画像処理装置
【課題】海底画像群から水産資源を調査する技術を提供する。
【解決手段】特徴画素抽出部20は、検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する。形状特徴抽出部30は、前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する。確信度算出部40は、前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する。検出対象領域抽出部50は、前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する。
【解決手段】特徴画素抽出部20は、検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する。形状特徴抽出部30は、前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する。確信度算出部40は、前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する。検出対象領域抽出部50は、前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は画像処理装置および画像処理方法に関し、特に砂場の海底画像からホタテ領域を抽出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水産資源量の調査は、資源の枯渇の防止と漁業の効率的な操業を実現する上で、極めて重要である。各関係機関は必要な調査を行い、水産資源の個体数・発育の状態の把握に努めている。栽培漁業では資源量調査結果を元に、操業計画を立てる。
【0003】
水産資源量調査は個体数だけではなく、種類、体長、位置、状態(生死)などを定量的に測定する必要がある。近年、デジタルカメラの普及と双胴船技術の発達により、水中の映像を容易に撮影することができつつある(非特許文献1参照)。画像を利用する資源量調査は、対象資源の漁獲量から資源量を推定する間接法とは違い、対象資源に影響を与えずに調査を行うことのできる直接法である。また、魚群探知機などの音響調査では観測が困難な貝などの底生生物を調査することが可能であり、視覚的推定が可能であるため、生死などの状態を把握することも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】本多直人、渡辺俊広、"水中ビデオカメラを装着した表中層トロール網によるエチゼンクラゲの鉛直分布調査、"日本水産学会誌、vol. 73, no. 6, pp. 1042-1048, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、得られた画像を利用した水産資源の自動計数技術は確立されていない。例えばホタテ放流漁場では、個体数・発育状況を把握するために海底画像群の解析により資源量調査が行われることがあるが、これらの画像を用いた自動計測技術がないことから、画像中の対象資源を専門家が目視にて計測している。このため、得られた画像の解析に時間がかかることから、調査の広域化への大きな妨げとなっている。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、海底画像群から水産資源を調査する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は画像処理装置である。この装置は、検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する特徴画素抽出部と、前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する形状特徴抽出部と、前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する確信度算出部と、前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する検出対象領域抽出部とを含む。
【0008】
本発明の別の態様も画像処理装置である。この装置は、検出対象であるホタテ貝を栽培する漁場を複数の小領域毎に撮像して得られた複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の存在位置を検出する検出対象領域抽出部と、前記複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の大きさを測定する検出対象測定部と、前記漁場内におけるホタテ貝の密度分布とホタテ貝の大きさの分布との少なくとも一方を、密度または大きさの違いを識別可能な態様で出力する出力部とを含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、サーバ、システム、コンピュータプログラム、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、海底画像群から水産資源を調査する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】砂場環境の海底画像を示す図である。
【図2】ホタテ領域を示す図である。
【図3】図1に示す画像に対するMean−Shiftフィルタリングによる平滑結果を示す図である。
【図4】図2に示すホタテ領域に対する平滑化の例を示す図である。
【図5】図3に示す対象画像の認識可能領域抽出結果を示す図である。
【図6】局所領域の輝度ヒストグラムと閾値ThSRを示す図である。
【図7】図3に示す画像に対する閾値ThSRの結果を示す図である。
【図8】殻縁候補点抽出結果を示す図である。
【図9】楕円のパラメータを示す図である。
【図10】楕円とその近傍領域を示す図である。
【図11】図1に示す画像に対する抽出実験の結果の例を示す図である。
【図12】図2に示す画像に対するホタテ領域の抽出結果の例を示す図である。
【図13】実施の形態に係る画像処理装置の内部構成を模式的に示す図である。
【図14】実施の形態に係る前処理部の内部構成を模式的に示す図である。
【図15】実施の形態に係る特徴画素抽出部の内部構成を模式的に示す図である。
【図16】実施の形態に係る画像処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図17】測定結果格納部のデータベースの構成を模式的に示す図である。
【図18】漁場内でのホタテの密度分布および殻長分布を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を好適な実施の形態をもとに説明する。まず、実施の形態の基礎となる理論を前提技術として述べ、その後、具体的な実施の形態を説明する。
【0013】
[前提技術]
1.はじめに
水産資源量の調査は、資源の枯渇の防止と漁業の効率的な操業を実現する上で、極めて重要である。各関係機関は必要な調査を行い、水産資源の個体数・発育の状態の把握に努めている[1]、[2]。栽培漁業では資源量調査結果を元に、操業計画を立てる。
【0014】
水産資源量調査は個体数だけではなく、種類、体長、位置、状態(生死)などを定量的に測定する必要がある[2]。近年、デジタルカメラの普及と双胴船技術の発達により、水中の映像を容易に撮影することができつつある[3]、[4]。画像を利用する資源量調査は、対象資源の漁獲量から資源量を推定する間接法とは違い、対象資源に影響を与えずに調査を行うことのできる直接法である。また、魚群探知機などの音響調査では観測が困難な貝などの底生生物を調査することが可能であり、視覚的推定が可能であるため、生死などの状態を把握することも可能である。
【0015】
一方で、得られた画像を利用した水産資源の自動計数技術は確立されていない。北海道、網走におけるホタテ放流漁場では、個体数・発育状況を把握するために海底画像群の解析により資源量調査を行っている[5]。この海域ではホタテは、主に砂場と礫場に生息している。北海道網走水産試験場が行った2007年の調査では、漁獲面積約58.5km2中、580m2の画像を所得している。しかし、これらの画像を用いた自動計測技術がないことから、画像中の対象資源を専門家が目視にて計測している。このため、得られた画像の解析に時間がかかることから、調査の広域化への大きな妨げとなっている。このため、ホタテを自動的に計測する技術が求められている。
【0016】
著者ら[6]は、海底画像からホタテの数や大きさ、状態(生死)を自動的に計測可能なシステムの開発を目的として、礫場環境での抽出手法の提案し、その有効性を示している。本稿では、ホタテのもう1つの主な生活環境である砂場の海底画像を対象とする。対象となる砂場環境下において、ホタテは殻の上を砂で覆い身を隠しているため、殻の色や模様などは確認することはできない。画像中ではホタテの殻縁部分のみ確認することができる。このため、視覚的特徴が少ない条件から認識する必要がある。また対象画像は、対象資源を人間が目視にて計測するために撮影されたものであり、撮影時の照明による照度差や海中を浮遊する砂などがある多ノイズの非整備環境下で撮影されたものである。本稿では、これらの条件下で、ホタテ領域の抽出を試みた。
【0017】
2.設計の指針
ホタテガイはウグイスガイ目イタヤガイ科に分類される二枚貝の一種である[7]。水深約80mまでの砂場や礫場に生息している。ホタテの資源量調査のために撮影される海底画像の所得方法について説明する。まず、船舶から上部にカメラと撮影用の照明が1つ設置されているフレームを海底に沈める。機材を沈めた際、着底の瞬間に写真撮影を行う。この撮影方法では、カメラと海底までの高さがほぼ一定であり、傾きを補正する必要がないため、安定した画像を所得することができる。また砂や礫などの海底の環境にも影響されない。
【0018】
本稿で対象となる砂場環境の海底画像例を図1、ホタテ領域の例を図2に示す。なお、対象画像は、サイズが1536×1024の24bitのカラー画像である。対象画像は、人間が目視でホタテを観測するために撮影されたものであるため、撮影時の照明による照度差などがある。このため、十分な照明が得られていない領域も存在する。また、対象環境は砂場であるため、対象画像はホタテ領域以外に多くのノイズを含む。これらの問題を解決するために前処理として、対象画像に適した平滑化手法と十分な照度のある領域の抽出手法を提案する。
【0019】
ホタテ領域を他の領域と比較すると、(1)扇状の形状、(2)殻縁の白い領域、を確認できる。海底が砂場である場合、ほとんどのホタテは殻を砂で覆って身を隠している。しかし、ホタテは呼吸をする際に殻を開閉するため、殻縁部(殻の周辺部)の砂が落ち、殻縁部のみ確認することができる。ホタテの殻縁は白色であり、個体差はほとんどない。またホタテの個体同士は、同様の理由で重なることはない。これらの特徴を利用して、ホタテ領域の抽出を図ることにした。
【0020】
3.前処理
ホタテ領域の特徴をモデル化するにあたって、図1より多ノイズを含む画像であり、撮影環境による照度差が大きいことがわかる。画像周辺部では十分な照度が得られず、色や形状を正しく認識することが困難である。本節では前処理として、対象画像に適した平滑化処理と、輝度の平均による認識可能領域を定義し、解析する領域を抽出する手法について述べる。
【0021】
3.1 Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化
対象画像の背景は砂であり、ノイズを多く含むことから、ホタテ領域の特徴を失うことなく平滑化する必要がある。そこで本論文では、Mean−Shiftフィルタリング[8]、[9]を用いて平滑化することとした。Mean−Shiftフィルタリングはエッジ情報を残したまま平滑化する手法である。また、同様の平滑化処理としてバイラテラルフィルタ[10]があるが、反復処理を必要とするのに対して、Mean−Shiftフィルタリングは一回の処理で平滑化が可能となる。
【0022】
ここで、色情報rと空間情報sに対するカーネル幅を(hr,hs)とし、平滑化処理を行う。Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化結果を図3に、ホタテ領域の平滑化結果を図4に示す。ただし、カーネル幅(hr,hs)=(20,15)とした。図3より、ホタテの形状を失うことなく砂の領域は平滑化されているのがわかる。本明細書では、全ての解析対象画像に対して平滑化処理した画像を用いることとする。
【0023】
3.2 認識可能領域
対象画像は、撮影時の照明による照度差が大きく、十分な照度が得られていない領域がある。このような領域では、正確な色情報や形状情報を得ることは困難である。そこで、十分な照度が得られている領域を認識可能領域とし、この領域に対してホタテ領域を抽出することとする。
【0024】
認識可能領域を以下のように定義する。大きさ(M,N)の画像I、大きさ(W,H)で画像I中の局所領域をIlocalとする(Ilocal⊂I)。局所領域Ilocalに対して、輝度値の平均値Laveを求め、閾値ThL≦Laveを満たすとき、認識可能領域とする。この処理を、局所領域Ilocalの移動幅kとし、対象画像I全体に対して行う。本稿では、局所領域Ilocalの大きさ(W’,H’)=(64,64)、移動幅k=16、輝度値の平均値に対する閾値ThL=75とした。ただし、対象画像に写っているフレームの位置は安定しているため、画像周辺部は認識可能領域ではないとした。抽出された認識可能領域を図5に示す。図5より、照度が十分ではない領域が除去されていることがわかる。
【0025】
4.ホタテ特徴のモデル化
本稿ではホタテ領域の「殻縁」と「形状」に注目して、これらを統合することで対象領域の抽出を図る。以下にて、各特徴のモデル化について詳述する。
【0026】
4.1 殻縁特徴
海底が砂場である場合、ほとんどのホタテは殻を砂で覆って身を隠している。しかし、ホタテは呼吸をする際に、殻を開閉するため、殻縁部(殻の周辺部)の砂が落ち、覆われていない領域ができる(図2)。また、ホタテの殻縁部は安定して白色である。このため、ホタテ領域の近傍を見たとき、殻縁部分は最も明るい領域であると考えられる。しかし、対象画像は照度差が大きく、固定閾値によって抽出するのは困難である。ここでは、これらの特徴を殻縁特徴とし可変閾値を用いることで照度差に対応した殻縁候補点の抽出手法を提案する。
【0027】
殻縁特徴を定義するにあたり、大きさ(W’,H’)で画像Iの局所領域Ilocal’を定義する。局所領域Ilocal’が十分に大きく且つ、ホタテの殻縁領域が含まれているとき、図2より、殻縁領域がIlocal’を占める割合は小さい。また殻縁領域は白色であるため、局所領域Ilocal’において、もっとも輝度値の高い領域であるといえる。
【0028】
これらの特徴から以下のように殻縁候補点SRCを定義する。まず局所領域Ilocal’における輝度値のヒストグラムを求める。このとき殻縁領域は、ヒストグラムの分布の中で輝度値が高く且つ他の領域分布に含まれず、十分に小さい。ここでヒストグラムの平均値Lave’、標準偏差LSD’、局所領域の中央座標(x’0,y’0)、座標(x’0,y’0)に対応する画像Iの座標(x,y)、殻縁候補点とする割合pとしたとき、座標(x’0,y’0)の殻縁候補点に対する閾値ThSR(x’0,y’0)を、
ThSR(x’0,y’0)=Lave’+λLSD’ (1)
とする。ただしλは、ヒストグラムの分布が正規分布としたときに、殻縁候補点とする割合pにより決定され、正規分布表に従う。この閾値ThSR(x’0,y’0)を画像I(x,y)に対応する閾値とする。この処理を移動幅k’により画像I全体に対して行う。このとき、閾値ThSRは移動幅k’の間隔が空くため、線形補間法により画像I全体の閾値ThSRを決定する。画像I(x、y)が
ThSR(x、y)≦I(x、y) (2)
を満たすとき、殻縁候補点SRCとする。本明細書においては、局所領域Ilocal’の大きさ(W’,N’)=(64,64)、移動幅k’=16、殻縁候補点とする割合p=0.01とし、λ=2.326で与えられる。
【0029】
図4を局所領域としたときのヒストグラムを図6に、求められた閾値ThSRの結果を図7に、殻縁候補点を抽出した結果を図8に示す。図6(a)の対象画像は図4(a)で
閾値ThSRが214の場合を示す。また図6(b)の対象画像は図4(b)で閾値ThSRが149の場合を示す。図7より、対象画像の照度差に対応しながら、閾値が決定されていることがわかる。また、図8からも、照度差に影響を受けることなく、殻縁候補点が抽出されていることがわかる。
【0030】
4.2 形状特徴
ホタテの殻は扇状の形状を有し、殻縁部分にも同様の特徴をみることができる。本稿では、ホタテの殻縁形状を楕円と見なし、楕円検出Hough変換を用いてモデル化を試みた。Hough変換とは、候補となる関数のパラメータ空間上に特徴点に従い投票することで検出される[11]。ノイズに強く、対象の画像に適した手法である。ただし直線の場合2 次元、楕円の場合5次元のパラメータ空間が必要となる。また、図2より対象となる殻縁の形状は、楕円を構成する特徴点が半分にも満たないことがほとんどである。このため、以下で述べるパラメータ空間に対して投票を行い楕円の検出を行う。ただし、本論文で用いる特徴点は次節で詳述する。
【0031】
本稿では、楕円の中心座標(x、y)、半長径α、半短径β、長軸の傾きφの5個のパラメータで表し(図9)、楕円に対する関数f(x,y,α,β,φ)を定義する。そして、対象画像の特徴点に対してHough変換により楕円の検出を行う。しかし、対象となる殻縁の形状は、楕円を構成する曲線のうち半分にも満たない。そこで本明細書では、長軸の傾きφ=0とし4次元のパラメータ空間に投票することで、高速化を図ることとした。また、ホタテは一定範囲の大きさ・形状であるため、楕円パラメータα、βが22≦α、β≦36、楕円率β/αが0.85≦β/αを満たすものとした。
【0032】
4.3 殻縁特徴と形状特徴の統合
4.1節と4.2節では、それぞれ殻縁の色特徴と形状特徴を定義した。本節では、これらを統合する手法について述べる。
【0033】
ホタテ殻の形状は扇状であり、殻縁はその形状に沿った白色の部分である。このため、4.1節で定義した殻縁候補点がホタテ領域のとき、殻の形状に沿って存在しているといえる。
【0034】
楕円検出Hough変換によって検出される楕円とパラメータ空間の関係を図10に示す。ここでHough変換に用いられる半長径α、半短径βのパラメータ空間量子化幅を、それぞれΔα、Δβとする。このとき、対応するパラメータ空間に投票された特徴点は、楕円近傍領域N上に存在する。ただし領域Nは
f(x,y,α−Δα/2,β−Δβ/2)≦N≦f(x,y,α+Δα/2,β+Δβ/2) (3)
とする。パラメータ空間の投票数は、対応するパラメータの楕円近傍領域Nに存在する特徴点の数と同値である。一般的にHough変換は、抽出したい物体のエッジ点を特徴点とし、抽出を行う。しかし、ここでは楕円を構成する特徴点を殻縁候補点とし、領域Nに含まれる殻縁候補点の面積をSSRとするとき、形状特徴を満たす楕円のうち近傍領域Nに含まれる殻縁特徴が
Thscallop≦SSR (4)
を満たすとき、ホタテ領域とする。ここでThscallopは、Hough変換においてパラメータ空間の投票数から、楕円として検出するか否かに対する閾値であり、且つその楕円近傍に含まれる殻縁候補点の面積SSRに対する閾値でもある。本稿では、パラメータ空間量子化幅Δα、Δβ=2、閾値Thscallop=20とした。またホタテ領域は、呼吸するために個体同士が重なることがない。このため、複数のホタテ領域が重なるとき、最も殻縁候補点の面積SSRが大きいものをホタテ領域とした。
【0035】
5. 実験
5.1 実験方法
抽出手法は以下のとおりである。
処理1.Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化。
処理2.処理1で得られた画像から認識可能領域を抽出。
処理3.処理2で得られた画像から殻縁候補点の抽出。
処理4.処理3で得られた画像からHough変換によるホタテ領域を抽出。
【0036】
まず、対象画像に対して、Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化した後、認識可能領域を抽出し、解析する領域を決定する。得られた画像に対して、殻縁特徴を満たす殻縁候補点を抽出する。最後に、殻縁候補点を特徴点とし、形状特徴を満たす楕円検出Hough変換により、ホタテ領域を決定する。
【0037】
5.2 実験結果
ホタテの抽出結果例を図11、図12に示す。殻縁が確認できるホタテ領域を抽出できていることがわかる。
【0038】
6.考察
砂場という視覚的特徴が少ない環境において、ホタテの殻縁特徴と形状特徴を統合することで良好な結果が得られた。このような環境下でのエッジ点には、ホタテ領域以外の砂や照明による影など含まれることは容易に予想できる。その結果、Hough変換ではホタテ領域以外の特徴点が投票されることで、正しい領域を抽出することができない。本手法はHough変換ではエッジ点ではなく、殻縁候補点を特徴点とすることで、図12よりホタテの殻縁部に沿って正しくホタテ領域の抽出ができた。
【0039】
7.おわりに
海底画像からホタテの数や大きさ、状態を自動的に計測可能なシステムの開発を目的とし、砂場環境の海底画像からホタテ領域を抽出する手法を提案した。対象画像は、砂や撮影環境による照度差を含む非整備環境下で撮影されたものであり、多ノイズを含む。これらの問題を解決するために、Mean−Shiftフィルタリングを用いた平滑化及び認識可能領域を定義し、対応した。ホタテは、砂場環境下ではホタテ全体が砂に覆われており、視覚的特徴が乏しい。本手法は、砂場というホタテが身を隠している環境下において、照度差に対応した動的閾値を導入し得られたホタテの殻縁特徴と形状特徴を統合することで、抽出精度の向上を試みたものである。実画像を用いた抽出実験を通じて、本手法の有効性を検証した。また、自動計測システムの開発にはそれぞれの環境に適した手法を用いる必要があるが、本稿で提案した手法は、砂場以外の環境でも応用が可能なものである。
【0040】
文献
[1]Food and Agricultural Organization, "The State of World Fisheries and Aquaculture," Food and Agri-cultural Organization, Italy, 2006.
[2]勝川俊、"水産資源の順応的管理に関する研究、"日本水産学会誌、vol. 73, no. 4, pp. 656-659, 2007.
[3]本多直人、渡辺俊広、"水中ビデオカメラを装着した表中層トロール網によるエチゼンクラゲの鉛直分布調査、"日本水産学会誌、vol. 73, no. 6, pp. 1042-1048, 2007.
[4]藤田薫、渡辺俊広、北川大二、"トロール網のグランドロープに対するズワイガニ類の行動、"日本水産学会誌、vol. 72, no. 4, pp. 695-701, 2006.
[5]北海道立網走水産試験場、"ホタテガイ地まき漁場におけるモニタリングマニュアル〜市場ニーズに対応した計画的生産を目指して〜、"北海道立網走水産試験場(オンライン)、http://www.shexp.pref.hokkaido.jp/exp/abashiri/saikin/manyuaru/manyuaru.pdf.
[6]K. Enomoto, M. Toda, and Y. Kuwahara, "Scal-lop Detection from Gravel-Seabed Images for Fish-ery Investigation", Proc. 7th IAPR Conf. on Machine Vision Applications(MVA2009), pp. 479-482, Kana-gawa, The Japan, May 2009.
[7]奥谷喬司(編著)、"日本近海産貝類図鑑、"東海大学出版会、pp.910-911、 2000.
[8]Y. Cheng, "Mean Shift, Mode Seeking, and Clus-tering," Proc. IEEE, vol. 17, no. 8, pp. 790-799,Aug.1995.
[9]D. Comaniciu and P. Meer, \Mean Shift: A RobustApproach Toward Feature Space Analysis," Proc.IEEE, vol. 24, no. 5, pp. 603-619, May 2002.
[10]C. Tomasi and R. Manduchi, "Bilateral Filtering for Gray and Color Images," Proc. 6th IEEE Conf. on Conputer Vision, pp. 839-846, Bombay, The India, January 1998.
[11]R. O. Duda and P. E. Hart, "Use of the Hough Trans-formation to Detect Lines and Curves in Pictures," Comm. ACM, vol. 15, pp. 11-15, Jan.1972.
【0041】
[具体例]
実施の形態
図13は、実施の形態に係る画像処理装置100の内部構成を模式的に示す図である。画像処理装置100は、前処理部10、特徴画素抽出部20、形状特徴抽出部30、確信度算出部40、検出対象領域抽出部50、検出対象測定部60、記憶部70、および出力部80を含む。記憶部70はさらに、パラメータ記憶部72と測定結果格納部74とを含む。
【0042】
前処理部10は、検出対象の海洋資源であるホタテを被写体に含む画像を取得し、画像の輝度値の補正や平滑化処理等の前処理を実行する。詳細は後述するが、これは前提技術[3]に記載の手法に基づく。特徴画素抽出部20は、前処理部10が処理した画像を二値化して、ホタテの殻縁部を構成するドットを含むドットパターンを取得する。詳細は後述するが、これは前提技術[4.1]に記載の手法に基づく。
【0043】
形状特徴抽出部30は、特徴画素抽出部20が取得したドットパターンにより形成された形状から、検出対象であるホタテの候補を抽出する。これは前提技術[4.2]に記載の手法に基づく。具体的には、特徴画素抽出部20が取得したドットパターンに対して楕円を検出するためのHough変換を行い、ドットパターンから楕円形状を検出する。図2に例示されるように、検出対象であるホタテの殻縁は略楕円形状である。そこで、Hough変換によって楕円形状を検出してホタテの候補とする。ここで、Hough変換に利用する楕円パラメータα、βの上限値である36や下限値である22、および楕円率の下限値である0.85の各種パラメータはパラメータ記憶部72に記憶されており、形状特徴抽出部30はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得してHough変換を実行する。ここで示した楕円パラメータα、βの上限値や下限値、楕円率の下限値は一例であり、検出対象や検出に利用する画像の画素ピッチ等をもとに実験により定めればよい。
【0044】
確信度算出部40は、形状特徴抽出部30が検出した検出対象であるホタテの候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれるドットの数を確信度として算出する。ここで「所定の範囲」とは、ホタテの候補の形状を構成するドットが略楕円形状となるか否かを判断するために設けられた基準範囲であり、具体的には前提技術[4.3]の式(3)で示されるドーナツ型の領域Nである。確信度算出部40は、形状特徴抽出部30が抽出したホタテの候補を構成するドットのうちこの領域N内に含まれるドットの数、すなわちホタテの殻縁候補点の面積SSRを確信度として算出する。
【0045】
確信度が大きい候補は、確信度が小さい候補と比較してホタテの殻縁の形状を構成する画素が多いため、ホタテである蓋然性が高いと考えられる。ここで領域Nのように確信度の算出のために所定の範囲を設けることにより、例えばモデルとした楕円形状からの実際のホタテ貝の殻縁形状のずれや、ノイズの影響による殻縁形状の変動等を吸収しうる点で有利である。殻縁形状の多少の歪みは、その形状を構成するドットが領域Nにとどまっていれば確信度に反映されるからである。なお、式(3)中のパラメータ空間量子化幅ΔαおよびΔβはパラメータ記憶部72に格納されており、確信度算出部40はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得して用いる。
【0046】
ΔαおよびΔβの値は検出対象や検出に利用する画像をもとに実験により定めればよく、一例としてはΔα=Δβ=2である。ΔαやΔβの値を大きくすると領域Nの面積が拡大するため、楕円形状から外れた殻縁形状を持ったホタテも検出できるようになる。一方、ΔαやΔβの値を小さくすると領域Nの面積が縮小するため、楕円形状モデルへの当て嵌めの基準が厳しくなり、誤検出を抑制することができるようになる。
【0047】
検出対象領域抽出部50は、確信度算出部40が算出した確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する。ここで「所定の閾値」とは前提技術[4.3]中のThscallopであり、Hough変換においてパラメータ空間の投票数から楕円として検出するか否かを判別するための基準値であるとともに、その楕円近傍である領域N内に含まれる殻縁候補点の面積SSRに対する基準値でもある。
【0048】
検出対象測定部60は、検出対象領域抽出部50が識別した楕円の大きさの分布を算出する。パラメータ記憶部72には検出対象の海洋資源であるホタテを被写体に含む画像の画素ピッチも格納されており、検出対象測定部はパラメータ記憶部72から取得した画素ピッチと検出対象領域抽出部50が識別した楕円の長軸の画像状における長さとから、当該楕円の実際の長さを算出する。楕円の大きさはホタテ貝の大きさに対応するため、ホタテ貝の発育度を測る際に有用な情報となる。そこで検出対象測定部60は、算出した楕円の大きさの分布を出力部80に出力する。ここで出力部80は、各種情報を画像処理装置100のユーザに提示するためのインタフェースであり、各種情報を文字や表、あるいは画像にまとめる機能を持つ。出力部80の出力先の例としてはモニタが挙げられる。あるいは、情報を印刷するプリンタに出力してもよいし、画像処理装置100の設置されている場所から離れた場所に存在するモニタや携帯端末機に、送信機器(図示せず)を介して情報を送信してもよい。いずれにしても、画像処理装置100のユーザがホタテ貝の大きさを俯瞰しうる点で有利である。
【0049】
ところで、漁場においてホタテを飼育する際、1平方メートルあたり4個体以下が適正であるといわれている。そこで検出対象測定部60は、検出対象領域抽出部50が識別した楕円が、1平方メートルあたりに何個存在するかをカウントし、漁場におけるホタテの密度を算出する。
【0050】
図14は、実施の形態に係る前処理部10の内部構成を模式的に示す図である。前処理部10は、平滑化部12、認識可能領域抽出部14、および周辺領域除去部16を含む。
【0051】
平滑化部12は、検出対象を被写体に含む画像のエッジ情報を残したまま平滑化する。これは前提技術[3.1]に記載のMean−Shiftフィルタリングを用いて実現できる。Mean−Shiftフィルタリングに用いる色情報rと空間情報sに対するカーネル幅(hr,hs)の値はパラメータ記憶部72に記憶されており、平滑化部12はパラメータ記憶部72からカーネル幅を取得してMean−Shiftフィルタリングを実行する。カーネル幅(hr,hs)の値は検出対象や検出に利用する画像の画素ピッチ等をもとに実験により定めればよく、例えば(hr,hs)=(20,15)である。
【0052】
認識可能領域抽出部14は、平滑化部12が出力した画像を取得し、その画像中で検出対象であるホタテを検出することが可能な程度に照度が得られている領域を抽出する。これは前提技術[3.2]に記載の手法に基づく。ここで認識可能領域を抽出するために必要な局所領域Ilocalの大きさ(W,H)や、輝度値の閾値ThL、および移動幅k等の各種パラメータはパラメータ記憶部72に記憶されており、認識可能領域抽出部14はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得して認識可能領域の抽出を実行する。これらのパラメータの値は検出対象や検出に利用する画像の画素ピッチ等をもとに実験により定めればよい。
【0053】
周辺領域除去部16は、認識可能領域抽出部14が出力した画像を取得し、その画像中の周辺部の領域を削除する。これは前提技術[3.2]に記載の手法に基づく。図3に示すように検出対象を被写体に含む画像のフレームの位置が安定している場合には、その画像の周辺部を認識可能領域ではないとして除去することができる。これは検出にかかる時間を短縮しうる点で有利である。除去する領域の大きさは検出対象や検出に利用する画像をもとに実験により定めればよいが、一例としては、画像の長辺の画素数の5%を、いわば「のりしろ」のような形で除去すればよい。
【0054】
図15は、実施の形態に係る特徴画素抽出部20の内部構成を模式的に示す図である。特徴画素抽出部20は、基準閾値算出部22、閾値補間部24、および二値化部26を含む。
【0055】
基準閾値算出部22は、検出対象が撮像された画像を所定の大きさの複数の局所領域に分割し、各局所領域内の画素の統計量をもとに各局所領域における二値化のための基準閾値を算出する。ここで「所定の大きさの局所領域」とは、画像の全体ではなく画像の局所的な輝度情報の統計量を用いて適応的に閾値処理するために設けられた、局所的な閾値を決定するための基準領域であり、前提技術[4.1]に記載の手法に基づいて定める。より具体的には、基準閾値算出部22は、各局所領域における二値化のための基準閾値を前提技術[4.1]中の式(1)を用いて算出する。
【0056】
基準閾値算出部22は、移動幅k’で表される間隔をあけて各局所領域を設定する。したがって、局所領域が設定されない領域については基準閾値が算出されない。そこで閾値補間部24は、基準閾値算出部22が算出した離散的な基準閾値をもとに局所領域が設定されない領域についての閾値を補間計算によって求める。これは前提技術[4.1]に記載の線形補間法を用いてもよいし、スプライン補間等、既知の補間アルゴリズムを用いてもよい。なお、移動幅k’が1ピクセルとして設定された場合、隣り合う局所領域間に間隔は開かず、画像中に局所領域は密に設定されることになる。この場合、閾値補間部24は補間処理を省略しうる。
【0057】
局所閾値を求めるために使用する各種パラメータはパラメータ記憶部72に記憶されており、基準閾値算出部22および閾値補間部24はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得して基準閾値の算出や閾値の補間計算を実行する。これらのパラメータの値は、検出対象や検出に利用する画像をもとに実験により定めればよい。
【0058】
二値化部26は、周辺領域除去部16が出力した画像に対して、基準閾値算出部22または閾値補間部24が算出した閾値をもとに閾値処理を実行して二値化画像を生成する。これは前提技術[4.1]中の式(2)に基づいて実行される。このように、画像の全体ではなく画像の局所的な輝度情報から導出した統計量を用いて閾値処理を実行することにより、検出対象画像の局所的な照度差に対応した閾値を決定しうる点で有利である。
【0059】
画像処理装置100にはキーボードやマウス等の図示しないユーザインタフェースが備わっており、このユーザインタフェースを介してユーザはパラメータ記憶部72に格納されている各種パラメータを変更することができる。
【0060】
図16は、実施の形態に係る画像処理装置100における処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、画像処理装置100が検出対象の画像を取得したときに開始する。
【0061】
平滑化分12は、検出対象を被写体に含む画像を平滑化する(S2)。認識可能領域抽出部14は、平滑化部12が出力した画像を取得から認識可能領域を抽出する(S4)。周辺領域除去部16は、認識可能領域抽出部14が出力した画像の周辺部の領域を削除する(S6)。基準閾値算出部22は、検出対象が撮像された画像に設定された局所領域それぞれについて二値化のための基準閾値を算出する(S8)。閾値補間部24は、基準閾値算出部22が算出した基準閾値をもとに局所領域が設定されない領域についての閾値を補間計算によって求める(S10)。二値化部26は、周辺領域除去部16が出力した画像に対して閾値処理を実行して二値化画像を生成する(S12)。
【0062】
形状特徴抽出部30は、二値化部26が生成した二値化画像から検出対象であるホタテの候補を抽出する(S14)。確信度算出部40は、形状特徴抽出部30が検出した検出対象であるホタテの候補の確信度を算出する(S16)。検出対象領域抽出部50は、確信度算出部40が算出した確信度が所定の閾値以上となる形状を抽出する(S18)。検出対象測定部60は、検出対象領域抽出部50が識別した楕円の大きさの分布を算出して出力部80に出力する(S20)。検出対象測定部60が楕円の大きさの分布を算出して出力部80に出力すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0063】
以上、検出対象を被写体に含む、あるひとつの画像から検出対象であるホタテを抽出する方法について説明した。前提技術[1]に記載したように、漁獲面積は例えば50km2の程度の広さである。一方、検出対象を被写体に含む画像は1m2から2m2の程度の海底の小領域が撮像された画像である。そこで画像処理装置100は、漁場中の異なる小領域で撮像された複数の画像を順次取得して検出対象の抽出を行ってその結果をまとめることにより、より広範囲な漁場の状況を俯瞰するための情報を作成する。以下、このことについて説明する。
【0064】
測定結果格納部74は、複数の検出対象画像それぞれについて検出対象測定部60が算出した楕円の位置および大きさの分布を測定結果格納部74に格納する。これにより、測定結果格納部74には、漁場におけるホタテの大きさの分布と、ホタテの生息密度の分布とのデータベースが構築される。
【0065】
図17は、測定結果格納部74のデータベースの構成を模式的に示す図である。図17に示すように、検出対象の各画像にはそれぞれ固有の画像ID(Identification)が割り当てられている。データベースには、画像が撮像された位置の緯度および経度が各画像に対応づけられて格納されている。緯度および経度の情報は、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて取得できる。なお、検出対象を被写体に含む画像が1m2から2m2の程度の小領域を撮像した画像である場合、緯度および経度における秒は、小数点以下第二位まで測定するのが望ましい。
【0066】
測定結果格納部74のデータベースには、各画像において検出されたホタテが、そのサイズ毎に計数された結果も格納される。ここでホタテのサイズとは、計測した楕円の長軸に対応するホタテの殻長である。図17に示す例では、小さい順にサイズAからサイズDまでの4種類のサイズに分類する場合を示すが、分類の種類は4種類に限らず適宜定めればよい。データベースにはさらに、取得した画像全体をとおして集計した、サイズ毎に計数したホタテの数も格納される。
【0067】
図18(a)は、出力部80が測定結果格納部74のデータベースを参照して画像化した、漁場内でのホタテの密度分布の一例を示した図であり、図中の数字は1平方メートルあたりの個体数を表す。出力部80は測定結果格納部74のデータベースから各画像に含まれるホタテの合計を取得する。例えばその数が4体であり、画像の撮像面積は1m2であるとすれば、その画像におけるホタテの生息密度は4体/m2である。出力部80は各画像の撮像位置をもとに漁場中の密度分布を、密度の違いを識別可能な態様で出力する。例えば密度によって異なる色を振り分けてカラー画像を生成すれば、密度分布を密度の違いを識別可能な画像が生成できる。あるいは、密度によって異なる濃度を振り分けてグレースケール画像を生成してもよい。または、地図における等高線に類する表現を用いてもよい。これによりユーザは、漁場中の広範囲についてホタテの生息密度が俯瞰できるため、ホタテの栽培状況の把握が容易となる点で有利である。
【0068】
図18(b)は、出力部80が測定結果格納部74のデータベースを参照して画像化した、漁場内でのホタテの殻長分布の一例を示した図であり、図中の数字はホタテの拡張をミリメートル単位で表したものである。出力部80は測定結果格納部74のデータベースから各画像に含まれるホタテの個体数をサイズ毎に取得する。出力部80は各画像の撮像位置をもとに漁場中の殻長分布を、殻長の違いを識別可能な態様で出力する。密度分布の場合と同様に、例えば殻長によって異なる色を振り分けてカラー画像を生成すれよい。これによりユーザは、漁場中の広範囲についてホタテの殻長分布が俯瞰でき、ホタテの収穫計画を立てる際の有用な情報となる。
【0069】
図13、図14、図15および図17に示す画像処理装置100およびその内部の構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他のLSI(Large Scale Integration)で実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0070】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0071】
上記の例では、Hough変換を利用して画像中から楕円形状を検出する場合について説明したが、画像中から楕円形状を検出するのはHough変換以外の既知の検出技術を利用してもよい。例えば、少なくとも楕円の一部を含むパターンを用いたテンプレートマッチングを用いてもよい。あるいは、ホタテ領域であることが既知である画像群と、ホタテが写っていないことが既知である画像群とを教師データとして機械学習手法を用いても実現できる。機械学習手法としては、例えばSVM(Support Vector Machine)やブースティング(Boosting)等が挙げられる。適切な教師データを取得して学習することにより、検出能力を向上しうる点で有利である。
【符号の説明】
【0072】
10 前処理部、 12 平滑化部、 14 認識可能領域抽出部、 16 周辺領域除去部、 20 特徴画素抽出部、 22 基準閾値算出部、 24 閾値補間部、 26 二値化部、 30 形状特徴抽出部、 40 確信度算出部、 50 検出対象領域抽出部、 60 検出対象測定部、 70 記憶部、 72 パラメータ記憶部、 74 測定結果格納部、 80 出力部、 100 画像処理装置。
【技術分野】
【0001】
この発明は画像処理装置および画像処理方法に関し、特に砂場の海底画像からホタテ領域を抽出する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水産資源量の調査は、資源の枯渇の防止と漁業の効率的な操業を実現する上で、極めて重要である。各関係機関は必要な調査を行い、水産資源の個体数・発育の状態の把握に努めている。栽培漁業では資源量調査結果を元に、操業計画を立てる。
【0003】
水産資源量調査は個体数だけではなく、種類、体長、位置、状態(生死)などを定量的に測定する必要がある。近年、デジタルカメラの普及と双胴船技術の発達により、水中の映像を容易に撮影することができつつある(非特許文献1参照)。画像を利用する資源量調査は、対象資源の漁獲量から資源量を推定する間接法とは違い、対象資源に影響を与えずに調査を行うことのできる直接法である。また、魚群探知機などの音響調査では観測が困難な貝などの底生生物を調査することが可能であり、視覚的推定が可能であるため、生死などの状態を把握することも可能である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】本多直人、渡辺俊広、"水中ビデオカメラを装着した表中層トロール網によるエチゼンクラゲの鉛直分布調査、"日本水産学会誌、vol. 73, no. 6, pp. 1042-1048, 2007.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、得られた画像を利用した水産資源の自動計数技術は確立されていない。例えばホタテ放流漁場では、個体数・発育状況を把握するために海底画像群の解析により資源量調査が行われることがあるが、これらの画像を用いた自動計測技術がないことから、画像中の対象資源を専門家が目視にて計測している。このため、得られた画像の解析に時間がかかることから、調査の広域化への大きな妨げとなっている。
【0006】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、海底画像群から水産資源を調査する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある態様は画像処理装置である。この装置は、検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する特徴画素抽出部と、前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する形状特徴抽出部と、前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する確信度算出部と、前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する検出対象領域抽出部とを含む。
【0008】
本発明の別の態様も画像処理装置である。この装置は、検出対象であるホタテ貝を栽培する漁場を複数の小領域毎に撮像して得られた複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の存在位置を検出する検出対象領域抽出部と、前記複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の大きさを測定する検出対象測定部と、前記漁場内におけるホタテ貝の密度分布とホタテ貝の大きさの分布との少なくとも一方を、密度または大きさの違いを識別可能な態様で出力する出力部とを含む。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、サーバ、システム、コンピュータプログラム、記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、海底画像群から水産資源を調査する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】砂場環境の海底画像を示す図である。
【図2】ホタテ領域を示す図である。
【図3】図1に示す画像に対するMean−Shiftフィルタリングによる平滑結果を示す図である。
【図4】図2に示すホタテ領域に対する平滑化の例を示す図である。
【図5】図3に示す対象画像の認識可能領域抽出結果を示す図である。
【図6】局所領域の輝度ヒストグラムと閾値ThSRを示す図である。
【図7】図3に示す画像に対する閾値ThSRの結果を示す図である。
【図8】殻縁候補点抽出結果を示す図である。
【図9】楕円のパラメータを示す図である。
【図10】楕円とその近傍領域を示す図である。
【図11】図1に示す画像に対する抽出実験の結果の例を示す図である。
【図12】図2に示す画像に対するホタテ領域の抽出結果の例を示す図である。
【図13】実施の形態に係る画像処理装置の内部構成を模式的に示す図である。
【図14】実施の形態に係る前処理部の内部構成を模式的に示す図である。
【図15】実施の形態に係る特徴画素抽出部の内部構成を模式的に示す図である。
【図16】実施の形態に係る画像処理装置における処理手順を示すフローチャートである。
【図17】測定結果格納部のデータベースの構成を模式的に示す図である。
【図18】漁場内でのホタテの密度分布および殻長分布を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明を好適な実施の形態をもとに説明する。まず、実施の形態の基礎となる理論を前提技術として述べ、その後、具体的な実施の形態を説明する。
【0013】
[前提技術]
1.はじめに
水産資源量の調査は、資源の枯渇の防止と漁業の効率的な操業を実現する上で、極めて重要である。各関係機関は必要な調査を行い、水産資源の個体数・発育の状態の把握に努めている[1]、[2]。栽培漁業では資源量調査結果を元に、操業計画を立てる。
【0014】
水産資源量調査は個体数だけではなく、種類、体長、位置、状態(生死)などを定量的に測定する必要がある[2]。近年、デジタルカメラの普及と双胴船技術の発達により、水中の映像を容易に撮影することができつつある[3]、[4]。画像を利用する資源量調査は、対象資源の漁獲量から資源量を推定する間接法とは違い、対象資源に影響を与えずに調査を行うことのできる直接法である。また、魚群探知機などの音響調査では観測が困難な貝などの底生生物を調査することが可能であり、視覚的推定が可能であるため、生死などの状態を把握することも可能である。
【0015】
一方で、得られた画像を利用した水産資源の自動計数技術は確立されていない。北海道、網走におけるホタテ放流漁場では、個体数・発育状況を把握するために海底画像群の解析により資源量調査を行っている[5]。この海域ではホタテは、主に砂場と礫場に生息している。北海道網走水産試験場が行った2007年の調査では、漁獲面積約58.5km2中、580m2の画像を所得している。しかし、これらの画像を用いた自動計測技術がないことから、画像中の対象資源を専門家が目視にて計測している。このため、得られた画像の解析に時間がかかることから、調査の広域化への大きな妨げとなっている。このため、ホタテを自動的に計測する技術が求められている。
【0016】
著者ら[6]は、海底画像からホタテの数や大きさ、状態(生死)を自動的に計測可能なシステムの開発を目的として、礫場環境での抽出手法の提案し、その有効性を示している。本稿では、ホタテのもう1つの主な生活環境である砂場の海底画像を対象とする。対象となる砂場環境下において、ホタテは殻の上を砂で覆い身を隠しているため、殻の色や模様などは確認することはできない。画像中ではホタテの殻縁部分のみ確認することができる。このため、視覚的特徴が少ない条件から認識する必要がある。また対象画像は、対象資源を人間が目視にて計測するために撮影されたものであり、撮影時の照明による照度差や海中を浮遊する砂などがある多ノイズの非整備環境下で撮影されたものである。本稿では、これらの条件下で、ホタテ領域の抽出を試みた。
【0017】
2.設計の指針
ホタテガイはウグイスガイ目イタヤガイ科に分類される二枚貝の一種である[7]。水深約80mまでの砂場や礫場に生息している。ホタテの資源量調査のために撮影される海底画像の所得方法について説明する。まず、船舶から上部にカメラと撮影用の照明が1つ設置されているフレームを海底に沈める。機材を沈めた際、着底の瞬間に写真撮影を行う。この撮影方法では、カメラと海底までの高さがほぼ一定であり、傾きを補正する必要がないため、安定した画像を所得することができる。また砂や礫などの海底の環境にも影響されない。
【0018】
本稿で対象となる砂場環境の海底画像例を図1、ホタテ領域の例を図2に示す。なお、対象画像は、サイズが1536×1024の24bitのカラー画像である。対象画像は、人間が目視でホタテを観測するために撮影されたものであるため、撮影時の照明による照度差などがある。このため、十分な照明が得られていない領域も存在する。また、対象環境は砂場であるため、対象画像はホタテ領域以外に多くのノイズを含む。これらの問題を解決するために前処理として、対象画像に適した平滑化手法と十分な照度のある領域の抽出手法を提案する。
【0019】
ホタテ領域を他の領域と比較すると、(1)扇状の形状、(2)殻縁の白い領域、を確認できる。海底が砂場である場合、ほとんどのホタテは殻を砂で覆って身を隠している。しかし、ホタテは呼吸をする際に殻を開閉するため、殻縁部(殻の周辺部)の砂が落ち、殻縁部のみ確認することができる。ホタテの殻縁は白色であり、個体差はほとんどない。またホタテの個体同士は、同様の理由で重なることはない。これらの特徴を利用して、ホタテ領域の抽出を図ることにした。
【0020】
3.前処理
ホタテ領域の特徴をモデル化するにあたって、図1より多ノイズを含む画像であり、撮影環境による照度差が大きいことがわかる。画像周辺部では十分な照度が得られず、色や形状を正しく認識することが困難である。本節では前処理として、対象画像に適した平滑化処理と、輝度の平均による認識可能領域を定義し、解析する領域を抽出する手法について述べる。
【0021】
3.1 Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化
対象画像の背景は砂であり、ノイズを多く含むことから、ホタテ領域の特徴を失うことなく平滑化する必要がある。そこで本論文では、Mean−Shiftフィルタリング[8]、[9]を用いて平滑化することとした。Mean−Shiftフィルタリングはエッジ情報を残したまま平滑化する手法である。また、同様の平滑化処理としてバイラテラルフィルタ[10]があるが、反復処理を必要とするのに対して、Mean−Shiftフィルタリングは一回の処理で平滑化が可能となる。
【0022】
ここで、色情報rと空間情報sに対するカーネル幅を(hr,hs)とし、平滑化処理を行う。Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化結果を図3に、ホタテ領域の平滑化結果を図4に示す。ただし、カーネル幅(hr,hs)=(20,15)とした。図3より、ホタテの形状を失うことなく砂の領域は平滑化されているのがわかる。本明細書では、全ての解析対象画像に対して平滑化処理した画像を用いることとする。
【0023】
3.2 認識可能領域
対象画像は、撮影時の照明による照度差が大きく、十分な照度が得られていない領域がある。このような領域では、正確な色情報や形状情報を得ることは困難である。そこで、十分な照度が得られている領域を認識可能領域とし、この領域に対してホタテ領域を抽出することとする。
【0024】
認識可能領域を以下のように定義する。大きさ(M,N)の画像I、大きさ(W,H)で画像I中の局所領域をIlocalとする(Ilocal⊂I)。局所領域Ilocalに対して、輝度値の平均値Laveを求め、閾値ThL≦Laveを満たすとき、認識可能領域とする。この処理を、局所領域Ilocalの移動幅kとし、対象画像I全体に対して行う。本稿では、局所領域Ilocalの大きさ(W’,H’)=(64,64)、移動幅k=16、輝度値の平均値に対する閾値ThL=75とした。ただし、対象画像に写っているフレームの位置は安定しているため、画像周辺部は認識可能領域ではないとした。抽出された認識可能領域を図5に示す。図5より、照度が十分ではない領域が除去されていることがわかる。
【0025】
4.ホタテ特徴のモデル化
本稿ではホタテ領域の「殻縁」と「形状」に注目して、これらを統合することで対象領域の抽出を図る。以下にて、各特徴のモデル化について詳述する。
【0026】
4.1 殻縁特徴
海底が砂場である場合、ほとんどのホタテは殻を砂で覆って身を隠している。しかし、ホタテは呼吸をする際に、殻を開閉するため、殻縁部(殻の周辺部)の砂が落ち、覆われていない領域ができる(図2)。また、ホタテの殻縁部は安定して白色である。このため、ホタテ領域の近傍を見たとき、殻縁部分は最も明るい領域であると考えられる。しかし、対象画像は照度差が大きく、固定閾値によって抽出するのは困難である。ここでは、これらの特徴を殻縁特徴とし可変閾値を用いることで照度差に対応した殻縁候補点の抽出手法を提案する。
【0027】
殻縁特徴を定義するにあたり、大きさ(W’,H’)で画像Iの局所領域Ilocal’を定義する。局所領域Ilocal’が十分に大きく且つ、ホタテの殻縁領域が含まれているとき、図2より、殻縁領域がIlocal’を占める割合は小さい。また殻縁領域は白色であるため、局所領域Ilocal’において、もっとも輝度値の高い領域であるといえる。
【0028】
これらの特徴から以下のように殻縁候補点SRCを定義する。まず局所領域Ilocal’における輝度値のヒストグラムを求める。このとき殻縁領域は、ヒストグラムの分布の中で輝度値が高く且つ他の領域分布に含まれず、十分に小さい。ここでヒストグラムの平均値Lave’、標準偏差LSD’、局所領域の中央座標(x’0,y’0)、座標(x’0,y’0)に対応する画像Iの座標(x,y)、殻縁候補点とする割合pとしたとき、座標(x’0,y’0)の殻縁候補点に対する閾値ThSR(x’0,y’0)を、
ThSR(x’0,y’0)=Lave’+λLSD’ (1)
とする。ただしλは、ヒストグラムの分布が正規分布としたときに、殻縁候補点とする割合pにより決定され、正規分布表に従う。この閾値ThSR(x’0,y’0)を画像I(x,y)に対応する閾値とする。この処理を移動幅k’により画像I全体に対して行う。このとき、閾値ThSRは移動幅k’の間隔が空くため、線形補間法により画像I全体の閾値ThSRを決定する。画像I(x、y)が
ThSR(x、y)≦I(x、y) (2)
を満たすとき、殻縁候補点SRCとする。本明細書においては、局所領域Ilocal’の大きさ(W’,N’)=(64,64)、移動幅k’=16、殻縁候補点とする割合p=0.01とし、λ=2.326で与えられる。
【0029】
図4を局所領域としたときのヒストグラムを図6に、求められた閾値ThSRの結果を図7に、殻縁候補点を抽出した結果を図8に示す。図6(a)の対象画像は図4(a)で
閾値ThSRが214の場合を示す。また図6(b)の対象画像は図4(b)で閾値ThSRが149の場合を示す。図7より、対象画像の照度差に対応しながら、閾値が決定されていることがわかる。また、図8からも、照度差に影響を受けることなく、殻縁候補点が抽出されていることがわかる。
【0030】
4.2 形状特徴
ホタテの殻は扇状の形状を有し、殻縁部分にも同様の特徴をみることができる。本稿では、ホタテの殻縁形状を楕円と見なし、楕円検出Hough変換を用いてモデル化を試みた。Hough変換とは、候補となる関数のパラメータ空間上に特徴点に従い投票することで検出される[11]。ノイズに強く、対象の画像に適した手法である。ただし直線の場合2 次元、楕円の場合5次元のパラメータ空間が必要となる。また、図2より対象となる殻縁の形状は、楕円を構成する特徴点が半分にも満たないことがほとんどである。このため、以下で述べるパラメータ空間に対して投票を行い楕円の検出を行う。ただし、本論文で用いる特徴点は次節で詳述する。
【0031】
本稿では、楕円の中心座標(x、y)、半長径α、半短径β、長軸の傾きφの5個のパラメータで表し(図9)、楕円に対する関数f(x,y,α,β,φ)を定義する。そして、対象画像の特徴点に対してHough変換により楕円の検出を行う。しかし、対象となる殻縁の形状は、楕円を構成する曲線のうち半分にも満たない。そこで本明細書では、長軸の傾きφ=0とし4次元のパラメータ空間に投票することで、高速化を図ることとした。また、ホタテは一定範囲の大きさ・形状であるため、楕円パラメータα、βが22≦α、β≦36、楕円率β/αが0.85≦β/αを満たすものとした。
【0032】
4.3 殻縁特徴と形状特徴の統合
4.1節と4.2節では、それぞれ殻縁の色特徴と形状特徴を定義した。本節では、これらを統合する手法について述べる。
【0033】
ホタテ殻の形状は扇状であり、殻縁はその形状に沿った白色の部分である。このため、4.1節で定義した殻縁候補点がホタテ領域のとき、殻の形状に沿って存在しているといえる。
【0034】
楕円検出Hough変換によって検出される楕円とパラメータ空間の関係を図10に示す。ここでHough変換に用いられる半長径α、半短径βのパラメータ空間量子化幅を、それぞれΔα、Δβとする。このとき、対応するパラメータ空間に投票された特徴点は、楕円近傍領域N上に存在する。ただし領域Nは
f(x,y,α−Δα/2,β−Δβ/2)≦N≦f(x,y,α+Δα/2,β+Δβ/2) (3)
とする。パラメータ空間の投票数は、対応するパラメータの楕円近傍領域Nに存在する特徴点の数と同値である。一般的にHough変換は、抽出したい物体のエッジ点を特徴点とし、抽出を行う。しかし、ここでは楕円を構成する特徴点を殻縁候補点とし、領域Nに含まれる殻縁候補点の面積をSSRとするとき、形状特徴を満たす楕円のうち近傍領域Nに含まれる殻縁特徴が
Thscallop≦SSR (4)
を満たすとき、ホタテ領域とする。ここでThscallopは、Hough変換においてパラメータ空間の投票数から、楕円として検出するか否かに対する閾値であり、且つその楕円近傍に含まれる殻縁候補点の面積SSRに対する閾値でもある。本稿では、パラメータ空間量子化幅Δα、Δβ=2、閾値Thscallop=20とした。またホタテ領域は、呼吸するために個体同士が重なることがない。このため、複数のホタテ領域が重なるとき、最も殻縁候補点の面積SSRが大きいものをホタテ領域とした。
【0035】
5. 実験
5.1 実験方法
抽出手法は以下のとおりである。
処理1.Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化。
処理2.処理1で得られた画像から認識可能領域を抽出。
処理3.処理2で得られた画像から殻縁候補点の抽出。
処理4.処理3で得られた画像からHough変換によるホタテ領域を抽出。
【0036】
まず、対象画像に対して、Mean−Shiftフィルタリングによる平滑化した後、認識可能領域を抽出し、解析する領域を決定する。得られた画像に対して、殻縁特徴を満たす殻縁候補点を抽出する。最後に、殻縁候補点を特徴点とし、形状特徴を満たす楕円検出Hough変換により、ホタテ領域を決定する。
【0037】
5.2 実験結果
ホタテの抽出結果例を図11、図12に示す。殻縁が確認できるホタテ領域を抽出できていることがわかる。
【0038】
6.考察
砂場という視覚的特徴が少ない環境において、ホタテの殻縁特徴と形状特徴を統合することで良好な結果が得られた。このような環境下でのエッジ点には、ホタテ領域以外の砂や照明による影など含まれることは容易に予想できる。その結果、Hough変換ではホタテ領域以外の特徴点が投票されることで、正しい領域を抽出することができない。本手法はHough変換ではエッジ点ではなく、殻縁候補点を特徴点とすることで、図12よりホタテの殻縁部に沿って正しくホタテ領域の抽出ができた。
【0039】
7.おわりに
海底画像からホタテの数や大きさ、状態を自動的に計測可能なシステムの開発を目的とし、砂場環境の海底画像からホタテ領域を抽出する手法を提案した。対象画像は、砂や撮影環境による照度差を含む非整備環境下で撮影されたものであり、多ノイズを含む。これらの問題を解決するために、Mean−Shiftフィルタリングを用いた平滑化及び認識可能領域を定義し、対応した。ホタテは、砂場環境下ではホタテ全体が砂に覆われており、視覚的特徴が乏しい。本手法は、砂場というホタテが身を隠している環境下において、照度差に対応した動的閾値を導入し得られたホタテの殻縁特徴と形状特徴を統合することで、抽出精度の向上を試みたものである。実画像を用いた抽出実験を通じて、本手法の有効性を検証した。また、自動計測システムの開発にはそれぞれの環境に適した手法を用いる必要があるが、本稿で提案した手法は、砂場以外の環境でも応用が可能なものである。
【0040】
文献
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[3]本多直人、渡辺俊広、"水中ビデオカメラを装着した表中層トロール網によるエチゼンクラゲの鉛直分布調査、"日本水産学会誌、vol. 73, no. 6, pp. 1042-1048, 2007.
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[7]奥谷喬司(編著)、"日本近海産貝類図鑑、"東海大学出版会、pp.910-911、 2000.
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【0041】
[具体例]
実施の形態
図13は、実施の形態に係る画像処理装置100の内部構成を模式的に示す図である。画像処理装置100は、前処理部10、特徴画素抽出部20、形状特徴抽出部30、確信度算出部40、検出対象領域抽出部50、検出対象測定部60、記憶部70、および出力部80を含む。記憶部70はさらに、パラメータ記憶部72と測定結果格納部74とを含む。
【0042】
前処理部10は、検出対象の海洋資源であるホタテを被写体に含む画像を取得し、画像の輝度値の補正や平滑化処理等の前処理を実行する。詳細は後述するが、これは前提技術[3]に記載の手法に基づく。特徴画素抽出部20は、前処理部10が処理した画像を二値化して、ホタテの殻縁部を構成するドットを含むドットパターンを取得する。詳細は後述するが、これは前提技術[4.1]に記載の手法に基づく。
【0043】
形状特徴抽出部30は、特徴画素抽出部20が取得したドットパターンにより形成された形状から、検出対象であるホタテの候補を抽出する。これは前提技術[4.2]に記載の手法に基づく。具体的には、特徴画素抽出部20が取得したドットパターンに対して楕円を検出するためのHough変換を行い、ドットパターンから楕円形状を検出する。図2に例示されるように、検出対象であるホタテの殻縁は略楕円形状である。そこで、Hough変換によって楕円形状を検出してホタテの候補とする。ここで、Hough変換に利用する楕円パラメータα、βの上限値である36や下限値である22、および楕円率の下限値である0.85の各種パラメータはパラメータ記憶部72に記憶されており、形状特徴抽出部30はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得してHough変換を実行する。ここで示した楕円パラメータα、βの上限値や下限値、楕円率の下限値は一例であり、検出対象や検出に利用する画像の画素ピッチ等をもとに実験により定めればよい。
【0044】
確信度算出部40は、形状特徴抽出部30が検出した検出対象であるホタテの候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれるドットの数を確信度として算出する。ここで「所定の範囲」とは、ホタテの候補の形状を構成するドットが略楕円形状となるか否かを判断するために設けられた基準範囲であり、具体的には前提技術[4.3]の式(3)で示されるドーナツ型の領域Nである。確信度算出部40は、形状特徴抽出部30が抽出したホタテの候補を構成するドットのうちこの領域N内に含まれるドットの数、すなわちホタテの殻縁候補点の面積SSRを確信度として算出する。
【0045】
確信度が大きい候補は、確信度が小さい候補と比較してホタテの殻縁の形状を構成する画素が多いため、ホタテである蓋然性が高いと考えられる。ここで領域Nのように確信度の算出のために所定の範囲を設けることにより、例えばモデルとした楕円形状からの実際のホタテ貝の殻縁形状のずれや、ノイズの影響による殻縁形状の変動等を吸収しうる点で有利である。殻縁形状の多少の歪みは、その形状を構成するドットが領域Nにとどまっていれば確信度に反映されるからである。なお、式(3)中のパラメータ空間量子化幅ΔαおよびΔβはパラメータ記憶部72に格納されており、確信度算出部40はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得して用いる。
【0046】
ΔαおよびΔβの値は検出対象や検出に利用する画像をもとに実験により定めればよく、一例としてはΔα=Δβ=2である。ΔαやΔβの値を大きくすると領域Nの面積が拡大するため、楕円形状から外れた殻縁形状を持ったホタテも検出できるようになる。一方、ΔαやΔβの値を小さくすると領域Nの面積が縮小するため、楕円形状モデルへの当て嵌めの基準が厳しくなり、誤検出を抑制することができるようになる。
【0047】
検出対象領域抽出部50は、確信度算出部40が算出した確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する。ここで「所定の閾値」とは前提技術[4.3]中のThscallopであり、Hough変換においてパラメータ空間の投票数から楕円として検出するか否かを判別するための基準値であるとともに、その楕円近傍である領域N内に含まれる殻縁候補点の面積SSRに対する基準値でもある。
【0048】
検出対象測定部60は、検出対象領域抽出部50が識別した楕円の大きさの分布を算出する。パラメータ記憶部72には検出対象の海洋資源であるホタテを被写体に含む画像の画素ピッチも格納されており、検出対象測定部はパラメータ記憶部72から取得した画素ピッチと検出対象領域抽出部50が識別した楕円の長軸の画像状における長さとから、当該楕円の実際の長さを算出する。楕円の大きさはホタテ貝の大きさに対応するため、ホタテ貝の発育度を測る際に有用な情報となる。そこで検出対象測定部60は、算出した楕円の大きさの分布を出力部80に出力する。ここで出力部80は、各種情報を画像処理装置100のユーザに提示するためのインタフェースであり、各種情報を文字や表、あるいは画像にまとめる機能を持つ。出力部80の出力先の例としてはモニタが挙げられる。あるいは、情報を印刷するプリンタに出力してもよいし、画像処理装置100の設置されている場所から離れた場所に存在するモニタや携帯端末機に、送信機器(図示せず)を介して情報を送信してもよい。いずれにしても、画像処理装置100のユーザがホタテ貝の大きさを俯瞰しうる点で有利である。
【0049】
ところで、漁場においてホタテを飼育する際、1平方メートルあたり4個体以下が適正であるといわれている。そこで検出対象測定部60は、検出対象領域抽出部50が識別した楕円が、1平方メートルあたりに何個存在するかをカウントし、漁場におけるホタテの密度を算出する。
【0050】
図14は、実施の形態に係る前処理部10の内部構成を模式的に示す図である。前処理部10は、平滑化部12、認識可能領域抽出部14、および周辺領域除去部16を含む。
【0051】
平滑化部12は、検出対象を被写体に含む画像のエッジ情報を残したまま平滑化する。これは前提技術[3.1]に記載のMean−Shiftフィルタリングを用いて実現できる。Mean−Shiftフィルタリングに用いる色情報rと空間情報sに対するカーネル幅(hr,hs)の値はパラメータ記憶部72に記憶されており、平滑化部12はパラメータ記憶部72からカーネル幅を取得してMean−Shiftフィルタリングを実行する。カーネル幅(hr,hs)の値は検出対象や検出に利用する画像の画素ピッチ等をもとに実験により定めればよく、例えば(hr,hs)=(20,15)である。
【0052】
認識可能領域抽出部14は、平滑化部12が出力した画像を取得し、その画像中で検出対象であるホタテを検出することが可能な程度に照度が得られている領域を抽出する。これは前提技術[3.2]に記載の手法に基づく。ここで認識可能領域を抽出するために必要な局所領域Ilocalの大きさ(W,H)や、輝度値の閾値ThL、および移動幅k等の各種パラメータはパラメータ記憶部72に記憶されており、認識可能領域抽出部14はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得して認識可能領域の抽出を実行する。これらのパラメータの値は検出対象や検出に利用する画像の画素ピッチ等をもとに実験により定めればよい。
【0053】
周辺領域除去部16は、認識可能領域抽出部14が出力した画像を取得し、その画像中の周辺部の領域を削除する。これは前提技術[3.2]に記載の手法に基づく。図3に示すように検出対象を被写体に含む画像のフレームの位置が安定している場合には、その画像の周辺部を認識可能領域ではないとして除去することができる。これは検出にかかる時間を短縮しうる点で有利である。除去する領域の大きさは検出対象や検出に利用する画像をもとに実験により定めればよいが、一例としては、画像の長辺の画素数の5%を、いわば「のりしろ」のような形で除去すればよい。
【0054】
図15は、実施の形態に係る特徴画素抽出部20の内部構成を模式的に示す図である。特徴画素抽出部20は、基準閾値算出部22、閾値補間部24、および二値化部26を含む。
【0055】
基準閾値算出部22は、検出対象が撮像された画像を所定の大きさの複数の局所領域に分割し、各局所領域内の画素の統計量をもとに各局所領域における二値化のための基準閾値を算出する。ここで「所定の大きさの局所領域」とは、画像の全体ではなく画像の局所的な輝度情報の統計量を用いて適応的に閾値処理するために設けられた、局所的な閾値を決定するための基準領域であり、前提技術[4.1]に記載の手法に基づいて定める。より具体的には、基準閾値算出部22は、各局所領域における二値化のための基準閾値を前提技術[4.1]中の式(1)を用いて算出する。
【0056】
基準閾値算出部22は、移動幅k’で表される間隔をあけて各局所領域を設定する。したがって、局所領域が設定されない領域については基準閾値が算出されない。そこで閾値補間部24は、基準閾値算出部22が算出した離散的な基準閾値をもとに局所領域が設定されない領域についての閾値を補間計算によって求める。これは前提技術[4.1]に記載の線形補間法を用いてもよいし、スプライン補間等、既知の補間アルゴリズムを用いてもよい。なお、移動幅k’が1ピクセルとして設定された場合、隣り合う局所領域間に間隔は開かず、画像中に局所領域は密に設定されることになる。この場合、閾値補間部24は補間処理を省略しうる。
【0057】
局所閾値を求めるために使用する各種パラメータはパラメータ記憶部72に記憶されており、基準閾値算出部22および閾値補間部24はパラメータ記憶部72からこれらのパラメータを取得して基準閾値の算出や閾値の補間計算を実行する。これらのパラメータの値は、検出対象や検出に利用する画像をもとに実験により定めればよい。
【0058】
二値化部26は、周辺領域除去部16が出力した画像に対して、基準閾値算出部22または閾値補間部24が算出した閾値をもとに閾値処理を実行して二値化画像を生成する。これは前提技術[4.1]中の式(2)に基づいて実行される。このように、画像の全体ではなく画像の局所的な輝度情報から導出した統計量を用いて閾値処理を実行することにより、検出対象画像の局所的な照度差に対応した閾値を決定しうる点で有利である。
【0059】
画像処理装置100にはキーボードやマウス等の図示しないユーザインタフェースが備わっており、このユーザインタフェースを介してユーザはパラメータ記憶部72に格納されている各種パラメータを変更することができる。
【0060】
図16は、実施の形態に係る画像処理装置100における処理手順を示すフローチャートである。本フローチャートにおける処理は、画像処理装置100が検出対象の画像を取得したときに開始する。
【0061】
平滑化分12は、検出対象を被写体に含む画像を平滑化する(S2)。認識可能領域抽出部14は、平滑化部12が出力した画像を取得から認識可能領域を抽出する(S4)。周辺領域除去部16は、認識可能領域抽出部14が出力した画像の周辺部の領域を削除する(S6)。基準閾値算出部22は、検出対象が撮像された画像に設定された局所領域それぞれについて二値化のための基準閾値を算出する(S8)。閾値補間部24は、基準閾値算出部22が算出した基準閾値をもとに局所領域が設定されない領域についての閾値を補間計算によって求める(S10)。二値化部26は、周辺領域除去部16が出力した画像に対して閾値処理を実行して二値化画像を生成する(S12)。
【0062】
形状特徴抽出部30は、二値化部26が生成した二値化画像から検出対象であるホタテの候補を抽出する(S14)。確信度算出部40は、形状特徴抽出部30が検出した検出対象であるホタテの候補の確信度を算出する(S16)。検出対象領域抽出部50は、確信度算出部40が算出した確信度が所定の閾値以上となる形状を抽出する(S18)。検出対象測定部60は、検出対象領域抽出部50が識別した楕円の大きさの分布を算出して出力部80に出力する(S20)。検出対象測定部60が楕円の大きさの分布を算出して出力部80に出力すると、本フローチャートにおける処理は終了する。
【0063】
以上、検出対象を被写体に含む、あるひとつの画像から検出対象であるホタテを抽出する方法について説明した。前提技術[1]に記載したように、漁獲面積は例えば50km2の程度の広さである。一方、検出対象を被写体に含む画像は1m2から2m2の程度の海底の小領域が撮像された画像である。そこで画像処理装置100は、漁場中の異なる小領域で撮像された複数の画像を順次取得して検出対象の抽出を行ってその結果をまとめることにより、より広範囲な漁場の状況を俯瞰するための情報を作成する。以下、このことについて説明する。
【0064】
測定結果格納部74は、複数の検出対象画像それぞれについて検出対象測定部60が算出した楕円の位置および大きさの分布を測定結果格納部74に格納する。これにより、測定結果格納部74には、漁場におけるホタテの大きさの分布と、ホタテの生息密度の分布とのデータベースが構築される。
【0065】
図17は、測定結果格納部74のデータベースの構成を模式的に示す図である。図17に示すように、検出対象の各画像にはそれぞれ固有の画像ID(Identification)が割り当てられている。データベースには、画像が撮像された位置の緯度および経度が各画像に対応づけられて格納されている。緯度および経度の情報は、例えばGPS(Global Positioning System)を用いて取得できる。なお、検出対象を被写体に含む画像が1m2から2m2の程度の小領域を撮像した画像である場合、緯度および経度における秒は、小数点以下第二位まで測定するのが望ましい。
【0066】
測定結果格納部74のデータベースには、各画像において検出されたホタテが、そのサイズ毎に計数された結果も格納される。ここでホタテのサイズとは、計測した楕円の長軸に対応するホタテの殻長である。図17に示す例では、小さい順にサイズAからサイズDまでの4種類のサイズに分類する場合を示すが、分類の種類は4種類に限らず適宜定めればよい。データベースにはさらに、取得した画像全体をとおして集計した、サイズ毎に計数したホタテの数も格納される。
【0067】
図18(a)は、出力部80が測定結果格納部74のデータベースを参照して画像化した、漁場内でのホタテの密度分布の一例を示した図であり、図中の数字は1平方メートルあたりの個体数を表す。出力部80は測定結果格納部74のデータベースから各画像に含まれるホタテの合計を取得する。例えばその数が4体であり、画像の撮像面積は1m2であるとすれば、その画像におけるホタテの生息密度は4体/m2である。出力部80は各画像の撮像位置をもとに漁場中の密度分布を、密度の違いを識別可能な態様で出力する。例えば密度によって異なる色を振り分けてカラー画像を生成すれば、密度分布を密度の違いを識別可能な画像が生成できる。あるいは、密度によって異なる濃度を振り分けてグレースケール画像を生成してもよい。または、地図における等高線に類する表現を用いてもよい。これによりユーザは、漁場中の広範囲についてホタテの生息密度が俯瞰できるため、ホタテの栽培状況の把握が容易となる点で有利である。
【0068】
図18(b)は、出力部80が測定結果格納部74のデータベースを参照して画像化した、漁場内でのホタテの殻長分布の一例を示した図であり、図中の数字はホタテの拡張をミリメートル単位で表したものである。出力部80は測定結果格納部74のデータベースから各画像に含まれるホタテの個体数をサイズ毎に取得する。出力部80は各画像の撮像位置をもとに漁場中の殻長分布を、殻長の違いを識別可能な態様で出力する。密度分布の場合と同様に、例えば殻長によって異なる色を振り分けてカラー画像を生成すれよい。これによりユーザは、漁場中の広範囲についてホタテの殻長分布が俯瞰でき、ホタテの収穫計画を立てる際の有用な情報となる。
【0069】
図13、図14、図15および図17に示す画像処理装置100およびその内部の構成は、ハードウェア的には、任意のコンピュータのCPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他のLSI(Large Scale Integration)で実現でき、ソフトウェア的にはメモリにロードされたプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0070】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。これらの実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0071】
上記の例では、Hough変換を利用して画像中から楕円形状を検出する場合について説明したが、画像中から楕円形状を検出するのはHough変換以外の既知の検出技術を利用してもよい。例えば、少なくとも楕円の一部を含むパターンを用いたテンプレートマッチングを用いてもよい。あるいは、ホタテ領域であることが既知である画像群と、ホタテが写っていないことが既知である画像群とを教師データとして機械学習手法を用いても実現できる。機械学習手法としては、例えばSVM(Support Vector Machine)やブースティング(Boosting)等が挙げられる。適切な教師データを取得して学習することにより、検出能力を向上しうる点で有利である。
【符号の説明】
【0072】
10 前処理部、 12 平滑化部、 14 認識可能領域抽出部、 16 周辺領域除去部、 20 特徴画素抽出部、 22 基準閾値算出部、 24 閾値補間部、 26 二値化部、 30 形状特徴抽出部、 40 確信度算出部、 50 検出対象領域抽出部、 60 検出対象測定部、 70 記憶部、 72 パラメータ記憶部、 74 測定結果格納部、 80 出力部、 100 画像処理装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する特徴画素抽出部と、
前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する形状特徴抽出部と、
前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する確信度算出部と、
前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する検出対象領域抽出部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検出対象はホタテ貝であり、
前記形状特徴抽出部は、前記ドットパターンにより形成された楕円形状を前記検出対象の候補として抽出するものであり、
本画像処理装置は、前記検出対象領域抽出部が識別した楕円の大きさの分布を算出する検出対象測定部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検出対象が撮像された画像を所定の大きさの複数の局所領域に分割し、各局所領域内の画素の統計量をもとに各局所領域における二値化の基準閾値を算出する基準閾値算出部をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する機能と、
前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する機能と、
前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する機能と、
前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
検出対象であるホタテ貝を栽培する漁場を複数の小領域毎に撮像して得られた複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の存在位置を検出する検出対象領域抽出部と、
前記複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の大きさを測定する検出対象測定部と、
前記漁場内におけるホタテ貝の密度分布とホタテ貝の大きさの分布との少なくとも一方を、密度または大きさの違いを識別可能な態様で出力する出力部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
検出対象であるホタテ貝を栽培する漁場を複数の小領域毎に撮像して得られた複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の存在位置およびホタテ貝の大きさを検出し、前記漁場内におけるホタテ貝の密度分布とホタテ貝の大きさの分布との少なくとも一方を、密度または大きさの違いを識別可能な態様で出力することをコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項1】
検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する特徴画素抽出部と、
前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する形状特徴抽出部と、
前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する確信度算出部と、
前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する検出対象領域抽出部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検出対象はホタテ貝であり、
前記形状特徴抽出部は、前記ドットパターンにより形成された楕円形状を前記検出対象の候補として抽出するものであり、
本画像処理装置は、前記検出対象領域抽出部が識別した楕円の大きさの分布を算出する検出対象測定部をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記検出対象が撮像された画像を所定の大きさの複数の局所領域に分割し、各局所領域内の画素の統計量をもとに各局所領域における二値化の基準閾値を算出する基準閾値算出部をさらに含むことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
検出対象を被写体に含む画像を二値化してドットパターンを取得する機能と、
前記ドットパターンにより形成された形状をもとに前記検出対象の候補を抽出する機能と、
前記検出対象の候補の形状によって定まる所定の範囲内に含まれる、当該候補の形状を構成するドットの数を確信度として算出する機能と、
前記確信度が所定の閾値以上となる形状を識別して計数する機能とをコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
検出対象であるホタテ貝を栽培する漁場を複数の小領域毎に撮像して得られた複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の存在位置を検出する検出対象領域抽出部と、
前記複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の大きさを測定する検出対象測定部と、
前記漁場内におけるホタテ貝の密度分布とホタテ貝の大きさの分布との少なくとも一方を、密度または大きさの違いを識別可能な態様で出力する出力部とを含むことを特徴とする画像処理装置。
【請求項6】
検出対象であるホタテ貝を栽培する漁場を複数の小領域毎に撮像して得られた複数の画像それぞれに含まれるホタテ貝の存在位置およびホタテ貝の大きさを検出し、前記漁場内におけるホタテ貝の密度分布とホタテ貝の大きさの分布との少なくとも一方を、密度または大きさの違いを識別可能な態様で出力することをコンピュータに実現させることを特徴とするプログラム。
【図6】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図9】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−113436(P2012−113436A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260450(P2010−260450)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り MIRU2010第13回 画像の認識・理解シンポジウム論文集
【出願人】(508236240)公立大学法人公立はこだて未来大学 (16)
【出願人】(310010575)地方独立行政法人北海道立総合研究機構 (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り MIRU2010第13回 画像の認識・理解シンポジウム論文集
【出願人】(508236240)公立大学法人公立はこだて未来大学 (16)
【出願人】(310010575)地方独立行政法人北海道立総合研究機構 (51)
【Fターム(参考)】
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