説明

画像変換装置および画像変換プログラム

【課題】操作者が筆記した文字や線などの筆跡を、筆跡の領域幅、止め、はらいなどを含め、光学撮像方式により筆記された状態のまま記録することができる画像変換装置および画像変換プログラムを提供する。
【解決手段】記録媒体12には座標位置を示す図形が規則的に配置されている。座標位置特定部23は、筆記具11内の撮像部21によって撮像された撮像画像から図形を抽出し、座標位置を特定する。また図形読取部24は、撮像画像内の図形の数を特定する。一方、接触状態検出部22は筆記具11と記録媒体12との接触状態を検出する。対応付け部25は、特定された座標位置から算出された筆記速度と接触状態の検出結果とともに、図形の数の増減から、筆記された筆跡の領域幅を制御し、座標位置と対応付けて筆跡の情報を筆跡記録部26に記録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像変換装置および画像変換プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
旧来より、筆記者による筆跡をデジタル化して残すための技術が開発されている。例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3では、電磁誘導方式を用いて筆記されている座標を感知し、その移動により筆跡を取得している。この方式の場合、筆記具と対向する位置検出板を用いて筆記されている位置を検出することになる。
【0003】
別の方式として、光学撮像方式がある。例えば特許文献4では、筆記される媒体の表面に、座標情報を符号化した第1及び第2のシンボルの並びを形成しておく。そして、筆記の際に媒体表面から読み取った画像中のシンボルから、筆記されている座標を検出し、筆跡を取得している。筆記されている座標を電子的に取得することにより、筆記された文字や線などの形状が筆跡として取得されることになる。
【0004】
線幅については、例えば上述の電磁誘導方式を用いた場合には、筆圧を検出して線幅に反映させることが行われている。例えば、上述の特許文献1では導電ゴムにより、特許文献2では共振周波数の変化により、特許文献3では筆記の際の変位量により、それぞれ筆圧を検出している。また、例えば特許文献5でも筆記の際の移動速度を用い、移動速度に応じて基本パターンを連結して毛筆書体を生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭60−74015号公報
【特許文献2】特許第3126816号公報
【特許文献3】特開平5−303359号公報
【特許文献4】特表2003−500778号公報
【特許文献5】特開平7−121350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、操作者が筆記した文字や線などの筆跡を、線幅、止め、はらい、はねを含め、筆記された状態を筆圧を検出することなく記録することができる画像変換装置および画像変換プログラムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願請求項1に記載の発明は、座標位置に応じて予め定められた規則に従って図形が配置されている記録媒体を予め定められた撮像範囲で撮像する撮像手段からの撮像画像をもとに前記撮像画像に含まれる前記図形から前記図形が示す前記記録媒体上の座標位置を特定する特定手段と、前記撮像画像内での前記図形の個数または間隔を読み取る読取手段と、前記読取手段で読み取られた前記図形の個数または間隔に従って筆跡の領域幅を対応付ける対応付け手段を有することを特徴とする画像変換装置である。
【0008】
本願請求項2に記載の発明は、本願請求項1に記載の画像変換装置における前記対応付け手段が、前記特定手段で特定された座標位置から筆記速度を算出し、前記前記図形の個数または間隔、並びに前記筆記速度に従って筆跡の前記領域幅を対応付けることを特徴とする画像変換装置である。
【0009】
本願請求項3に記載の発明は、コンピュータに、座標位置に応じて予め定められた規則に従って図形が配置されている記録媒体を予め定められた撮像範囲で撮像する撮像手段からの撮像画像をもとに前記撮像画像に含まれる前記図形から前記図形が示す前記記録媒体上の座標位置を特定する特定処理と、前記撮像画像内での前記図形の個数または間隔を読み取る読取処理と、前記読取処理で読み取られた前記図形の個数または間隔に従って筆跡の領域幅を対応付ける対応付け処理を行わせるものであることを特徴とする画像変換プログラムである。
【発明の効果】
【0010】
本願請求項1に記載の発明によれば、操作者が筆記した文字や線などの筆跡を、線幅、止め、はらい、はねを含め、筆記された状態について筆圧を検出することなく記録することができるという効果がある。
【0011】
本願請求項2に記載の発明によれば、撮像範囲内の図形の個数または間隔とともに、筆記速度に応じた筆跡の領域幅を設定することができる。
【0012】
本願請求項3に記載の発明によれば、操作者が筆記した文字や線などの筆跡を、線幅、止め、はらい、はねを含め、筆記された状態について筆圧を検出することなく記録することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の一形態を示す構成図である。
【図2】対応付け部25の動作の具体例を示す流れ図である。
【図3】筆記速度の変化が予め決めてある範囲内の場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。
【図4】撮像部で撮像された撮像画像の一例の説明図である。
【図5】「はらい」の場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。
【図6】筆記速度が遅くなった場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。
【図7】筆記速度が速くなった場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。
【図8】本発明の実施の一形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1は、本発明の実施の一形態を示す構成図である。図中、11は筆記具、12は記録媒体、13は図形、14は筆跡、21は撮像部、22は接触状態検出部、23は座標位置特定部、24は図形読取部、25は対応付け部、26は筆跡記録部である。記録媒体12には、座標位置に応じて複数の図形が配置されている。例えば特許文献4に記載されている方法により、大小の点が予め定められている規則に従って配置されている。このほかにも、予め定められている間隔で点を配置するが、予め定められている規則に従って座標位置に応じて点をずらして配置する方法など、いくつかの方法がある。図形は、円や矩形など、予め決めておけばよい。操作者は、このような記録媒体12上に、筆記具11により筆記すればよい。これにより筆跡14が記録媒体12上に残ることになる。この筆跡14を電子的に記録する。もちろん筆跡14が記録媒体12上に残らない構成でもよい。また、記録媒体12は、紙のほか、電子ペーパーなどでもよい。その場合には、表示面側に図形を形成してもよく、また、図形を表示させてもよい。
【0015】
筆記具11には、撮像部21及び接触状態検出部22が設けられており、撮像部21で撮像した撮像画像及び接触状態検出部22の検出結果が出力される。これらの出力は、例えば有線、あるいは光や赤外線などを含む無線によって行えばよい。あるいは、座標位置特定部23、図形読取部24、対応付け部25を含め、さらには筆跡記録部26を含めて筆記具11を構成してもよい。
【0016】
撮像部21は、記録媒体12上の画像を、予め定められた撮像範囲で、予め決められた時間間隔で撮像し、撮像画像を出力する。上述の通り記録媒体12上には座標位置に応じて図形が配置されており、撮像部21では複数の図形が含まれるように記録媒体12上を撮像する。撮像部21としては2次元の読取センサなどで構成するとよい。
【0017】
接触状態検出部22は、筆記具11の記録媒体12との接触状態を検出する。この例では操作者が筆記具11のペン先を記録媒体12に押圧したか否かを検出することとし、例えばON/OFFスイッチなどで構成すればよい。
【0018】
座標位置特定部23は、撮像部21から出力される撮像画像から、記録媒体12に配置されているそれぞれの図形を抽出して、その図形の配置や図形の大きさなどから、予め定められている規則に従って、筆記されている記録媒体12上の座標位置を特定する。
【0019】
図形読取部24は、撮像部21から出力される撮像画像内での図形の個数または間隔(例えば平均間隔など)を読み取る。
【0020】
対応付け部25は、図形読取部24で読み取られた図形の個数または間隔に従って、筆跡の領域幅を座標位置特定部23で特定される座標位置と対応付け、筆跡の情報として筆跡記録部26に渡す。例えば図形の個数が増加する場合または図形の間隔が狭まっている場合には、筆記具11が記録媒体12から離れつつあることが想定されるので、筆跡の領域幅が細くなるように制御する。このような場合としては、文字のはらいなどがある。なお、操作者によって筆記具11の持ち方や筆記の際の角度などが異なるため、撮像画像に含まれる図形の個数には個人差が生じることが考えられる。この個人差の影響を排除するため、例えば通常の筆記の際に撮像画像内に存在する図形の個数または間隔を通常個数または通常間隔として予め取得しておき、その通常個数または通常間隔との比較により筆跡の領域幅を制御するように構成するとよい。
【0021】
筆跡の領域幅は、さらに、筆記速度にも対応させるとよい。筆記速度は、撮像部21で予め決められた時間間隔で撮像画像が撮像されることから、それぞれの撮像画像から座標位置特定部23で特定された座標位置の変化量をもとに算出すればよい。例えば筆記速度が増加しながら図形の個数が増加する場合として、文字のはねなどがある。
【0022】
さらに、接触状態検出部22における記録媒体12との接触状態の検出結果を加えて筆跡の領域幅を制御するとよい。接触状態検出部22の検出結果により筆記される線などの書き始めと書き終わりが検出されるので、それらに対応した筆跡の領域幅を制御するとよい。なお、例えば書き終わりでは接触状態検出部22が記録媒体12と接触していることを検出していても、実際には筆記具11が記録媒体12から離れ始めている場合もあるが、図形の個数または間隔を併用していることで、このような場合の筆跡の領域幅の制御にも対応している。
【0023】
筆跡記録部26は、対応付け部25で対応付けられた筆跡の情報を記録する。記録形式などは予め決めておけばよい。記録されている座標位置を結び、領域幅の情報に従って線幅を付加すれば、操作者が筆記した状態が再現されることになる。
【0024】
上述の本発明の実施の一形態における動作について説明する。上述のように、撮像部21は予め決められた時間間隔で記録媒体12上の画像を撮像して撮像画像として出力している。なお、撮像部21による撮像は、動作中は続けて行っていてもよいし、あるいは接触状態検出部22で記録媒体12と接触したことを検出したら撮像を開始してもよい。この場合の撮像の終了は、接触状態検出部22で記録媒体12との接触を検出しなくなったら、または、座標位置特定部23が座標位置を特定しなくなったらなどとすればよい。
【0025】
撮像部21で撮像するたびに、その撮像画像が座標位置特定部23及び図形読取部24に渡される。座標位置特定部23では、撮像部21から渡された撮像画像から、記録媒体12に配置されているそれぞれの図形を抽出して、その図形の配置や図形の大きさなどをもとに、筆記されている座標位置を特定する。また図形読取部24は、撮像画像中に存在する図形の個数または間隔を読み取る。この動作例では図形の個数を読み取るものとする。座標位置特定部23で特定した座標位置と図形読取部24で読み取った図形の個数は、対応付け部25に渡される。尚、座標位置特定部23及び図形読取部24は必ずしも別個に設けられている必要はない。例えば、撮像部21から出力される撮像画像から、記録媒体12に配置されているそれぞれの図形を抽出して、その図形の配置や図形の大きさなどから、予め定められている規則に従って、筆記されている記録媒体12上の座標位置を特定し、且つ撮像部21から出力される撮像画像内での図形の個数または間隔(例えば平均間隔など)を読み取る、1つのプログラムであってもよい。
【0026】
図2は、対応付け部25の動作の具体例を示す流れ図である。まずS61において、接触状態検出部22の検出結果、すなわち筆記具11が記録媒体12と接触しているか否かを判断する。接触状態検出部22が筆記具11と記録媒体12との接触を検出していなければS62へ進み、さらに直前の状態を判断する。直前の状態が接触を検出していなければ、筆記具11は記録媒体12と接触していない状態が続いていることになり、この場合には座標位置特定部23、図形読取部24、対応付け部25はなにもしない。直前の状態が筆記具11と記録媒体12との接触を検出している場合には、筆記具11が記録媒体12と接触した状態から離れたことを示している。この場合には筆記されていた1本の線の書き終わりであることを示しており、S63において、筆跡の領域幅Wを0とする。また、次に線などが筆記される場合に備えて、筆記速度及び図形の数を標準値などに初期化し、処理を終える。
【0027】
S61で接触状態検出部22が筆記具11と記録媒体12との接触を検出していると判断される場合には、さらにS64において、直前の状態を判断する。直前の状態が接触を検出していない場合には、筆記具11が記録媒体12と離れている状態から接触したことを示している。この場合には1本の線の書きはじめであることを示しているが、処理としては何もせずに終了する。なお、筆記速度及び図形の数については前回の筆記終了の際に標準値などに初期化されており、その値が保持されている。また、上述のように座標位置特定部23は撮像画像から座標位置を特定しており、その座標位置は取得しておく。
【0028】
S64で直前の状態が接触を検出していると判断される場合には、筆記中であることを示している。S65において、前回の座標情報と今回特定された座標情報と、撮像部21による撮像間隔とから筆記速度を算出する。そしてS66において、S65で算出した筆記速度を前回算出した(あるいは初期化されている)筆記速度と比較する。
【0029】
筆記速度の変化が予め決めてある範囲内である場合(変化小と表記)には、S67において、さらに今回読み取られた図形の数と前回読み取られた図形の数とを比較する。比較の結果、図形の数の変化が予め決めてある範囲内である場合(変化小と表記)には、筆跡の領域幅は変更しない。比較の結果、図形の数の変化がa%以上増えている場合(aは予め決めておく)には、S68において、筆跡の領域幅Wから1を減じ、筆跡の領域幅を細くする。図形の数の変化がb%以上増えている場合(a<b,bは予め決めておく)には、S69において、筆跡の領域幅Wから2を減じ、S68の場合よりも筆跡の領域幅を細くする。逆に、図形の数の変化がc%以上減っている場合(cは予め決めておく)には、S70において、筆跡の領域幅Wに1を加え、筆跡の領域幅を太くする。図形の数の変化がd%以上減っている場合(c<d,dは予め決めておく)には、S71において、筆跡の領域幅Wに2を加え、S70の場合よりも筆跡の領域幅を太くする。
【0030】
またS66で筆記速度の変化が予め決めてある範囲を超えて速くなっている場合(速と表記)には、S72において、さらに今回読み取られた図形の数と前回読み取られた図形の数とを比較する。比較の結果、図形の数の変化が予め決めてある範囲内である場合(変化小と表記)には、S73において、筆跡の領域幅Wから1を減じ、筆跡の領域幅を細くする。比較の結果、図形の数の変化がe%以上増えている場合(eは予め決めておく)には、S74において、筆跡の領域幅Wから2を減じ、筆跡の領域幅を細くする。図形の数の変化がf%以上増えている場合(e<f,fは予め決めておく)には、S75において、筆跡の領域幅Wから3を減じ、S74の場合よりも筆跡の領域幅を細くする。逆に、図形の数の変化がg%以上減っている場合(gは予め決めておく)には、S76において、筆跡の領域幅Wに2を加え、筆跡の領域幅を太くする。図形の数の変化がh%以上減っている場合(g<h,hは予め決めておく)には、S77において、筆跡の領域幅Wに3を加え、S76の場合よりも筆跡の領域幅を太くする。
【0031】
さらにS66で筆記速度の変化が予め決めてある範囲を超えて遅くなっている場合(遅と表記)には、S78において、筆跡の領域幅Wに1を加えて筆跡の領域幅を太くする。
【0032】
このような筆跡の領域幅の制御を行うことによって、筆記速度の変化だけでなく、図形の数の変化、すなわち筆記具11が記録媒体12に近づいているのか、あるいは遠ざかっているのかに応じて、筆跡の領域幅が制御される。なお、上述の例では筆記速度について3段階に分けているが、これに限らず、さらに区分してもよい。また、図形の数については筆記速度が予め決めてある範囲内の場合とその範囲を超えて速くまたは遅くなっている場合について5段階に分けているが、これに限られるものでなく、3以上の複数段階に区分すればよいし、それぞれの筆記速度の区分に応じて区分数を変更してもよい。さらに領域幅を増加または減少させる程度についても、上述の例に限られるものではなく、予め設定しておけばよい。
【0033】
以下、具体例を用いていくつかのケースについて説明する。以下の具体例においては、それぞれ、筆記方向と記して示した矢線の方向に筆記されているものとし、黒丸で示したタイミングで撮像部21が撮像するものとしている。筆跡の領域幅は黒線の本数により示しており、4本を通常の状態としている。
【0034】
図3は、筆記速度の変化が予め決めてある範囲内の場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図、図4は、撮像部で撮像された撮像画像の一例の説明図である。この例では(1)として示したタイミングで算出した筆記速度V1と、(2)として示したタイミングで算出した筆記速度V2との差が予め決めてある範囲内であるものとしている。
【0035】
例えば(1)として示したタイミングでは、撮像部21によって例えば図4(A)に示した撮像画像が得られているものとする。この場合の撮像画像から読み取られる図形(図中の黒の点)の数と、次の(2)のタイミングで撮像部21によって撮像された撮像画像から読み取られる図形の数との差が予め決められている範囲内であれば、図3(A)に示すように筆跡の領域幅は変更しない。
【0036】
(2)のタイミングで、例えば図4(B)に示す撮像画像が得られたとする。この図4(B)に示した撮像画像では、図4(A)に示した撮像画像に比べて図形の数が増加している。この図形の数の増加が、予め決められた範囲を超える場合には、増加の度合いにより筆跡の領域幅を減らす。図2の例ではa%以上b%未満であれば筆跡の領域幅を1だけ減少させる。すなわち図3(B)に示すように、タイミング(1)からタイミング(2)の区間の筆跡の領域幅について、それまで黒線4本分の筆跡の領域幅であったものを黒線3本分の筆跡の領域幅に減らす。
【0037】
また、(2)のタイミングで、例えば図4(C)に示す撮像画像が得られたとする。この図4(C)に示した撮像画像では、図4(B)に示した撮像画像に比べてさらに図形の数が増加している。この図形の数の増加が、予め決められた範囲を超える場合には、増加の度合いにより筆跡の領域幅を減らす。図2の例ではb%以上であれば筆跡の領域幅を2だけ減少させる。すなわち図3(C)に示すように、タイミング(1)からタイミング(2)の区間の筆跡の領域幅について、それまで黒線4本分の筆跡の領域幅であったものを黒線2本分の筆跡の領域幅に減らす。
【0038】
この例のように読み取られた図形の数が増加するということは、撮像部21と記録媒体12とが離れたことを示し、よって筆記具11が記録媒体12から離れようとしていると考えられる。従って、このような場合には筆跡の領域幅を細める。例えば文字の「はらい」などに対応した筆跡の領域幅の制御が行われる。
【0039】
図5は、「はらい」の場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。接触状態検出部22としてON/OFFスイッチなどを使用している場合、接触状態検出部22が筆記具11と記録媒体12との接触を検出してONの状態でも筆記具11が記録媒体12から離れ始めている場合がある。そのため、接触状態検出部22が記録媒体12との接触を検出しなくなるまでに、図形の個数の変化が現れる。図5に示した例では、図3で説明したようにタイミング(1)で読み取った図形の個数が個数Aであり、タイミング(2)で読み取った図形の個数が個数A+Bであって、図形の個数の増加が予め決められた範囲を超えているものとしている。そのため、黒線4本分から黒線3本分に筆跡の領域幅を減少させている。
【0040】
さらにタイミング(3)では図形の個数が個数A+C(C>B)に増加しており、図形の個数の増加が予め決められた範囲を超えているものとして、黒線3本分から黒線2本分に筆跡の領域幅を減少させている。このタイミング(3)で接触状態検出部22が記録媒体12との接触を検出しなくなった(OFF)ものとし、その後の筆跡の領域幅を0にしている。
【0041】
このような筆跡の領域幅の制御により、図5からも分かるように文字の「はらい」の際に次第に筆跡の領域幅が細くなって行く。これにより、筆記された「はらい」が筆跡記録部26に記録されることになる。
【0042】
図6は、筆記速度が遅くなった場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。この例では(1)として示したタイミングまでの筆記速度V1よりも、(1)のタイミングから(2)のタイミングまでの筆記速度V2の方が遅い、すなわちV1>V2とし、その差が予め決めてある範囲を逸脱する場合を示している。この場合には、図2のS78の処理により、図5に示すように筆跡の領域幅を増やす。筆記速度が遅くなる場合としては、文字の「止め」などの場合がある。
【0043】
図7は、筆記速度が速くなった場合の筆跡の領域幅制御の具体例の説明図である。この例では(1)として示したタイミングまでの筆記速度V1よりも、(1)のタイミングから(2)のタイミングまでの筆記速度V2の方が速い、すなわちV1<V2とし、その差が予め決めてある範囲を逸脱する場合を示している。
【0044】
例えば(1)として示したタイミングで撮像部21によって撮像された撮像画像から読み取られた図形の数と、次の(2)のタイミングで撮像部21によって撮像された撮像画像から読み取られた図形の数との差が予め決められている範囲内である場合には、筆記速度が速くなったことに対応して筆跡の領域幅を1だけ減少させる。この具体例では、図7(A)に示すようにタイミング(1)からタイミング(2)の区間の筆跡の領域幅について、それまで黒線4本分の筆跡の領域幅であったものを黒線3本分の筆跡の領域幅に減らしている。
【0045】
(1)のタイミングで読み取られた図形の数と、次の(2)のタイミングで読み取られた図形の数との差が、予め決められた範囲を超えて増加している場合には、増加の度合いにより筆跡の領域幅を減らす。図2の例ではe%以上f%未満であれば筆跡の領域幅を2だけ減少させる。すなわち図7(B)に示すように、タイミング(1)からタイミング(2)の区間の筆跡の領域幅について、それまで黒線4本分の筆跡の領域幅であったものを黒線2本分の筆跡の領域幅に減らす。
【0046】
また、(1)のタイミングで読み取られた図形の数と、次の(2)のタイミングで読み取られた図形の数との差が、予め決められた範囲を超えてさらに増加しており、例えば図2の例でf%以上となると、筆跡の領域幅を3だけ減少させる。すなわち図7(C)に示すように、タイミング(1)からタイミング(2)の区間の筆跡の領域幅について、それまで黒線4本分の筆跡の領域幅であったものを黒線1本分の筆跡の領域幅に減らす。
【0047】
なお、図7(B)や図7(C)に示す例のように、図7(A)に示す例よりも筆跡の領域幅を減らす場合、筆跡の領域幅に段差が生じないようにある区間において段階的に筆跡の領域幅を減らすようにしてもよい。図7(C)に示した筆跡の領域幅を3減らす場合について、段階的に減らした例を図7(D)に示している。この例では、タイミング(1)からタイミング(2)の区間の筆跡の領域幅について、それまでの黒線4本分の筆跡の領域幅を3本分、2本分、1本分となるように段階的に減らしている。このように、筆跡の領域幅に段差が生じないように筆跡の領域幅の制御を行ってもよい。
【0048】
図7に示した例のように、筆記速度が速くなりながら読み取られた図形の数が増加する場合としては、「はね」の場合などがある。上述の筆跡の領域幅制御によって、「はね」の場合にも対応した筆跡の領域幅の制御が行われることになる。この「はね」の場合も、接触状態検出部22が記録媒体12との接触を検出しなくなるまでに、図形の個数の変化が現れる。従って、接触状態検出部22が記録媒体12との接触を検出しなくなり、筆跡の領域幅を0にするまでに、徐々に筆跡の領域幅を減らす制御が行われ、筆記された「はね」が筆跡記録部26に記録されることになる。
【0049】
なお、いずれの具体例においても、筆跡の領域幅を減らす場合に当該領域幅の一方側から減らしているが、これに限らず、両側から順に減らしてもよい。また、ここでは図形の数が増加する場合について例示しているが、例えば書き始めなど、図形の数が減少する場合もあり、その場合には図2でも説明しているように筆跡の領域幅を増やすことになる。
【0050】
図8は、本発明の実施の一形態で説明した機能をコンピュータプログラムで実現した場合におけるコンピュータプログラム及びそのコンピュータプログラムを格納した記憶媒体とコンピュータの一例の説明図である。図中、31はプログラム、32はコンピュータ、41は光磁気ディスク、42は光ディスク、43は磁気ディスク、44はメモリ、51はCPU、52は内部メモリ、53は読取部、54はハードディスク、55はインタフェース、56は通信部である。
【0051】
上述の本発明の実施の一形態で説明した座標位置特定部23、図形読取部24、対応付け部25などの機能の全部または部分的に、コンピュータにより実行可能なプログラム31によって実現してもよい。その場合、そのプログラム31およびそのプログラムが用いるデータなどは、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶させておけばよい。記憶媒体とは、コンピュータのハードウェア資源に備えられている読取部53に対して、プログラムの記述内容に応じて、磁気、光、電気等のエネルギーの変化状態を引き起こして、それに対応する信号の形式で、読取部53にプログラムの記述内容を伝達するものである。例えば、光磁気ディスク41、光ディスク42(CDやDVDなどを含む)、磁気ディスク43,メモリ44(ICカード、メモリカードなどを含む)等である。もちろんこれらの記憶媒体は、可搬型に限られるものではない。
【0052】
これらの記憶媒体にプログラム31を格納しておき、例えばコンピュータ32の読取部53あるいはインタフェース55にこれらの記憶媒体を装着することによって、コンピュータからプログラム31を読み出し、内部メモリ52またはハードディスク54に記憶し、または予めROMなどに記憶させておき、CPU51によってプログラム31を実行することによって、上述の本発明の実施の一形態で説明した機能が全部又は部分的に実現される。あるいは、通信路を介してプログラム31をコンピュータ32に転送し、コンピュータ32では通信部56でプログラム31を受信して内部メモリ52またはハードディスク54に記憶し、CPU51によってプログラム31を実行することによって実現してもよい。
【0053】
コンピュータ32には、このほかインタフェース55を介して様々な装置と接続してもよい。例えば、筆記具11を別体として構成する場合には、インタフェース55を介して筆記具11内の撮像部21及び接触状態検出部22の出力を受け取る構成とすればよい。また、筆記具11内にCPU51を含む構成を含める場合には、インタフェース55または通信部56を通じて筆跡の領域幅を含む筆跡に関する情報を外部に出力するように構成してもよい。この場合、例えば筆跡記録部26は筆記具11内の内部メモリ53を部分的に使用して構成してもよいし、筆記具11外に設けてもよい。このほかにも、インタフェース55には情報を表示する表示手段や利用者からの情報を受け付ける受付手段等も接続されていてもよい。
【符号の説明】
【0054】
11…筆記具、12…記録媒体、13…図形、14…筆跡、21…撮像部、22…接触状態検出部、23…座標位置特定部、24…図形読取部、25…対応付け部、26…筆跡記録部、31…プログラム、32…コンピュータ、41…光磁気ディスク、42…光ディスク、43…磁気ディスク、44…メモリ、51…CPU、52…内部メモリ、53…読取部、54…ハードディスク、55…インタフェース、56…通信部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
座標位置に応じて予め定められた規則に従って図形が配置されている記録媒体を予め定められた撮像範囲で撮像する撮像手段からの撮像画像をもとに前記撮像画像に含まれる前記図形から前記図形が示す前記記録媒体上の座標位置を特定する特定手段と、前記撮像画像内での前記図形の個数または間隔を読み取る読取手段と、前記読取手段で読み取られた前記図形の個数または間隔に従って筆跡の領域幅を対応付ける対応付け手段を有することを特徴とする画像変換装置。
【請求項2】
前記対応付け手段は、前記特定手段で特定された座標位置から筆記速度を算出し、前記前記図形の個数または間隔、並びに前記筆記速度に従って筆跡の前記領域幅を対応付けることを特徴とする請求項1に記載の画像変換装置。
【請求項3】
コンピュータに、座標位置に応じて予め定められた規則に従って図形が配置されている記録媒体を予め定められた撮像範囲で撮像する撮像手段からの撮像画像をもとに前記撮像画像に含まれる前記図形から前記図形が示す前記記録媒体上の座標位置を特定する特定処理と、前記撮像画像内での前記図形の個数または間隔を読み取る読取処理と、前記読取処理で読み取られた前記図形の個数または間隔に従って筆跡の領域幅を対応付ける対応付け処理を行わせるものであることを特徴とする画像変換プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−48537(P2011−48537A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195279(P2009−195279)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】