説明

画像処理装置及び画像処理方法

【課題】画像処理に長時間を要する場合であっても、ユーザ入力に対して応答性の高い画像処理装置を提供する。
【解決手段】RAW画像データ、及びRAW画像に関連付けられた簡易画像データを記憶する記憶装置と、記憶装置に記憶されたRAW画像データの出力を要求する場合に部分領域毎に出力要求を行う出力制御部と、出力制御部からの出力要求を受けたことに応じて記憶されているRAW画像データの画像全域に対するRAW現像処理を行う画像処理部とを備える。画像処理部は、出力要求に対して、RAW現像処理が完了するまでは部分領域に対応する簡易画像データを出力し、RAW現像処理が完了した後は部分領域に対応する現像処理されたRAW画像データを出力し、出力制御部は、画像処理部から部分領域に対応する画像データが出力された後、キャンセル要求がなければ次の部分領域の出力要求を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データを処理して出力する画像処理装置及び画像処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータなどで画像データに係る画像をユーザが閲覧する際に、その画像データがパーソナルコンピュータで表示するのに適した形式のものであればレスポンス良くユーザの欲する画像を表示することができる。しかし、画像処理を行った後でないと画像を表示することができない画像データが存在する。そのような画像データとして、例えば、一眼レフタイプのデジタルカメラで現在一般的なRAW撮影モードでの撮影によって得られたRAW画像データがある。RAW画像データに係る画像(RAW画像)をパーソナルコンピュータで表示するには、BMP形式などのパーソナルコンピュータで表示可能な形式を生成するために、多くの処理ステップからなる画像処理を行う必要がある。このような画像処理は一般にRAW現像と呼ばれている。
【0003】
RAW画像データは、カメラベンダ毎に好ましい画像処理内容が異なり、また各カメラベンダ独自のフォーマットで記録される。そのため、各カメラベンダが画像処理を行うためのコーデックを配布し、ユーザがこのコーデックをパーソナルコンピュータにインストールして使用する。例えば、画像ブラウジングソフトウェアでRAW画像を表示する場合には、RAW画像データに対応するインストールされたコーデックを利用してRAW現像を行いRAW画像の表示を行っている。
【0004】
画像ブラウジングソフトウェアには、ユーザ操作のレスポンスを良くするために、画像全体に対するRAW現像要求を発行せずに、コーデックに対して1ラインなどの部分的な領域毎の現像要求(部分現像要求)を発行するものがある。このようにして、ユーザがRAW画像の表示をキャンセルした際に、RAW現像処理を直ぐに中断し、CPUやメモリの無駄な消費を減少させる試みが行われている。
【0005】
ユーザ操作へのレスポンスを向上する他の技術として、画像処理に時間を要し、ユーザに高速に処理結果を返すことができない場合に、解像度の低いサムネイル画像を一時的に表示する画像処理装置も存在する(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−374482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、コーデックが部分現像できない場合には、画像ブラウジングソフトウェアからの部分現像要求に対して高速に制御を戻すことができず、ユーザ入力を阻害し応答性の悪い画像処理装置になってしまうという問題がある。部分現像を行えるか否かは、RAW現像処理の画像処理アルゴリズムの内容による。つまり、画像処理アルゴリズムによっては、画像全域の情報を参照して行う処理を有する場合がある。このような画像全域の情報を参照して処理を行う処理ブロックが処理フローの後段に位置すると、たとえ部分現像処理を行ったとしても画像全域の情報を参照して行う処理ブロックでの処理を待たねばならず、結局は高速に結果出力をすることができない。また、特許文献1のように解像度の低い画像を一旦返したとしても、それはユーザが欲する表示結果でないので、すぐにRAW現像の結果が必要となるために、同様の課題が存在する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、画像処理に長時間を要する場合であっても、ユーザ入力に対して応答性の高い画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の画像処理装置は、画像処理された後に出力される第1の画像データ、及び前記第1の画像データより低解像であって画像処理されている第2の画像データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶された前記第1の画像データの出力を要求する場合に、部分領域毎に出力要求を行う出力制御手段と、前記出力制御手段からの出力要求を受けたことに応じて、前記記憶手段に記憶された前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理を行う画像処理手段とを備え、前記画像処理手段は、前記出力制御手段からの出力要求に対して、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了するまでは出力要求された前記部分領域に対応する前記第2の画像データを出力し、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了した後は出力要求された前記部分領域に対応する画像処理された前記第1の画像データを出力し、前記出力制御手段は、前記画像処理手段から前記部分領域に対応する画像データが出力された後、外部からの要求がなければ次の部分領域の出力要求を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、第1の画像データの画像処理を実行中に外部からの要求があった場合には、不要となる画像処理を中止してリソースを解放することができ、ユーザ入力に対する応答性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
【図2】第1の実施形態における画像出力処理を示すフローチャートである。
【図3】第2の実施形態における現像結果出力処理を示すフローチャートである。
【図4】第3の実施形態における画像出力処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置の構成例を示す図である。
図1において、101は本実施形態に係る画像処理装置を実現するコンピュータ装置100全体を制御する制御部である。制御部101は、画像データに所定の画像処理を施す画像処理部114、及び画像データに係る画像の出力(表示)の制御等を行う出力制御部115を有する。制御部101は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、RAM103に格納された処理プログラムを実行することにより画像処理部114や出力制御部115の機能を実現する。
【0014】
102は変更を必要としないプログラムやパラメータを格納するROM(Read Only Memory)である。103は外部装置等から供給されるプログラムやデータを一時記憶するRAM(Random Access Memory)である。104は外部記憶装置である。外部記憶装置104には、コンピュータ装置100に固定して設置されたハードディスクやメモリカードなどが含まれる。また、外部記憶装置104には、コンピュータ装置100から着脱可能なフレキシブルディスク、CD(Compact Disk)等の光ディスク、磁気や光カード、ICカードなどが含まれる。
【0015】
105はユーザの操作を受け、データ等を入力するポインティングデバイスやキーボード等の入力デバイス109とのインターフェイス(操作入力インターフェイス)である。106はコンピュータ装置100が保持するデータや供給されたデータ等を表示するためのディスプレイ110とのインターフェイス(表示インターフェイス)である。107はインターネット等のネットワーク回線111に接続するためのネットワークインタフェイスである。108は画像データを入力する画像入力デバイス112とのインターフェイス(画像入力インターフェイス)である。
【0016】
113は複数のRAW画像ファイルから構成されるRAWファイル群である。RAWファイル群113は、画像入力デバイス112でユーザが予め撮影したRAW画像データが画像入力インターフェイス108を介して転送されたり、ネットワーク回線111からユーザが取得して外部記憶装置104にファイルとして記憶されたものである。なお、本実施形態におけるRAW画像ファイルは、ファイル内部にRAW画像データ(第1の画像データ)が格納される。また、RAW画像データとともに画像入力デバイス112等により現像処理済みの低解像画像データ(第2の画像データ)がファイル内部に格納され、これに必要に応じて処理を行ったものが簡易画像として出力される。簡易画像は、例えばJPEG画像である。116は各ユニット101〜108を通信可能に接続するシステムバスである。
【0017】
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態における画像出力処理の一例を示すフローチャートである。図2に示す画像出力処理は、図1に示した本実施形態に係る画像処理装置の制御部101がRAM103に格納された制御プログラムを実行することにより実行される。ユーザがポインティングデバイスやキーボード等の入力デバイス109を操作することにより、表示したいと欲するRAW画像データがRAW画像ファイル群113から選択されると、本実施形態における画像処理装置は処理を開始する。そして、選択された画像データに係る画像が例えば画像ブラウジングソフトウェアにより表示される。
【0018】
まず、ステップS201にて、出力制御部115は、処理すべきライン(部分領域)を1ライン目と決定し、その部分領域の出力要求を画像処理部114に対して発行する。ステップS202にて、画像処理部114は、ステップS201において出力制御部115から発行された出力要求を受信すると、RAM103に保持される(確保した)変数Nに1を設定する。次に、ステップS203にて、画像処理部114は、ワーカースレッドを生成する。なお、画像処理部114及び出力制御部115を含む制御部101は、マルチスレッド処理が可能である。制御部101は、ステップS203以降において、ステップS204〜S211及びS221〜S223の処理からなるメインスレッドと、ステップS212〜S218の処理からなるワーカースレッド201を同時実行するものとする。以下では、まずメインスレッドの処理について説明し、その後にワーカースレッドの処理について説明する。
【0019】
ステップS204にて、画像処理部114は、RAM103に保持される(確保した)現像完了フラグを参照し、値が1であるか否かを判定する。この現像完了フラグは、値が1の場合にはワーカースレッドによる画像全域のRAW現像処理が完了したことを示し、値が0の場合にはワーカースレッドによる画像全域のRAW現像処理が未完であることを示す。
【0020】
ステップS204での判定の結果、現像完了フラグの値が0の場合には(ステップS204のNo)、ステップS205へと処理を進める。ステップS205にて、画像処理部114は、メインスレッドの処理を所定時間スリープさせる(所定時間のウェイト処理を行う)。スリープさせる時間は、例えば画像全域のRAW現像処理時間や画像処理装置の操作方法等から適切な時間を決定すれば良い。続いて、ステップS206にて、画像処理部114は、選択されたRAW画像ファイルのRAW画像データ(第1の画像データ)と関連付けされて記憶されている現像処理済みの簡易画像データ(第2の画像データ)の現在のライン(ラインN)を出力する。
【0021】
一方、ステップS204での判定の結果、現像完了フラグの値が1の場合には(ステップS204のYes)、ステップS207へと処理を進める。ステップS207にて、画像処理部114は、ワーカースレッドによりRAW現像処理された結果の画像データをRAM103から参照し、現在のライン(ラインN)を現像結果として出力する。
【0022】
ステップS208にて、出力制御部115は、ステップS206又はステップS207において画像処理部114から出力されたラインNの画像データをディスプレイ110に表示させる。ステップS209にて、出力制御部115は、現在処理中のRAW画像の表示について、ユーザ操作によるキャンセル要求が入力されたか否かを判断する。判断の結果、キャンセル要求が入力されている(Yes)場合にはステップS221へと処理を進め、キャンセル要求が入力されていない(No)場合にはステップS210へと処理を進める。
【0023】
ステップ210にて、出力制御部115は、現在のラインがRAW画像の最終ラインであるか否かを判定する。ステップS210での判定の結果、現在のラインがRAW画像の最終ラインである場合には(ステップS210のYes)、画像全域を表示したことになるので、出力制御部115はステップS223へと処理を進める。一方、ステップS210での判定の結果、現在のラインがRAW画像の最終ラインでない場合には(ステップS210のNo)、出力制御部115はステップS211へと処理を進める。ステップS211にて、出力制御部115は、現在のラインNの表示を完了したので、次のラインへと処理を進めるためにRAM103に保持される変数Nを1だけインクリメントし、ステップS204に戻る。このようにしてRAW画像の最終ラインまで部分領域毎に出力要求を順次発行して前述の処理を繰り返す。
【0024】
ステップS209での判断の結果、キャンセル要求が入力されている(Yes)場合に進むステップS221にて、画像処理部114は、選択されたRAW画像データに係る処理のキャンセルを行うために、キャンセルフラグの値を1に設定する。ここでキャンセルフラグは、RAM403に保持される(確保した)変数であるものとし、値が1の場合にはユーザ操作によるキャンセル要求が入力されていることを示し、値が0の場合にはユーザ操作によるキャンセル要求の入力がないことを示す。
【0025】
ステップS222にて、画像処理部114は、ワーカースレッドの終了待ちのループ処理を行う。ワーカースレッドが終了すると(判定がYesになると)、ステップS223へと処理を進める。ステップS223にて、出力制御部115は、メインスレッドで確保したリソースを開放し、第1の実施形態における画像出力処理を終了する。
【0026】
ステップS203において、画像処理部114により生成されたワーカースレッド201は、ステップS212より画像全域に対するRAW現像処理を開始する。なお、本実施形態においてRAW現像処理は、一般的なRAW現像処理と同様に複数の処理ブロックから構成され、ここでは現像処理<1>〜<K>のK個の処理ブロックから構成されるものとする。
【0027】
ステップ212にて、画像処理部114は、現像処理<1>を実行する。ステップS213にて、画像処理部114は、選択されたRAW画像の表示がユーザ操作によりキャンセルされたことを示すキャンセルフラグを参照する。ステップS213での判定の結果、キャンセルフラグの値が1の場合には(ステップS213のYes)、ワーカースレッドによるRAW現像処理を行う必要がないので、画像処理部114は、以降のRAW現像処理をスキップし、ステップS218へと処理を進める。一方、ステップS213での判定の結果、キャンセルフラグの値が0の場合には(ステップS213のNo)、画像処理部114はステップS214へと処理を進める。
【0028】
ステップS214にて、画像処理部114は、現像処理<2>を実行する。ステップS215にて、画像処理部114は、ステップS213と同様にキャンセルフラグを参照する。ステップS215での判定の結果、キャンセルフラグの値が1の場合には(ステップS215のYes)、画像処理部114は、以降のRAW現像処理をスキップし、ステップS218へと処理を進める。一方、ステップS215での判定の結果、キャンセルフラグの値が0の場合には(ステップS215のNo)、図示していない複数の現像処理とキャンセルフラグの判定とを順に実行した後、ステップS216へと処理を進める。
【0029】
ステップS216にて、画像処理部114は、現像処理<K>を実行する。本実施形態ではRAW現像処理は現像処理<1>〜<K>のK個の処理ブロックから構成されるため、ステップS216において画像処理部114により実行される現像処理<K>の処理を終えた時点でRAW現像処理が完了したこととなる。なお、本実施形態において現像処理<K>は、レンズの歪みを補正するためのレンズ歪曲補正処理であるものとする。レンズ歪曲補正処理は画像全域にわたる幾何学的な演算が必要となる。また、RAW現像処理の前段で行うと幾何学的演算処理による誤差が発生し、これが後段の画像処理で累積していくので後段で行うことが望ましい。ステップ117にて、画像処理部114は、RAW現像処理を完了したため、現像完了フラグの値を1に設定する。
【0030】
ステップS218にて、画像処理部114は、RAW現像処理を完了したため、ワーカースレッドで確保したリソースをすべて開放する。なお、本実施形態において現像処理結果はRAM103上にメインスレッドにより確保された記憶領域に記憶されるものとし、ステップS218でのリソース開放後、現像処理結果は保持されるものとする。ステップS218の処理を実行した後、画像処理部114はワーカースレッドを終了する。
【0031】
第1の実施形態によれば、部分現像が不可能な画像処理アルゴリズムであっても、ユーザ操作によるRAW画像の表示のキャンセル要求を所定時間内で受け付けてワーカースレッドを開放し、リソースの開放を行うことができる。したがって、ユーザ操作に対して応答性の高い画像処理装置を提供することができる。また、所定時間毎にしか簡易画像を使用しないため、画像全体にわたって簡易画像を使用することはなく、ユーザ操作によるキャンセル要求がない場合には、画像の大部分において良好な現像処理結果を鑑賞することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
以下に説明する第2の実施形態は、前述した画像出力処理のステップS207において現像結果を出力する際に、画像処理部114が、すでに表示済みの簡易画像との境界部分について画像特性の違いを減じる処理を施すようにしたものである。図3は、第2の実施形態における画像出力処理のステップS207での現像結果出力処理の一例を示すフローチャートである。
【0033】
画像処理部114は、ラインNの画像を出力する際に(ステップS207)、ステップS301より処理を開始する。ステップS301にて、画像処理部114は、予めRAM103に記憶されているラインLを取得する。ここでラインLは、図2に示した画像出力処理におけるステップS206において出力されステップS208において表示されたラインの最終ラインを示すものとする。
【0034】
ステップS302にて、画像処理部114は、現在の出力ラインであるラインNとラインLとの差が予め定められた閾値Tの範囲内であるか否かを判定する。ステップS302での判定の結果、差が閾値T以上である(ラインの距離が遠い)場合には、境界部分での特性の段差には影響を与えないため、簡易画像と画像特性の異なる現像結果のラインNをそのまま出力するためにステップS307へと処理を進める。ステップS307にて、画像処理部114は、現像結果のラインNを現像結果として出力する。
【0035】
一方、ステップS302での判定の結果、差が閾値Tより小さい(ラインの距離が近い)場合には、簡易画像と画像特性の異なる現像結果のラインをそのまま出力してしまうと境界部分での特性の段差が目に見えてしまう。そのため、境界部分での特性の段差を目立たなくする処理を行うために、ステップS303へと処理を進める。なお、本実施形態において閾値Tは、例えば5とする。
【0036】
ステップS303にて、画像処理部114は、既に表示済みの簡易画像データの内の(N−1)ライン〜(N−T)ラインを取得する。ここでTは予め定められたローパスフィルタ(LPF)の適用範囲に該当し、本実施形態においては、ステップS302での閾値と同一の値を用いるものとする。なお、本実施形態では、境界部分での画像特性の段差を拡散するためにLPFを用いたフィルタ処理を施すものとするが、これに限られるものではない。例えば、簡易画像において横方向の解像度が低い場合には、画像特性を近づけるために、現像結果に対して横方向の解像度を低下させるような処理を行っても良い。
【0037】
ステップ304にて、画像処理部114は、現像結果データの内のNライン〜(N+T)ラインを取得する。ステップS305にて、画像処理部114は、ステップS303及びS304において取得した簡易画像の(N−1)ライン〜(N−T)ラインのデータと現像結果データのNライン〜(N+T)ラインのデータを用いて縦方向のLPF処理を施す。以上からLPFのタップ数は、中心の1ラインと上下の5ラインとを足して11タップということになる。係数としては、一般的に画像処理の暈かし処理で用いられているものと同様で構わない。ステップS306にて、画像処理部114は、LPF処理を施して得られた結果をラインNの現像結果として出力し、ステップS207での現像結果出力処理を終了する。
【0038】
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、RAW現像処理が終了した後に表示される現像結果と現像処理終了までに表示した簡易画像とで画像特性が違っている場合でも、境界部分の画像特性の差異が目立たない良好な表示画像が得られる。
【0039】
(第3の実施形態)
図4は、第3の実施形態における画像出力処理の一例を示すフローチャートである。図4に示す第3の実施形態における画像出力処理は、図2に示した第1の実施形態における画像出力処理とほぼ同様であるが、簡易画像の出力について制限する処理を追加したものである。この処理を追加することにより、画像上部などの限定された領域でのみ簡易画像が使用されるので、画像の中央付近など鑑賞する際に重要となる領域については、より高画質な現像結果を鑑賞することができる。
【0040】
図4に示すステップS401〜S404、S406〜S412、S421〜S423は、図2に示したステップS201〜S204、S205〜S211、S221〜S223にそれぞれ対応し、各ステップでの処理は同様であるので説明は省略する。また、図4に示すワーカースレッド401(ステップS413〜S419)も、図2に示したワーカースレッド201(ステップS212〜S218)と同様であるので説明は省略する。
【0041】
図4に示す画像出力処理のステップS405にて、画像処理部114は、現在のラインNが予め定められたラインより小さいか否かを判定する。例えば、処理するRAW画像は、縦方向3000ライン程度であると、上部30ライン程度であれば画像の端1%程度の領域であるため、簡易画像を用いても通常の鑑賞用としては問題はない。したがって、例えば、処理するRAW画像が縦方向3000ライン程度であれば、所定ラインは30とすれば良い。
【0042】
ステップS405での判定の結果、現在のラインNが所定のラインより小さい場合には(ステップS405のYes)、簡易画像を用いても鑑賞用として問題ないため、ステップS406以降の簡易画像のラインを出力する処理へと処理を進める。一方、ステップS405での判定の結果、現在のラインNが所定のライン以上の場合には(ステップS405のNo)、鑑賞用として重要なラインであるため、簡易画像の表示をせずに、ステップS404へと処理を進める。
【0043】
第3の実施形態によれば、鑑賞用として重要な領域については、簡易画像を用いないので、ユーザが鑑賞するにあたって十分な画質が確保された画像を表示可能な画像処理装置を提供することができる。
【0044】
なお、前述した実施形態では画像処理の内容としてRAW現像処理を一例として説明したが、これに限定されるものではなく、その他の時間のかかる画像処理であっても構わない。例えば、ノイズ除去処理を例とすれば、時間のかかる高性能ノイズ処理を行っている途中で、簡易画像として高速な簡易ノイズ処理実行結果を出力するようにしても良い。
【0045】
(本発明の他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、前述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【0046】
なお、前記実施形態は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化のほんの一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、又はその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0047】
101 制御部、103 RAM、104 外部記憶装置、113 RAWファイル群、114 画像処理部、105 出力制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像処理された後に出力される第1の画像データ、及び前記第1の画像データより低解像であって画像処理されている第2の画像データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された前記第1の画像データの出力を要求する場合に、部分領域毎に出力要求を行う出力制御手段と、
前記出力制御手段からの出力要求を受けたことに応じて、前記記憶手段に記憶された前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理を行う画像処理手段とを備え、
前記画像処理手段は、前記出力制御手段からの出力要求に対して、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了するまでは出力要求された前記部分領域に対応する前記第2の画像データを出力し、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了した後は出力要求された前記部分領域に対応する画像処理された前記第1の画像データを出力し、
前記出力制御手段は、前記画像処理手段から前記部分領域に対応する画像データが出力された後、外部からの要求がなければ次の部分領域の出力要求を行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記画像処理手段が出力要求された前記部分領域に対応する前記第2の画像データを出力する場合には、所定時間のウェイト処理を行った後に出力することを特徴とする請求項1記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記画像処理手段は、予め設定された領域については、出力要求された前記部分領域に対応する前記第2の画像データを出力せずに、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了をした後に出力要求された前記部分領域に対応する画像処理された前記第1の画像データを出力することを特徴とする請求項1又は2記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像処理手段は、出力要求された前記部分領域に対応する画像処理された前記第1の画像データを出力する場合には、出力されている前記第2の画像データとの境界部分における画像処理された前記第1の画像データに対して画像特性の違いを減じる処理を施して出力することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記第1の画像データがRAW画像データであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記第1の画像データに行う画像処理がRAW現像処理であることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記第2の画像データが、前記第1の画像データに係るJPEG画像であることを特徴とする請求項5記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記第1の画像データに行う画像処理には、レンズの歪曲を補正するためのレンズ歪曲補正処理が含まれていることを特徴とする請求項1〜7の何れか1項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
画像処理された後に出力される第1の画像データ、及び前記第1の画像データより低解像であって画像処理されている第2の画像データを記憶する記憶手段に記憶されている前記第1の画像データの出力を要求する場合に、部分領域毎に出力要求を行う出力制御工程と、
前記出力制御工程による出力要求を受けたことに応じて、前記記憶手段に記憶された前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理を行う画像処理工程とを有し、
前記画像処理工程では、前記出力制御工程での出力要求に対して、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了するまでは出力要求された前記部分領域に対応する前記第2の画像データを出力し、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了した後は出力要求された前記部分領域に対応する画像処理された前記第1の画像データを出力し、
前記出力制御工程では、前記画像処理工程にて前記部分領域に対応する画像データが出力された後、外部からの要求がなければ次の部分領域の出力要求を行うことを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
画像処理された後に出力される第1の画像データ、及び前記第1の画像データより低解像であって画像処理されている第2の画像データを記憶する記憶手段に記憶されている前記第1の画像データの出力を要求する場合に、部分領域毎に出力要求を行う出力制御ステップと、
前記出力制御ステップによる出力要求を受けたことに応じて、前記記憶手段に記憶された前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理を行う画像処理ステップとをコンピュータに実行させ、
かつ前記画像処理ステップでは、前記出力制御ステップでの出力要求に対して、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了するまでは出力要求された前記部分領域に対応する前記第2の画像データを出力し、前記第1の画像データの画像全域に対する画像処理が完了した後は出力要求された前記部分領域に対応する画像処理された前記第1の画像データを出力し、
前記出力制御ステップでは、前記画像処理ステップにて前記部分領域に対応する画像データが出力された後、外部からの要求がなければ次の部分領域の出力要求を行うことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−234425(P2012−234425A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−103506(P2011−103506)
【出願日】平成23年5月6日(2011.5.6)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】