説明

画像処理装置及び方法

【課題】複数の画像処理の組み合わせにより目的領域を画像内から抽出する技術に関し、操作者が画像処理手順を入力しなくても、自動的に画像処理手順を設定可能にする。
【解決手段】処理対象画像に対する直前回までに適用された画像処理結果の履歴に基づいて、次回以降に実行する画像処理の内容を自動的に決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像処理の組み合わせにより目的領域を画像内から抽出するための手順を自動的に設定するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
画像診断装置等の進歩に伴い、医用画像や医用情報は著しく増加している。その結果、医用画像や医用情報の蓄積量は膨大になっている。一方で、蓄積量の増加は、医用画像を診断に使用する臨床医や放射線科医に対する負担の増加を招いている。結果的に、蓄積された医用画像や医用情報が十分に活用されない状況が生じている。
【0003】
そこで、医用画像の有効活用と診断や治療の質を向上する目的で、1つの医用画像に適用する複数の画像処理と、その実行手順を事前に決定する手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前記文献には、画像診断装置(例えばCT(computed tomography)装置の画像データに適用する解析プロトコル(画像解析の手順)を検査目的及び検査部位に応じて決定し、前処理で取得したパラメータを用いた画像処理により所望の処理結果を得る装置が開示されている。すなわち、前記文献には、予め画像処理の実行手順を画像データ及び画像付帯情報に基づいて選択し、それを順次実行する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−82452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した文献に係る装置の場合、画像処理(画像解析)の開始前に、その実行順序が予め自動的に決定される。すなわち、実行順序が予め固定される。このため、画像処理の途中で処理内容を変更したい場合には、使用者自身が処理内容の変更を個別に指示入力する必要がある。特に、実行中の画像処理により所望の処理結果が得られていない場合、次回以降の処理内容の変更が必要となる場合がある。
【0007】
しかし、使用者による個別の操作入力を必要とするのでは、使用者の負担を軽減することはできない。
【0008】
本発明者は、以上の課題を鋭意検討した結果、処理対象画像に対して順次適用する画像処理の内容を逐次自動的に決定できる仕組みを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、処理対象画像に対する直前回までに適用された画像処理結果の履歴に基づいて、次回以降に実行する画像処理の内容を自動的に決定する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、次回以降の画像処理の内容を、大量に蓄積されている画像処理結果の履歴との照合を通じ、自動的に決定することができる。これにより、処理対象画像から目的領域を画像処理を通じて抽出する際における使用者の操作負担を低減することができる。
【0011】
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】形態例1に係る画像処理システムの機能ブロック構成を示す図。
【図2】形態例1に係る画像処理装置を通じて提供される表示画面例を示す図。
【図3】形態例1に係る画像処理装置で実行される処理手順を示すフローチャート。
【図4】形態例1に係る目的領域特徴量と手順特徴量の関係を説明する図。
【図5】形態例1に係る次処理決定部の処理内容を説明する図。
【図6】形態例2に係る画像処理システムの機能ブロック構成を示す図。
【図7】形態例2に係る画像処理装置で実行される処理手順を示すフローチャート。
【図8】形態例3に係る次処理決定部の処理内容を説明する図。
【図9】形態例4に係る目的領域特徴量と手順特徴量の関係を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。なお、本発明の実施態様は、後述する形態例に限定されるものではなく、その技術思想の範囲において、種々の変形が可能である。
【0014】
(1)共通構成
以下に説明する画像処理装置は、いずれも、処理対象画像から目的領域を抽出するために、複数の画像処理を順番に適用する場合を想定する。各形態例に係る画像処理装置は、直前回までに取得された処理結果の履歴と類似する履歴を有する画像処理手順をデータベースから検索し、検索結果から次に適用する画像処理の内容を自動的に決定する点において共通する。すなわち、各画像処理装置は、データベースに大量に蓄積されている過去に使用された画像処理手順の情報に基づいて、次に適用する画像処理を統計的に決定する。
【0015】
ここで、データベースには、経験や処理結果等に基づいて技術専門家が逐次決定した判断の結果が画像処理手順として保存されている。従って、現在処理中の処理対象画像に対する処理結果の履歴と類似する履歴を有する過去の画像処理手順を検索し、検出された画像処理手順で使用された次の回の画像処理をそのまま現在の処理に適用することは、目的領域の抽出に対して統計上の意味がある。各形態例に係る画像処理装置では、この決定処理を繰り返すことにより、処理対象画像から目的領域を自動的に抽出する。
【0016】
(2)形態例1
(2−1)システム構成
図1に、形態例1に係る画像処理システムの機能ブロック構成を示す。形態例1に係る画像処理システムは、画像処理装置100と、処理フローモデルデータベース102と、画像データベース103と、画像表示装置104とで構成される。
【0017】
処理フローモデルデータベース102には、過去に実行された画像処理手順や標準モデルとして登録された画像処理手順が保存されている。本明細書において「手順」とは、複数の画像処理の実行順序を規定する情報をいう。この形態例の場合、画像処理手順には、各画像処理が実行された時点で得られる処理結果(以下、「目的領域特徴量」ともいう。)の履歴(以下、「手順特徴量」ともいう。)も含まれる。
【0018】
画像データベース103には、処理対象とする画像データが保存される。この形態例の場合、医用画像データが保存されている。例えば造影CTデータが保存されている。勿論、画像データは、造影CTデータに限らない。
【0019】
画像処理装置100は、画像処理部121、目的領域特徴量抽出部111、目的領域特徴量記憶部112、次画像処理決定部120で構成される。この形態例の場合、画像処理装置100はコンピュータを基本構成とし、図1に示す各処理部は演算装置上で実行されるプログラムの機能として実現される。
【0020】
画像処理部121は、検査画像200又は直前回までの画像処理で得られた結果画像に対し、画像処理204で指定された画像処理を適用する機能を提供する。個々の画像処理に対応するプログラムは不図示の記憶領域に格納されており、画像処理の実行時に読み出され、実行される。また、画像処理部121は、処理対象画像(前述した検査画像200等)を記憶する記憶領域やプログラムの作業領域を有している。なお、画像処理部121は、最終的な処理結果206を画像表示装置104に出力する。このため、画像処理部121には、ユーザインタフェースに関する機能も搭載されている。
【0021】
目的領域特徴量抽出部111は、画像処理部121による画像処理により得られる結果画像から目的領域特徴量(目的領域の大きさと数)202を抽出する機能を提供する。目的領域特徴量記憶部112は、抽出された目的領域特徴量202を格納する記憶領域を提供する。当該記憶領域には、例えば半導体記憶装置、ハードディスク装置等を使用する。
【0022】
次画像処理決定部120は、目的領域特徴量202の手順間の変化を規定する手順特徴量203と過去の処理フローモデル205とを比較し、処理対象画像に対して次に適用する画像処理204を決定する機能を提供する。
【0023】
(2−2)表示画面例
図2に、画像表示装置104の画面上に表示される表示画面の代表図を示す。表示画面は、抽出結果表示画面280と処理手順表示画面281で構成される。抽出結果表示画面280には、診断対象とする臓器の造影CT画像に処理結果の情報が重畳的に表示される。図2の場合、造影CT画像として肝臓CT画像250が表示されている。肝臓CT画像250には、肝臓がんの患部である目的領域260と、画像処理により抽出された領域が抽出結果270として表示されている。抽出結果表示画面280の表示内容は、画像処理の進行に伴って更新される。処理手順表示画面281は、実行中の画像処理の手順が表示されている。図2は、3つ目の画像処理が終了したことを表している。
【0024】
(2−3)画像診断支援処理(目的領域自動抽出処理)
図3に、画像処理装置100で実行される画像診断支援処理の概要を示す。以下の説明では、操作者が、被験者の造影CT画像から目的領域である肝臓がん(例えば乏血性肝癌、多血性肝癌)を抽出したい場合を想定する。勿論、目的領域はこれに限らず、その種類を医学的見地に基づいて指定可能な病変部であれば良い。
【0025】
また、図4に、図3に示す画像診断支援処理の進行に応じて取得される目的領域特徴量と手順特徴量(目的領域特徴量の手順間の変化量)の経時変化を示す。なお、図4においては、各処理の実行回の違いを末尾に付加する括弧内の数字で表現している。なお、形態例1の場合、目的領域特徴量は目的領域の大きさと数の2つで管理される。従って、図4では、処理の進行に伴う目的領域の大きさと数の変化を折れ線グラフによりそれぞれ表している。この明細書において、目的領域の特徴量の大きさとは、体積又は面積で規定されるものとする。
【0026】
以下、形態例1に係る画像処理装置100で実行される画像診断支援処理の詳細内容を説明する。
【0027】
まず、操作者としての医者が、処理対象画像を画像データベース103から選択する(処理300)。具体的には、造影CT画像を選択する。
【0028】
次に、医者が、手順特徴量を初期設定する(処理301)。ここでの初期設定とは、手順特徴量である目的領域の大きさと目的領域の数の初期値350を決める処理である。この形態例の場合、いずれも「0」に初期化する。
【0029】
手順特徴量が定まると、次画像処理決定部120が、次に実行する画像処理を決定する処理を実行する(処理302(1))。ただし、最初の処理では、初期値は「0」であり、手順特徴量の変化量は無いため、汎用的な肝癌抽出の画像処理(レベルセットアルゴリズム)を画像処理部121に通知する。この結果、画像処理部121は、例えばレベルセットアルゴリズムを適用した抽出処理を実行する(処理303(1))。
【0030】
画像処理部121は、当該処理結果より目的領域260と判定された領域に関する情報を、目的領域データ201として目的領域特徴量抽出部111に転送する。目的領域特徴量抽出部111は、与えられた目的領域データ201から処理対象画像に含まれる目的領域特徴量(すなわち、大きさと数)をそれぞれ抽出する(処理304(1))。抽出された目的領域特徴量202は、目的領域特徴量記憶部112に記憶される。
【0031】
この後、次画像処理決定部120は、目的領域特徴量記憶部112を検索し、各目的領域特徴量(大きさと数)の変化量を手順特徴量203として抽出する(処理305(1))。
【0032】
次に、次画像処理決定部120は、抽出された手順特徴量203を予め設定した閾値351と比較する(処理306(1))。手順特徴量203が閾値以下の場合(図4の場合、大きさと数のいずれについても閾値以下の場合)、次画像処理決定部120は、処理の終了を画像処理部121に指示する。この場合、画像処理部121は、処理結果206を画像表示装置104の表示画面に表示する。
【0033】
一方、手順特徴量203が閾値以下でない場合(図4の場合、大きさと数の両方又は一方が閾値を越える場合)、次画像処理決定部120は、当該時点までの手順特徴量203に基づいて次に実行する画像処理を決定し、画像処理部121に指示する(処理302(2))。ここで、次画像処理決定部120は、手順特徴量203で処理フローモデルデータベース102を検索し、類似度の高い処理フローモデルについて規定されている次回の画像処理を、現在処理対象としている画像に適用する画像処理に決定する。例えば図4の場合、画像フィルタ(のう胞除去)が2回目の画像処理として決定される。因みに、図4の場合には、3回目の画像処理としてレベルセット(治療痕)が決定される。
【0034】
このように、本形態例の場合には、処理302〜処理306の処理が、手順特徴量203が所定の閾値351以下になるまで繰り返し実行される。すなわち、処理306で否定結果が得られている間、処理302の各実行時までに取得された手順特徴量203の履歴と一致度の高い処理フローが処理フローモデルデータベース102から抽出され、当該処理フローモデルについて登録されている次回の画像処理が、画像処理部121が次に適用する画像処理204として与えられる。
【0035】
このような処理を実行することにより、本形態例における画像処理装置100は、操作者による初期設定操作の後は、所望の処理結果が得られるまで自動的に画像処理を決定して処理対象画像に適用することができる。
【0036】
(2−4)画像処理の自動決定動作
ここでは、手順特徴量203から次の画像処理を自動的に決定する際に実行される処理動作の具体例を説明する。
【0037】
図5に、処理動作例を示す。図5には、手順特徴量203の具体例400と、処理フローモデルデータベース102に格納されている処理フローモデル205の具体例401を示している。図5の場合、処理フローモデル402A及び402Bを描いている。
【0038】
図5の場合、各処理フローモデルは、手順特徴量403A及び403Bと次画像処理404A及び404Bで構成される。手順特徴量403A及び403Bには、ある実行回までの目的領域の大きさと数の変化が記録されている。
【0039】
また、次画像処理404A及び404Bには、手順特徴量403A及び403Bが対応する実行回の次に実行された画像処理の内容が格納されている。すなわち、図5は、例えば5回の画像処理が実行された処理フローモデルが存在する場合に、その1回目までの手順特徴量と2回目に実行された次画像処理を記録した処理フローモデル、2回目までの手順特徴量と3回目に実行された次画像処理を記録した処理フローモデル、以下同様に各回までの手順特徴量とその次の回に実行された次画像処理を記録した処理フローモデルを用意した場合に相当する。なお、この例の場合、6回目の処理は存在しないので、5回目までの手順特徴量に対する処理フローモデルでは、その次画像処理として「終了」が記録される。
【0040】
この場合、現在処理している画像について出現した手順特徴量と類似度の高い処理手順モデルが検出されると、次画像処理が一意に確定する。
【0041】
もっとも、処理フローモデルとして、全実行回の手順特徴量と各実行回に実行された画像処理の情報を記憶したものを使用しても良い。この場合、決定しようとする実行回の直前回までの範囲で処理手順モデルの手順特徴量を照合し、類似度の高い処理手順モデルが検出されると、その次の実行回に実行された画像処理を次画像処理決定部120が読み出せば良い。
【0042】
この形態例の場合、次画像処理決定部120は、処理フローモデル205と手順特徴量203との類似度を、例えば対応する2つの手順特徴量の差分自乗和に基づいて計算する。この場合、差分自乗和が小さいほど類似度が高いことを意味する。勿論、類似度の算出方法は差分自乗和に限らず、差分絶対値和を用いても良い。図5の場合、具体例400との類似度は、処理フローモデル402Aのグラフの方が近い。従って、次画像処理決定部120は、類似度の大きい処理フローモデル402Aの優先度を処理フローモデル402Bよりも高く設定する。この後、次画像処理決定部120は、優先度が高い処理フローモデル402Aの次画像処理(すなわち、レベルセット(治療痕))を選択し、画像処理部121に出力する。
【0043】
以上説明したように、形態例1に係る画像処理装置100の採用により、処理対象画像から目的領域を自動抽出したい場合にも、操作者は初期条件を入力した後は、何ら追加の操作を行わなくても必要とされる目標領域を処理対象画像内から抽出することができる。従って、従来装置では未だ必要性の高い画像処理実行中における操作者による画像処理内容の修正操作を不要にできる。これにより、操作者に対する作業負担を軽減し、目的領域が抽出されるまでの時間も短縮することができる。
【0044】
(3)形態例2
図6に、形態例2に係る画像処理システムの機能ブロック構成を示す。図6には、図1との対応部分に同一符号を付して示す。形態例2に係る画像処理システムが形態例1に係る画像処理システムと異なる点は、次画像処理決定部120に初回処理入力207を与える入力装置105が追加されている点と、次画像処理決定部120が操作者の入力した初回処理入力207を参照して動作する点である。
【0045】
図7に、画像処理装置100で実行される画像診断支援処理の概要を示す。なお、図7には、図3との対応部分に同一符号を付して表している。図7と図3を比較して分かるように、この形態例の場合、処理301に代えて処理307が実行される。すなわち、処理307は、処理300の後、処理302の前に実行される。
【0046】
形態例1の場合には、処理301により、手順特徴量の初期値が設定された。この場合、設定された初期値により、初回に実行される画像処理は予め決められた処理となる。勿論、与える初期値によっては、初回に実行される画像処理を変更することも可能であるが、画像処理の決定は次画像処理決定部120が実行しており、操作者の意図を画像処理の決定に反映させることはできない。
【0047】
一方、本形態例の場合は、処理307において、操作者が入力装置105を通じて初回に実行される画像処理を具体的に選択又は指定することができる。もっとも、当該指定は処理300の前に実行されており、処理307で事前に入力された初回処理入力207が次画像処理決定部120に取り込まれるのでも良い。
【0048】
この形態例の場合、操作者は、初回処理入力207として、レベルセット(汎用)、フィルタ(のう胞除去)、レベルセット(治療痕)等を選択することができる。
【0049】
以上説明したように、形態例2に係る画像処理装置100を採用すれば、操作者が希望する画像処理を初回画像処理として選択又は指定することができる。これにより、形態例1の効果に加え、操作者の意図に沿った画像処理を提供できる画像処理装置を実現することができる。
【0050】
(4)形態例3
本形態例においては、形態例1に係る画像処理システム(図1)を構成する次画像処理決定部120に搭載して好適な他の処理機能について説明する。なお、この形態例の場合、処理フローモデルデータベース102に格納される処理フローモデルのデータ内容も形態例1とは異なっている。
【0051】
図8に、本形態例に係る次画像処理決定部120で実行される処理の概要を示す。図8には、図5との対応部に同一符号を付して示している。本形態例の場合、処理フローモデルデータベース102には、処理フローモデルを構成するデータの一部として、その信頼度に関する情報(スコア)が格納されている。スコアは、手順特徴量の類似度を評価する際の修正量(重み)として使用される。ここで、スコアは、信頼度が最高値(最大)の場合を100、最小値の場合を0とする。因みに、図5の場合、処理フローモデル402Aのスコアは「10」であり、処理フローモデル402Bのスコアは「80」である。
【0052】
この形態例の場合、次画像処理決定部120は、以下に示す処理を通じ、処理対象画像に対して次に適用する画像処理を決定する(処理3021)。
【0053】
まず、次画像処理決定部120は、処理対象画像について取得された手順特徴量203と処理フローモデル205を比較し、処理フローモデル402A及び402Bの類似度を計算する。類似度は割合で示され、完全に一致している場合は100%で表され、完全に不一致の場合は0%で表される指標である。
【0054】
次に、次画像処理決定部120は、信頼度と類似度を用い、各処理フローモデルの優先順位を決定する。この形態例の場合、信頼度と類似度を和算し、100で規格化した値を優先度とする。ここで、処理フローモデルの信頼度をA1、その重みをw1、類似度をA2、その重みをw2としてすると、優先度は次式で計算することができる。
【0055】
優先度=(w1・A1+w2・A2)/(w1+w2)
【0056】
因みに、重みw1=w2=1とすると、図8における処理フローモデル402Aの優先度は、45(=(10+80)/2)となる。一方、図8における処理フローモデル402Bの優先度は60(=(80+40)/2)となる。
【0057】
この場合、優先順位は、形態例1とは反対になる。すなわち処理フローモデル402Bの優先順位が1位、処理フローモデル402Aの優先順位が2位となる。従って、次画像処理決定部120は、処理フローモデル402Bの次画像処理403Bとして記憶されているリージョングローイング(汎用)を画像処理部121に出力する。
【0058】
本形態例に示すように、類似判定の対象となる処理フローモデルに対してアルゴリズムの信頼性を示す指標を導入することにより、形態例1よりも高い精度による抽出結果を操作者に提示することができる。
【0059】
(5)形態例4
本形態例においては、形態例1に係る画像処理システム(図1)を構成する次画像処理決定部120に搭載して好適な他の処理機能について説明する。
【0060】
図9に、本形態例に係る次画像処理決定部120で実行される処理の詳細手順を示す。この形態例の場合、次画像処理決定部120は、各実行回に適用した画像処理のアルゴリズムを、第3の手順特徴量として使用する。すなわち、本形態例における次画像処理部120は、目的領域の大きさ、目的領域の数、画像処理のアルゴリズムを使用して処理フローモデルの類似度を計算して優先順位を決定し、最も優先順位の高い処理フローモデルの次画像処理を画像処理部121に出力する手法を採用する。
【0061】
勿論、その前提として、処理フローモデルデータベース102に格納される各処理フローモデルには、その手順特徴量に画像処理アルゴリズムが含まれているものとする。なお、画像処理アルゴリズムには、各回に実行された画像処理アルゴリズムに加え、使用したパラメータも格納されている。
【0062】
本形態例の場合、画像処理アルゴリズムの実行順序を考慮した抽出精度の高い結果を操作者に提供することができる。
【0063】
(6)他の形態例
なお、本発明は上述した形態例に限定されるものでなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある形態例の一部を他の形態例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある形態例の構成に他の形態例の構成を加えることも可能である。また、各形態例の構成の一部について、他の構成を追加、削除又は置換することも可能である。
【0064】
また、上述した各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路その他のハードウェアとして実現しても良い。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することにより実現しても良い。すなわち、ソフトウェアとして実現しても良い。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリやハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記憶装置、ICカード、SDカード、DVD等の記憶媒体に格納することができる。
【0065】
また、制御線や情報線は、説明上必要と考えられるものを示すものであり、製品上必要な全ての制御線や情報線を表すものでない。実際にはほとんど全ての構成が相互に接続されていると考えて良い。
【符号の説明】
【0066】
100…画像処理装置、102…処理フローモデルデータベース、103…画像データベース、104…画像表示装置、105…入力手段装置、111…目的領域特徴量抽出部、112…目的領域特徴量記憶部、120…次画像処理決定部、121…画像処理部、200…検査画像、201…目的領域データ、202…目的領域特徴量、203…手順特徴量、204…画像処理、205…処理フローモデル、206…処理結果、207…初回処理入力、250…肝臓CT画像、260…目的領域、270…目的領域の抽出結果、280…抽出結果表示画面、281…処理手順表示画面、350…初期値、351…閾値。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の画像処理を適用して、処理対象画像から目的領域を抽出する画像処理装置であって、
前記目的領域は、前記処理対象画像における周辺領域とは異なる部位であり、
前記処理対象画像に第1の画像処理手順を適用した際の処理結果に関する第1の履歴を記憶する処理部と、
前記第1の画像処理手順の後に適用する画像処理の候補と、各候補に対応する第2の画像処理手順を適用した際の処理結果に関する第2の履歴とを蓄積するデータベースから前記第2の履歴を読み出して前記第1の履歴との類似度を評価し、高い評価結果が得られた第2の履歴に対応する画像処理を次の候補に決定する処理部と、
決定された画像処理に基づいて目的領域の抽出処理を実行する処理部と
を有する画像処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記履歴が、一つ以上の画像処理を行った際に、各処理で抽出された目的領域に関する特徴量の変化情報である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記特徴量が、目的領域の数又は大きさである
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項4】
請求項2に記載の画像処理装置において、
前記特徴量が、画像処理アルゴリズムの情報である、
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置において、
前記処理対象画像が医用画像であり、前記目的領域が病変部である
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
請求項1に記載の画像処理装置において、
前記データベースには、前記第2の画像処理手順に対応付けられた評価指標が記憶されており、
前記第1の履歴と前記第2の履歴の類似度を評価する場合、前記評価指標も含めて前記類似度を評価する
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項7】
複数の画像処理を適用して、処理対象画像から目的領域を抽出する計算機において実行される画像処理方法であって、
前記目的領域は、前記処理対象画像における周辺領域とは異なる部位であり、
前記処理対象画像に第1の画像処理手順を適用した際の処理結果に関する第1の履歴を記憶する処理と、
前記第1の画像処理手順の後に適用する画像処理の候補と、各候補に対応する第2の画像処理手順を適用した際の処理結果に関する第2の履歴とを蓄積するデータベースから前記第2の履歴を読み出して前記第1の履歴との類似度を評価し、高い評価結果が得られた第2の履歴に対応する画像処理を次の候補に決定する処理と、
決定された画像処理に基づいて目的領域の抽出処理を実行する処理と
を有する画像処理方法。
【請求項8】
請求項7に記載の画像処理方法において、
前記履歴が、一つ以上の画像処理を行った際に、各処理で抽出された目的領域に関する特徴量の変化情報である
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の画像処理方法において、
前記特徴量が、目的領域の数又は大きさである
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
請求項8に記載の画像処理方法において、
前記特徴量が、画像処理アルゴリズムの情報である、
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項11】
請求項8〜10のいずれか1項に記載の画像処理方法において、
前記処理対象画像が医用画像であり、前記目的領域が病変部である
ことを特徴とする画像処理方法。
【請求項12】
請求項7に記載の画像処理方法において、
前記データベースには、前記第2の画像処理手順に対応付けられた評価指標が記憶されており、
前記第1の履歴と前記第2の履歴の類似度を評価する場合、前記評価指標も含めて前記類似度を評価する
ことを特徴とする画像処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−239836(P2012−239836A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−116145(P2011−116145)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】