画像処理装置および画像処理方法
【課題】コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる画像処理装置を提供する。
【解決手段】エッジ方向検出手段110は、原稿画像データのエッジ方向を検出する。エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、検出された原稿画像データのエッジ方向に基づき、NのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択する。エッジ強度算出手段130は、選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを原稿画像データへ適用させることによりエッジ強度を算出する。
【解決手段】エッジ方向検出手段110は、原稿画像データのエッジ方向を検出する。エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、検出された原稿画像データのエッジ方向に基づき、NのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択する。エッジ強度算出手段130は、選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを原稿画像データへ適用させることによりエッジ強度を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置および画像処理方法に係り、特にスクリーニング画像を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿画像を二値化して印刷するプリンタなどの装置は、印刷する前に、原稿画像にスクリーニング処理を施す必要がある。スクリーニング処理された後のスクリーニング画像は、連続階調画像からなる原稿画像と比較すると、離散的なので、直接にスクリーニング画像を処理するのはかなり難しい。従って、従来は、スクリーニング画像を処理する前に、まずスクリーニング画像のエッジ位置を確認してから処理していた。
【0003】
すなわち、従来は、Sobel又はGaussianテンプレート(フィルタ)を直接に使い、画素点と上下左右にある隣接点に対してフィルタによる畳み込みを行った後、閾値処理を行い、スクリーニング画像のエッジ位置を検出していた。
例えば特許文献1には、ブロックに基づいた画像エッジ検出方法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−503828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなエッジ処理においては、精度を高めるためには、フィルタによる演算回数を増やす必要がある。しかし、演算回数が増えれば、回路規模が増大するので、コストが増大するという問題点がある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出手段と、前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出手段により検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択手段と、前記エッジ強度算出フィルタ選択手段により選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出手段における演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段とを備える。
本発明に係る画像処理方法は、所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出ステップと、前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出ステップにより検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択ステップと、前記エッジ強度算出フィルタ選択ステップにより選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出ステップにおける演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出ステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、エッジ方向検出手段により検出されたエッジ方向に基づきエッジ強度算出フィルタ選択手段により選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを、エッジ強度算出手段により原画像データへ適用させることで、エッジ強度を算出する。選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行うことにより、複数のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行う場合に比べて演算回数を減らすことができるので回路規模の増大を抑制することができる。従って、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る画像処理装置1の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る画像処理装置1により検出されるエッジ方向を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る画像処理装置1により標準GaussianフィルタからSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成する手順を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明に係る画像処理装置1により標準GaussianフィルタからSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成する手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る画像処理装置100の基本的な構成を示すブロック図である。画像処理装置100は、エッジ処理における精度を高めるために、Sobel型フィルタとGaussian型フィルタとを組み合わせて構成される、比較的係数マトリクスのサイズが大きいSobel−Gaussian型フィルタを用いるものである。
【0011】
図1に示されるように、画像処理装置100は、エッジ方向検出手段110とエッジ強度算出フィルタ選択手段120とエッジ強度算出手段130とを少なくとも備えて構成される。
【0012】
まず、エッジ方向検出手段110は、所定の平面上(例えばXY平面とする)の原稿画像データに対して、第1の方向(例えばX方向とする)に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタを適用させることによりX方向のエッジ成分EXを算出するとともに、第1の方向と垂直な第2の方向(例えばY方向とする)に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタを適用させることによりY方向のエッジ成分EYを算出する。そして、エッジ方向検出手段110は、tan−1(EY/EX)を算出することにより、エッジ方向を検出する。
【0013】
次に、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、XY平面上のN(Nは8以上の整数)方向に関して原稿画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択する。例えば、図2には、N=16の場合の方向0〜15が示されている。方向0〜15は、互いに、同じ角度(360°/16=22.5°)をなしている。ここで、例えば、算出されたエッジ成分EX=エッジ成分EYであったとすると、tan−1(EY/EX)=45°であるので、方向2がエッジ方向として検出される。そして、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、方向0〜15に関して原稿画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出する16のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、方向2に対応する一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択する。
【0014】
次に、エッジ強度算出手段130は、エッジ強度算出フィルタ選択手段120により選択された方向2に対応する一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを原稿画像データへ適用させることによりエッジ強度を算出する。
【0015】
従来の画像処理装置においては、このような場合、エッジ強度算出手段は、方向0〜15それぞれに対応する16のエッジ強度算出フィルタ全てを原稿画像データへ適用させることによりエッジ強度を算出していた。しかし、全てのエッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行った場合には、演算回数が増えることから、回路規模が増大し、コストが増大するという問題があった。
本発明に係る画像処理装置100は、方向0〜15それぞれに対応する16のエッジ強度算出フィルタ全てではなく、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に対応する一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタのみを、原稿画像データへ適用させる。従って、Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタによる演算回数を減らすことができる。よって、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる。
【0016】
なお、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するときに、現画素の属性情報(現画素が、細線すなわち単一画素により結ばれた線上に位置しているか、あるいは特殊点すなわちエッジの近傍に位置している点であるか、等を示す情報)を参照する。そして、例えば、現画素が特殊点である場合には、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に応じて、方向0,4,8,12のいずれかのみを選択する。
このようにフィルタを切り換えるのは、細線やエッジ近傍において、ガウシアン成分によるエッジ直交方向の鈍りを防ぎ、正確にエッジ位置で出力が最大になるようにするためである。また、フィルタを方向0,4,8,12のいずれかのみへ切り換えるのは、文字や罫線は、縦線・横線がほとんどであり、斜め線に関してはエッジがずれても目立ちにくいからである。
【0017】
図3は、標準GaussianフィルタからSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成する手順を示す模式図である。
【0018】
まず、図3(a)に示される標準Gaussian曲線をX方向へ(−1)単位距離平行移動させることにより図3(b)に示される第一Gaussian曲線Aを得るとともに、図3(a)に示される標準Gaussian曲線をX方向へ(+1)単位距離平行移動させることにより図3(b)に示される第二Gaussian曲線Bを得る。
次に、図3(c)に示されるように、第一Gaussian曲線Aから第二Gaussian曲線BをY方向において差し引くことにより、Sobel−Gaussian曲線Cを得る。
次に、得られたSobel−Gaussian曲線Cを用いて、Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成させる。すなわち、エッジ強度算出フィルタは、行列として表現されるが、この行列を構成する値を、Sobel−Gaussian曲線Cに従って分布するように決定することにより、Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成することができる。但し、エッジ方向が0°(方向0)、90°(方向4)、180°(方向8)、270°(方向12)の場合には、図3(c)のSobel−Gaussian曲線Cに代えて、図4のSobel−Gaussian曲線Dを用いる。図4に示されるように、Sobel−Gaussian曲線Dは、X>0の領域においてはSobel−Gaussian曲線Cで表され、X<0の領域においては標準Gaussian曲線で表される。
【0019】
上述のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタの生成は、方向0〜15に対応する16のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタについて別々に行ってもよく、あるいは、以下で説明するように、一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから他のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成してもよい。
【0020】
例えば、図2に示されるように、方向4〜7は方向0〜3を90°回転させた方向であるので、x=Y、y=−Xで座標変換に係る演算を行うことにより、方向0〜3それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタから方向4〜7それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタを得ることができる。
【0021】
同様に、方向8〜11は方向0〜3を180°回転させた方向であるので、x=−X、y=−Yで座標変換に係る演算を行うことにより、方向0〜3それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタから方向8〜11それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタを得ることができる。
同様に、方向12〜15は方向0〜3を270°回転させた方向であるので、x=−Y、y=Xで座標変換に係る演算を行うことにより、方向0〜3それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタから方向12〜15それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタを得ることができる。
このように、本発明に係る画像処理装置100は、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に基づきエッジ強度算出フィルタ選択手段120により選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを、エッジ強度算出手段130により原稿画像データへ適用させることで、エッジ強度を算出する。選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行うことにより、複数のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行う場合に比べて演算回数を減らすことができるので回路規模の増大を抑制することができる。従って、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0022】
0〜15 方向
100 画像処理装置
110 エッジ方向検出手段
120 エッジ強度算出フィルタ選択手段
130 エッジ強度算出手段
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置および画像処理方法に係り、特にスクリーニング画像を処理する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
原稿画像を二値化して印刷するプリンタなどの装置は、印刷する前に、原稿画像にスクリーニング処理を施す必要がある。スクリーニング処理された後のスクリーニング画像は、連続階調画像からなる原稿画像と比較すると、離散的なので、直接にスクリーニング画像を処理するのはかなり難しい。従って、従来は、スクリーニング画像を処理する前に、まずスクリーニング画像のエッジ位置を確認してから処理していた。
【0003】
すなわち、従来は、Sobel又はGaussianテンプレート(フィルタ)を直接に使い、画素点と上下左右にある隣接点に対してフィルタによる畳み込みを行った後、閾値処理を行い、スクリーニング画像のエッジ位置を検出していた。
例えば特許文献1には、ブロックに基づいた画像エッジ検出方法が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008−503828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなエッジ処理においては、精度を高めるためには、フィルタによる演算回数を増やす必要がある。しかし、演算回数が増えれば、回路規模が増大するので、コストが増大するという問題点がある。
【0006】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる画像処理装置および画像処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る画像処理装置は、所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出手段と、前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出手段により検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択手段と、前記エッジ強度算出フィルタ選択手段により選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出手段における演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段とを備える。
本発明に係る画像処理方法は、所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出ステップと、前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出ステップにより検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択ステップと、前記エッジ強度算出フィルタ選択ステップにより選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出ステップにおける演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出ステップとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る画像処理装置は、エッジ方向検出手段により検出されたエッジ方向に基づきエッジ強度算出フィルタ選択手段により選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを、エッジ強度算出手段により原画像データへ適用させることで、エッジ強度を算出する。選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行うことにより、複数のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行う場合に比べて演算回数を減らすことができるので回路規模の増大を抑制することができる。従って、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る画像処理装置1の基本的な構成を示すブロック図である。
【図2】図2は、本発明に係る画像処理装置1により検出されるエッジ方向を示す図である。
【図3】図3は、本発明に係る画像処理装置1により標準GaussianフィルタからSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成する手順を示す模式図である。
【図4】図4は、本発明に係る画像処理装置1により標準GaussianフィルタからSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成する手順を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本発明に係る画像処理装置100の基本的な構成を示すブロック図である。画像処理装置100は、エッジ処理における精度を高めるために、Sobel型フィルタとGaussian型フィルタとを組み合わせて構成される、比較的係数マトリクスのサイズが大きいSobel−Gaussian型フィルタを用いるものである。
【0011】
図1に示されるように、画像処理装置100は、エッジ方向検出手段110とエッジ強度算出フィルタ選択手段120とエッジ強度算出手段130とを少なくとも備えて構成される。
【0012】
まず、エッジ方向検出手段110は、所定の平面上(例えばXY平面とする)の原稿画像データに対して、第1の方向(例えばX方向とする)に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタを適用させることによりX方向のエッジ成分EXを算出するとともに、第1の方向と垂直な第2の方向(例えばY方向とする)に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタを適用させることによりY方向のエッジ成分EYを算出する。そして、エッジ方向検出手段110は、tan−1(EY/EX)を算出することにより、エッジ方向を検出する。
【0013】
次に、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、XY平面上のN(Nは8以上の整数)方向に関して原稿画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択する。例えば、図2には、N=16の場合の方向0〜15が示されている。方向0〜15は、互いに、同じ角度(360°/16=22.5°)をなしている。ここで、例えば、算出されたエッジ成分EX=エッジ成分EYであったとすると、tan−1(EY/EX)=45°であるので、方向2がエッジ方向として検出される。そして、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、方向0〜15に関して原稿画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出する16のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、方向2に対応する一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択する。
【0014】
次に、エッジ強度算出手段130は、エッジ強度算出フィルタ選択手段120により選択された方向2に対応する一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを原稿画像データへ適用させることによりエッジ強度を算出する。
【0015】
従来の画像処理装置においては、このような場合、エッジ強度算出手段は、方向0〜15それぞれに対応する16のエッジ強度算出フィルタ全てを原稿画像データへ適用させることによりエッジ強度を算出していた。しかし、全てのエッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行った場合には、演算回数が増えることから、回路規模が増大し、コストが増大するという問題があった。
本発明に係る画像処理装置100は、方向0〜15それぞれに対応する16のエッジ強度算出フィルタ全てではなく、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に対応する一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタのみを、原稿画像データへ適用させる。従って、Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタによる演算回数を減らすことができる。よって、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる。
【0016】
なお、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するときに、現画素の属性情報(現画素が、細線すなわち単一画素により結ばれた線上に位置しているか、あるいは特殊点すなわちエッジの近傍に位置している点であるか、等を示す情報)を参照する。そして、例えば、現画素が特殊点である場合には、エッジ強度算出フィルタ選択手段120は、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に応じて、方向0,4,8,12のいずれかのみを選択する。
このようにフィルタを切り換えるのは、細線やエッジ近傍において、ガウシアン成分によるエッジ直交方向の鈍りを防ぎ、正確にエッジ位置で出力が最大になるようにするためである。また、フィルタを方向0,4,8,12のいずれかのみへ切り換えるのは、文字や罫線は、縦線・横線がほとんどであり、斜め線に関してはエッジがずれても目立ちにくいからである。
【0017】
図3は、標準GaussianフィルタからSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成する手順を示す模式図である。
【0018】
まず、図3(a)に示される標準Gaussian曲線をX方向へ(−1)単位距離平行移動させることにより図3(b)に示される第一Gaussian曲線Aを得るとともに、図3(a)に示される標準Gaussian曲線をX方向へ(+1)単位距離平行移動させることにより図3(b)に示される第二Gaussian曲線Bを得る。
次に、図3(c)に示されるように、第一Gaussian曲線Aから第二Gaussian曲線BをY方向において差し引くことにより、Sobel−Gaussian曲線Cを得る。
次に、得られたSobel−Gaussian曲線Cを用いて、Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成させる。すなわち、エッジ強度算出フィルタは、行列として表現されるが、この行列を構成する値を、Sobel−Gaussian曲線Cに従って分布するように決定することにより、Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成することができる。但し、エッジ方向が0°(方向0)、90°(方向4)、180°(方向8)、270°(方向12)の場合には、図3(c)のSobel−Gaussian曲線Cに代えて、図4のSobel−Gaussian曲線Dを用いる。図4に示されるように、Sobel−Gaussian曲線Dは、X>0の領域においてはSobel−Gaussian曲線Cで表され、X<0の領域においては標準Gaussian曲線で表される。
【0019】
上述のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタの生成は、方向0〜15に対応する16のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタについて別々に行ってもよく、あるいは、以下で説明するように、一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから他のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを生成してもよい。
【0020】
例えば、図2に示されるように、方向4〜7は方向0〜3を90°回転させた方向であるので、x=Y、y=−Xで座標変換に係る演算を行うことにより、方向0〜3それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタから方向4〜7それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタを得ることができる。
【0021】
同様に、方向8〜11は方向0〜3を180°回転させた方向であるので、x=−X、y=−Yで座標変換に係る演算を行うことにより、方向0〜3それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタから方向8〜11それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタを得ることができる。
同様に、方向12〜15は方向0〜3を270°回転させた方向であるので、x=−Y、y=Xで座標変換に係る演算を行うことにより、方向0〜3それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタから方向12〜15それぞれに対応するエッジ強度算出フィルタを得ることができる。
このように、本発明に係る画像処理装置100は、エッジ方向検出手段110により検出されたエッジ方向に基づきエッジ強度算出フィルタ選択手段120により選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを、エッジ強度算出手段130により原稿画像データへ適用させることで、エッジ強度を算出する。選択された一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行うことにより、複数のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを用いてフィルタ演算を行う場合に比べて演算回数を減らすことができるので回路規模の増大を抑制することができる。従って、コストを増大させることなく高精度な処理を行うことができる。
【符号の説明】
【0022】
0〜15 方向
100 画像処理装置
110 エッジ方向検出手段
120 エッジ強度算出フィルタ選択手段
130 エッジ強度算出手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出手段と、
前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出手段により検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択手段と、
前記エッジ強度算出フィルタ選択手段により選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出手段における演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタは、標準Gaussian曲線を第3の方向に沿って平行移動させた第1のGaussian曲線を、前記標準Gaussian曲線を前記第3の方向に沿って前記第1のGaussian曲線とは反対向きに且つ同じ距離を平行移動させた第2のGaussian曲線から、前記第3の方向と垂直な前記第4の方向に差し引いて得られる曲線で表される画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記NのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタは、基準となるSobel−Gaussian型に対して回転の座標変換に基づく演算を施すことにより得られる画像処理装置。
【請求項4】
所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出ステップと、
前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出ステップにより検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択ステップと、
前記エッジ強度算出フィルタ選択ステップにより選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出ステップにおける演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出ステップと
を備える画像処理方法。
【請求項1】
所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出手段と、
前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出手段により検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択手段と、
前記エッジ強度算出フィルタ選択手段により選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出手段における演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置であって、
前記Sobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタは、標準Gaussian曲線を第3の方向に沿って平行移動させた第1のGaussian曲線を、前記標準Gaussian曲線を前記第3の方向に沿って前記第1のGaussian曲線とは反対向きに且つ同じ距離を平行移動させた第2のGaussian曲線から、前記第3の方向と垂直な前記第4の方向に差し引いて得られる曲線で表される画像処理装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像処理装置であって、
前記NのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタは、基準となるSobel−Gaussian型に対して回転の座標変換に基づく演算を施すことにより得られる画像処理装置。
【請求項4】
所定の平面上の原画像データに対して、第1の方向に沿ったエッジを検出する第1のエッジ検出フィルタおよび前記第1の方向と垂直な第2の方向に沿ったエッジを検出する第2のエッジ検出フィルタをそれぞれ適用させる演算を行うことにより、前記原画像データにおけるエッジ方向を検出するエッジ方向検出ステップと、
前記所定の平面上のN(Nは8以上の整数)の方向に関して前記原画像データにおけるエッジ強度をそれぞれ算出するNのSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタから、前記エッジ方向検出ステップにより検出された前記エッジ方向に基づき一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを選択するエッジ強度算出フィルタ選択ステップと、
前記エッジ強度算出フィルタ選択ステップにより選択された前記一のSobel−Gaussian型エッジ強度算出フィルタを前記原画像データへ適用させる演算を、前記エッジ方向検出ステップにおける演算より高い精度で行うことによりエッジ強度を算出するエッジ強度算出ステップと
を備える画像処理方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2011−145890(P2011−145890A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6088(P2010−6088)
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【出願人】(509352679)方正国際軟件(北京)有限公司 (9)
【出願人】(500212103)北京大学 (16)
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】5 Yiheyuan Road,Haidian District,Beijing 100871 China
【上記2名の代理人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラミタ株式会社
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【出願人】(509352679)方正国際軟件(北京)有限公司 (9)
【出願人】(500212103)北京大学 (16)
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】5 Yiheyuan Road,Haidian District,Beijing 100871 China
【上記2名の代理人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラミタ株式会社
【Fターム(参考)】
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