画像処理装置および画像処理方法
【課題】観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理として、CGモデルを用いて光沢を表現する場合、色毎に異なる変角反射特性を高精度に反映することができないため、光沢成分を高精度に再現することは困難であった。
【解決手段】代表色ローパスフィルタ生成部203で、変角反射特性の評価値が最大/最小である代表色のそれぞれについて、変角反射特性に応じたローパスフィルタを生成する。代表色写り込みマップ算出部205で、観察照明の強度分布に対して代表色ごとにローパスフィルタ処理を行って、代表色ごとに観察照明の写り込み強度マップを算出する。写り込み強度算出部210で、プルーフ対象画像の画素毎の色に応じた評価値に基づいて各代表色の写り込み強度マップを補間して、画素毎の写り込み強度を算出する。そしてプルーフ色算出部212で、プルーフ対象画像の画素毎に、その色に応じて予め測定された光沢成分と拡散成分、および写り込み強度に基づいて該画素の表示色を算出する。
【解決手段】代表色ローパスフィルタ生成部203で、変角反射特性の評価値が最大/最小である代表色のそれぞれについて、変角反射特性に応じたローパスフィルタを生成する。代表色写り込みマップ算出部205で、観察照明の強度分布に対して代表色ごとにローパスフィルタ処理を行って、代表色ごとに観察照明の写り込み強度マップを算出する。写り込み強度算出部210で、プルーフ対象画像の画素毎の色に応じた評価値に基づいて各代表色の写り込み強度マップを補間して、画素毎の写り込み強度を算出する。そしてプルーフ色算出部212で、プルーフ対象画像の画素毎に、その色に応じて予め測定された光沢成分と拡散成分、および写り込み強度に基づいて該画素の表示色を算出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等による実印刷物の仕上がり具合についてパーソナルコンピュータ(PC)等でシミュレーションを行って画像表示する処理は、ソフトプルーフ処理と呼ばれる。一般にソフトプルーフ処理においては、実印刷物の反射光の色成分(以下、拡散成分)に対してカラーマッチング処理を行い、その色味を忠実に表示デバイス上に再現する。近年のソフトプルーフ処理においては、コンピュータグラフィックス(CG)を利用することで、印刷物の拡散成分だけでなく、光沢成分(照明の写り込み)も含めてシミュレーションを行う技術が広まりつつある。
【0003】
光沢成分を正確に再現(プルーフ)するには、対象印刷物の変角反射特性をソフトプルーフ処理に反映させる必要がある。ここで変角反射特性とは、光が照射された際にどのような角度にどのような強度で反射するかを示す特性であり、BRDF(Bidirection Reflectance Distribution Function)と称される。特に、近年市場を拡大している顔料プリンタにおいては、印字の濃度やインクの打ち込み順等によりメディア表面の形状が変化することに起因して、色毎に変角反射特性が変化する。したがって顔料プリンタに対するソフトプルーフ処理を行う際には、各色の変角反射特性を正確に反映させる必要がある。
【0004】
従来、CG分野においては変角反射特性を近似したPhongモデル等を用いて光沢成分を表現していた。また、より高精度に変角反射特性を反映するため、複数のCGモデルを合成して対象の変角反射特性を近似する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-126692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光沢成分を表現するために従来導入されていたCGモデルでは、実際の変角反射特性との誤差が生じるため、正確に光沢成分を表現することはできない。また、複数のCGモデルを近似してより高精度に対象の変角反射特性を反映させる手法では、ある特定の変角反射特性をより高精度にソフトプルーフ処理に反映することはできるものの、色毎に変角反射特性が異なる場合には対応できない。
【0007】
本発明は上述した問題を解決するものであり、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う際に、印刷物の色毎に異なる変角反射特性を正確に反映させて光沢成分を高精度に再現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。
【0009】
すなわち、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う画像処理装置であって、複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、前記サンプル印刷物について色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持する評価値保持手段と、前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色のそれぞれについての変角反射特性を取得し、該変角反射特性のそれぞれに応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成手段と、前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該代表色に対応する前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出する代表色写り込み強度マップ算出手段と、プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップ上における該画素に対応する位置の写り込み強度を該評価値に基づいて補間することで、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う際に、印刷物の色毎に異なる変角反射特性を正確に反映させて光沢成分を高精度に再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態における画像処理装置のシステム構成を示すブロック図、
【図2】第1実施形態における機能構成を示す図、
【図3】第1実施形態における実印刷物の各色の変角反射特性を示す図、
【図4】第1実施形態における変角反射特性の取得方法を示す図、
【図5】第1実施形態における画像処理を示すフローチャート、
【図6】第1実施形態における仮想環境の一例を示す図、
【図7】第1実施形態における照明強度分布の一例を示す図、
【図8】第1実施形態における仮想環境での反射モデルの概要を示す図、
【図9】第1実施形態における代表色写り込みマップ算出処理を示すフローチャート、
【図10】第1実施形態における代表色写り込みマップの一例を示す図、
【図11】第1実施形態における写り込み強度算出処理を示すフローチャート、
【図12】第1実施形態における写像性評価値LUTの一例を示す図、
【図13】第1実施形態におけるプルーフ色算出処理を示すフローチャート、
【図14】第1実施形態における拡散LUTおよび光沢LUTの一例を示す図、
【図15】第2実施形態における機能構成を示す図、
【図16】第2実施形態における画像処理を示すフローチャート、
【図17】第2実施形態における対象色変角反射特性の取得処理を示すフローチャート、
【図18】第3実施形態における機能構成を示す図、
【図19】第3実施形態における画像処理を示すフローチャート、
【図20】第3実施形態における代表色写り込み強度マップLUTの一例を示す図、である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
<第1実施形態>
●システム構成
図1は、本実施形態におけるソフトプルーフ処理を行う画像処理装置のシステム構成を示したものである。同図において入力部101はユーザからの指示やデータを入力する装置であり、キーボードやマウスなどのポインティングシステムを含む。表示部102はGUI等を表示する表示デバイス(モニタ)であり、CRTや液晶ディスプレイ等である。データ保存部103は画像データやプログラムを蓄積する装置であり、通常はハードディスクが用いられる。CPU104は上述した各構成の処理全てに関わる。ROM105とRAM106は、その処理に必要なプログラム、データ、作業領域等をCPU104に提供する。また、処理に必要な制御プログラムがデータ保存部103またはROM105に格納されている場合には、該制御プログラムはRAM106に読み込まれてから実行される。あるいは通信部107を経由して装置がプログラムを受信する場合には、データ保存部103に記録した後にRAM106に読み込まれるか、又は、通信部107からRAM106に直接読み込まれて実行される。通信部107は、機器間の通信を行うためのインタフェース(I/F)であり、例えば周知のEthernet(登録商標)やUSB、IEEE、Bluetooth等の通信方式による。なお、システム構成については、上記以外にも様々な構成要素が存在するが、本発明の主眼ではないためその説明は省略する。
【0014】
●画像処理概要
図2は、本実施形態の画像処理装置において実行される画像処理とデータの流れ、すなわち機能構成を示す図である。本実施形態の画像処理装置においては、印刷対象の画像データ(プルーフ対象画像)について、該印刷物をその拡散成分に光沢成分を含めてモニタ上で高精度に再現するソフトプルーフ処理を行う。
【0015】
本実施形態ではまず仮想環境生成部202において、照明強度分布保持部201よりプルーフ対象画像の印刷物(以下、プルーフ対象印刷物)を観察する照明(以下、観察照明)の強度分布を取得する。そして該強度分布と、ユーザが入力部101を介して指定した仮想環境の情報に基づいて、仮想的に印刷物を観察する環境(以下、仮想環境)をCGにより作成する。
【0016】
次に、代表色ローパスフィルタ生成部203において、代表色変角反射特性保持部204に予め保持されている、代表的な印刷色(以下、代表色)についての変角反射特性を取得し、該変角反射特性に基づいてローパスフィルタを作成する。ここで代表色の変角反射特性(BRDF)とは図3に示すように、実印刷物に対して規定された代表色の各RGB値について、光を照射した際の反射強度(XYZ値)を各出射角(θ)において予め測定したデータ(BRDF(θ))である。なお、本実施形態では代表色として2色を用いるとする。
【0017】
ここで図4に、BRDFの測定方法の一例を示す。図4においては、例えばRGBの複数の色票を備えるサンプル画像の実印刷物302に対し、実照明301により光を照射し、変角測定器303を用いて入射光に対する各出射角θの反射光を測定している。なお、実印刷物302の角度ごとの反射特性を取得できるのであれば、照射する実照明301は限定されるものではない。
【0018】
なお、図3に示すように本実施形態ではBRDFをXYZ値で示しているが、L*a*b*色空間によるLab値等を用いても良い。また、図3の例では入射角を45°に固定して出射角θに応じたBRDF(θ)を測定した例を示したが、入射角も可変としたBRDFの測定値を、代表色変角反射特性保持部204に保持しても良い。ただしこの場合、後述する式(2)に示すBRDF(θ)が、入射角と出射角の2変数関数となる。
【0019】
次に、代表色写り込み強度マップ算出部205において、仮想環境生成部202で生成された仮想環境における観察照明の強度分布(観察照明画像)に対して、代表色ローパスフィルタ生成部203で生成されたローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行う。このフィルタ処理によって、プルーフ対象印刷物の代表色に対する観察照明の写り込み強度を示す代表色写り込み強度マップが算出される。代表色写り込み強度マップはすなわち、観察照明の強度分布が代表色の変角反射特性に応じてボカされたものである。
【0020】
次に、仮想環境情報取得部211において、仮想環境生成部202に入力された仮想環境の情報から算出される、仮想視線方向に対する正反射ベクトルの情報を取得する。その後、写り込み強度算出部210において、プルーフ対象画像保持部206に保持されたプルーフ対象画像の画素毎に、観察照明の写り込み強度を算出する。この算出は、プルーフ対象画像の画素毎に、代表色写り込み強度マップ算出部205からの代表色写り込み強度マップ、仮想環境情報取得部211からの正反射ベクトル情報、及び、写像性評価値LUT209に色毎に保持された写像性評価値を用いて行われる。ここで写像性評価値とは、代表色変角反射特性保持部204に保持されたBRDFと相関の高い値であり、予め色毎に測定されている。本実施形態ではBRDFの半値幅が、BRDFの拡がり度合いを示す写像性評価値として写像性評価値LUT209に予め保持されているとする。
【0021】
そしてプルーフ色算出部212において、プルーフ対象画像の画素毎にプルーフ色を算出する。ここでのプルーフ色の算出は、光沢LUT207および拡散LUT208に色毎に保持された光沢成分および拡散成分と、写り込み強度算出部210から得られる写り込み強度を用いて行われる。
【0022】
以上のように、プルーフ対象画像の全画素についてのプルーフ色が算出されると、これらのプルーフ色はモニタ表示用のRGB値に変換されてプルーフ画像保持部213に格納される。そして最後に表示画像生成部214において、プルーフ画像保持部213に格納されたプルーフ画像から、仮想環境情報取得部211で取得されたベクトル情報およびユーザによる表示指示に応じてモニタ用の表示画像を生成する。ここでモニタとはすなわち表示部102である。
【0023】
●画像処理詳細
以下、本実施形態における画像処理について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。なお、本実施形態における画像処理は上述したようにCPU104によって制御される。
【0024】
まずS1001で仮想環境生成部202において、ユーザが入力部101を介して指定した仮想環境の情報に基づき、CGを用いて仮想的に印刷物を観察する環境を作成する。詳細には、まず図6に示すような、壁や天井、床などの3Dオブジェクトを設定して仮想空間401を作成する。次に、仮想印刷物を観察する仮想照明402を設定し、仮想印刷物403を仮想空間の中央近辺に設定し、最後に仮想視点404の位置を設定する。
【0025】
本実施形態では仮想照明402として、実際にプルーフ印刷物を観察する環境(実環境)における観察照明について、測色計等により取得した照明強度分布を設定する。この照明強度分布は、観察照明の発光強度を2次元の平面(例えば、仮想空間401において仮想照明402が設置された天井面)上で測定したデータであり、例えば図7に示すような面状のデータとして、照明強度分布保持部201に保持されている。以下、仮想照明402としての2次元上での照明強度分布データを、観察照明画像と称する。なお、本実施形態では照明強度分布を平面上の2次元データ(観察照明画像)として用いる例を示すが、該平面上の位置座標と照明強度の関係を保持できれば、特にそのデータ形式については限定しない。また、光沢成分のプルーフをより正確に行うために、実際に測定した照明強度分布を用いる例を示したが、予めCG内部に保持されているプリセットのデータ等を用いることも可能である。また、照明強度分布保持部201には複数種類の照明についての強度分布が保持されていても良く、この場合、仮想照明402として設定する観察照明についての強度分布を選択的に使用すれば良い。
【0026】
次にS1002で代表色ローパスフィルタ生成部203において、代表色のローパスフィルタを生成する。詳細には、まず代表色の変角反射特性BRDF(θ)を、代表色変角反射特性保持部204より読み込む。ここで代表色とは、印刷物において観察照明の写り込み(光沢)が最も鮮明な色と、最も不鮮明な色の2色を指し、予め測定された色毎の写像性評価値における最大値と最小値を示す2色に相当する。次に、仮想環境における仮想照明402と仮想印刷物403間の距離Dis[pixel]を取得し、各代表色についての変角反射特性BRDF(θ)の各出射角度θを、BRDF測定時の照射点からの距離を示す画素数であるPixに変換する。この変換は下式(1)にしたがう。なお、θの範囲はBRDF(θ)の出射角度の範囲と対応しており、例えば図3に示す例であれば0〜45度の範囲である。
【0027】
Pix=Dis×tanθ, 0≦θ≦45 ・・・(1)
その後、各Pixにおける変角反射特性BRDF(Pix)に基づき、下式(2)により、各代表色についての2次元ローパスフィルタLPF(a,b)を生成する。式(2)において、a,bはBRDF測定時の仮想印刷物403上における照射点を原点とした周辺位置を示す座標である。また、Sはフィルタサイズを示すパラメータであり、上記式(1)において出射角度の最大値(45度)におけるPix値に相当する。
LPF(a,b)=BRDF((a2+b2)1/2) ・・・(2)
-S≦a≦S, -S≦b≦S
S=Dis×tan45°
(a2+b2)1/2≧S の場合、(a2+b2)1/2=S
次にS1003で代表色写り込み強度マップ算出部205において、仮想照明402による観察照明画像に対し、S1002で代表色毎に生成したローパスフィルタを用いて、代表色毎のフィルタ処理を行う。これにより、各代表色に対する仮想照明402の輝度分布を該代表色の変角反射特性に応じてボカしたものが、代表色写り込み強度マップとして作成される。S1003における処理の詳細については後述する。
【0028】
そしてS1004でプルーフ対象画像保持部206より、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を取得する。なお、画素位置nは初回のS1004の処理前に、例えば1に初期化されているものとする。以下、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を単にRGB値と称する。
【0029】
次にS1005で仮想環境情報取得部211において、まず上記S1001でも参照した仮想環境情報に応じて、プルーフ対象画像の画素位置nが対応する、仮想印刷物403上の位置情報を取得する。そして、該位置に対し、図8に示す光沢反射モデルにおける仮想視線方向ベクトルEに対する正反射ベクトルRを算出する。この算出は、図8の光沢反射モデルに基づく光沢成分の計算式(3)にしたがって行われる。
【0030】
R=−E+2(N・E)N ・・・(3)
図8に示すように、式(3)におけるNは仮想印刷物403表面の法線方向を示すベクトルであり、ユーザが指定した仮想印刷物403の情報から取得する。また、Eは仮想環境における仮想視点404の視線方向を示すベクトル、RはベクトルEの正反射方向を示すベクトルである。また、(N・E)はベクトルNとベクトルEの内積を表す。
【0031】
次にS1006で写り込み強度算出部210において、プルーフ対象画像(すなわち仮想印刷物403)の画素位置nに対する、仮想照明402の写り込み強度を算出する。まず、写像性評価値LUT209から、該画素位置nのRGB値に対する写像性評価値を取得する。なお、ここでの写像性評価値とは上述したように、BRDFの拡がりを示す半値幅である。そして、該写像性評価値とS1003で算出された代表色写り込み強度マップとを用いて、画素位置nのRGB値に対する仮想照明402の写り込み強度を算出する。S1006における処理の詳細については後述する。
【0032】
次にS1007でプルーフ色算出部212において、光沢LUT207と拡散LUT208、及びS1006で算出された写り込み強度を用いて、プルーフ対象画像の画素位置nに対するプルーフ色を算出する。S1007における処理の詳細については後述する。
【0033】
そしてS1008で、プルーフ対象画像の全画素数Nについて、上記S1005〜S1007の処理によってプルーフ色の算出が終了したか否か、すなわち、プルーフ対象画像における現在処理中の画素位置nがNに到達したか否かの判定を行う。n=NであればS1010へ進むが、n≠NであればS1009で画素位置nをインクリメントした後にS1004へ戻る。
【0034】
S1010ではプルーフ色算出部212において、プルーフ対象画像の全画素について、S1007で算出されたプルーフ色をモニタ表示用の信号値へ変換し、プルーフ画像としてプルーフ画像保持部213へ格納する。ここでのモニタ表示用の信号値への変換は、例えば下式(4)に示すプルーフ画像のXYZ値(Xout,Yout,Zout)からsRGB値(Rout,Gout,Bout)への変換式等を利用する。
【0035】
【数1】
【0036】
最後にS1011で表示画像生成部214において、入力部101からユーザにより入力される拡大・縮小・回転・シフト処理等の画像処理の指示に応じて、プルーフ画像保持部213に保持されたプルーフ画像の表示画像を生成する。すなわち、仮想環境情報取得部211で得られた仮想環境情報より仮想印刷物403の位置として示されるプルーフ画像の座標(xin,yin,zin)を、ユーザ指示に応じた描画用の座標(xout,yout,zout)に変換し、処理を終了する。
【0037】
●代表色写り込み強度マップ算出処理(S1003)
以下、上記S1003における代表色写り込み強度マップの算出処理について、図9のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0038】
まずS1101で、ローパスフィルタの番号(すなわち代表色の番号)を表す変数kを1に初期化し、S1102でk番目のローパスフィルタLPFkを取得する。そしてS1103では、k番目の代表色における仮想照明402の輝度LUM(i,j)とローパスフィルタLPFkとの離散畳込み演算を行い、該代表色に対する写り込み強度lumk(i,j)を算出する。この演算は下式(5)にしたがう。式(5)において、(i,j)は仮想照明402の照明画像における位置座標、M,Nはそれぞれ該位置座標i,jの最大値である。
【0039】
【数2】
【0040】
次にS1104では、S1103で算出したlumkを下式(6)にしたがって正規化し、代表色kに対する代表色写り込み強度マップLUMkを算出する。
【0041】
LUMk(i,j)={lumk(i,j)}/{max_lumk} ・・・(6)
ただし、max_lumkは代表色kにおける写り込み強度マップlumkの最大値である。
【0042】
S1105では、全てのローパスフィルタ数Kに対する処理を終了したか否かの判定を行う。処理を終了している、すなわちk=KであればS1003の処理を終了するが、k≠KであればS1106へ進み、ローパスフィルタ番号kをインクリメントしてS1102へ戻る。
【0043】
ここで図10に、図7に示す観察照明画像(照明強度分布)に対して得られる、代表色写り込み強度マップの一例を示す。代表色写り込み強度マップは代表色に写り込む観察照明の輝度を2次元の面状に保持した2次元データであり、図10に示すような観察照明画像として算出される。図10(a)は、観察照明の写り込みが最も鮮明な色、すなわち写像性評価値が最大である色について生成したローパスフィルタを用いて算出された代表色写り込み強度マップである。また図10(b)は、観察照明の写り込みが最も不鮮明な色、すなわち写像性評価値が最小である色について生成したローパスフィルタを用いて算出された代表色写り込み強度マップである。すなわち、図10(a)が最も鮮明な写り込み強度マップであり、図10(b)が最も不鮮明な写り込み強度マップである。なお、上述したように観察照明画像は必ずしも2次元平面の座標位置毎に値を有するデータでなくても良く、照明強度分布保持部201に保持されていればその形状は限定されない。また、代表色写り込み強度マップについても同様に、2次元座標に対する値を保持していれば良い。
【0044】
●写り込み強度算出処理(S1006)
以下、上記S1006における写り込み強度算出処理について、図11のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0045】
まずS1201で、プルーフ対象画像の入力画素値(RGB)に対応する写像性評価値Hとして、BRDFの半値幅を示す値を写像性評価値LUT209から取得する。ここで図12に、写像性評価値LUT209の一例を示す。図12に示すように写像性評価値LUT209では、複数のRGB値が写像性評価値Hに対応付けられている。従って、プルーフ対象画素のRGB値から対応する写像性評価値Hを取得するためには、写像性評価値LUT209に対してRGB値をインデックスとして、対応する写像性評価値Hを取得すれば良い。なお、RGB値が写像性評価値LUT209において直接参照できない場合には、四面体補間などの補間方法を用いて写像性評価値Hを取得すれば良い。なお、個々の写像性評価値Hは、代表色変角反射特性保持部204に保持されたBRDFについて予め測定したものである。
【0046】
次にS1202では、上記S1005において仮想環境情報取得部211で取得されている正反射方向のベクトルRを取得する。
【0047】
そしてS1203ではベクトルRを用いて代表色写り込み強度マップ上の位置を決定し、対応する代表色写り込み強度マップを補間して、対象色に対する仮想照明402の写り込み強度LUMest(x,y)を算出する。この演算は下式(7)にしたがう。式(7)において(x,y)は、S1202で取得した画素位置nに対する正反射ベクトルRと、仮想照明402が設置された仮想平面(観察照明画像)との交点座標であり、プルーフ対象画像の画素位置nが代表色写り込み強度マップ上で対応する位置を示す。また、HmaxおよびHminはそれぞれ、写像性評価値LUT209に保持された、観察照明下における写像性評価値Hの最大値および最小値である。また、LUMmaxおよびLUMminはそれぞれ、写像性評価値Hが最大および最小となる代表色の写り込み強度マップである。
【0048】
【数3】
【0049】
●プルーフ色算出処理(S1007)
以下、上記S1007におけるプルーフ画像生成処理について、図13のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0050】
まずS1301で、プルーフ対象画像における画素位置nの画素値RGBに対応した非光沢拡散XYZ値を、拡散LUT208から取得する。そしてS1302で、同じく画素位置nの画素値RGB値に対応した光沢拡散XYZ値を、光沢LUT207から取得する。
【0051】
ここで図14(a),(b)のそれぞれに、拡散LUT208,光沢LUT207の一例を示す。図14(a)に示すように拡散LUT208は、例えばRGBの複数の色票を備えるサンプル画像の実印刷物(サンプル印刷物)において、該印刷物に特に観察照明を写り込ませずに測定したデータを保持する拡散成分保持手段である。すなわち、サンプル印刷物における代表的なRGB値についての拡散反射を予め測定し、得られたXYZ値(Xdiff,Ydiff,Zdiff)を拡散成分として保持している。この拡散成分はすなわち、観察照明の写り込みがない場合の反射光の色成分である。また図14(b)に示すように光沢LUT207は、上記サンプル印刷物において、該印刷物に観察照明(仮想照明402に同じ)を写り込ませて測定したデータを保持する光沢成分保持手段である。すなわち、サンプル印刷物における代表的なRGB値について、観察照明の正反射を予め測定し、得られたXYZ値(Xspec,Yspec,Zspec)を光沢成分として保持している。なお、このように測定された光沢成分はすなわち、拡散成分に対して観察照明による写り込み、すなわち光沢成分が上乗せされたものである。従って、プルーフ対象画像の入力画素値RGBから拡散LUT208や光沢LUT207を参照する際には、RGB値をインデックスとして対応する非光沢拡散XYZ値および光沢拡散XYZ値を取得すれば良い。ただし、拡散LUT208や光沢LUT207に処理対象のRGB値が存在しない場合には、四面体補間等の補間によりこれを算出しても良い。なお、上記サンプル印刷物としては、複数色を含む画像の印刷物であれば適用可能である。
【0052】
次にS1303で、S1203で算出した写り込み強度LUMest(x,y)を取得する。そしてS1304で、非光沢拡散XYZ値と光沢拡散XYZ値、及び写り込み強度LUMest(x,y)から、下式(8)に従ってXYZの各値におけるプルーフ光沢成分を算出する。
【0053】
Xgloss=(Xspec−Xdiff)×LUMest(x,y)
Ygloss=(Yspec−Ydiff)×LUMest(x,y) ・・・(8)
Zgloss=(Zspec−Zdiff)×LUMest(x,y)
次にS1305では、下式(9)に従ってプルーフ光沢成分と拡散成分とを合成することで、プルーフ対象画像の各画素値に対応するプルーフ色を算出し、処理を終了する。
【0054】
Xout=Xgloss+Xdiff
Yout=Ygloss+Ydiff ・・・(9)
Zout=Zgloss+Zdiff
上記(8),(9)式によれば本実施形態ではすなわち、プルーフ対象画像の画素ごとに、光沢成分と該拡散成分の差分に写り込み強度を乗じてプルーフ光沢成分を算出し、それに拡散成分を加算することで、プルーフ色を算出している。
【0055】
以上説明したように本実施形態によれば、まず、代表色の変角反射特性に基づくローパスフィルタを用いて代表色に対する照明の写り込み強度マップを算出する。そして、代表色写り込みマップを仮想視線の正反射ベクトルに応じて補間することで、プルーフ対象画像の各画素位置に対する写り込み強度を算出し、該写り込み強度を用いて光沢成分を算出する。これにより、色毎に異なる光沢成分をより高精度に再現することができる。
【0056】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態における画像処理装置のシステム構成は上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、以下では特に第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0057】
●画像処理概要
図15は、第2実施形態の画像処理装置において実行される画像処理とデータの流れ、すなわち機能構成を示す図である。同図において、照明強度分布保持部501および仮想環境生成部502は、上述した第1実施形態で示した図2における照明強度分布保持部201および仮想環境生成部202と同様の処理を行う。
【0058】
対象色変角反射特性算出部508では、代表色変角反射特性保持部507から取得した代表色の変角反射特性と、写像性評価値保持部LUT506から取得した写像性評価値とを用いて、対象色の変角反射特性を算出する。対象色ローパスフィルタ生成部509では、対象色変角反射特性算出部508で算出した対象色の変角反射特性と仮想環境情報に基づいて、対象色のローパスフィルタを生成する。
【0059】
次に、仮想環境情報取得部511において、ユーザが入力部101を介して指定した仮想環境の情報に基づいて算出される、仮想視線方向に対する正反射ベクトルの情報を取得する。次に、写り込み強度算出部510において、対象色ローパスフィルタとベクトル情報を用いて、仮想環境生成部502で生成された仮想環境における観察照明の強度分布(観察照明画像)に対してフィルタ処理を行うことで、対象色の写り込み強度を算出する。
【0060】
なお、プルーフ対象画像保持部503、光沢LUT504、拡散LUT505、プルーフ色算出部512、プルーフ画像保持部513、表示画像生成部514については、それぞれ第1実施形態と同様の処理を行うため説明を省略する。
【0061】
●画像処理詳細
以下、第2実施形態における画像処理について、図16のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0062】
まずS2001で仮想環境生成部502において、第1実施形態と同様に仮想的に印刷物を観察する環境をCGを用いて作成する。そしてS2002でプルーフ対象画像保持部503より、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を取得する。以下、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を対象色と称する。そしてS2003で対象色変角反射特性算出部508において、S2002で取得した対象色に対応する変角反射特性を算出する。S2003における処理の詳細については後述する。
【0063】
次にS2004では対象色ローパスフィルタ生成部509において、S2003で算出した対象色変角反射特性とS2001で生成された仮想環境の情報に基づいて、対象色のローパスフィルタを作成する。ローパスフィルタの作成方法は第1実施形態と同様であり、仮想照明と仮想印刷物間の距離Disを取得し、変角反射特性BRDF(θ)の各出射角度θをピクセルPixに変換し、該変換したBRDF(Pix)に基づいて2次元のローパスフィルタを作成する。
【0064】
次にS2005で仮想環境情報取得部511において、第1実施形態と同様にユーザ指示に応じて、プルーフ対象画像の画素位置nが対応する仮想印刷物上の位置情報を取得し、仮想環境での仮想視線方向ベクトルEに対する正反射ベクトルRを算出する。
【0065】
そしてS2006で写り込み強度算出部510において、正反射ベクトルRと観察照明画像との交点座標を中心として、第1実施形態と同様の(5)式に基づく畳込み演算、すなわち観察照明画像に対するローパスフィルタによるフィルタ処理を行う。
【0066】
次にS2007でプルーフ色算出部512において、第1実施形態と同様に光沢LUT504と拡散LUT505、及びS2006で算出された対象色に対する写り込み強度を用いて、該対象色に対するプルーフ色を算出する。そしてS2008で、プルーフ対象画像の全画素数Nについて、上記S2002〜S2007の処理によってプルーフ色の算出が終了したか否かを判定する。n=NであればS2010へ進むが、n≠NであればS2009で画素位置nをインクリメントした後にS2002へ戻る。
【0067】
そしてS2010、S2011では第1実施形態と同様にプルーフ色算出部512、表示画像生成部において、プルーフ対象画像の全画素についてS1007で算出されたプルーフ色からなるプルーフ画像の表示用画像を生成する。
【0068】
●対象色変換反射特性算出処理(S2003)
以下、上記S2003における対象色変換反射特性の算出処理について、図17のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0069】
まずS2101において、写像性評価値LUT506から、対象色(RGB値)に対応する写像性評価値Hを第1実施形態と同様に取得する。そしてS2102で、全ての代表色についての変角反射特性を代表色変角反射特性保持部507から取得する。ここでは、写像性評価値Hが最大となる色と最小となる色を代表色とし、それぞれの変角反射特性BRDFmaxとBRDFminを取得するものとする。
【0070】
そしてS2103で下式(10)にしたがって、対象色の変角反射特性BRDFを算出し、処理を終了する。なお、式(10)においてHmax、Hminはそれぞれ写像性評価値の最大値、最小値である。
【0071】
【数4】
【0072】
以上説明したように第2実施形態によれば、代表色の変角反射特性に基づいて対象色の変角反射特性を算出し、これに基づいて作成された対象色のローパスフィルタを用いて仮想印刷物に対する写り込み強度を算出する。そしてプルーフ対象画像の各画素に対してこの写り込み強度を用いて光沢成分を算出することで、第1実施形態と同様に色毎に異なる光沢成分をより高精度に再現することができる。
【0073】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態における画像処理装置のシステム構成は上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、以下では特に第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0074】
●画像処理概要
図18は、第3実施形態の画像処理装置において実行される画像処理とデータの流れ、すなわち機能構成を示す図である。同図においては、上述した第1実施形態で図2に示した構成に対し、代表色写り込み強度マップ算出部205に代えて代表色写り込み強度マップLUT生成部605を備え、さらに写像性評価値LUT209を省いた構成からなる。その他の構成については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
代表色写り込み強度マップLUT生成部605は、仮想環境生成部602で生成された仮想照明と、代表色ローパスフィルタ生成部603で生成されたローパスフィルタを用いて、代表色の入力画素値と写り込み強度マップを関連付けるLUTを生成する。なお、第3実施形態では代表色の入力画素値としてRGB値を用いるが、代表色を表す入力画素値であればRGB値に限定されず、XYZ値やインク値であっても良い。写り込み強度算出部610では、プルーフ対象画像保持部606から取得したプルーフ対象画素値及び、代表色写り込み強度マップLUTを用いて、対象色(RGB値)の写り込み強度を算出する。
【0076】
●画像処理詳細
以下、第3実施形態における画像処理について、図19のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0077】
まずS3001で仮想環境生成部602において、第1実施形態と同様に仮想的に印刷物を観察する環境をCGを用いて作成する。そしてS3002で代表色ローパスフィルタ生成部603において第1実施形態と同様に、代表色のローパスフィルタを生成する。詳細には、まず代表色の変角反射特性BRDF(θ)を、代表色変角反射特性保持部604より読み込む。第3実施形態における代表色は、プルーフ対象画像の全色域を所定間隔で分割した色である。以下ではRGB値をそれぞれ5スライスに分割した125色を代表色とするが、色数はこれに限定されるものではなく、例えばRGB値を9スライスに分割した729色であっても良い。次に、第1実施形態と同様に、代表色ごとに変角反射特性BRDF(θ)の各出射角度θをピクセルPixに変換し、変換したBRDF(Pix)に基づいて2次元のローパスフィルタを作成する。
【0078】
次にS3003では代表色写り込み強度マップLUT生成部605において、まず仮想環境に設定された仮想照明402に対して、S3002で生成した代表色のローパスフィルタ毎に、第1実施形態と同様に(5)式に基づくフィルタ処理を行う。これにより、各代表色の代表色写り込みマップが作成される。そして次に、各代表色のRGB値と代表色写り込みマップとの対応関係を示すテーブル(LUT)を生成する。ここで図20に、第3実施形態で生成される代表色写り込み強度マップLUTの一例を示す。同図において、x,yは仮想照明402の照明画像における位置を表す座標であり、例えば1024×1024ピクセルの照明画像であれば、x,yはそれぞれ0〜1024までの整数値をとる。また、LUMk(x,y)は位置(x,y)におけるk番目の代表色の写り込み強度である。
【0079】
そしてS3004でプルーフ対象画像保持部606より、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を取得する。次にS3005で写り込み強度算出部610において、S3003で生成したLUTを用いて、プルーフ対象画像の画素位置nおよびそのRGB値に対応する、仮想照明402の写り込み強度LUMestを取得する。なお、RGB値が代表色写りこみ強度マップLUTにおいて直接参照できない場合には、四面体補間などの補間方法を用いて写り込み強度LUMestを算出すれば良い。
【0080】
次にS3006でプルーフ色算出部612において、光沢LUT607と拡散LUT608、及びS3005で算出されたRGB値に対する写り込み強度を用いて、該RGB値に対するプルーフ色を第1実施形態と同様に算出する。そしてS3007で、プルーフ対象画像の全画素数Nについて、上記S3004〜S3006の処理によってプルーフ色の算出が終了したか否かを判定する。n=NであればS3009へ進むが、n≠NであればS3008で画素位置nをインクリメントした後にS3004へ戻る。
【0081】
S3009ではプルーフ色算出部612において、プルーフ画像保持部613へプルーフ画像を格納する。そしてS3010では仮想環境情報取得部611において、第1実施形態と同様にユーザ指示に応じて仮想印刷物の位置を取得し、仮想環境での仮想視線方向ベクトルEに対する正反射ベクトルRを算出する。そしてS3011で表示画像生成部614において、第1実施形態と同様にプルーフ画像を正反射ベクトルRに応じて表示用画像に変換し、処理を終了する。
【0082】
以上説明したように第3実施形態によれば、代表色の変角反射特性に基づくローパスフィルタを用いて代表色の写り込み強度マップを算出し、該マップと代表色のRGB値との対応関係を示すLUTを作成する。そして、このLUTを用いてプルーフ対象画像の各画素位置とそのRGB値に対する写り込み強度を算出し、該写り込み強度を用いて光沢成分を算出することで、上述した第1実施形態と同様に色毎に異なる光沢成分をより高精度に再現することができる。
【0083】
<その他の実施形態>
上述した第1実施形態では、写像性評価値Hが最大である色と最小である色の2色を代表色とする例を示したが、複数の代表色から補間を行うのであれば、代表色は2色に限らない。例えば写像性評価値Hの最大値Hmax、最小値Hmin、中間値Hmidの3色を用いることによって、下式(11)に示すような補間を行うことも可能である。
【0084】
【数5】
【0085】
また、上述した第1〜第3実施形態では、対象色の写り込み強度を算出する際に、代表色の写り込み強度を写像性評価値に応じて線形に補間する例を示した。しかしながら、複数の代表色から補間を行うのであれば線形補間に限らず、例えば3次スプライン補間のような非線形補間を適用することも可能である。
【0086】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う画像処理装置および画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等による実印刷物の仕上がり具合についてパーソナルコンピュータ(PC)等でシミュレーションを行って画像表示する処理は、ソフトプルーフ処理と呼ばれる。一般にソフトプルーフ処理においては、実印刷物の反射光の色成分(以下、拡散成分)に対してカラーマッチング処理を行い、その色味を忠実に表示デバイス上に再現する。近年のソフトプルーフ処理においては、コンピュータグラフィックス(CG)を利用することで、印刷物の拡散成分だけでなく、光沢成分(照明の写り込み)も含めてシミュレーションを行う技術が広まりつつある。
【0003】
光沢成分を正確に再現(プルーフ)するには、対象印刷物の変角反射特性をソフトプルーフ処理に反映させる必要がある。ここで変角反射特性とは、光が照射された際にどのような角度にどのような強度で反射するかを示す特性であり、BRDF(Bidirection Reflectance Distribution Function)と称される。特に、近年市場を拡大している顔料プリンタにおいては、印字の濃度やインクの打ち込み順等によりメディア表面の形状が変化することに起因して、色毎に変角反射特性が変化する。したがって顔料プリンタに対するソフトプルーフ処理を行う際には、各色の変角反射特性を正確に反映させる必要がある。
【0004】
従来、CG分野においては変角反射特性を近似したPhongモデル等を用いて光沢成分を表現していた。また、より高精度に変角反射特性を反映するため、複数のCGモデルを合成して対象の変角反射特性を近似する手法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004-126692号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
光沢成分を表現するために従来導入されていたCGモデルでは、実際の変角反射特性との誤差が生じるため、正確に光沢成分を表現することはできない。また、複数のCGモデルを近似してより高精度に対象の変角反射特性を反映させる手法では、ある特定の変角反射特性をより高精度にソフトプルーフ処理に反映することはできるものの、色毎に変角反射特性が異なる場合には対応できない。
【0007】
本発明は上述した問題を解決するものであり、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う際に、印刷物の色毎に異なる変角反射特性を正確に反映させて光沢成分を高精度に再現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための一手段として、本発明の画像処理装置は以下の構成を備える。
【0009】
すなわち、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う画像処理装置であって、複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、前記サンプル印刷物について色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持する評価値保持手段と、前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色のそれぞれについての変角反射特性を取得し、該変角反射特性のそれぞれに応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成手段と、前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該代表色に対応する前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出する代表色写り込み強度マップ算出手段と、プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップ上における該画素に対応する位置の写り込み強度を該評価値に基づいて補間することで、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う際に、印刷物の色毎に異なる変角反射特性を正確に反映させて光沢成分を高精度に再現することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】第1実施形態における画像処理装置のシステム構成を示すブロック図、
【図2】第1実施形態における機能構成を示す図、
【図3】第1実施形態における実印刷物の各色の変角反射特性を示す図、
【図4】第1実施形態における変角反射特性の取得方法を示す図、
【図5】第1実施形態における画像処理を示すフローチャート、
【図6】第1実施形態における仮想環境の一例を示す図、
【図7】第1実施形態における照明強度分布の一例を示す図、
【図8】第1実施形態における仮想環境での反射モデルの概要を示す図、
【図9】第1実施形態における代表色写り込みマップ算出処理を示すフローチャート、
【図10】第1実施形態における代表色写り込みマップの一例を示す図、
【図11】第1実施形態における写り込み強度算出処理を示すフローチャート、
【図12】第1実施形態における写像性評価値LUTの一例を示す図、
【図13】第1実施形態におけるプルーフ色算出処理を示すフローチャート、
【図14】第1実施形態における拡散LUTおよび光沢LUTの一例を示す図、
【図15】第2実施形態における機能構成を示す図、
【図16】第2実施形態における画像処理を示すフローチャート、
【図17】第2実施形態における対象色変角反射特性の取得処理を示すフローチャート、
【図18】第3実施形態における機能構成を示す図、
【図19】第3実施形態における画像処理を示すフローチャート、
【図20】第3実施形態における代表色写り込み強度マップLUTの一例を示す図、である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施の形態は特許請求の範囲に関る本発明を限定するものではなく、また、本実施の形態で説明されている特徴の組み合わせの全てが本発明の解決手段に必須のものとは限らない。
【0013】
<第1実施形態>
●システム構成
図1は、本実施形態におけるソフトプルーフ処理を行う画像処理装置のシステム構成を示したものである。同図において入力部101はユーザからの指示やデータを入力する装置であり、キーボードやマウスなどのポインティングシステムを含む。表示部102はGUI等を表示する表示デバイス(モニタ)であり、CRTや液晶ディスプレイ等である。データ保存部103は画像データやプログラムを蓄積する装置であり、通常はハードディスクが用いられる。CPU104は上述した各構成の処理全てに関わる。ROM105とRAM106は、その処理に必要なプログラム、データ、作業領域等をCPU104に提供する。また、処理に必要な制御プログラムがデータ保存部103またはROM105に格納されている場合には、該制御プログラムはRAM106に読み込まれてから実行される。あるいは通信部107を経由して装置がプログラムを受信する場合には、データ保存部103に記録した後にRAM106に読み込まれるか、又は、通信部107からRAM106に直接読み込まれて実行される。通信部107は、機器間の通信を行うためのインタフェース(I/F)であり、例えば周知のEthernet(登録商標)やUSB、IEEE、Bluetooth等の通信方式による。なお、システム構成については、上記以外にも様々な構成要素が存在するが、本発明の主眼ではないためその説明は省略する。
【0014】
●画像処理概要
図2は、本実施形態の画像処理装置において実行される画像処理とデータの流れ、すなわち機能構成を示す図である。本実施形態の画像処理装置においては、印刷対象の画像データ(プルーフ対象画像)について、該印刷物をその拡散成分に光沢成分を含めてモニタ上で高精度に再現するソフトプルーフ処理を行う。
【0015】
本実施形態ではまず仮想環境生成部202において、照明強度分布保持部201よりプルーフ対象画像の印刷物(以下、プルーフ対象印刷物)を観察する照明(以下、観察照明)の強度分布を取得する。そして該強度分布と、ユーザが入力部101を介して指定した仮想環境の情報に基づいて、仮想的に印刷物を観察する環境(以下、仮想環境)をCGにより作成する。
【0016】
次に、代表色ローパスフィルタ生成部203において、代表色変角反射特性保持部204に予め保持されている、代表的な印刷色(以下、代表色)についての変角反射特性を取得し、該変角反射特性に基づいてローパスフィルタを作成する。ここで代表色の変角反射特性(BRDF)とは図3に示すように、実印刷物に対して規定された代表色の各RGB値について、光を照射した際の反射強度(XYZ値)を各出射角(θ)において予め測定したデータ(BRDF(θ))である。なお、本実施形態では代表色として2色を用いるとする。
【0017】
ここで図4に、BRDFの測定方法の一例を示す。図4においては、例えばRGBの複数の色票を備えるサンプル画像の実印刷物302に対し、実照明301により光を照射し、変角測定器303を用いて入射光に対する各出射角θの反射光を測定している。なお、実印刷物302の角度ごとの反射特性を取得できるのであれば、照射する実照明301は限定されるものではない。
【0018】
なお、図3に示すように本実施形態ではBRDFをXYZ値で示しているが、L*a*b*色空間によるLab値等を用いても良い。また、図3の例では入射角を45°に固定して出射角θに応じたBRDF(θ)を測定した例を示したが、入射角も可変としたBRDFの測定値を、代表色変角反射特性保持部204に保持しても良い。ただしこの場合、後述する式(2)に示すBRDF(θ)が、入射角と出射角の2変数関数となる。
【0019】
次に、代表色写り込み強度マップ算出部205において、仮想環境生成部202で生成された仮想環境における観察照明の強度分布(観察照明画像)に対して、代表色ローパスフィルタ生成部203で生成されたローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行う。このフィルタ処理によって、プルーフ対象印刷物の代表色に対する観察照明の写り込み強度を示す代表色写り込み強度マップが算出される。代表色写り込み強度マップはすなわち、観察照明の強度分布が代表色の変角反射特性に応じてボカされたものである。
【0020】
次に、仮想環境情報取得部211において、仮想環境生成部202に入力された仮想環境の情報から算出される、仮想視線方向に対する正反射ベクトルの情報を取得する。その後、写り込み強度算出部210において、プルーフ対象画像保持部206に保持されたプルーフ対象画像の画素毎に、観察照明の写り込み強度を算出する。この算出は、プルーフ対象画像の画素毎に、代表色写り込み強度マップ算出部205からの代表色写り込み強度マップ、仮想環境情報取得部211からの正反射ベクトル情報、及び、写像性評価値LUT209に色毎に保持された写像性評価値を用いて行われる。ここで写像性評価値とは、代表色変角反射特性保持部204に保持されたBRDFと相関の高い値であり、予め色毎に測定されている。本実施形態ではBRDFの半値幅が、BRDFの拡がり度合いを示す写像性評価値として写像性評価値LUT209に予め保持されているとする。
【0021】
そしてプルーフ色算出部212において、プルーフ対象画像の画素毎にプルーフ色を算出する。ここでのプルーフ色の算出は、光沢LUT207および拡散LUT208に色毎に保持された光沢成分および拡散成分と、写り込み強度算出部210から得られる写り込み強度を用いて行われる。
【0022】
以上のように、プルーフ対象画像の全画素についてのプルーフ色が算出されると、これらのプルーフ色はモニタ表示用のRGB値に変換されてプルーフ画像保持部213に格納される。そして最後に表示画像生成部214において、プルーフ画像保持部213に格納されたプルーフ画像から、仮想環境情報取得部211で取得されたベクトル情報およびユーザによる表示指示に応じてモニタ用の表示画像を生成する。ここでモニタとはすなわち表示部102である。
【0023】
●画像処理詳細
以下、本実施形態における画像処理について、図5のフローチャートを用いて詳細に説明する。なお、本実施形態における画像処理は上述したようにCPU104によって制御される。
【0024】
まずS1001で仮想環境生成部202において、ユーザが入力部101を介して指定した仮想環境の情報に基づき、CGを用いて仮想的に印刷物を観察する環境を作成する。詳細には、まず図6に示すような、壁や天井、床などの3Dオブジェクトを設定して仮想空間401を作成する。次に、仮想印刷物を観察する仮想照明402を設定し、仮想印刷物403を仮想空間の中央近辺に設定し、最後に仮想視点404の位置を設定する。
【0025】
本実施形態では仮想照明402として、実際にプルーフ印刷物を観察する環境(実環境)における観察照明について、測色計等により取得した照明強度分布を設定する。この照明強度分布は、観察照明の発光強度を2次元の平面(例えば、仮想空間401において仮想照明402が設置された天井面)上で測定したデータであり、例えば図7に示すような面状のデータとして、照明強度分布保持部201に保持されている。以下、仮想照明402としての2次元上での照明強度分布データを、観察照明画像と称する。なお、本実施形態では照明強度分布を平面上の2次元データ(観察照明画像)として用いる例を示すが、該平面上の位置座標と照明強度の関係を保持できれば、特にそのデータ形式については限定しない。また、光沢成分のプルーフをより正確に行うために、実際に測定した照明強度分布を用いる例を示したが、予めCG内部に保持されているプリセットのデータ等を用いることも可能である。また、照明強度分布保持部201には複数種類の照明についての強度分布が保持されていても良く、この場合、仮想照明402として設定する観察照明についての強度分布を選択的に使用すれば良い。
【0026】
次にS1002で代表色ローパスフィルタ生成部203において、代表色のローパスフィルタを生成する。詳細には、まず代表色の変角反射特性BRDF(θ)を、代表色変角反射特性保持部204より読み込む。ここで代表色とは、印刷物において観察照明の写り込み(光沢)が最も鮮明な色と、最も不鮮明な色の2色を指し、予め測定された色毎の写像性評価値における最大値と最小値を示す2色に相当する。次に、仮想環境における仮想照明402と仮想印刷物403間の距離Dis[pixel]を取得し、各代表色についての変角反射特性BRDF(θ)の各出射角度θを、BRDF測定時の照射点からの距離を示す画素数であるPixに変換する。この変換は下式(1)にしたがう。なお、θの範囲はBRDF(θ)の出射角度の範囲と対応しており、例えば図3に示す例であれば0〜45度の範囲である。
【0027】
Pix=Dis×tanθ, 0≦θ≦45 ・・・(1)
その後、各Pixにおける変角反射特性BRDF(Pix)に基づき、下式(2)により、各代表色についての2次元ローパスフィルタLPF(a,b)を生成する。式(2)において、a,bはBRDF測定時の仮想印刷物403上における照射点を原点とした周辺位置を示す座標である。また、Sはフィルタサイズを示すパラメータであり、上記式(1)において出射角度の最大値(45度)におけるPix値に相当する。
LPF(a,b)=BRDF((a2+b2)1/2) ・・・(2)
-S≦a≦S, -S≦b≦S
S=Dis×tan45°
(a2+b2)1/2≧S の場合、(a2+b2)1/2=S
次にS1003で代表色写り込み強度マップ算出部205において、仮想照明402による観察照明画像に対し、S1002で代表色毎に生成したローパスフィルタを用いて、代表色毎のフィルタ処理を行う。これにより、各代表色に対する仮想照明402の輝度分布を該代表色の変角反射特性に応じてボカしたものが、代表色写り込み強度マップとして作成される。S1003における処理の詳細については後述する。
【0028】
そしてS1004でプルーフ対象画像保持部206より、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を取得する。なお、画素位置nは初回のS1004の処理前に、例えば1に初期化されているものとする。以下、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を単にRGB値と称する。
【0029】
次にS1005で仮想環境情報取得部211において、まず上記S1001でも参照した仮想環境情報に応じて、プルーフ対象画像の画素位置nが対応する、仮想印刷物403上の位置情報を取得する。そして、該位置に対し、図8に示す光沢反射モデルにおける仮想視線方向ベクトルEに対する正反射ベクトルRを算出する。この算出は、図8の光沢反射モデルに基づく光沢成分の計算式(3)にしたがって行われる。
【0030】
R=−E+2(N・E)N ・・・(3)
図8に示すように、式(3)におけるNは仮想印刷物403表面の法線方向を示すベクトルであり、ユーザが指定した仮想印刷物403の情報から取得する。また、Eは仮想環境における仮想視点404の視線方向を示すベクトル、RはベクトルEの正反射方向を示すベクトルである。また、(N・E)はベクトルNとベクトルEの内積を表す。
【0031】
次にS1006で写り込み強度算出部210において、プルーフ対象画像(すなわち仮想印刷物403)の画素位置nに対する、仮想照明402の写り込み強度を算出する。まず、写像性評価値LUT209から、該画素位置nのRGB値に対する写像性評価値を取得する。なお、ここでの写像性評価値とは上述したように、BRDFの拡がりを示す半値幅である。そして、該写像性評価値とS1003で算出された代表色写り込み強度マップとを用いて、画素位置nのRGB値に対する仮想照明402の写り込み強度を算出する。S1006における処理の詳細については後述する。
【0032】
次にS1007でプルーフ色算出部212において、光沢LUT207と拡散LUT208、及びS1006で算出された写り込み強度を用いて、プルーフ対象画像の画素位置nに対するプルーフ色を算出する。S1007における処理の詳細については後述する。
【0033】
そしてS1008で、プルーフ対象画像の全画素数Nについて、上記S1005〜S1007の処理によってプルーフ色の算出が終了したか否か、すなわち、プルーフ対象画像における現在処理中の画素位置nがNに到達したか否かの判定を行う。n=NであればS1010へ進むが、n≠NであればS1009で画素位置nをインクリメントした後にS1004へ戻る。
【0034】
S1010ではプルーフ色算出部212において、プルーフ対象画像の全画素について、S1007で算出されたプルーフ色をモニタ表示用の信号値へ変換し、プルーフ画像としてプルーフ画像保持部213へ格納する。ここでのモニタ表示用の信号値への変換は、例えば下式(4)に示すプルーフ画像のXYZ値(Xout,Yout,Zout)からsRGB値(Rout,Gout,Bout)への変換式等を利用する。
【0035】
【数1】
【0036】
最後にS1011で表示画像生成部214において、入力部101からユーザにより入力される拡大・縮小・回転・シフト処理等の画像処理の指示に応じて、プルーフ画像保持部213に保持されたプルーフ画像の表示画像を生成する。すなわち、仮想環境情報取得部211で得られた仮想環境情報より仮想印刷物403の位置として示されるプルーフ画像の座標(xin,yin,zin)を、ユーザ指示に応じた描画用の座標(xout,yout,zout)に変換し、処理を終了する。
【0037】
●代表色写り込み強度マップ算出処理(S1003)
以下、上記S1003における代表色写り込み強度マップの算出処理について、図9のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0038】
まずS1101で、ローパスフィルタの番号(すなわち代表色の番号)を表す変数kを1に初期化し、S1102でk番目のローパスフィルタLPFkを取得する。そしてS1103では、k番目の代表色における仮想照明402の輝度LUM(i,j)とローパスフィルタLPFkとの離散畳込み演算を行い、該代表色に対する写り込み強度lumk(i,j)を算出する。この演算は下式(5)にしたがう。式(5)において、(i,j)は仮想照明402の照明画像における位置座標、M,Nはそれぞれ該位置座標i,jの最大値である。
【0039】
【数2】
【0040】
次にS1104では、S1103で算出したlumkを下式(6)にしたがって正規化し、代表色kに対する代表色写り込み強度マップLUMkを算出する。
【0041】
LUMk(i,j)={lumk(i,j)}/{max_lumk} ・・・(6)
ただし、max_lumkは代表色kにおける写り込み強度マップlumkの最大値である。
【0042】
S1105では、全てのローパスフィルタ数Kに対する処理を終了したか否かの判定を行う。処理を終了している、すなわちk=KであればS1003の処理を終了するが、k≠KであればS1106へ進み、ローパスフィルタ番号kをインクリメントしてS1102へ戻る。
【0043】
ここで図10に、図7に示す観察照明画像(照明強度分布)に対して得られる、代表色写り込み強度マップの一例を示す。代表色写り込み強度マップは代表色に写り込む観察照明の輝度を2次元の面状に保持した2次元データであり、図10に示すような観察照明画像として算出される。図10(a)は、観察照明の写り込みが最も鮮明な色、すなわち写像性評価値が最大である色について生成したローパスフィルタを用いて算出された代表色写り込み強度マップである。また図10(b)は、観察照明の写り込みが最も不鮮明な色、すなわち写像性評価値が最小である色について生成したローパスフィルタを用いて算出された代表色写り込み強度マップである。すなわち、図10(a)が最も鮮明な写り込み強度マップであり、図10(b)が最も不鮮明な写り込み強度マップである。なお、上述したように観察照明画像は必ずしも2次元平面の座標位置毎に値を有するデータでなくても良く、照明強度分布保持部201に保持されていればその形状は限定されない。また、代表色写り込み強度マップについても同様に、2次元座標に対する値を保持していれば良い。
【0044】
●写り込み強度算出処理(S1006)
以下、上記S1006における写り込み強度算出処理について、図11のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0045】
まずS1201で、プルーフ対象画像の入力画素値(RGB)に対応する写像性評価値Hとして、BRDFの半値幅を示す値を写像性評価値LUT209から取得する。ここで図12に、写像性評価値LUT209の一例を示す。図12に示すように写像性評価値LUT209では、複数のRGB値が写像性評価値Hに対応付けられている。従って、プルーフ対象画素のRGB値から対応する写像性評価値Hを取得するためには、写像性評価値LUT209に対してRGB値をインデックスとして、対応する写像性評価値Hを取得すれば良い。なお、RGB値が写像性評価値LUT209において直接参照できない場合には、四面体補間などの補間方法を用いて写像性評価値Hを取得すれば良い。なお、個々の写像性評価値Hは、代表色変角反射特性保持部204に保持されたBRDFについて予め測定したものである。
【0046】
次にS1202では、上記S1005において仮想環境情報取得部211で取得されている正反射方向のベクトルRを取得する。
【0047】
そしてS1203ではベクトルRを用いて代表色写り込み強度マップ上の位置を決定し、対応する代表色写り込み強度マップを補間して、対象色に対する仮想照明402の写り込み強度LUMest(x,y)を算出する。この演算は下式(7)にしたがう。式(7)において(x,y)は、S1202で取得した画素位置nに対する正反射ベクトルRと、仮想照明402が設置された仮想平面(観察照明画像)との交点座標であり、プルーフ対象画像の画素位置nが代表色写り込み強度マップ上で対応する位置を示す。また、HmaxおよびHminはそれぞれ、写像性評価値LUT209に保持された、観察照明下における写像性評価値Hの最大値および最小値である。また、LUMmaxおよびLUMminはそれぞれ、写像性評価値Hが最大および最小となる代表色の写り込み強度マップである。
【0048】
【数3】
【0049】
●プルーフ色算出処理(S1007)
以下、上記S1007におけるプルーフ画像生成処理について、図13のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0050】
まずS1301で、プルーフ対象画像における画素位置nの画素値RGBに対応した非光沢拡散XYZ値を、拡散LUT208から取得する。そしてS1302で、同じく画素位置nの画素値RGB値に対応した光沢拡散XYZ値を、光沢LUT207から取得する。
【0051】
ここで図14(a),(b)のそれぞれに、拡散LUT208,光沢LUT207の一例を示す。図14(a)に示すように拡散LUT208は、例えばRGBの複数の色票を備えるサンプル画像の実印刷物(サンプル印刷物)において、該印刷物に特に観察照明を写り込ませずに測定したデータを保持する拡散成分保持手段である。すなわち、サンプル印刷物における代表的なRGB値についての拡散反射を予め測定し、得られたXYZ値(Xdiff,Ydiff,Zdiff)を拡散成分として保持している。この拡散成分はすなわち、観察照明の写り込みがない場合の反射光の色成分である。また図14(b)に示すように光沢LUT207は、上記サンプル印刷物において、該印刷物に観察照明(仮想照明402に同じ)を写り込ませて測定したデータを保持する光沢成分保持手段である。すなわち、サンプル印刷物における代表的なRGB値について、観察照明の正反射を予め測定し、得られたXYZ値(Xspec,Yspec,Zspec)を光沢成分として保持している。なお、このように測定された光沢成分はすなわち、拡散成分に対して観察照明による写り込み、すなわち光沢成分が上乗せされたものである。従って、プルーフ対象画像の入力画素値RGBから拡散LUT208や光沢LUT207を参照する際には、RGB値をインデックスとして対応する非光沢拡散XYZ値および光沢拡散XYZ値を取得すれば良い。ただし、拡散LUT208や光沢LUT207に処理対象のRGB値が存在しない場合には、四面体補間等の補間によりこれを算出しても良い。なお、上記サンプル印刷物としては、複数色を含む画像の印刷物であれば適用可能である。
【0052】
次にS1303で、S1203で算出した写り込み強度LUMest(x,y)を取得する。そしてS1304で、非光沢拡散XYZ値と光沢拡散XYZ値、及び写り込み強度LUMest(x,y)から、下式(8)に従ってXYZの各値におけるプルーフ光沢成分を算出する。
【0053】
Xgloss=(Xspec−Xdiff)×LUMest(x,y)
Ygloss=(Yspec−Ydiff)×LUMest(x,y) ・・・(8)
Zgloss=(Zspec−Zdiff)×LUMest(x,y)
次にS1305では、下式(9)に従ってプルーフ光沢成分と拡散成分とを合成することで、プルーフ対象画像の各画素値に対応するプルーフ色を算出し、処理を終了する。
【0054】
Xout=Xgloss+Xdiff
Yout=Ygloss+Ydiff ・・・(9)
Zout=Zgloss+Zdiff
上記(8),(9)式によれば本実施形態ではすなわち、プルーフ対象画像の画素ごとに、光沢成分と該拡散成分の差分に写り込み強度を乗じてプルーフ光沢成分を算出し、それに拡散成分を加算することで、プルーフ色を算出している。
【0055】
以上説明したように本実施形態によれば、まず、代表色の変角反射特性に基づくローパスフィルタを用いて代表色に対する照明の写り込み強度マップを算出する。そして、代表色写り込みマップを仮想視線の正反射ベクトルに応じて補間することで、プルーフ対象画像の各画素位置に対する写り込み強度を算出し、該写り込み強度を用いて光沢成分を算出する。これにより、色毎に異なる光沢成分をより高精度に再現することができる。
【0056】
<第2実施形態>
以下、本発明に係る第2実施形態について説明する。第2実施形態における画像処理装置のシステム構成は上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、以下では特に第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0057】
●画像処理概要
図15は、第2実施形態の画像処理装置において実行される画像処理とデータの流れ、すなわち機能構成を示す図である。同図において、照明強度分布保持部501および仮想環境生成部502は、上述した第1実施形態で示した図2における照明強度分布保持部201および仮想環境生成部202と同様の処理を行う。
【0058】
対象色変角反射特性算出部508では、代表色変角反射特性保持部507から取得した代表色の変角反射特性と、写像性評価値保持部LUT506から取得した写像性評価値とを用いて、対象色の変角反射特性を算出する。対象色ローパスフィルタ生成部509では、対象色変角反射特性算出部508で算出した対象色の変角反射特性と仮想環境情報に基づいて、対象色のローパスフィルタを生成する。
【0059】
次に、仮想環境情報取得部511において、ユーザが入力部101を介して指定した仮想環境の情報に基づいて算出される、仮想視線方向に対する正反射ベクトルの情報を取得する。次に、写り込み強度算出部510において、対象色ローパスフィルタとベクトル情報を用いて、仮想環境生成部502で生成された仮想環境における観察照明の強度分布(観察照明画像)に対してフィルタ処理を行うことで、対象色の写り込み強度を算出する。
【0060】
なお、プルーフ対象画像保持部503、光沢LUT504、拡散LUT505、プルーフ色算出部512、プルーフ画像保持部513、表示画像生成部514については、それぞれ第1実施形態と同様の処理を行うため説明を省略する。
【0061】
●画像処理詳細
以下、第2実施形態における画像処理について、図16のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0062】
まずS2001で仮想環境生成部502において、第1実施形態と同様に仮想的に印刷物を観察する環境をCGを用いて作成する。そしてS2002でプルーフ対象画像保持部503より、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を取得する。以下、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を対象色と称する。そしてS2003で対象色変角反射特性算出部508において、S2002で取得した対象色に対応する変角反射特性を算出する。S2003における処理の詳細については後述する。
【0063】
次にS2004では対象色ローパスフィルタ生成部509において、S2003で算出した対象色変角反射特性とS2001で生成された仮想環境の情報に基づいて、対象色のローパスフィルタを作成する。ローパスフィルタの作成方法は第1実施形態と同様であり、仮想照明と仮想印刷物間の距離Disを取得し、変角反射特性BRDF(θ)の各出射角度θをピクセルPixに変換し、該変換したBRDF(Pix)に基づいて2次元のローパスフィルタを作成する。
【0064】
次にS2005で仮想環境情報取得部511において、第1実施形態と同様にユーザ指示に応じて、プルーフ対象画像の画素位置nが対応する仮想印刷物上の位置情報を取得し、仮想環境での仮想視線方向ベクトルEに対する正反射ベクトルRを算出する。
【0065】
そしてS2006で写り込み強度算出部510において、正反射ベクトルRと観察照明画像との交点座標を中心として、第1実施形態と同様の(5)式に基づく畳込み演算、すなわち観察照明画像に対するローパスフィルタによるフィルタ処理を行う。
【0066】
次にS2007でプルーフ色算出部512において、第1実施形態と同様に光沢LUT504と拡散LUT505、及びS2006で算出された対象色に対する写り込み強度を用いて、該対象色に対するプルーフ色を算出する。そしてS2008で、プルーフ対象画像の全画素数Nについて、上記S2002〜S2007の処理によってプルーフ色の算出が終了したか否かを判定する。n=NであればS2010へ進むが、n≠NであればS2009で画素位置nをインクリメントした後にS2002へ戻る。
【0067】
そしてS2010、S2011では第1実施形態と同様にプルーフ色算出部512、表示画像生成部において、プルーフ対象画像の全画素についてS1007で算出されたプルーフ色からなるプルーフ画像の表示用画像を生成する。
【0068】
●対象色変換反射特性算出処理(S2003)
以下、上記S2003における対象色変換反射特性の算出処理について、図17のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0069】
まずS2101において、写像性評価値LUT506から、対象色(RGB値)に対応する写像性評価値Hを第1実施形態と同様に取得する。そしてS2102で、全ての代表色についての変角反射特性を代表色変角反射特性保持部507から取得する。ここでは、写像性評価値Hが最大となる色と最小となる色を代表色とし、それぞれの変角反射特性BRDFmaxとBRDFminを取得するものとする。
【0070】
そしてS2103で下式(10)にしたがって、対象色の変角反射特性BRDFを算出し、処理を終了する。なお、式(10)においてHmax、Hminはそれぞれ写像性評価値の最大値、最小値である。
【0071】
【数4】
【0072】
以上説明したように第2実施形態によれば、代表色の変角反射特性に基づいて対象色の変角反射特性を算出し、これに基づいて作成された対象色のローパスフィルタを用いて仮想印刷物に対する写り込み強度を算出する。そしてプルーフ対象画像の各画素に対してこの写り込み強度を用いて光沢成分を算出することで、第1実施形態と同様に色毎に異なる光沢成分をより高精度に再現することができる。
【0073】
<第3実施形態>
以下、本発明に係る第3実施形態について説明する。第3実施形態における画像処理装置のシステム構成は上述した第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。なお、以下では特に第1実施形態と異なる部分について説明する。
【0074】
●画像処理概要
図18は、第3実施形態の画像処理装置において実行される画像処理とデータの流れ、すなわち機能構成を示す図である。同図においては、上述した第1実施形態で図2に示した構成に対し、代表色写り込み強度マップ算出部205に代えて代表色写り込み強度マップLUT生成部605を備え、さらに写像性評価値LUT209を省いた構成からなる。その他の構成については第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
【0075】
代表色写り込み強度マップLUT生成部605は、仮想環境生成部602で生成された仮想照明と、代表色ローパスフィルタ生成部603で生成されたローパスフィルタを用いて、代表色の入力画素値と写り込み強度マップを関連付けるLUTを生成する。なお、第3実施形態では代表色の入力画素値としてRGB値を用いるが、代表色を表す入力画素値であればRGB値に限定されず、XYZ値やインク値であっても良い。写り込み強度算出部610では、プルーフ対象画像保持部606から取得したプルーフ対象画素値及び、代表色写り込み強度マップLUTを用いて、対象色(RGB値)の写り込み強度を算出する。
【0076】
●画像処理詳細
以下、第3実施形態における画像処理について、図19のフローチャートを用いて詳細に説明する。
【0077】
まずS3001で仮想環境生成部602において、第1実施形態と同様に仮想的に印刷物を観察する環境をCGを用いて作成する。そしてS3002で代表色ローパスフィルタ生成部603において第1実施形態と同様に、代表色のローパスフィルタを生成する。詳細には、まず代表色の変角反射特性BRDF(θ)を、代表色変角反射特性保持部604より読み込む。第3実施形態における代表色は、プルーフ対象画像の全色域を所定間隔で分割した色である。以下ではRGB値をそれぞれ5スライスに分割した125色を代表色とするが、色数はこれに限定されるものではなく、例えばRGB値を9スライスに分割した729色であっても良い。次に、第1実施形態と同様に、代表色ごとに変角反射特性BRDF(θ)の各出射角度θをピクセルPixに変換し、変換したBRDF(Pix)に基づいて2次元のローパスフィルタを作成する。
【0078】
次にS3003では代表色写り込み強度マップLUT生成部605において、まず仮想環境に設定された仮想照明402に対して、S3002で生成した代表色のローパスフィルタ毎に、第1実施形態と同様に(5)式に基づくフィルタ処理を行う。これにより、各代表色の代表色写り込みマップが作成される。そして次に、各代表色のRGB値と代表色写り込みマップとの対応関係を示すテーブル(LUT)を生成する。ここで図20に、第3実施形態で生成される代表色写り込み強度マップLUTの一例を示す。同図において、x,yは仮想照明402の照明画像における位置を表す座標であり、例えば1024×1024ピクセルの照明画像であれば、x,yはそれぞれ0〜1024までの整数値をとる。また、LUMk(x,y)は位置(x,y)におけるk番目の代表色の写り込み強度である。
【0079】
そしてS3004でプルーフ対象画像保持部606より、プルーフ対象画像の画素位置nにおけるRGB値を取得する。次にS3005で写り込み強度算出部610において、S3003で生成したLUTを用いて、プルーフ対象画像の画素位置nおよびそのRGB値に対応する、仮想照明402の写り込み強度LUMestを取得する。なお、RGB値が代表色写りこみ強度マップLUTにおいて直接参照できない場合には、四面体補間などの補間方法を用いて写り込み強度LUMestを算出すれば良い。
【0080】
次にS3006でプルーフ色算出部612において、光沢LUT607と拡散LUT608、及びS3005で算出されたRGB値に対する写り込み強度を用いて、該RGB値に対するプルーフ色を第1実施形態と同様に算出する。そしてS3007で、プルーフ対象画像の全画素数Nについて、上記S3004〜S3006の処理によってプルーフ色の算出が終了したか否かを判定する。n=NであればS3009へ進むが、n≠NであればS3008で画素位置nをインクリメントした後にS3004へ戻る。
【0081】
S3009ではプルーフ色算出部612において、プルーフ画像保持部613へプルーフ画像を格納する。そしてS3010では仮想環境情報取得部611において、第1実施形態と同様にユーザ指示に応じて仮想印刷物の位置を取得し、仮想環境での仮想視線方向ベクトルEに対する正反射ベクトルRを算出する。そしてS3011で表示画像生成部614において、第1実施形態と同様にプルーフ画像を正反射ベクトルRに応じて表示用画像に変換し、処理を終了する。
【0082】
以上説明したように第3実施形態によれば、代表色の変角反射特性に基づくローパスフィルタを用いて代表色の写り込み強度マップを算出し、該マップと代表色のRGB値との対応関係を示すLUTを作成する。そして、このLUTを用いてプルーフ対象画像の各画素位置とそのRGB値に対する写り込み強度を算出し、該写り込み強度を用いて光沢成分を算出することで、上述した第1実施形態と同様に色毎に異なる光沢成分をより高精度に再現することができる。
【0083】
<その他の実施形態>
上述した第1実施形態では、写像性評価値Hが最大である色と最小である色の2色を代表色とする例を示したが、複数の代表色から補間を行うのであれば、代表色は2色に限らない。例えば写像性評価値Hの最大値Hmax、最小値Hmin、中間値Hmidの3色を用いることによって、下式(11)に示すような補間を行うことも可能である。
【0084】
【数5】
【0085】
また、上述した第1〜第3実施形態では、対象色の写り込み強度を算出する際に、代表色の写り込み強度を写像性評価値に応じて線形に補間する例を示した。しかしながら、複数の代表色から補間を行うのであれば線形補間に限らず、例えば3次スプライン補間のような非線形補間を適用することも可能である。
【0086】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う画像処理装置であって、
複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、
前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、
前記サンプル印刷物について色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、
前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持する評価値保持手段と、
前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、
前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色のそれぞれについての変角反射特性を取得し、該変角反射特性のそれぞれに応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成手段と、
前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該代表色に対応する前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出する代表色写り込み強度マップ算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップ上における該画素に対応する位置の写り込み強度を該評価値に基づいて補間することで、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に応じて前記プルーフ対象画像の印刷物を観察する際の仮想環境を生成する仮想環境生成手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記仮想環境における視線方向ベクトルの正反射ベクトルを取得する取得手段と、を有し、
前記写り込み強度算出手段は、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップにおける、前記プルーフ対象画像の画素に対応する位置を、前記正反射ベクトルに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するためのプルーフ画像を生成する画像処理装置であって、
複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、
前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、
前記サンプル印刷物について前記観察照明を用いて測定された色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、
前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持する評価値保持手段と、
前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、
前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色についての変角反射特性を取得し、プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記変角反射特性を該評価値に基づいて補間することで、該画素の色に対する変角反射特性を算出する対象色変角反射特性算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、該画素の色に対する変角反射特性に応じたローパスフィルタを生成する対象色ローパスフィルタ生成手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該画素の色に応じた前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に応じて前記プルーフ対象画像の印刷物を観察する際の仮想環境を生成する仮想環境生成手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記仮想環境における視線方向ベクトルの正反射ベクトルを取得する取得手段と、を有し、
前記写り込み強度算出手段は、前記プルーフ対象画像の画素に対応する前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布における位置を、前記正反射ベクトルに基づいて決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記評価値は、変角反射特性の広がり度合いを示す半値幅であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するためのプルーフ画像を生成する画像処理装置であって、
複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、
前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、
前記サンプル印刷物について前記観察照明を用いて測定された色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、
前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、
プルーフ対象画像の色域における複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色についての変角反射特性を取得し、該変角反射特性に応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成手段と、
前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出し、該代表色と該写り込み強度マップとの関係を示すテーブルを生成する代表色写り込み強度マップ算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記テーブルを参照して該画素の位置および色に対応する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
光沢成分保持手段、拡散成分保持手段、変角反射特性保持手段、評価値保持手段、照明強度分布保持手段と、代表色ローパスフィルタ生成手段、代表色写り込み強度マップ算出手段、写り込み強度算出手段、プルーフ色算出手段、表示画像生成手段を有し、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するためのプルーフ画像を生成する画像処理装置における画像処理方法であって、
前記光沢成分保持手段は、複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持しており、
前記拡散成分保持手段は、前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持しており、
前記変角反射特性保持手段は、前記サンプル印刷物について前記観察照明を用いて測定された色毎の変角反射特性を予め保持しており、
前記評価値保持手段は、前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持しており、
前記照明強度分布保持手段は、前記観察照明の強度分布を予め保持しており、
前記代表色ローパスフィルタ生成手段が、前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色のそれぞれについての変角反射特性を取得し、該変角反射特性のそれぞれに応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成ステップと、
前記代表色写り込み強度マップ算出手段が、前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該代表色に対応する前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出する代表色写り込み強度マップ算出ステップと、
前記写り込み強度算出手段が、プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップ上における該画素に対応する位置の写り込み強度を該評価値に基づいて補間することで、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出ステップと、
前記プルーフ色算出手段が、前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出ステップと、
前記表示画像生成手段が、前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータで実行されることにより、該コンピュータを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するソフトプルーフ処理を行う画像処理装置であって、
複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、
前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、
前記サンプル印刷物について色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、
前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持する評価値保持手段と、
前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、
前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色のそれぞれについての変角反射特性を取得し、該変角反射特性のそれぞれに応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成手段と、
前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該代表色に対応する前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出する代表色写り込み強度マップ算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップ上における該画素に対応する位置の写り込み強度を該評価値に基づいて補間することで、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
さらに、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に応じて前記プルーフ対象画像の印刷物を観察する際の仮想環境を生成する仮想環境生成手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記仮想環境における視線方向ベクトルの正反射ベクトルを取得する取得手段と、を有し、
前記写り込み強度算出手段は、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップにおける、前記プルーフ対象画像の画素に対応する位置を、前記正反射ベクトルに基づいて決定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するためのプルーフ画像を生成する画像処理装置であって、
複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、
前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、
前記サンプル印刷物について前記観察照明を用いて測定された色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、
前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持する評価値保持手段と、
前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、
前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色についての変角反射特性を取得し、プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記変角反射特性を該評価値に基づいて補間することで、該画素の色に対する変角反射特性を算出する対象色変角反射特性算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、該画素の色に対する変角反射特性に応じたローパスフィルタを生成する対象色ローパスフィルタ生成手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該画素の色に応じた前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
さらに、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に応じて前記プルーフ対象画像の印刷物を観察する際の仮想環境を生成する仮想環境生成手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記仮想環境における視線方向ベクトルの正反射ベクトルを取得する取得手段と、を有し、
前記写り込み強度算出手段は、前記プルーフ対象画像の画素に対応する前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布における位置を、前記正反射ベクトルに基づいて決定することを特徴とする請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記評価値は、変角反射特性の広がり度合いを示す半値幅であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するためのプルーフ画像を生成する画像処理装置であって、
複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持する光沢成分保持手段と、
前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持する拡散成分保持手段と、
前記サンプル印刷物について前記観察照明を用いて測定された色毎の変角反射特性を予め保持する変角反射特性保持手段と、
前記観察照明の強度分布を予め保持する照明強度分布保持手段と、
プルーフ対象画像の色域における複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色についての変角反射特性を取得し、該変角反射特性に応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成手段と、
前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出し、該代表色と該写り込み強度マップとの関係を示すテーブルを生成する代表色写り込み強度マップ算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記テーブルを参照して該画素の位置および色に対応する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出手段と、
前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出手段と、
プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
光沢成分保持手段、拡散成分保持手段、変角反射特性保持手段、評価値保持手段、照明強度分布保持手段と、代表色ローパスフィルタ生成手段、代表色写り込み強度マップ算出手段、写り込み強度算出手段、プルーフ色算出手段、表示画像生成手段を有し、観察照明下における印刷物をモニタ上で再現するためのプルーフ画像を生成する画像処理装置における画像処理方法であって、
前記光沢成分保持手段は、複数色が印刷されたサンプル印刷物に対し、前記観察照明の正反射を測定した値を色毎の光沢成分として予め保持しており、
前記拡散成分保持手段は、前記サンプル印刷物に対し、前記観察照明の拡散反射を測定した値を色毎の拡散成分として予め保持しており、
前記変角反射特性保持手段は、前記サンプル印刷物について前記観察照明を用いて測定された色毎の変角反射特性を予め保持しており、
前記評価値保持手段は、前記変角反射特性保持手段に保持された色毎の変角反射特性のそれぞれに対する評価値を予め保持しており、
前記照明強度分布保持手段は、前記観察照明の強度分布を予め保持しており、
前記代表色ローパスフィルタ生成手段が、前記評価値保持手段に保持された評価値の最大値と最小値にそれぞれ対応する色を含む複数の色を代表色として、前記変角反射特性保持手段から該代表色のそれぞれについての変角反射特性を取得し、該変角反射特性のそれぞれに応じたローパスフィルタを生成する代表色ローパスフィルタ生成ステップと、
前記代表色写り込み強度マップ算出手段が、前記代表色のそれぞれについて、前記照明強度分布保持手段に保持された前記観察照明の強度分布に対して該代表色に対応する前記ローパスフィルタを用いたフィルタ処理を行うことによって、該代表色に対する前記観察照明の写り込み強度分布を示す写り込み強度マップを算出する代表色写り込み強度マップ算出ステップと、
前記写り込み強度算出手段が、プルーフ対象画像の画素毎に、前記評価値保持手段から該画素の色に応じた評価値を取得し、前記代表色のそれぞれについての前記写り込み強度マップ上における該画素に対応する位置の写り込み強度を該評価値に基づいて補間することで、該画素に対する前記観察照明の写り込み強度を算出する写り込み強度算出ステップと、
前記プルーフ色算出手段が、前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記光沢成分保持手段および前記拡散成分保持手段から該画素の色に応じた光沢成分および拡散成分を取得し、該光沢成分と該拡散成分の差分に前記写り込み強度を乗じることでプルーフ光沢成分を算出し、該プルーフ光沢成分に前記拡散成分を加算することで該画素のプルーフ色を算出するプルーフ色算出ステップと、
前記表示画像生成手段が、前記プルーフ対象画像の画素毎に、前記プルーフ色を前記モニタ用の信号値に変換して表示画像を生成する表示画像生成ステップと、
を有することを特徴とする画像処理方法。
【請求項8】
コンピュータで実行されることにより、該コンピュータを請求項1乃至6のいずれか1項に記載の画像処理装置の各手段として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図10】
【公開番号】特開2012−39480(P2012−39480A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−179004(P2010−179004)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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