説明

画像処理装置、表示装置、画像処理方法、画像処理プログラム、記録媒体

【課題】対象画像に対して背景色を描画する等の画像処理を施す範囲を、ユーザがマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定することが可能な表示装置を実現する。
【解決手段】表示装置100では、タッチパネル式表示部10の異なる2点に指等が接触した場合に、接触した上記2点の位置座標を位置検出部21bが検出し、2点間の距離Aをサイズ・角度検出部21dが算出する。そして、画像処理部22cが、短辺の長さがAであり長辺の長さが2Aであるような黒板消しアイコンがアイコン表示部22bにより表示される領域を、消去する(背景色に描画する)領域として設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に、画像を処理する画像処理装置、画像処理方法、画像処理プログラムおよびコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ等の表示装置のタッチパネル化や、ノートPC等の情報処理装置にインストールされるOSや画像編集ソフトウェアのタッチパネル機能への対応等に伴い、画像編集ソフトウェアの操作性が非常に向上してきている。
【0003】
すなわち、画像編集ソフトウェアにおいては、マウスやタブレットペンなどのポインティングデバイスを操作することにより画像を編集するのが一般的であるが、タッチパネル機能に対応した画像編集ソフトウェアを用いると、ユーザは、タッチパネル操作により直接キャンパスに絵を描くような感覚で画像を編集することができる。
【0004】
さらに、タッチパネルは、当初、シングルタッチのみに対応するタッチパネルしか存在しなかったが、最近発売されているノートPCやディスプレイにはタッチパネルがマルチタッチに対応したものもある。また、これに伴い、最近発売されているOSや画像処理ソフトウェアもマルチタッチ対応を謳ったものがある。
【0005】
そして、マルチタッチ対応の画像編集ソフトウェアには、マルチタッチの操作により表示されている画像を回転したり拡大や縮小をしたりすることができるなど、画像編集ソフトウェアの操作性が優れたものとなっている。
【0006】
ポインティングデバイスで画像を編集する画像編集ソフトウェアとしては、例えば、特許文献1に記載の画像処理装置に記録されている画像処理のプログラムが挙げられる。このプログラムでは、画像に筆書き処理を行うための筆パターン画像を編集可能であり、筆パターン画像の編集における削除処理のための消しゴムの大きさを所定の異なる大きさの中から選択できるようになっている。
【0007】
また、タッチパネル操作による画像の編集が可能な画像編集ソフトウェアとしては、特許文献2に記載のPCにインストールされた絵描きソフトウェアが挙げられる。特許文献2に記載の絵描きソフトウェアでは、PCに接続された表示装置のタッチパネルが押圧されている間、一定時間ごとに消しゴムアイコンの大きさを段階的に変化させることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−109557号公報(平成14年4月12日公開)
【特許文献2】特開平3−286267号公報(平成3年12月17日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来の構成では、画像上で消しゴムアイコンが掃過された範囲を削除する(すなわち、背景色にする)ことができるものの、消しゴムアイコンの大きさをたかだか段階的にしか設定できないという問題があった。
【0010】
また、マルチタッチ対応の画像編集ソフトウェアにおいても、ユーザがマルチタッチにより自由に画像処理を施す範囲を設定することができないという問題があった。
【0011】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、画像処理を施す範囲をユーザがマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定することが可能な画像処理装置を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の画像処理装置は、上記課題を解決するために、画像を表示する表示画面上の異なる2箇所に対象物が接触した場合に、接触した上記2箇所の位置を検出する位置検出手段と、上記位置検出手段が検出した上記2箇所の位置の間の距離を算出する距離算出手段と、画像処理を施すべき処理対象領域のサイズを、上記距離算出手段が算出した距離に応じたサイズに設定する領域設定手段と、を備えている、ことを特徴としている。
【0013】
上記の構成によれば、ユーザが表示画面上の異なる2箇所の位置に指先を接触させた場合に、画像処理装置は、接触した2箇所の位置の距離を算出し、画像処理を施す領域のサイズを、算出した距離に応じたサイズに設定する。
【0014】
したがって、画像処理装置は、ユーザに、画像処理を施す範囲をマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定させることが可能であるという効果を奏する。
【0015】
本発明の画像処理方法は、上記課題を解決するために、画像を表示する表示画面上の異なる2箇所の位置に対象物が接触した場合に、接触した上記2箇所の位置を検出する位置検出工程と、上記位置検出工程にて検出された上記2箇所の位置の間の距離を算出する距離算出工程と、画像処理を施すべき処理対象領域のサイズを、上記距離算出工程にて算出された距離に応じたサイズに設定する領域設定工程と、を含んでいることを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、本発明の画像処理方法は、本発明の画像処理装置と同様の作用効果を奏する。
【0017】
本発明の画像処理装置は、上記領域設定手段が設定する上記処理対象領域を、上記画像に対して背景色を描画する領域とすることが望ましい。
【0018】
上記の構成によれば、画像処理装置は、ユーザに、画像中の背景色を描画する範囲をマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定させることが可能であるというさらなる効果を奏する。
【0019】
本発明の画像処理装置は、上記距離算出手段が算出した距離に応じたサイズのアイコンを上記表示画面に表示する表示制御手段をさらに備え、上記領域設定手段は、上記表示制御手段により表示されたアイコンが掃過する領域に背景色を描画することが望ましい。
【0020】
上記の構成によれば、画像処理装置は、背景色を描画する領域をアイコンによりユーザに視認させることができるというさらなる効果を奏する。
【0021】
本発明の画像処理装置は、上記表示制御手段が、上記アイコンが表示される領域の境界線上に上記位置検出手段が検出した上記2箇所の位置が含まれるように、上記アイコンを表示することが望ましい。
【0022】
上記の構成によれば、画像処理装置は、ユーザに、黒板消しや消しゴム等を握るような感覚で背景色を描画する領域を指定させることができる。
【0023】
本発明の画像処理装置は、上記表示制御手段が、表示中の上記アイコンのサイズを、上記アイコンが表示された後に上記距離算出手段が算出した距離に応じたサイズに変更することが望ましい。
【0024】
上記の構成によれば、画像処理装置は、変更後のアイコンのサイズに応じて画像処理を施す領域のサイズを変更する。
【0025】
したがって、上記画像処理装置は、画像処理を施す領域のサイズをユーザに手軽に再設定させることができるというさらなる効果を奏する。
【0026】
本発明の画像処理装置は、上記アイコンの形状が長方形であり、上記表示制御手段が表示中の上記アイコンのサイズを変更するのは、表示中の上記アイコンの各長辺または各短辺への接触を上記位置検出手段が検出した場合に限られていることが望ましい。
【0027】
上記の構成によれば、画像処理装置は、ユーザが不用意に画像処理を施す領域のサイズを再設定してしまうことを防ぐことができるというさらなる効果を奏する。
【0028】
本発明の画像処理装置は、上記距離算出手段が算出した距離を表わすオブジェクトを上記表示画面に表示する表示制御手段をさらに備えていることが望ましい。ここで、オブジェクトとは、例えば、位置検出手段が検出した2箇所の位置を指し示す両端矢印であってもよいし、距離を数値として表わすものであってもよい。
【0029】
上記の構成によれば、画像処理装置は、画像処理を施す領域のサイズを設定しようとするユーザに、設定されることになる領域のサイズを把握させることができるというさらなる効果を奏する。
【0030】
本発明の画像処理装置は、上記画像処理を施す旨の指示をユーザから受け付ける指示受付手段を備え、上記指示受付手段が上記指示を受け付けてから規定の時間が経過するまでに上記位置検出手段が上記2箇所の位置を検出しない場合には、上記領域設定手段が、上記処理対象領域のサイズを規定のサイズに設定することが望ましい。
【0031】
上記の構成によれば、画像処理装置は、画像処理を施す領域のサイズを規定のサイズにすることが多いユーザにとって、領域のサイズをマルチタッチにより設定する手間を減らすことができるというさらなる効果を奏する。
【0032】
本発明の画像処理装置は、上記領域設定手段が、上記距離算出手段が算出した距離の2乗に比例するように、上記処理対象領域のサイズを設定することが望ましい。
【0033】
上記の構成によれば、画像処理装置は、ユーザが表示画面上の2箇所に指先を接触させた場合、2箇所の位置の間の距離の2乗に比例するサイズの処理対象領域を設定する。ここで、2次元で表わされるオブジェクトのサイズを1次元の量で指定する場合には、オブジェクトのサイズが1次元の量の2乗に比例することが一般的である。
【0034】
したがって、ユーザの感覚に素直な態様で、画像処理を施すべき処理対象領域のサイズをユーザに設定させることができるというさらなる効果を奏する。
【0035】
本発明の画像処理装置は、上記位置検出手段が、2箇所の位置を検出した後に、さらに、該2箇所の位置と少なくとも1箇所以上異なる2箇所の位置への接触を検出した場合、上記領域設定手段が、後に検出された2箇所の位置を結ぶ直線の接触角度から、先に検出された2箇所の位置を結ぶ直線の接触角度を減じて得られる角度だけ、上記処理対象領域を回転させることが望ましい。
【0036】
上記の構成によれば、画像処理装置は、ユーザに、画像処理を施すべき処理対象領域を手軽に回転移動させることができるというさらなる効果を奏する。
【0037】
なお、本発明は、上記画像処理装置に上記表示画面を備えた表示装置として実現してもよい。
【0038】
また、上記画像処理装置は、コンピュータによって実現してもよい。この場合、コンピュータを上記各手段として動作させることにより上記画像処理装置をコンピュータにおいて実現する画像処理プログラム、およびその画像処理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体も、本発明の範疇に入る。
【発明の効果】
【0039】
本発明の画像処理装置は、以上のように、画像処理を施す範囲をユーザがマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】(a)は本発明の画像処理装置の一実施形態に係る表示装置の構成を示したブロック図であり、(b)は表示装置の外観を示した図である。
【図2】表示装置のコマンド記憶部に記録されている各コマンドに関する情報を表として示した図である。
【図3】(a)(b)は、消しゴムコマンドのジェスチャーの例を示した図である。
【図4】(a)(b)は、サイズ指定矢印の長さをピンチインやピンチアウトで変更可能であることを示した図である。
【図5】(a)は黒板消しアイコンの外観を示した図であり、(b)は黒板消しアイコンの機能を表わす図である。
【図6】(a)は黒板消しアイコンの表示角度が変更可能であることを示した図であり、(b)は黒板消しアイコンのサイズが変更可能であることを示した図である。
【図7】表示装置の消しゴムコマンドに関する動作の前半部分を示すフローチャートである。
【図8】表示装置の消しゴムコマンドに関する動作の後半部分を示すフローチャートである。
【図9】(a)(b)は、表示装置のタッチパネル式表示部への指先の接触位置と、コンパスコマンドにより表示されるサイズ指定矢印の位置と、の関係を示した図であり、(c)は接触位置と、描画する円弧の位置と、の関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の画像処理装置の一実施形態について図に基づいて説明する。図1(a)は、本実施形態の表示装置100の概略構成を示すブロック図であり、図1(b)は表示装置100の外観を示した図である。
【0042】
図1(b)に示すように、本実施形態に係る表示装置100は、タッチパネル式表示部10を備えている。また、タッチパネル式表示部10のタッチパネルはマルチタッチに対応している。すなわち、表示装置100は、表示画面上の異なる2点に指など(対象物)が同時に接触した場合に、その2点の位置を検出することができる。
【0043】
また、表示装置100は、予め登録されている各種コマンドに応じた画像処理を表示中の画像(以下、「対象画像」と呼称する)に施すことができるようになっており、ユーザからタッチパネル式表示部10を介してコマンドの指定を受け付けることができるようになっている。
【0044】
以下、表示装置100の構成について図1(a)を参照しながら説明する。
【0045】
(表示装置100の構成)
図1(a)に示すように、表示装置100は、タッチパネル式表示部10、制御部20、および記憶部30を備えている。
【0046】
タッチパネル式表示部10は、表示部11およびタッチパネル12を備えている。
【0047】
表示部11は、対象画像を表示する表示画面である。また、タッチパネル12は、表示部11に指などが接触している間、連続的に、接触した位置を検出するとともにその位置を示す位置情報を制御部20に出力する。
【0048】
制御部20は、入力検出部21、表示制御部22、および時間測定部23を備えている。
【0049】
入力検出部21は、タッチパネル式表示部10からの位置情報に基づいて、タッチパネルへの接触の有無および接触した位置の座標を検出する。また、入力検出部21は、座標を連続的に検出することにより、ユーザにより特定のコマンドの指定が行われたことを検出することができる。入力検出部21は、接触検出部21a、位置検出部21b、コマンド検出部21cおよびサイズ・角度検出部21dを備えている。
【0050】
表示制御部22は、表示部11への対象画像の表示を制御するものであり、位置決定部22a、アイコン表示部22b、および画像処理部22cを備えている。表示制御部22は、対象画像を表示部11の表示画面全体に表示することも、表示画面内の一部の領域に表示することもできるようになっている。
【0051】
時間測定部23は、特定の状態になった時からの経過時間を計測する。この計測は、該特定の状態を維持しなくなるか、あるいは、所定の時間を経過するまで行われる。なお、「特定の状態になった時」とは、位置検出部21bが位置座標を検出しなくなった時や、位置検出部21bが同じ位置座標を連続して検出するようになった時が挙げられる。
【0052】
記憶部30は、各種情報を記録するメモリであり、入力座標記憶部31、図形描画情報記憶部32、およびコマンド記憶部33を備えている。
【0053】
以下、入力検出部21、表示制御部22、および記憶部30の要部構成について説明する。
【0054】
(入力検出部21)
接触検出部21aは、タッチパネル12から位置情報が送信されている場合にタッチパネルへの接触があることを検出し、タッチパネル12から位置情報が送信されていない場合にタッチパネルへの接触がないことを検出する。
【0055】
位置検出部21bは、接触検出部21aがタッチパネル12への接触があることを検出した場合に、検出した接触が対象画像上での接触であったか否かをタッチパネル12から送信された位置情報に基づいて判定し、対象画像上での接触であったと判定した場合、位置情報に基づいて対象画像上における(すなわち、対象画像の左上を原点とした場合の)接触位置を示す位置座標を検出する。位置検出部21bは、この位置座標を同時に2点検出することが可能である。
【0056】
コマンド検出部21cは、入力座標記憶部31を参照することにより位置検出部21bが検出する位置座標を連続的にモニタリングし、各位置座標を結ぶ軌跡の形状がコマンド記憶部33に予め登録されているコマンドの軌跡(ジェスチャー)とマッチングすることを検出する。これにより、コマンド検出部21cは、マッチングすることを検出したジェスチャーに対応するコマンドの指定が行われたことを検出する。
【0057】
サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが位置座標を同時に2点検出した場合に、検出した2点間の距離を算出する。
【0058】
(表示制御部22)
位置決定部22aは、時間測定部23が計測した経過時間が所定の時間になったときに位置検出部21bが検出した位置座標を、アイコン表示部22bおよび画像処理部22cに参照させる座標として決定する。
【0059】
アイコン表示部22bは、位置決定部22aが決定した2点の位置座標をアイコンが表示される領域の境界線上に含むように、サイズ決定部21dが決定したサイズのアイコンを表示する。例えば、消しゴムコマンドが指定された場合、画像処理部22c、位置決定部22aが決定した2点を結ぶ線分を一辺とし、他辺をその2倍の長さとする長方形の黒板消しアイコンを表示する。
【0060】
また、アイコン表示部22bは、アイコンだけでなく、アイコンのサイズをユーザに選択させるためのサイズ指定矢印(オブジェクト)を表示するようになっている。ユーザは、サイズ指定矢印が示す2点に指を接触させてピンチインやピンチアウトを行うことによりアイコンのサイズを選択できるが、アイコン表示部22bは、ピンチインやピンチアウトの間に接触中の2点を指すようにサイズ指定矢印を再描画するようになっている。
【0061】
画像処理部22cは、位置決定部22aが決定した位置座標に基づいて対象画像中の画像処理を施す範囲(処理対象領域)を決定し、その範囲に画像処理を施す。この範囲は位置決定部22aが決定した2点を結ぶ線分の長さに応じた範囲となる。例えば、消しゴムコマンドが指定された場合、画像処理部22cは、対象画像中の消去する範囲を黒板消しアイコンが表示される範囲と同一とするようになっている。
【0062】
(記憶部30)
入力座標記憶部31は、位置検出部21bが検出した位置座標を一定期間保持する記憶領域である。
【0063】
図形描画情報記憶部32は、対象画像の画像情報を保持する記憶領域である。
【0064】
コマンド記憶部33は、コマンド毎に、ジャスチャーの情報と、表示するアイコンのデフォルトサイズと、を関連づけて保持する記憶領域である。コマンド記憶部33には、図2に示すように、消しゴムコマンドや定規コマンド、図示はしていないがコンパスコマンド等が登録されている。
【0065】
また、コマンド記憶部33には、各コマンドについて、アイコン表示部22bが実際に表示するアイコンの中心位置の座標、表示サイズおよび表示角度が記録されるようになっている。ここで、表示角度とは、位置検出部21bが検出した2点を結ぶ線分が表示画面の縦軸方向となす角度として定義される。
【0066】
消しゴムコマンドは、図5(b)に示すように、対象画像中の黒板消しアイコンが掃過した範囲を消去する(背景色にする)ためのコマンドである。定規コマンドは定規上の選択された2点間に直線を引くためのコマンドであり、コンパスコマンドは円弧上の曲線を描画するためのコマンドである。
【0067】
次に、タッチパネル式表示部10の対象画像上にユーザが指を接触させた場合の表示装置100の動作について図7および図8を参照しながら説明する。図7および図8は、表示装置100の動作を示すフローチャートである。なお、以下では、ユーザが消しゴムコマンドを指定して対象画像内を消去する場合の動作を中心に説明する。
【0068】
(表示装置100の動作)
最初に、接触検出部21aは、タッチパネル式表示部10への接触の有無を検出する(ステップS1)。接触を検出した場合(ステップS1においてYES)、位置検出部21bは、対象画像上における接触位置を示す位置座標を検出して(ステップS2)、入力座標記憶部31に記録する。一方、接触がないことを検出した場合(ステップS1においてNO)、ステップS1に戻る。
【0069】
ステップS2の次に、コマンド検出部21cは、現在までの一定期間内におけるS2の処理で検出した入力座標記憶部31に記録されている複数の位置座標と、コマンド記憶部33に記録されているジェスチャーの情報と、に基づいて、コマンドの指定が検出されたか否かを判定する(ステップS3)。例えば、上記一定期間内に、ユーザがタッチパネル式表示部10に表示されている対象画像上で図3(a)に示すような軌跡を描くように指を移動させた場合、コマンド検出部21cは、入力座標記憶部31に記録されている複数の位置情報を結んだ軌跡が、コマンド記憶部33に記録されている消しゴムコマンドのジェスチャーとマッチングすることを検出する。この場合、コマンド検出部21cは、消しゴムコマンドの指定を検出することになる。
【0070】
コマンドの指定が検出されなかったと判定した場合(ステップS3においてNO)、その旨の通知をコマンド検出部21cから受けた画像処理部22cは、検出した位置座標に点を描画してステップS1に戻る。
【0071】
一方、コマンドの指定が検出されたと判定した場合(ステップS3においてYES)、ステップS5に進む。入力コマンドが消しゴムコマンド以外のコマンドである場合(ステップS5においてNO)、制御部20はその他のコマンド処理を実行して(ステップS6)、ステップS1に戻る。
【0072】
入力コマンドが消しゴムコマンドである場合(ステップS5においてYES)、ステップS7に進む。
【0073】
コマンド検出部21cから通知を受けたアイコン表示部22bは、コマンド記憶部33に記録されている消しゴムコマンドに関するデフォルトサイズ(規定のサイズ):30x60(短辺:30ドット、長辺:60ドット)を参照し、図4(a)または図4(b)の左側に示すような上記短辺の長さの両端矢印(以下、「サイズ指定矢印」と呼称する)を表示部111の対象画像上に表示する(ステップS7)。また、時間測定部23は、S7の処理の時点からの経過時間を計測する。なお、図4(a)や図4(b)に示すように、片手や両手でピンチインやピンチアウトを行うことにより、サイズ指定矢印の長さを変えることが可能である。
【0074】
接触検出部21aは、タッチパネル式表示部10への接触の有無を検出する(ステップS8)。接触を検出した場合(ステップS8においてYES)、その旨の通知を接触検出部21aから受けた位置検出部21bは、対象画像上における接触位置を示す位置座標を検出する(ステップS10)。位置検出部21bがステップS10において1点のみを検出した場合、または、検出した2点の位置座標がサイズ指定矢印の両端を示す座標でないとサイズ・角度検出部21dが判定した場合(ステップS11においてNO)、S9の処理に進む。また、接触検出部21aがタッチパネル式表示部10への接触がないことを検出した場合(ステップS8においてNO)もS9の処理に進む。
【0075】
ステップS9において、時間測定部23は、経過時間が所定の時間に達したか否かを判定する。達していないと判定した場合(S9においてNO)、S8の処理に戻る。一方、達していると判定した場合(S9においてYES)、サイズ・角度検出部21dは、コマンド記憶部33に記録されている黒板消しアイコンのデフォルトサイズを参照し、コマンド記憶部33に、黒板消しアイコンの表示サイズとして“30x60”、表示角度として”0度”、中心位置として”(X−A、Y+A/2)”を記録する(ステップS12)。ここで、(X、Y)はサイズ指定矢印の上端の座標である。
【0076】
一方、位置検出部21bがステップS10において2点を検出し、かつ、検出した2点の位置座標がサイズ指定矢印の両端を示す座標であるとサイズ・角度検出部21dが判定した場合(ステップS11においてYES)、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが検出した2点間の距離を算出する(ステップS13)。そして、サイズ・角度検出部21dは、検出した2点間の距離が変更されたか否かを判定する(ステップS14)。
【0077】
距離が変更されたと判定した場合(ステップS14においてYES)、その旨の通知を受けたアイコン表示部22bは、ステップS10の処理で検出した2点を示すようにサイズ指定矢印の長さを変更する(ステップS15)。その後、ステップS8の処理に戻る。なお、S15の処理が行われるタイミングで、時間測定部23は、経過時間の計測を開始する。
【0078】
距離が変更されていないと判定した場合(ステップS14においてNO)、ステップS16に進む。そして、検出する2点間の距離が一定になってからの時間が所定の時間未満である場合(ステップS16においてNO)、ステップS13に戻り、所定の時間に達した場合(ステップS16においてYES)、ステップS17の処理に進む。このように動作するために、ステップS14において連続して2回、検出した2点間の距離が変更されなかったとサイズ・角度検出部21dが判定し終えた時点から、時間測定部23は、経過時間の計測を開始する。そして、時間測定部23は、計測中の経過時間が上記所定の時間に達したと判定した場合にステップS17の処理に進むことになる。
【0079】
ステップS17において、サイズ・角度検出部21dは、コマンド記憶部33に、黒板消しアイコンの表示サイズとして“Ax2A”、表示角度として”0度”を記録する。ここで、Aはサイズ・角度検出部21dが最後に算出した2点間の距離である。また、サイズ・角度検出部21dは、コマンド記憶部33に、中心位置として”(X−A、Y+A/2)”を記録する。そして、サイズ・角度検出部21dは、アイコン表示部22bに黒板消しアイコンを表示するよう通知する。
【0080】
ステップS18において、通知を受けたアイコン表示部22bは、コマンド記憶部33に記録されている、黒板消しアイコンの中心位置、表示サイズ、および表示角度の各値を参照し、これらの値に基づいて黒板消しアイコンを表示部11に表示する。なお、ステップS17の説明から明らかなように、表示される黒板消しアイコンは、図5(a)に示すように長辺の短辺に対する比率が常に2(一定)であり、そのサイズは、2点間の距離の2乗に比例するようになっている。また、ステップS9においてYESと判定され、かつ、ステップS11において一度もYESと判定されなかった場合には、表示される黒板消しアイコンのサイズはデフォルトサイズ(規定のサイズ)となることは明らかである。
【0081】
以上が黒板消しアイコンを表示するまでの表示装置100の動作であるが、ここからは、図6(a)に示すような黒板消しアイコンの回転(表示角度の変更)や図6(b)に示すような黒板消しアイコンのサイズ変更に関する処理を中心に表示装置100の動作を説明する。なお、図6(a)に示すように、回転の中心(図中で黒丸の部分)は、黒板消しアイコンの中心に一致するようになっている。また、図6(b)に示すように、サイズ変更は、黒板消しアイコンの一方の短辺と他方の短辺とに指を接触させてピンチイン・ピンチアウトすることにより行われる。
【0082】
ステップS19において、接触検出部21aは、タッチパネル式表示部10への接触の有無を検出する。なお、ステップS19において接触を連続して2回検出しなかった時点で、時間測定部23は、経過時間の計測を開始する。接触していないことを検出した場合(ステップS19においてNO)、ステップS20において、時間測定部23は、経過時間が所定の時間に達したか否かを判定する。達していないと判定した場合(S20においてNO)、S19の処理に戻る。一方、達していると判定した場合(S20においてYES)、アイコン表示部22bは、黒板消しアイコンを消去するとともに、コマンド記憶部33が保持している消しゴムコマンドに関する情報(中心位置、表示サイズ、および表示角度の情報)を削除して処理を終了する。
【0083】
一方、タッチパネル式表示部10への接触を検出した場合(ステップS19においてYES)、その旨の通知を接触検出部21aから受けた位置検出部21bは、対象画像上における接触位置を示す位置座標を検出する(ステップS21)。位置検出部21bがステップS21において2点の位置座標を検出した場合(ステップS22においてYES)ステップS19に戻り、1点の位置座標しか検出しなかった場合(ステップS22においてNO)、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが検出した2点の位置座標がアイコンの両端にあるか否かを判定する(ステップS23)。具体的には、サイズ・角度検出部21dは、一方の位置座標が黒板消しアイコンの一方の短辺上にあり、かつ、他方の位置座標が他方の短辺上にある場合に、「検出した位置座標がアイコンの両端にある」と判定し、そうでない場合に「検出した位置座標がアイコンの両端にない」と判定する。
【0084】
「2点の位置座標がアイコンの両端にある」と判定された場合(ステップS23においてYES)、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが検出した2点間の長辺方向成分の距離を算出する(ステップS30)。ここで、「2点間の長辺方向成分の距離」とは、長辺に平行な座標軸をi軸とし、短辺に平行な座標軸をj軸とした場合に定まる2点を結ぶベクトルのi成分の絶対値である。
【0085】
その後、サイズ・角度検出部21dは、コマンド記憶部33に記録されている、黒板消しアイコンの表示サイズを“A’x2A’”に更新する(ステップS31)。ここで、2A’は直前のステップS30においてサイズ・角度検出部21dが算出した2点間の長辺方向成分の距離である。ステップS31の処理を終了すると、ステップS32の処理に進むことになる。
【0086】
一方、ステップS23において「2点の位置座標がアイコンの両端にない」と判定された場合、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが検出した2点の位置座標を結ぶ直線の傾きmに基づいて、対象画像の水平右方向に対する該直線の角度θ=arctan(m)*2/π(0≦θ<180°、以下、「接触角度」と呼称する)を算出する(ステップS24)。そして、サイズ・角度検出部21dは、接触角度の変更があったか否かを判定する(ステップS25)。
【0087】
接触角度の変更があったと判定された場合(S25においてYES)、サイズ・角度検出部21dは、ステップS24において検出した接触角度から90°を引いた値をコマンド記憶部33に表示角度として記録する(ステップS26)。例えば、接触角度が90°から100°に変更されたことを検出した場合、図2(b)に示すように、表示角度を10°に設定する。ステップS26の後、ステップS29に進む。
【0088】
接触角度の変更がなかったと判定された場合(S25においてNO)、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが直前のステップS21にて検出した2点間の距離を算出し、表示中の黒板消しアイコンの短辺の長さと一致するか否かを判定する(ステップS27)。すなわち、コマンド記憶部33に表示サイズとして記録されている値を参照し、参照した値が示す短辺の長さに位置検出部21bが直前のステップS21にて検出した2点間の距離が一致するか否かを判定する。例えば、図2(b)に示すように表示サイズが“40x80”である場合、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが検出した2点間の距離が40であるか否かを判定することになる。短辺の長さと一致しないと判定された場合(ステップS27においてNO)、ステップS19に戻る。
【0089】
一方、短辺の距離と一致すると判定された場合(ステップS27においてYES)、サイズ・角度検出部21dは、直前のステップS21の処理にて検出した2点の位置座標に基づき中心位置の検出を行う(ステップS28)が、具体的には、以下のように処理を行う。
【0090】
すなわち、直前のステップS21にて検出した2点の位置座標が表示中の黒板消しアイコンの長辺上にあるか否かを判定し、長辺上にあると判定した場合、コマンド記憶部33に記録されている中心位置の値を、検出すべき中心位置とする。ここで、2点の位置座標が長辺上にあるか否かは、コマンド記憶部33に記録されている中心位置、表示サイズ、および表示角度の各値を参照することにより判定可能であることは明らかである。
【0091】
2点の位置座標が長辺上にない場合、直前のステップS21にて検出した2点の位置座標を結ぶ線分が、前回のステップS28の処理の対象になった2点の位置座標を結ぶ線分から平行移動した距離(a、b)を算出する。そして、サイズ・角度検出部21dは、コマンド記憶部33に記録されている中心位置の値を、x成分にaを加え、y成分にbを加えることにより更新する。
【0092】
以上、ステップS28の具体的な処理を説明したが、その後、アイコン機能の実行を行う(ステップS29)。すなわち、画像処理部22cは、コマンド記憶部33に記録されている中心位置、表示サイズ、および表示角度の各値を参照する。そして、画像処理部22cは、これらの値に応じて定まる範囲(次のステップS32において黒板消しアイコンを描画する範囲)を消去(背景色に)する画像処理を、図形描画情報記憶部32に記録されている対象画像に施す。
【0093】
ステップS32において、アイコン表示部22bは、コマンド記憶部33に記録されている中心位置、表示サイズ、および表示角度の各値を参照し、これらの値に基づいて定まる範囲に黒板消しアイコンを表示し、ステップS19に戻る。具体的には、図2(b)の例で言えば、アイコン表示部22bは、黒板消しアイコンを10°の表示角度で表示するようになる。なお、ステップS25において接触角度が90°から100°に変更されたことを検出していた場合、ステップS32の直前には黒板消しアイコンが0°の表示角度で表示されていたことになる。すなわち、ステップS32の処理によって、変更後の接触角度100°から変更前の接触角度90°を引いた角度10°だけ黒板消しアイコンが回転したことになる。
【0094】
また、ステップS31およびステップS32からわかるように、画像処理部22cは、黒板消しアイコンが掃過する範囲を消去することになる。
【0095】
(表示装置100の利点)
以上のように、表示装置100では、消しゴムコマンドが指定された場合、タッチパネル式表示部10の異なる2点に指等が接触した場合に、接触した上記2点の位置座標を位置検出部21bが検出し、2点間の距離Aをサイズ・角度検出部21dが算出する。そして、画像処理部22cは、短辺の長さがAであり長辺の長さが2Aであるような黒板消しアイコンがアイコン表示部22bにより表示される領域を、消去する(背景色に描画する)領域として設定する。
【0096】
したがって、対象画像に対して背景色を描画する範囲を、ユーザがマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定することが可能である。
【0097】
(コンパスコマンドについて)
ここでは、コンパスコマンドの機能について簡単に説明する。
【0098】
コンパスコマンドは前述したように表示装置100に円弧上の曲線を描画させるためのコマンドである。ユーザは、コンパスコマンドを指定し、タッチパネル式表示部10に表示されている対象画像上に2本の指の指先を接触させ、一方の指先を同じ位置に接触させながら他方の指先を前述した接触角度が変化するように動かすことにより、表示装置100に円弧上の曲線を描画させることが可能である。すなわち、正確な円弧を描くように他方の指先を動かさなくとも、正確な円弧を表示装置100に描画させることが可能になっている。
【0099】
また、表示装置100に円弧を描画させる前(すなわち、接触角度が変化するように他方の指先を動かし始める前)に、接触させている指先を、指先間を結ぶ直線上で移動させることにより、描画させる円弧の中心や半径を指定することができるようになっている。
【0100】
以下、コンパスコマンドが指定される場合の表示装置100の動作を、図9を参照しながら説明する。図9(a)および図9(b)は、タッチパネル式表示部10への指先の接触位置と、コンパスコマンドにより表示されるサイズ指定矢印の位置と、の関係を示した図である。また、図9(c)は、接触位置と、描画する円弧の位置と、の関係を示した図である。
【0101】
コンパスコマンドの指定を検出すると、時間測定部23は、経過時間の計測を開始する。経過時間が所定の時間に達した場合にはコンパスコマンドに関する動作をキャンセルし、経過時間が所定の時間に達する前に2点の位置座標を位置検出部21bが検出すると、以下の処理を行う。
【0102】
すなわち、図9(a)に示すように、アイコン表示部22bは、2点の位置座標(X1,Y1)、(X2,Y2)を指すサイズ指定矢印を表示部11に表示し、2点間の距離rをコマンド記憶部33に記録しておく。
【0103】
そして、アイコン表示部22bは、次に位置検出部21bが2点(点Q,点R)の位置座標を検出した場合に、その2点の位置座標が共に、(X1,Y1)、(X2,Y2)を結ぶ直線L上にあるか否かを判定する。図9(b)に示すように、アイコン表示部22bは、2点の位置座標が共に直線L上にあると判定した場合、判定の対象となった2点の位置座標をサイズ指定矢印が指すようにサイズ指定矢印を再描画するとともに、2点間の距離rの値を更新する。この判定処理、再描画処理、および更新処理は、判定処理において2点の位置座標のうち1点以上の位置座標が直線L上にないと判定されるまで行われる。
【0104】
一方、判定処理において1点以上の位置座標が直線L上にないと判定された場合、2点(P,Q)の位置座標(判定対象座標)のうち一方の位置座標が、前回直線L上にあると判定された2点の位置座標(被判定対象座標)のうちの一方の位置座標と一致するか否かを判定する。一致しないと判定された場合にはコンパスコマンドに関する動作をキャンセルし、一致すると判定された場合(例えば、ユーザが一方の指先を同じ位置に接触させながら他方の指先を接触角度が変化するように動かしたような場合)には、以下の円弧描画処理を行う。
【0105】
画像処理部22cは、一致する一方(点Q)の位置座標を中心とする半径rの円周上の円弧であって、点Qから点Pへの半直線HLが円弧と交差する交点Sと被判定対象座標のうちの他方の位置座標Rとを結ぶ劣弧を表示部11に表示する。この表示処理を、図9(c)を参照しながらより具体的に説明すると以下の通りである。
【0106】
すなわち、画像処理部22cは、判定対象座標の点Q(X3,Y3)、点P(X5,Y5)について角度θ1=arctan(Y5−Y3/X5−X3)を算出し、点S(X6,Y6)=(r*cosθ1+X3,r*sinθ1+Y3)を算出する。そして、画像処理部22cは、点RQSにより定まる2つの円弧(優弧および劣弧)のうち劣弧の部分を描画色で描画することになる。
【0107】
以上の円弧描画処理は、点Qを含む2点の位置座標を位置検出部21bが検出している限り繰り返し行われる。すなわち、位置検出部21bがさらに点Q(X3,Y3)および点T(X7、Y7)を検出した場合、判定対象座標の点Q(X3,Y3)、点T(X7,Y7)について角度θ2=arctan(Y7−Y3/X7−X3)を算出し、点U(X8,Y8)=(r*cosθ2+X3,r*sinθ2+Y3)を算出する。そして、画像処理部22cは、点SQUにより定まる劣弧の部分を描画色で描画することになる。
【0108】
以上のように、表示装置100では、コンパスコマンドが指定された場合、タッチパネル式表示部10の異なる2点(点Q,点R)に指等が接触すると、接触した上記2点の位置座標を位置検出部21bが検出し、2点間の距離rをサイズ・角度検出部21dが算出する。そして、ユーザが点Q,点Pに指等を接触させた場合、画像処理部22cは、半径がrとなるような円弧の領域を描画色で描画する領域として設定する。
【0109】
したがって、対象画像に対して円弧を描画する範囲を、ユーザがマルチタッチにより自由に且つ手軽に設定することが可能である。
【0110】
(付記事項)
表示装置100は記憶部30を備えているものとしたが、表示装置100は記憶部30を必ずしも備えていなくともよい。すなわち、記憶部30を表示装置100に装填される外部メディアによって実現してもよい。
【0111】
また、上記実施形態では本発明の画像処理装置を表示装置100として実現したが、本発明の画像処理装置はこれに限定されない。すなわち、画像処理装置は、制御部20を備えているがタッチパネル式表示部10を備えていないPC等の情報処理装置(図示せず)として実現してもよい。この場合、本発明は、情報処理装置にタッチパネル式表示装置を別途接続することにより実施されることになる。
【0112】
また、消しゴムコマンドを指定するジェスチャーは、図3(a)に示すようなジェスチャーに限らず、図3(b)に示すようなバツマークのジェスチャーであってもよい。
【0113】
上記実施形態は、サイズ・角度検出部21dが「検出した位置座標がアイコンの両端にある」と判定するのは、一方の位置座標が黒板消しアイコンの一方の短辺上(端部)にあり、かつ、他方の位置座標が他方の短辺上(端部)にある場合であるものとしたが、これに限定されない。すなわち、一方の位置座標が黒板消しアイコンの一方の長辺上にあり、かつ、他方の位置座標が他方の長辺上にある場合に、「検出した位置座標がアイコンの両端にある」と判定するようにしてもよい。なお、このように判定した場合、ステップS30において、サイズ・角度検出部21dは、位置検出部21bが検出した2点間の短辺方向成分の距離を算出する(ステップS30)。ここで、「2点間の短辺方向成分の距離」とは、長辺に平行な座標軸をi軸とし、短辺に平行な座標軸をj軸とした場合に定まる2点を結ぶベクトルのj成分の絶対値である。
【0114】
また、2点の位置座標がサイズ指定矢印の両端にあるか、アイコンの両端にあるか、直線L上にあるか等の判定処理について説明したが、判定処理は、2点の位置座標がこれらの位置(サイズ指定矢印の両端、アイコンの両端、直線L上等)にあるか否かに基づいていなくともよい。すなわち、2点の位置座標が、これらの位置から規定の範囲内にあるか規定の範囲外にあるかに基づいて判定処理を行ってもよい。
【0115】
上記実施形態では、各コマンドについて定められたアイコンの具体例として、消しゴムコマンドに対する黒板消しアイコンについて述べ、その形状が長方形であるものと説明したが、アイコンの形状は任意の形状であってよい。
【0116】
さらに、上記実施形態では、画像処理部22cは、黒板消しアイコンが表示される領域と同じ領域を消去するものとしたが、必ずしもこのようになっていなくともよい。すなわち、黒板消しアイコンが表示される領域のサイズと、消去する領域のサイズと、は必ずしも一致しなくともよい。また、黒板消しアイコンが表示される領域と、アイコンが表示される領域とは、少なくとも一部が重なっていればよい。
【0117】
また、表示画面上の2点への接触を検出した場合に表示するオブジェクトの例としてサイズ指定矢印を示したが、サイズ指定矢印でなく他のオブジェクト(例えば、2点間の距離を数値として表わすオブジェクト)であってもよい。
【0118】
(プログラム、記録媒体)
最後に、表示装置100や情報処理装置の制御部20は、ハードウェアロジックによって構成してもよいし、次のようにCPUを用いてソフトウェアによって実現してもよい。
【0119】
すなわち、表示装置100や情報処理装置は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU(central processing unit)、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラム及び各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)などを備えている。そして、本発明の目的は、上述した機能を実現するソフトウェアである表示装置100や情報処理装置の制御プログラムのプログラムコード(実行形式プログラム、中間コードプログラム、ソースプログラム)をコンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体を、表示装置100や情報処理装置に供給し、そのコンピュータ(またはCPUやMPU)が記録媒体に記録されているプログラムコードを読み出し実行することによっても、達成可能である。
【0120】
上記記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、あるいはマスクROM/EPROM/EEPROM/フラッシュROM等の半導体メモリ系などを用いることができる。
【0121】
また、表示装置100や情報処理装置を通信ネットワークと接続可能に構成し、上記プログラムコードを、通信ネットワークを介して供給してもよい。この通信ネットワークとしては、特に限定されず、例えば、インターネット、イントラネット、エキストラネット、LAN、ISDN、VAN、CATV通信網、仮想専用網(virtual private network)、電話回線網、移動体通信網、衛星通信網等が利用可能である。また、通信ネットワークを構成する伝送媒体としては、特に限定されず、例えば、IEEE1394、USB、電力線搬送、ケーブルTV回線、電話線、ADSL回線等の有線でも、IrDAやリモコンのような赤外線、Bluetooth(登録商標)、IEEE802.11無線、HDR、携帯電話網、衛星回線、地上波デジタル網等の無線でも利用可能である。なお、本発明は、上記プログラムコードが電子的な伝送で具現化された、搬送波に埋め込まれたコンピュータデータ信号の形態でも実現され得る。
【0122】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の画像処理装置は、大型インフォーメーションディスプレイに好適に適用することができる。
【符号の説明】
【0124】
10 タッチパネル式表示部(表示画面)
11 表示部
12 タッチパネル
20 制御部
21 入力検出部
21a 接触検出部
21b 位置検出部(位置検出手段)
21c コマンド検出部(指示受付手段)
21d サイズ・角度検出部(距離算出手段)
22 表示制御部
22a 位置決定部
22b アイコン表示部(表示制御手段)
22c 画像処理部(領域設定手段)
30 記憶部
100 表示装置(画像処理装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像を表示する表示画面上の異なる2箇所に対象物が接触した場合に、接触した上記2箇所の位置を検出する位置検出手段と、
上記位置検出手段が検出した上記2箇所の位置の間の距離を算出する距離算出手段と、
画像処理を施すべき処理対象領域のサイズを、上記距離算出手段が算出した距離に応じたサイズに設定する領域設定手段と、を備えている、ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
上記領域設定手段が設定する上記処理対象領域は、上記画像に対して背景色を描画する領域であることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
上記距離算出手段が算出した距離に応じたサイズのアイコンを上記表示画面に表示する表示制御手段をさらに備え、
上記領域設定手段は、上記表示制御手段により表示されたアイコンが掃過する領域に背景色を描画することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
上記表示制御手段は、上記アイコンが表示される領域の境界線上に上記位置検出手段が検出した上記2箇所の位置が含まれるように、上記アイコンを表示することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
上記表示制御手段は、表示中の上記アイコンのサイズを、上記アイコンが表示された後に上記距離算出手段が算出した距離に応じたサイズに変更することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
上記アイコンの形状は長方形であり、
上記表示制御手段が表示中の上記アイコンのサイズを変更するのは、表示中の上記アイコンの各長辺または各短辺への接触を上記位置検出手段が検出した場合に限られていることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
上記距離算出手段が算出した距離を表わすオブジェクトを上記表示画面に表示する表示制御手段をさらに備えていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
上記画像処理を施す旨の指示をユーザから受け付ける指示受付手段を備え、
上記指示受付手段が上記指示を受け付けてから規定の時間が経過するまでに上記位置検出手段が上記2箇所の位置を検出しない場合には、上記領域設定手段は、上記処理対象領域のサイズを規定のサイズに設定することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
上記領域設定手段は、上記距離算出手段が算出した距離の2乗に比例するように、上記処理対象領域のサイズを設定することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項10】
上記位置検出手段が、2箇所の位置を検出した後に、さらに、該2箇所の位置と少なくとも1箇所以上異なる2箇所の位置への接触を検出した場合、上記領域設定手段は、後に検出された2箇所の位置を結ぶ直線の接触角度から、先に検出された2箇所の位置を結ぶ直線の接触角度を減じて得られる角度だけ、上記処理対象領域を回転させることを特徴とする請求項1から9のいずれか1項の記載の画像処理装置。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置に上記表示画面を備えたことを特徴とする表示装置。
【請求項12】
画像を表示する表示画面上の異なる2箇所の位置に対象物が接触した場合に、接触した上記2箇所の位置を検出する位置検出工程と、
上記位置検出工程にて検出された上記2箇所の位置の間の距離を算出する距離算出工程と、
画像処理を施すべき処理対象領域のサイズを、上記距離算出工程にて算出された距離に応じたサイズに設定する領域設定工程と、を含んでいることを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
請求項1から10のいずれか1項に記載の画像処理装置を動作させるプログラムであって、コンピュータを上記の各手段として機能させるための画像処理プログラム。
【請求項14】
請求項13に記載の画像処理プログラムを記録しているコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232881(P2011−232881A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101233(P2010−101233)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】