説明

画像処理装置、記録装置および画像処理方法

【課題】複数種類のインクを用いて画像を記録する場合に、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらを低減することが可能な画像処理装置および画像処理方法を提供する。
【解決手段】色むらが目立つ色とその類似色について記録媒体に第1の画像を記録し、ユーザが色むらが発生する色とノズル位置を指定した結果に基づいて、MCS処理部で参照する補正テーブルのパラメータを設定する。これにより、全ての格子点についてキャリブレーションを行う場合に比べて、処理の負荷やメモリの大容量化、処理時間の増大化を招致することなく、問題となる色むらの原因について、集中的に色むら弊害の抑制を行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、記録装置および画像処理方法に関し、詳しくは、インクを吐出する複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因した色むらを低減するための画像処理に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式の記録装置で用いられる記録ヘッドは、その製造上の誤差などの原因によって複数のノズル間で吐出特性(吐出量や吐出方向など)にばらつきを含むことがある。このようなばらつきがあると、記録される画像に濃度むらが生じ易くなる。
【0003】
従来、このような濃度むらを低減する処理として、特許文献1に記載されるようなヘッドシェーディング技術を用いることが知られている。ヘッドシェーディングは、ノズル個々の吐出特性に関する情報に応じて、画像データを補正するものである。この補正によって最終的に記録されるインクドットの数をノズルごとに増加または減少させ、記録画像における濃度をノズル間でほぼ均一にすることが出来る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−13674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のようなヘッドシェーディング技術を用いても、2種類以上のインクを重ねて色再現した場合には、標準と異なる吐出量のノズルで記録した領域の発色が本来記録されるべき色と異なる現象、いわゆる色ずれを起こすことがある。
【0006】
例えば、シアンインクの吐出量は標準、マゼンタインクの吐出量は標準よりも多いノズルを用いて、ブルーの画像を記録する場合、標準より吐出量の大きいマゼンタインクは、シアンよりも大きなドットが記録媒体に形成される。このような記録ヘッドに対し、ヘッドシェーディング(HS処理)によって補正を行うと、マゼンタは、標準よりも少ないドット数すなわちシアンよりも少ないドット数で記録される。この結果、ブルーの画像領域では、標準の大きさのシアンの単独ドットと、シアンよりも大きなマゼンタドットの中にシアンドットが記録される重複ドットが、混在する。そして、このような領域の発色は、標準の大きさと標準の数のシアンドットとマゼンタドットによって記録されるブルー画像の発色とは異なったものとなる。何故なら、両者の画像では、記録媒体におけるシアン単色が占有する割合と、マゼンタ単色が占有する割合と、シアンとマゼンタの重複によるブルー色が占有する割合、が異なるからである。このような各色が占有する面積の割合の変動は、吐出量のばらつきのみでなく、吐出方向のばらつきによっても招致される。すなわち、従来のヘッドシェーディングによって、シアン単色画像或いはマゼンタ単色画像の濃度むらは解決されたとしても、これらを重ね合わせて表現されるブルー画像においては、吐出特性のばらつきに応じて色ずれが招致されてしまっていた。そして、吐出特性の異なるノズルで記録された領域間において色ずれの程度が異なることから、同じ発色であるはずの各領域で異なる色味が知覚され、色むらとして認識されてしまっていた。
【0007】
本発明は、上記課題点を解決するためになされたものである。よってその目的とするところは、複数種類のインクを用いて画像を記録する場合に、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらを低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そのために本発明は、複数色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記複数色のインクに対応した色信号に変換する過程において、色信号の処理を行う画像処理装置であって、前記記録ヘッドにおける前記ノズルの位置に対応づけられた変換テーブルパラメータを用いて、前記入力画像データを変換する変換手段と、少なくとも2色のインクの重ね合わせにより形成される色を設定する第1の設定手段と、該第1の設定手段によって設定された色に基づいて複数の検出色を設定し、該複数の検出色のパッチからなる第1の画像データを生成する第1の生成手段と、前記記録ヘッドにより前記第1の画像データの画像を記録する第1のテストプリント手段と、前記第1のテストプリントによって記録された画像において、前記複数の検出色のうち前記複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらが確認された検出色を特定検出色として、および当該色むらが確認された前記記録ヘッドにおけるノズルの位置を特定位置として、情報を取得する第1の情報取得手段と、前記特定位置以外のノズルの位置に対して前記特定検出色を設定し、前記特定位置のノズルに対して前記特定検出色とは異なる複数の色を設定した、複数の色補正パッチからなる第2の画像データを生成する第2の生成手段と、前記記録ヘッドにより前記第2の画像データの画像を記録する第2のテストプリント手段と、前記第2のテストプリントにおいて、前記第1のテストプリントよりも色むらが低減されている色補正パッチの情報を取得する第2の情報取得手段と、該第2の情報取得手段によって取得された情報に従って、前記特定位置のノズルに対応する前記変換テーブルパラメータを形成する形成手段と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、処理の負荷やメモリの大容量化、処理時間の増大化を招致することなく、問題となる色むらの原因について、集中的に色むら弊害が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る記録システムを示すブロック図である。
【図3】(a)〜(c)は、従来のヘッドシェーディングを行った状態で、ブルー画像を記録した際に発生する色むらの様子を説明する図である。
【図4】(a)〜(d)は、本発明の実施形態にかかる、インクジェットプリンタが実行する画像処理の構成を示すブロック図である。
【図5】検出色の設定工程を説明するためのフローチャートである。
【図6】キャリブレーション処理を説明するためのフローチャートである。
【図7】(a)〜(d)は、HSを行った状態での色むらを説明する図である。
【図8】(a)〜(d)は、HSを行った状態での色むらを説明する図である。
【図9】(a)〜(d)は、HSを行った状態での色むらを説明する図である。
【図10】(a)〜(d)は、HSを行った状態での色むらを説明する図である。
【図11】(a)〜(d)は、HSを行った状態での色むらを説明する図である。
【図12】第1のテストプリントのレイアウトを示す図である。
【図13】色むらの色と位置を指定するUI画面を示す図である。
【図14】第2のテストプリントのレイアウトを示す図である。
【図15】色むらの改善された補正パッチを指定するUI画面を示す図である。
【図16】(a)および(b)は、キャリブレーション処理前に記録したブルー画像のドット記録状態を示す図である。
【図17】(a)および(b)は、キャリブレーション処理後に記録したブルー画像のドット記録状態を示す図である。
【図18】RGB空間において等間隔に座標を取った格子点を示す図である。
【図19】シアン色相のインク打ち込み量を示す図である。
【図20】変形例1のキャリブレーション処理を説明するフローチャートである。
【図21】(a)および(b)は、キャリブレーション処理前に記録したブルー画像のドット記録状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係るインクジェットプリンタを模式的に示す図である。本実施形態のプリンタはフルラインタイプの記録装置であり、図1に示すように、プリンタの構造材をなすフレーム上に4つのノズル列101〜104を備える。ノズル列101〜104の夫々には、記録用紙106の幅に対応した同じ種類のインクを吐出する複数のノズルが、1200dpiのピッチでx方向に配列されている。ノズル列101〜104のぞれぞれは、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを吐出する。これら複数色のインクを吐出するノズル列101〜104が、図のようにy方向に並列することにより、本実施形態の記録ヘッドが画成されている。
【0013】
記録媒体としての記録用紙106は、搬送ローラ105(および他の不図示のローラ)がモータ(不図示)の駆動力によって回転することにより、図中x方向と交差するy方向に搬送される。記録用紙106が搬送される間に、記録ヘッド101〜104それぞれの複数のノズルからは、記録用紙106の搬送速度に対応した周波数で、記録データに従った吐出動作が行われる。このような吐出動作を実行する記録ヘッドと記録媒体との相対移動によって、各色のドットが記録データに対応して所定の解像度で記録され、記録用紙106に一頁分の画像が形成される。
【0014】
図2は、本発明の一実施形態に係る記録システムを示すブロック図である。同図に示すように、この記録システムは、図1に示したプリンタ100(記録装置)と、そのホスト装置としてのパーソナルコンピュータ(PC)300を有して構成される。
【0015】
ホストPC300は、主に以下の要素を有して構成される。CPU301は、HDD303やRAM302に保持されているプログラムに従った処理を実行する。RAM302は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。HDD303は、不揮発性のストレージであり、同じくプログラムやデータを保持する。本実施形態では、後述する本発明特有のMCSデータも、通常HDD303に格納される。データ転送I/F(インターフェイス)304はプリンタ100との間におけるデータの送受信を制御する。このデータ送受信の接続方式としては、USB、IEEE1394、LAN等を用いることができる。キーボード・マウスI/F305は、キーボードやマウス等のHID(Human Interface Device)を制御するI/Fであり、ユーザは、このI/Fを介して入力を行うことができる。ディスプレイI/F306は、ディスプレイ(不図示)における表示を制御する。
【0016】
一方、プリンタ100は、主に以下の要素を有して構成される。CPU311は、ROM313やRAM312に保持されているプログラムに従い、後述する各実施形態の処理を実行する。RAM312は、揮発性のストレージであり、プログラムやデータを一時的に保持する。ROM313は不揮発性のストレージであり、後述する処理で使用するテーブルデータやプログラムを保持することができる。
【0017】
データ転送I/F314はホストPC300との間におけるデータの送受信を制御する。ヘッドコントローラ315は、図1に示したそれぞれの記録ヘッド101〜104に対して記録データを供給するとともに、記録ヘッドの吐出動作を制御する。具体的には、ヘッドコントローラ315は、RAM312の所定のアドレスから制御パラメータと記録データを読み込む構成とすることができる。そして、CPU311が、制御パラメータと記録データをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、ヘッドコントローラ315により処理が起動され、記録ヘッドからのインク吐出が行われる。
【0018】
画像処理アクセラレータ316は、CPU311よりも高速に画像処理を実行可能なハードウェアである。具体的には、画像処理アクセラレータ316は、RAM312の所定のアドレスから画像処理に必要なパラメータとデータを読み込む構成とする。そして、CPU311が上記パラメータとデータをRAM312の上記所定のアドレスに書き込むと、画像処理アクセラレータ316が起動され、上記データに対し所定の画像処理が行われる。本実施形態では、後述されるMCS処理部で用いるテーブルのパラメータを作成する処理をCPU311によるソフトウェアで行う。一方、MCS処理部の処理を含む記録の際の画像処理については、画像処理アクセラレータ316によるハードウェア処理で行う。なお、画像処理アクセラレータ316は必須な要素ではく、プリンタの仕様などに応じて、CPU311による処理のみで上記のテーブルパラメータの作成処理および画像処理を実行してもよい。
【0019】
以上説明した記録システムにおいて、複数種類のインクを用いて画像を記録する場合の、複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらを低減するための実施形態を以下に説明する。
【0020】
図3(a)〜(c)は、従来のヘッドシェーディングを行った状態で、2色のインクの重ね合わせによって表現されるブルー画像を記録した際に発生する色むらの様子を説明する図である。図3(a)において、102はシアンインクを吐出する記録ヘッド、103はマゼンタインクを吐出する記録ヘッドをそれぞれ示している。同図では、説明および図示の簡略化のため、それぞれの記録ヘッドにおける複数のノズルのうち8つのノズルのみが示されている。また、シアンおよびマゼンタインクによってブルーを記録する場合の色むらを説明するため、シアンとマゼンタの2つの記録ヘッドのみが示されている。
【0021】
シアンインクの記録ヘッド102の8つのノズル10211、10221は、総て標準的な量のインクを標準的な方向に吐出可能であり、記録媒体には同じ大きさのドットが一定の間隔で記録される。一方、マゼンタの記録ヘッド103の8つのノズルについても、吐出方向は全て標準であるが、図中左側の4つのノズル10311は標準の吐出量、右側の4つのノズル10321は標準よりも多い吐出量とする。よって、図中左側の領域(第1エリア)では、シアンドットと等しい大きさのマゼンタドットが記録されるが、右側の領域(第2エリア)では、シアンドットよりも大きいマゼンタドットが、シアンドットと等しい一定の間隔で記録される。
【0022】
このような吐出量特性を有する記録ヘッドを用いる場合に、従来のヘッドシェーディングによって画像データの補正を行うと、マゼンタノズル10321に対応する画像データは、より低減する方向に補正される。その結果、最終的にマゼンタノズル10321が記録するドットの数が、マゼンタノズル10311が記録するドットの数よりも少なく抑えられるように、ドットの記録(1)或いは非記録(0)を定めるドットデータ(2値データ)が生成される。
【0023】
図3(b)は、ベタ画像、すなわちシアンおよびマゼンタのいずれも100%デューティーの画像データに対してヘッドシェーディング補正を行った結果のドットデータに基づいて、記録を行った場合のドットの記録状態を示した図である。ここでは説明のため、シアンドットとマゼンタドットを重複させずに示している。図において、10611はシアンノズル10211によって記録用紙に記録されたドット、10621はシアンノズル10221によって記録用紙に記録されたドットを示している。また、10612はマゼンタノズル10311によって記録用紙に記録されたドット、10622はマゼンタノズル10321によって記録用紙に記録されたドットを示している。なお、図3(a)〜(c)では、個々のノズルの大きさと夫々のノズルによって記録されるドットの大きさを、等しい大きさで示しているが、これは説明上両者の対応をとるためであって、実際にこれらの大きさが等しいわけではない。
【0024】
図3(b)では、マゼンタノズル10321によって記録用紙に形成されるドット面積が、マゼンタノズル10221によって形成されるドット面積の2倍である場合を示している。この場合、ヘッドシェーディングによって、マゼンタノズル10321の吐出回数を、マゼンタノズル10321の吐出回数の約1/2(4ドット→2ドット)に抑えれば、記録用紙に対するマゼンタの被覆面積をほぼ同等にすることが出来る。但し、このように、2倍の面積のドットの数を1/2に削減するのは本例で説明を簡潔にするためである。実際には、被覆面積と検出される濃度の関係は必ずしも比例関係にあるわけではない。よって、一般的なヘッドシェーディングでは、どのノズル領域でも検出される濃度がほぼ一様になる程度に、各領域に記録されるドット数が調整されるようになっている。
【0025】
図3(c)は、ヘッドシェーディングによって得られたドットデータに基づいて記録した結果を、シアンドットとマゼンタドットを重複させて示した記録状態である。図3(c)において、記録用紙106における第1エリアには、標準サイズのシアンドットとマゼンタドットが重なって記録され、標準サイズのブルードット10613が形成されている。一方、第2エリアには、標準サイズのシアンドット10623と、標準サイズのシアンドットと2倍サイズのマゼンタドットが重なって形成されるブルードットとが、混在している。更に、標準サイズのシアンドットと2倍サイズのマゼンタドットが重なって形成されるブルードットでは、シアンとマゼンタが完全に重複しているブルーエリア10624と、その周囲にあるマゼンタエリア10625に分類することが出来る。
【0026】
HS処理では、シアンエリア(ドット)10623の面積の和=ブルーエリア10624の面積の和=マゼンタエリア10625の面積の和となるように、記録されるドットの数が調整されている。よって、シアンエリア10623の光吸収特性とマゼンタエリア10625の光吸収特性の和によって観察される色が、ブルーエリア10624の光吸収特性によって観察される色と等しければ、当該領域はブルーエリア10624とほぼ同色に見える。その結果、記録用紙106において第1エリアのブルー画像と、第2エリアのブルー画像は同じ色に見える。
【0027】
しかしながら、ブルーエリア10624のように異なる種類の複数のインクが重ねて形成される場合、そのエリアの光吸収特性によって観察される色は、複数のインクそれぞれのエリアの光吸収特性の和によって観察される色とは必ずしも一致しない。その結果、その領域全体は目標とする標準の色からの色ずれを生じ、結果として、記録用紙106において第1エリアのブルー画像と、第2エリアのブルー画像は異なる色として感知されてしまう。
【0028】
本発明は、このように2色以上のインクの組み合わせによって生じる色ずれを、画像データに対する補正処理によって低減しようとするものである。そのため、ブルー100%を記録する場合のマゼンタのデータに対しては、マゼンタ100%の画像を記録する場合とは異なる補正をかける。また、ブルー100%を記録する場合のシアンのデータに対しては、シアン100%の画像を記録する場合とは異なる補正をかける。そして、このようなブルー100%画像におけるシアンとマゼンタの補正は、厳密にはブルー100%画像でのみ成立する。
【0029】
図7(a)〜(d)は、従来のヘッドシェーディングを行った状態で、25%のブルー画像の色むらの様子を説明する図である。この場合においても、第1エリアと第2エリアでは異なる色が感知される。そして、ここでの色ずれを抑えるための、シアンおよびマゼンタに対する適切な補正は、図3で示したブルー100%の場合とは異なる。また、ブルー100%に対する補正値から単純な線形近似で求められるものでもない。
【0030】
図8(a)〜(d)は、図7(a)〜(d)に示した25%のブルー画像に加え、イエローを25%記録することによって表現される画像の色むらの様子を説明する図である。図において、10614はイエローノズル10411によって第1エリアに記録されたドット、10626はイエローノズル10421によって第2エリアに記録されたドットを示している。この場合でも、ブルーエリア10613とイエローエリア10614の光吸収特性で決まる第1エリアは、ブルーエリア10623及び10624と、マゼンタエリア10625と、イエローエリア10626の光吸収特性で決まる第2エリアとは発色が異なる。すなわち、第1エリアと第2エリアでは異なる色が感知される。そして、ここでの色ずれを抑えるためのシアンおよびマゼンタに対する適切な補正は、イエローヘッド104に吐出量ばらつきが存在しなくても、図7(a)〜(d)に示した25%のブルー画像の場合とは異なり、単純な線形近似で求められるものでもない。
【0031】
図9〜図11の(a)〜(d)は、図8(a)〜(d)に対し、更にイエローを25%ずつ増加させていった場合の色むらの様子を説明する図である。いずれの場合についても、第1エリアと第2エリアでは異なる色が感知され、色ずれを抑えるための適切な補正は、他のいずれの補正値からも単純な線形近似で求められるものではない。
【0032】
つまり、マゼンタの吐出量ばらつきを原因とする色ずれは、程度の差はあるが、マゼンタを使用する色であれば現れ、この色ずれを補正するためには、マゼンタだけでなく、そこに使用するインク色の全ての信号値変換(補正)が必要とされる。さらに、この信号値変換ための補正値は、周辺の類似色のデータから単純な線形近似で求められるものではない。よって、全色空間で色むらを抑制するためには、全ての格子点(すなわち、CMYK信号値の全ての組み合わせ)について適切な補正値が求められることが望まれる。
【0033】
しかし、例えばCMYK信号値が256階調であった場合、格子点の数は1677万となり、全てについてパッチを記録したり色むらを検出したり補正値の算出を行なったりすると、処理の負荷が増大し、メモリの大容量化や処理時間の増大化が招致される。その一方、1つの原因によって招致される色むらが目立ち易い色は、ある程度限定的であり、全色空間のほんの一部である場合も多い。具体的には、例えばマゼンタの吐出量ばらつきによって招致される色むらが目立ち易い色は、ブルーに近い色であり、レッドやグリーンあるいは明度が極端に高かったり低かったりする領域では、色むらは認知されない場合もある。
【0034】
本発明では、このような状況を鑑み、特に色むらが目立ち易いむら色(例えばブルー25%)抽出し、そのむら色と同じ原因(マゼンタの吐出量ばらつき)で色むらが現れると懸念される類似色を推測する。そして、上記むら色と類似色についてのみ、パッチの記録、色むらの検出および補正値の算出を実行する。このようにすれば、特に目立つ色むらが見つかった場合、その色むらの原因について、集中的に色むら弊害の抑制を行うことが可能となる。
【0035】
以下、具体的な実施形態について説明する。
【0036】
(第1実施形態)
図4(a)は、本発明の第1の実施形態にかかるインクジェットプリンタが実行する画像処理の構成を示すブロック図である。すなわち、本実施形態は、図2に示したプリンタ100の制御、処理のための各要素によって画像処理部を構成する。なお、本発明の適用はこの形態に限られない。例えば、図2に示したホストPC300において画像処理部が構成されてもよく、あるいは画像処理部の一部がホストPC300において構成され、その他の部分がプリンタ100において構成されてもよい。
【0037】
図4(a)に示すように、入力部401はホストPC300から受信した画像データを、画像処理部402へ出力する。画像処理部402は、入力色変換処理部403、MCS処理部404、インク色変換処理部405、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408を有して構成される。
【0038】
以下、画像処理部402で行われる画像処理の過程を説明する。画像処理部402において、先ず、入力色変換処理部403は、入力部401から受診した入力画像データを、プリンタの色再現域に対応した画像データに変換する。入力する画像データは、本実施形態では、モニタの表現色であるsRGB等の色空間座標中の色座標(R,G,B)を示すデータである。入力色変換処理部403は、各8ビットの入力画像データR,G,Bを、マトリクス演算処理や3次元ルックアップテーブル(以下LUT)を用いた処理を行う。その際既知の手法によって、3要素から構成される色信号であるプリンタの色再現域の画像データ(R´、G´、B´)に変換する。本実施形態では、3次元LUTを用い、これに補間演算を併用して変換処理を行う。なお、本実施形態において、画像処理部402において扱われる8ビットの画像データの解像度は600dpiであり、量子化処理部408の量子化によって得られる2値データの解像度は後述のように1200dpiである。
【0039】
MCS(Multi Color Shading)処理部404は、入力色変換処理部403によって変換された画像データに対して補正処理を行う。この処理も後述するように、3次元LUTからなる補正テーブルを用いて行う。本実施形態において、各記録ヘッドのノズル列はx方向に4ノズルずつX個のノズル群に分割して管理されている。そして、MCS処理では、X個のノズル群それぞれについて独立に処理を施す。このような補正処理によって、出力部409における記録ヘッドのノズル間で吐出特性にばらつきがあっても、それによる上述した色むらを低減することができる。このMCS処理部404の具体的なテーブルの内容およびそれを用いた補正処理については後述する。
【0040】
インク色変換処理部405は、MCS処理部404によって処理されたR、G、B各8ビットの画像データをプリンタで用いるインクの色信号データによる画像データに変換する。本実施形態のプリンタ100はブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)のインクを用いることから、RGB信号の画像データは、K、C、M、Yの各8ビットの色信号からなる画像データに変換される。この色変換も、上述の入力色変換処理部と同様、3次元LUTであるインク色変換テーブルに補間演算を併用して行う。
【0041】
HS(Head Shading)処理部406は、インク色信号の画像データを入力して、インク色ごとにそれぞれ8ビットデータを、記録ヘッドを構成する各ノズルの吐出量に応じたインク色信号の画像データに変換する処理を行う。すなわち、HS処理部406は、従来のヘッドシェーディング処理と同様の処理を行う。本実施形態では、一次元LUTを用いて本HS処理を行う。
【0042】
TRC(Tone Reproduction Curve)処理部407は、HS処理された各8ビットのインク色信号からなる画像データに対して、インク色毎に、出力部409で記録されるドットの数を調整するための補正を行う。一般に、記録媒体に記録されるドットの数と、その数のドットによって記録媒体で実現される光学濃度は線形関係にない。よって、TRC処理部407は、この関係を線形にすべく各8ビットの画像データを補正して記録媒体に記録されるドットの数を調整する。
【0043】
量子化処理部408は、TRC処理部407で処理された各8ビット256値のインク色の画像データに対して量子化処理を行い、記録「1」または非記録「0」を表す1ビットの2値データを生成する。本発明を適用する上で、量子化408の形態は特に限定されるものではない。例えば、8ビットの画像データを、直接2値データ(ドットデータ)に変換する形態であってもよいし、一度数ビットの多値データに量子化してから、最終的に2値データに変換する形態であっても良い。また量子化処理方法も、誤差拡散法を用いてもよいし、ディザ法など他の疑似中間調処理を用いてもよい。
【0044】
出力部409は、量子化によって得られた2値データ(ドットデータ)に基づいて、記録ヘッドを駆動し記録媒体に各色のインクを吐出して記録を行う。本実施形態において、出力部409とは、図1に示した記録ヘッド101〜104を備えた記録機構によって構成される。
【0045】
本実施形態では、MCS処理部404で使用する3次元LUTの変換テーブルパラメータを、X個のノズル群毎に作成する。そのために、実際にテストパターンの記録、ユーザによる目視確認、およびUIからの入力、なる工程で構成されたキャリブレーション処理を実行する。そしてこのキャリブレーション処理の実行に先立って、テストパターンとして記録されるパッチの色すなわち検出色を、まず設定する。
【0046】
図5は、ホスト装置のCPU301および記録装置のCPU311が連携して実行する検出色の設定工程(第1の設定工程)を説明するためのフローチャートである。本処理が開始されると、まずステップS601において、ホスト装置のUIから、色むらの目立つ色(以下むら色と称す)の情報を少なくとも1色について受信し、むら色の信号値A(R、G、B)を設定する。このような設定は、例えばUI上に表示された複数のパッチの中から、ユーザが色むらが気になる色に近いものを選択する形態であってもよい。また、まず色むらが気になる色相をユーザがUI上で選択し、その後、等しい色相でありながら彩度の異なる複数のパッチをレイアウトして、再度ユーザが選択する形態であっても良い。さらに、図18に示すようなRGB空間の格子点に対応する色の複数のパッチを実際に記録媒体に出力したものをユーザが観察し、色むらが気になるパッチの符号をUIから入力する形態であっても良い。格子点は、R、G、Bそれぞれについて、例えば信号値0〜255を9等分すれば、9×9×9個用意され、729色分のパッチを記録することが出来る。
【0047】
ステップS602では、ステップS601で設定されたむら色AのRGB信号値から、インク変換処理部405に用意されている3次元LUTテーブルを用いて、むら色に対応するインク色信号値A(C、M、Y、K)を取得する。
【0048】
続くステップS603では、インク色変換テーブルの格子点の中から、ステップS602で求めたむら色A(C、M、Y、K)と類似した信号値の組み合わせを、候補色としていくつか選択する。例えばむら色A(C,M,Y,K)=(100、120、0、0)の場合、使用するインク色はCとMであるので、C=100、M=120の組み合わせに近い色の格子点を、候補色として選択する。ここで、例えば、候補色B(C,M,Y,K)=(100、110、40、0)および候補色C(C,M,Y,K)=(100、110、40、0)が候補色として選ばれたとする。
【0049】
その後、ステップS604では、複数の候補色についてむら色Aとの類似度を算出する。類似度とは、特に決まった定義があるわけではなく、基準色となるむら色Aに対し、使用するインクの組み合わせと割合が類似する度合いを示すためのパラメータである。類似度は、例えば以下の方法で算出することが出来る。
【0050】
(1)むら色の使用インク色について信号値の絶対差を使用インク色数で平均する方法
例えば、むら色A=(100、120、0、0)、候補色B=(110、110、40、0)、候補色C=(100、110、40、0)の場合、むら色の使用インク色数はシアンとマゼンタの2色であるので、候補色Bのむら色Aに対する類似度b1は、
b1=(|110−100|+|110−120|)÷2= 10となる。また、候補色Cのむら色Aに対する類似度c1は、
c1=(|100−100|+|110−120|)÷2= 5となる。この場合、類似度が小さいほどむら色Aに類似しているとみなすことが出来る。すなわち、候補色Bよりも候補色Cの方がむら色Aに類似しており、むら色Aと同様、色むらが懸念されると考えられる。
【0051】
(2)むら色の使用インク色について元値で正規化してインク色数で平均する方法
例えば、むら色A=(100、120、0、0)、候補色B=(110、110、40、0)、候補色C=(100、110、40、0)の場合、候補色Bのむら色Aに対する類似度b2は、
b2=(|110−100|÷100+|110−120|÷120)÷2= 0.092となる。また、候補色Cのむら色Aに対する類似度c2は、
c2=(|100−100|÷100+|110−120|÷120)÷2= 0.042となる。このような計算方法であっても、候補色Bよりも候補色Cの方がむら色Aに類似しており、色むらが懸念されると判断できる。
【0052】
ただし、ここで挙げた類似度算出手法は一例であって、これ以外にも、例えば信号値の差分の自乗平均をとるなど、様々な類似度算出手法を用いることは出来る。
【0053】
再度図5に戻る。ステップS604で複数の候補色についての類似度が算出されると、ステップS605に進み、複数の候補色の類似度を比較することによって、最もむら色Aと類似するとみなされた1つ以上の候補色を選出する。そして、これら選出された候補色とむら色とを、検出色(R,G,B)として設定する。以上で、本処理を終了する。
【0054】
図6は、ホスト装置のCPU301および記録装置のCPU311が連携して実行するキャリブレーション処理を説明するためのフローチャートである。キャリブレーション処理とは、MCS処理部403で参照する3次元LUTに記憶されている変換テーブルパラメータを補正するための処理である。本実施形態では、各記録ヘッドのノズル列をx方向に4ノズルずつX個のノズル群に分割する。そして、MCS処理部404では、X個のノズル群それぞれについて入力色変換処理部からの入力データ(R,G,B)を適切な補正データ(R,G,B)に変換するようなX個の補正テーブルが用意されている。このような形態により、X個のノズル群の間で吐出量のばらつきがあっても、互いに色差のない画像を記録することが出来るようになる。なお、キャリブレーションが1回も行われていない初期状態においては、上記補正テーブルは、いずれのノズル群についても入力信号値と出力信号値が同一(すなわちスルー)になるようにパラメータが設定されている。
【0055】
キャリブレーション処理が開始されると、まず、画像処理部402は、ステップS501において、図5で説明した検出色設定処理によって設定された検出色の画像データ(R,G,B)を入力部401から受信する。そして、受信した画像データに対し、各種画像処理を実行する。具体的には、複数の検出色の画像データ(R,G,B)は、入力色変換処理部403の処理が施された後、MCS処理部404の処理を経ずに、インク色変換処理部405に入力する。このような経路は、図4(a)においてバイパス経路として破線410で示されている。バイパス経路による処理は、例えば入力値=出力値となるようなテーブルによって、検出色画像データはMCS処理部404に入力されるが、入力値のまま出力されるような処理が行われてもよい。その後、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408では、通常データと同様の処理を施して、第1の画像データを作成する(第1の生成)。
【0056】
続くステップS502では、出力部409において、得られた2値データに従って、記録媒体にテストパターン(第1の画像)を記録する。この記録が第1のテストプリントとなる。
【0057】
上記ステップS501で行われる画像処理の際、HS処理部406のテーブルパラメータは既に作成されているものとする。このため、ステップS502で行われる第1のテストプリントでは、インク色ごとに、記録媒体で表現される濃度のばらつきが抑えられている。例えば吐出量の大きいノズルは吐出回数を抑えるように、吐出量の少ないノズルは吐出回数を増やすように、ドット数が調整されて記録されている。
【0058】
図12は、第1のテストプリントで記録されたテストパターンの例を示している。ここでは、図5で説明した検出色設定工程によって3つの検出色が設定され、これら3つの検出色に対応した3つのパッチが帯状に記録されている例を示している。テストパターンは記録媒体をy方向に搬送しながら記録され、各パッチは、ノズル列101〜104の幅に対応した領域を有している。各パッチの近傍には、それぞれの領域を記録した記録ヘッドのノズル位置に対応させるための識別子(1〜10)が付加されている。識別子は、図12に示すような数字の表示でもよいが、目盛りの表示などであってもよい。図12では、検出色2の、識別子3、4の辺りが、他の領域に対して色ずれが目立っている状態を示している。ユーザは、このようなテストパターンを目視で確認する。
【0059】
図6に戻る。ステップS503において、ユーザはホストPCのUIから色ずれが目立つ検出色およびその位置を入力する。具体的には、UIのディスプレイにおいて、図13に示すような画面が表示され、ユーザはカーソルを用いて、検出色2の識別子3、4の辺りあるいはその両端をクリックする。このようなユーザの入力によって、ホスト装置のCPU301は色ずれが発生する記録ヘッドの位置を特定位置として、当該位置のノズルに対して補正すべき色を特定検出色として設定する(第1の情報取得)。このような特定位置と特定検出色は、複数設定されても構わない。
【0060】
なお、検出色のパッチの中に色ずれの勾配がある場合は、色ずれが最も強く現れる位置すなわち最大値位置を、両端の位置と共に図13のパッチ上で選択させる手段も設けてもよい。色ずれの両端と最大となる位置が把握できれば、補正処理においても最大値で最も補正量が多くなり、両端位置に近いほど補正量を小さくするように調整することが出来る。なお、ユーザ入力の際には、図13のようなカーソルではなく、検出色と識別子をキーボードから入力する形態であっても良い。
【0061】
ステップS504では、設定された記録ヘッドの特定位置および特定検出色に対応して、複数の色補正パッチデータをレイアウトした第2の画像データを作成する。色補正パッチデータとは、ステップS503で設定された特定位置に対し、特定検出色からわずかに異なる色のデータを設定し、特定位置以外の領域に対しては、特定検出色のデータをそのまま設定した画像データである。以下、第2の画像データの生成方法をより詳しく具体的に説明する。
【0062】
本実施形態では、各記録ヘッドのノズル列を4ノズルずつX個のノズル群に分割して管理する。そして、X個のノズル群のうち、左からn番目(n=1〜X)のノズル群に与えられる色を表すための色信号をD[n]=(R,G,B)とする。更に、上記ステップS503において設定された記録ヘッドの位置(特定位置)がk番目のノズル群に相当し、特定検出色として検出色2(R、G、B)=(10,10,100)が設定されたとする。更に、これに対し、第2の画像ではm個の補正パッチデータを用意するとする。
【0063】
このとき、n=1〜k−1およびn=k+1〜Xのノズル群においては、m個の色補正パッチデータの色信号Di[n](i=1〜m)においても色信号Di[n]=D[n]=(0,0,255)となる。一方、n=kのノズル群においては、m個の色補正パッチデータの色信号Di[k]のために、m個の色補正値Zi[k]を用意する。例えば、m=6の場合、Z1[k]=(10、0、0)、Z2[k]=(0、10、0)、Z3[k]=(0、0、10)、Z4[k]=(−10、0、0)、Z5[k]=(0、−10、0)、Z6[k]=(0、0、−10)の6つを用意することが出来る。これら色補正値は、みな原点(0,0,0)から等距離に位置する。そしてこれら複数の色補正値をそれぞれ色信号Di[k]に加算することにより、6個の色補正パッチデータのための色信号Di[k]が得られる。すなわち、上記例の場合、D1[k]=D[k]+Z1[k]=(20、10、100)、D2[k]=D[k]+Z2[k]=(10、20、100)、D3[k]=D[k]+Z3[k]=(10、10、110)となる。また、D4[k]=D[k]+Z4[k]=(0、10、100)、D5[k]=D[k]+Z5[k]=(10、0、100)、D6[k]=D[k]+Z6[k]=(10、10、90)となる。これら色信号Di[k]は全て、RGB色空間において、特定検出色の色信号D[k]から等距離ずつ離れた位置にある。
【0064】
このように作成されたm個のDi[k]を、n=k以外のDi[n]と組み合わせて、m個の色補正パッチデータを作り、更にこれらを副走査方向にレイアウトしたものを作成する。そして、図4(a)に示した一連の画像処理のうち、MCS処理を除いた処理を全て行うことにより、第2の画像が完成する(第2の生成)。
【0065】
なお、色補正値Zi[k]の原点からの距離は、必ずしも一定でなくても良い。例えば、人間の見た目に色の違いが高精度に識別できるグレー近辺では、色補正値Zi[n]より小さくするなど、色信号D[n]の値に応じて調整することも有効である。
【0066】
さらには、記録ヘッドのノズル位置に応じて、色補正値Zi[n]の大きさを変えてもよい。記録ヘッド内ではそのノズル位置によって色むらの目立ち方が異なる場合がある。例えば、複数のチップをx方向に連結して1色分の記録ヘッドが構成されている場合、チップとチップのつなぎ目位置に色むらが過度に発生してしまうことがある。このような場合、チップとチップのつなぎ目位置における色補正値Zi[k]の大きさを他の領域より大きくすれば、強度の大きい色むらにも対応することができる。
【0067】
再度図6のフローチャートに戻る。ステップS505では、ステップS504で作成された第2の画像を記録する。この記録が第2のテストプリントとなる。
【0068】
図14は、第2のテストプリントで記録されたテストパターンの例を示している。ここでは、3つの色補正パッチデータが帯状に記録されている。第1のテストプリントと同様、各パッチの近傍には、それぞれの領域を記録した記録ヘッドのノズル位置に対応させるための識別子(1〜10)が付加されている。ユーザは、出力されたテストパターンを目視で確認し、色むらが最も低減された色補正パッチデータを選出する。図14では、補正3で示された色補正パッチが、最も良好に補正されている例を示している。なお、ステップS505においては、上記複数の補正パッチの中に、第1のテストプリントで記録し補正すべき検出色として設定されたパターンを並列して記録しても良い。このようにすれば、ユーザは色補正処理されたパッチを色補正処理なしのパッチと比べることで、その効果を確認することができる。また、2つの色補正パッチの中で選択を迷うような場合にも、色補正処理を施していないパッチと比較することで、より正確な選択を行うことができる。
【0069】
ステップS506において、ユーザはホストPCのUIから色ずれが最も改善された色補正パッチを選択する(第2の情報取得)。具体的には、UIのディスプレイにおいて、図15に示すような画面が表示され、ユーザはカーソルを用いて、補正3で表示される色補正パッチをクリックする。この際、色むらの低減度合いが同程度のものが2つあれば、それら2つを指定してもよい。
【0070】
ステップS507では、ステップS506で指定された色補正パッチの色補正値に応じて、ノズル群のMCS処理部404が参照する3次元LUTの内容を補正する。MCS処理の際に参照されるこの3次元LUT(色変換テーブル)は、ノズル群の数だけすなわちX個分用意されており、個々のノズル群に対応する色補正変換が出来るようになっている。補正が行われる前の色変換テーブルや、特に補正が必要ないノズル群の色変換テーブルは、入力信号値(R,G,B)と出力信号値(R,G,B)が等しい値になっている。本実施形態では、ステップS506で指定された色補正パッチの、色補正値Zi(k)に応じて、ノズル群kに入力された第1の色信号D[k]が、第2の色信号D3[k]に変換されるように、ノズル群kに対応する補正テーブルのパラメータを書き換える。例えば、色補正値Zi(k)がZ3[k]=(0、0、10)であった場合、第1の色信号D[k]=(10、10、100)が第2の色信号D3[k]=(10、10、110)に変換されるように、ノズル群kに対応する変換テーブルパラメータを書き換える。尚、補正テーブルの変換テーブルパラメータを書き換えずに、この補正テーブルとは別にパラメータを形成して記憶する方法であってもよい。
【0071】
ステップS506において、2つの色補正パッチが指定された場合は、2つの色補正値Zi(k)の平均を取って、出力信号値を作成しても良い。具体的には、1つ目の色補正値Zi(k)が(0、0、10)であり、2つ目の色補正値Zj(k)が(0、10、0)の場合、これらを平均した色補正値Z(k)=(0,5,5)を新たな色補正値として第2の色信号(10、15、105)を設定しても良い。以上説明した処理により、個々のノズル群に対応した3次元LUTが補正されると、キャリブレーション処理は終了する。
【0072】
以上説明したキャリブレーション処理は、記録装置の製造時や記録装置を所定期間使用したとき、あるいは所定量の記録を行ったときに、強制的あるいは選択的に実行されてもよいし、記録を行う度に、その動作前に実行するようにしてもよい。また、ユーザが、実際に出力された画像を観察して色むらが気になったときに、図5で説明した検出色の設定工程から任意に開始しても良い。
【0073】
キャリブレーション処理が終了した後に実画像記録を行った場合、入力画像データは図4(a)に示した一連の画像処理が施されて記録媒体に記録される。この際、吐出量ばらつきによって色ずれが懸念されるノズル群については、MCS処理部によって色ずれを補正するような信号値変換が行われる。よって、一様で色むらのない画像を出力することが可能となる。
【0074】
図16(a)および(b)は、キャリブレーション処理前に(すなわち、HS処理のみ行いMCS処理が行われない状態で)記録したブルー画像におけるドットの記録状態を示す図である。一方、図17(a)および(b)は、キャリブレーション処理後に記録したブルー画像を、図16(a)および(b)と比較する図である。どちらの図においても図3(a)〜(c)で説明した記録ヘッドと同じものを使用している。
【0075】
図16(b)の記録状態においては、図3(c)と同様、シアンエリア10623の光吸収特性とマゼンタエリア10625の光吸収特性の和によって観察される色が、ブルーエリア10624の光吸収特性によって観察される色と必ずしも等しくない。この場合、第1エリアに比べて第2エリアはシアンの色味が強いとユーザに感知されたとする。そして、ユーザがこのような第1エリアと第2エリアの色むらを補正するためにむら色を指定し、上述した一連のキャリブレーション処理を実行すると、第2エリアのブルー画像は図17(b)のような記録状態となる。ここでは、図16(b)に比べて、シアンドットの数10624の数が低減され、シアンの色味が抑えられているのがわかる。これにより、第2エリアの色は第1エリアの色により近付き、色むらは低減される。
【0076】
以上説明したように、本実施形態は、色むらが目立つ色とその類似色について記録媒体に第1の画像を記録し、ユーザが色むらが発生する色とノズル位置を指定した結果に基づいて、MCS処理部で参照する補正テーブルのパラメータを設定する。これにより、全ての格子点についてキャリブレーションを行う場合に比べて、処理の負荷やメモリの大容量化、処理時間の増大化を招致することなく、問題となる色むらの原因について、集中的に色むら弊害の抑制を行うことが可能となる。
【0077】
なお、以上では、同一のノズル群に含まれるマゼンタの4つのノズルが総て標準より大きな吐出量である場合を例に説明したが、1つのノズル群の中で各ノズルの吐出特性がまちまちであることは十分あり得る。このような場合であっても、上記キャリブレーションでは、同一ノズル群における平均的な色ずれから適切なパラメータを設定し、色ずれを4つのノズルの全てによって補正するような形態となり、上述した結果と同様の効果を得ることが出来る。
【0078】
また、上記キャリブレーション処理のステップS506では、ユーザがどの色補正パッチも色むらが十分に低減されていないと判断する場合も考えられる。このような場合は、最も色むらが低減されている色補正パッチを少なくとも1つ選択しておきながら、更にその色補正パッチを基準に第2のテストプリントを再度行うようにしても良い。すなわち、再度ステップS504に戻り、基準となる色補正パッチを中心に、複数の色補正値Zi[k]を加算した色信号Di[k]を再び生成し、これを第3の画像として記録すればよい。このとき、第3の画像を生成する際の色補正値Zi[k]は、第2の画像を生成する際の色補正値Zi[k]から変更することも可能である。
【0079】
例えば、1回目の補正では、補正が過剰であるような場合には、第3の画像を生成する際の色補正値Zi[k]をより小さくすることによって、より精度の細かい補正を行いながら、より色ずれの少ない位置に近づけることが出来る。そして、このような作業を繰り返し行うことにより、最も色むらの少ない目標の位置に、段階的に収束させていくことが出来る。一方、1回目の補正では、補正が足りない場合には、色補正値Zi[k]をより大きくした状態で、再度1回目の補正をやり直すことも出来る。
【0080】
(変形例1)
図4(b)は、本実施形態に係る、インクジェットプリンタにおける画像処理部の構成の別例を示すブロック図である。図4(b)において、符号401、405〜409で示す各部は、図4(a)において同じ符号で示すそれぞれの部と同じであるためそれらの説明を省略する。本変形例が、図4(a)に示す構成と異なる点は、入力色変換処理部とMCS処理部による処理を一体の処理部として構成した点である。すなわち、本変形例の入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理とMCS処理の機能を併せ持つ処理部である。
【0081】
具体的には、入力色変換処理&MCS処理部411は、入力色変換処理部のテーブルとMCS処理部のテーブルを合成したテーブルとなっている。つまり、入力色変換処理&MCS処理部411は、ノズル群ごとに異なる複数の3次元LUTを有する。そして、入力部401からの入力画像データに対して、直接色むらの補正処理を行い、ノズル群ごとに異なるRGBの画像データを出力する。
【0082】
図20は、変形例1におけるキャリブレーション処理の工程を示すフローチャートである。図5のフローチャートと異なる点は、ステップS1401およびステップS1404の処理である。
【0083】
ステップS1401では、受信した検出色の画像データが、直接インク色変換処理部405に入力する。このような経路は、図4(b)においてバイパス経路として破線410で示されている。その後、HS処理部406、TRC処理部407、量子化処理部408では、通常データと同様の処理が施される。
【0084】
ステップS1404についても同様である。複数の色補正パッチデータを副走査方向にレイアウトしたものに対し、図4(a)に示した一連の画像処理のうち、入力色変換処理&MCS処理部411を除いた処理を全て行うことにより、第2の画像が作成される。
【0085】
このような変形例1によれば、入力色変換処理&MCS処理部411で合算したLUTを用いて第1の実施形態と同じ処理を行うので、第1の実施形態と同様に色むらを低減することができる。そして、1つのLUTで一括して変換しているので、第1の実施形態よりもLUTのために用意する領域を削減したり、処理速度を向上させたりすることが可能となる。
【0086】
(変形例2)
図4(c)は、変形例2に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。図4(c)において、符号401、405〜409で示す各部は、図4(a)において同じ符号で示すそれぞれの部と同じであるためそれらの説明を省略する。本変形例が、図4(a)に示す構成と異なる点は、入力色変換処理部403とMCS処理部404の順番が逆転していることである。
【0087】
このような変形例2によれば、第1の実施形態と同様に色むらを低減することができる。また、MCS処理部を画像処理の先頭に位置させることにより、例えばMCS処理部が搭載されていない画像処理部に対し、MCS処理部を拡張モジュールとして提供できるようになる。また、ホストPC側に処理を移すことも可能となる。
【0088】
(変形例3)
図4(d)は、変形例3に係る画像処理部の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本変形例は、図4(a)〜(c)では用意したHS処理部406を省いた形態になっている。
【0089】
本変形例におけるキャリブレーション処理についても、図5のフローチャートと同じである。異なるのはHS処理部を独立させていない点である。すなわち、本変形例では、MCS処理部において、色むらと同時に単色の濃度むらも補正する。よって、キャリブレーション処理を実行する際には、予めHS処理は行われておらず、補正テーブルはHS処理後のデータを基に作成されるものではない。
【0090】
図21(a)および(b)は、本変形例におけるキャリブレーション処理前に(すなわち、HS処理もMCS処理も行われない状態で)記録したブルー画像におけるドットの記録状態を示す図である。本変形例では、このようなパターンが第1のテストプリントで記録される。図21(a)は、図3(a)に示した例と同様、マゼンタの記録ヘッド103のノズルのうち第2エリアに相当する4つのノズルが標準より多い吐出量となっている例を示している。本変形例では、ブルーを示す画像データ(K、C、M、Y)=(0、255、255、0)に、HS処理が施されていないので、図21(b)に示すようなブルーの測定用画像が記録される。すなわち、吐出量が標準より多いノズルを含む第2エリアであっても、マゼンタドットとシアンドットは同じ数だけ記録される。結果、第2エリアにおいて、マゼンタよりの色ずれが生じている。本変形例では、このようなテストプリントをもとに、キャリブレーション処理を行い上記実施形態と同様の効果を得ることが出来る。
【0091】
HS処理部を設けない本変形例においては、HS処理用のテーブルを用意する必要がなくなり、HS処理のための「パターン記録」、「測色」、「補正パラメータ演算」などの処理が必要なくなる。その結果、メモリを低減しHS処理に係るタイムコストを低減することが可能となる。
【0092】
以上説明した実施形態および変形例では、4つのノズルを1つのノズル群とし、MCS処理を行う最小単位として設定したが、無論本発明はこのような単位に限定されるものではない。1つのノズル群にはより多くのノズルが含まれていても良いし、1ノズルずつMCS補正が行なわれるようにしても構わない。更に、個々のノズル群に含まれるノズル数は必ずしも同数でなくても良く、個々のノズル群に含まれるノズル数を色むらの状況に応じて適宜設定してもよい。
【0093】
なお、記録装置が表現可能な色再現領域は、記録媒体の種類によって異なる。同じ種類のインク滴を同じ数ずつ記録しても、記録媒体で表現される色や濃度は記録媒体の種類によって変化する。よって、図4(a)〜(d)で示した画像処理部のうち、入出力変換処理部403、MCS処理部404、インク色変換処理部405、HS処理部、TRC処理部で参照するテーブルは、記録媒体ごとに用意されていることが好ましい。この場合、膨大な数の1次元あるいは3次元テーブルを用意しておく必要があるが、これらテーブルは、たとえ画像処理の主体がホストPCである場合でも、記録装置のROM313に格納しておくことも出来る。そして、HS処理部やMCS処理部のためのキャリブレーション処理を行うタイミング、あるいは実際の記録を行うタイミングにおいて、ユーザがホスト装置のUIから使用する記録媒体の種類を設定する。この設定により、画像処理のために必要なテーブルのみが、ホストPCのCPU301によって呼び出され、一時的にRAMに格納された状態で、一連の画像処理を行うことが出来るようになる。
【0094】
なお、以上の説明では、キャリブレーション処理を実行する際にはMCS処理部をスルーしてテストパターンを記録する内容で説明したが、例えば2回目以降のキャリブレーションを実行する際には、通常の経路でテストパターンを記録するようにしてもよい。2回目以降のキャリブレーションは、現状の補正テーブルでの色むらを補正するために行うのであるから、バイパス経路ではなくMCS補正処理を行った上でテストパターンを記録し、現状のパラメータに対して適切な色補正値Zi[k]を加算するようにすればよい。
【0095】
更に、上記実施形態では、RGB形式で入力された画像データに対しMCS処理などを行った後、記録装置で用いるインク色に対応したCMYK形式の画像データに変換する例で説明したが、無論本発明はこのような形式に限定されるものではない。MCS処理の対象となる画像データは、RGB形式のほか、L***、Luv、LCbCr、LCHなどとすることも出来る。また、実際の色むらはCMYKのインクの組み合わせによって決まるものであるから、インク色変換処理後にMCS処理部を設け、CMYKの互いのデータの組み合わせに応じてCMYKそれぞれの信号値が出力されるようにしてもよい。この場合、MCS処理部が参照する補正テーブルは、ノズル群ごとに用意された4次元のLUTとなる。
【0096】
但し、上記実施形態のように入力信号と等しいRGBデータでMCS処理を実行することには、CMYK(インク色)データで処理する場合に比べて以下に説明するようなメリットがある。
【0097】
1つ目のメリットは、CMYKで処理する場合に比べて、データ容量を縮小できる点である。CMYKでMCS処理を行った場合、上述したように4次元のLUTがノズル群ごとに用意されなくてはならない。また、昨今のインクジェット記録装置では、基本のCMYKのほかに、Cより薄いライトシアン(Lc)、Mより薄いライトマゼンタ(Lm)など更に多くのインクを用いる場合があり、N種類のインクを使用する場合にはN次元のLUTが必要となってしまう。つまり、実際に使用するインク色に対応した信号値でMCS処理を行うと、補正テーブルのために必要なメモリや処理時間が莫大になってしまう。
【0098】
2つ目のメリットは、CMYKで処理する場合に比べて、記録媒体に対するインク打ち込み量の上限を超えにくいことである。記録媒体には、その種類ごとに、吸収できるインク量の限界があり、インク色変換処理部はその限界を超えない範囲でCMYKのデータを出力している。しかしながら、インク色変換処理部の後にMCS処理が施されると、補正の方向によっては信号値を増大させる、すなわちインクの打ち込み量が増大する場合もある。この場合、記録媒体に吸収しきれないインクによって、ユーザの手や記録装置の内部を汚してしまうおそれも生じる。これに対し、本実施形態のようにMCS処理をインク色変換処理部の前で行っていれば、MCS処理部においてどのようなRGBの組み合わせに変換されたとしても、インク色変換処理部からの出力信号はインク打ち込み量の限界を超えない範囲に収まっている。
【0099】
3つ目のメリットは、濃インクと淡インクを用いる系において、粒状感の悪化を招致し難いという点である。シアンインクとライトシアンインクのように、濃インクと淡インクを用いる系においては、一般に、シアンの入力信号値に対する記録媒体へのインク打ち込み量の関係は図19のようになる。すなわち、低濃度領域では粒状感の目立ち難いライトシアンインクのみを用い、中濃度領域までライトシアンインクの打ち込み量を増加させていく。ライトシアンインクの打ち込み量が記録媒体に対する打ち込み量の限界近くに達すると、今度はシアンインクの打ち込み量を徐々に増やし、これに伴いライトシアンインクの打ち込み量は減らしていく。このように、ライトシアンインクで埋め尽くされた状態の記録媒体に粒状感の目立ちやすいシアンインクを少しずつ記録することによって、シアンインクの粒状感を目立たせること無く、滑らかな階調表現を行うことが出来る。
【0100】
しかし、インク色に対応した信号値でMCS処理を行うと、ライトシアンインクの打ち込み量が増大する場合もあるし、減少する場合もある。すなわち、図において補正前はLc曲線1であったライトシアンインクのインク打ち込み量が、MCS処理によってLc曲線2となり、ライトシアンインクの打ち込み量が増加する場合もある。この場合、上記2つ目のメリットで説明したように、記録媒体のインク打ち込み量の限界を超えてしまうおそれが生じる。一方、補正前はLc曲線1であったライトシアンインクのインク打ち込み量が、MCS処理によってLc曲線3となり、ライトシアンインクの打ち込み量が減少する場合もある。このような場合には、粒状感の目立ちやすいシアンインクを少しずつ記録する中濃度近傍において、ライトシアンインクの打ち込み量が十分でないので、シアンインクの粒状感が悪化する恐れが生じる。上述した実施形態のようにRGB信号の状態でMCS処理を行えば、シアン濃度自体が例えば図の点Aから点Bに移動するような補正となるので、インク打ち込み量が記録媒体の限界を超えることもなく、またシアンインクの粒状感が目立つようなことも無い。
【符号の説明】
【0101】
403 入力色変換処理部
404 MCS処理部
405 インク色変換処理部
406 HS処理部
407 TRC処理部
408 量子化処理部
409 出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記複数色のインクに対応した色信号に変換する過程において、色信号の処理を行う画像処理装置であって、
前記記録ヘッドにおける前記ノズルの位置に対応づけられた変換テーブルパラメータを用いて、前記入力画像データを変換する変換手段と、
少なくとも2色のインクの重ね合わせにより形成される色を設定する第1の設定手段と、
該第1の設定手段によって設定された色に基づいて複数の検出色を設定し、該複数の検出色のパッチからなる第1の画像データを生成する第1の生成手段と、
前記記録ヘッドにより前記第1の画像データの画像を記録する第1のテストプリント手段と、
前記第1のテストプリントによって記録された画像において、前記複数の検出色のうち前記複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらが確認された検出色を特定検出色として、および当該色むらが確認された前記記録ヘッドにおけるノズルの位置を特定位置として、情報を取得する第1の情報取得手段と、
前記特定位置以外のノズルの位置に対して前記特定検出色を設定し、前記特定位置のノズルに対して前記特定検出色とは異なる複数の色を設定した、複数の色補正パッチからなる第2の画像データを生成する第2の生成手段と、
前記記録ヘッドにより前記第2の画像データの画像を記録する第2のテストプリント手段と、
前記第2のテストプリントにおいて、前記第1のテストプリントよりも色むらが低減されている色補正パッチの情報を取得する第2の情報取得手段と、
該第2の情報取得手段によって取得された情報に従って、前記特定位置のノズルに対応する前記変換テーブルパラメータを形成する形成手段と、
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記記録ヘッドには前記複数のノズルが前記記録媒体の幅に対応する分だけ配列し、前記記録ヘッドと前記記録媒体とが前記配列の方向とは異なる方向に相対移動することにより前記記録媒体に画像が記録されることを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記第1の生成手段は、前記第1の設定手段によって設定された色に対し、使用するインクの組み合わせと割合が類似する色の複数を、前記複数の検出色として設定することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記変換手段は、前記入力画像データと等しい形式の色信号に変換し、
前記画像処理装置は、前記変換の後の色信号を、前記入力画像データとは異なる形式の前記異なる色のインクに対応した複数の色信号に変換するインク色変換手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記入力画像データは、RGB信号であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像処理装置は、記録媒体の種類を設定する手段と、前記入力画像データのRGB信号を、前記異なる色のインクが前記設定された種類の記録媒体において色再現が可能な色空間に対応した画像データに変換する手段を更に備えていることを特徴とする請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記変換手段において、前記記録ヘッドにおける前記ノズルの位置に対応づけられた前記変換テーブルパラメータは、前記変換手段に入力される色信号に対応づけて設定されるようなルックアップテーブルであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1のテストプリントまたは前記第2のテストプリントにおいて、記録媒体に前記記録ヘッドにおけるノズルの位置が特定できる識別子を記録することを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記第1の情報取得手段は、前記特定位置の両端および色ずれが最も強く現れる位置の少なくとも1つの情報を取得することを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記複数色のインクのうち1色のインクにより形成される画像において、前記複数のノズルのそれぞれで記録される画像の濃度の違いを低減するように、前記記録ヘッドにおける前記ノズルの位置に対応づけて、色信号を変換する手段を更に備えることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記複数色のインクは、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックのインクを少なくとも含んでいることを特徴とする請求項1乃至10のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項12】
複数色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記複数色のインクに対応した色信号に変換する過程において、色信号の処理を行う画像処理方法であって、
前記記録ヘッドにおける前記ノズルの位置に対応づけられた変換テーブルパラメータを用いて、前記入力画像データを変換する変換工程と、
少なくとも2色のインクの重ね合わせにより形成される色を設定する第1の設定工程と、
該第1の設定工程によって設定された色に基づいて複数の検出色を設定し、該複数の検出色のパッチからなる第1の画像データを生成する第1の生成工程と、
前記記録ヘッドにより前記第1の画像データの画像を記録する第1のテストプリント工程と、
前記第1のテストプリントによって記録された画像において、前記複数の検出色のうち色むらが確認された検出色を特定検出色として、および当該色むらが確認された前記記録ヘッドにおけるノズルの位置を特定位置として、情報を取得する第1の情報取得工程と、
前記特定位置以外のノズルの位置に対して前記特定検出色を設定し、前記特定位置のノズルに対して前記特定検出色とは異なる複数の色を設定した、複数の色補正パッチからなる第2の画像データを生成する第2の生成工程と、
前記記録ヘッドにより前記第2の画像データの画像を記録する第2のテストプリント工程と、
前記第2のテストプリントにおいて、前記第1のテストプリントよりも色むらが低減されている色補正パッチの情報を取得する第2の情報取得工程と、
該第2の情報取得手段によって取得された情報に従って、前記特定位置のノズルに対応する前記変換テーブルパラメータを形成する形成工程と、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項13】
複数色のインクを吐出する複数のノズル列が配列された記録ヘッドを用いて記録媒体に画像を記録するために、入力画像データを前記複数色のインクに対応した色信号に変換する過程において、色信号の処理を行う記録装置であって、
前記記録ヘッドにおける前記ノズルの位置に対応づけられた変換テーブルパラメータを用いて、前記入力画像データを変換する変換手段と、
少なくとも2色のインクの重ね合わせにより形成される色を設定する第1の設定手段と、
該第1の設定手段によって設定された色に基づいて複数の検出色を設定し、該複数の検出色のパッチからなる第1の画像データを生成する第1の生成手段と、
前記記録ヘッドにより前記第1の画像データの画像を記録する第1のテストプリント手段と、
前記第1のテストプリントによって記録された画像において、前記複数の検出色のうち前記複数のノズル間の吐出特性のばらつきに起因して生じる色むらが確認された検出色を特定検出色として、および当該色むらが確認された前記記録ヘッドにおけるノズルの位置を特定位置として、情報を取得する第1の情報取得手段と、
前記特定位置以外のノズルの位置に対して前記特定検出色を設定し、前記特定位置のノズルに対して前記特定検出色とは異なる複数の色を設定した、複数の色補正パッチからなる第2の画像データを生成する第2の生成手段と、
前記記録ヘッドにより前記第2の画像データの画像記録する第2のテストプリント手段と、
前記第2のテストプリントにおいて、前記第1のテストプリントよりも色むらが低減されている色補正パッチの情報を取得する第2の情報取得手段と、
該第2の情報取得手段によって取得された情報に従って、前記特定位置のノズルに対応する前記変換テーブルパラメータを形成する形成手段と、
を備えることを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−80451(P2012−80451A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−225750(P2010−225750)
【出願日】平成22年10月5日(2010.10.5)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】