説明

画像処理装置

【課題】ぶれとぼけ(撮像装置の解像度不足によるぼけを含む)の両方の画像劣化要因を除去できる画像処理装置を提供する。
【解決手段】複数の撮像画像を記憶する撮像画像記憶部2Aと、記憶した連続する2つの撮像画像からオプティカルフローを算出するオプティカルフロー算出部3と、算出したオプティカルフローに基づいて画像のぶれ度合い表すぶれPSF値を算出するぶれPSF算出部4と、ぶれPSF値に基づいて撮像画像に対してぶれ除去処理するぶれ除去部5と、ぶれ除去画像を複数記憶するぶれ除去画像記憶部2Bと、ぶれ除去画像から画像のぼけ度合いを表すぼけPSF値を算出するぼけPSF算出部6と、複数のぶれ除去画像の画像間の位置ずれを算出しこの位置ずれ情報とぼけPSF値を用いた超解像処理によってぼけを除去した高解像度画像を生成するぼけ除去部8と、を備えて構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の劣化(ぶれ、ぼけ、解像度不足)を除去して鮮明な画像を生成可能な画像処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
撮影した画像には、画像の劣化要因として、ぶれやぼけ(カメラの解像度不足によるものを含む)が含まれることがある。このようなぶれやぼけを取除いて劣化のない画像を生成することを目的とした画像処理方法は、従来から提案されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載された画像処理手法は、車両の走行により画像に生じたぶれを補正することにより、ぶれのない画像を生成するもので、車両に搭載したカメラで連続して撮影した画像に基づいてオプティカルフローを算出し、このオプティカルフローにより画像のぶれ度合いを求めて画像を補正することにより、ぶれによる画像の劣化を除去して鮮明な画像を生成する。また、特許文献2に記載された画像処理手法は、複数の低解像度画像の位置合わせ処理により各低解像度画像の位置ずれ情報を取得し、取得した位置ずれ情報に基づいて、高解像度画像における各画素位置に複数の低解像度画像の各画素位置を当て嵌めるように複数の低解像度画像を合成することにより、ぼけや解像度不足による画像の劣化を除去して高解像度画像を生成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−318568号公報
【特許文献2】特開2008−109375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、実際に撮影された画像には、ぶれとぼけの両方が含まれていることが多い。ぶれとぼけの両方を含んだ画像の場合、特許文献1に記載された画像処理手法では、ぶれによる画像の劣化は除去できるが、ぼけ(解像度不足によるものを含む)に対しては何ら対処しておらず、ぼけによる画像の劣化は解消できないという問題がある。また、特許文献2に記載された画像処理手法では、ぶれが画像に含まれていると、画像間の位置ずれを高い精度で求めることが難しく、特に、各画像においてぶれ度合いが変化する場合には、位置ずれを高い精度で求めることがより困難であり、鮮明な高解像度画像が得られない虞れがあるという問題がある。
【0006】
本発明は上記問題点に着目してなされたもので、ぶれとぼけの両方を含んだ画像でも鮮明な画像を生成することができる画像処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明の画像処理装置は、撮像部により連続して撮像された少なくとも2つ以上の撮像画像を記憶可能な撮像画像記憶部と、該撮像画像記憶部に記憶された連続する2つの撮像画像に基づいて画像間のオプティカルフローを算出するオプティカルフロー算出部と、該オプティカルフロー算出部で算出したオプティカルフローに基づいて画像のぶれ度合い表すぶれPSF(ぶれ点拡がり関数)の値を算出するぶれPSF算出部と、前記算出したぶれPSF値に基づいて最新の撮像画像に対してぶれ除去処理するぶれ除去部と、該ぶれ除去部で得られたぶれ除去画像を複数記憶するぶれ除去画像記憶部と、前記撮像画像と前記ぶれ除去画像記憶部に記憶されたぶれ除去画像のいずれか一方の画像を用いて画像のぼけ度合いを表すぼけPSF(ぼけ点拡がり関数)の値を算出するぼけPSF算出部と、前記ぶれ除去画像記憶部に記憶された複数のぶれ除去画像の画像間の位置ずれを算出し、この位置ずれ情報と前記算出したぼけPSF値を用いた超解像処理によってぼけを除去した高解像度画像を生成するぼけ除去部と、を備えて構成したことを特徴とする。
【0008】
かかる構成では、撮像部により連続して撮像された少なくとも2つ以上の撮像画像を撮像画像記憶部に記憶し、撮像画像記憶部に記憶された撮像画像の連続する2つの撮像画像に基づいて画像間のオプティカルフローをオプティカルフロー算出部で算出し、この算出したオプティカルフローに基づいて画像のぶれ度合い表すぶれPSF(ぶれ点拡がり関数)の値をぶれPSF算出部で算出し、ぶれ除去部が、算出したぶれPSF値に基づいて最新の撮像画像に対してぶれ除去処理し、得られたぶれ除去画像をぶれ除去画像記憶部に複数記憶する。また、撮像画像とぶれ除去画像記憶部に記憶されたぶれ除去画像のいずれか一方の画像を用いて画像のぼけ度合いを表すぼけPSF(ぼけ点拡がり関数)の値をぼけPSF算出部で算出し、ぼけ除去部が、ぶれ除去画像記憶部に記憶された複数のぶれ除去画像の画像間の位置ずれを算出し、この位置ずれ情報と算出したぼけPSF値を用いた超解像処理によってぼけを除去した高解像度画像の生成を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明の画像処理装置によれば、撮像画像に対してぶれ除去処理を行ってぶれ除去画像を生成し、このぶれ除去画像の位置ずれ情報とぼけPSF値を用いた超解像処理によりぼけ除去処理を行ってぼけを除去し撮像画像より高解像度の画像を生成する構成としたので、ぶれとぼけの両方を含んだ撮像画像でも鮮明な画像を生成することができる。また、ぼけ除去過程で超解像処理を用いているので、画像の劣化要因として解像度不足によるぼけも除去され、より一層鮮明な画像を生成できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る画像処理装置の第1実施形態の構成を示すブロック図。
【図2】オプティカルフローの説明図。
【図3】PSFの例を示す図。
【図4】ぼけPSFの例を示す図。
【図5】第1実施形態の画像処理装置の画像処理理動作を説明するフローチャート。
【図6】本発明に係る画像処理装置の第2実施形態の構成を示すブロック図。
【図7】本発明に係る画像処理装置の第3実施形態の構成を示すブロック図。
【図8】オプティカルフローに基づく領域分割の説明図。
【図9】第3実施形態の画像処理装置の画像処理理動作を説明するフローチャート。
【図10】本発明に係る画像処理装置の第4実施形態の構成を示すブロック図。
【図11】第4実施形態の画像処理装置の画像処理理動作を説明するフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係る画像処理装置の第1実施形態を示す構成図である。
【0012】
図1において、本実施形態の画像処理装置は、撮像部1と、画像の記憶部2と、オプティカルフロー算出部3と、ぶれPSF(ぶれ点拡がり関数)算出部4と、ぶれ除去部5と、ぼけPSF(ぼけ点拡がり関数)算出部6と、データベース7と、ぼけ除去部8と、画像出力部9とを備えて構成される。
【0013】
前記撮像部1は、カメラやビデオ等の動画を撮像する撮像装置である。
【0014】
前記記憶部2は、撮像画像記憶部2Aと、ぶれ除去画像記憶部2Bとを備え、画像を記憶する。撮像画像記憶部2Aは、撮像部1で撮像した動画を連続する複数の時系列的な画像フレーム列として記憶する。ぶれ除去画像記憶部2Bは、後述するぶれ除去部5で生成されるぶれを除去したぶれ除去画像を記憶する。
【0015】
前記オプティカルフロー算出部3は、撮像画像記憶部2Aに記憶された連続する2つの画像フレーム(撮像画像)に基づいて画像間のオプティカルフローを算出するもので、従来公知の例えばブロックマッチング法やLucas−Kanade法等を用いてオプティカルフローを算出する。算出するオプティカルフローは、全画素に対して求めてもよく、一定間隔毎又はランダム間隔毎に求めてもよい。ここで、オプティカルフローについて図2を参照しながら簡単に説明する。例えば、図2の(A)と(B)が図の右から左へ移動する自動車等に固定したカメラで撮像した連続する2つの画像とする。オプティカルフローは、図2の(A)、(B)に示す連続する2つの画像間において、(A)の前画像におけるある画素或いはある領域が(B)の後画像においてどの方向にどれだけ移動したかを示すものであり、図2で撮影物体が固定されたものであるとすれば、2つの画像間では物体は相対的に自動車の進行方向とは反対方向に移動し、図2の(C)の矢印で示す方向のベクトル量として算出される。
【0016】
前記ぶれPSF算出部4は、オプティカルフロー算出部3で算出したオプティカルフローに基づいて画像のぶれ度合い表すぶれPSFの値を算出するもので、オプティカルフロー算出部3で算出した画像全体のオプティカルフローの方向及び長さの平均(図2(C)の各矢印の方向及び長さの平均)をそれぞれ算出し、この算出値をぶれPSF値とする。ここで、PSF(point spread function:点拡がり関数)は、例えば点を撮影したときにその点がどのように見えるかを表すものである。
【0017】
図3は、PSFの例である。図3の(A)はぶれ及びぼけを含まない点画像、(B)はぶれを含んだ点画像、(C)はぼけを含んだ点画像、(D)はぶれとぼけの両方を含んだ点画像である。
【0018】
前記ぶれ除去部5は、ぶれPSF算出部4で算出したぶれPSF値に基づいて最新の撮像画像、即ち、連続する2つの画像にうちの後の画像に対して、従来公知のLucy−Richardson法、Iterative back projection法等を用いてぶれ除去処理を行い、ぶれ除去画像を生成する。ぶれ除去部5で生成したぶれ除去画像は、記憶部2のぶれ除去画像記憶部2Bに記憶する。ぶれ除去画像記憶部2Bには、予め設定した複数のぶれ除去画像を記憶する。
【0019】
前記ぼけPSF算出部6は、ぶれ除去画像記憶部2Bに記憶されたぶれ除去画像を用いて画像のぼけ度合いを表すぼけPSF(ぼけ点拡がり関数)の値を算出する。具体的には、ぶれ除去画像記憶部2Bに記憶された複数のぶれ除去画像のうちの最新に記憶されたぶれ除去画像を例えばSobelフィルタやPrewittフィルタ等を用いてフィルタリングして微分画像を得る。この微分画像におけるx方向の微分画像dxとy方向の微分画像dyからエッジ強度(=(dx2+dy21/2)を算出する。尚、エッジ強度をdx2+dy2として算出してもよい。データベース7には、エッジ強度とぼけPSF値とを対応付けた対応データが予め記憶されており、前記対応データから、算出したエッジ強度に対応するぼけPSF値を検索してぼけPSF値を設定する。尚、PSF値はガウス関数やベッセル関数で表すことができ、データベース7には、ガウス関数やベッセル関数のパラメータをぼけPSF値として記憶する。ここで、画像のぼけ度合いとエッジ強度の関係は、画像がぼけていればぼけている程、エッジ強度は弱い。尚、ぼけPSF値の算出は、最新に記憶されたぶれ除去画像を用いるのが好ましいが、ぶれ除去画像記憶部2Bに記憶されたぶれ除去画像であればどの画像でもよい。
【0020】
図4は、ぼけPSFの例であり、図4の(A)のエッジ強度が最も強くぼけ度合いが最も小さい。そして、(B)→(C)→(D)の順で、エッジ強度が弱くなって行きぼけ度合いが大きくなる。
【0021】
前記ぼけ除去部8は、ぶれ除去画像記憶部2Bに記憶された複数のぶれ除去画像の各画素の位置関係を、従来公知の例えばブロックマッチングやLucas−Kanade法等を用いて算出し、算出した位置ずれ情報と、ぼけPSF算出部6で算出したぼけPSFを用いて、従来公知である例えばML(Maximum likelihood)法、MAP(Maximum a posteriori)法或いはPOCS(Projection onto convexset)法に基づく超解像処理により、ぼけを除去した高解像度画像の生成を行う。
【0022】
前記画像出力部9は、ぼけ除去部8でぼけPSFを用いた超解像処理によるぼけ除去処理により生成した、撮像部1で撮像した撮像画像より高解像度の画像を出力するものである。
【0023】
次に、本実施形態の画像処理装置の画像処理動作を、図5に示すフローチャートを参照して説明する。
ステップ1(図中、S1で示す。以下同様とする)では、オプティカルフロー算出部3で、撮像部1で撮像されて撮像画像記憶部2Aに記憶された画像フレーム列の連続する2つの画像フレームから従来公知の例えばブロックマッチング法やLucas−Kanade法等を用いてオプティカルフローを算出する。
【0024】
ステップ2では、ぶれPSF算出部4で、ステップ1で算出したオプティカルフローを用いて、画像全体におけるオプティカルフローの方向及び長さの平均値をぶれPSF値として算出する。
【0025】
ステップ3では、ぶれ除去部5で、ステップ3で算出したぶれPSF値に基づいて連続する2つの画像のうちの最新の画像に対して、従来公知のLucy−Richardson法、Iterative back projection法等を用いてぶれ除去処理を行う。このぶれ除去処理で生成されたぶれ除去画像をぶれ除去画像記憶部2Bに記憶する。
【0026】
ステップ4では、ぼけPSF算出部6で、ぶれ除去画像記憶部2Bに記憶されたぶれ除去画像のエッジ強度を算出し、算出したエッジ強度に対応するぼけPSF値を、データベース7に記憶されているエッジ強度とぼけPSF値の対応データから検索してぼけPSF値を設定する。
【0027】
ステップ5では、ぼけ除去部8で、ぶれ除去画像記憶部2Bに記憶された複数のぶれ除去画像の各画素の位置関係を、従来公知の例えばブロックマッチングやLucas−Kanade法等を用いて算出し、算出した位置ずれ情報と、ぼけPSF算出部6で算出したぼけPSFを用いて、従来公知である例えばML(Maximum likelihood)法、MAP(Maximum a posteriori)法或いはPOCS(Projection onto convexset)法に基づく超解像処理によりぼけ除去処理を行って、ぼけを除去した高解像度画像の生成を行う。
【0028】
ステップ6では、ステップ5で生成したぶれ及びぼけのない鮮明な高解像度の画像を画像出力部9から出力する。
【0029】
かかる構成の本実施形態の画像処理装置によれば、撮像画像に対してぶれ除去処理とぼけ除去処理を順次行う構成としたので、ぶれとぼけの両方の画像劣化要因を含んだ撮像画像から、ぶれとぼけのない鮮明な画像を得ることができる。また、超解像処理によって複数枚の画像を合成するぼけ除去処理により、画像を1枚だけを使うぼけPSFを用いた従来公知のLucy−Richardson法やiterative back projection法を利用したぼけ除去処理の場合と比較してぼけ除去効果が高く、撮像画像より高解像度の鮮明な画像を得ることができる。
【0030】
図6は、本発明に係る画像処理装置の第2実施形態を示す構成図である。尚、第1実施形態と同一要素には同一符号を付して説明を省略する。
図6に示す第2実施形態は、ぼけPSF値を、撮像部1の撮像画像を用いて算出することが第1実施形態と異なるだけで、その他の構成は第1実施形態と同様である。
【0031】
ぶれ除去処理を行った画像には、ぶれ除去処理により例えばリンギングと呼ばれるアーチファクト(データエラー)が含まれることが多い。このようなアーチファクトが強いエッジ強度を持った場合、ぼけPSF値の算出に悪影響を及ぼす事が考えられる。第2実施形態では、ぼけPSF値を撮像画像を用いて算出する構成とすることで、ぶれ除去画像に含まれることが多いアーチファクトに関係なくぼけPSF値を算出できるようになり、ぼけPSF値の算出精度が向上する。
【0032】
ところで、手ぶれや車載カメラ等のようにカメラが移動する状態で撮影する場合は、画像全体にぶれが生じるが、シーン中に移動物体が存在する場合には、画像内で局所的にぶれが生じたり、移動物体の動く方向が異なると複数の種類のぶれが画像内に存在したりする場合が考えられる。このような場合、画像内でぶれが存在する領域を特定してその領域毎にぶれPSF値を算出することが望ましい。
【0033】
図7は、本発明に係る画像処理装置の第3実施形態を示す構成図で、ぶれの存在する領域を特定してその領域毎にぶれPSF値を算出する構成例である。
第3実施形態は、第2実施形態の構成に加えてオプティカルフロー算出部3の後段に領域分割部10を設ける構成である。
【0034】
前記領域分割部10は、オプティカルフロー算出部3で算出したオプティカルフローに基づいて画像内の移動物体毎の領域に撮像画像を分割するものである。具体的には、オプティカルフロー算出部3で撮像画像を予め定めた多数の小領域毎に算出したオプティカルフローに基づいて、オプティカルフローが近似する画素領域は同一の動きをしている領域と見なすことにより、分割領域を決定して画像内を領域分割する。図8は、オプティカルフローに基づく領域分割の例を示すもので、同図(A)のように画像内で異なるオプティカルフローが算出された領域x、yが存在する場合、算出されたオプティカルフローが異なる領域毎に同図(B)のように画像内を領域分割する。尚、オプティカルフローを算出する小領域としては、領域内に模様が含まれるように設定することが望ましいが、各画素としてもよい。
【0035】
第3実施形態の画像処理動作を図9のフローチャートを参照して説明する。
ステップ11では、撮像画像記憶部2Aに記憶された画像フレーム列の連続する2つの画像フレームについてオプティカルフローを算出する小領域を設定して各領域ついて、第1、2実施形態と同様にして例えばブロックマッチング法やLucas−Kanade法等を用いてオプティカルフローを算出する。
【0036】
ステップ12では、領域分割部10により、ステップ11で算出した各小領域のオプティカルフローに基づいて、オプティカルフローが近似する小領域を同一領域と見なして画像内を領域分割する。
【0037】
ステップ13では、ぶれPSF算出部4で、ステップ12で分割した領域毎にそのオプティカルフローを用いて、各分割領域のオプティカルフローの方向及び長さの平均値をその分割領域のぶれPSF値として算出する。
【0038】
その後のステップ14〜17は、図5のステップ3〜6と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0039】
かかる構成の第3実施形態の画像処理装置によれば、画像内に移動物体が存在する場合でも、ぶれとぼけのない鮮明な高解像度画像を生成することができる。
【0040】
シーンによっては、複数の移動物体が様々な奥行きに存在する場合がある。このように奥行きがあるシーンでは、近い所と遠い所のどちらか一方のピントがずれてぼやけることが考えられる。このような場合、ぶれPSF値だけでなくぼけPSF値も領域毎に算出することが望ましい。
【0041】
図10は、本発明に係る画像処理装置の第4実施形態を示す構成図であり、領域毎にぶれPSF値とぼけPSF値を算出する構成例である。
本第4実施形態は、ぼけPSF算出部6が領域分割部10の分割領域毎にぼけPSF値を算出することが第3実施形態と異なるだけで、その他の構成は第3実施形態と同じである。
【0042】
本実施形態のぼけPSF算出部6では、領域分割部10によって分割された撮像画像の各分割領域毎に、前述したと同様にエッジ強度を算出しデータベース7からぼけPSF値を検索することにより、各分割領域のぼけPSF値を設定する。
【0043】
第4実施形態の画像処理動作を図11のフローチャートを参照して説明する。
第4実施形態の画像処理動作は、ステップ25のぼけPSF値を分割領域毎に算出する動作が第3実施形態と異なるだけで、ステップ21〜24とステップ26、27の動作は第3実施形態のステップ11〜14とステップ16、17と同じである。
【0044】
かかる構成の第4実施形態の画像処理装置によれば、画像内に複数の移動物体が存在し、それぞれの奥行きに移動物体がある場合でも、ぶれとぼけのない鮮明な高解像度画像を生成することができる。
【0045】
尚、上記第3、4実施形態では、ぼけPSF値を撮像画像から算出する構成の第2実施形態に領域分割部10を追加する例を示したが、ぶれ除去画像からぼけPSF値を算出する構成の第1実施形態に領域分割部10を追加する構成でもよいことは言うまでもない。
【0046】
また、第1〜第4の実施形態では、ぶれ除去処理及びぼけ除去処理を別に求めたPSFを用いて行っているが、ぶれ除去処理とぼけ除去処理の両方又はどちらか一方の処理を、従来公知の手法である、PSF推定と同時に行うブラインドデコンボリュージョン処理としてもよい。この場合、第1及び第2実施形態では、オプティカルフロー算出部3、ぶれPSF算出部4、ぶれ除去部5をまとめたものがブラインドデコンボリュージョン処理によるぶれ除去部となり、領域分割を含む第3及び第4実施形態では、ぶれPSF算出部4、ぶれ除去部5をまとめたものがブラインドデコンボリュージョン処理によるぶれ除去部となる。また、ブラインドデコンボリュージョン処理によるぼけ除去部については、ぼけPSF算出部6、データベース7、ぼけ除去部8をまとめたものとなる。
【符号の説明】
【0047】
1 撮像部
2 記憶部
2A 撮像画像記憶部
2B ぶれ除去画像記憶部
3 オプティカルフロー算出部
4 ぶれPSF算出部
5 ぶれ除去部
6 ぼけPSF算出部
7 データベース
8 ぼけ除去部
9 画像出力部
10 領域分割部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像部により連続して撮像された少なくとも2つ以上の撮像画像を記憶可能な撮像画像記憶部と、
該撮像画像記憶部に記憶された連続する2つの撮像画像に基づいて画像間のオプティカルフローを算出するオプティカルフロー算出部と、
該オプティカルフロー算出部で算出したオプティカルフローに基づいて画像のぶれ度合い表すぶれPSF(ぶれ点拡がり関数)の値を算出するぶれPSF算出部と、
前記算出したぶれPSF値に基づいて最新の撮像画像に対してぶれ除去処理するぶれ除去部と、
該ぶれ除去部で得られたぶれ除去画像を複数記憶するぶれ除去画像記憶部と、
前記撮像画像と前記ぶれ除去画像記憶部に記憶されたぶれ除去画像のいずれか一方の画像を用いて画像のぼけ度合いを表すぼけPSF(ぼけ点拡がり関数)の値を算出するぼけPSF算出部と、
前記ぶれ除去画像記憶部に記憶された複数のぶれ除去画像の画像間の位置ずれを算出し、この位置ずれ情報と前記算出したぼけPSF値を用いた超解像処理によってぼけを除去した高解像度画像を生成するぼけ除去部と、
を備えて構成したことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記ぼけPSF算出部は、撮像画像を用いて前記ぼけPSF値を算出する構成とした請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記オプティカルフロー算出部で算出したオプティカルフローに基づいて画像内の移動物体毎の領域に撮像画像を分割する領域分割部を備え、該領域分割部で分割した各分割領域のオプティカルフローに基づいて各分割領域のぶれPSF値を前記ぶれPSF算出部で算出する構成とした請求項1又は2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記ぼけPSF算出部で、前記領域分割部で分割した各分割領域のぼけPSF値を算出する構成とした請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記領域分割部は、オプティカルフロー算出部で撮像画像の予め定めた多数の小領域について算出されたオプティカルフローに基づいて、オプティカルフローが近似する領域は同一領域と見なすことにより、前記分割領域を決定する構成とした請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記ぼけPSF算出部は、ぼけPSF算出対象画像のエッジ強度を算出し、データベースに予め記憶させたエッジ強度とぼけPSF値との対応データから前記算出したエッジ強度に対応するぼけPSF値を検索してぼけPSF値を設定する構成である請求項1〜5のいずれか1つに記載の画像処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−259119(P2011−259119A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−130720(P2010−130720)
【出願日】平成22年6月8日(2010.6.8)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)
【出願人】(504190548)国立大学法人埼玉大学 (292)
【Fターム(参考)】