説明

画像処理装置およびその制御方法

【課題】 簡易な方法でスクリーン処理(組織的ディザ法)を適切に補正し、良好なハーフトーン処理結果を出力する。
【解決手段】 前記入力画像データをスクリーン処理するスクリーン処理手段と、前記入力画像データにおける注目画素に対して、前記スクリーン処理手段によって生成されたスクリーン画像データにおいてモアレが発生しているか否かを判定する判定手段と、前記注目画素において、前記判定手段による判定結果に応じて、スクリーン画像データを構成するスクリーン画素値か、前記スクリーン画像データのうち前記判定手段によりモアレが発生していると判定された画素を、前記入力画像データを構成する入力画素値に置換した中間データを生成した後、前記中間データに基づき前記入力画素値を印刷可能な画素値に変換した値、のいずれかを印刷可能な画像データにおける前記注目画素の値として出力する出力手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーン処理した結果を適切に補正し、良好なハーフトーン画像を出力する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータで処理した画像データを印刷することが広く行われている。しかしながら、コンピュータ上で画像データが表現する階調数に対して、一般に、印刷装置や表示装置などの出力装置が表現可能な階調数の方が少ない場合がある。このため、画像データの階調数を出力装置で表現可能な階調数に変換するハーフトーン処理がなされることが多い。
【0003】
ハーフトーン処理のひとつとして、画像データを周期的に変動する閾値と比較することによって出力値を決定するスクリーン処理(組織的ディザ法)が知られている。スクリーン処理を施すことにより、画像の濃淡を面積階調で表現したスクリーン画像が得られる。特に階調の変化が少ない平坦部においては、均等な間隔で同一形状の網点が形成されるため、良好な画像が得られる。ところが、スクリーン処理した画像データには、視覚的に目立つ繰り返しパターン(モアレ)が発生し、画質が劣化する場合がある。また画像が細線を含む場合、細線の濃度や角度によって細線の再現性が低下してしまうことがある。
【0004】
以上のような画像の劣化を抑制し、良好なスクリーン処理結果を得るための技術が提案されている。たとえば、ハーフトーン処理する画像においてモアレが発生しやすい位置を検出し、モアレが発生しやすい領域においては、事前にモアレの原因となる高周波成分を除去することで、モアレを抑制する方法がある。(特許文献1)
また、スクリーン処理(組織的ディザ法)と誤差拡散法を組み合わせる方法も提案されている。たとえば、組織的ディザ法と誤差拡散法を組み合わせることにより、ディザ処理による処理前後の誤差の偏りを低減する方法がある。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平9−238259号広報
【特許文献2】特開2005−252583号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら特許文献1に記載された方法では、モアレの発生を低減することはできるが、一部領域において高周波成分が失われてしまう。中濃度のエッジ部から高周波成分を除去すると、エッジ部のコントラストが低下して不鮮明になり、好ましい画像が得られない場合がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された方法では、各画素に対してディザ処理と誤差拡散処理のどちらを適用するか選択している。しかしながら、事前に適切なハーフトーン処理選択ためには、複雑な処理を必要とする。本発明の目的は、簡易な方法でスクリーン処理(組織的ディザ法)を適切に補正し、良好なハーフトーン処理結果を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために本発明にかかる画像処理装置は、入力画像データを印刷可能な画像データに変換する画像処理装置であって、前記入力画像データをスクリーン処理するスクリーン処理手段と、前記入力画像データにおける注目画素に対して、前記スクリーン処理手段によって生成されたスクリーン画像データにおいてモアレが発生しているか否かを判定する判定手段と、前記注目画素において、前記判定手段による判定結果に応じて、スクリーン画像データを構成するスクリーン画素値か、前記スクリーン画像データのうち前記判定手段によりモアレが発生していると判定された画素を、前記入力画像データを構成する入力画素値に置換した中間データを生成した後、前記中間データに基づき前記入力画素値を印刷可能な画素値に変換した値、のいずれかを前記印刷可能な画像データにおける前記注目画素の値として出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
以上、本発明によれば、簡易な方法によりスクリーン処理結果を適切に補正し、良好なハーフトーン処理結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】画像処理部の構成を示すブロック図
【図2】図1における濃度変動判定部102の詳細なブロック図
【図3】スクリーン処理の概要を示す図
【図4】画像処理部の構成を示すブロック図
【図5】図2における濃度変動判定部401の詳細なブロック図
【図6】実施例3に係るドット安定化部104の詳細なブロック図
【図7】図6における判定部601で用いられる係数を示す図
【図8】実施例3で用いられる出力特性テーブルを示す図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本発明を好適な実施例に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例において示す構成は一例にすぎず、本発明は図示された構成に限定されるものではない。
【実施例1】
【0012】
図1は本実施例に適用可能な画像処理部の構成を示す図である。図1に示す画像処理部は、入力された画像データ(以下、入力画像データ)をより少ない階調数のハーフトーン画像データに変換する。図1に示す画像処理部は、スクリーン処理部101、濃度変動判定部102、画像データ選択部103、および、ドット安定化部104を有する。以下、各構成の概要について説明する。
【0013】
スクリーン処理部101は、入力画像データに対してスクリーン処理(組織的ディザ処理)を施し、より少ない階調数である画像データ(以下、スクリーン画像データ)に変換する。スクリーン処理部101は、画素ごとに入力画素値と対応する閾値とを比較し、量子化する。スクリーン処理部が量子化した各画素の値をスクリーン画素値と呼ぶことにする。スクリーン画像データは、各画素を表すスクリーン画素値によって構成される。すなわち、スクリーン処理部101は入力画像データを構成する各入力画素値を、スクリーン処理によってスクリーン画像データを構成するスクリーン画素値に変換する。
【0014】
ここではスクリーン処理部101は、入力画像データを2値化する。なお、スクリーン処理部は、印刷装置など所望の画像形成装置が表現可能な階調数に変換すればよい。つまり、スクリーン処理部101によって量子化されたスクリーン画像データは、ドットを出力するのに安定したデータであると言える。
【0015】
また、通常、スクリーン画像データは、入力画像データより少ないビット数で表現されるが、ここでは入力画像データの階調数に換算した量子化代表値に相当する値が出力される。つまり入力画像データが8ビット(0〜255)の場合、スクリーン処理後の出力は0または255のいずれかが出力される。
【0016】
濃度変動判定部102は入力画像データとスクリーン処理によって得られるスクリーン画像データの差分に基づいて、スクリーン画像データで発生している濃度変動(モアレ)を検出する。濃度変動判定部102の詳細は後述する。
【0017】
選択部103は、濃度変動判定部102による判定結果に基づいて、画素毎にスクリーン画素値か入力画素値のいずれかを選択する。濃度変動が大きいと判定された画素においては、選択部103は入力画素値を選択する。一方、濃度変動が小さいと判定された画素においては、スクリーン処理部101による出力であるスクリーン画素値を選択する。言い換えれば、スクリーン処理部101により得られたスクリーン画像データにおいて、スクリーン処理による濃度変動が大きい画素に対しては、スクリーン画素値を入力画素値に置き換える。これにより、スクリーン処理によって発生したモアレを解消した中間データを得ることができる。この中間データは、スクリーン処理部101におけるスクリーン処理によって得られた安定した構造をもっている。また中間データを構成する各画素値は、0または正の値である。ただし、中間データは一部の画素においてスクリーン処理部101によって得られたデータではないため、所望の画像形成装置がドットを形成するのに安定したデータとは言えない。つまり、入力画素値に置き換えられた画素は、ドットを形成するのに不安定なデータで表されていることになる。
【0018】
ドット安定化部104は選択部103から得られる中間データにおいて、ドットが安定してないデータを検出し、ドットが安定するデータに置換する。
【0019】
以下、各部の処理を詳細に説明する。
【0020】
図3はスクリーン処理部101で用いられる閾値群を示している。図中、太線で囲まれた領域がセルを示し、セル内の各数字は閾値の番号を示している。ここでは32個の値を持っており、それぞれの閾値に基づいて2値化される。よってセル内の全ての画素値が0の場合から全スクリーン画素値が1の場合まであり、セルにおけるスクリーン画素値の総和は0以上32以下となるため、33階調の表現ができる。
【0021】
なお上述したように、スクリーン処理部101は、入力画素値を二値化するものの実際には2値で出力するのではなく、量子化代表値に相当する値を出力する。つまり、閾値より小さい場合は0を、閾値より大きい場合は255を出力する。
【0022】
次に、図2を用いて濃度変動判定部102の詳細な動作を説明する。
【0023】
濃度変動判定部102は、減算部201、フィルタ処理部202、および比較部203によって構成される。減算部201は画素ごとに入力画素値とスクリーン処理部101から得られるスクリーン画素値との差分値を算出する。そして減算部201は、各画素の差分値が構成する差分データを出力する。フィルタ処理部202は、差分データに対して図2(b)に示すフィルタによりフィルタ処理を施し、注目画素を中心とする局所的な領域における差分値の総和を、注目画素における濃度変動量として算出する。この濃度変動量は、入力画像データとスクリーン画像データとの差分の低周波成分に相当する。図2(b)に示すフィルタは、図3に示したスクリーン処理部101が用いる閾値群のセルの大きさに対応している。即ち、図2(b)に示すフィルタは、セル内の画素値の総和を求めるようになっている(図中の小さい四角で囲まれた画素が注目画素である)。また、フィルタ処理部202はスクリーン処理における同一閾値の係数の総和が等しくなるように係数を設定する。例えば、図3に示す閾値群におけるセル(太線で囲まれた領域)を6×8タップのフィルタで処理する場合は、図2(c)に示すフィルタ係数となる。但し、図2(c)に示すフィルタの出力は図2(b)に示すフィルタの2倍になる。従って、同じ重みの結果を得るには図2(c)に示すフィルタの出力を1/2にする必要がある。
【0024】
図3が示す閾値群におけるセル(太線で囲まれた領域)を右方向に1つずつ平行移動しても、セル内の全ての閾値は1つも重複することなく32種類存在している。よって、セルに対応する画素群を表す入力画像データが一様であるとき、セル内の各入力画素値と各スクリーン画素値との差分の総和(濃度変動量)は、量子化誤差(ここでは量子化誤差は−128〜127)以上の差は発生しないはずである。しかしながら、量子化誤差を上回る濃度変動量が得られることがある。これは、入力画像データにはない濃度変動がスクリーン画像データ上で発生していることがあるためである。このような入力画像データにはない濃度変動が、モアレとなって視覚的に好ましくない模様を発生させる。
【0025】
比較部203は、注目画素における濃度変動量と閾値TH1とを比較し、濃度変動量が閾値TH1より大きい場合、注目画素はスクリーン処理によってモアレが発生している画素であると判断する。モアレが発生している画素である判断すると、選択部103が注目画素の中間画素値として、入力画素値を選択するように選択部103を制御する。一方、濃度変動量が閾値TH1以下の場合、注目画素はスクリーン処理によるモアレはない画素であると判断する。そして、選択部103が注目画素の中間画素値として、スクリーン処理部101から得られるスクリーン画素値を選択するように制御する。
【0026】
上述したように、セルを平行移動しても全ての閾値がセル内に存在するので、濃度変動判定部102における処理は1画素ごとに行うことができる。なお、グラデーション画像においてはセルの領域を表す入力画像データは一様でないため、量子化誤差以上の差分が発生する場合がある。しかしながら、グラデーション画像には高周波成分がないのでモアレは発生しない。従って、グラデーション画像においては量子化誤差以上の濃度変動量が算出されても、スクリーン処理部101の出力を選択した方が良い。そこで、モアレが生じているかどうかを判定するための閾値TH1には、量子化誤差の1.5倍〜2倍程度の値とするのが好ましい。
【0027】
ドット安定化部104の具体な動作を説明する。
【0028】
前述の通り、中間データにおける一部画素はドットを形成するのに、安定したデータではない。よって、出力装置がドットを形成しようとすると、一部の画素を再現できず、全体として入力画像データの濃度より濃度が落ちた出力データになってしまう。そこでドット安定化部104は、一部の2値化されていない画素(入力画素に置き換えられた画素)のために画像を表すドットが一部欠落しないように、ドット安定化部104は中間データを画像形成装置が安定して出力できる印刷用データに変換する。
【0029】
ここでは、図示しないこの後のパルス幅変調回路(以下PWM回路と記す)における最小パルス幅を保証するような動作を行う。パルス幅変調回路とは、画像形成装置が出力する発光信号を生成するため、入力画像データに基づいて、入力画像データをパルス幅に変調することである。このパルス幅変調回路によって決定されたパルス幅が、画像形成装置が安定して出力できる幅をもたない場合、画像が欠損したり、濃度が薄くなったりしてしまう。そこで中間データのうち、入力画素値に置換された画素において十分なパルス幅に変換されないほど小さい中間画素値は補正する必要がある。そこでドット安定化部104は、注目画素における中間画素値が予め設定した最小値未満で、かつ近傍画素に0でない中間画素値をもつ画素が存在する場合、前記設定した値以上となるように、注目画素か近傍画素のうち値の大きな方の中間画素値に合算する。合算された方の画素を表す画素値は0になる。また、注目画素の左右に0でない値の画素がある場合は、PWM回路の位相を制御し、パルスが連続するようにしても良い。一方、注目画素の中間画素値が予め設定した最小値未満で、かつ近傍画素に0でない中間画素値が存在しない場合は、最小値に置換するようにしてもよい。
【0030】
このようにドット安定化部104は、中間データに対してドットを安定させるための処理を行い、印刷用データに変換する。中間データは、ほとんどの画素がスクリーン処理によって量子化されているが、一部の画素においては入力画素値のままである。この中間データに基づいてドットを形成すると、一部画素では2値化されていないために不安定になってしまう。そこでドット安定化処理が必要となる。ドット安定化部104では、この一部の画素における入力画素値を、画像形成装置が安定してドットを出力できるデータにする。
【0031】
以上の処理により、ドット安定化部104は、スクリーン処理によるモアレがなく、かつ安定したドット形成を行うことのできる出力画像データを算出する。
【0032】
本実施例によれば、スクリーン処理に適する画素と適さない画素を判定し、適さない画素におけるスクリーン画素値を入力画素値に置換することで、スクリーン処理によるモアレを解消した中間データを得る。中間データは、スクリーン処理部101によって安定したスクリーン構造をもち、モアレも発生していない。また、モアレが発生している可能性の高い画素においては、入力画素値と置換する構成のため、減算器などを必要としない。そのため、スクリーン処理部101によって発生したモアレを解消する前後でレンジが変わることもなく、簡単な回路設計により構成できる。
【0033】
モアレに加えて細線の途切れ、エッジ部のジャギー、いずれも入力画像とスクリーン処理とが干渉することにより発生する。つまり、スクリーン処理によるモアレは基本的に、エッジ部において発生する。従って本実施例における中間データでは結果的に、入力画素値に置き換えられた画素はエッジ部に多く集中することになる。本実施例では、入力画素値に置き換えられた画素に対してドットが安定化するような処理を行う。以上のように、中間データ中のドット再現性の悪い画素による情報の欠落を防止するため、ドット形成するのに不安定なデータをドット再現性の良い印刷用データに変換する。これにより、安定したスクリーン構造を保ちながらモアレが抑制された良好なハーフトーン処理結果を算出することができる。
【0034】
さらに、適切なハーフトーン処理を選択するための複雑な構成を必要とせず、不必要なハーフトーン処理の切替によって画像が不連続になることもない。
【実施例2】
【0035】
本発明の第2の実施形態について以下に説明する。前述の実施例では、スクリーン処理における量子化誤差に着目して画素ごとに濃度変動を判定する構成について説明した。実施例2では、スクリーン処理部101が用いる閾値群を構成するセル内の特徴量に着目して濃度変動判定処理をする例について説明する。
【0036】
図4は実施例2に適用可能な画像処理部の構成を示す。実施例1と同じ動作をする構成については同じ符号を付し、説明を省略する。以下、実施例2における濃度変動判定部402の動作について説明する。
【0037】
図5は濃度変動判定部402の詳細な構成を示す。特徴量検出部501はセル内の特徴量を検出する。具体的には、公知のラプラシアンフィルタ等を用いることにより、各画素のエッジ量を検出し、セル内のエッジ量の絶対値を累積する。このようにして特徴量検出部501は、処理対象セルにおける累積エッジ量を算出する。比較部502は、累積エッジ量と閾値TH2とを比較する。累積エッジ量が閾値TH2より大きい場合、処理対象セルにおいてスクリーン処理による濃度変動(モアレ)が発生する可能性があると判断し、選択部103がセル内の各画素を表す中間画素値として、入力画素値をそれぞれ選択するように制御する。一方、累積画素値が閾値TH2以下の場合は、処理対象セルにおいてスクリーン処理による濃度変動(モアレ)が生じる可能性はないと判断し、選択部103が処理対象セル内の各画素を表す中間画素値としてスクリーン処理部101から得られるスクリーン画素値をそれぞれ選択するように制御する。
【0038】
前記特徴量としては、前記セル内のエッジ量の絶対値の最大値を検出するようにしてもよい。あるいは、前記セル内のダイナミックレンジ(最大値―最小値)を検出するようにしてもよい。ダイナミックレンジを特徴量とする場合は、セル内の画素のみで検出できるので、より回路が簡略化できる。
【0039】
上記以外の特徴量においても、セル内の平坦部(または濃度変化量)を検出できるものであれば、本実施例に適用可能である。
【0040】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態ではセル内の特徴量を評価することで、簡単な処理でスクリーン処理にて発生するモアレを解消することができる。通常、エッジ量等の特徴量は、他の画像処理との共用が可能であり、また、セル単位でデータの置換えを行えば、さらに回路を簡略化することが可能となる。
【実施例3】
【0041】
実施例1におけるドット安定化処理では、PWM回路での最小パルス幅を保証するような構成について説明した。実施例3では、画像の特徴に応じたドット安定化処理を行う例について説明する。図1におけるドット安定化部104以外は、実施例1と同じである。従って、実施例3ではドット安定化部104の動作についてのみ説明し、他の構成についてはその説明を省略する。
【0042】
図6は、実施例3に適用可能なドット安定化部104の詳細な構成を表す。ドット安定化部104は、判定部601、テーブル参照部602、係数決定部603、および出力部604を有する。判定部601は、入力された中間データに対して画像の特徴を判定する。テーブル参照部602は、判定部601から出力される特徴量に応じてテーブルを選択する。テーブルは、PWM値と出力濃度との特性(以下、PWM特性)に基づいて作成される。画像の特徴に応じて、画像形成装置係数決定部603は選択されたテーブルを用いて重み係数を決定する。その後、出力部604は決定された重み付き加算を算出し、安定したPWM値として出力する。以上が処理の一連の流れである。
【0043】
次に、各構成要素の詳細な動作を説明する。
【0044】
判定部601は、入力された画像のうち一部の2値化されていない画素(入力画素値に置換された画素)に対して、画像の特徴を検出する。本実施例では、画像の特徴としてベタ画像、線画像、孤立点画像の3つを設定する。着目画素が、どの特徴を有しているか近い画像を1つあるいは2つ選択するものとして説明する。具体的な判定方法は、着目画素の周囲画素の加重平均値を計算し、着目画素と加重平均値との大小関係から判定する。図7は、加重平均値を算出するためのフィルタである。このフィルタは、周囲画素が着目画素に与えるPWMの影響度を考慮して設定した重みである。PWM処理を行う時、画素単位で独立した露光処理を行うことは難しく、周囲画素からの影響を受ける。従って、PWM特性の判定には周囲画素も含めて着目画素の判定を行う。なお、ここでは周囲画素として3×3の領域を参照しているが、必ずしもこれに限るものではなく参照領域のサイズは特に限定しない。このようにして得られた加重平均値と着目画素の大小関係から、着目画素の特徴を判定する。具体的には、着目画素の画素値をD、算出した加重平均値をAVEとして、以下のような場合分けを行い、その結果を判定データとして出力する。同時に、算出した加重平均値AVEも出力する。
【0045】
(0)D≦AVE の時、周囲画素群の濃度が着目画素の濃度より大きく、画像はベタ画像としての特性を持っていると判定する。判定データとして“0”を出力する。
【0046】
(1)D/2≦AVE<D の時、周囲画素の濃度が着目画素の濃度より少し小さく、画像はベタ画像から線画像にかけての特性を持っていると判定する。判定データとして“1”を出力する。
【0047】
(2)AVE<D/2 の時、周囲画素の濃度は(1)の場合よりさらに小さく、画像は線画像から孤立点画像にかけての特性を持っていると判定する。判定データとして”2”を出力する。
【0048】
テーブル参照部602は、画像の特徴ごとに濃度値をPWM値に変換するテーブルを有する。入力された中間データをアドレスとしてテーブルを参照し、得られた結果を出力する。つまり、本実施例ではベタ画像テーブルと線画像テーブルと孤立点画像テーブルの3つを参照する。なお、濃度値とPWM値を対応付ける変換テーブルは予め公知の方法で作成しておけばよい。一例を挙げると、段階的なPWM値で印刷出力した画像の濃度値を測定し、そこから得られた特性の逆特性をテーブルにするという方法で作成が可能である。図8は、それぞれのテーブルを表すグラフの一例を示す。これによればベタ画像において、255の濃度を得るためには、対応する画素のPWM値を100程度にすればよいことがわかる。一方、周囲画素に黒画素(ドット)がない孤立点画像では、濃度255を表すためには対応する画素のPWM値を220程度にする必要があるということを示している。これは、孤立点画像では、ベタ画像に比べて安定していないため高いPWM値を出力する必要があるためである。また、いずれの画像においてもPWM値をある程度上げてドットを生成すると、ある値で出力濃度は飽和するため、最大濃度を出力するためにPWM値を最大にして出力する必要はない。以上のように、グラフの形状が非線形であり、画像の特徴によって特性が異なるのは、ドットの形成しやすさが周囲のドットの影響を受けるためである。
【0049】
判定部601から入力される判定データに応じて以下のようにテーブルを選択して参照する。
【0050】
(0)判定データが“0”の時、ベタ画像テーブルを参照し、注目画素の画素値Dとに対応する値(以下、テーブル参照値を出力する。
【0051】
(1)判定データが“1”の時、ベタ画像テーブルと線画像テーブルを参照し、注目画素の画素値Dと対応するテーブル参照値をそれぞれ出力する
(2)判定データが“2”の時、線画像テーブルと孤立点画像テーブルを参照し、注目画素の画素値Dと対応するテーブル参照値をそれぞれ出力する
判定データは着目画素と周囲画素の関係からテーブルを参照しているが、必ずしも選択したテーブルが入力画像における注目画素の濃度D−PWM特性を正確に表しているとは限らない。そこで選択した異なる2つのテーブル参照値から補間演算を行うことで適当なPWM値を算出する。
【0052】
係数決定部603は入力された画像データと判定部601から得られる判定データとにより、テーブル参照値に対する重み係数を決定する。入力画像データと、判定部601から入力された判定データと注目画素の周囲画素の加重平均値AVEより、以下のように重み係数を決定し、出力する。
【0053】
(0)判定データが“0”の場合、ベタ画像テーブルのテーブル参照値を計算に用いる。ここで、周囲画素の加重平均値(AVE)が最大値(8bitの場合255)に近い場合、仮に着目画素の画素値Dに対応するPWM値が0に近い値であっても、周囲画素からの影響を受けることにより、注目画素に対応する濃度は高くなる。そこで、このような場合には、得られたテーブル参照値から、最大濃度を出力するために必要なPWM値を減算したデータを用いる。例えば、最大濃度を出力するために必要なPWM値をNとすると、(テーブル参照値−N)という値を用いる。そして、それぞれの重み係数を以下のようにする。
【0054】
テーブル参照値の重み係数=(255−AVE)/(255−D)
(テーブル−N参照値)の重み係数=(AVE−D)/(255−D)
即ち、AVE=255の時、(テーブル参照値−N)のみを使用し、AVE=Dの時、ベタ画像テーブルによるテーブル参照値のみを使用する。
【0055】
(1)判定データが“1”の場合、ベタ画像テーブルと線画像テーブルそれぞれのテーブル参照値に対する重み係数を以下のようにする。
【0056】
線画像テーブルによるテーブル参照値の重み係数=(D−AVE)/(D/2)
ベタ画像テーブルによるテーブル参照値の重み係数=(AVE−D/2)/(D/2)
即ち、AVE=D/2の時、線画像テーブルのみを使用し、AVE=Dの時、ベタ画像テーブルのみを使用する。
【0057】
(2)判定データが“2”の場合、線画像テーブルと孤立点画像テーブルそれぞれのテーブルの重み係数を以下のようにする。
【0058】
孤立点画像テーブルによるテーブル参照値の重み係数=(D/2−AVE)/(D/2)
線画像テーブルによるテーブル参照値の重み係数=AVE/(D/2)
即ち、AVE=D/2の時、線画像テーブルのみを使用し、AVE=0の時、孤立点画像テーブルのみを使用する。
【0059】
出力部604は入力された1つまたは2つのテーブル参照値と重み係数から重み付き加算処理を行い、結果を出力する。ただし、(0)の判定データが“0”の場合、この計算結果が0を下回ることがある。その場合は0を出力する。出力部604からの出力結果は、画像の特徴ごとにテーブルを参照して得られる値に基づいて算出された値であり、画像形成装置が安定したドット生成を行うことのできる画像データとなっている。
【0060】
前述の通り、中間データでは大部分においてスクリーン処理された結果であり、スクリーン構造を有する。そこで第3の実施例によれば、中間データにおいて不安定な画素の出力値を決定するために、周囲の画素値を参照することで、より画像形成装置の形成過程を考慮したドットの安定化処理をすることができる。
【0061】
以上説明したように、実施例3では画像の特徴に応じて適切なPWM特性テーブルを選択し、補間処理して画像データを生成することで、安定したドット生成を行う画像データを出力することが出来る。
【0062】
Other Embodiments
なお、フィルタ処理部202は、前記スクリーン処理部101の全ての閾値毎のタップ係数の総和が等しくなるようなフィルタであれば、同様にモアレの検出が可能である。
【0063】
選択部103は、濃度変動判定部102による判定結果に従って、画素ごとにスクリーン画素値か入力画素値を中間画素値として選択し、各画素の中間画素値が構成する中間データを出力する。ここで得られる中間データでは、スクリーン画像データにおいて発生していたモアレは解消されていると言える。ただし、スクリーン処理によってモアレが発生していると判定された画素においては、スクリーン画素値を入力画素値に置換しているため、この中間データに基づいてドットを形成すると、一部画素では2値化されていないために不安定になってしまう。そこでドット安定化処理が必要となる。
【0064】
前述の実施例では、ドット安定化処理としてPWM処理を用いた方法と濃度変換テーブルを用いた方法を説明した。しかしながら、ドット安定化処理はこれに限るものではない。具体的には、スクリーン処理部101で行われるスクリーン処理とは異なる線数や網点角度のスクリーン処理、誤差拡散などでもよい。安定化処理部104では、ドットが再現されない画素を周囲の安定なドットに結合させる、または、統合して安定したドットにする等の処理が行えればよい。また、残ったドットが再現されない画素については、ドットが再現される最小値に変換してもよい。これにより、入力画像データとの濃度差を最小化しつつ、情報が欠落し細線が途切れるなどの画像劣化を防止する。
【0065】
本発明は、上述した実施例の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給することによっても実現できる。この場合、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU)がコンピュータが読み取り可能に記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出し実行することにより、上述した実施例の機能を実現する。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像データを印刷可能な画像データに変換する画像処理装置であって、
前記入力画像データをスクリーン処理するスクリーン処理手段と、
前記入力画像データにおける注目画素に対して、前記スクリーン処理手段によって生成されたスクリーン画像データにおいてモアレが発生しているか否かを判定する判定手段と、
前記注目画素において、前記判定手段による判定結果に応じて、スクリーン画像データを構成するスクリーン画素値か、前記スクリーン画像データのうち前記判定手段によりモアレが発生していると判定された画素を、前記入力画像データを構成する入力画素値に置換した中間データを生成した後、前記中間データに基づき前記入力画素値を印刷可能な画素値に変換した値、のいずれかを前記印刷可能な画像データにおける前記注目画素の値として出力する出力手段、
とを有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記スクリーン画像データと前記入力画像データとの差分の低周波成分を示す情報に基づいて、モアレを判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記スクリーン画像データの低周波成分と、前記入力画像データの低周波成分との差分を算出することにより、前記情報を得ることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記判定手段は、入力画像データとスクリーン画像データとの差分に対して、フィルタ処理することにより前記情報を得ることを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記スクリーン処理手段で用いられる閾値ごとのタップ係数の総和が等しいフィルタによりフィルタ処理することを特徴とする請求項4に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記入力画像データの特徴に基づいて、判定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記入力画像データにおいて前記スクリーン処理手段のセルに対応する画素群のエッジ量の絶対値の総和、またはエッジ量の絶対値の最大値により判定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記検出手段は、前記入力画像データにおいて前記スクリーン処理手段のセルに対応する画素群のダイナミックレンジにより判定することを特徴とする請求項6に記載の画像処理装置。
【請求項9】
さらに前記出力手段により得られた出力データに対してPWM処理を行うPWM処理手段とを有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記出力手段は、前記スクリーン画像データにおいて前記判定手段によりモアレが発生していると判定された画素で前記入力画素値を選択する選択手段と、
前記選択手段から得られる中間データに対して、前記印刷可能な画素値に変換する変換手段とを含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記変換手段は、前記中間データに対して、前記注目画素の画素値が予め設定した所定値未満で、かつ、近傍画素に0でない入力画素値に置換された画素が存在する場合、前記所定値以上となるように、前記注目画素か前記近傍画素のいずれかに合算することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記変換手段は、誤差拡散処理を行うことを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項13】
前記変換手段は、前記入力画素値が選択された画素値を複数集合させて、ドットが形成される最小値以上の値に変換することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項14】
前記変換手段は、
前記注目画素と前記注目画素の近傍画素群とに基づいて、前記注目画素の特徴を検出する検出手段と、前記検出手段によって検出された特徴に応じた出力特性を示すテーブルを選択して、前記注目画素の入力画素値に対応する値を出力するテーブル参照手段と、
前記記検出手段によって検出された特徴に応じて、前記注目画素の入力画素値に対応する値の係数を決定する係数決定手段と、
上記前記注目画素の入力画素値に対応する値と前記係数とから重み付き加算を行い、出力値を決定する出力値決定手段とを有することを特徴とする請求項10に記載の画像処理装置。
【請求項15】
前記検出手段は、前記注目画素の入力画素値と前記近傍画素群の入力画素値の加重平均値との大小関係により、画像の特徴を検出することを特徴とする請求項14に記載の画像処理装置。
【請求項16】
コンピュータを請求項1から請求項15の何れか一項に記載された画像処理装置の各手段として機能させることを特徴とするプログラム。
【請求項17】
スクリーン処理手段と判定手段と出力手段とを有し入力画像データを印刷可能な画像データに変換する画像処理装置の制御方法であって、
前記スクリーン処理手段は、前記入力画像データをスクリーン処理し、
前記判定手段は、前記入力画像データにおける注目画素に対して、前記スクリーン処理手段によって生成されたスクリーン画像データにおいてモアレが発生しているか否かを判定し、
前記出力手段は、前記注目画素において、前記判定手段による判定結果に応じて、スクリーン画像データを構成するスクリーン画素値か、前記スクリーン画像データのうち、前記判定手段によりモアレが発生していると判定された画素を、前記入力画像データを構成する入力画素値に置換した中間データを生成した後、前記中間データに基づき前記入力画素値を印刷可能な画素値に変換した値、のいずれかを前記印刷可能な画像データにおける前記注目画素の値として出力する
とを特徴とする制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−34183(P2013−34183A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−139661(P2012−139661)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】