説明

画像処理装置および画像処理方法

【課題】多品種に対応可能で、任意の複数台のカメラからの画像を、任意のカメラ制御アルゴリズムと画像処理アルゴリズムにより高速に処理可能な画像処理装置を実現する。
【解決手段】コンピュータのバスに接続された画像処理ボードは、ハードウェア領域を書き換え可能な画像処理用半導体素子と、カメラ制御用半導体素子を備える。また、複数の画像処理回路を記憶させておく画像処理回路用メモリと、複数のカメラ制御回路を記憶させておくカメラ制御回路用メモリを備え、それぞれの半導体素子と回路用メモリは信号伝送可能状態にあり、コンピュータからの入力信号により回路用メモリから任意の回路を選択し、半導体素子を再構成するための回路用メモリ制御部とを備える。選択されたカメラ制御回路により制御されたカメラからの撮像画像に対して、選択された画像処理回路により構成される画像処理用半導体素子において、任意の画像処理をハード処理する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、欠陥、汚れ、異物等の検査装置に用いる画像処理装置および画像処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体、液晶、電子部品市場の拡大により、製造段階での効率的な検査需要が高い。電子部品の他には、紙、シート関連に加え、食品、薬品、化粧品等の分野へも応用され始めている。特に、食品の生産現場においては、異物混入事故や虚偽表示の社会問題に対応するため、品質管理を実現する精度の高い検査、画像処理技術が求められている。
【0003】
一方、近年の生産技術の向上などにより、製造ラインの搬送速度は年々速くなっており、ラインに組み込まれる検査装置に対しても、十分に追従するだけの処理速度が要求される。
また、半導体などは年々小型化・高集積化されると予想され、高解像度な検査による微小欠陥、微小異物の検出も求められる。
【0004】
更に、食品などは、パッケージの欠陥や汚れ、ラベルの文字識別、食物内部の異物など、多岐に渡る場合も有り、複数箇所に設置されたカメラからの画像による総合的な製品検査が必要となる。
【0005】
食品検査の例として、飲料容器であるペットボトルの検査がある。ペットボトルは、容積の違いや形状の複雑さによる検査範囲の違いや、内部の液種の違いなど多種であり、検査の項目としては、キャップ部、ラベルのズレ・破れ、入り味量、浮遊異物、沈殿異物などが多岐に渡る。このように、産業用画像処理検査装置においては多入力で高解像度の画像の高速処理の実現が望まれる。
【0006】
従来、従来特開2005−283280では、自動車用ガラスや磁気ディスク用基板等の、板状ガラス欠陥検出等のための画像処理装置であり、複数台のカメラからの撮像画像を、一部の処理をハードウェアで行うことにより高速化している。また、特開2001−349840では、複数台のカメラと1台の制御装置により、複数台のカメラの切り替えを自動で行って、検査が必要な箇所に設置されたカメラを制御している。
【0007】
【特許文献1】特開2005−283280
【特許文献2】特開2001−349840
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の検査装置では、1台のコンピュータやスタンドアロン型画像処理装置によって、カメラの画像をCPU等によってソフトウェアで画像処理を実行していた。低解像度のアナログ画像であれば上記ソフト処理も可能であるが、高解像度の画像では高速処理することは困難であった。従って、多方向からの検査や、多点検査において、複数台のカメラから入力される高解像度の撮像画像を処理する場合は、複数個のコンピュータが必要となっていた。
【0009】
特に、ペットボトル飲料検査の外観検査や内部の異物検査においては、前述したように多岐に渡る検査項目を要しているため、多くのカメラを設置する必要がある。また、多種多様な形状、液種を検査対象とするため、検査対象によって撮影するカメラ台数・設置場所、検査範囲、撮影タイミング、カメラの撮影条件、処理する画像処理アルゴリズムなどが異なってくる。ペットボトル飲料の製造ラインは、頻繁に品種が変更されるため、カメラの設置場所、カメラの撮影条件や画像処理アルゴリズム等を人間の手により変更する必要があり、煩雑な労力を伴っていた。
【0010】
上記特許文献2(2001−249840)の自動検査装置は、複数台のカメラで同一検査対象物の異なった位置を撮影している。そして1台のカメラに1台の画像処理装置が接続されて専用の処理アルゴリズムで画像処理されており、検査対象物が種々変化した場合のカメラの制御や、画像処理アルゴリズムの変更については考慮されていない。更に、1台のカメラに専用の画像処理装置を必要とし、装置全体のコストアップという問題がある。
【0011】
一般に、カメラからの画像を高速に処理するためには演算処理速度自体を大きくする必要がある。従来の画像処理装置はソフトウェア処理による逐次処理が多く、画像処理のような多くの演算を処理する上で長時間を要した。この処理をコンピュータ内のCPUで行う場合は、CPUが画像処理に占有されて他の処理ができず、また、速度はCPUの性能に依存してしまうことや、コンピュータのOSの不安定さなどを考慮すると長時間の検査には不向きであった。
【0012】
これに対して、高速処理が可能な特定用途向けLSIであるASIC(Application Specific Integrated Circuit)を用いたハードウェア化が考えられる。しかし、ASICは開発工程が長く、製造用マスクを製作するため少量生産の場合は1個あたりの費用が大きく、また、設計が難しく、設計ミスの場合に回路の書き換えが不可能であり、やり直しの費用と時間が非常に大きい。また、別のアルゴリズムを行いたい場合などに、回路情報を再構成することが出来ないため、初めから設計する必要があり、柔軟性に乏しかった。
【0013】
ASICに対して、同様にハードウェア処理を実行することが出来て、ユーザ側で内部のアルゴリズムを書き換え可能なデバイスとしてFPGA(Field Programmable Gate Array)やPLD(Programmable Logic Device)がある。一度ハードウェア化を行った後でも、別の回路情報により再構成することが可能である。書き換えが可能であることにより、設計ミスに対してやり直しが効くことや、何度でも実機での検証が可能であり、別の回路情報を再構成する際にも容易に変更が可能である。
【0014】
特許文献1(特開2005−283280)に記載された画像処理装置および画像処理方法は、FPGAを用いて画像処理を行っている。しかし、画像処理はシェーディング補正などの前処理を行っているが、その他の2値化処理、ラベリング処理等の画像処理はCPUによりソフトウェア処理のため、処理速度が遅いという問題がある。
【0015】
また、上記文献はカメラ台数を増やす際の対応が容易としているが、4台のカメラに対して専用の画像処理ボードを用意しており、カメラコントローラも専用となっているため、検査対象物が種々変化した場合のカメラの制御については、考慮されていない。
【0016】
本発明の目的は、検査対象物の種別が頻繁に変わっても検査対象物へのカメラの対応が容易で、カメラでの撮影画像の処理を高速に行える画像処理装置および画像処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1〜請求項3に記載の画像処理装置は、検査対象物をカメラで撮像してその画像から欠陥、汚れ、異物等を検査するための画像装置であって、メインメモリ、バスを有するコンピュータと、前記バスに接続された画像処理ボードを備え、前記画像処理ボードは、1台もしくは複数台のカメラを制御するカメラ制御用半導体素子と、このカメラ制御用半導体素子から受けた画像を処理する画像処理用半導体素子と、この処理された画像を記憶する画像用メモリを有し、前記コンピュータは、前記カメラ制御用半導体素子と画像処理用半導体素子をそれぞれ検査対象物の種別に対応したカメラ制御回路と画像処理回路とに書き換え処理を行い、前記画像処理ボードは、書き換えられた前記カメラ制御用半導体素子と画像処理用半導体素子によりカメラの制御と、制御されたカメラからの画像を処理することを特徴とする。
【0018】
ここで、前記画像処理ボードは、更に、検査対象物の種別に対応した複数の画像処理回路を記憶した画像処理回路用メモリと、前記コンピュータからの信号により前記回路の中から検査対象物に対応した回路を選択して、この回路を前記画像処理用半導体素子に書き換え処理する画像処理回路用メモリ制御部を有する。
【0019】
また、前記画像処理ボードは、更に、検査対象物の種別に対応した複数のカメラ制御回路を記憶するカメラ制御回路用メモリと、前記コンピュータからの信号により前記回路の中から検査対象物に対応したカメラ制御回路を選択して、この回路を前記カメラ制御用半導体素子に書き換え処理するカメラ制御回路用メモリ制御部を有する。
【0020】
これによれば、コンピュータからの信号により、画像処理回路用メモリに含まれる複数の画像処理回路の中から、任意の画像処理アルゴリズムを選択することで、多種多様のアルゴリズムの処理が可能となり、頻繁に変わる検査対象の多品種に画像処理を容易に対応できる。また、更に、コンピュータからの信号により、カメラ制御回路用メモリに含まれる複数のカメラ制御回路の中から、任意のカメラ制御回路を選択することで、検査対象の多品種に対応し得る撮影条件等の設定が容易となり、製造ライン上での品種変更による条件設定を簡便化することが出来る。
【0021】
請求項4記載の画像処理装置は、選択された画像処理回路が、撮像された画像に対して、検査対象物の種別に対応した膨張・収縮処理、パターンマッチング処理、ラベリング処理、2値化処理、補正処理、特徴量抽出処理等を実行するアルゴリズムを有する。
【0022】
これによれば、選択された画像処理回路で書き換えられた画像処理用半導体素子上において画像処理の大部分をハードウェア処理出来るため、高速処理が可能となる。
【0023】
請求項5による画像処理装置は、選択されたカメラ制御回路が検査対象物の種別に対応したカメラの選択、撮影タイミング等を制御するアルゴリズムを有する。
【0024】
これによれば、頻繁に変わる品種に応じて、撮影するカメラ台数やそれぞれのカメラの撮影タイミング等を容易に制御することができる。
【0025】
請求項6による画像処理装置は、前記複数台のカメラが、設置される場所によって、感度、絞り、シャッタースピード等のカメラ条件が異なることを特徴とする。
【0026】
これによれば、それぞれカメラ条件の異なるカメラを複数の場所に設置することで、最適なカメラ条件を持つカメラを前記カメラ制御回路により選択することにより、検査対象物の品種変更の際にカメラ条件を容易に変更することが出来る。
【0027】
請求項7による画像処理装置は、前記半導体素子がFPGAもしくは、PLDからなることを特徴とする。ここで、FPGAとは「Field Programmable Gate Array」、PLDとは「Programmable Logic Device」のことで、両者とも内部回路を書き換え可能な集積回路のことである。FPGAPLDの内部回路は、VHDLもしくはVerilog−HDLと呼ばれるハードウェア言語を用いて回路情報を作成し、コンパイルしたデータをボード上のコンフィギュレーションデバイスにダウンロードした後、FPGAやPLDへデータをコンフィギュレーションする(デバイス内に回路情報を構築すること)ことで構成される。これにより、ユーザは任意の画像処理アルゴリズムを選択することで、検査対象物の品種によって多種の画像処理を実行できるため柔軟性が向上する。
【0028】
請求項8による画像処理装置は、前記カメラと前記画像処理装置間のカメラ画像入出力インターフェースは、デジタル画像入出力が可能なカメラリンクであることを特徴とする。
ここで、カメラリンクとは産業用デジタルカメラと画像入力ボード又は画像処理ボードを接続する規格であり、デジタルデータ信号伝送手段であるLVDS規格(Low Voltage differential signaling)を使用しているため、一般的に多く普及しているNTSC(National Television Standards Committee)、IEEE1394(Institute of Electrical and Electronic Engineers 1394)などと比較して接続線数が少なく高速伝送が可能となり、高解像度の画像を高速に伝送することが出来る。これにより、装置全体として、複数台のカメラからの高解像度画像の高速画像転送が可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、検査対象物の欠陥、汚れ、異物等のカメラによる検査において、多品種に対応可能で、製造ライン上での検査対象物の品種変更に対しての撮影条件設定が簡便であり、検査対象物に対応させた任意の複数台のカメラからの高解像度画像を対応する、任意の画像処理アルゴリズムにより処理でき、しかも高速に処理可能な画像処理装置が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
図1は、本発明の画像処理装置に係る実施形態の全体構成図である。1は、SDRAM等のメインメモリ2と、高速データ伝送バス3等を備えたコンピュータである。バス3はPCI−express、PCI−X等からなり、メインメモリ2と画像処理ボード4の他に、図示しないCPU、表示器、キーボード、プリンタ等を接続している。
【0031】
画像処理ボード4にはカメラ制御用半導体素子9、画像処理用半導体素子6、画像用メモリ6が設けられる。画像処理用半導体素子6には、この素子6を制御するための画像処理回路用メモリ7と画像処理回路用メモリ制御部8が接続されている。カメラ制御用半導体素子9には、この素子9を制御するためのカメラ制御回路用メモリ10とカメラ制御回路用メモリ制御部11が接続されている。
【0032】
上記半導体素子6、9は、共にFPGA(Field Programmable Gate Array)、またはPLD(Programmable Logic Device)から構成される。メモリ5はSDRAMからなり、メモリ7、10はフラッシュメモリまたはEEPROMからなる。
【0033】
14は撮像部で、製造ライン上で移動する検査対象物13の適宜な位置に配置された複数のカメラ12を備える。18は前記コンピュータ1内に設けられたカメラI/Oで、複数のカメラ12に接続されており、LVD(low voltage differential signaling)や、カメラリンク等のデジタル信号入出力インターフェース(カメラ画像入出力インターフェース)である。
【0034】
カメラ制御用半導体素子9と画像処理用半導体素子6は、上述のようにFPGAまたはPLDであり、内部のハードアルゴリズムが外部から書き換えられる。FPGAやPLDの内部回路は、VHDLもしくはVerilog−HDLと呼ばれるハードウェア言語を用いて回路情報を作成し、コンパイルしたデータをボード上のコンフィギュレーションデバイスにダウンロードした後、FPGAやPLDへデータをコンフィギュレーションする(デバイス内に回路情報を構築すること)ことで構成される。
【0035】
カメラ制御回路用メモリ10には、各検査対象物に対応した特有のアルゴリズムからなるカメラ制御回路をデータの形で複数個記憶しており、コンピュータ1によるカメラ制御回路用メモリ制御部11の書き替え命令により、複数のカメラ制御回路から検査対象物に対応した所定のカメラ制御回路選択し、半導体素子9が書き替えられる。
【0036】
画像処理回路用メモリ7には、各検査対象物に対応した特有のアルゴリズムからなる画像処理回路をデータの形で複数個記憶しており、コンピュータ1による画像処理回路用メモリ制御部8の書き替え命令により、複数の画像処理回路から検査対象物に対応した所定の画像処理回路を選択し、半導体素子6が書き替えられる。上記書き替えに際しては、上記両半導体素子6、9は、常に同一検査対象物に対応した画像処理回路とカメラ制御回路とに、組として書き替えられる。
【0037】
具体的には、画像処理回路及びカメラ制御回路の選択は、検査対象物が決まった段階で検査作業の前に、ユーザによりコンピュータ内のGUI(graphical user interface)などによって行われる。図2にGUIの一例を、図3に画像処理回路及びカメラ制御回路の書き替え処理の流れを示す。
【0038】
図2でコンピュータ1の表示器のGUI上で検査対象物の品種(お茶)、容積(500ml)、形状(円筒、凹凸無し)などを選択して、書き替えボタンを選択する。この選択により、書き替えるための画像処理回路及びカメラ制御回路が自動で選択され、その信号を画像処理回路用メモリ制御部8及びカメラ制御回路用メモリ制御部11に送信する。メモリ制御部8と11は、それぞれ画像処理回路用メモリ7及びカメラ制御用メモリ10に書き替え命令を実行し、各メモリ7と10は複数記憶した回路データの中から、検査対象物(お茶、容積500ml、形状:円筒、凹凸無し)に対応した画像処理回路及びカメラ制御回路とを組として選択して、それぞれの半導体素子6と9への書き替え処理を実行する。
【0039】
前記のようにして選択されたカメラ制御回路で再構成されたカメラ制御用半導体素子9は、検査対象物の撮像に先立ち、この対象物に対応した(特有の)検査を要する箇所に設置された所定のカメラ12を選択し、検査箇所、撮影タイミング、シャッタースピード、感度等の撮影条件を制御する。この制御は半導体素子9の回路でハード処理のため高速になされる。この条件での制御により撮像された画像はカメラ制御用半導体素子9から画像処理用半導体素子6に転送される。
【0040】
画像処理用半導体素子6は、前記で撮像された検査対象物に対応した(特有の)画像処理回路で再構成されているので、転送された画像に対してハードにより画像処理を高速に行う。画像処理は、検査対象物に応じて、膨張・収縮処理、パターンマッチング処理、ラベリング処理、2値化処理、補正処理、特徴量抽出処理等を実行する。
【0041】
処理された画像データを画像用メモリ5に記憶させる。さらにバス3を通じてコンピュータ1内のメインメモリ2へDMA転送され、コンピュータ1により画像の良否を検査する。DMA転送とは、「Direct Memory Access」のことで、コンピュータのCPUを介さずに各装置から高速にメモリへ転送する方式である。
【0042】
次に、具体的に図1における撮像部14を、ペットボトル飲料の検査へ応用した場合の例を説明する。
【0043】
図4は図1における撮像部14の一例を示す図である。図4(1)でコンベア15aに載せられたペットボトル16が搬送方向に流れ、その周りに8台のカメラ12a〜12hが設置してある。コンベア15aは、ペットボトル16の側面等の検査用にペットボトル16を搬送するが、コンベア15bは、ペットボトル16の側面を両側から保持(挟持)することで、ペットボトル底面の検査を可能としている。ここで、コンベアのモータ、画像処理装置や照明、欠陥や異物が検出された際のペットボトル排出機などの、周辺機器を簡略化して示す。図4(2)はコンベア15の下流方向から見た図であり、ペットボトル16、コンベア及びカメラの配置関係を示す。
【0044】
図5はそれぞれのカメラで撮像した検査用の画像の示す。各カメラ12についての撮像動作の詳細を説明すると、カメラ12a〜12cはペットボトル16の片側側面の範囲を撮影するカメラである。特にカメラ12a〜12bは、ラベルが貼られる前の段階では浮遊異物16eの検査のための撮像を行い、ラベルが貼られた後の段階ではラベルの位置・破れ・文字16fなどの検査のための撮像を行う。カメラ12cはキャップ部周辺の範囲を側面から撮影し、キャップのズレ16g、ブリッジ切れ16h、キャップの文字・異種キャップ16j、液体が封入された後であれば入り味量16iや、沈殿物16kなどの検査のための撮像を行う。
【0045】
また、ペットボトルのもう他側の側面を撮影するために、カメラ12d〜12fが設置されている。これらのカメラは、基本的にはカメラ12a〜12cと同等の撮像を行うが、浮遊異物16e検査に関しては、液種が不透明な種類であってカメラ12a〜12b側では撮影出来ない場合(ボトルの中で浮遊物がカメラ12a〜12b側から見えない。)、反対側のカメラ12d〜12eにより撮影することで全範囲の浮遊異物を検査することが可能となる。液種が透明な種類であって、透過によりカメラ12a〜12bで全範囲が撮像可能であれば、カメラ12d〜12eの撮影は行わない。
【0046】
また、ラベル検査用の撮像に関しては、図6(1)のようにボトルの一部分を覆うような範囲にラベル17が貼られたペットボトルに対しては、カメラ12b、カメラ12eでのラベルの撮影を行い、図6(2)のようにボトルの殆どの範囲を覆うような範囲にラベル17が貼られたペットボトルに対しては、カメラ12a〜12b、カメラ12d〜12eでのラベルの撮影を行う。
【0047】
また、カメラ12gはペットボトル16の上面を撮影するカメラであり、キャップの文字、異種キャップなどの検査のための撮像を行い、カメラ12hはペットボトルの底面を撮影するカメラであり、沈殿異物などの検査のためのものである。
【0048】
このように、検査対象物、即ちラベルの有無、ラベルの貼られた範囲、液種、液体の封入前後によって、撮影するカメラ台数や画像処理回路(アルゴリズム)が変化する。従って、画像処理装置内は、品種に応じて、検査する必要がある箇所に設置されたカメラの選択を含む、カメラの制御をするためのカメラ制御回路(アルゴリズム)により、カメラ制御用半導体素子9が事前にカメラ制御回路用メモリ制御部によって書き替えてある。
【0049】
また、それぞれの箇所に設置されたカメラにおいて行う必要がある、検査対象物、即ちラベルの有無、ラベルの貼られた範囲、液種、液体の封入前後によって、特定される検査内容の画像処理回路が画像処理回路用メモリ制御部8により、事前に画像処理用半導体素子6内に書き替えてある。
【0050】
図7は、図1において側面に設置されたカメラを4台設置した例である。容積が最小であるペットボトル16aに関しては、カメラ12iにより、ラベルが貼られる前の段階では浮遊異物検査、ラベルが貼られた後の段階ではラベルの位置・破れ・文字などの検査のための撮像が可能であり、カメラ12jによりキャップのズレ、ブリッジ切れや、液体が封入された後であれば入り味量などの検査のための撮像が可能である。この時、カメラ12k〜12lによる撮影は行わない。
【0051】
容積が通常であるペットボトル16bに関しては、カメラ12i〜12jにより、ラベルが貼られる前の段階では浮遊異物検査、ラベルが貼られた後の段階ではラベルの位置・破れ・文字などの検査のための撮像が可能であり、カメラ12kによりキャップのズレ、ブリッジ切れや、液体が封入された後であれば入り味量などの検査のための撮像が可能である。この時、カメラ12lによる撮影は行わない。
【0052】
容積が最大であるペットボトル16cに関しては、カメラ12i〜12kにより、ラベルが貼られる前の段階では浮遊異物検査、ラベルが貼られた後の段階ではラベルの位置・破れ・文字などの検査のための撮像が可能であり、カメラ12lによりキャップのズレ、ブリッジ切れや、液体が封入された後であれば入り味量などの検査のための撮像が可能である。
【0053】
このように、検査対象物、即ちペットボトルの容積によって、撮影するカメラ台数やカメラの制御と画像処理の所定アルゴリズムが必要となる。画像処理装置内では、ボトルの容積に応じて、検査する必要がある箇所に設置されたカメラの選択を含むカメラを制御するカメラ制御回路のアルゴリズムが、事前にカメラ制御用メモリ制御部11によりカメラ制御用半導体素子9に書き替えられている。
【0054】
また、画像処理装置内では、検査対象物、即ちペットボトルの容積によって特定される検査のための画像処理回路のアルゴリズムが、画像処理回路用メモリ制御部8により画像処理用半導体素子6に書き替えられている。よって、カメラの位置を物理的に移動することなく、容積の異なるペットボトルの検査が可能である。
【0055】
図8は沈殿異物検査を例として、カメラの絞り、レンズなどが異なるカメラを設置した検査装置の側面図である。通常、これらのカメラパラメータは、検査対象物の品種によって最適な値に変更する必要がある。特に液種によっては、照明光から透過する光量に差があり画像の明るさに影響を与えてしまう。また、同じ品種でも周りの光学的環境に左右され、微妙な調整が必要となる。
【0056】
それぞれカメラの絞り、レンズが異なるカメラ12m、カメラ12n、カメラ12oを設置することで、それぞれのカメラからは異なった画像が得られ、カメラ制御用半導体素子9がその中から最適な画像を撮影可能なカメラを選択し、その画像のみを処理することが可能である。
【0057】
このように、検査対象物の品種によって撮像画像に差が表れ、最適なカメラの絞り、レンズが異なってくる。従って、画像処理装置内は、検査対象物の品種や環境に応じてカメラの絞り、レンズを、カメラの選択によって実現している。具体的には、カメラ制御用メモリ制御部11により、カメラ制御用半導体素子9内が、カメラ制御回路に書き替えられている。よって、カメラの絞り、レンズを人間の手により変更することなく、多種のペットボトルの検査が可能である。
【0058】
図9にコンベア両側のカメラを増やした例を示す。コンベア15aの矢印で示す搬送方向に対して直角に設置されたカメラ12p、12qと、カメラ12pの両隣に新たにカメラ12r〜12sを、カメラ12qの両隣に新たにカメラ12t〜12uを設置した例である。ペットボトルの形状は、メーカにより様々であり、複雑な形状を有するものもある。例として図10に複雑な形状のペットボトル16dを示す。このような場合、コンベア15aの搬送方向に対して直角に設置されたカメラだけでは撮影できない範囲が生じるため、カメラ12r〜12uのような位置にカメラを設置することで、全範囲が撮影可能となる。
【0059】
このように検査対象物となるペットボトルの形状によって、撮影可能範囲に差が出てくる。従って、画像処理装置内は、ペットボトルの形状に応じてカメラを選択して、それを制御するため、カメラ制御用メモリ制御部11により、カメラ制御用半導体素子9内が、ペットボトルの形状に合わせたカメラ制御回路に書き替えられている。よって、人間の手によりカメラを新たに設置したりすることなく、多種のペットボトル形状の検査が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明を適用する画像処理装置の一実施例を示す全体構成図。
【図2】図1におけるGUIの説明図。
【図3】回路の書き替え処理の説明図。
【図4】図1における撮像部のペットボトル検査の一例を示す図。
【図5】各カメラの撮像画像例と検査項目例を示す図。
【図6】ラベルの大きさが異なるペットボトルの例を示す図。
【図7】容積が異なるペットボトルと撮像するカメラの例を示す図。
【図8】沈殿異物検査の例を示す図。
【図9】コンベア両側のカメラを増やした例を示す図。
【図10】複雑な形状のペットボトルを示す図。
【符号の説明】
【0061】
1…コンピュータ、2…メインメモリ、3…バス、4…画像処理ボード、5…画像用メモリ、6…画像処理用半導体素子、7…画像処理回路用メモリ、8…画像処理回路用メモリ制御部、9…カメラ制御用半導体素子、10…カメラ制御回路用メモリ、11…カメラ制御回路用メモリ制御部、12…カメラ、13…検査対象物、14…撮像部、15…コンベア、16…ペットボトル、17…ラベル、18…カメラ画像入出力インターフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物をカメラで撮像してその画像から欠陥、汚れ、異物等を検査するための画像装置であって、メインメモリ、バスを有するコンピュータと、前記バスに接続された画像処理ボードを備え、
前記画像処理ボードは、1台もしくは複数台のカメラを制御するカメラ制御用半導体素子と、このカメラ制御用半導体素子から受けた画像を処理する画像処理用半導体素子と、この処理された画像を記憶する画像用メモリを有し、
前記コンピュータは、前記カメラ制御用半導体素子と画像処理用半導体素子をそれぞれ検査対象物の種別に対応したカメラ制御回路と画像処理回路とに書き換え処理を行い、前記画像処理ボードは、書き換えられた前記カメラ制御用半導体素子と画像処理用半導体素子によりカメラの制御と、制御されたカメラの画像を処理することを特徴とするが画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理ボードは、更に、検査対象物の種別に対応した複数の画像処理回路を記憶した画像処理回路用メモリと、前記コンピュータからの信号により前記複数回路の中から検査対象物に対応した画像処理回路を選択して、この回路を前記画像処理用半導体素子に書き換え処理する画像処理回路用メモリ制御部を有することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理ボードは、更に、検査対象物の種別に対応した複数のカメラ制御回路を記憶したカメラ制御回路用メモリと、前記コンピュータからの信号により前記複数回路の中から検査対象物に対応したカメラ制御回路を選択して、この回路を前記カメラ制御用半導体素子に書き換え処理するカメラ制御回路用メモリ制御部を有することを特徴とする請求項1、請求項2のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理回路は、撮像された画像に対して、検査対象物の種別に対応した膨張・収縮処理、パターンマッチング処理、ラベリング処理、2値化処理、補正処理、特徴量抽出処理等を実行するアルゴリズムを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記カメラ制御回路は、検査対象物の種別に対応したカメラの選択、撮影タイミング等を制御するアルゴリズムを有することを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記複数台のカメラは、設置される場所によって、感度、絞り、シャッタースピード等のカメラ条件が異なることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項4、請求項5のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記カメラ制御用半導体素子と画像処理用半導体素子はFPGAもしくは、PLDからなることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記カメラと前記コンピュータ間のカメラ画像入出力インターフェースは、デジタル画像入出力が可能なカメラリンクであることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3、請求項5、請求項6のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項9】
検査対象物をカメラで撮像してその画像から欠陥、汚れ、異物等を検査するための画像処理方法であって、メインメモリおよびバスを有するコンピュータと、前記バスに接続された画像処理ボードであって、1台もしくは複数台のカメラを制御するカメラ制御用半導体素子およびカメラ制御用半導体素子から受けた画像を処理する画像処理用半導体素子を有する前記画像処理ボードを備え、
前記コンピュータにより、前記カメラ制御用半導体素子と画像処理用半導体素子をそれぞれ検査対象物の種別に対応した制御回路と画像処理回路とに書き換え処理し、
次いで、前記書き換えられた前記カメラ制御用半導体素子により検査対象物の種別に対応してカメラを制御し、前記書き換えられた画像処理用半導体素子によりカメラ画像を検査対象物の種別に対応して画像処理することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
前記画像処理ボードは、更に、検査対象物の種別に対応した複数の画像処理回路を記憶した画像処理回路用メモリと、このメモリを制御する画像処理回路用メモリ制御部を有し、前記コンピュータからの信号により前記複数の画像処理回路の中から検査対象物の種別に対応した回路を選択して、前記画像処理用半導体素子を書き換え処理することを特徴とする請求項9記載の画像処理方法。
【請求項11】
前記画像処理ボードは、更に、検査対象物の種別に対応した複数のカメラ制御回路を記憶したカメラ制御回路用メモリと、このメモリを制御するカメラ制御回路用メモリ制御部を有し、前記コンピュータからの信号により前記複数のカメラ制御回路の中から検査対象物の種別に対応した回路を選択して、前記カメラ制御用半導体素子を書き換え処理することを特徴とする請求項9、請求項10のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項12】
前記画像処理回路は、撮像された画像に対して、検査対象物の種別に対応した膨張・収縮処理、パターンマッチング処理、ラベリング処理、2値化処理、補正処理、特徴量抽出処理等を実行することを特徴とする請求項9、請求項10、請求項11のいずれかに記載の画像処理方法。
【請求項13】
検査対象物をカメラで撮像してその画像から欠陥、汚れ、異物等を検査するための画像処理方法であって、メインメモリ、バスを備えたコンピュータと、バスに接続された画像処理ボードとを備え、画像処理ボードは、1台もしくは複数台のカメラからの撮像画像を記憶する画像用メモリと、ハードウェア領域を書き換え可能な画像処理用半導体素子と、ハードウェア領域を書き換え可能なカメラ制御用半導体素子と、検査対象物の種別に対応した複数の画像処理回路を記憶する画像処理回路用メモリと、このメモリを制御する画像処理回路用メモリ制御部と、検査対象物の種別に対応した複数のカメラ制御回路を記憶するカメラ制御回路用メモリと、このメモリを制御するカメラ制御回路用メモリ制御部を有し、
前記コンピュータからの入力信号により、前記画像処理回路用メモリから検査対象物の種別に対応した任意の画像処理回路を選択して書き換え可能な前記画像処理用半導体素子を再構成すると共に、前記カメラ制御回路用メモリから検査対象物の種別に対応した任意のカメラ制御回路を選択して書き換え可能な前記カメラ制御用半導体素子を再構成し、次いで、選択された画像処理回路により構成される前記画像処理用半導体素子において、選択されたカメラ制御回路により制御された任意の複数台のカメラからの複数の撮像画像に対して、選択された画像処理回路により画像処理することを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−287506(P2008−287506A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−131864(P2007−131864)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】