説明

画像処理装置及び画像形成装置

【課題】高濃度の網点領域であっても、当該領域を網点と正確に判定できるようにする。
【解決手段】画像処理装置において、領域判定の対象とする画像に対して反転処理を行う反転処理部113、反転処理部113によって反転処理された画像の判定対象領域内において主走査方向に並ぶ画素の変化点数と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数と、主走査方向に対して予め定められた角度を有する第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数と、当該第1の斜め方向に略直交する第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数とをそれぞれ算出する変化点数算出部112と、変化点数算出部112により算出された前記4つの変化点数の全てが、予め定められたそれぞれの閾値以上である場合は、当該判定対象領域を網点と判定する網点領域判定部114とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及び画像形成装置に関し、特に、画像における網点を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、2値画像について網点の検出を行う画像処理装置が複写機等に適用されている(下記特許文献1参照)。この特許文献1に示される画像処理装置は、主走査方向に並ぶN×1サイズ分の判定対象領域において、主走査方向に並ぶ複数の画素の変化点数を算出し、当該算出された変化点数が閾値以上である場合には、当該判定対象領域を網点と判定する。
【特許文献1】特開2004−112222号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、高濃度の網点領域では、網点の数が多くなるか、或いは、網点のサイズが大きくなっているために、隣接する網点同士が繋がった状態となっているため、このような場合に、上記特許文献1に示される画像処理装置によって網点領域の検出を試みても、上記主走査方向における画素の変化点数が、網点領域であるにも拘わらず小さい値で算出されるおそれがある。そのため、上記特許文献1に示される画像処理装置によっては、高濃度の網点領域を検出できない場合がある。
【0004】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、高濃度の網点領域であっても、当該領域を網点と正確に判定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、領域判定の対象とする2値画像に対して反転処理を行う反転処理手段と、
前記反転処理手段によって反転処理された2値画像の判定対象領域内において主走査方向に並ぶ画素の変化点数と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数と、主走査方向に対して予め定められた角度を有する第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数と、当該第1の斜め方向に略直交する第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数とをそれぞれ算出する変化点数算出手段と、
前記変化点数算出手段により算出された前記主走査方向における変化点数が当該主走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記副走査方向における変化点数が当該副走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第1の斜め方向における変化点数が当該第1の斜め方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第2の斜め方向における変化点数が当該第2の斜め方向における変化点数用の閾値以上であるという全ての条件を満たした場合に、当該判定対象領域を網点と判定する網点領域判定手段と
を備える画像処理装置である。
【0006】
高濃度の網点領域(一定領域内において低濃度の網点領域よりも網点の数が多い、又は網点のサイズが大きい)の場合、隣接する網点同士が繋がってしまい、網点であるにも拘わらず、判定対象領域内における変化点数が小さい値で算出され、網点と判定されないおそれがあるが、この構成によれば、判定対象領域の画像が反転され、この反転された画像に対して変化点数算出手段により上記変化手数の算出を行い、この反転させた画像について網点領域判定手段による上記網点判定を行うことで、高濃度の網点領域であっても、当該領域を網点であると正確に判定することができる。
【0007】
また、網点領域判定手段は、上記4方向における画素の変化点数を用いて、判定対象領域が網点か否かを判定するので、必要な構成を特に複雑にすることなく、従来の主走査方向における画素の変化点数のみに基づいて網点を判定する場合よりも、正確に網点を検出することができる。
【0008】
請求項2記載の発明は、領域判定の対象とする多値画像に対してエッジ抽出処理を行うエッジ抽出処理手段と、
前記エッジ抽出処理手段によってエッジ抽出処理された画像に対して反転処理を行う反転処理手段と、
前記反転処理手段によって反転処理された画像を2値化処理する2値化処理手段と、
前記2値化処理手段によって2値化された2値画像の判定対象領域内において主走査方向に並ぶ画素の変化点数と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数と、主走査方向に対して予め定められた角度を有する第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数と、当該第1の斜め方向に略直交する第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数とをそれぞれ算出する変化点数算出手段と、
前記変化点数算出手段により算出された前記主走査方向における変化点数が当該主走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記副走査方向における変化点数が当該副走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第1の斜め方向における変化点数が当該第1の斜め方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第2の斜め方向における変化点数が当該第2の斜め方向における変化点数用の閾値以上であるという全ての条件を満たした場合に、当該判定対象領域を網点と判定する網点領域判定手段と
を備える画像処理装置である。
【0009】
この構成によれば、請求項1に記載の発明と同様の作用に加え、次の作用が得られる。判定対象領域の多値画像は、エッジ抽出処理手段によってエッジ抽出処理が施されて網点の輪郭が明確にされた後に、反転処理手段によって反転処理が施され、更に2値化処理手段によって2値化された2値エッジ画像とされるため、従来、単に2値化しただけでは、変化点の検出及び当該変化点数の算出が困難であった多値画像(カラー画像や多段階グレースケール等)についても、判定対象領域に現れる上記変化点を顕在化させて、当該変化点の数を正確に算出することができる。
【0010】
また、本発明によれば、2値化処理手段によって2値化された2値画像に基づいて、変化点数算出手段による変化点数の算出、及び網点領域判定手段による網点判定が行われるので、多値画像用のラインバッファが不要となり、回路構成を大幅に削減できる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置であって、領域判定の対象とする前記反転処理手段による反転処理が行われた画像と、当該反転処理がされていない元の画像の両画像について、エッジ数をカウントするエッジカウント手段を更に備え、
前記変化点数算出手段は、前記反転処理後の画像と前記元画像の両画像について、前記4方向の前記変化点数を当該各画像毎に算出し、
前記網点領域判定手段は、前記反転処理後の画像と前記元画像のうち、前記エッジカウント手段によってカウントされたエッジ数の少ない方についての前記網点か否かの判定結果を、当該判定対象領域についての前記網点か否かの判定結果とするものである。
【0012】
この構成によれば、網点領域判定手段が、反転処理後の画像と元画像のうち、エッジカウント手段によってカウントされたエッジ数の少ない方についての判定結果を、当該判定対象領域についての前記網点か否かの判定結果とするので、判定対象領域の濃度に拘わらず、反転処理後の画像又は元画像のうち、正確性の高い網点判定結果が得られる方の画像についての判定結果が、網点領域判定手段の網点か否かの判定結果となる。これにより、網点領域判定手段は、当該判定領域の画像が網点であるか否かを、正確に判定することが可能になる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の画像処理装置であって、前記反転処理手段によって反転処理された画像に対して膨張処理を行う膨張処理手段を更に備え、
前記変化点数算出手段は、前記膨張処理手段による膨張処理がされた前記判定対象領域の画像について、前記4方向における前記変化点数をそれぞれ算出するものである。
【0014】
この構成によれば、変化点数算出手段は、前記反転処理手段及び膨張処理手段によって反転処理及び膨張処理がされた判定対象領域の画像について、前記4方向における変化点数をそれぞれ算出するので、判定対象領域に現れる上記変化点を更に顕在化させて、当該変化点の数を正確に算出することができる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置であって、前記網点領域判定手段による判定を終えた前記判定対象領域に対応する画像部分に対して膨張処理を行う第2の膨張処理手段を更に備えるものである。
【0016】
この構成によれば、網点判定を終えた判定対象領域に対応する画像部分に含まれる雑音成分を第2の膨張処理手段による膨張処理で除去することができる。
【0017】
請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の画像処理装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0018】
請求項1に記載の発明によれば、判定対象領域の画像が反転され、この反転された画像に対して変化点数算出手段により上記変化手数の算出を行い、この反転させた画像について網点領域判定手段による上記網点判定を行うことで、高濃度の網点領域であっても、当該領域を網点であると正確に判定することができる。
【0019】
また、網点領域判定手段は、上記4方向における画素の変化点数を用いて、判定対象領域が網点か否かを判定するので、必要な構成を特に複雑にすることなく、従来の主走査方向における画素の変化点数のみに基づいて網点を判定する場合よりも、正確に網点を検出することができる。
【0020】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明と同様の効果に加えて、更に、次の効果が得られる。請求項2に記載の発明は、従来、単に2値化しただけでは変化点の検出及び当該変化点数の算出が困難であった多値画像についても、判定対象領域に現れる上記変化点を顕在化させて、当該変化点の数を正確に算出することができる。また、多値画像用のラインバッファが不要となり、回路構成を大幅に削減できる。
【0021】
請求項3に記載の発明によれば、判定対象領域の濃度に拘わらず、反転処理後の画像又は元画像のうち、正確性の高い網点判定結果が得られる方の画像についての判定結果が、網点領域判定手段の網点か否かの判定結果とされる。これにより、請求項3に記載の発明によれば、当該判定領域の画像が網点であるか否かを、正確に判定することが可能になる。
【0022】
請求項4に記載の発明によれば、判定対象領域に現れる上記変化点を顕在化させて、当該変化点の数を正確に算出することができる。
【0023】
請求項5に記載の発明によれば、網点領域判定を終えた判定対象領域に対応する画像部分に含まれる雑音成分を第2の膨張処理手段による膨張処理で除去することができる。
【0024】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の発明が有する効果と同様の効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一例として、プリンタ機能を備えた複合機について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置の一例である複合機1の内部構成を概略的に示す断面図である。複合機1は、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能等の機能を兼ね備えたものである。この複合機1は、本体部2と、本体部2の左方に配設されたスタックトレイ3と、本体部2の上部に配設された原稿読取部5と、原稿読取部5の上方に配設された原稿給送部6とを有している。
【0026】
また、複合機1のフロント部には、操作部47が設けられている。この操作部47には、ユーザが印刷実行指示を入力するためのスタートキー471と、印刷部数等を入力するためのテンキー472と、各種複写動作の操作ガイド情報等を表示し、これら各種設定入力用にタッチパネル機能を有する液晶ディスプレイ等からなる表示部473と、表示部473で設定された設定内容等をリセットするリセットキー474と、実行中の印刷(画像形成)動作を停止させるためのストップキー475と、コピー機能、プリンタ機能、スキャナ機能及びファクシミリ機能を切り換えるための機能切換キー477が備えられている。
【0027】
原稿読取部5は、CCD(Charge Coupled Device)センサ及び露光ランプ等からなるスキャナ部51と、ガラス等の透明部材により構成された原稿台52及び原稿読取スリット53とを備える。スキャナ部51は、図略の駆動部によって移動可能に構成され、原稿台52に載置された原稿を読み取るときは、原稿台52に対向する位置で原稿面に沿って移動され、原稿画像を走査しつつ取得した画像データを制御部10(図2)へ出力する。また、原稿給送部6により給送された原稿を読み取るときは、原稿読取スリット53と対向する位置に移動され、原稿読取スリット53を介して原稿給送部6による原稿の搬送動作と同期して原稿の画像を取得し、その画像データを制御部10へ出力する。
【0028】
原稿給送部6は、原稿を載置するための原稿載置部61と、画像読み取り済みの原稿を排出するための原稿排出部62と、原稿載置部61に載置された原稿を1枚ずつ繰り出して原稿読取スリット53に対向する位置へ搬送し、原稿排出部62へ排出するための給紙ローラ(図略)、搬送ローラ(図略)等からなる原稿搬送機構63を備える。原稿搬送機構63は、さらに原稿を表裏反転させて原稿読取スリット53と対向する位置へ再搬送する用紙反転機構(図略)を備え、原稿の両面の画像を原稿読取スリット53を介してスキャナ部51から読取可能にしている。
【0029】
また、原稿給送部6は、その前面側が上方に移動可能となるように本体部2に対して回動自在に設けられている。原稿給送部6の前面側を上方に移動させて原稿台52上面を開放することにより、原稿台52の上面に読み取り原稿、例えば見開き状態にされた書籍等を操作者が載置できるようになっている。
【0030】
本体部2は、複数の給紙カセット461と、給紙カセット461から記録紙を1枚ずつ繰り出して記録部40へ搬送する給紙ローラ462と、給紙カセット461から搬送されてきた記録紙に画像を形成する記録部40とを備える。
【0031】
記録部40は、感光体ドラム43の表面から残留電荷を除電する除電装置421と、除電後の感光体ドラム43の表面を帯電させる帯電装置422と、スキャナ部51で取得された画像データに基づいてレーザ光を出力して感光体ドラム43表面を露光し、当該感光体ドラム43の表面に静電潜像を形成する露光装置423と、上記静電潜像に基づいて感光体ドラム43上に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の各色のトナー像を形成する現像装置44K,44Y,44M,44Cと、感光体ドラム43に形成された各色のトナー画像が転写されて重ね合わせされる転写ドラム49と、転写ドラム49上のトナー像を用紙に転写させる転写装置41と、トナー像が転写された用紙を加熱してトナー像を用紙に定着させる定着装置45とを備えている。なお、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色に対するトナーの供給は、図略のトナー供給容器(トナーカートリッジ)から行われる。また、記録部40を通過した記録紙をスタックトレイ3又は排出トレイ48まで搬送する搬送ローラ463,464等が設けられている。
【0032】
記録紙の両面に画像を形成する場合は、記録部40で記録紙の一方の面に画像を形成した後、この記録紙を排出トレイ48側の搬送ローラ463にニップされた状態とする。この状態で搬送ローラ463を反転させて記録紙をスイッチバックさせ、記録紙を用紙搬送路Lに送って記録部40の上流域に再度搬送し、記録部40により他方の面に画像を形成した後、記録紙をスタックトレイ3又は排出トレイ48に排出する。
【0033】
図2は、図1に示す複合機1の概略構成を示す機能ブロック図である。複合機1は、装置全体の動作制御を司る制御部10を備えており、この制御部10は、スキャナ部51等からなる原稿読取部5、原稿搬送機構63等からなる原稿給送部6、現像装置44等からなる記録部40、スタートキー471、テンキー472等の操作キーや表示部473等からなる操作部47、画像メモリ7、HDD8、ネットワークI/F部9及び画像処理部11が接続されている。
【0034】
画像メモリ7は、原稿読取部5によって読み取られた原稿(例えば網点原稿)の画像データ、あるいは、後述するネットワークI/F部9を介して図略の外部装置から送信されてきた画像データを一時的に記憶するメモリである。
【0035】
HDD(Hard Disk Drive)8は、原稿読取部5によって読み取られた原稿画像の画像
データ及び外部装置から送信されてきた画像データ並びに当該画像データに設定されている出力形式等が記憶される記憶装置である。
【0036】
ネットワークI/F部9は、ネットワークインタフェース(例えば10/100Base-TX)等を用い、LANなどのネットワークを介して接続された外部パーソナルコンピュータ等との間における種々のデータの送受信を行うものである。
【0037】
画像処理部(画像処理装置)11は、原稿読取部5による原稿の読み取りによって得られた原稿画像のデータ(画像データ)、又はネットワークI/F部9を介して外部のパーソナルコンピュータから得られた画像データに対する各種画像処理を行うものである。画像処理部11は、2値化処理部110と、判定対象領域選択部111と、変化点数算出部112と、反転処理部113と、網点領域判定部114と、膨張処理部115と、エッジ抽出処理部116と、フィルタ処理部118と、エッジカウント部119とを備える。
【0038】
エッジ抽出処理部116は、領域判定の対象となる多値画像に対してエッジ抽出処理を行い、領域判定処理用の画像を生成する。なお、エッジ抽出処理部116は、必ずしもフィルタ処理部118と別個に設けられていなくてはならないものではなく、フィルタ処理部118がエッジ抽出処理部116として機能するようにしてもよい。
【0039】
反転処理部113は、領域判定処理の対象とされる画像に対して反転処理を行う。なお、反転処理部113は、領域判定処理の対象とされる画像が多値画像の場合には、上記エッジ抽出処理部116によってエッジ抽出がされた画像に対して反転処理を行う。この反転処理部113による反転処理とは、一般手波にネガポジ反転処理と呼ばれる処理であり、256階調の濃度(0〜255)からなる画素の場合、元画像の画素値を、255−画素値で算出される画素値に変換する処理である。反転処理部113は、例えば、入力画素値0の場合は、反転処理後の画素値255とし(255−0=255)、入力画素値10の場合は、反転処理後の画素値245とする(255−10=245)。この反転処理は、領域判定処理の対象とされる画像について、内側エッジと外側エッジの両方を取るために行われる。
【0040】
2値化処理部110は、原稿読取部5から得られた画像データ、又は外部のパーソナルコンピュータから得られた画像データが多値のカラー画像データ又はグレースケール画像データからなる場合に、モノクロ画像印刷の必要に応じて、当該多値画像を2値化して2値画像(モノクロ画像データ)を生成する。また、本実施形態では、2値化処理部110は、モノクロ印刷時だけでなく、後述する領域判定処理を多値画像に対して行うときに、エッジ抽出処理部116によるエッジ抽出処理、又は当該エッジ処理と反転処理部113による反転処理の両方が施されて生成された領域判定処理用の画像を2値化する処理も行う。
【0041】
判定対象領域選択部111は、領域判定処理の対象とされる画像から生成された領域判定処理用の2値画像(上記2値化処理部110によって2値化された2値画像、或いは、原稿読取部5又は外部パーソナルコンピュータから2値画像が得られた場合は当該2値画像)から、画像処理の判定対象とする一部領域(以下、判定対象領域)を選択する。判定対象領域は、例えば、n×n個の画素からなる領域である。
【0042】
変化点数算出部112は、上記判定対象領域内において主走査方向に並ぶ画素の変化点数と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数と、第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数と、第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数とをそれぞれ算出する。この変化点数とは、当該各方向に並ぶ白及び黒の画素の白から黒への変化、及び黒から白への変化の数である。第1の斜め方向とは、例えば、主走査方向に対して時計回り方向に45度の角度となる方向である。第2の斜め方向とは、当該第1の斜め方向に略直交する方向である。但し、第1及び第2の斜め方向を、当該角度からなる方向に限定する意味ではない。変化点数算出部112は、反転処理部113によって反転処理された判定対象領域の画像と、当該反転処理がされていない判定対象領域の画像の両画像について、上記4方向の変化点数を、当該各画像毎に算出する。
【0043】
網点領域判定部114は、変化点数算出部112により算出された主走査方向における変化点数が当該主走査方向における変化点数用の閾値N1以上であり、前記副走査方向における変化点数が当該副走査方向における変化点数用の閾値N2以上であり、前記第1の斜め方向における変化点数が当該第1の斜め方向における変化点数用の閾値N3以上であり、前記第2の斜め方向における変化点数が当該第2の斜め方向における変化点数用の閾値N4以上であるという全ての条件を満たした場合に、当該判定対象領域を網点と判定する。この閾値N1乃至N4は、判定したい網点の細かさや、判定対象領域の大きさに応じて、適宜変更して設定される。また、網点領域判定部114は、網点領域判定部114による網点との判定が行われなかった判定対象領域を非網点領域(文字候補領域)と判定する。
【0044】
膨張処理部(膨張処理手段)115は、反転処理部113によって反転処理された画像に対して膨張処理を行う。なお、膨張処理部115は、必ずしも上記フィルタ処理部118と別個に設けられていなくてはならないものではなく、フィルタ処理部118が膨張処理部115として機能するようにしてもよい。
【0045】
フィルタ処理部(第2の膨張処理手段)118は、上記画像処理の対象となる画像を構成する個々の画素に対し、周辺の画素との間で演算を行うことで画像に特殊効果を与える画像処理を行う。この画像処理は、例えば、ぼかし、エッジの強調、エッジ抽出、膨張処理又は縮小処理による雑音処理、モザイク処理、あるいはポスタリゼーション等である。
【0046】
エッジカウント部(エッジカウント手段)119は、上記エッジ抽出処理部116によってエッジ抽出処理された領域判定の対象とされる画像であって、上記反転処理部113による反転処理が行われた画像と、当該反転処理がされていない元の画像の両画像について、エッジ数をカウントする。このエッジカウント部119によるエッジカウントとは、判定対象領域内の黒画素数又は白画素数のカウントである。上記エッジ抽出された画像を、2値化処理部110により、エッジ部のみを白画素、それ以外を黒画素になるように2値化する場合、エッジカウント部119は、エッジとして白画素数をカウントする。一方、2値化処理部110により、エッジ部のみを黒画素、それ以外を白画素になるように2値化する場合、エッジカウント部119は、エッジとして黒画素数をカウントする。網点領域判定部114は、上記反転処理後の画像と上記元画像のうち、エッジカウント部119によってカウントされたエッジ数の少ない方についての判定結果を、当該判定対象領域についての上記網点か否かの判定結果とする。
【0047】
当該画像処理部11での上記画像処理を終えた画像データは、記録部40等に出力される。
【0048】
制御部10は、複合機1の制御プログラムを記憶するROM(Read Only Memory)、一時的にデータを保管するRAM(Random Access Memory)、及び制御プログラム等を上記ROMから読み出して実行するマイクロ情報処理装置等からなり、操作部47において入力された指示情報や、複合機1の各所に設けられた各種センサからの検出信号に応じて装置全体の制御を行う処理を実行する。
【0049】
なお、画像処理部11及び画像処理部11に備えられる、2値化処理部110と、判定対象領域選択部111と、変化点数算出部112と、反転処理部113と、網点領域判定部114と、膨張処理部115と、エッジ抽出処理部、116と、フィルタ処理部118と、エッジカウント部119とは、それぞれ回路等からなるものでもよいが、制御部10が、HDD8等に記憶された画像処理プログラムに従って、画像処理部11及び上記各部として機能するものであってもよい。
【0050】
次に、変化点数算出部112による変化点のカウントを説明する。図3は、変化点数算出部112による変化点のカウントを示す図である。上述した4つの各方向(主走査方向、副走査方向、第1の斜め方向、第2の斜め方向)に並ぶ2値の画素の変化点について説明する。変化点は、上述したように、当該4つの各方向に並ぶ白及び黒の画素の白から黒への変化、及び黒から白への変化の数である。図3では、黒丸と、黒四角と、左上がり斜め菱形と、右上がり斜め菱形との記号により、それぞれ、主走査方向の変化点と、副走査方向の変化点と、第1の斜め方向の変化点と、第2の斜め方向の変化点とを示している。なお、図3の判定対象領域の画像SIにおいて、例えば、黒画素(1)はハッチングで示し、白画素(0)はハッチングを付さずに示している。
【0051】
画像SIは、主走査方向と副走査方向との互いに直交する2つの方向に、二次元的に画素が並んで構成されている。変化点数算出部112は、図3に示すように、判定対象領域の画像SIについて、上記4つの各方向における変化点数を算出する。図3では、主走査方向変化点合計は14、副走査方向変化点合計は13、第1の斜め方向変化点合計は3、第2の斜め方向変化点合計は6である。
【0052】
次に、複合機1における領域判定処理を説明する。図4は、複合機1における領域判定処理の流れを示すフローチャートである。図5は比較的薄い濃度の領域判定処理用の2値画像を模式的に示す図、図6は比較的濃い濃度の領域判定処理用の2値画像を模式的に示す図、図7は比較的濃い濃度の領域判定処理用の2値画像を反転させた画像を模式的に示す図である。
【0053】
まず、エッジ抽出処理部116は、当該領域判定の対象となる画像が多値画像であると判断した場合(S1でYES)、当該領域判定の対象となる多値画像(原画像)から、エッジ抽出処理を施した領域判定処理用の画像を生成する(S2)。更に反転処理部113が、当該エッジ抽出処理後の領域判定処理用の画像に対して上述した反転処理を行い(S3)、領域判定処理用の反転画像を、上記領域判定の対象となる元画像とは別個に更に生成する。すなわち、この時点では、当該領域判定の対象となる元画像と、反転処理が施された領域判定処理用の反転画像とが併存する。続いて、膨張処理部115は、当該生成された反転画像に対しては膨張処理を行う(S4)。2値化処理部110は、当該領域判定の対象となる元画像及び反転画像の両方を2値化する(S5)。
【0054】
なお、当該領域判定の対象となる画像が2値画像である場合には(S1でNO)、領域判定の対象となる2値画像に対して、反転処理部113が反転処理を行い(S18)、領域判定処理用の反転画像を、上記領域判定の対象となる元画像とは別個に更に生成する。すなわち、この時点では、領域判定の対象となる元画像と、反転処理が施された領域判定処理用の反転画像とが併存する。膨張処理部115は、当該生成された反転画像に対しては膨張処理を行う(S19)。
【0055】
そして、判定対象領域選択部111は、上記領域判定処理用の元画像及び反転画像の一部を、それぞれ判定対象領域として選択する(S6)。エッジカウント部119は、上記判定対象領域として選択された元画像及び反転画像についてエッジ数をカウントする(S7)。
【0056】
変化点数算出部112は、上記判定対象領域とされた元画像及び反転画像の両画像について、主走査方向に並ぶ画素の変化点数A1と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数A2と、第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数B1と、第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数B2とをそれぞれ算出する(S8)。
【0057】
網点領域判定部114は、上記判定対象領域とされた元画像及び反転画像の両画像のそれぞれについて、S8で算出された主走査方向に並ぶ画素の変化点数A1が主走査方向における変化点数用の閾値N1以上であるか、副走査方向に並ぶ画素の変化点数A2が副走査方向における変化点数用の閾値N2以上であるか、第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数B1が第1の斜め方向における変化点数用の閾値N3以上であるか、第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数B2が第2の斜め方向における変化点数用の閾値N4以上であるかを判定する(S9)。
【0058】
そして、網点領域判定部114は、上記判定対象領域とされた元画像又は反転画像のいずれが、エッジカウント部119によるエッジカウント数が小さいかを判断し、エッジカウント数が小さい方の画像についてのS9の判定結果を、当該判定対象領域の画像が網点であるか否かの判定結果とする。すなわち、網点領域判定部114は、エッジカウント数が小さい方の画像についてのS9の判定結果が、A1≧N1、A2≧N2、B1≧N3、B2≧N4の全ての条件が満たされているものである場合(S10でYES)、当該判定対象領域を網点と判定する(S11)。
【0059】
例えば、網点領域判定部114による上記判定対象領域とされた元画像の判定には、元画像用の予め定められた第1の閾値を用いる。例えば、図5に示すように、判定対象領域の画像SIには、網点の輪郭が明確に現れ、変化点数算出部112は、顕在化している変化点を正確に算出することができる。
【0060】
一方、網点領域判定部114による上記判定対象領域とされた反転画像の判定には、反転画像用に予め定められた第2の閾値(第1の閾値とは別個)を用いる。例えば、図6に示すように、濃度が所定濃度よりも濃い網点領域は、一定領域内の網点が多いか又は大きくなることにより、隣接する網点同士が接触して、各網点の輪郭が明確には現れず、変化点数算出部112は、顕在化している変化点を正確に算出できない場合がある。このとき、反転処理を行わずに元画像に対して上記第1の閾値Nを用いた網点領域判定部114による網点判定処理を行うと、網点領域であるにも拘わらず、網点領域と判定されない虞がある。そのため、反転処理部113が領域判定処理用2値画像を反転させ、例えば図7に示すような反転画像に対して網点領域判定部114による網点判定処理を行う。この場合、変化点数算出部112は、当該明確化された網点により顕在化した画素の変化点を正確に算出することができるが、変化点数算出部112は反転されて濃度が薄くなった画像に対して変化点数算出を行うことになるので、上記第1の閾値を用いて網点領域判定を行うと、当該判定対象領域が網点領域であるにも拘わらず、網点領域と判定されないことになる。そのため、上記反転画像に対して網点領域判定部114による網点判定処理を行う場合は、第1の閾値とは異なる第2の閾値を用いる(例えば、第2の閾値として第1の閾値よりも小さな値が用いられる)。
【0061】
この後、フィルタ処理部118が、当該領域判定の対象となっている原画像(多値画像又は2値画像)の一部領域であって、当該網点と判定された判定対象領域に対応する領域に対して膨張処理を行う(S12)。この後、網点領域判定部114は、領域判定の対象となっている原画像の一部領域であって、当該膨張処理が行われた領域を、網点領域とする(S13)。
【0062】
一方、網点領域判定部114は、エッジカウント数が小さい方の画像についてのS9の判定結果が、A1≧N1、A2≧N2、B1≧N3、B2≧N4の全ての条件を満たしていない場合(S10でNO)、当該判定対象領域を非網点と判定する(S15)。このように非網点と判定された場合は、当該領域判定の対象となっている原画像の一部領域であって、当該非網点と判定された判定対象領域に対応する領域に対して、フィルタ処理部118が膨張処理を行う(S16)。この後、網点領域判定部114は、領域判定の対象となっている原画像の一部領域であって、当該膨張処理が行われた領域を、文字候補領域とする(S17)。
【0063】
S13,S17の処理後、判定対象領域選択部111は、当該領域判定処理用の画像に、上記各処理を行う判定対象領域とすべきデータ部分が残っているかを判断し(S14)、判定対象領域とすべきデータ部分が残っていると判断した場合は(S14でYES)、処理はS6に戻る。判定対象領域選択部111が、判定対象領域とすべきデータ部分が残っていないと判断した場合は(S14でNO)、処理は終了する。なお、当該領域判定処理を終えた原画像は、別の画像処理の対象とされるか、又は印刷のために記録部40に送られる。
【0064】
なお、本発明は上記実施の形態の構成に限られず種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、図4のS2乃至S5、又はS18及びS19において、元原画像に対する反転処理及び膨張処理等を、原画像の全体に対して行うものとしているが、これらの処理は、判定対象領域選択部111が元画像から判定対象領域を選択した後に、当該選択された判定対象領域毎に行うようにしてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、複合機1の画像処理部11は、上記領域判定処理において、当該領域判定の対象となっている原画像の一部領域であって、当該判定対象領域に対応する領域に対して、S4,S19,S12,S16の膨張処理を行っているが、この膨張処理を行わずに処理を終了するものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る複合機を示す図である。
【図2】図1に示す複合機の概略構成を示す機能ブロック図である。
【図3】変化点数算出部による変化点のカウントを示す図である。
【図4】複合機における領域判定処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】比較的薄い濃度の領域判定処理用の2値画像を模式的に示す図である。
【図6】比較的濃い濃度の領域判定処理用の2値画像を模式的に示す図である。
【図7】比較的濃い濃度の領域判定処理用の2値画像を反転させた画像を模式的に示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 複合機(画像形成装置)
11 画像処理部(画像処理装置)
111 判定対象領域選択部
110 2値化処理部(2値化処理手段)
112 変化点数算出部(変化点数算出手段)
113 反転処理部(反転処理手段)
114 網点領域判定部(網点領域判定手段)
115 膨張処理部(膨張処理手段)
116 エッジ抽出処理部(エッジ抽出処理手段)
118 フィルタ処理部(第2の膨張処理手段)
119 エッジカウント部(エッジカウント手段)
SI 選択画像(判定対象領域の2値画像)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
領域判定の対象とする2値画像に対して反転処理を行う反転処理手段と、
前記反転処理手段によって反転処理された2値画像の判定対象領域内において主走査方向に並ぶ画素の変化点数と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数と、主走査方向に対して予め定められた角度を有する第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数と、当該第1の斜め方向に略直交する第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数とをそれぞれ算出する変化点数算出手段と、
前記変化点数算出手段により算出された前記主走査方向における変化点数が当該主走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記副走査方向における変化点数が当該副走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第1の斜め方向における変化点数が当該第1の斜め方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第2の斜め方向における変化点数が当該第2の斜め方向における変化点数用の閾値以上であるという全ての条件を満たした場合に、当該判定対象領域を網点と判定する網点領域判定手段と
を備える画像処理装置。
【請求項2】
領域判定の対象とする多値画像に対してエッジ抽出処理を行うエッジ抽出処理手段と、
前記エッジ抽出処理手段によってエッジ抽出処理された画像に対して反転処理を行う反転処理手段と、
前記反転処理手段によって反転処理された画像を2値化処理する2値化処理手段と、
前記2値化処理手段によって2値化された2値画像の判定対象領域内において主走査方向に並ぶ画素の変化点数と、副走査方向に並ぶ画素の変化点数と、主走査方向に対して予め定められた角度を有する第1の斜め方向に並ぶ画素の変化点数と、当該第1の斜め方向に略直交する第2の斜め方向に並ぶ画素の変化点数とをそれぞれ算出する変化点数算出手段と、
前記変化点数算出手段により算出された前記主走査方向における変化点数が当該主走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記副走査方向における変化点数が当該副走査方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第1の斜め方向における変化点数が当該第1の斜め方向における変化点数用の閾値以上であり、前記第2の斜め方向における変化点数が当該第2の斜め方向における変化点数用の閾値以上であるという全ての条件を満たした場合に、当該判定対象領域を網点と判定する網点領域判定手段と
を備える画像処理装置。
【請求項3】
領域判定の対象とする前記反転処理手段による反転処理が行われた画像と、当該反転処理がされていない元の画像の両画像について、エッジ数をカウントするエッジカウント手段を更に備え、
前記変化点数算出手段は、前記反転処理後の画像と前記元画像の両画像について、前記4方向の前記変化点数を当該各画像毎に算出し、
前記網点領域判定手段は、前記反転処理後の画像と前記元画像のうち、前記エッジカウント手段によってカウントされたエッジ数の少ない方についての前記網点か否かの判定結果を、当該判定対象領域についての前記網点か否かの判定結果とする請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記反転処理手段によって反転処理された画像に対して膨張処理を行う膨張処理手段を更に備え、
前記変化点数算出手段は、前記膨張処理手段による膨張処理がされた前記判定対象領域の画像について、前記4方向における前記変化点数をそれぞれ算出する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記網点領域判定手段による判定を終えた前記判定対象領域に対応する画像部分に対して膨張処理を行う第2の膨張処理手段を更に備える請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の画像処理装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−294677(P2008−294677A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−137140(P2007−137140)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】