除手段と、前記割当解除手段により前記作業領域の割り当てを解除した後、前記残りの作業領域において前記他の画像処理を実行する画像処理手段と、を有することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る画像処理装置の一形態において、前記割当解除手段は、前記一の画像処理に対して割り当てられた前記作業領域の全てに関して解除することを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る画像処理装置の一形態において、前記割当解除手段は、前記一の画像処理に対して割り当てられた前記作業領域の一部に関して解除することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る画像処理装置の一形態において、前記割当解除手段は、前記一の画像処理に対して割り当てられた前記作業領域について、前記一の画像処理を実行するために最低限必要な作業領域以外の部分に関して解除することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る画像処理装置の一形態において、前記他の画像処理が終了した場合、前記一の画像処理に対して、該一の画像処理を実行するための作業領域を再度割り当てる再割当手段を有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る画像処理装置の一形態において、前記一の画像処理に対する前記作業領域は、前記一の画像処理に係る画像データを出力する処理に対して割り当てられた作業領域であることを特徴とする。
【0012】
上記のような特徴を有するため、本発明は、画像処理に係る各ジョブ間で作業領域の融通をし合うことで、システムリソースを効率的に利用し、作業効率の高い画像処理装置、画像処理方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、システムリソースを効率的に利用し、作業効率の高い画像処理装置、画像処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図面を参照しながら、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
<本実施の形態に係る画像処理装置のハードウェア構成例>
図1を用いて、本実施の形態に係る画像処理装置100のハードウェア構成の一例について説明する。図1は、画像処理装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0015】
画像処理装置100は、CPU(Central Processing Unit)210、ROM(Read-Only Memory)220、RAM(Random Access Memory)230、HDD(Hard Disc Drive)240、表示装置250、スキャナ260、プロッタ270、通信I/F(InterFace)280を有する。
【0016】
CPU210は、ROM220に記憶されたプログラムを実行する装置であり、RAM230に展開(ロード)されたデータを、プログラムの命令に従って演算処理し、画像処理装置100の全体を制御する。ROM220は、CPU210が実行するプログラムやデータを記憶している。RAM230は、CPU210でROM220に記憶されたプログラムを実行する際に、実行するプログラムやデータが展開(ロード)され、演算の間、演算データを一時的に保持する。HDD240は、基本ソフトウェアであるOS(Operating System)、本実施の形態に係るアプリケーションプログラムなどを、関連するデータとともに記憶する装置である。
【0017】
表示装置250は、ハードキーによるキースイッチやLCD(Liquid Crystal Display)等で構成され、画像処理装置100が有する機能をユーザが利用する際や各種設定を行う際のユーザインタフェースとして機能する装置である。スキャナ260は、原稿の画像データを取得するための装置である。また、プロッタ270は、画像データを紙出力するための装置である。
【0018】
通信I/F280は、無線又は有線の通信ネットワークを介して接続された他の通信制御機能を備えた周辺機器(PC端末や他の画像処理装置)と情報(データ)を送受信するためのインタフェースである。本実施の形態に係る画像処理装置100は、通信I/F280を介してLANに接続され、TCP/IP(Transmission Control Protocol / Internet Protocol)などの通信プロトコルに従って、LANに接続された他装置と画像処理の対象である画像データの送受信を行う。また、画像処理装置100は、通信I/F280を介して電話回線に接続され、ファクシミリ機能を実現させる。
【0019】
画像処理装置100が有する各手段は、CPU210が、ROM220又はHDD240に記憶された各手段に対応するプログラムを実行することにより実現される形態としても良いし、当該各手段に関する処理をハードウェアで実現する形態としても良い。
【0020】
<本発明に係る画像処理装置のソフトウェア構成>
図2は、本発明の実施の形態における画像処理装置(複合機)100のソフトウェア構成例を示す図である。ここで、複合機とは、プリンタ、コピー、スキャナ、又はFAX等の複数の機能を一台の筐体において実現する画像処理装置をいう。
【0021】
図2で示すように、画像処理装置100におけるソフトウェアは、ユーザインタフェース層10、コントロール層20、アプリケーションロジック層30、デバイスサービス層40及びデバイス制御層50より構成される。なお、図中における各層の上下関係は、層間の呼び出し関係に基づいている。すなわち、基本的に図中において上にある層が下の層を呼び出す。
【0022】
ユーザインタフェース層10は、機能(例えば、コピー、印刷、スキャン、FAX送信)の実行要求を受け付けるための機能が実装されている部分であり、例えば、通信サーバ部11及びローカルUI(User Interface)部12が含まれる。通信サーバ部11は、例えば、非図示のクライアントPC(Personal Computer)からネットワーク経由で要求を受け付ける。ローカルUI部12は、例えば、非図示のオペレーションパネルを介して入力される要求を受け付ける。ユーザインタフェース層10において受け付けられた要求は、コントロール層20に伝えられる。
【0023】
コントロール層20は、要求された機能を実現するための処理を制御するための機能が実装されている部分である。具体的には、要求された機能に応じて、アプリケーションロジック層30における各フィルタを接続し、接続されたフィルタに基づいて機能の実行を制御する。
【0024】
なお、本実施の形態において「画像処理装置100の機能」とは、画像処理装置100がユーザに対して提供する一つのまとまった単位(要求が入力されて最終的な出力が得られるまで)のサービスと同義であり、ソフトウェア的には一つのまとまった単位のサービスを提供するアプリケーションと同義である。
【0025】
アプリケーションロジック層30は、それぞれが画像処理装置100において提供される機能の一部を実現する部品群が実装されている部分である。すなわち、アプリケーションロジック層30における部品を組み合わせることにより一つの機能が実現される。本実施の形態では、各部品を「フィルタ」と呼ぶ。これは、画像処理装置100のソフトウェアアーキテクチャが「パイプ&フィルタ」と呼ばれる考え方に基づくことによる。
【0026】
図3は、パイプ&フィルタの概念を示すための図である。図3においては、「F」はフィルタを示し、「P」はパイプを示す。図中に示されるように、各フィルタはパイプによって接続される。フィルタは、入力されたデータに対して変換を施し、その結果を出力する。パイプは、フィルタから出力されたデータを次のフィルタに伝達する。
【0027】
すなわち、本実施の形態における画像処理装置100では、各機能をドキュメント(データ)に対する「変換」の連続として捉える。画像処理装置100の各機能は、ドキュメントの入力、加工、及び出力によって構成されるものとして一般化することができる。そこで、「入力」、「加工」、及び「出力」を「変換」として捉え、一つの「変換」を実現するソフトウェア部品がフィルタとして構成される。入力を実現するフィルタを特に「入力フィルタ」という。また、加工を実現するフィルタを特に「加工フィルタ」という。更に、出力を実現するフィルタを特に「出力フィルタ」という。なお。各フィルタは独立しており、フィルタ間における依存関係(呼び出し関係)は基本的には存在しない。したがって、フィルタ単位で追加(インストール)又は削除(アンインストール)が可能とされている。
【0028】
図2において、アプリケーションロジック層30には、入力フィルタ300として、読取フィルタ301、メール受信フィルタ302、FAX受信フィルタ303、PC文書受信フィルタ304が含まれている。
読取フィルタ301は、スキャナによる画像データの読み取りを制御し、読み取られた画像データを出力する。メール受信フィルタ302は、電子メールを受信し、当該電子メールに含まれているデータを出力する。FAX受信フィルタ303は、FAX受信を制御し、受信されたデータを出力する。PC文書受信フィルタ304は、非図示のクライアントPCから印刷データを受信し、受信された印刷データを出力する。
【0029】
図2において、アプリケーションロジック層30には、加工フィルタ310として、文書加工フィルタ311、文書変換フィルタ312が含まれている。
文書加工フィルタ311は、入力されたデータに所定の画像変換処理(集約、拡大、又は縮小等)を施し、出力する。文書変換フィルタ312は、レンダリング処理を実行する。すなわち、入力されたPostScriptデータをビットマップデータに変換して出力する。
【0030】
図2において、アプリケーションロジック層30には、出力フィルタ320として、印刷フィルタ321、メール送信フィルタ322、FAX送信フィルタ323、PC文書送信フィルタ324が含まれている。
印刷フィルタ321は、入力されたデータをプロッタに出力(印刷)させる。メール送信フィルタ322は、入力されたデータを電子メールに添付して送信する。FAX送信フィルタ323は、入力されたデータをFAX送信する。PC文書送信フィルタ324は、入力されたデータをクライアントPCに送信する。
【0031】
デバイスサービス層40は、アプリケーションロジック層30における各フィルタから共通に利用される下位機能が実装されている部分であり、例えば、画像パイプ41及びデータ管理部42が含まれる。画像パイプ41は、上述したパイプの機能を実現する。すなわち、或るフィルタからの出力データを次のフィルタに伝達する。データ管理部42は、各種のデータベースを表現する。例えば、ユーザ情報が登録されたデータベースや、文書又は画像データ等が蓄積されるデータベース等が相当する。
【0032】
デバイス制御層50は、デバイス(ハードウェア)を制御するドライバと呼ばれるプログラムモジュール群が実装されている部分であり、例えば、スキャナ制御部51、プロッタ制御部52、メモリ制御部53、電話回線制御部54、及びネットワーク制御部55が含まれる。各制御部は、当該制御部の名前に付けられているデバイスを制御する。
【0033】
フィルタについて更に詳しく説明する。図4は、フィルタの構成要素を説明するための図である。図4で示されるように、各フィルタは、フィルタ設定用UI、フィルタロジック、フィルタ固有下位サービス及び永続記憶領域情報により構成される。
フィルタ設定用UIは、フィルタの実行条件を設定させるための画面をオペレーションパネルに表示させるプログラムである。例えば、入力フィルタの一つである読取フィルタであれば、解像度、濃度、画像種別を設定する画面が相当する。なお、オペレーションパネルの表示がHTML(HyperText Markup Language)データや、スクリプトに基づいて行われ得ることに鑑みれば、フィルタ設定用UIはHTMLデータやスクリプトであっても良い。
【0034】
フィルタロジックは、フィルタの機能を実現するためのロジックが実装されたプログラムである。例えば、読取フィルタであれば、スキャナによる原稿読み取り制御のためのロジックが相当する。
フィルタ固有下位サービスは、フィルタロジックを実現するために必要な下位機能(ライブラリ)である。例えば、読取フィルタであれば、スキャナを制御するための機能が相当する。
永続記憶領域情報は、フィルタに対する設定情報(例えば、実行条件のデフォルト値)等、不揮発性メモリに保存する必要があるデータのスキーマ定義が相当する。当該スキーマ定義は、フィルタのインストール時にデータ管理部42に登録される。
【0035】
図5は、本実施の形態の複合機における各機能(アプリケーション)を実現するためのフィルタの組み合わせの例を示す図である。
例えば、コピー機能は、読取フィルタ301と印刷フィルタ321とを接続することにより実現される。読取フィルタ301によって、原稿から読み取られた画像データを印刷フィルタ321によって印刷すれば良いからである。なお、コピー機能に付随する、集約、拡大、縮小等の加工が要求された場合には、これらの加工を実現する文書加工フィルタ311が読取フィルタ301と印刷フィルタ321の間に挿入される。
【0036】
プリンタ機能(クライアントPCからの印刷機能)は、PC文書受信フィルタ304と文書変換フィルタ312と印刷フィルタ321とを接続することにより実現される。スキャンto email機能(スキャンした画像データを電子メールで転送する機能)は、読取フィルタ301とメール送信フィルタ322とを接続することにより実現される。FAX送信機能は、読取フィルタ301とFAX送信フィルタ323とを接続することにより実現される。FAX受信機能は、FAX受信フィルタ303と印刷フィルタ321とを接続することにより実現される。
【0037】
また、アプリケーションロジック層30は、コピーアクティビティ31、プリンタアクティビティ32、マルチ文書アクティビティ33を含む。ここで、アクティビティとは、予め固定的に定義されたフィルタの組み合わせによって、一つの機能(複合機1がユーザに対して提供する一つのまとまった単位のサービス又はアプリケーション)を実現するソフトウェアである。コピーのように頻繁に利用する機能については、毎回フィルタの選択によってユーザが実行指示を行うのは煩雑であるため、予めフィルタの組み合わせを定義することで、この煩雑さを解消するために用意されるものである。
コピーアクティビティ31は、読取フィルタ301と文書加工フィルタ311と印刷フィルタ321との組み合わせにより、コピー機能(コピーアプリケーション)を実現するアクティビティである。
プリンタアクティビティ32は、PC文書受信フィルタ304と文書変換フィルタ312と印刷フィルタ321との組み合わせにより、印刷機能(プリンタアプリケーション)を実現するアクティビティである。
マルチ文書アクティビティ33は、入力フィルタ、加工フィルタ、出力フィルタのそれぞれについて、自由な組み合わせが可能なアクティビティである。
なお、各アクティビティは独立しており、各アクティビティ間における依存関係(呼び出し関係)は基本的には存在せず、したがって、アクティビティ毎に追加(インストール)、削除(アンインストール)が可能である。
【0038】
<本実施の形態に係る画像処理装置の動作原理>
図6を用いて、本実施の形態に係る画像処理装置100の動作原理について説明する。図6は、画像処理装置100の動作原理を説明する図である。
【0039】
図6で示すように、画像処理装置100は、画像処理手段110、割当解除手段120、RAM230、第1の作業領域130、第2の作業領域140、スキャナ260、プロッタ270、通信I/F280を有する。
【0040】
画像処理手段110は、スキャナ260を用いて原稿の画像データを取得する。また、画像処理手段110は、通信I/F280を介して、処理対象の画像データを取得する。そして、画像処理手段110は、取得した画像データに対し画像処理を施し、当該画像処理を施した画像データをプロッタ270で紙出力する。
【0041】
例えば、画像処理手段110は、ユーザからコピー処理の要求を受け付けた場合、スキャナ260を用いて原稿の画像データを取得し、取得した画像データをプロッタ270で紙出力する。また、画像処理手段110は、ユーザからファクシミリ処理の要求を受け付けた場合、通信I/F280を介して、電話回線で接続されたファクシミリ装置から送信される画像データを取得し、取得した画像データをプロッタ270で紙出力する。さらに、画像処理手段110は、ユーザからプリント処理の要求を受け付けた場合、通信I/F280を介して、ユーザのPC端末から送信された画像データを取得し、取得した画像データをプロッタ270で紙出力する。
【0042】
また、画像処理手段110は、同時に複数の画像処理を実行する。この同時に実行する画像処理は、コピー処理とプリント処理のように異なる種類の処理であっても良く、同種の処理であっても良い。
【0043】
そして、画像処理手段110は、各画像処理に対し、処理を実行するための作業領域をRAM230上で割り当てる。つまり、画像処理手段110は、一の画像処理の要求(例えば、コピー処理の要求)が有った場合、当該一の画像処理に対して第1の作業領域130をRAM230上で割り当てる。また、画像処理手段110は、他の画像処理の要求(例えば、プリント処理の要求)が有った場合、当該他の画像処理に対して第2の作業領域140をRAM230上で割り当てる。
【0044】
そして、画像処理手段110は、一の画像処理を第1の作業領域130を使用して実行し、他の画像処理を第2の作業領域140を使用して実行する。各処理に割り当てられた作業領域は、基本的に、割り当てられた処理を実行するためにのみ利用する。つまり、一の画像処理に割り当てられた作業領域を使って、他の画像処理を実行することはできない。
【0045】
一方、画像処理手段110は、同時に複数の処理を実行するため、一の画像処理の実行中に、当該一の画像処理と比べ優先的に実行すべき他の画像処理の実行要求を受け付ける場合がある。さらに、当該他の画像処理を実行するために割り当てたRAM230上の第2の作業領域140では、当該他の画像処理を実行することができない場合がある。つまり、メモリ不足が発生する場合である。
【0046】
上記のような条件で、画像処理手段110の有する割当解除手段120は、一の画像処理を実行するために割り当てた第1の作業領域130を開放して、この第1の作業領域130を他の画像処理を実行する際に利用できるようにする。この場合に、割当解除手段120の一形態では、一の画像処理を実行するために割り当てた第1の作業領域130の全てを開放する。また、割当解除手段120の他形態では、一の画像処理を実行するために割り当てた第1の作業領域130の一部を開放する。この際、開放する第1の作業領域130の大きさは、適宜設定することができる。
【0047】
また、上記のようなメモリ不足は、多くの機能に共通する印刷処理(画像データの出力処理)を行う段階において、高い頻度で発生する。したがって、割当解除手段120は、一の画像処理の中で、特に印刷処理を実行するために割り当てた第1の作業領域130を開放する形態としても良い。
【0048】
例えば、画像処理手段110がプリント処理を実行中に、当該プリント処理より優先度の高いコピー処理の実行要求を受け付けた場合、かつ、当該コピー処理を実行するには第2の作業領域140ではメモリ不足が生じる場合、割当解除手段120は、プリント処理に割り当てた第1の作業領域130を開放する。そして、画像処理手段110は、全ての作業領域から解放された第1の作業領域130を差し引いた残りの作業領域を使用して、当該コピー処理を実行する。
【0049】
他形態として、優先度の高い処理と優先度の低い処理とがあった場合、割当解除手段120は、優先度の低い処理が最低限の処理を実行するために必要な第1の作業領域130を残して、その他の余剰部分を開放する。こうすることによって、画像処理手段110は、優先度の高い処理と優先度の低い処理とを並行して(同時に)実行することが可能となる。
【0050】
画像処理手段110の有する再割当手段150は、一旦作業領域を開放した後に優先度の高い処理が終了した場合、作業領域を開放した優先度の低い処理に対し、再度作業領域の割り当てを行う。このように、再割当手段150が優先度の低い処理に対して作業領域の再割り当てを行うことで、当該優先度の低い処理も効率的に実行することができる。
【0051】
上記のような動作原理に基づいて、画像処理装置100は、ジョブ間で作業領域を融通し合うことで、システムリソースを効率的に利用し、作業効率を高めることができる。
【0052】
<本実施の形態に係る画像処理装置による処理例>
図7を用いて、本実施の形態に係る画像処理装置100による処理例を説明する。図7は、画像処理装置100による処理例を示すシーケンス図である。ここでは、画像処理装置100が、プリント処理を実行中に、当該プリント処理より優先度が高い「原稿5枚、部数2部」のソートコピー処理の実行要求を受け付けた場合の処理を説明する。そして、画像処理装置100は、部数1部目の原稿1枚目、2枚目、3枚目と画像処理を実行した後、原稿4枚目でメモリ不足が生じた場合を想定する。
【0053】
S10で加工フィルタ310が、画像処理を行う画像加工43に対して、所定の画像処理の実行を依頼する。ここで、画像加工43は、印刷媒体上への印刷処理を行う前段階で、加工フィルタ310の指示(依頼)に従い、画像処理を実施するプログラム又は装置である。S20で画像加工43が、メモリ不足で依頼を受けた画像処理が実行できない旨を加工フィルタ310に通知する。S30で加工フィルタ310が、印刷フィルタ321に対し、画像処理でメモリ不足が生じた旨を通知する。
【0054】
S40で印刷フィルタ321が、プロッタ270が利用するメモリの管理を行うプロッタサービス44に対し、プリント処理を実行するために確保していた第1の作業領域130を開放するよう依頼する。S50でプロッタサービス44が、第1の作業領域130の一部又は全てを開放する。S50におけるプロッタサービス44の動作が、割当解除手段120による処理に該当する。ここで、第1の作業領域130の一部とは、プリント処理に対して割り当てられた第1の作業領域130のうち、プリント処理を実行するために最低限必要な作業領域以外の部分とする形態であっても良い。こうすることで、優先度の低いプリント処理と優先度の高いソートコピー処理とを並行して実行することができる。
【0055】
S60で画像加工43が、第1の作業領域130の一部又は全てが利用可能となったことを検知し、加工フィルタ310にその旨を通知する。そして、S70で加工フィルタ310が、画像加工43に、部数1の原稿4枚目に対して実行すべき画像処理の実行要求を行い、S80で画像加工43が、要求のあった画像処理を実行し、その旨を加工フィルタ310に通知する。
【0056】
S90で加工フィルタ310が、上記画像処理を施した4枚目の画像データを印刷フィルタ321に通知し、S100で印刷フィルタ321が、通知を受けた画像データに対する印刷処理の依頼をプロッタサービス44に対し行い、S110でプロッタサービス44が、当該画像データの印刷をプロッタ270で行い、その旨を印刷フィルタ321に通知する。S70からS110までの一連の処理が、画像処理手段110による処理に該当する。
【0057】
上記のような処理を行うことによって、作業領域の枯渇の際に、他の画像処理に確保されていた作業領域を柔軟に設定変更することによって、システムのリソースを効率的に利用することが可能となる。
【0058】
(総括)
本発明は、システムリソースを効率的に利用し、作業効率の高い画像処理装置、画像処理方法を提供する。
以上、本発明の実施の形態について詳述したが、本発明は係る特定の実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本実施の形態に係る画像処理装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
【図2】本実施の形態に係る画像処理装置のソフトウェア構成例を示す図である。
【図3】パイプ&フィルタの概念を説明するための図である。
【図4】フィルタの構成要素を説明するための図である。
【図5】本実施の形態に係る画像処理装置の各機能を実現するためのフィルタの組み合わせの例を示す図である。
【図6】本実施の形態に係る画像処理装置の動作原理を説明するための図である。
【図7】本実施の形態に係る画像処理装置による処理例を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0060】
100 画像処理装置
110 画像形成手段
120 割当解除手段
130 第1の作業領域
140 第2の作業領域
210 CPU
220 ROM
230 RAM
240 HDD
250 表示装置
260 スキャナ
270 プロッタ
280 通信I/F

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像処理を実行するための作業領域として使用する記憶装置を有し、該画像処理毎に割り当てた前記作業領域において各画像処理を実行する画像処理装置であって、
一の画像処理の実行中に、該一の画像処理に優先して実行すべき他の画像処理に対する実行要求を受け付けた場合であって、かつ、該他の画像処理を行うために必要な前記作業領域より、全ての前記作業領域から前記一の画像処理に割り当てた前記作業領域を除いた残りの前記作業領域が小さいとき、
前記一の画像処理に対する前記作業領域の割り当てを解除する割当解除手段と、
前記割当解除手段により前記作業領域の割り当てを解除した後、前記残りの作業領域において前記他の画像処理を実行する画像処理手段と、を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記割当解除手段は、前記一の画像処理に対して割り当てられた前記作業領域の全てに関して解除することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記割当解除手段は、前記一の画像処理に対して割り当てられた前記作業領域の一部に関して解除することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記割当解除手段は、前記一の画像処理に対して割り当てられた前記作業領域について、前記一の画像処理を実行するために最低限必要な作業領域以外の部分に関して解除することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記他の画像処理が終了した場合、
前記一の画像処理に対して、該一の画像処理を実行するための作業領域を再度割り当てる再割当手段を有することを特徴とする請求項1乃至4の何れか一に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記一の画像処理に対する前記作業領域は、前記一の画像処理に係る画像データを出力する処理に対して割り当てられた作業領域であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか一に記載の画像処理装置。
【請求項7】
複数の画像処理を実行するための作業領域として使用する記憶装置を有し、該画像処理毎に割り当てた前記作業領域において各画像処理を実行する画像処理装置の画像処理方法であって、
一の画像処理の実行中に、該一の画像処理に優先して実行すべき他の画像処理に対する実行要求を受け付けた場合であって、かつ、該他の画像処理を行うために必要な前記作業領域より、全ての前記作業領域から前記一の画像処理に割り当てた前記作業領域を除いた残りの前記作業領域が小さいとき、
割当解除手段が、前記一の画像処理に対する前記作業領域の割り当てを解除するステップと、
画像処理手段が、前記割当解除手段により前記作業領域の割り当てを解除した後、前記残りの作業領域において前記他の画像処理を実行するステップと、を有することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−68486(P2010−68486A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−235684(P2008−235684)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】