画像処理装置及び狭窄状態解析プログラム
【課題】狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上の実現。
【解決手段】処理データ記憶部10は、複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する。血管抽出部12は、複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する。狭窄指標値算出部16は、抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、血管領域の形状に基づいて狭窄度合を示す指標値を算出する。狭窄状態解析部18は、算出された指標値を時系列解析する。表示制御部20は、時系列解析の解析結果を表示部22に表示する。
【解決手段】処理データ記憶部10は、複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する。血管抽出部12は、複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する。狭窄指標値算出部16は、抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、血管領域の形状に基づいて狭窄度合を示す指標値を算出する。狭窄状態解析部18は、算出された指標値を時系列解析する。表示制御部20は、時系列解析の解析結果を表示部22に表示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の狭窄率を評価するための画像処理装置及び狭窄状態解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓には、それを取り囲むように冠状に走行する冠動脈がある。この冠動脈が狭窄する要因として、恒常的な狭窄と一時的な狭窄が考えられる。恒常的な狭窄の代表的な要因は、血管内部に付着したソフトプラークである。また一時的な狭窄の代表的な要因は、心収縮期に冠動脈を圧迫することによる動脈内の異常血流と心筋虚血とを引き起こす心筋架橋である。
【0003】
近年の医療画像収集技術の発達により、画像診断装置により収集された時系列データから心臓運動の周期性を利用し異なる周期に関するデータを組み合わせることで、擬似的に心臓の一周期のデータを作成することが可能になった。また、血管の狭窄率を算出する技術として、特許文献1が開示されている。しかし、複数時相に渡る狭窄状態をユーザに分かりやすい形で提示する表示方法は、存在しない。また、ユーザが期待する時相や血管断面位置の画像を簡便に提示する表示方法も存在しない。そのため、医用画像収集技術の発達度合に比して、狭窄状態の画像診断の精度や効率が向上していない。
【特許文献1】特開2007―283373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現させる画像処理装置と狭窄率解析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に係る画像処理装置は、複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する記憶部と、前記複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する抽出部と、前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて狭窄度合を示す指標値を算出する算出部と、前記算出された指標値を時系列解析する解析部と、前記時系列解析の解析結果を表示する表示部と、を具備する。
【0006】
本発明の第2局面に係る狭窄状態解析プログラムは、コンピュータに、複数の時相に関する複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する機能と、前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて血管性状を表す指標値を算出する機能と、前記算出された指標値を時系列解析する機能と、前記時系列解析の解析結果を表示する機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現させる画像処理装置と狭窄状態解析プログラムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる画像表示装置と狭窄状態解析プログラムとを説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係わる画像処理装置1の構成を示す図である。図1に示すように画像処理装置1は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、同一血管対応付け部14、狭窄指標値算出部16、狭窄指標値解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部、及びシステム制御部28を備える。画像処理装置1は、典型的には、画像処理のためのコンピュータである。
【0010】
処理データ記憶部10は、マルチスライス型のX線コンピュータ断層撮影装置により発生された複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する。記憶されている複数時相のボリュームデータセットのそれぞれは、冠動脈に狭窄の存在が疑われる被検体の心臓に関する。これら複数時相のボリュームデータセットは、被検体の心臓の少なくとも1心拍を再現する時系列データである。
【0011】
血管抽出部12は、閾値処理等により複数時相のボリュームデータセットから複数時相の血管領域をそれぞれ抽出する。抽出される血管領域は、どの部位の血管に関するものでも本実施形態は適用可能である。しかし、以下の説明を具体的に行なうため、抽出される血管領域は、本実施形態に特有な効果が特に現れやすい冠動脈に関するものとする。
【0012】
同一血管対応付け部14は、抽出された複数時相の冠動脈領域の間で解剖学的に同一な部分同士を対応付ける。
【0013】
狭窄指標値算出部16は、各冠動脈領域に設定された複数の直交断面(血管芯線に直交する断面)のそれぞれについて狭窄度合を示す指標値(以下、狭窄指標値と呼ぶことにする)を算出する。これにより、各時相(各ボリュームデータセット)について、冠動脈領域上の位置に応じて変化する狭窄指標値を示すグラフ(以下、狭窄指標値グラフと呼ぶことにする)が算出される。狭窄指標値は、直行断面上の血管領域の形状に基づいて算出される。狭窄指標値は、直交断面上の血管領域の血管径や断面積、狭窄率等である。
【0014】
狭窄指標値解析部18は、算出された狭窄指標値を時系列解析する。具体的には、狭窄指標値解析部18は、狭窄断面特定部181と狭窄マップ生成部182とを備える。狭窄部位特定部181は、複数の狭窄指標値の中から臨床的に特徴のある値を有する狭窄指標値を特定し、特定した狭窄指標値が算出された直行断面の断面位置と時相とを特定する。この臨床的に特徴のある値の範囲は、狭窄指標値の種類に応じて異なる。この範囲内にある狭窄指標値が算出された直交断面の断面位置が狭窄部位の位置である。狭窄マップ生成部182は、特定された狭窄部位の位置と時相とを2次元平面上にマッピングして、狭窄指標値のマップ(以下、狭窄マップと呼ぶことにする)を生成する。生成される狭窄マップは、狭窄部位が発生された時相と断面位置とを示す。
【0015】
表示制御部20は、時系列解析の結果を表示部22に表示する。具体的には、表示制御部20は、狭窄マップを表示部22に表示する。表示部22としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスが適宜利用可能である。
【0016】
操作部24は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0017】
プログラム記憶部26は、後述する狭窄状態解析処理のための狭窄状態解析プログラムを記憶する。
【0018】
システム制御部28は、処理データ記憶部10に記憶されている狭窄状態解析プログラムを読み出してメモリ上に展開し画像処理装置1の各部を制御することによって、本実施形態に特有な狭窄状態解析処理を実行する。
【0019】
図2は、システム制御部28の制御のもとに行なわれる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。
【0020】
ユーザにより操作部24を介して狭窄状態解析処理の開始指示がなされることを契機としてシステム制御部28は、当該処理を開始する。まず、システム制御部28は、処理データ記憶部10から複数時相のボリュームデータセットを読み出す(ステップSA1)。読み出された複数時相のボリュームデータセットは、システム制御部28により血管抽出部12に供給される。
【0021】
複数時相のボリュームデータセットを供給し終えるとシステム制御部28は、血管抽出部12に冠動脈の抽出処理を行なわせる。抽出処理において血管抽出部12は、複数時相のボリュームデータセットから複数時相の冠動脈領域をそれぞれ抽出する。具体的には、まず血管抽出部12は、ボリュームデータセットに含まれる心臓領域の形状に基づいて冠動脈領域の基部を自動的に特定する。そして血管抽出部12は、特定された基部を始点として、冠動脈探索エンジンを用いて、基部に連結する冠動脈領域を自動的に抽出する。この抽出処理は、ステップSA1で読み出された全てのボリュームデータセットについて行なわれる。従って、抽出処理により、複数時相の冠動脈領域が抽出される。抽出された冠動脈領域のデータは、システム制御部28により同一血管対応付け部14に供給される。
【0022】
冠動脈領域が抽出されるとシステム制御部28は、同一血管対応付け部14に冠動脈領域の同一部位の対応付け処理を行なわせる。対応付け処理において同一血管対応付け部14は、抽出された複数時相の冠動脈領域の間で解剖学的に同一な部位同士を対応付ける(ステップSA3)。具体的には、同一血管対応付け部14は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれに含まれる解剖学的な複数の特徴点を特定する。次に同一血管対応付け部14は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれについて、特定された複数の特徴点に基づいて冠動脈ツリーのデータを生成する。そして同一血管対応付け部14は、生成された複数時相の冠動脈ツリーを用いて複数時相の冠動脈領域に含まれる解剖学的に同一な部位を対応付ける。
【0023】
図3は、冠動脈領域の構造の一例を示す図である。図3に示すように、冠動脈領域CAは、大動脈側の端点である始点(基部)s1、冠動脈領域CA上の他の端点である複数の終点e1,e2,e3,e4、及び2方向に分かれる地点である複数の分岐点n1,n2,n3等の解剖学的な複数の特徴点を有する。特徴点の特定処理において同一血管対応付け部14は、始点s1、終点e1,e2,e3,e4、及び分岐点n1,n2,n3等の特徴点を特定する。より詳細には、同一血管対応付け部14は、自動的又はユーザにより操作部24を介して指定された始点s1から冠動脈領域CAをトレースし、分岐点n1,n2,n3と終点e1,e2,e3,e4とを特定する。特徴点が特定されると、冠動脈ツリーのデータが生成される。
【0024】
図4は、図3の冠動脈領域に関する冠動脈ツリーの一例を示す図である。図4に示すように、冠動脈ツリーは、冠動脈経路情報と特徴点座標情報とから構成される。冠動脈経路情報は、始点から複数の分岐点を経由して各終点に至るまでの冠動脈領域の経路を示す。冠動脈経路は、始点から各終点まで冠動脈領域をトレースすることにより特定される。図4では、経路1:始点s1→分岐点n1→分岐点n2→終点e1、経路2:始点s1→分岐点n1→分岐点n2→分岐点n3→終点e2、経路3:始点s1→分岐点n1→分岐点n2→分岐点n3→終点e3、及び経路4:始点s1→分岐点n1→終点e4の4つの経路が示されている。特徴点座標情報は、始点s1、終点e1,e2,e3,e4、及び分岐点n1,n2,n3の座標を示す。冠動脈ツリーのデータが生成されると、冠動脈領域の同一部分、すなわち同一経路の対応付けが行なわれる。
【0025】
図5は、対応付け処理を説明するための図である。図5に示すように、対応付け処理は、例えば、処理対象となる時相(t1)の冠動脈ツリー(以下、基準ツリーと呼ぶことにする)とその1つ後の時相(t1+Δt)の冠動脈ツリー(以下、比較ツリーと呼ぶことにする)とを用いて行なわれる。まず、基準ツリーを構成する複数の冠動脈経路のうちの1つと比較ツリーを構成する全ての冠動脈経路との一致度がそれぞれ算出される。算出された全ての一致度のうちの最小一致度を有する基準ツリーの冠動脈経路と比較ツリーの冠動脈経路とが解剖学的に同一であるとして、この冠動脈経路同士を対応付ける。このようにして、基準ツリーの全ての冠動脈経路について対応付けが行なわれる。なお、この対応付け処理は、全てのボリュームデータセットについて行なわれる。
【0026】
一致度の具体的な算出方法を基準ツリーの冠動脈経路1を例に挙げて具体的に示す。まず、基準ツリーの冠動脈経路1の始点と比較ツリーの冠動脈経路1の始点との距離、基準ツリーの冠動脈経路1の終点と比較ツリーの冠動脈経路1の終点との距離、基準ツリーの冠動脈経路1の分岐点と比較ツリーの冠動脈経路1の分岐点との距離を算出する。ここで「距離」とは、ボリュームデータ内での点間の幾何学的な距離である。それぞれの点間の距離が算出されると、算出された距離の合計値を算出する。同様に、基準ツリーの冠動脈経路1の始点、終点、分岐点と基準ツリーの冠動脈経路2の始点、終点、分岐点とのそれぞれの距離を算出し、距離の合計値を算出する。このようにして基準ツリーの冠動脈経路1と比較ツリーの冠動脈経路2、基準ツリーの冠動脈経路1と比較ツリーの冠動脈経路3、及び基準ツリーの冠動脈経路1と比較ツリーの冠動脈経路4についても同様に始点同士、終点同士、及び分岐点同士の距離を算出し、合計値を算出する。そして複数の合計値から最小値を特定し、特定された最小値を有する冠動脈経路の組み合わせを解剖学的に同一部分であるとみなして対応付ける。
【0027】
対応付けが行なわれるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に内腔断面積の算出処理を行なわせる。内腔断面積の算出処理において狭窄指標値算出部16は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれについて複数の直交断面を設定し、設定された複数の直交断面上での冠動脈領域の内腔の面積(内腔断面積)をそれぞれ算出する(ステップSA4)。この内腔断面積の算出方法は、例えば特許文献1に開示されている公知技術であるため説明は省略する。なお、内腔断面積の算出処理は、冠動脈経路ごとに行なわれる。算出された内腔断面積は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0028】
内腔断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に仮想正常血管壁の断面積の算出処理を行なわせる。仮想正常血管壁の断面積の算出処理において狭窄指標値算出部16は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれについて仮想正常血管領域を推定し、推定された仮想正常血管領域の直交断面上の仮想正常血管壁が形成する閉曲線内の面積(仮想正常血管壁の断面積)を算出する(ステップSA5)。この仮想正常血管壁の断面積の算出方法は、例えば特許文献1に開示されている公知技術であるため説明は省略する。なお、仮想正常血管壁の断面積の算出処理は、冠動脈経路ごとに行なわれる。算出された仮想正常血管壁の断面積は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0029】
仮想正常血管壁の断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に狭窄率の算出処理を行なわせる。狭窄率の算出処理において狭窄指標値算出部16は、ステップSA4で算出された内腔断面積とステップSA5で算出された仮想正常血管壁の断面積とに基づいて狭窄率を算出する(ステップSA6)。狭窄率は、冠動脈領域の各直交断面について算出される。
【0030】
図6は、冠動脈領域上の位置(直交断面の位置)に応じて変化する狭窄率を示すグラフ(以下、狭窄率グラフを呼ぶことにする)を示す図である。図6に示すように、狭窄率グラフの横軸は断面位置に、縦軸は狭窄率に規定されている。ここで断面位置とは、1つの冠動脈経路上における始点から直交断面までの道のり距離である。狭窄率の算出方法は、例えば特許文献1に開示されているため説明は省略する。算出された狭窄率は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0031】
狭窄率が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値解析部18に狭窄指標値の時系列解析処理を行なわせる。時系列解析処理において狭窄指標値解析部18は、ステップSA6で算出された狭窄率を時系列解析して、解析結果を出力する(ステップSA7)。
【0032】
以下、狭窄指標値解析部18による狭窄指標値の時系列解析処理について詳細に説明する。時系列解析処理においては、まず狭窄指標値解析部18の狭窄部位特定部181により狭窄部位が特定され、次に狭窄指標値解析部18の狭窄マップ生成部182により狭窄マップのデータが生成される。
【0033】
図7は、狭窄部位特定部18による狭窄部位の特定処理を説明するための図であり、複数時相の狭窄率グラフの一例を示す図である。まず、狭窄部位特定部181は、記憶部10から同一の冠動脈経路に関する複数時相(時相A〜時相B〜時相C)の狭窄率を読み出す。狭窄率を読み出すと狭窄部位特定部181は、冠動脈領域の各直交断面について、その狭窄率が予め設定された所定範囲Th内にあるか否かを判定する。狭窄率の所定範囲Thは、狭窄部位の狭窄率が有すると期待される値の範囲である。例えば時相Aに関する狭窄率グラフにおいては、断面位置範囲R1では、狭窄率が所定範囲Th内にある。時相Bに関する狭窄率グラフにおいては、断面位置範囲R1だけでなく断面位置範囲R2においても、狭窄率が所定範囲Th内にある。このように、狭窄率が所定範囲Th内にあると判定された場合、その狭窄率が算出された直交断面の位置(例えば範囲R1やR2内の断面位置)が狭窄部位の位置として特定される。同様にして狭窄部位特定部181は、全時相の全冠動脈経路について狭窄部位の位置と時相とを特定する。特定された狭窄部位の位置のデータは、時相のデータに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。また、狭窄部位の位置のデータと時相のデータとは、システム制御部28により狭窄マップ生成部182に供給される。なお、所定範囲Thは、経験的に導かれる範囲であり、自動的又はユーザにより操作部24を介して任意に設定可能である。
【0034】
狭窄マップ生成部182は、同一の冠動脈経路に関する狭窄部位の位置と時相とに基づいて狭窄マップのデータを生成する。図8は、狭窄マップ生成部182により生成される狭窄マップI1の一例を示す図である。なお図8の時相A,B,Cと図7の時相A,B,Cとは、それぞれ一致しているものとする。狭窄マップI1は、縦軸が直交断面の断面位置に、横軸が時相に規定されている2次元平面である。狭窄マップ生成部182は、時系列に沿って、狭窄部位特定部181により特定された狭窄部位の位置を狭窄マップ上にマッピングする。
【0035】
以下、時相Aを具体例に挙げて狭窄マップの生成手順について説明する。まず時相Aに対応する狭窄マップI1上のピクセル列(縦軸に平行)が特定される。次に特定されたピクセル列のうち、狭窄部位の位置に対応する狭窄マップI1上のピクセルが特定される。特定されたピクセルには、画素値“1”が割り付けられる。一方、ピクセル列うち、狭窄部位の位置に対応しないピクセルには、画素値“0”が割り付けられる。画素値“1”が割り付けられたピクセルと画素値“0”が割り付けられたピクセルとは、表示制御部20により画面上異なる色で表示される。この画素値の割付処理が全ての時相について行なわれることにより、狭窄マップI2が生成される。生成された狭窄率マップのデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。また、狭窄率マップのデータは、冠動脈経路の番号を示すコードに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0036】
狭窄マップのデータが生成されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部20は、狭窄マップを表示部22に表示する(ステップSA8)。
【0037】
狭窄マップは、狭窄が発生している部位と時相とを1つの2次元平面上に表現できる。臨床上知られているように、狭窄には、プラークに由来するものと心筋架橋に由来するものとがある。プラークに由来する狭窄は、図8に示すように、全時相に恒常的に現れる。一方、心筋架橋の由来する狭窄は、図8に示すように、特定の時相(典型的には、収縮期)に離散的に現れる。つまりユーザは、狭窄マップ上で全ての時相に亘って狭窄マークが示されている部位の狭窄をプラークに由来するものであると診断できる。またユーザは、狭窄マップ上で特定の時相のみに狭窄マークが示されている部位の狭窄を心筋架橋に由来するものであると診断できる。このように、一枚の狭窄マップを観察することでユーザは、狭窄部位の時間変化を知ることができる。
【0038】
ステップSA8において狭窄マップが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0039】
かくして本実施形態に係わる画像処理装置及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0040】
上記実施形態において狭窄率は、内腔断面積と仮想正常血管壁の断面積とに基づいて算出されるとした。しかしながら本実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、狭窄率は、内腔の血管径と仮想正常血管の血管径とに基づいて算出されるとしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態において狭窄部位は、狭窄率に基づいて特定されるとした。しかしながら本実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、狭窄部位は、ステップSA4において算出された内腔断面積に基づいて特定されるとしてもよい。また、上述の内腔の血管径に基づいて特定されてもよい。
【0042】
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0043】
(変形例1)
本実施形態においては、狭窄率は、内腔断面積と仮想正常血管壁の断面積とに基づいて算出されるとした。しかしながらこれに限定する必要はない。変形例1における画像処理装置は、狭窄率を内腔断面積と血管外壁の断面積とに基づいて算出する。以下、変形例1に係わる画像処理装置について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0044】
図9は、本実施形態の変形例1に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。図9に示すように、変形例1に係わる狭窄状態解析処理のステップSA1からステップSA4までは、本実施形態に係わる狭窄状態解析処理(図2)のステップSA1からステップSA4までと同様であるため説明は省略する。
【0045】
ステップSA4において内腔断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に血管外壁の断面積の算出処理を行なわせる。血管外壁の断面積の算出処理において狭窄指標値算出部16は、冠動脈領域に設定された複数の直交断面上のそれぞれについて、直交断面上における冠動脈領域の血管外壁内の面積(血管外壁断面積)をそれぞれ算出する(ステップSB5)。この血管外壁は、狭窄指標値算出部16により、既知の技術を用いて特定される。特定された血管外壁断面積は、直交断面上で閉曲面を形成する。この血管外壁が形成する閉曲面内の面積が、血管外壁断面積として算出される。なお、血管外壁断面積の算出処理は、冠動脈経路ごとに行なわれる。算出された血管外壁断面積は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0046】
血管外壁の断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に狭窄指標値の算出処理を行なわせる。狭窄率の算出処理において狭窄指標値算出部16は、ステップSA4において算出された内腔断面積とステップSB5において算出された血管外壁断面積とに基づいて狭窄率(いわゆる、動脈インデックス)を算出する(ステップSB6)。
【0047】
ステップSB6以後の処理は、図2のステップSA7からステップSA8までと同一なので説明は省略する。
【0048】
かくして本実施形態の変形例1に係わる画像処理装置1及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0049】
(変形例2)
本実施形態に係わる画像処理装置1と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップのみを表示した。本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップだけでなく狭窄部位を含む表示画像を表示する。さらに、心拍位相の時相、表示画像の断面位置や時相を示すマークを狭窄マップに重ねて表示することも可能である。
【0050】
以下、本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとを説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0051】
図10は、本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置2の構成を示す図である。図10に示すように、画像処理装置2は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、同一血管対応付け部14、狭窄指標値算出部16、狭窄指標値解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部26、及びシステム制御部28に加え、心電図波形記憶部30、心電時相特定部32、及び表示画像発生部34を備える。
【0052】
心電図波形記憶部30は、心電計により生成された被検体の心電図波形のデータを記憶する。心電図波形は、典型的には、左心室から発生される電気的興奮を計測して得られたものである。この心電図波形のデータは、心電計から伝送され、又は、磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録され、この記録媒体から心電波形記憶部30に移される。
【0053】
心電図時相特定部32は、心電図波形の形状に基づいて特定の心拍位相の時相を特定する。特定される心拍位相としては、例えば、拡張期や収縮期、拡張末期、収縮末期等である。
【0054】
表示画像発生部34は、ボリュームデータセットを3次元画像処理して表示画像のデータを発生する。3次元画像処理としては、MPR(multi planar reconstruction)処理やCPR(curved planar reconstruction)処理、SPR(streched CPR)処理、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、MIP(maximum intensity projection)等が挙げられる。なお、表示画像としては、冠動脈領域の直交断面に関するMPR画像(いわゆるCrosscut画像)が好適である。発生される表示画像の断面位置や断面の向き、時相は、ユーザにより操作部24を介して任意に設定可能である。
【0055】
表示制御部20は、狭窄マップの他に表示画像を並べて表示する。さらに、表示制御部20は、心電波形を並べて表示することも可能である。また、表示制御部20は、表示画像の断面位置を示すマーク(以下、断面位置マークと呼ぶことにする)や時相(以下、断面時相マークと呼ぶことにする)を狭窄マップ上に重ねて表示することも可能である。また、表示制御部20は、特定の心拍位相を示すマークを狭窄マップ上に重ねて表示することも可能である。
【0056】
図11は、変形例2に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。図11に示すように、変形例2に係わる狭窄状態解析処理は、図2のステップSA7以後の処理である。
【0057】
ステップSA7において狭窄マップが生成されるとシステム制御部28は、心電図時相特定部32に収縮末期の特定処理を行なわせる。収縮末期の特定処理において心電図時相特定部32は、心電図波形記憶部30に記憶されている心電波形のデータを読み出し、読み出した心電図波形の形状に基づいて収縮末期の時相を特定する(ステップSC8)。例えば、心電波形の形状に基づいてR波が特定され、特定されR波から一定時間後が収縮末期の時相として特定される。この一定時間というのは、被検体に応じて異なり、隣り合うR波の時間間隔に応じて決定される。特定された収縮末期の時相のデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。
【0058】
収縮末期の時相が特定されるとシステム制御部28は、心電図時相特定部32に拡張末期の特定処理を行なわせる。拡張末期の特定処理において心電図時相特定部32は、心電図波形の形状に基づいて拡張末期の時相を特定する(ステップSC9)。拡張末期も収縮末期と同様の方法で決定される。拡張末期の時相のデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。
【0059】
拡張末期の時相が特定されるとシステム制御部28は、表示画像発生部34に表示画像の発生処理を行なわせる。発生処理において表示画像発生部34は、狭窄部位の少なくとも一部を含む表示画像のデータをボリュームデータセットから発生する(ステップSC10)。表示画像の断面位置、断面の向き、及び時相は、ユーザにより操作部26を介して任意に設定可能である。発生された表示画像のデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。また、表示画像の断面位置のデータと時相のデータとも、システム制御部28により表示制御部20に供給される。表示画像の典型的な例としては、狭窄部位に交差する直交断面に関するMPR画像である。
【0060】
表示画像のデータが発生されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部20は、狭窄マップと表示画像とを表示部22に表示する(ステップSC11)。さらに、表示制御部20は、表示画像の断面位置を示す断面位置マークと表示画像の時相を示す時相マークとを狭窄マップ上の対応する位置にそれぞれ重ねて表示する。また、表示制御部20は、収縮末期を示す収縮末期マークと拡張末期を示すマークとを狭窄マップ上の対応する位置にそれぞれ重ねて表示する。
【0061】
図12は、ステップSC11において表示制御部20の制御のもとに表示部22に表示される表示画面の一例を示す図である。図12に示すように表示画面には、表示画像I2と狭窄マップI3とが並べて表示されている。また、狭窄マップI3の下方には、心電図波形I4が表示されている。狭窄マップI3と心電図波形I4とは、互いの時相が横軸に沿って揃うように配置される。狭窄マップI3には、断面位置マークM1、断面時相マークM2、収縮末期マークM3、及び拡張末期マークM4が重ねて表示されている。断面位置マークM1は、狭窄マップI2の横軸(時相方向)に平行な直線形状を有し、狭窄マップI2上における表示画像の断面位置に表示されている。断面時相マークM2は、狭窄マップI2の縦軸(断面位置方向)に平行な直線形状を有し、狭窄マップI3上における表示画像の断面位置に表示されている。収縮末期マークM3は、狭窄マップI3の縦軸に平行な直線形状を有し、狭窄マップI3上における収縮末期の時相位置に表示されている。拡張末期マークM4は、狭窄マップI3の縦軸に平行な直線形状を有し、狭窄マップI3上における拡張末期の時相位置に表示されている。
【0062】
ステップSC11において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0063】
このように、狭窄マップと並べて狭窄部位に関する表示画像が表示されることで、ユーザは、狭窄部位を画像上で確認することができる。また、狭窄マップ上に断面時相マークが表示されることで、一心拍中における表示画像の時相を容易に確認することができる。また、狭窄マップ上に断面位置マークが表示されることで、冠動脈領域の始点から終点までの間における表示画像の断面位置を用意に確認することができる。また。心拍位相の時相のマークが狭窄マップ上に表示されることでユーザは、心筋架橋由来のような一時的な狭窄がどの時相において発生されているかが確認しやすい。
【0064】
かくして本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0065】
なお、ステップSC10において発生されステップSC11において表示される典型的な表示画像は、直交断面に関するMPR画像であるとした。しかしながら本実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、並列して表示される狭窄マップに由来する冠動脈経路に関するCPR画像やSPR画像が発生され表示されてもよい。
【0066】
(変形例3)
変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップ上に断面時相マークを表示した。変形例3に係わる画像処理装置と狭窄状態解析プログラムとは、表示画像の時相や断面時相マークを操作部24により変更可能とし、断面時相マークと表示画像の時相とを連動させるものである。なお以下の説明において、本実施形態、変形例1、及び変形例2と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0067】
図13は、本実施形態の変形例3に係わる画像処理装置3の構成を示す図である。図13に示すように画像処理装置3は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、狭窄指標値算出部14、狭窄状態解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部26、システム制御部28、心電図波形記憶部30、心電図時相特定部32、及び表示画像発生部34に加え、表示時相算出部36を備える。
【0068】
操作部24は、ユーザからの表示画像の時相(以下、表示時相と呼ぶことにする)の変更操作を受付ける。表示時相算出部36は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示時相を算出する。表示画像発生部34は、算出された変更後の表示時相に関するボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する。表示制御部34は、算出された変更後の表示時相に対応する狭窄マップ上の時相位置に断面時相マークを移動させる。
【0069】
図14は、変形例3に係わる狭窄状態解析プログラムの典型的な流れを示す図である。図に示すように、変形例3に係わる狭窄状態解析処理は、図のステップSC11以後の処理である。
【0070】
ステップSC11において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、操作部24を介して表示時相の変更操作がなされることを待機している(ステップSD12)。変更操作としては、表示画像上におけるマウス操作、狭窄マップ上におけるマウス操作、キーボードからの入力等が利用可能である。例えば、表示画像上で操作部24(マウス)のホイール操作を行なうことで、表示時相の変更操作がなされる。他の例としては、操作部24を介して狭窄マップ上の断面時相マークを横方向にスライドさせることで、表示時相の変更操作がなされてもよい。
【0071】
ユーザにより操作部24を介して変更操作がなされることを契機として(ステップSD12:YES)、システム制御部28は、表示時相算出部36に表示時相の算出処理を行なわせる。算出処理において表示時相算出部36は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示時相を算出する(ステップSD13)。より詳細には、表示時相算出部36は、操作量に応じた表示時相の変化量を算出し、算出した変化量とステップSD12において表示されている変更前の表示画像の表示時相とを加算することにより、変更後の表示時相を算出する。算出された変更後の表示時相のデータは、システム制御部28により表示画像発生部34と表示制御部20とに供給される。
【0072】
変更後の表示時相が算出されるとシステム制御部28は、表示画像発生部34に表示画像の発生処理を行なわせる。発生処理において表示画像発生部20は、変更後の表示時相に関するボリュームデータセットを処理データ記憶部10から読み出し、読み出したボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する(ステップSD14)。発生される表示画像の断面位置は、表示時相の変更前の表示画像の断面位置と同一である。発生された表示画像のデータは、システム制御部28から表示制御部20に供給される。
【0073】
表示画像のデータが発生されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部20は、狭窄マップとステップSD14において発生された表示画像とを並べて表示する(ステップSD15)この際、表示制御部20は、ステップSD13において算出された変更後の表示時相に対応する、狭窄マップ上の時相位置を特定し、特定した時相位置に断面時相マークを移動させる。このように、操作部24を介した表示時相の変更に連動して表示画像の表示時相と断面時相マークとが更新される。
【0074】
ステップSD15において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0075】
上記構成によれば、操作部24を介して表示画像の表示時相を変更させるとともに、狭窄マップ上の断面時相マークを移動させることが可能となる。また、操作部24を介して狭窄マップ上の断面時相マークを移動させることにより表示時相を変更させることができる。そのため、狭窄マップを表示時相の設定・変更のためのユーザインターフェースとしても機能させることも可能となる。
【0076】
かくして本実施形態の変形例3に係わる画像処理装置3及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0077】
(変形例4)
変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップ上に断面位置マークを表示した。変形例4に係わる画像処理装置4と狭窄状態解析プログラムとは、表示画像の断面位置や断面位置マークを操作部24により変更可能とし、断面位置マークと表示画像の断面位置とを連動させるものである。なお以下の説明において、本実施形態、変形例1、変形例2、及び変形例3と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0078】
図15は、変形例4に係わる画像処理装置4の構成を示す図である。図15に示すように画像処理装置4は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、同一血管対応付け部14、狭窄指標値算出部16、狭窄状態解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部26、システム制御部28、心電図波形記憶部30、心電図時相特定部32、及び表示画像発生部34に加え、表示断面位置算出部38を備える。
【0079】
操作部24は、ユーザからの表示画像の断面位置(以下、表示断面位置と呼ぶことにする)の変更操作を受付ける。表示断面位置算出部38は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示断面位置を算出する。表示画像発生部34は、算出された変更後の表示断面位置に基づいてボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する。表示制御部20は、算出された表示断面位置に対応する狭窄マップ上の断面位置に断面位置マークを移動させる。
【0080】
図16は、変形例4に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。図16に示すように、変形例4に係わる狭窄状態解析処理は、図16のステップSC11以後の処理である。
【0081】
ステップSC11において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、操作部24を介して表示断面位置の変更操作がなされることを待機している(ステップSE12)。変更操作としては、表示画像上におけるマウス操作、狭窄マップ上におけるマウス操作、キーボードからの入力等が利用可能である。例えば、表示画像上で操作部24(マウス)のホイール操作を行なうことで、表示断面位置の変更操作がなされる。他の例としては、操作部24を介して狭窄マップ上の断面位置マークを縦方向にスライドさせることで、表示断面位置の変更操作がなされてもよい。
【0082】
ユーザにより操作部24を介して変更操作がなされることを契機として(ステップSE12:YES)、システム制御部28は、表示断面位置算出部38に表示断面位置の算出処理を行なわせる。算出処理において表示断面位置算出部38は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示断面位置を算出する(ステップSE13)。より詳細には、表示断面位置算出部38は、操作量に応じた表示断面位置の変化量を算出し、算出した変化量とステップSE12において表示されている変更前の表示画像の断面位置とを加算することにより、変更後の表示断面位置を算出する。算出された変更後の表示断面位置のデータは、システム制御部28により表示画像発生部34と表示制御部20とに供給される。
【0083】
変更後の表示断面位置が算出されるとシステム制御部28は、表示画像発生部34に表示画像の発生処理を行なわせる。発生処理において表示画像発生部34は、算出された変更後の表示断面位置に関するボリュームデータセットを処理データ記憶部10から読み出し、読み出したボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する(ステップSE14)。発生される表示画像の表示断面位置は、時相変更前の表示画像の表示断面位置と同一である。発生された表示画像のデータは、システム制御部28から表示制御部20に供給される。
【0084】
表示画像のデータが発生されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部34は、狭窄マップとステップSE14において発生された表示画像とを並べて表示する(ステップSE15)この際、表示画像制御部20は、ステップSE13において算出された変更後の表示断面位置に対応する、狭窄マップ上の断面位置を特定し、特定した断面位置に断面位置マークを移動させる。このように、操作部24を介した表示断面位置の変更に連動して表示画像の表示断面位置と断面位置マークとが更新される。
【0085】
ステップSE15において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0086】
上記構成によれば、操作部24を介して表示画像の表示時相を変更させるとともに、狭窄マップ上の断面位置マークを移動させることが可能となる。また、操作部24を介して狭窄マップ上の断面位置マークを移動させることにより、表示断面位置を変更させることができる。そなわち、狭窄マップを表示断面位置の設定・変更のためのユーザインターフェースとして機能させることも可能となる。
【0087】
かくして本実施形態の変形例4に係わる画像処理装置4及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0088】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図2】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップSA3に関する冠動脈領域の構造の一例を示す図である。
【図4】図2のステップSA3において生成される冠動脈ツリーの一例を示す図。
【図5】図2のステップSA3に係わる対応付け処理を説明するための図。
【図6】図2のステップSA6において算出される狭窄率のグラフを示す図。
【図7】図2のステップSA7における狭窄部位の特定処理を説明するための図。
【図8】図2のステップSA7において生成される狭窄マップの一例を示す図。
【図9】本実施形態の変形例1に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図10】本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図11】図10のシステム制御部の制御のもとに行なわれる、狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図12】ステップSC11において表示される表示画面の一例を示す図。
【図13】本実施形態の変形例3に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図14】図13のシステム制御部の制御のもとに行なわれる、狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図15】本実施形態の変形例4に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図16】図15のシステム制御部の制御のもとに行なわれる、狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【符号の説明】
【0090】
1…画像処理装置、10…処理データ記憶部、12…血管抽出部、14…同一血管対応付け部、16…狭窄指標値算出部、18…狭窄状態解析部、20…表示制御部、22…表示部、24…操作部、26…プログラム記憶部、28…システム制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管の狭窄率を評価するための画像処理装置及び狭窄状態解析プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
心臓には、それを取り囲むように冠状に走行する冠動脈がある。この冠動脈が狭窄する要因として、恒常的な狭窄と一時的な狭窄が考えられる。恒常的な狭窄の代表的な要因は、血管内部に付着したソフトプラークである。また一時的な狭窄の代表的な要因は、心収縮期に冠動脈を圧迫することによる動脈内の異常血流と心筋虚血とを引き起こす心筋架橋である。
【0003】
近年の医療画像収集技術の発達により、画像診断装置により収集された時系列データから心臓運動の周期性を利用し異なる周期に関するデータを組み合わせることで、擬似的に心臓の一周期のデータを作成することが可能になった。また、血管の狭窄率を算出する技術として、特許文献1が開示されている。しかし、複数時相に渡る狭窄状態をユーザに分かりやすい形で提示する表示方法は、存在しない。また、ユーザが期待する時相や血管断面位置の画像を簡便に提示する表示方法も存在しない。そのため、医用画像収集技術の発達度合に比して、狭窄状態の画像診断の精度や効率が向上していない。
【特許文献1】特開2007―283373号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現させる画像処理装置と狭窄率解析プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1局面に係る画像処理装置は、複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する記憶部と、前記複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する抽出部と、前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて狭窄度合を示す指標値を算出する算出部と、前記算出された指標値を時系列解析する解析部と、前記時系列解析の解析結果を表示する表示部と、を具備する。
【0006】
本発明の第2局面に係る狭窄状態解析プログラムは、コンピュータに、複数の時相に関する複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する機能と、前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて血管性状を表す指標値を算出する機能と、前記算出された指標値を時系列解析する機能と、前記時系列解析の解析結果を表示する機能と、を実現させる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現させる画像処理装置と狭窄状態解析プログラムを提供することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態に係わる画像表示装置と狭窄状態解析プログラムとを説明する。
【0009】
図1は、本発明の実施形態に係わる画像処理装置1の構成を示す図である。図1に示すように画像処理装置1は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、同一血管対応付け部14、狭窄指標値算出部16、狭窄指標値解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部、及びシステム制御部28を備える。画像処理装置1は、典型的には、画像処理のためのコンピュータである。
【0010】
処理データ記憶部10は、マルチスライス型のX線コンピュータ断層撮影装置により発生された複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する。記憶されている複数時相のボリュームデータセットのそれぞれは、冠動脈に狭窄の存在が疑われる被検体の心臓に関する。これら複数時相のボリュームデータセットは、被検体の心臓の少なくとも1心拍を再現する時系列データである。
【0011】
血管抽出部12は、閾値処理等により複数時相のボリュームデータセットから複数時相の血管領域をそれぞれ抽出する。抽出される血管領域は、どの部位の血管に関するものでも本実施形態は適用可能である。しかし、以下の説明を具体的に行なうため、抽出される血管領域は、本実施形態に特有な効果が特に現れやすい冠動脈に関するものとする。
【0012】
同一血管対応付け部14は、抽出された複数時相の冠動脈領域の間で解剖学的に同一な部分同士を対応付ける。
【0013】
狭窄指標値算出部16は、各冠動脈領域に設定された複数の直交断面(血管芯線に直交する断面)のそれぞれについて狭窄度合を示す指標値(以下、狭窄指標値と呼ぶことにする)を算出する。これにより、各時相(各ボリュームデータセット)について、冠動脈領域上の位置に応じて変化する狭窄指標値を示すグラフ(以下、狭窄指標値グラフと呼ぶことにする)が算出される。狭窄指標値は、直行断面上の血管領域の形状に基づいて算出される。狭窄指標値は、直交断面上の血管領域の血管径や断面積、狭窄率等である。
【0014】
狭窄指標値解析部18は、算出された狭窄指標値を時系列解析する。具体的には、狭窄指標値解析部18は、狭窄断面特定部181と狭窄マップ生成部182とを備える。狭窄部位特定部181は、複数の狭窄指標値の中から臨床的に特徴のある値を有する狭窄指標値を特定し、特定した狭窄指標値が算出された直行断面の断面位置と時相とを特定する。この臨床的に特徴のある値の範囲は、狭窄指標値の種類に応じて異なる。この範囲内にある狭窄指標値が算出された直交断面の断面位置が狭窄部位の位置である。狭窄マップ生成部182は、特定された狭窄部位の位置と時相とを2次元平面上にマッピングして、狭窄指標値のマップ(以下、狭窄マップと呼ぶことにする)を生成する。生成される狭窄マップは、狭窄部位が発生された時相と断面位置とを示す。
【0015】
表示制御部20は、時系列解析の結果を表示部22に表示する。具体的には、表示制御部20は、狭窄マップを表示部22に表示する。表示部22としては、例えばCRTディスプレイや、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等の表示デバイスが適宜利用可能である。
【0016】
操作部24は、操作者からの各種指令や情報入力を受け付ける。操作部24としては、マウスやトラックボールなどのポインティングデバイス、モード切替スイッチ等の選択デバイス、あるいはキーボード等の入力デバイスが適宜利用可能である。
【0017】
プログラム記憶部26は、後述する狭窄状態解析処理のための狭窄状態解析プログラムを記憶する。
【0018】
システム制御部28は、処理データ記憶部10に記憶されている狭窄状態解析プログラムを読み出してメモリ上に展開し画像処理装置1の各部を制御することによって、本実施形態に特有な狭窄状態解析処理を実行する。
【0019】
図2は、システム制御部28の制御のもとに行なわれる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。
【0020】
ユーザにより操作部24を介して狭窄状態解析処理の開始指示がなされることを契機としてシステム制御部28は、当該処理を開始する。まず、システム制御部28は、処理データ記憶部10から複数時相のボリュームデータセットを読み出す(ステップSA1)。読み出された複数時相のボリュームデータセットは、システム制御部28により血管抽出部12に供給される。
【0021】
複数時相のボリュームデータセットを供給し終えるとシステム制御部28は、血管抽出部12に冠動脈の抽出処理を行なわせる。抽出処理において血管抽出部12は、複数時相のボリュームデータセットから複数時相の冠動脈領域をそれぞれ抽出する。具体的には、まず血管抽出部12は、ボリュームデータセットに含まれる心臓領域の形状に基づいて冠動脈領域の基部を自動的に特定する。そして血管抽出部12は、特定された基部を始点として、冠動脈探索エンジンを用いて、基部に連結する冠動脈領域を自動的に抽出する。この抽出処理は、ステップSA1で読み出された全てのボリュームデータセットについて行なわれる。従って、抽出処理により、複数時相の冠動脈領域が抽出される。抽出された冠動脈領域のデータは、システム制御部28により同一血管対応付け部14に供給される。
【0022】
冠動脈領域が抽出されるとシステム制御部28は、同一血管対応付け部14に冠動脈領域の同一部位の対応付け処理を行なわせる。対応付け処理において同一血管対応付け部14は、抽出された複数時相の冠動脈領域の間で解剖学的に同一な部位同士を対応付ける(ステップSA3)。具体的には、同一血管対応付け部14は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれに含まれる解剖学的な複数の特徴点を特定する。次に同一血管対応付け部14は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれについて、特定された複数の特徴点に基づいて冠動脈ツリーのデータを生成する。そして同一血管対応付け部14は、生成された複数時相の冠動脈ツリーを用いて複数時相の冠動脈領域に含まれる解剖学的に同一な部位を対応付ける。
【0023】
図3は、冠動脈領域の構造の一例を示す図である。図3に示すように、冠動脈領域CAは、大動脈側の端点である始点(基部)s1、冠動脈領域CA上の他の端点である複数の終点e1,e2,e3,e4、及び2方向に分かれる地点である複数の分岐点n1,n2,n3等の解剖学的な複数の特徴点を有する。特徴点の特定処理において同一血管対応付け部14は、始点s1、終点e1,e2,e3,e4、及び分岐点n1,n2,n3等の特徴点を特定する。より詳細には、同一血管対応付け部14は、自動的又はユーザにより操作部24を介して指定された始点s1から冠動脈領域CAをトレースし、分岐点n1,n2,n3と終点e1,e2,e3,e4とを特定する。特徴点が特定されると、冠動脈ツリーのデータが生成される。
【0024】
図4は、図3の冠動脈領域に関する冠動脈ツリーの一例を示す図である。図4に示すように、冠動脈ツリーは、冠動脈経路情報と特徴点座標情報とから構成される。冠動脈経路情報は、始点から複数の分岐点を経由して各終点に至るまでの冠動脈領域の経路を示す。冠動脈経路は、始点から各終点まで冠動脈領域をトレースすることにより特定される。図4では、経路1:始点s1→分岐点n1→分岐点n2→終点e1、経路2:始点s1→分岐点n1→分岐点n2→分岐点n3→終点e2、経路3:始点s1→分岐点n1→分岐点n2→分岐点n3→終点e3、及び経路4:始点s1→分岐点n1→終点e4の4つの経路が示されている。特徴点座標情報は、始点s1、終点e1,e2,e3,e4、及び分岐点n1,n2,n3の座標を示す。冠動脈ツリーのデータが生成されると、冠動脈領域の同一部分、すなわち同一経路の対応付けが行なわれる。
【0025】
図5は、対応付け処理を説明するための図である。図5に示すように、対応付け処理は、例えば、処理対象となる時相(t1)の冠動脈ツリー(以下、基準ツリーと呼ぶことにする)とその1つ後の時相(t1+Δt)の冠動脈ツリー(以下、比較ツリーと呼ぶことにする)とを用いて行なわれる。まず、基準ツリーを構成する複数の冠動脈経路のうちの1つと比較ツリーを構成する全ての冠動脈経路との一致度がそれぞれ算出される。算出された全ての一致度のうちの最小一致度を有する基準ツリーの冠動脈経路と比較ツリーの冠動脈経路とが解剖学的に同一であるとして、この冠動脈経路同士を対応付ける。このようにして、基準ツリーの全ての冠動脈経路について対応付けが行なわれる。なお、この対応付け処理は、全てのボリュームデータセットについて行なわれる。
【0026】
一致度の具体的な算出方法を基準ツリーの冠動脈経路1を例に挙げて具体的に示す。まず、基準ツリーの冠動脈経路1の始点と比較ツリーの冠動脈経路1の始点との距離、基準ツリーの冠動脈経路1の終点と比較ツリーの冠動脈経路1の終点との距離、基準ツリーの冠動脈経路1の分岐点と比較ツリーの冠動脈経路1の分岐点との距離を算出する。ここで「距離」とは、ボリュームデータ内での点間の幾何学的な距離である。それぞれの点間の距離が算出されると、算出された距離の合計値を算出する。同様に、基準ツリーの冠動脈経路1の始点、終点、分岐点と基準ツリーの冠動脈経路2の始点、終点、分岐点とのそれぞれの距離を算出し、距離の合計値を算出する。このようにして基準ツリーの冠動脈経路1と比較ツリーの冠動脈経路2、基準ツリーの冠動脈経路1と比較ツリーの冠動脈経路3、及び基準ツリーの冠動脈経路1と比較ツリーの冠動脈経路4についても同様に始点同士、終点同士、及び分岐点同士の距離を算出し、合計値を算出する。そして複数の合計値から最小値を特定し、特定された最小値を有する冠動脈経路の組み合わせを解剖学的に同一部分であるとみなして対応付ける。
【0027】
対応付けが行なわれるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に内腔断面積の算出処理を行なわせる。内腔断面積の算出処理において狭窄指標値算出部16は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれについて複数の直交断面を設定し、設定された複数の直交断面上での冠動脈領域の内腔の面積(内腔断面積)をそれぞれ算出する(ステップSA4)。この内腔断面積の算出方法は、例えば特許文献1に開示されている公知技術であるため説明は省略する。なお、内腔断面積の算出処理は、冠動脈経路ごとに行なわれる。算出された内腔断面積は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0028】
内腔断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に仮想正常血管壁の断面積の算出処理を行なわせる。仮想正常血管壁の断面積の算出処理において狭窄指標値算出部16は、複数時相の冠動脈領域のそれぞれについて仮想正常血管領域を推定し、推定された仮想正常血管領域の直交断面上の仮想正常血管壁が形成する閉曲線内の面積(仮想正常血管壁の断面積)を算出する(ステップSA5)。この仮想正常血管壁の断面積の算出方法は、例えば特許文献1に開示されている公知技術であるため説明は省略する。なお、仮想正常血管壁の断面積の算出処理は、冠動脈経路ごとに行なわれる。算出された仮想正常血管壁の断面積は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0029】
仮想正常血管壁の断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に狭窄率の算出処理を行なわせる。狭窄率の算出処理において狭窄指標値算出部16は、ステップSA4で算出された内腔断面積とステップSA5で算出された仮想正常血管壁の断面積とに基づいて狭窄率を算出する(ステップSA6)。狭窄率は、冠動脈領域の各直交断面について算出される。
【0030】
図6は、冠動脈領域上の位置(直交断面の位置)に応じて変化する狭窄率を示すグラフ(以下、狭窄率グラフを呼ぶことにする)を示す図である。図6に示すように、狭窄率グラフの横軸は断面位置に、縦軸は狭窄率に規定されている。ここで断面位置とは、1つの冠動脈経路上における始点から直交断面までの道のり距離である。狭窄率の算出方法は、例えば特許文献1に開示されているため説明は省略する。算出された狭窄率は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0031】
狭窄率が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値解析部18に狭窄指標値の時系列解析処理を行なわせる。時系列解析処理において狭窄指標値解析部18は、ステップSA6で算出された狭窄率を時系列解析して、解析結果を出力する(ステップSA7)。
【0032】
以下、狭窄指標値解析部18による狭窄指標値の時系列解析処理について詳細に説明する。時系列解析処理においては、まず狭窄指標値解析部18の狭窄部位特定部181により狭窄部位が特定され、次に狭窄指標値解析部18の狭窄マップ生成部182により狭窄マップのデータが生成される。
【0033】
図7は、狭窄部位特定部18による狭窄部位の特定処理を説明するための図であり、複数時相の狭窄率グラフの一例を示す図である。まず、狭窄部位特定部181は、記憶部10から同一の冠動脈経路に関する複数時相(時相A〜時相B〜時相C)の狭窄率を読み出す。狭窄率を読み出すと狭窄部位特定部181は、冠動脈領域の各直交断面について、その狭窄率が予め設定された所定範囲Th内にあるか否かを判定する。狭窄率の所定範囲Thは、狭窄部位の狭窄率が有すると期待される値の範囲である。例えば時相Aに関する狭窄率グラフにおいては、断面位置範囲R1では、狭窄率が所定範囲Th内にある。時相Bに関する狭窄率グラフにおいては、断面位置範囲R1だけでなく断面位置範囲R2においても、狭窄率が所定範囲Th内にある。このように、狭窄率が所定範囲Th内にあると判定された場合、その狭窄率が算出された直交断面の位置(例えば範囲R1やR2内の断面位置)が狭窄部位の位置として特定される。同様にして狭窄部位特定部181は、全時相の全冠動脈経路について狭窄部位の位置と時相とを特定する。特定された狭窄部位の位置のデータは、時相のデータに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。また、狭窄部位の位置のデータと時相のデータとは、システム制御部28により狭窄マップ生成部182に供給される。なお、所定範囲Thは、経験的に導かれる範囲であり、自動的又はユーザにより操作部24を介して任意に設定可能である。
【0034】
狭窄マップ生成部182は、同一の冠動脈経路に関する狭窄部位の位置と時相とに基づいて狭窄マップのデータを生成する。図8は、狭窄マップ生成部182により生成される狭窄マップI1の一例を示す図である。なお図8の時相A,B,Cと図7の時相A,B,Cとは、それぞれ一致しているものとする。狭窄マップI1は、縦軸が直交断面の断面位置に、横軸が時相に規定されている2次元平面である。狭窄マップ生成部182は、時系列に沿って、狭窄部位特定部181により特定された狭窄部位の位置を狭窄マップ上にマッピングする。
【0035】
以下、時相Aを具体例に挙げて狭窄マップの生成手順について説明する。まず時相Aに対応する狭窄マップI1上のピクセル列(縦軸に平行)が特定される。次に特定されたピクセル列のうち、狭窄部位の位置に対応する狭窄マップI1上のピクセルが特定される。特定されたピクセルには、画素値“1”が割り付けられる。一方、ピクセル列うち、狭窄部位の位置に対応しないピクセルには、画素値“0”が割り付けられる。画素値“1”が割り付けられたピクセルと画素値“0”が割り付けられたピクセルとは、表示制御部20により画面上異なる色で表示される。この画素値の割付処理が全ての時相について行なわれることにより、狭窄マップI2が生成される。生成された狭窄率マップのデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。また、狭窄率マップのデータは、冠動脈経路の番号を示すコードに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0036】
狭窄マップのデータが生成されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部20は、狭窄マップを表示部22に表示する(ステップSA8)。
【0037】
狭窄マップは、狭窄が発生している部位と時相とを1つの2次元平面上に表現できる。臨床上知られているように、狭窄には、プラークに由来するものと心筋架橋に由来するものとがある。プラークに由来する狭窄は、図8に示すように、全時相に恒常的に現れる。一方、心筋架橋の由来する狭窄は、図8に示すように、特定の時相(典型的には、収縮期)に離散的に現れる。つまりユーザは、狭窄マップ上で全ての時相に亘って狭窄マークが示されている部位の狭窄をプラークに由来するものであると診断できる。またユーザは、狭窄マップ上で特定の時相のみに狭窄マークが示されている部位の狭窄を心筋架橋に由来するものであると診断できる。このように、一枚の狭窄マップを観察することでユーザは、狭窄部位の時間変化を知ることができる。
【0038】
ステップSA8において狭窄マップが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0039】
かくして本実施形態に係わる画像処理装置及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0040】
上記実施形態において狭窄率は、内腔断面積と仮想正常血管壁の断面積とに基づいて算出されるとした。しかしながら本実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、狭窄率は、内腔の血管径と仮想正常血管の血管径とに基づいて算出されるとしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態において狭窄部位は、狭窄率に基づいて特定されるとした。しかしながら本実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、狭窄部位は、ステップSA4において算出された内腔断面積に基づいて特定されるとしてもよい。また、上述の内腔の血管径に基づいて特定されてもよい。
【0042】
また、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。
【0043】
(変形例1)
本実施形態においては、狭窄率は、内腔断面積と仮想正常血管壁の断面積とに基づいて算出されるとした。しかしながらこれに限定する必要はない。変形例1における画像処理装置は、狭窄率を内腔断面積と血管外壁の断面積とに基づいて算出する。以下、変形例1に係わる画像処理装置について説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0044】
図9は、本実施形態の変形例1に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。図9に示すように、変形例1に係わる狭窄状態解析処理のステップSA1からステップSA4までは、本実施形態に係わる狭窄状態解析処理(図2)のステップSA1からステップSA4までと同様であるため説明は省略する。
【0045】
ステップSA4において内腔断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に血管外壁の断面積の算出処理を行なわせる。血管外壁の断面積の算出処理において狭窄指標値算出部16は、冠動脈領域に設定された複数の直交断面上のそれぞれについて、直交断面上における冠動脈領域の血管外壁内の面積(血管外壁断面積)をそれぞれ算出する(ステップSB5)。この血管外壁は、狭窄指標値算出部16により、既知の技術を用いて特定される。特定された血管外壁断面積は、直交断面上で閉曲面を形成する。この血管外壁が形成する閉曲面内の面積が、血管外壁断面積として算出される。なお、血管外壁断面積の算出処理は、冠動脈経路ごとに行なわれる。算出された血管外壁断面積は、その冠動脈経路の識別番号のデータと時相のデータとに関連付けられて処理データ記憶部10に記憶される。
【0046】
血管外壁の断面積が算出されるとシステム制御部28は、狭窄指標値算出部16に狭窄指標値の算出処理を行なわせる。狭窄率の算出処理において狭窄指標値算出部16は、ステップSA4において算出された内腔断面積とステップSB5において算出された血管外壁断面積とに基づいて狭窄率(いわゆる、動脈インデックス)を算出する(ステップSB6)。
【0047】
ステップSB6以後の処理は、図2のステップSA7からステップSA8までと同一なので説明は省略する。
【0048】
かくして本実施形態の変形例1に係わる画像処理装置1及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0049】
(変形例2)
本実施形態に係わる画像処理装置1と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップのみを表示した。本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップだけでなく狭窄部位を含む表示画像を表示する。さらに、心拍位相の時相、表示画像の断面位置や時相を示すマークを狭窄マップに重ねて表示することも可能である。
【0050】
以下、本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとを説明する。なお以下の説明において、本実施形態と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0051】
図10は、本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置2の構成を示す図である。図10に示すように、画像処理装置2は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、同一血管対応付け部14、狭窄指標値算出部16、狭窄指標値解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部26、及びシステム制御部28に加え、心電図波形記憶部30、心電時相特定部32、及び表示画像発生部34を備える。
【0052】
心電図波形記憶部30は、心電計により生成された被検体の心電図波形のデータを記憶する。心電図波形は、典型的には、左心室から発生される電気的興奮を計測して得られたものである。この心電図波形のデータは、心電計から伝送され、又は、磁気ディスクや光ディスク、半導体メモリ等の記録媒体に記録され、この記録媒体から心電波形記憶部30に移される。
【0053】
心電図時相特定部32は、心電図波形の形状に基づいて特定の心拍位相の時相を特定する。特定される心拍位相としては、例えば、拡張期や収縮期、拡張末期、収縮末期等である。
【0054】
表示画像発生部34は、ボリュームデータセットを3次元画像処理して表示画像のデータを発生する。3次元画像処理としては、MPR(multi planar reconstruction)処理やCPR(curved planar reconstruction)処理、SPR(streched CPR)処理、ボリュームレンダリング、サーフェスレンダリング、MIP(maximum intensity projection)等が挙げられる。なお、表示画像としては、冠動脈領域の直交断面に関するMPR画像(いわゆるCrosscut画像)が好適である。発生される表示画像の断面位置や断面の向き、時相は、ユーザにより操作部24を介して任意に設定可能である。
【0055】
表示制御部20は、狭窄マップの他に表示画像を並べて表示する。さらに、表示制御部20は、心電波形を並べて表示することも可能である。また、表示制御部20は、表示画像の断面位置を示すマーク(以下、断面位置マークと呼ぶことにする)や時相(以下、断面時相マークと呼ぶことにする)を狭窄マップ上に重ねて表示することも可能である。また、表示制御部20は、特定の心拍位相を示すマークを狭窄マップ上に重ねて表示することも可能である。
【0056】
図11は、変形例2に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。図11に示すように、変形例2に係わる狭窄状態解析処理は、図2のステップSA7以後の処理である。
【0057】
ステップSA7において狭窄マップが生成されるとシステム制御部28は、心電図時相特定部32に収縮末期の特定処理を行なわせる。収縮末期の特定処理において心電図時相特定部32は、心電図波形記憶部30に記憶されている心電波形のデータを読み出し、読み出した心電図波形の形状に基づいて収縮末期の時相を特定する(ステップSC8)。例えば、心電波形の形状に基づいてR波が特定され、特定されR波から一定時間後が収縮末期の時相として特定される。この一定時間というのは、被検体に応じて異なり、隣り合うR波の時間間隔に応じて決定される。特定された収縮末期の時相のデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。
【0058】
収縮末期の時相が特定されるとシステム制御部28は、心電図時相特定部32に拡張末期の特定処理を行なわせる。拡張末期の特定処理において心電図時相特定部32は、心電図波形の形状に基づいて拡張末期の時相を特定する(ステップSC9)。拡張末期も収縮末期と同様の方法で決定される。拡張末期の時相のデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。
【0059】
拡張末期の時相が特定されるとシステム制御部28は、表示画像発生部34に表示画像の発生処理を行なわせる。発生処理において表示画像発生部34は、狭窄部位の少なくとも一部を含む表示画像のデータをボリュームデータセットから発生する(ステップSC10)。表示画像の断面位置、断面の向き、及び時相は、ユーザにより操作部26を介して任意に設定可能である。発生された表示画像のデータは、システム制御部28により表示制御部20に供給される。また、表示画像の断面位置のデータと時相のデータとも、システム制御部28により表示制御部20に供給される。表示画像の典型的な例としては、狭窄部位に交差する直交断面に関するMPR画像である。
【0060】
表示画像のデータが発生されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部20は、狭窄マップと表示画像とを表示部22に表示する(ステップSC11)。さらに、表示制御部20は、表示画像の断面位置を示す断面位置マークと表示画像の時相を示す時相マークとを狭窄マップ上の対応する位置にそれぞれ重ねて表示する。また、表示制御部20は、収縮末期を示す収縮末期マークと拡張末期を示すマークとを狭窄マップ上の対応する位置にそれぞれ重ねて表示する。
【0061】
図12は、ステップSC11において表示制御部20の制御のもとに表示部22に表示される表示画面の一例を示す図である。図12に示すように表示画面には、表示画像I2と狭窄マップI3とが並べて表示されている。また、狭窄マップI3の下方には、心電図波形I4が表示されている。狭窄マップI3と心電図波形I4とは、互いの時相が横軸に沿って揃うように配置される。狭窄マップI3には、断面位置マークM1、断面時相マークM2、収縮末期マークM3、及び拡張末期マークM4が重ねて表示されている。断面位置マークM1は、狭窄マップI2の横軸(時相方向)に平行な直線形状を有し、狭窄マップI2上における表示画像の断面位置に表示されている。断面時相マークM2は、狭窄マップI2の縦軸(断面位置方向)に平行な直線形状を有し、狭窄マップI3上における表示画像の断面位置に表示されている。収縮末期マークM3は、狭窄マップI3の縦軸に平行な直線形状を有し、狭窄マップI3上における収縮末期の時相位置に表示されている。拡張末期マークM4は、狭窄マップI3の縦軸に平行な直線形状を有し、狭窄マップI3上における拡張末期の時相位置に表示されている。
【0062】
ステップSC11において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0063】
このように、狭窄マップと並べて狭窄部位に関する表示画像が表示されることで、ユーザは、狭窄部位を画像上で確認することができる。また、狭窄マップ上に断面時相マークが表示されることで、一心拍中における表示画像の時相を容易に確認することができる。また、狭窄マップ上に断面位置マークが表示されることで、冠動脈領域の始点から終点までの間における表示画像の断面位置を用意に確認することができる。また。心拍位相の時相のマークが狭窄マップ上に表示されることでユーザは、心筋架橋由来のような一時的な狭窄がどの時相において発生されているかが確認しやすい。
【0064】
かくして本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0065】
なお、ステップSC10において発生されステップSC11において表示される典型的な表示画像は、直交断面に関するMPR画像であるとした。しかしながら本実施形態は、これに限定する必要はない。例えば、並列して表示される狭窄マップに由来する冠動脈経路に関するCPR画像やSPR画像が発生され表示されてもよい。
【0066】
(変形例3)
変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップ上に断面時相マークを表示した。変形例3に係わる画像処理装置と狭窄状態解析プログラムとは、表示画像の時相や断面時相マークを操作部24により変更可能とし、断面時相マークと表示画像の時相とを連動させるものである。なお以下の説明において、本実施形態、変形例1、及び変形例2と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0067】
図13は、本実施形態の変形例3に係わる画像処理装置3の構成を示す図である。図13に示すように画像処理装置3は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、狭窄指標値算出部14、狭窄状態解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部26、システム制御部28、心電図波形記憶部30、心電図時相特定部32、及び表示画像発生部34に加え、表示時相算出部36を備える。
【0068】
操作部24は、ユーザからの表示画像の時相(以下、表示時相と呼ぶことにする)の変更操作を受付ける。表示時相算出部36は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示時相を算出する。表示画像発生部34は、算出された変更後の表示時相に関するボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する。表示制御部34は、算出された変更後の表示時相に対応する狭窄マップ上の時相位置に断面時相マークを移動させる。
【0069】
図14は、変形例3に係わる狭窄状態解析プログラムの典型的な流れを示す図である。図に示すように、変形例3に係わる狭窄状態解析処理は、図のステップSC11以後の処理である。
【0070】
ステップSC11において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、操作部24を介して表示時相の変更操作がなされることを待機している(ステップSD12)。変更操作としては、表示画像上におけるマウス操作、狭窄マップ上におけるマウス操作、キーボードからの入力等が利用可能である。例えば、表示画像上で操作部24(マウス)のホイール操作を行なうことで、表示時相の変更操作がなされる。他の例としては、操作部24を介して狭窄マップ上の断面時相マークを横方向にスライドさせることで、表示時相の変更操作がなされてもよい。
【0071】
ユーザにより操作部24を介して変更操作がなされることを契機として(ステップSD12:YES)、システム制御部28は、表示時相算出部36に表示時相の算出処理を行なわせる。算出処理において表示時相算出部36は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示時相を算出する(ステップSD13)。より詳細には、表示時相算出部36は、操作量に応じた表示時相の変化量を算出し、算出した変化量とステップSD12において表示されている変更前の表示画像の表示時相とを加算することにより、変更後の表示時相を算出する。算出された変更後の表示時相のデータは、システム制御部28により表示画像発生部34と表示制御部20とに供給される。
【0072】
変更後の表示時相が算出されるとシステム制御部28は、表示画像発生部34に表示画像の発生処理を行なわせる。発生処理において表示画像発生部20は、変更後の表示時相に関するボリュームデータセットを処理データ記憶部10から読み出し、読み出したボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する(ステップSD14)。発生される表示画像の断面位置は、表示時相の変更前の表示画像の断面位置と同一である。発生された表示画像のデータは、システム制御部28から表示制御部20に供給される。
【0073】
表示画像のデータが発生されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部20は、狭窄マップとステップSD14において発生された表示画像とを並べて表示する(ステップSD15)この際、表示制御部20は、ステップSD13において算出された変更後の表示時相に対応する、狭窄マップ上の時相位置を特定し、特定した時相位置に断面時相マークを移動させる。このように、操作部24を介した表示時相の変更に連動して表示画像の表示時相と断面時相マークとが更新される。
【0074】
ステップSD15において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0075】
上記構成によれば、操作部24を介して表示画像の表示時相を変更させるとともに、狭窄マップ上の断面時相マークを移動させることが可能となる。また、操作部24を介して狭窄マップ上の断面時相マークを移動させることにより表示時相を変更させることができる。そのため、狭窄マップを表示時相の設定・変更のためのユーザインターフェースとしても機能させることも可能となる。
【0076】
かくして本実施形態の変形例3に係わる画像処理装置3及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0077】
(変形例4)
変形例2に係わる画像処理装置2と狭窄状態解析プログラムとは、狭窄マップ上に断面位置マークを表示した。変形例4に係わる画像処理装置4と狭窄状態解析プログラムとは、表示画像の断面位置や断面位置マークを操作部24により変更可能とし、断面位置マークと表示画像の断面位置とを連動させるものである。なお以下の説明において、本実施形態、変形例1、変形例2、及び変形例3と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
【0078】
図15は、変形例4に係わる画像処理装置4の構成を示す図である。図15に示すように画像処理装置4は、処理データ記憶部10、血管抽出部12、同一血管対応付け部14、狭窄指標値算出部16、狭窄状態解析部18、表示制御部20、表示部22、操作部24、プログラム記憶部26、システム制御部28、心電図波形記憶部30、心電図時相特定部32、及び表示画像発生部34に加え、表示断面位置算出部38を備える。
【0079】
操作部24は、ユーザからの表示画像の断面位置(以下、表示断面位置と呼ぶことにする)の変更操作を受付ける。表示断面位置算出部38は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示断面位置を算出する。表示画像発生部34は、算出された変更後の表示断面位置に基づいてボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する。表示制御部20は、算出された表示断面位置に対応する狭窄マップ上の断面位置に断面位置マークを移動させる。
【0080】
図16は、変形例4に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図である。図16に示すように、変形例4に係わる狭窄状態解析処理は、図16のステップSC11以後の処理である。
【0081】
ステップSC11において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、操作部24を介して表示断面位置の変更操作がなされることを待機している(ステップSE12)。変更操作としては、表示画像上におけるマウス操作、狭窄マップ上におけるマウス操作、キーボードからの入力等が利用可能である。例えば、表示画像上で操作部24(マウス)のホイール操作を行なうことで、表示断面位置の変更操作がなされる。他の例としては、操作部24を介して狭窄マップ上の断面位置マークを縦方向にスライドさせることで、表示断面位置の変更操作がなされてもよい。
【0082】
ユーザにより操作部24を介して変更操作がなされることを契機として(ステップSE12:YES)、システム制御部28は、表示断面位置算出部38に表示断面位置の算出処理を行なわせる。算出処理において表示断面位置算出部38は、操作部24が受付けた変更操作の操作量に基づいて変更後の表示断面位置を算出する(ステップSE13)。より詳細には、表示断面位置算出部38は、操作量に応じた表示断面位置の変化量を算出し、算出した変化量とステップSE12において表示されている変更前の表示画像の断面位置とを加算することにより、変更後の表示断面位置を算出する。算出された変更後の表示断面位置のデータは、システム制御部28により表示画像発生部34と表示制御部20とに供給される。
【0083】
変更後の表示断面位置が算出されるとシステム制御部28は、表示画像発生部34に表示画像の発生処理を行なわせる。発生処理において表示画像発生部34は、算出された変更後の表示断面位置に関するボリュームデータセットを処理データ記憶部10から読み出し、読み出したボリュームデータセットから表示画像のデータを発生する(ステップSE14)。発生される表示画像の表示断面位置は、時相変更前の表示画像の表示断面位置と同一である。発生された表示画像のデータは、システム制御部28から表示制御部20に供給される。
【0084】
表示画像のデータが発生されるとシステム制御部28は、表示制御部20に表示処理を行なわせる。表示処理において表示制御部34は、狭窄マップとステップSE14において発生された表示画像とを並べて表示する(ステップSE15)この際、表示画像制御部20は、ステップSE13において算出された変更後の表示断面位置に対応する、狭窄マップ上の断面位置を特定し、特定した断面位置に断面位置マークを移動させる。このように、操作部24を介した表示断面位置の変更に連動して表示画像の表示断面位置と断面位置マークとが更新される。
【0085】
ステップSE15において狭窄マップと表示画像とが表示されるとシステム制御部28は、狭窄状態解析処理を終了する。
【0086】
上記構成によれば、操作部24を介して表示画像の表示時相を変更させるとともに、狭窄マップ上の断面位置マークを移動させることが可能となる。また、操作部24を介して狭窄マップ上の断面位置マークを移動させることにより、表示断面位置を変更させることができる。そなわち、狭窄マップを表示断面位置の設定・変更のためのユーザインターフェースとして機能させることも可能となる。
【0087】
かくして本実施形態の変形例4に係わる画像処理装置4及び狭窄状態解析プログラムは、狭窄状態の画像診断の精度や効率の向上を実現する。
【0088】
また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる変形例にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0089】
【図1】本発明の実施形態に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図2】図1のシステム制御部の制御のもとに行なわれる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図3】図2のステップSA3に関する冠動脈領域の構造の一例を示す図である。
【図4】図2のステップSA3において生成される冠動脈ツリーの一例を示す図。
【図5】図2のステップSA3に係わる対応付け処理を説明するための図。
【図6】図2のステップSA6において算出される狭窄率のグラフを示す図。
【図7】図2のステップSA7における狭窄部位の特定処理を説明するための図。
【図8】図2のステップSA7において生成される狭窄マップの一例を示す図。
【図9】本実施形態の変形例1に係わる狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図10】本実施形態の変形例2に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図11】図10のシステム制御部の制御のもとに行なわれる、狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図12】ステップSC11において表示される表示画面の一例を示す図。
【図13】本実施形態の変形例3に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図14】図13のシステム制御部の制御のもとに行なわれる、狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【図15】本実施形態の変形例4に係わる画像処理装置の構成を示す図。
【図16】図15のシステム制御部の制御のもとに行なわれる、狭窄状態解析処理の典型的な流れを示す図。
【符号の説明】
【0090】
1…画像処理装置、10…処理データ記憶部、12…血管抽出部、14…同一血管対応付け部、16…狭窄指標値算出部、18…狭窄状態解析部、20…表示制御部、22…表示部、24…操作部、26…プログラム記憶部、28…システム制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する記憶部と、
前記複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて狭窄度合を示す指標値を算出する算出部と、
前記算出された指標値を時系列解析する解析部と、
前記時系列解析の解析結果を表示する表示部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記指標値として、前記断面上での前記血管領域の血管径、断面積、及び狭窄率の少なくとも1つを算出する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記解析部は、
前記算出された指標値のうちの臨床的に特徴的な値を示す断面の時相と断面位置とを特定する時相・位置特定部と、
前記特定された断面の時相と断面位置とに基づいて、狭窄が発生された時相と断面位置とを2次元平面上に表すマップを生成し、前記生成されたマップを前記解析結果として出力する生成部と、
を備える請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
心電図波形から特定の心拍位相の時相を特定する心拍位相特定部をさらに備え、
前記表示部は、前記特定された時相を示す心電図マークを前記時系列マップ上に重ねて表示する、
請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特徴的な値を有する前記断面に関する断面画像のデータを発生する発生部をさらに備え、
前記表示部は、前記断面画像と前記マップとを並べて表示する、
請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記表示されている断面画像の断面位置を示す断面位置マークを前記マップ上に重ねて表示する、請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記表示されている断面画像の時相を示す断面時相マークを前記マップ上に重ねて表示する、請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
ユーザからの指示に従って断面位置の変更操作をする操作部をさらに備え、
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じた断面位置に関する断面画像を表示する、
請求項5記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じて前記マップ上の断面位置マークを移動させる、請求項8記載の画像処理装置。
【請求項10】
ユーザからの指示に従って前記表示されている断面画像の時相の変更操作をする操作部をさらに備え、
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じた時相に関する断面画像を表示する、
請求項5記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じて前記マップ上の断面時相マークを移動させる、請求項10記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
複数の時相に関する複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する機能と、
前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて血管性状を表す指標値を算出する機能と、
前記算出された指標値を時系列解析する機能と、
前記時系列解析の解析結果を表示する機能と、
を実現させる狭窄状態解析プログラム。
【請求項1】
複数の時相に関する複数のボリュームデータセットを記憶する記憶部と、
前記複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する抽出部と、
前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて狭窄度合を示す指標値を算出する算出部と、
前記算出された指標値を時系列解析する解析部と、
前記時系列解析の解析結果を表示する表示部と、
を具備する画像処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記指標値として、前記断面上での前記血管領域の血管径、断面積、及び狭窄率の少なくとも1つを算出する、請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記解析部は、
前記算出された指標値のうちの臨床的に特徴的な値を示す断面の時相と断面位置とを特定する時相・位置特定部と、
前記特定された断面の時相と断面位置とに基づいて、狭窄が発生された時相と断面位置とを2次元平面上に表すマップを生成し、前記生成されたマップを前記解析結果として出力する生成部と、
を備える請求項1記載の画像処理装置。
【請求項4】
心電図波形から特定の心拍位相の時相を特定する心拍位相特定部をさらに備え、
前記表示部は、前記特定された時相を示す心電図マークを前記時系列マップ上に重ねて表示する、
請求項3記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記特徴的な値を有する前記断面に関する断面画像のデータを発生する発生部をさらに備え、
前記表示部は、前記断面画像と前記マップとを並べて表示する、
請求項3記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記表示部は、前記表示されている断面画像の断面位置を示す断面位置マークを前記マップ上に重ねて表示する、請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記表示部は、前記表示されている断面画像の時相を示す断面時相マークを前記マップ上に重ねて表示する、請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
ユーザからの指示に従って断面位置の変更操作をする操作部をさらに備え、
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じた断面位置に関する断面画像を表示する、
請求項5記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じて前記マップ上の断面位置マークを移動させる、請求項8記載の画像処理装置。
【請求項10】
ユーザからの指示に従って前記表示されている断面画像の時相の変更操作をする操作部をさらに備え、
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じた時相に関する断面画像を表示する、
請求項5記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記表示部は、前記変更操作の操作量に応じて前記マップ上の断面時相マークを移動させる、請求項10記載の画像処理装置。
【請求項12】
コンピュータに、
複数の時相に関する複数のボリュームデータセットのそれぞれから血管領域を抽出する機能と、
前記抽出された血管領域の芯線に略直交する複数の断面のそれぞれについて、前記血管領域の形状に基づいて血管性状を表す指標値を算出する機能と、
前記算出された指標値を時系列解析する機能と、
前記時系列解析の解析結果を表示する機能と、
を実現させる狭窄状態解析プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2010−136933(P2010−136933A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−317291(P2008−317291)
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月12日(2008.12.12)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]