説明

画像処理装置、該画像処理装置を用いた画像処理方法及び該画像処理方法の各工程を実行するプログラム

【課題】 従来のルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う画像処理装置は、画像データを転送するホスト装置に負荷をかけるという課題があった。
【解決手段】 本発明の画像処理装置は、予めルックアップテーブルを更新可能な不揮発性の記憶手段に記憶し、自律的にホスト装置に照会し、前記ホスト装置に保存されているルックアップテーブルを照会結果として受信する。受信されたルックアップテーブルにより前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルを更新し、更新されたルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装置内の記憶媒体に記憶されたルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う画像処理装置、その画像処理装置を用いた画像処理方法及び該画像処理方法の各工程を実行するプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ルックアップテーブル(以下、LUT)を用いて画像データの色変換を行う画像処理装置が知られている。
【0003】
LUTの更新を行うために、LUT更新間隔が、一定の閾値を超えた場合に、ホストコンピュータ側でLUTの更新を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特登録03659282号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来例では、ホストコンピュータ等のホスト装置でLUTの更新を行うので、画像処理装置に画像データとともにLUTを転送しなければならず、データの転送の際、ホスト装置に負荷がかかっていた。
【0005】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の課題を鑑みてなされたものであり、データを転送する際、ホスト装置に負荷をかけることなく、新たなLUTを用いて画像データの色変換を行うことができる画像処理装置を提供することである。また、該画像処理装置を用いた画像処理方法、及び、該画像処理方法の各工程を実行するプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成させるための本発明の代表的な構成は、更新用のルックアップテーブルを保存するホスト装置に接続され、ルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う画像処理装置であって、
予めルックアップテーブルを記憶しており、該ルックアップテーブルを更新可能な不揮発性の記憶手段と、
自律的に前記ホスト装置に照会し、前記ホスト装置に保存されているルックアップテーブルを照会結果として受信する照会手段と、
前記照会手段により受信されたルックアップテーブルにより前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルを更新する更新手段と、
前記更新手段により更新されたルックアップテーブルを用いて前記画像データの色変換を行う色変換手段とを有することを特徴とする画像処理装置である。
【0007】
また、上記の目的を達成させるための別の本発明は、更新用のルックアップテーブルを保存するホスト装置に接続され、更新可能な不揮発性の記憶手段に記憶されるルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う画像処理装置を用いた画像処理方法であって、
前記更新可能な不揮発性の記憶手段にルックアップテーブルを記憶させる記憶工程と、
自律的に前記ホスト装置に照会し、前記ホスト装置に保存されているルックアップテーブルを照会結果として受信する照会工程と、
前記照会工程により受信されたルックアップテーブルにより前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルを更新する更新工程と、
前記更新工程により更新されたルックアップテーブルを用いて前記画像データの色変換を行う色変換工程とを有することを特徴とする画像処理方法である。
【0008】
さらに、上記の目的を達成させるための別の本発明は、前記画像処理方法の各工程を実行することを特徴とするプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像処理装置の記憶媒体に記憶されたLUTを用いてデータの色変換を行うため、ホスト装置から画像データとともにLUTを転送する必要がなく、記録時のデータを転送する際、ホスト装置の負荷を軽減できるという利点がある。また、ユーザは、複雑な操作をすることなく、新たなLUTへの更新が可能であるとともに、ドライバに付属するLUT等の更新を、ホスト装置でする必要がないという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本実施例は、画像処理装置の記憶媒体に記憶されたLUTを用いて色変換を行い、外部装置からのデータ転送負荷が軽減できること、ユーザによる複雑な操作なしに、LUTの更新が可能であることを特徴とした実施例である。
【0011】
なお、この明細書において、「記録」とは、文字、図形等有意の情報を形成する場合のみならず、有意無意を問わず、広く記録媒体上に画像、模様、パターン等を形成する、又は媒体の加工を行う場合も表すものとする。また、人間が視覚で知覚し得るように顕在化したものであるか否かを問わない。
【実施例】
【0012】
以下、本発明の実施例について、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明に関わる好適な実施例における画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。図1において、画像処理装置100について説明する。CPU101は、本発明における照会手段、判断手段、更新手段及び色変換手段等又はこれらの一部として、画像処理装置100全体の制御を司っている。ROM102は画像処理装置100全体の制御プログラム及び各種データを格納している。RAM103は画像処理装置100の動作時に各種データの書き込みや読み出しが行われる。不揮発性メモリ111は、更新可能な不揮発性の記憶手段であり、予めLUTが記憶されている。LUTが更新される際は、更新されたLUTが新たにここに記憶される。不揮発性メモリ111の具体例としては、EPROM、EEPROM、FeRAM等が挙げられる。通信インタフェース(通信I/F)104は外部と通信を行うための通信手段である。記録ヘッドホルダ106は着脱可能な記録ヘッド105を画像処理装置100に固定している。インクタンクホルダ108は着脱可能なインクタンク107を画像処理装置100に固定している。パネル109は画像処理装置100のインタフェースであり、更新可能なルックアップテーブルがあった場合にこれを通知することができ、また、通知されたルックアップテーブルを取得するための指示をすることができる。なお、画像処理装置100の各構成部はシステムバス110により接続されている。
【0014】
次に、外部装置であるホストコンピュータ200について説明する。CPU201はホストコンピュータ200全体の制御を司っている。HDD202、FDD203はブートプログラム、各種アプリケーションソフト、画像情報や記録設定ファイル、プリンタドライバなどを格納している。ROM204は各種データやプログラムを記憶している。RAM205は各種データの書き込みや読み出しが行われる。VRAM206には、更新可能なルックアップテーブルがあった場合にこれを通知し、画像表示や記録設定画面をユーザに提供するCRT207が接続されている。また、通信インタフェース(通信I/F)208は外部との通信を行うための通信手段である。システムバス209はホストコンピュータ200の各構成部を接続している。また、ホストコンピュータ200には、不図示のインタフェースを介して、ルックアップテーブルを取得するための指示等をすることができるキーボード及びポインティングデバイスが接続されている。
【0015】
ホストコンピュータ200と画像処理装置100は通信ケーブル300により接続されている。ここで、通信ケーブル300は、パラレルケーブル、SCSIケーブル、シリアルケーブル、ネットワークケーブル等の汎用ケーブルでも、専用のケーブルでも何れでも構わない。ただし、ホストコンピュータ200が、サーバ機能を有し、更新用のLUTを保存するホスト装置である場合は、画像処理装置100が自律的に照会することが可能なケーブルである必要がある。ホストコンピュータ200から画像処理装置100に記録データである画像データが送信され、画像処理装置100は記録を行う。
【0016】
図2は、本発明の画像処理装置100が接続されたネットワークシステム構成を示す図である。
【0017】
ネットワーク(LAN)400に、画像処理装置100、ホストコンピュータ200の他、更新用のLUTを保存するホスト装置であるLUTサーバ402が接続されている。このようなネットワークシステム構成により、画像処理装置100は、起動に伴ってLUTサーバ402と通信可能な状態となり、LUTサーバ402に自律的に照会し、LUTサーバ402に保存されたLUTを受信することが可能となる。
【0018】
図6は、本発明の画像処理装置100が接続された別のネットワークシステム構成を示す図である。
【0019】
ネットワーク(LAN)400に、画像処理装置100、サーバ機能を有し、更新用のLUTを保存するホスト装置であるホストコンピュータ200が接続されている。ここでは、ホストコンピュータ200の電源は常時オンとなっている。このため、画像処理装置100は、起動に伴ってホストコンピュータ200と通信可能な状態となり、ホストコンピュータ200に自律的に照会し、ホストコンピュータ200に保存されたLUTを受信することが可能となる。
【0020】
図3は、本実施例における画像処理装置100のLUTの更新に関する動作を示すフローチャートであり、図4は、本実施例における画像処理装置100の記録時の動作を示すフローチャートである。また、図5は、LUTの内容を示す図である。
【0021】
まず、図3において、本実施例におけるLUTの更新について説明する。画像処理装置100は、起動すると(ステップS510)、ネットワーク上のLUTサーバと通信を確立する(ステップS520)。次に、画像処理装置100は照会手段によりLUTサーバに照会し、LUTサーバはLUTの検索を行い、画像処理装置100は検索されたLUTを受信する(ステップS530)。ここで、LUT更新の判断手段により、図5で示されるLUTの機種別ID701とLUTバージョン702から、更新可能なLUTがあるか否かを判断する(ステップS540)。具体的には、最初に、検索されたLUTにおける、LUTの機種別ID701が画像処理装置100の機種と合致するか否かを判断する。次に、検索されたLUTのLUTバージョン702が、画像処理装置100に記憶されているLUTのLUTバージョンよりも新しいか否かを判断する。そして、機種が合致し、検索されたLUTのLUTバージョンが新しい場合に更新可能なLUTがあると判断する。ステップS540で、更新可能なLUTがなかった場合には、LUTの更新は行わずに、終了する。ステップS540で、更新可能なLUTがあった場合には、外部装置であるホストコンピュータのCRT等、及びパネルにより通知し(ステップS550、ステップS560)、LUTを更新するか否かをユーザに選択させる(ステップS570)。ステップS570で、ユーザがLUTの更新をしないと選択した場合は、LUTの更新をせずに終了する。ステップS570で、ユーザがLUTの更新をすると選択した場合は、LUT取得手段により、LUTサーバから新たなLUTを取得する(ステップS580)。そして、LUT更新手段により、画像処理装置100の更新可能な不揮発性の記憶手段である不揮発性メモリ等の記憶媒体に記憶されているLUTの更新を行い(ステップS590)、終了する。
【0022】
次に、図4において、本実施例における画像処理装置100の記録時の動作について説明する。画像処理装置100がホストコンピュータ200から画像データを受信したときに(ステップS610)、LUTの更新中ではなかったら(ステップS620)、受信したデータの記録を行い(ステップS660)、記録を終了する。ステップS620で、LUTの更新中だった場合には、LUTの更新を継続するか、LUTの更新をキャンセルして、記録を行うかを、ユーザに選択させる(ステップS630)。ステップS630でLUTの更新のキャンセルを選択した場合は(ステップS640)、LUTの更新は行わず、画像処理装置100の不揮発性メモリ等の記憶媒体に記憶されるLUTを用いた色変換処理後に記録を行い(ステップS660)、記録を終了する。ステップS630で、LUTの更新の継続を選択した場合は、画像処理装置100の不揮発性メモリ等の記憶媒体に記憶されるLUTが更新されてから(ステップS650)、新たなLUTを用いた色変換処理後に記録を行い(ステップS660)、終了する。
【0023】
なお、本発明に関わる画像処理方法を実行するプログラムは、CD−ROMやフロッピーディスク(登録商標)等の記憶媒体から、又は電子メールやパソコン通信等のネットワークを介して、画像処理装置又は該画像処理装置と接続するPC等にロードされ実行されてもよい。例えば、画像処理装置のRAMやPCのHDDにこのプログラムを格納することができる。これらの場合でも本発明は適用される。また、本発明は、複写機や複合機、スキャナなど、他の装置にも適用される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に関わる好適な実施例における画像処理装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の画像処理装置が接続されたネットワークシステム構成を示す図である。
【図3】本発明の実施例における画像処理装置のLUTの更新処理に関する動作を示すフローチャートである。
【図4】本発明の実施例における画像処理装置の記録時の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例におけるLUTの内容を示す図である。
【図6】本発明の画像処理装置が接続されたネットワークシステム構成を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
100 画像処理装置
101 CPU
102 ROM
103 RAM
104 通信インタフェース
111 不揮発性メモリ
200 ホストコンピュータ
201 CPU
202 ハードディスクドライブ
204 ROM
205 RAM
208 通信インタフェース
300 通信ケーブル
400 ネットワーク(LAN)
402 LUTサーバ
700 ルックアップテーブル
701 機種別ID
702 LUTバージョン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
更新用のルックアップテーブルを保存するホスト装置に接続され、ルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う画像処理装置であって、
予めルックアップテーブルを記憶しており、該ルックアップテーブルを更新可能な不揮発性の記憶手段と、
自律的に前記ホスト装置に照会し、前記ホスト装置に保存されているルックアップテーブルを照会結果として受信する照会手段と、
前記照会手段により受信されたルックアップテーブルにより前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルを更新する更新手段と、
前記更新手段により更新されたルックアップテーブルを用いて前記画像データの色変換を行う色変換手段とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ホスト装置は、サーバ機能を有することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記照会手段は、前記画像処理装置が起動され、前記ホスト装置と通信可能な状態になるのに伴って、照会を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記照会手段により受信されたルックアップテーブルが更新可能なルックアップテーブルか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段により更新可能と判断されたルックアップテーブルがあった場合に、更新可能と判断されたルックアップテーブルがあったことを通知する通知手段と、
前記通知手段により通知されたルックアップテーブルを取得するための指示手段とをさらに有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記受信されたルックアップテーブル及び前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルは、機種別ID及びバージョン情報が付加されており、
前記判断手段は、
前記画像処理装置の機種が、前記受信されたルックアップテーブルの機種別IDによる機種と合致し、
前記受信されたルックアップテーブルのバージョン情報が、前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルのバージョン情報よりも新しい場合に、
更新可能なルックアップテーブルであると判断することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記画像データに基づいて記録を行う記録手段と、
前記更新手段がルックアップテーブルの更新中に画像データが入力された場合に、
前記更新をキャンセルし、前記色変換手段に更新前のルックアップテーブルを用いた色変換を行わせ、前記記録手段に記録を行わせるか、
前記更新を継続し、前記色変換手段に更新後のルックアップテーブルを用いた色変換を行わせ、前記記録手段に記録を行わせるかを、
選択するための指示を前記ホスト装置から受信し、該受信した指示に従って制御する制御手段とを、
さらに有することを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
更新用のルックアップテーブルを保存するホスト装置に接続され、更新可能な不揮発性の記憶手段に記憶されるルックアップテーブルを用いて画像データの色変換を行う画像処理装置を用いた画像処理方法であって、
前記更新可能な不揮発性の記憶手段にルックアップテーブルを記憶させる記憶工程と、
自律的に前記ホスト装置に照会し、前記ホスト装置に保存されているルックアップテーブルを照会結果として受信する照会工程と、
前記照会工程により受信されたルックアップテーブルにより前記記憶手段に記憶されているルックアップテーブルを更新する更新工程と、
前記更新工程により更新されたルックアップテーブルを用いて前記画像データの色変換を行う色変換工程とを有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理方法の各工程を実行することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−153789(P2008−153789A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337580(P2006−337580)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】