説明

画像処理装置、画像形成装置、画像処理装置の制御方法、及び画像処理装置の制御プログラム

【課題】木目調のノイズの発生を防止し、比較的に高い画質で誤差拡散法による画像処理を行うことができ、コストがかかる光量調整を行わずに速やかに印字を実行可能にできる画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置は、入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、例えば2つの光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する。画像処理装置は、2値化結果記憶部63により、注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての処理結果を記憶し、処理結果に基づいて、ドットカウント部65により2つの光源のそれぞれに対応する領域毎にドット数に関するカウント値を求める。また、基準値算出部61により、注目画素の濃度に応じて基準値を取得し、反転処理部55において、カウント値と基準値とに基づいて、注目画素についての誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転し、出力データを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、画像処理装置、画像形成装置、画像処理装置の制御方法、及び画像処理装置の制御プログラムに関し、特に、画像データの誤差拡散処理を行う画像処理装置、画像形成装置、画像処理装置の制御方法、及び画像処理装置の制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式の画像形成装置(スキャナ機能、ファクシミリ機能、複写機能、プリンタとしての機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)、ファクシミリ装置、複写機、プリンタなど)などにおいて、写真画像などの中間調の原画像を忠実に再現するために、誤差拡散法による低値化処理法が行われることがある。
【0003】
誤差拡散処理は、例えば写真などの中間調の画像を、階調をなめらかに表現したままで低値化する画像処理の一つである。誤差拡散処理では、画像の階調レベルが一定のいき値によって低値化され、注目画素の濃度値などとそれに対応する低値化したデータの濃度値との誤差が、一定範囲の複数の周辺画素に重み付けされて分配される。誤差拡散法によると、画像の濃度が保たれるので、比較的に、処理前の画像に忠実な低値化画像を得ることができる。
【0004】
ところで、特に複数の光源によって像担持体に潜像を形成する電子写真プロセスを採用した画像形成装置などにおいて、以下の場合に、形成された画像にノイズが発生することがある。すなわち、複数の光源間で光量に差がある場合であって、かつ、誤差拡散処理が行われた画像において、局所的に、複数の光源のそれぞれに対応する印字領域間で平均濃度が異なる場合である。
【0005】
このようなノイズは、特にハイライト部分に近い中間調のベタ領域(塗りつぶし領域)において、顕著に発生するものである。このようなノイズは、木目のように見えることがある。
【0006】
以下、例えば2つの光源からの光線で交互のラインに走査する画像形成装置において、上記のような木目調のノイズが発生するメカニズムについて説明する。
【0007】
図8は、ノイズが発生するメカニズムについて説明する第1の図である。
【0008】
図8に示す画像は、ハイライトに近い中間濃度の画像について、誤差拡散処理が行われ、2値化された後の結果を示すものである。図8において、画像はビットマップデータを拡大したものであり、格子で囲まれた四角形の各領域は、1つの画素を示している。2値化された後において、画像は、例えば、白色の画素と、黒色の画素(ドット;図8において灰色に着色されている)とを有する。黒色の画素は、処理前の画像の濃度の濃淡に応じて、ところどころに配置されている。
【0009】
図9は、ノイズが発生するメカニズムについて説明する第2の図である。
【0010】
図9は、上記図8に示されるビットマップ画像の各画素について、奇数ラインに含まれるものと偶数ラインに含まれるものとを分離させて示したものである。換言すると、図9は、上記図8に示されるビットマップ画像について、2つの光源を用いた電子写真プロセスで画像形成(印字)を行う場合において奇数ライン用の光源で印字される領域と偶数ライン用の光源で印字される領域とに分割して表したものである。
【0011】
図9に示す例では、奇数ラインに含まれるドットが比較的に少なく、偶数ラインに含まれるドットが比較的に多くなっている。このように、従来の誤差拡散処理では、局所的に、奇数ラインの領域と偶数ラインの領域との間で、ドットの分布が不均一になることがある。
【0012】
図10は、誤差拡散処理が行われた画像におけるドットの分布と、2つの光源間で光量差がある場合のその画像の見栄えとの関係を説明する表である。
【0013】
図10において、奇数ラインに対応する光源の光量が比較的に低く、偶数ラインに対応する光源の光量が比較的に高い場合を想定する。この場合において、奇数ラインのドットが比較的に多いとき(偶数ラインのドットが比較的に少ないとき)、画像形成された画像の見栄えは、相対的に薄くなる(画像の濃度が薄く見えるようになる)。
【0014】
他方、奇数ラインのドットが比較的に少ないとき(偶数ラインのドットが比較的に多いとき)、画像形成された画像の見栄えは、相対的に濃くなる(画像の濃度が濃く見えるようになる)。
【0015】
奇数ラインのドットと偶数ラインのドットとが互いに略均一の量であれば、奇数ラインに対応する光源の光量と偶数ラインに対応する光源の光量とに差があっても、画像形成された画像の見栄えとしては、「普通」(通常の濃度)となる。すなわち、奇数ラインと偶数ラインとでドットの分布が略均一であれば、画像形成された画像の濃度は、元の画像の濃度と略同じに見える。
【0016】
上記木目調のノイズは、図10に示すような3様の状態が、局所的に、ランダムに存在することで発生する。
【0017】
従来、このようなノイズの発生を軽減するために、例えばテスト画像を出力した結果を計測することによって複数のレーザの光量を調整するという対策方法が採られることがあった。
【0018】
例えば、下記特許文献1には、光量を変化させて調整用の画像パターンを印刷し、印刷したパターンの各色の濃度を検出して、複数の光源間で濃度の差が小さくなるような光量で光源を発光させる画像形成装置が開示されている。
【0019】
なお、誤差拡散処理で発生する幾何学的な干渉模様の発生に対しては、誤差拡散処理で用いられるフィードバック係数を周期的に変化させることで対策を行う方法が知られている。
【0020】
例えば、下記特許文献2には、誤差フィードバック係数を主走査方向に周期的に変化させ、偶数/奇数ラインで位相をずらすようにした画像処理装置が開示されている。すなわち、この画像処理装置では、画像のハイライト部分について、千鳥掛け状にドット均一化を施すことができる。
【0021】
また、誤差拡散の積分係数を調整することで、孤立ドットを形成しにくくする方法が知られている。
【0022】
例えば、下記特許文献3には、注目画素の隣接画素について、誤差拡散の拡散係数を負とすることで、孤立ドットの生成を抑制し、ドットを大きくするように処理を行う画像処理装置が開示されている。特許文献3には、マルチビーム方式で画像を形成する場合において、副走査方向にドットが連なりやすいようにしてドットを大きく成長させることにより、偶数/奇数ラインの濃度の平均化を図ることが開示されている。
【0023】
下記特許文献4には、量子化する注目画素から位置が遠いものについて誤差拡散のマトリクス係数の値を大きくすることでドットを大きくするようにした画像形成装置が開示されている。
【0024】
なお、下記特許文献5には、入力階調に応じたドット監視領域を設け、ドットカウント値と基準値との比較結果に応じて注目画素についての2値化の結果を反転させるようにすることでワームノイズを防止する画像処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2008−134326号公報
【特許文献2】特開平9−23335号公報
【特許文献3】特開2007−81657号公報
【特許文献4】特開2002−218239号公報
【特許文献5】特開2004−274181号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
しかしながら、上記のような従来の技術では、以下に示すような問題がある。
【0027】
すなわち、例えば特許文献1に記載されているような構成では、複数の光源の光量を調整するための調整時間及び調整コストがかかるという問題がある。
【0028】
また、例えば特許文献2に記載されているような構成では、誤差フィードバック係数を小さくすると階調再現性が低下するという、別の課題がある。また、誤差フィードバック係数の制御では、複数の光源に対応するラインへのデータの振り分け、例えば偶数ラインと奇数ラインとのそれぞれへのデータの振り分けを均等に行うことが困難であるという問題がある。
【0029】
特許文献3,4に記載されているような構成では、孤立ドットが形成されにくく、ドットが大きくなるので、処理後の画像の粒状性が悪化することがある。特に、例えば4つの光源など、多くの光源を用いる場合においては、ドットが大きくなりすぎ、画像のざらつき感が見過ごせないほど大きくなる場合があるので、このような構成は採用することができない。また、上述と同様に、複数の光源に対応するラインへのデータの振り分けを均等に行うことが困難である。
【0030】
なお、特許文献5に記載の画像処理方法は、ドット監視領域を分離して処理を行うものであるところ、複数の光源が均等の光量で印字を行ってノイズの発生を防止できるとはいえないという問題がある。
【0031】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、木目調のノイズの発生を防止し、比較的に高い画質で誤差拡散法による画像処理を行うことができ、コストがかかる光量調整を行わずに速やかに印字を実行可能にできる画像処理装置、画像形成装置、画像処理装置の制御方法、及び画像処理装置の制御プログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0032】
上記目的を達成するためこの発明のある局面に従うと、入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、複数の光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する画像処理装置は、入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての誤差拡散処理の処理結果を記憶する記憶手段と、複数の光源のそれぞれに対応する領域毎に、記憶手段により記憶された処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求めるカウント手段と、注目画素の濃度に応じた基準値を取得する取得手段と、カウント手段により求められたカウント値と取得手段により取得された基準値とに基づいて、注目画素についての誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転する反転手段とを備える。
【0033】
好ましくは記憶手段は、入力データについての副走査方向が主走査方向よりも長くなるように設定された領域について、処理結果の記憶を行う。
【0034】
好ましくは基準値は、入力データのうちハイライト領域においてドットがより均等に分配されるように設定されている。
【0035】
好ましくは複数の光源は、2つの光源であり、2つの光源のそれぞれに対応する2つの領域は、入力データについて副走査方向に奇数番目に位置するラインである領域と、入力データについて副走査方向に偶数番目に位置するラインである領域とである。
【0036】
この発明の他の局面に従うと、画像形成装置は、複数の光源により像担持体に潜像を形成することで用紙に画像を形成する画像形成部と、上述のいずれかに記載の画像処理装置とを備え、画像形成部は、画像処理装置から出力された出力データに基づいて画像形成を行う。
【0037】
この発明のさらに他の局面に従うと、入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、複数の光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する画像処理装置の制御方法は、複数の光源に対応する領域毎に、入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての誤差拡散処理の処理結果を記憶する記憶ステップと、複数の光源に対応する領域毎に、記憶ステップにより記憶された処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求めるカウントステップと、注目画素の濃度に応じた基準値を取得する取得ステップと、カウントステップにより求められたカウント値と取得ステップにより取得された基準値とに基づいて、注目画素についての誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転する反転ステップとを備える。
【0038】
この発明のさらに他の局面に従うと、入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、複数の光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する画像処理装置の制御プログラムは、複数の光源に対応する領域毎に、入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての誤差拡散処理の処理結果を記憶する記憶ステップと、複数の光源に対応する領域毎に、記憶ステップにより記憶された処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求めるカウントステップと、注目画素の濃度に応じた基準値を取得する取得ステップと、カウントステップにより求められたカウント値と取得ステップにより取得された基準値とに基づいて、注目画素についての誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転する反転ステップとをコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0039】
これらの発明に従うと、複数の光源のそれぞれに対応する領域毎にカウントされたカウント値と、基準値とに応じて、誤差拡散処理の処理結果が強制的に反転される。したがって、木目調のノイズの発生を防止し、比較的に高い画質で誤差拡散法による画像処理を行うことができ、コストがかかる光量調整を行わずに速やかに印字を実行可能にできる画像処理装置、画像形成装置、画像処理装置の制御方法、及び画像処理装置の制御プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明の実施の形態の一例における画像処理装置を有する画像形成装置を示す正面図である。
【図2】画像形成装置の制御回路の構成を示すブロック図である。
【図3】誤差拡散処理部の構成を示すブロック図である。
【図4】誤差拡散処理の一例を示すフローチャートである。
【図5】注目画素に関して2値化結果記憶部により2値化結果の記憶が行われる領域の一例を示す図である。
【図6】注目画素に関して2値化結果記憶部により2値化結果の記憶が行われる領域の別の例を示す図である。
【図7】基準値算出部による基準値の設定例を説明するグラフである。
【図8】ノイズが発生するメカニズムについて説明する第1の図である。
【図9】ノイズが発生するメカニズムについて説明する第2の図である。
【図10】誤差拡散処理が行われた画像におけるドットの分布と、2つの光源間で光量差がある場合のその画像の見栄えとの関係を説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、本発明の実施の形態における画像形成装置(画像処理装置の一例)の一例について説明する。
【0042】
[概要]
【0043】
画像形成装置は、スキャナ機能、複写機能、プリンタとしての機能、ファクシミリ機能、データ通信機能、及びサーバ機能を備えたMFP(Multi Function Peripheral)である。スキャナ機能では、セットされた原稿の画像を読み取ってそれをHDD(Hard Disk Drive)などに蓄積する。複写機能では、さらにそれを用紙などに印刷(プリント)する。プリンタとしての機能では、PC(パーソナルコンピュータ)などの外部端末から印刷指示を受けるとその指示に基づいて用紙に印刷を行う。ファクシミリ機能では、外部のファクシミリ装置などからファクシミリデータを受信してそれをHDDなどに蓄積する。データ通信機能では、接続された外部機器との間でデータを送受信する。サーバ機能では、複数のユーザでHDDなどに記憶したデータなどを共有可能にする。
【0044】
画像形成装置は、電子写真プロセスにより用紙に画像を形成する。画像形成装置は、例えば2つの光源を用いて像担持体に潜像を形成し、画像形成を行うものである。
【0045】
画像形成装置は、画像データについて画像処理を行う画像処理装置として機能する。画像形成装置は、例えば、スキャナ機能で読み取った画像や印刷する対象となる画像などの処理対象となる画像データについて、画像処理を行う。画像形成装置は、画像データを誤差拡散法により2値化する誤差拡散処理を行う。
【0046】
本実施の形態において、画像形成装置は、画像データについて誤差拡散処理を行うとき、その画像データに基づいて画像形成が行われる場合に2つの光源のそれぞれが対応する2つの領域毎に、画像データを2値化した結果を記憶する。また、画像形成装置は、各領域内のドット数を比較することで、2値化した結果の反転処理を行う。
【0047】
これにより、誤差拡散処理後の画像について画像形成を行った場合に木目調のノイズが発生することを防止できる。従来のように複数の光源(レーザ光源など)の光量を互いに均一となるように調整することなく、すなわち調整工程分の時間やコストを必要とせずに、画像処理によるノイズ発生に対する対策を効果的に施すことができる。
【0048】
[実施の形態]
【0049】
まず、本実施の形態の一例における画像形成装置の構成について説明する。
【0050】
[画像形成装置の構成]
【0051】
図1は、本発明の実施の形態の一例における画像処理装置を有する画像形成装置を示す正面図である。
【0052】
図を参照して、画像形成装置1は、画像形成部3、画像読取部5、画像処理部21、給紙部30、及び排紙部31などを備える。
【0053】
図2は、画像形成装置1の制御回路の構成を示すブロック図である。
【0054】
図を参照して、画像形成装置1のシステム全体を制御するCPU(中央演算処理装置)11の制御の下、各モジュールが動作することで、画像形成装置1の種々の機能が実現される。画像形成装置1は、上述の各部のほか、表示部7、パネル操作部9、記憶部13、ROM15、RAM17、不揮発メモリ19、画像出力部23、ファクシミリ制御部25、及びネットワーク接続部27などを備えている。
【0055】
CPU11は、判別部11aと、削除部11bと、制御部11cと、通報部11dとを有している。CPU11は、判別部11a、削除部11b、制御部11c、及び通報部11dなどにより、画像形成装置1の各部との間で通信や信号の送受信を行ったり、種々の判断や情報の削除などを実行したりすることで、画像形成装置1のシステム全体を制御する。
【0056】
画像形成部3は、例えば、トナー像形成部(図示せず)と、用紙搬送部(図示せず)と、定着装置(図示せず)とを有し、電子写真方式により用紙に画像を形成する。用紙は、給紙部30から用紙搬送部によってトナー像形成部に搬送される。また、トナー像形成部及び定着装置で画像が形成された用紙は、用紙搬送部により、排紙部31に排紙される。画像形成部3は、画像処理部21により画像処理が行われた画像に基づいて、用紙に画像形成を行う。画像形成部3は、いわゆるタンデム方式で4色の画像を合成し、用紙にカラー画像を形成可能に構成されている。
【0057】
画像読取部5は、画像形成装置1の筐体の上部に配置されている。画像読取部5は、ADF(Auto Document Feeder)5aを有している。画像読取部5は、上述のスキャナ機能を実行する。画像読取部5は、透明な原稿台に配置された原稿をコンタクトイメージセンサにより走査して、それを画像データとして読み取る。また、画像読取部5は、原稿トレイにセットされた複数枚の原稿を、ADF5aにより順次取り込みながら、コンタクトイメージセンサによりその画像データを読み取る。画像読取部5により読み取られた画像データは、CPU11により所定のデータ形式のデータに変換され、記憶部13などに記憶される。
【0058】
表示部7は、例えば、画像を表示するLCD(Liquid Crystal Display)である。表示部7には、例えば、画像形成装置1の状態を示す画像や操作の案内画像など、CPU11の制御の下、種々の画像が表示される。なお、表示部7は、パネル操作部9を兼ねたものであってもよい。
【0059】
パネル操作部9は、例えば、タッチパネルを備えたLCDである。パネル操作部9は、ユーザに案内画面を表示したり、操作ボタンを表示してユーザからのタッチ操作を受け付けたりする。パネル操作部9は、CPU11により制御されて表示を行う。パネル操作部9は、ユーザにより操作入力されると、その操作に応じた操作信号又は所定のコマンドをCPU11に送信する。すなわち、ユーザは、パネル操作部9に操作を行うことにより、画像形成装置1に種々の動作を実行させることができる。
【0060】
記憶部13は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。記憶部13は、ネットワーク接続部27を介して外部から送られたジョブ(JOB)のデータや、画像読取部5で読み取った画像データなどを記憶する。また、記憶部13は、画像形成装置1の設定情報や、画像形成装置1の種々の動作を行うための制御プログラム13aなどを記憶する。記憶部13は、1つのクライアントPC又は複数のクライアントPCなどから送信された複数のジョブを記憶可能である。なお、記憶部13は、ROM15や不揮発メモリ19などを兼ねていてもよい。
【0061】
ROM15は、例えばフラッシュROM(Flash Memory)である。ROM15には、画像形成装置1の動作を行うために用いられるデータが記憶されている。ROM15には、記憶部13と同様に、種々の制御プログラムや、画像形成装置1の機能設定データなどが記憶されていてもよい。CPU11は、所定の処理を行うことにより、ROM15からのデータの読み込みや、ROM15へのデータの書き込みを行う。なお、ROM15は、書換え不可能なものであってもよい。
【0062】
RAM17は、CPU11のメインメモリである。RAM17は、後述のようにCPU11が制御プログラム13aを実行するときに必要なデータを記憶するのに用いられる。
【0063】
不揮発メモリ19は、例えばフラッシュROM(Flash Memory)である。不揮発メモリ19には、ROM15や記憶部13と同様に、種々の制御プログラムや、画像形成装置1の機能設定データなどが記憶されていてもよい。CPU11は、画像形成装置1の制御を行うのに必要なときなどに、不揮発メモリ19からのデータの読み込みや、不揮発メモリ19へのデータの書き込みを行う。
【0064】
画像処理部21は、CPU11による制御の下、種々の画像処理を行う機能を有している。画像処理としては、例えば、印刷対象の画像データをCMYK方式のデータに変換する処理や、画像データの特性に応じた画像データの補正処理などがある。
【0065】
画像出力部23は、例えば、記憶部13などに記憶された画像データを、ネットワーク接続部27などを介して、外部のPCなどに送信可能である。画像出力部23は、例えば、電子メールやFTP(File Transfer Protocol)など、種々の通信プロトコルにより、画像を出力可能である。
【0066】
ファクシミリ制御部25は、上述のファクシミリ機能を制御し、外部の機器とファクシミリ通信を行う。ファクシミリ制御部25は、ファクシミリ通信によるデータを受信する受信部25aを備えている。
【0067】
ネットワーク接続部27は、例えば、NIC(Network Interface Card)などのハードウェア部と、所定の通信プロトコルで通信を行うソフトウェア部とが組み合わされて構成されている。ネットワーク接続部27は、画像形成装置1をLANなどの外部ネットワークに接続する。これにより、画像形成装置1は、外部ネットワークに接続されているクライアントPCなどの外部装置と通信可能になる。画像形成装置1は、PCなどが接続された外部ネットワークに接続されている場合、そのPCなどから印刷ジョブを受信可能である。また、画像形成装置1は、上述の画像出力部23などにより、画像読取部5で読み取った画像データを、PCに送信したり、メールサーバなどを介してE−mailにより送信したりすることができる。なお、ネットワーク接続部27は、無線通信により外部ネットワークに接続可能に構成されていてもよい。
【0068】
CPU11は、ROM15、RAM17、又は記憶部13などに記憶された制御プログラム13aなどを実行することにより、画像形成装置1の種々の動作を制御する。CPU11は、パネル操作部9から操作信号が送られたり、ネットワーク接続部27を介して通信可能なPCなどから操作コマンドが送信されたりすると、それらに応じて所定の制御プログラム13aを実行する。これにより、ユーザによりパネル操作部9に加えられた操作入力などに応じて、画像形成装置1の所定の機能が実行される。
【0069】
本実施の形態において、画像形成部3は、例えば2つのレーザ光源4a,4b(以下、これらをまとめてレーザ光源4と示すことがある。)を有し、電子写真方式により画像を形成する。すなわち、画像形成部3において、2つの光源から出射された光を像担持体上に照射し、像担持体上で主走査方向に走査させることで、像担持体上に潜像を形成する。像担持体上に形成された画像は、用紙に転写及び定着され、用紙に画像が形成される。このように2つの光源を用いて画像形成を行うことで、形成する画像の副走査方向の解像度をより高くすることができる。
【0070】
画像処理部21には、入力データについて誤差拡散処理を行い低値化して出力する誤差拡散処理部21aが設けられている。誤差拡散処理部21aの動作については、後述する。
【0071】
[誤差拡散処理の説明]
【0072】
本実施の形態において、画像形成装置1では、画像処理として、画像データである入力データを低値化して出力する誤差拡散処理が行われる。誤差拡散処理では、例えば、2値化が行われる。誤差拡散処理は、例えば、画像処理部21に設けられた誤差拡散処理部21aにより、CPU11の制御に基づいて行われる。CPU11は、例えば、記憶部13の制御プログラム13aを実行することで、誤差拡散処理の制御を行う。
【0073】
図3は、誤差拡散処理部21aの構成を示すブロック図である。
【0074】
図3を参照して、誤差拡散処理部21aは、入力データとして画像入力信号が入力されると、それについて処理を行い、処理後の画像データである出力データを画像出力信号として出力する。出力データは、画像形成装置で画像形成の対象となりうるものである。
【0075】
誤差拡散処理部21aは、加算部51と、比較部53と、反転処理部(反転手段の一例)55と、減算部57と、誤差積分部59と、基準値算出部(取得手段の一例)61と、2値化結果記憶部(記憶手段の一例)63と、ドットカウント部(カウント手段の一例)65とを有している。
【0076】
画像入力信号は、例えば256階調(8bit)の階調再現性を有するものである。画像入力信号は、誤差拡散処理部21aに入力されると、加算部51と基準値算出部61とに入力される。
【0077】
加算部51において、画像入力信号と誤差積分部59からの出力である誤差積分結果(誤差データ)とが加算される。加算された結果は、比較部53と減算部57とに出力される。
【0078】
比較部53において、入力された加算結果は、2値化いき値と比較される。加算結果の方が大きければ、その画素についてドットがオン(ON)とされる(オンの信号を出力する)。加算結果の方が小さければ、ドットがオフ(OFF)とされる。なお、ここでオンとは、値が1(例えば黒色)であることをいい、オフとは、値が0(例えば白色・無色)であることをいう。値は、反転処理部55に送られる。換言すると、比較部53から反転処理部55に、比較結果が送られる。
【0079】
反転処理部55は、判定部67と、強制処理部69とを有している。比較部53からの出力は、強制処理部69に入力される。強制処理部69は、後述のようにして、所定の場合に2値化結果を強制的に反転させる処理を行う。強制処理部69の処理結果は、画像出力信号(出力データ)として誤差拡散処理部21aから出力される。また、強制処理部69の処理結果は、減算部57及び2値化結果記憶部63に出力される。
【0080】
減算部57には、加算器51から出力された加算結果と、強制処理部69の処理結果すなわち画像出力信号とが入力される。減算部57では、画像出力信号と加算結果との誤差が算出される。このとき、画像出力信号は2値化されたデータであって、加算結果は2値化される前のデータであるので、画像出力信号が適当な倍数で乗算(例えば、255倍)された後、誤差の算出が行われる。算出された誤差は、誤差積分部59に出力される。
【0081】
誤差積分部59は、減算部57から入力された誤差を蓄積し、蓄積した誤差データを注目画素の周辺画素に分散するようにして、加算部51に出力する。なお、加算部51、比較部53、減算部57、及び誤差積分部59による通常の誤差拡散処理(強制反転処理を伴わないもの)は、公知のものであり、種々の手法が用いられうるものである。
【0082】
基準値算出部61には、誤差拡散処理部21aに入力された画像入力信号が入力される。基準値算出部61は、画像入力信号の濃度(階調)すなわちその注目画素の濃度に応じて、基準値を算出する。算出された基準値は、判定部67に出力される。
【0083】
2値化結果記憶部63には、強制処理部69から出力された画像出力信号が入力される。2値化結果記憶部63は、入力された画像出力信号に基づいて、入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定範囲内の画素についての2値化結果(2値化された結果すなわち誤差拡散処理の処理結果)を記憶する。2値化結果の記憶対象となる領域については、後述する。
【0084】
ドットカウント部65は、2値化結果記憶部63で記憶された2値化結果に関するカウントを行う。すなわち、ドットカウント部65は、2値化結果記憶部63により記憶された誤差拡散処理の処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値(ドットのオン又はオフの数に関連したカウント値)を求め、取得する。カウント値は、判定部67に送られる。
【0085】
反転処理部55は、ドットカウント部65により求められたカウント値と、基準値算出部61により取得された基準値とに基づいて、注目画素についての誤差拡散処理の処理結果すなわち2値化結果を強制的に反転する処理を行う。
【0086】
すなわち、判定部67は、基準値算出部61から入力された基準値と、ドットカウント部65から入力されたカウント値とに基づいて、判定を行う。判定は、基準値とカウント値とを比較して、注目画素について2値化結果を強制的に反転すべきか否かについて行われる。
【0087】
強制処理部69は、判定部67による判定結果に基づいて、2値化結果を強制的に反転させる処理を行う。すなわち、判定部67により注目画素についての2値化結果を反転すべきであると判定されたとき、その注目画素の2値化結果を反転して出力する。
【0088】
ここで、本実施の形態において、誤差拡散処理部21aでは、入力データについて、その画像データに基づいて画像形成が行われる場合に2つのレーザ光源4のそれぞれが対応する2つの領域毎に、2値化結果を記憶し、各領域内のドット数に基づいて、入力データのうちの処理対象である注目画素についての2値化結果を反転する処理を行う。
【0089】
すなわち、2値化結果記憶部63は、2つのレーザ光源4のそれぞれに対応する2つの領域毎に、注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての誤差拡散処理の処理結果を記憶する。換言すると、誤差拡散処理の処理結果を記憶する対象領域としては、注目画素の周辺の所定の範囲の画素により構成される領域を2つのレーザ光源4のそれぞれが対応する2つの領域に分割したものが設定されている。
【0090】
ドットカウント部65は、2つの領域毎に、2値化結果記憶部63により記憶された処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求める。換言すると、ドットカウント部65は、2つのレーザ光源4がそれぞれ印字することになる2つの領域のそれぞれについて、2値化結果をカウントし、カウント値を求める。
【0091】
判定部67は、2つの領域のうち第1の領域についての第1カウント値と、第2の領域についての第2カウント値と、基準値とに基づいて、注目画素について反転を行うべきか否か、判定を行う。本実施の形態では、例えば、第1カウント値が、第2カウント値から基準値を減算した値より大きく、かつ、第2カウント値に基準値を加算した値より小さい場合は、反転を行うべきでないと判定される。判定部67の動作例については、後述する。
【0092】
図4は、誤差拡散処理の一例を示すフローチャートである。
【0093】
以下、CPU11が誤差拡散処理部21aなどに実行させる誤差拡散処理について、CPU11を処理主体として説明する。以下に説明する処理は、入力データにおいて処理対象となる各注目画素について行われる。
【0094】
ステップS101において、CPU11は、注目画素の入力データの入力処理を行う。入力画素は、加算部51などに入力される。
【0095】
ステップS103において、CPU11は、注目画素について2値化(低値化)する処理を行う。
【0096】
ステップS105において、CPU11は、入力データについて、2つのレーザ光源4のそれぞれに対応する2つの領域を判別する処理を行う。領域の判別は、各注目画素について行われる。判別は、例えば、2値化結果記憶部63やドットカウント部65などにより行われる。
【0097】
ステップS107において、CPU11は、2値化結果を記憶する処理(低値化結果記憶処理)を行う。記憶は、2値化結果記憶部63を用いて行われる。
【0098】
ステップS109において、CPU11は、記憶されたデータに基づいて、ドットに関する値をカウントする処理を行う。この処理は、ドットカウント部65を用いて行われる。このとき、ドットカウント部65においては、ステップS105において判別された2つの領域毎に、注目画素に対するカウント値が取得される。
【0099】
ステップS111において、CPU11は、基準値を算出する処理を行う。基準値は、基準値算出部61により算出される。
【0100】
ステップS113において、CPU11は、基準値とカウント値とを比較する処理を行う。
【0101】
ステップS115において、CPU11は、比較結果に基づいて、注目画素についての2値化結果を反転することが必要であるか否かについて判定する。判定は、判定部67を用いて行われる。
【0102】
ステップS115において反転することが必要であるとき、ステップS117において、CPU11は、強制反転処理を実行する。強制処理部69により、注目画素についての2値化結果が反転される。
【0103】
ステップS117において強制反転処理が行われたとき、又はステップS115において反転することが必要でなかったとき、ステップS119において、CPU11は、注目画素についての2値化結果を画像出力信号として出力する。すなわち、出力データが出力される。
【0104】
[注目画素の周辺の所定の範囲の画素により構成される領域の説明]
【0105】
図5は、注目画素に関して2値化結果記憶部63により2値化結果の記憶が行われる領域の一例を示す図である。
【0106】
2つのレーザ光源4のそれぞれに対応する2つの領域としては、入力データについて副走査方向に奇数番目に位置するライン(奇数ライン)である領域と、入力データについて副走査方向に偶数番目に位置するライン(偶数ライン)である領域とがある。ここで、上記において入力データについての副走査方向とは、その入力データに基づいて画像形成部3により画像形成が行われる場合を想定したとき、用紙送り方向すなわちレーザ光源4の光の走査方向(主走査方向)に直交する方向をいう。図5において、副走査方向は紙面の上下方向であり、主走査方向は紙面の左右方向である。
【0107】
図5を参照して、注目画素101が処理対象となるとき、入力データのうち注目画素101について考慮される領域110すなわち2値化結果記憶部63により2値化結果が記憶される領域110は、縦横(主走査方向及び副走査方向)共に所定の複数個の画素により構成される長方形の領域となる。
【0108】
本実施の形態において、ドットカウント部65は、領域110を2つのレーザ光源4に対応することになる2つの領域に分割して、2つの領域のそれぞれについてカウント値を取得する。すなわち、2つのレーザ光源4がそれぞれ画像データのうち奇数ラインの画素と偶数ラインの画素とに対応するものであるところ、領域110の画素のうち、奇数ラインの画素についてのカウント値(図5において「合計A」)と、偶数ラインの画素についてのカウント値(図5において「合計B」)とが取得される。換言すると、領域110を構成する画素のうち、図5において白色で示される奇数ラインの画素とグレーで示される偶数ラインの画素とが区別されて、それぞれの画素で構成される領域毎に、カウント値が取得される。
【0109】
なお、領域110は、図5に示すような、主走査方向が副走査方向よりも短いものに限られない。
【0110】
図6は、注目画素に関して2値化結果記憶部63により2値化結果の記憶が行われる領域の別の例を示す図である。
【0111】
図6を参照して、2値化結果記憶部63は、入力データのうち、副走査方向が主走査方向よりも長くなるように設定された領域210について、2値化結果の記憶を行うようにしてもよい。すなわち、副走査方向に並ぶ画素の数の方が、主走査方向に並ぶ画素の数よりも多くなるように、領域210が設定されていてもよい。この場合においても同様に、ドットカウント部65は、注目画素101についての領域210に関し、奇数ラインと偶数ラインとで区別された2つの領域のそれぞれについてのカウント値を取得する。
【0112】
図5に示すような領域110が注目画素について設定される場合、図5で白色で示す領域において(合計A)ドットが右側にあり、グレーで示す領域(合計B)においてドットが左側にあるというように、ドットが左右に(主走査方向に)偏っていたとしても、それぞれの領域のカウント値が互いに同じような値であれば判定部67では2値化結果の強制反転指示が行われないため、局所的に(狭い領域内で)高周波な木目のようなノイズが発生する可能性がある。しかしながら、図6に示すように副走査方向の方が主走査方向よりも長い、いわゆる縦長の領域210が設定されるようにすることで、上記のようなドットの偏りが領域210では生じにくくなるため、上記のような局所的な領域内でのノイズの発生も効果的に防止することができる。
【0113】
[基準値の説明]
【0114】
本実施の形態において、基準値は、入力データのうちハイライト領域においてドットがより均等に分配されるように、注目画素の濃度に応じて設定されている。
【0115】
図7は、基準値算出部61による基準値の設定例を説明するグラフである。
【0116】
図7において、グラフの横軸は、画像入力信号の階調(入力階調)を示し、グラフの縦軸は、基準値すなわちドットの個数を示す。
【0117】
形成された画像において、木目調のノイズは、ハイライト部に発生しやすい。そのため、基準値は、ハイライト側(図7において左側)で比較的に小さく(厳しく)、シャドー側(図7において右側)では比較的に大きく(緩く)なるように、設定されている。これにより、ハイライト領域において、ドットがより均等に分配されるようになっている。
【0118】
このように、基準値が所定の入力階調領域において比較的小さめに設定されることで、以下のような効果が得られる。すなわち、例えば256階調のグレースケールでの色調を有する画像において、128LSB(黒色から数えて128番目の階調)付近の中間濃度領域では、ドット配置の自由度が非常に低くなる。その状態で、上述のような強制反転処理を行うようにすると、画像中に繰り返しの模様や幾何学的な模様が発生しやすくなる場合がある。例えば、グラデーション画像について誤差拡散処理を行うとき、強制反転処理を伴わない通常の誤差拡散処理の処理結果に見られるようなランダム配置されたドットが存在する濃度領域と、上記のように強制反転処理を施した領域とが混在すると、画像全体の見栄えが悪化する可能性がある。しかしながら、本実施の形態において、木目調のノイズが発生しにくい濃度領域においては基準値が比較的大きいままとされ、強制反転処理が行われにくくなり、強制反転処理を伴わない通常の誤差拡散処理が行われやすくなる。したがって、画像全体の見栄えの悪化を防止することができる。
【0119】
なお、基準値を比較的小さくする対象となるハイライト領域(濃度領域)は、適宜設定することができる。例えば、ハイライト領域を、濃度が0%から10%である領域として設定してもよいし、濃度が0%から50%である領域など、これとは異なる濃度領域を設定してもよい。また、入力階調の大小に応じて、基準値の値が、段階的に又は順次変化するようにしてもよい。
【0120】
[判定部67の動作例]
【0121】
以下、図5に示すような領域110についてカウント値がカウントされている場合の注目画素101についての判定部67の判定動作の一例について説明する。ここで、領域110の奇数ラインの画素についてのカウント値(図5において「合計A」)を第1カウント値と呼び、偶数ラインの画素についてのカウント値(図5において「合計B」)を第2カウント値と呼ぶ。
【0122】
上述の通り、判定部67は、第1カウント値、第2カウント値、及び基準値に基づいて、以下の式が満足されない場合に、強制反転処理を行うべきであると判定する。
【0123】
[(第2カウント値)−(基準値)]<(第1カウント値)<[(第2カウント値)+(基準値)]
【0124】
例えば、領域110がハイライト部のものであって、第1カウント値が、第2カウント値に基準値を加算した値よりも大きい場合には、上記の関係が満たされない。この場合、判定部67により強制反転処理を行うべきであると判定されるため、奇数ラインに属する注目画素101のドットがオン(ドットON)と判定されていても、その結果が打ち消され、ドットがオフ(ドットOFF)に置換される。これによって、副走査方向に1ライン下流の偶数ラインに属する側の画素に、ドット形成が誘導される。
【0125】
より具体的には、強制反転処理により2値化結果が打ち消されているために、注目画素101の付近の画素の誤差は十分に累積されている状態になる。この状態において、注目画素が1ライン下流の画素にシフトすると、シフト後の注目画素についてドットが打ちやすい状況になる。また、注目画素が1ラインシフトすることで、それまで奇数ラインであった領域と偶数ラインであった領域とが逆転するので、注目画素のシフト後において、第1カウント値が、第2カウント値に基準値を加算した値よりも小さくなる可能性が高くなる。したがって、注目画素の打ち消し処理すなわち強制反転処理が実行されにくい状態になる。
【0126】
他方、領域110がシャドー部のものであって、第1カウント値が、第2カウント値から基準値を減算した値よりも小さい場合にも、上記の関係が満たされない。この場合、判定部67により強制反転処理を行うべきであると判定されるため、奇数ラインに属する注目画素101のドットがオフと判定されていても、その結果が打ち消され、ドットがオンに置換される。これによって、偶数ラインに属する側の画素において、ドットがオフとなるように誘導される(オフドットの形成が誘導される)。
【0127】
より具体的には、強制反転処理によりドットがオンに置換されているために、その注目画素101の付近の画素の誤差は十分に解消されており、注目画素が1ライン下流にシフトすると、シフト後の注目画素についてドットが打ちにくい状態が発生することになる。また、1ラインシフトすることで、それまで奇数ラインであった領域と偶数ラインであった領域とが逆転するので、注目画素のシフト後において、第1カウント値が第2カウント値から基準値を減算した値よりも大きく、強制反転処理が実行されにくい状態になる。
【0128】
[実施の形態における効果]
【0129】
以上のように構成された画像形成装置では、誤差拡散処理結果である2値化結果を、2つのレーザ光源4が対応する2つの領域に互いに略均等に振り返ることができる。ドットが各レーザ光源4が対応する領域に均等に配分されるため、2つのレーザ光源4間に光量差があるような場合であっても、全体として均一な濃度で画像形成が行われることとなる。簡易的な構成で、木目調のノイズの発生を抑えることができ、見栄え良く、比較的に高い画質で誤差拡散法による画像処理を行うことができる。画像形成装置1においては、コストがかかる光量調整等を行わず、速やかに印字を行うことができる。
【0130】
[その他]
【0131】
誤差拡散処理は、CPUが記憶部に記憶された制御プログラムに基づいて動作することで、ソフトウェア的な処理が行われ、実現されてもよい。その場合、CPUは、上述の図4に示すような流れで処理を行ってもよい。
【0132】
2値化結果記憶部が、2つのレーザ光源に関する区別なく、注目画素について所定の範囲の領域についてまとめて2値化結果の記憶を行い、ドットカウント部が、2値化結果の記憶対象となった領域を2つのレーザ光源のそれぞれが対応する2つの領域に分割し、各領域についてカウント値を求めるようにしてもよい。
【0133】
画像形成部において画像形成に用いられる光源は、レーザ光源でなくてもよい。例えば、画像形成部は、複数のLED(発光ダイオード)を連ねた線状光源により画像形成を行うものであってもよい。
【0134】
画像形成部は、例えば3以上の光源を用いて、電子写真プロセスにより画像を形成可能であってもよい。この場合、複数の光源のそれぞれが対応する領域について、ドットのカウントが行われ、基準値との比較が行われるようにすればよい。
【0135】
基準値は、上述のように設定されるものに限られない。基準値は、注目画素の濃度すなわち入力階調に応じて、例えば2つの値のうちいずれか一方が設定されるようにしてもよいし、所定の計算式を用いて入力階調に応じて算出されるようにしてもよい。
【0136】
画像形成装置としては、モノクロ/カラーの複写機、プリンタ、ファクシミリ装置やこれらの複合機(MFP)などいずれであってもよい。
【0137】
画像形成装置のハードウェア構成は上述に限られるものではなく、画像処理が種々の制御回路により行われるようにしてもよい。
【0138】
また、本発明に係る画像処理装置は、画像形成装置に用いられるものに限られない。例えば、本発明は、画像データを読み取るスキャナ装置や、撮像装置や、画像データ送受信装置など、種々の装置に用いられる画像処理装置においても適用可能である。
【0139】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアによって行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。
【0140】
上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザに提供することにしてもよい。プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。上記のフローチャートで文章で説明された処理は、そのプログラムに従ってCPUなどにより実行される。
【0141】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0142】
1 画像形成装置
3 画像形成部
4,4a,4b レーザ光源
11 CPU
13a 制御プログラム
21 画像処理部
21a 誤差拡散処理部
51 加算部
53 比較部
55 反転処理部(反転手段の一例)
57 減算部
59 誤差積分部
61 基準値算出部(取得手段の一例)
63 2値化結果記憶部(記憶手段の一例)
65 ドットカウント部(カウント手段の一例)
67 判定部
69 強制処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、複数の光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する画像処理装置であって、
前記入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての前記誤差拡散処理の処理結果を記憶する記憶手段と、
前記複数の光源のそれぞれに対応する領域毎に、前記記憶手段により記憶された前記処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求めるカウント手段と、
前記注目画素の濃度に応じた基準値を取得する取得手段と、
前記カウント手段により求められたカウント値と前記取得手段により取得された基準値とに基づいて、前記注目画素についての前記誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転する反転手段とを備える、画像処理装置。
【請求項2】
前記記憶手段は、前記入力データについての副走査方向が主走査方向よりも長くなるように設定された領域について、前記処理結果の記憶を行う、請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記基準値は、前記入力データのうちハイライト領域においてドットがより均等に分配されるように設定されている、請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記複数の光源は、2つの光源であり、
前記2つの光源のそれぞれに対応する2つの領域は、前記入力データについて副走査方向に奇数番目に位置するラインである領域と、前記入力データについて副走査方向に偶数番目に位置するラインである領域とである、請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記複数の光源により像担持体に潜像を形成することで用紙に画像を形成する画像形成部と、
請求項1から4のいずれかに記載の画像処理装置とを備え、
前記画像形成部は、前記画像処理装置から出力された出力データに基づいて前記画像形成を行う、画像形成装置。
【請求項6】
入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、複数の光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する画像処理装置の制御方法であって、
前記複数の光源に対応する領域毎に、前記入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての前記誤差拡散処理の処理結果を記憶する記憶ステップと、
前記複数の光源に対応する領域毎に、前記記憶ステップにより記憶された前記処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求めるカウントステップと、
前記注目画素の濃度に応じた基準値を取得する取得ステップと、
前記カウントステップにより求められたカウント値と前記取得ステップにより取得された基準値とに基づいて、前記注目画素についての前記誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転する反転ステップとを備える、画像処理装置の制御方法。
【請求項7】
入力データに対して誤差拡散処理を行って低値化し、複数の光源を用いて像担持体に潜像を形成する画像形成装置で画像形成が行われる出力データを出力する画像処理装置の制御プログラムであって、
前記複数の光源に対応する領域毎に、前記入力データのうちの処理対象である注目画素の周辺の所定の範囲の画素についての前記誤差拡散処理の処理結果を記憶する記憶ステップと、
前記複数の光源に対応する領域毎に、前記記憶ステップにより記憶された前記処理結果に基づいて、ドット数に関するカウント値を求めるカウントステップと、
前記注目画素の濃度に応じた基準値を取得する取得ステップと、
前記カウントステップにより求められたカウント値と前記取得ステップにより取得された基準値とに基づいて、前記注目画素についての前記誤差拡散処理の処理結果を強制的に反転する反転ステップとをコンピュータに実行させる、画像処理装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図10】
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【図5】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−195857(P2012−195857A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−59691(P2011−59691)
【出願日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】