説明

画像定着ローラ

【課題】芯軸周上に設けられたゴム弾性体層のゴム破壊を防止し耐久性を大幅に向上した画像定着ローラを提供する。
【解決手段】金属製の芯軸12と、この芯軸12の周上に設けられたゴム弾性体層14とを備え、ゴム弾性体層14に、平均粒子径が1〜70μm、好ましくは20〜40μmのフィラーが添加されている。フィラーの平均粒子径を規定することによって、フィラーとその周辺のゴム間の隙間を狭めて、隙間によるゴム破壊の発生を防止するものである。ゴム弾性体層の周上にはフッ素樹脂層16を設けてもよい。ゴム弾性体層14はシリコーンゴムにより形成され、フッ素樹脂層16はPFAチューブからなるものでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の定着部に用いられる画像定着ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機やプリンタのフルカラー化と高速化が急速に進んでいる。画像定着部品としては、従来からアルミニウムや鉄等の金属製の芯軸上に、ゴム弾性体層と表層にトナーとの離型性に優れるフッ素樹脂とを被覆した画像定着ローラが広く使用されている。
【0003】
このような画像定着ローラにおけるゴム弾性体層に要求される特性としては、高熱伝導性、低硬度化、高耐久性、耐熱性等が挙げられる。これらの特性を満たすために様々なフィラーが添加されているが、特に規定しなければ、平均粒子径100μm以上のフィラーも分布している。なお、複写機、プリンタ等の小型化、低価格化に対応すべく、熱伝導性の低い、すなわち、蓄熱性のよい材料としてシリコーンゴムの中に平均粒子径が200μm以下の中空フィラーを配合することが知られている(特許文献1)。
また、高速フルカラー化を達成するために、定着温度を上げたり、ローラ間荷重を上げてニップ幅を広く取るなどの方法が一般的である。
【特許文献1】特開2002−148990号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
上記した定着温度を上げたり、ローラ間荷重を上げてニップ幅を広く取るなどの方法はゴム弾性体層には過酷な使用条件となり、耐久性が低下する。
複写機やプリンタの定着部に用いられる画像定着ローラは、常に200℃程度の高温にさらされ、高い荷重がかけられて変形と復元を繰り返している。高温下で、ゴム弾性体層のゴムが変形と復元を繰り返すことによって、フィラーの平均粒子径が大きいと、フィラーとその周辺のゴム間に隙間が生じ、そこが起点となってゴムが破壊すると考えられる。
【0005】
上述のような耐久性が低下する原因を調査したところ、ゴムが破壊した起点に100μm以上のフィラーの粗粒分、及びその周辺に空洞が確認された(図3、図4参照)。なお、図3は耐久テストで発生したゴム弾性体層のゴム破壊部分を示す図、図4は図3の同ゴム破壊部分をSEM(電子顕微鏡)で拡大して示す説明図である。図4から分るように、ゴム破壊部分には200μm以上の空洞が生じており、この空洞内に、粒径が約150μmのフィラーが存在している。
【0006】
本発明は、以上の点に着目してなされたもので、芯軸周上に設けられたゴム弾性体層の耐久性を大幅に向上した画像定着ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の各実施例においては、それぞれ次のような構成により上記の課題を解決する。
〈構成1〉
芯軸と、上記芯軸周上に設けられたゴム弾性体層とを備え、上記ゴム弾性体層に、平均粒子径が1〜70μmのフィラーが添加されていることを特徴とする画像定着ローラ。
【0008】
フィラーの平均粒子径を規定することによって、フィラーとその周辺のゴム間に隙間が生じ、そこが起点となってゴムが破壊するという現象の発生を防止できる。ゴム弾性体層の耐久性が大幅に向上する。
【0009】
〈構成2〉
構成1に記載の画像定着ローラにおいて、上記ゴム弾性体層の周上にフッ素樹脂層を設けたことを特徴とする画像定着ローラ。
【0010】
〈構成3〉
構成1又は2に記載の画像定着ローラにおいて、上記フィラーは、平均粒子径が20〜40μmであることを特徴とする画像定着ローラ。
【0011】
〈構成4〉
構成1又は2に記載の画像定着ローラにおいて、上記ゴム弾性体層はシリコーンゴムにより形成され、上記フッ素樹脂層はPFAチューブからなるものであることを特徴とする画像定着ローラ。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
本発明者等は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、図1に示す画像定着ローラ10において、芯軸12周上に設けられたゴム弾性体層14に、平均粒子径が1〜70μm、好ましくは20〜40μmのフィラーが添加されていることにより、ゴム弾性体層14のゴム耐久性が大幅に向上させることが可能となることを知見し本発明をなすに至ったものである。
【0013】
フィラーの平均粒子径を規定することによって、フィラーとその周辺のゴム間に隙間が生じ、そこが起点となってゴムが破壊するという現象の発生が防止できる。従ってゴム弾性体層の耐久性が大幅に向上する。
【0014】
ゴム弾性体層14を形成するゴム材料としては、シリコーンゴム、エチレン・プロピレンゴム(EPゴム)、ブチルゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリクロロプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム等が用いられる。
本発明は、ゴム弾性体層14の周上に、フッ素樹脂層16を設けた画像定着ローラを含んでいる。フッ素樹脂層16はPFAチューブからなる。
【実施例1】
【0015】
[実施例]
外径35mmのアルミニウム製芯軸上に周知のプライマーを塗布して、周知の成型方法にてシリコーンゴムとPFAチューブを被覆成型してゴム厚2.5mm、外径40mmの画像定着ローラを得た。
ここで使用したシリコーンゴムには平均粒子径が30μm以下のフィラー(石英粉)を、ポリマー100重量部に対して90重量部を添加した。添加したフィラーの状況を図5及び図6に示している。図5はこの実施例で使用したフィラー20の分布状況を示す説明図、図6は図5のフィラー20をSEMで拡大して示す説明図である。
得られた画像定着ローラをフルカラー複写機(コピースピードA4紙 30枚/分)に搭載して、ローラ表面温度180℃、ニップ幅9mmの設定で通紙耐久テストをしたところ、15万枚のコピーでもゴム破壊は発生せず、引続き使用できる状態であった。
【0016】
[比較例]
100μm以上の平均粒子径が含まれるフィラーを添加したシリコーンゴムを使用して、上記実施例と同じサイズの画像定着ローラを作製して、同様なテストを実施したところ、5万枚のコピーでゴム破壊が生じ画質が著しく低下した。添加したフィラーの分布状況を図7及び図8に示している。図7はこの比較例で使用したフィラー22を示す説明図、図8は図7のフィラー22をSEMで拡大して示す説明図である。
【0017】
図2にフィラー平均粒径とコピー枚数との関係を示している。この図に示されるように、フィラーの粒子径が細かいことによりゴム破壊が起こり難く、従ってコピー枚数が増大する。しかし、平均粒子径が1μmを下回るフィラーはかなり微細であり実質的にローラ製造時の取扱いが困難になる。また、フィラーの粒子径が70μmを越えると、ゴム破壊が生じ易く、コピー枚数が大幅に低減する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】実施例1の画像定着ローラを示す断面図である。
【図2】フィラー平均粒径とコピー枚数との関係を示す線図である。
【図3】耐久テストで発生したゴムの破壊部分を示す説明図である。
【図4】図3のゴムの破壊部分を拡大して示す説明図である。
【図5】実施例1で使用したフィラーを示す説明図である。
【図6】図5のフィラーを拡大して示す説明図である。
【図7】比較例で使用したフィラーを示す説明図である。
【図8】図7のフィラーを拡大して示す説明図である。
【符号の説明】
【0019】
10 画像定着ローラ
12 芯軸
14 ゴム弾性体層
16 フッ素樹脂層
20、22 フィラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯軸と、前記芯軸周上に設けられたゴム弾性体層とを備え、
前記ゴム弾性体層に、平均粒子径が1〜70μmのフィラーが添加されていることを特徴とする画像定着ローラ。
【請求項2】
請求項1に記載の画像定着ローラにおいて、
前記ゴム弾性体層の周上にフッ素樹脂層を設けたことを特徴とする画像定着ローラ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の画像定着ローラにおいて、
前記フィラーは、平均粒子径が20〜40μmであることを特徴とする画像定着ローラ。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の画像定着ローラにおいて、
前記ゴム弾性体層はシリコーンゴムにより形成され、前記フッ素樹脂層はPFAチューブからなるものであることを特徴とする画像定着ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−156290(P2007−156290A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−354389(P2005−354389)
【出願日】平成17年12月8日(2005.12.8)
【出願人】(306013119)昭和電線デバイステクノロジー株式会社 (118)
【Fターム(参考)】