説明

画像形成システム

【課題】 高画質、高生産性という特徴を有する画像形成システムを提供すること
【解決手段】 本発明は、各々が記録材上に画像形成を行う画像形成領域を有する、複数の画像形成装置と、前記複数の画像形成装置に共通の記録材搬送路であって、前記複数の画像形成装置の画像形成領域を通過する記録材搬送路と、処理対象となる画像データを入力する入力手段と、前記画像データが示す画像を、複数の部分画像に分割する分割手段と、前記複数の部分画像の各々を、前記複数の画像形成装置のうち少なくとも2つの画像形成装置のいずれかに分配する分配手段とを有する画像形成システムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の画像形成装置から構成される画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、いわゆるオンデマンドプリンティング(以下、「ODP」という)等、顧客の注文に応じて印刷を行うサービスが提供されている。ODPサービスは、印刷部数が少数の原稿を、多品種印刷する、いわゆる少ロット多品種という特徴を有している。そのため、サービスの提供にあたっては、プリンタ等の画像形成装置が用いられることが多い。この場合、生産性の高い(高価な)装置1台のみでODPサービスの提供を行うと、故障によりその装置が使用不能な状態になったときには、装置の復帰までサービスの停止を余儀なくされることとなる。したがって、復帰に時間を要する場合にはサービスの停止状態が長時間にわたり、顧客への納期に間に合わなくなるという問題が生じる。このようなリスクを回避するために、複数の画像形成装置から構成される画像形成システムを用いることが考えられている。このような画像形成システムによれば、画像形成装置のうちの1台が故障した場合であっても、残りの装置を用いてサービスの提供を続けることができる。
【0003】
上述のリスク回避の観点に加えて、コストの観点からも、複数の画像形成装置から構成される画像形成システムを導入するケースが増えている。すなわち、生産性は高いが高価な装置を1台だけ用いるよりも、1台あたりの生産性は低くとも安価な装置を複数台用いることにより、システム全体のコストを抑えつつ、システム全体としては高価な装置と同等あるいはそれ以上の生産性を得ることが可能であるからである。以上のような理由により、複数の画像形成装置から構成される画像形成システムが普及し始めている。
【0004】
このような画像形成システムとして、例えば特許文献1〜5に記載されたものが存在する。ここで、特許文献1、2に記載の技術は複数の装置でそれぞれ同じ画像を出力するものであり、特許文献3〜5に記載の技術は、2つの画像形成ユニットにより、記録材(用紙)の両面に同時に画像形成する画像形成装置に関するものである。
【特許文献1】特開2003−60925号公報
【特許文献2】特開2003−169220号公報
【特許文献3】特開平9−258494号公報
【特許文献4】特許3456338号公報
【特許文献5】特許3406453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、記録材上に形成される画像は、像密度の高いもの/低いもの、あるいは、線画/いわゆるベタ画像等のように、様々な種類の画像を含んでいる。これらの画像は、それぞれ最適な画像形成条件が異なるものである。したがって、記録材上に形成される画像の品質を向上するという観点からは、個別に画像形成条件を設定することが望ましい。しかし、従来は1台の画像形成装置でこれらすべての種類の画像を取り扱うため、どの種類の画像に対してもほどほどの画像を形成できる、いわば中庸な画像形成条件が用いられていた。したがって、実際上、画像形成装置の能力を完全に活用することは困難であるという問題があった。
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、高画質、高生産性という特徴を有する画像形成システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の課題を解決するため、本発明は、トレイから記録材を供給する第1の供給手段と、装置外部から記録材を供給する第2の供給手段と、前記第1または第2の供給手段から供給される記録材上に画像形成を行う画像形成手段と、画像形成された記録材を排出する第1の排出手段とを各々備えた複数の画像形成装置であって、各々を順次経由して記録材が搬送されるように縦続接続され、相互に接続された2つの画像形成装置は、一方の画像形成装置から前記第1の排出手段によって排出される記録材が他方の画像形成装置の前記第1の供給手段から供給されるように構成された複数の画像形成装置と、処理対象となる画像を入力する入力手段と、前記入力手段を介して入力された画像を、複数の部分画像に分割する分割手段と、前記複数の部分画像の各々を、前記複数の画像形成装置のうち少なくとも2つの画像形成装置のいずれかに分配する分配手段とを有する画像形成システムを提供する。
ここで、各画像形成装置が、画像形成された記録材を前記第1の排出手段とは異なる位置に排出する第2の排出手段を備え、前記画像形成システムが、1枚の記録材上に前記複数の画像形成装置のうち少なくとも2つの画像形成装置が画像形成を行う高画質モードと、1枚の記録材上に、前記複数の画像形成装置のうち1つの画像形成装置が画像形成を行う高生産性モードとの2つの動作モードのうち、指定されたモードでの動作が行われるように各画像形成装置の前記第1、第2の供給手段、画像形成手段および前記第1、第2の排出手段の動作を制御する制御手段をさらに有する構成としてもよい。
さらに、前記少なくとも2つの画像形成装置のうち、少なくとも1つの画像形成装置は、他の画像形成装置とは異なる画像形成条件を有する構成としてもよい。
さらに、前記画像形成システムは、動作モードを切り換える指示を入力する動作モード切替手段と、前記動作モード切替手段により動作モードの切り換えが指示されたときに、前記画像形成条件を、切り換え後の動作モードに適した条件に変更する画像形成条件変更手段とをさらに有する構成としてもよい。
【0007】
好ましい態様において、前記複数の画像形成装置の各々が、装置外部から前記第1の供給手段を介して供給された記録材を前記画像形成手段を経由して前記第1の排出手段から排出する搬送路と前記画像形成手段を経由しないで前記第1の排出手段から排出する搬送路とを備え、当該画像形成システムの動作モードに応じて記録材の両搬送路を切り換えてもよい。
ここで、前記複数の画像形成装置の各々は、画像形成処理を実行できない状態になったことを検知する検知手段を有し、前記搬送路切り替え手段が、前記検知手段により画像形成処理を実行できない状態になったことが検知されたときに、記録材搬送路の切り替えを行う構成としてもよい。
さらに、前記画像形成システムは、前記複数の画像形成装置のうち、いずれかの画像形成装置において画像形成処理を実行できない状態になったことが検知されたときに、使用者にその旨を報知する報知手段をさらに有する構成としてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、記録材上に、1台の画像形成装置のみでは形成できない画像を形成することができる。また、本発明によれば、各画像形成装置は、並列処理を行う高生産性モードと、直列処理を行う高画質モードとを有することで、使用者の要求に応じてこれらを切り換えて使用できる。また、本発明によれば、画像形成システムを構成する複数の画像形成装置のうち1台に故障が発生した場合でも、残りの装置で処理を継続することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
<1.第1実施形態>
<1−1.システム構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る画像形成システム1の構成を示すブロック図である。画像形成システム1は、プリンタ10a、10b、10cの3台の画像形成装置と、プリンタ10a〜10cを制御する制御装置であるIOTマネージャ19から構成される。IOTマネージャ19は、プリンタ10a〜10cの各々と有線あるいは無線で接続されており、プリンタ10a〜10cに対し制御信号や画像データを送信する機能を有する。本実施形態において、プリンタ10a〜10cは、同一のハードウェア構成(以下でプリンタ10として説明する)を有する画像形成装置である。添字a〜cは3台の画像形成装置を区別するため、説明の便宜上用いられるものであり、プリンタ10a〜10cの各々にハードウェア構成上の差異は無い。
画像形成システム1は、3台の画像形成装置に共通の用紙搬送路58を有する。用紙搬送路58については後述する。
【0010】
図2は、プリンタ10の構成を示すブロック図である。プリンタ10は、用紙(記録材)上に画像を形成するための画像形成部110と、プリンタ10の各部を制御する制御部111と、他の機器とデータあるいは制御信号の送受信をするためのI/F(インターフェース)112と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部113とを有する。各構成要素は、バス114を介して相互に接続されている。
図3は、プリンタ10の画像形成部110の構成を示す図である。画像形成部110は、図3中の矢印a方向に回転しながらY、M、C、K各色のトナー像が作像される感光体ドラム71と、感光体ドラム71を一様に帯電させる帯電器72と、YMCK各色の画像データに基づいて変調された露光光を、帯電した感光体ドラム71にレーザ光を照射することでYMCK各色の静電潜像を形成する露光装置73と、YMCK各色の現像部を有し、感光体ドラム71に形成された静電潜像をトナーによって現像することで感光体ドラム71にYMCK各色のトナー像を作像するロータリー現像器74と、転写後の感光体ドラム71表面に残留しているトナーを回収するドラムクリーナ75とを有する。
【0011】
また、画像形成部110は、感光体ドラム71に作像されたトナー像が一時転写される中間転写ベルト76を備える。中間転写ベルト76は無端状のベルト部材であり、駆動ロール77、一次転写ロール78、および二次転写ロール79等により張架され、駆動ロール77により図中の矢印b方向に循環移動される。また、中間転写ベルト76上には、二次転写後に残留しているトナーを回収するベルトクリーナ80が設けられている。
【0012】
一次転写ロール78はこの中間転写ベルト76を挟んで感光体ドラム71とニップ領域を形成し、このニップ領域において感光体ドラム71周面のトナー像を圧接力と静電力により中間転写ベルト76に転写する。中間転写ベルト76上に転写されたトナー像は中間転写ベルト76の回転により搬送され、二次転写ロール79とバックアップロール81とにより形成されるニップ領域において、レジストロール82によりタイミングを調整されつつ搬送されてくる用紙に二次転写される。
【0013】
用紙(記録材)は、搬入口60から供給され、複数の搬送ロール87を有する用紙搬送路88に沿って搬送される。用紙搬送路88上には、搬送ベルト89と、定着装置90と、排出ロール93とが設けられている。二次転写ロール79とレジストロール82とにより形成されるニップ領域においてトナー像が転写された用紙は、搬送ベルト89により定着装置90へと搬送される。定着装置90は定着ロール91、92から構成され、トナー像が形成された用紙を加熱および加圧することで用紙上のトナー像を定着させる。排出ロール93はトナー像が定着された用紙を排出口61へと排出する。
【0014】
ここで、搬入口60と排出口61とは、プリンタ10の設置面からの高さがほぼ同一となるように設計されている。したがって、2台のプリンタ10を互いの搬入口60と排出口61とが向き合うように接続すると、1台目のプリンタ10の排出口61と2台目のプリンタ10の搬入口60とはほぼ同一の位置となり、1台目の搬入口60から2台目の排出口61まで、用紙の搬送路が形成される。図1には、3台のプリンタ10(10a〜10c)を直列に接続した構成が示されている。本実施形態では、プリンタ10を3台接続することにより、1つの用紙搬送路58が形成される。なお、4台以上の画像形成装置を用いて画像形成システム1を構成してもよい。
【0015】
また、プリンタ10は、内部にカット紙トレイ85を有している。搬入口60からだけでなく、カット紙トレイ85からも用紙を供給可能な構成となっている。さらに、プリンタ10は着脱可能な排紙トレイ94を有している。別のプリンタ10と接続する場合には排紙トレイ94は取り外すが、用紙搬送路の最下流に位置するプリンタ10においては、排紙トレイ94を取り付けて使用することにより、排出された用紙は排紙トレイ94に蓄積される。
【0016】
本実施形態における画像形成システム1は、上述のプリンタ10を3台(プリンタ10a〜10c)接続したものである。これらの3台の画像形成装置は、それぞれ異なる種類の画像形成を担当するように役割分担がされる。例えば、プリンタ10aは高像密度の画像、プリンタ10bは中像密度の画像、プリンタ10cは低像密度の画像を形成するというように役割分担がされる。
【0017】
ところで、一般に、現像器の現像性は、現像器が画像形成する像密度に依存することが知られている。これは、次のような理由による。すなわち、例えばある画像形成装置において、高像密度の画像ばかりを現像すると、現像器はトナーを大量に消費するので、比較的新鮮なトナーを常に使用することになる。一方、低像密度の画像ばかりを現像すると、現像器はトナーを少量しか消費しないため、古いトナーをいつまでも使用することになる。ここで、新鮮なトナーと古いトナーでは帯電状態が異なる。したがって、同じ画像を形成する場合でも、それ以前に高像密度の画像ばかり形成していたときと、低密度の画像ばかり形成していたときとでは、現像器のトナーの帯電状態は異なるものとなる。こうして、現像性が像密度に依存するのである。
【0018】
ここで、像密度によってプリンタ10を役割分担すると、ある画像形成装置が形成する画像の像密度は一定の範囲に限定される。したがって、低像密度用のプリンタ10cにおいても、補充するトナー量を少なくすることにより常に新鮮なトナーを用いて画像形成を行うことができ、現像性の変化を抑制することができる。このように、複数のプリンタ10に対し役割分担を行うことで、より高品質な画像を形成することが可能となる。
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、プリンタ10aの構成要素には添字「a」を、プリンタ10bの構成要素には添字「b」を付けるというように、プリンタ10a〜10cの構成要素を区別する。すなわち、「記憶部113a」と記載されるものは、プリンタ10aの記憶部113を意味する。
【0019】
図4は、IOTマネージャ19の構成を示すブロック図である。CPU(Central Processing Unit)11は、RAM(Random Access Memory)12を作業エリアとして、ROM(Read Only Memory)13あるいはHDD(Hard Disk Drive)14から読み出したプログラムを実行する。I/F15は、外部の機器とデータあるいは制御信号を送受信するためのインターフェイスである。IOTマネージャ19は、使用者から印刷指示および画像データを受信すると、あらかじめ決められた条件に従って画像データを分割してプリンタ10a〜10cの3台の画像形成装置に割り当て、割り当てた画像データおよびそれに対する印刷指示を、プリンタ10a〜10cにそれぞれ出力する。各構成要素は、バス117を介して相互に接続されている。これらの動作については、以下において詳細に述べる。
【0020】
<1−2.動作>
続いて、画像形成システム1の動作例について、図5および図6を参照して説明する。
図5は画像形成システム1の動作を示すフローチャートであり、図6は本実施形態における処理対象となる画像データの第1ページ目の画像を示す模式図である。
使用者は、IOTマネージャ19に有線あるいは無線で、直接あるいはネットワークを介して接続されているコンピュータ装置(図示略)から、画像データおよびその画像データが示す画像の印刷(画像形成)を指示する印刷指示を送信する。印刷指示は、例えば印刷部数、用紙サイズ等の情報を含んでいる。
【0021】
IOTマネージャ19が画像データおよび印刷指示を受信すると、IOTマネージャ19のCPU11は、まず、処理対象の画像データのうち、第1ページ目の画像データを抽出する(図6(a))。CPU11は、抽出した第1ページの画像データに対し、周知のレイアウト抽出処理を施し、第1ページの画像を複数の領域に分割する(図5:ステップS11)。以下、この分割された画像を「部分画像」という。本実施形態においては、図6(b)に示されるように、第1ページの画像はA、B、C、Dの4つの部分画像に分割される。ここで、部分画像A、Cは文字からなる像密度3%の画像であり、部分画像Bはカラー写真からなる像密度40%の画像であり、部分画像Dは線画からなる像密度15%の画像である。
【0022】
CPU11は、これらの部分画像の各々に対し、画像データから像密度の算出をする。CPU11は、算出した像密度に基いて、その部分画像を低像密度、中像密度、高像密度のいずれかに分類する(図5:ステップS12)。すなわち、HDD14は、部分画像を分類するための分類テーブルTB1を記憶している。分類テーブルTB1は、分類の基準となるパラメータを特定する識別子と、そのパラメータについて分類する際のしきい値とを対応付けて記憶したものである。図7は、分類テーブルTB1を例示する図である。図7に示されるように、本実施形態においては、識別子としては「像密度」が、しきい値としては「20%」および「5%」が、それぞれ記憶されている。画像形成システム1は3台の画像形成装置を接続したものであるので、パラメータは2つのしきい値により高・中・低の3つの領域に分類される。これにより、像密度が5%以下の部分画像は低像密度に分類され、像密度が5%〜20%の部分画像は中像密度に分類され、像密度が20%を超える部分画像は高像密度に分類される。したがって、部分画像A、Cは低像密度に、部分画像Bは高像密度に、部分画像Dは中像密度にそれぞれ分類される。
【0023】
CPU11は、分類した部分画像の画像データの各々に、その部分画像が属する分類区分を示す区分識別子を付加する。すなわち、高像密度、中像密度、低像密度の部分画像データに、それぞれ「H」、「M」、「L」という区分識別子を付加する。
CPU11は、部分画像データに付加された識別子に基いて部分画像を合成し、印刷処理用の処理画像データを生成する(図5:ステップS13)。具体的には次のとおりである。CPU11は、同一の分類区分に属する部分画像同士を結合して処理画像データを生成する。本実施形態では、部分画像A、Cは低像密度に分類されるため、CPU11は、部分画像A、Cを結合した画像40(図6(c))を示す画像データを生成する。部分画像B、Dは同一の分類区分に属する他の部分画像が存在しないため、単独でそのまま処理画像データとなる(画像41:図6(d)、画像42:図6(e))。処理画像データも、部分画像データと同一の区分識別子を有している。
【0024】
CPU11は、区分識別子に基いて、処理画像データをプリンタ10a〜10cの3台の画像形成装置に割り当てる。具体的には、以下のとおりである。HDD14は、画像形成システム1を構成する画像形成装置(プリンタ10a〜10c)の各々を特定する画像形成装置識別子と、区分識別子との組を記憶した割り当てテーブルTB2を記憶している。図8は、割り当てテーブルTB2を例示する図である。プリンタ10a、10b、10cはそれぞれ、「1」、「2」、「3」の画像形成装置識別子を有している。したがって、画像40、41、42はそれぞれ、プリンタ10a、10b、10cに割り当てられる。
CPU11は、使用者から送信された印刷指示に基づき、各処理画像データに対する印刷指示を生成する。このとき、印刷(画像形成)を行わない画像形成装置に対しては、その旨を示す指示を生成する。CPU11は、生成した印刷指示および処理画像データを各画像形成装置に送信する(図5:ステップS14)。
【0025】
各画像形成装置は、印刷指示を受信すると、その印刷指示に基いて画像形成処理を行う(図5:ステップS15)。例えば、プリンタ10aは、受信した印刷指示に基いて、自身が画像形成を行うか否か判断する。本実施形態では、プリンタ10aは図6(c)に示す画像40について画像形成処理を行う。
【0026】
プリンタ10aは、自身が用紙搬送路の最上流に位置する旨を示す識別子を記憶している。プリンタ10aは、印刷指示を受信すると、用紙搬送路の自身が最上流の画像形成装置であるか否か判断する。本実施形態において、この判断結果は肯定的であるので、プリンタ10aはカット紙トレイ85aから用紙を1枚送り出し、用紙搬送路88aに導入する。用紙搬送路88aにおいては、二次転写ロール79aとバックアップロール81aとにより形成されるニップ領域において、搬送されてくる用紙に画像40に対応するトナー画像が転写される。トナー画像が転写された用紙は定着装置90aにおいて加熱および加圧され、用紙上のトナー像は定着される。定着装置90aを通過した用紙は、排出ロール93aにより、後続するプリンタ10bの搬入口60bに導入される。
【0027】
プリンタ10bの用紙搬送路88bに用紙が導入されると、プリンタ10aにおける場合と同様に、図6(d)に示される画像41に対応するトナー画像が用紙に転写、定着される。用紙は、排出口61bから、後続するプリンタ10cの搬入口60cに導入される。ここでも同様に、図6(e)に示される画像5に対応するトナー画像が用紙に転写、定着される。
こうしてプリンタ10a〜10c内の搬送路を通過した用紙は、排出ロール93cにより、排紙トレイ94に出力される。
【0028】
<1−3.変形例>
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
プリンタ10a、10b、10cの役割分担は、像密度によって分類されるものに限られない。例えば、プリンタ10aは文字などの線画、プリンタ10bは写真などのベタ部、プリンタ10cはそれ以外、というように処理対象となる画像の種類に応じて分類してもよい。文字など線画のオブジェクトに対しては高解像度が、写真などベタ部のオブジェクトに対しては階調性や粒状性が要求される。したがって、各画像形成装置の画像形成条件をこれらのオブジェクト毎に最適化しておくことにより、あらかじめオブジェクト毎に最適化された画像形成条件に設定された画像形成装置を用いて、複数種類のオブジェクトを含む画像を、複数の画像形成装置を用いて画像形成することができる。
【0029】
また、例えば、各画像形成装置が、それぞれほぼ同じ量のトナーを用紙(記録材)上に定着するように役割分担をしてもよい。すなわち、CPU11は、画像データを部分画像に分割すると、部分画像ごとに必要トナー量を算出する。そして、CPU11は、各画像形成装置に割り当てられる部分画像を形成するのに必要なトナー量が、画像形成装置間で均等となるように部分画像を割り当てる。
この変形例によれば、画像形成に必要なトナー量を分割することが可能となる。すなわち、第1実施形態に示されるように3台の画像形成装置を用いて画像形成を行う場合は、各画像形成装置がトナーを1/3ずつ用紙上に定着させることとなり、現像や転写の負荷を軽減することができる。
【0030】
また、複数の画像形成装置全体で、最終的に要求されるトナー量を用紙(記録材)上に定着するように役割分担をしてもよい。すなわち、第1実施形態に示したように、3台の画像形成装置を使用する場合は、各画像形成装置が必要量の1/3ずつトナーを用紙上に定着させる構成としてもよい。用紙上に転写するトナー量が多いと、いわゆるリトランスファや転写不足といった不具合が発生することが知られている。このような場合でも、各画像形成装置が必要量の1/3ずつトナーを転写、定着することにより、これらの不具合を防止することができる。
あるいは、各画像形成装置がそれぞれ必要量のトナーを用紙上に転写、定着する構成としてもよい。すなわち、3台の画像形成装置を使用した場合は、通常の3倍のトナーが用紙上に定着される。これにより、いわゆるOHPフィルム等の透過フィルムの透過率を変更することが可能となる。また、通常よりも多く定着装置90を通過させることで、出力物のグロスを変更することも可能となる。
【0031】
これらの変形例では、CPU11は画像データを部分画像に分割することはせず、トナー量を指定する印刷指示とともに、各画像形成装置に同一の画像データを送信する。なお、各画像形成装置が定着するトナー量は同じでなくてもよい。例えば、1番目の画像形成装置で必要量の20%のトナーを定着し、2番目の画像形成装置で残り80%のトナーを定着する構成としてもよい。
【0032】
<1−4.効果>
以上で説明したように、本実施形態によれば、1ページの画像は複数の部分画像に分割され、各部分画像は、その部分画像に対して最適の画像形成条件を有する画像形成装置により画像形成される。つまり、従来のように1ページの画像を1台の画像形成装置で形成するシステムと異なり、本実施形態においては、1ページの画像は複数台の画像形成装置により形成される。したがって、本実施形態によれば、記録材(用紙)上に、より高品質な画像を、あるいは1台の画像形成装置のみでは形成できない画像を形成することができる。
【0033】
<2.第2実施形態>
<2−1.システム構成>
図9は、本実施形態に係る画像形成システム2の構成を示すブロック図である。画像形成システム2は、プリンタ20a、20b、20cの3台の画像形成装置と、プリンタ20a〜20cを制御する制御装置であるIOTマネージャ19から構成される。IOTマネージャ19は、第1実施形態におけるIOTマネージャ19と同一の構成(図4)を有しているのでその説明は省略する。本実施形態において、プリンタ20a〜20cは、同一のハードウェア構成(以下でプリンタ20として説明する)を有する画像形成装置である。添字a〜cは3台の画像形成装置を区別するため、説明の便宜上用いられるものであり、プリンタ20a〜20cの各々にハードウェア構成上の差異は無い。
本実施形態においては、画像形成システム2は、共通の用紙搬送路58の他に、各画像形成装置は別の用紙搬送路である用紙搬送路98を有する。
【0034】
図10は、プリンタ20の構成を示すブロック図である。プリンタ20は、用紙(記録材)上に画像を形成するための画像形成部120と、プリンタ20の各部を制御する制御部111と、他の機器とデータあるいは制御信号の送受信をするためのI/F112と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部113とを有する。ここで、画像形成部120以外の構成要素は、第1実施形態におけるプリンタ10と同一である(図2)。
【0035】
図11は、プリンタ20の画像形成部120の構成を示す図である。画像形成部120は、第1実施形態におけるプリンタ10の画像形成部110(図3)とほぼ同じような構成を有している。そこで、図11においては、図3に示される画像形成部110と同一の構成要素については、同一の符号が付されている。これらの構成要素についての説明は省略する。
【0036】
画像形成部120が画像形成部110と異なる点は、定着装置90の後に、用紙搬送路88とは別の用紙搬送路98を有する点である。これら2つの搬送路を切り換えるため、画像形成部110は可動式の搬送路切り替えロール96を有している。搬送路切り替えロール96は、制御部111からの制御信号に応じて、図11中cおよびdで示される位置に移動可能である。搬送路切り替えロール96が図11中cの位置にあるときは、用紙は用紙搬送路88を通り、図11中dの位置にあるときは、用紙は用紙搬送路98を通る。
用紙搬送路98においては、用紙は搬送ロール87により搬送され、排出ロール95により排紙トレイ97に出力される。これにより、画像形成部120は、画像形成処理を行った用紙を、次段のプリンタ20の搬入口60に導入せず、排紙トレイ97に出力することができる。
【0037】
<2−2.動作>
本実施形態における画像形成システム2は、動作モードとして、生産性を優先する高生産性モードと、画質を優先する高画質モードとを有する。動作モードは、使用者によって指定される。すなわち、使用者は、コンピュータ装置(図示略)を用いて印刷指示を行う際に、動作モードの指定を行う。使用者に指定された動作モードを示す情報は、動作モード識別子として、使用者のコンピュータ装置から画像形成システム2に送信される印刷指示に付加される。以下、図面を参照してこれらの動作モードについて説明する。
【0038】
<2−2−1.高生産性モード>
図12は、画像形成システム2の動作を示すフローチャートである。
使用者のコンピュータ装置から、画像データおよび印刷指示を受信すると、IOTマネージャ19のCPU11は、まず動作モードの判定を行う(ステップS21)。具体的には、次のとおりである。CPU11は、受信した印刷指示から動作モード識別子を抽出する。CPU11は、抽出した動作モード識別子に基いて、動作モードの判定を行う。ここでは、動作モード識別子が「高生産性モード」を示す場合の動作について説明する。
【0039】
動作モード識別子が「高生産性モード」であると判断すると、CPU11は、印刷部数の情報を抽出する。CPU11は、抽出した印刷部数を、画像形成システム2を構成する画像形成装置であるプリンタ20に分配する。例えば、印刷部数が100部である場合、CPU11はこれを3で割る。答は1台あたり33部、あまり1である。CPU11は、まずプリンタ20a〜20cに33部づつ割り当て、あまりをプリンタ20aから順番に1部づつ割り当てる。したがってこの場合、プリンタ20aに34部、プリンタ20b、20cには33部ずつ割り当てられる。
【0040】
CPU11は、各画像形成装置に割り当てた部数を基に、各画像形成装置に対する印刷指示を生成する(ステップS22)。すなわち、各画像形成装置に対し、高生産性モードを示す動作モード識別子、印刷部数、用紙サイズ等の情報を含む印刷指示を生成する。
続いて、CPU11は、生成した印刷指示および処理対象の画像データを、各画像形成装置に送信する(ステップS23)。
【0041】
プリンタ20aの制御部111aは、印刷指示および画像データを受信すると、まず動作モードの判定を行う(ステップS24)。具体的な方法は、ステップS21で説明したものと同一である。
動作モード識別子が「高生産性モード」であると判断すると、制御部111aは、用紙の搬送路を用紙搬送路98に切り換える(ステップS25)。具体的には、制御部111aは、搬送路切り替えロール96aを図11中のdの位置に移動する制御信号を出力する。搬送路切り替えロール96aは、この制御信号に応じて図11中のdの位置に移動する。こうして用紙の搬送路は、用紙搬送路98aに切り換わる。また、動作モード識別子が「高生産性モード」であると判断すると、制御部111aは、用紙をカット紙トレイ85aから供給するように切り換える。
このように、高生産性モードにおいては、用紙はカット紙トレイ85aから供給され、定着装置90aを通過後、用紙搬送路98aを通って排紙トレイ97aに出力される。
【0042】
また、動作モード識別子が「高生産性モード」であると判断すると、制御部111aは、画像形成条件を、高生産性モードに適したものへ変更する(ステップS26)。具体的には、次のとおりである。記憶部113aは、高生産性モードおよび高画質モードのそれぞれにおける画像形成条件を登録した画像形成条件テーブルTB3aを記憶している。図13は、画像形成条件テーブルTB3を例示する図である。図13に示されるように、画像形成条件テーブルTB3は、画像形成処理を行う際のパラメータを特定するパラメータ識別子と、そのパラメータの値との組を記憶したものである。画像形成処理のパラメータとしては、例えば、電位、濃度、トナー濃度、転写条件(電流、電圧等)、定着条件(温度、圧力、スピード等)、プロセススピード、刷り順、使用するLUT(スクリーン)等がある。なお、ここで、「電位」とは、感光体の帯電電位(暗電位)、露光電位(明電位)、コントラスト電位(暗電位と明電位の差)等を指す。また、「濃度」とは用紙上や像担持体上のトナー像濃度のことを指す。制御部111aは、記憶部113aから画像形成条件テーブルTB3aを読み出し、読み出した画像形成条件テーブルTB3aから高生産性モード時の画像形成条件を抽出する。制御部111aは、抽出した画像形成条件に従って、各種パラメータを変更する。プリンタ20b、20cにおいても、プリンタ20aと同様にして、画像形成条件が変更される。
このように、高生産性モードにおいては、画像形成条件は高生産性モードに適したもの(中庸な条件)に変更される。また、プリンタ20a〜20cのすべての画像形成装置において、画像形成条件は同一のものに変更される。なお、上述の例では、ステップS25とステップS26の実行順は入れ替え可能である。
【0043】
用紙搬送路の切り替え、および画像形成条件の変更が完了すると、制御部111aは、画像形成処理を行う(ステップS27)。制御部111aは、受信した画像データが示す画像を、印刷指示で指定された部数の用紙上に形成する。用紙は、カット紙トレイ85aから1枚ずつ供給される。1枚ずつ搬送される用紙に対して、二次転写ロール79aとバックアップロール81aとにより形成されるニップ領域において、トナー画像が二次転写される。トナー画像は定着装置90aにより用紙に定着される。定着装置90を通過した用紙は、用紙搬送路98を通って排紙トレイ97に出力される。このようにして、34部の印刷物がプリンタ20aから出力される。
プリンタ20b、20cにおいても、プリンタ20aと同様にして、それぞれ33部の印刷物が出力される。
【0044】
このようにして、高生産モードにおいては、画像形成システム2を構成するすべての画像形成装置が、同一の画像を形成する。また、このときの画像形成条件は、生産性を高めるのに好適なものである。したがって、高い生産性を確保することができる。
【0045】
<2−2−2.高画質モード>
上述のように、使用者のコンピュータ装置から、画像データおよび印刷指示を受信すると、IOTマネージャ19のCPU11は、まず動作モードの判定を行う(ステップS21)。ここでは、動作モード識別子が「高画質モード」を示す場合の動作について説明する。
【0046】
動作モード識別子が「高画質モード」であると判断すると、CPU11は、第1実施形態で説明したように、画像を分割して各画像形成装置に割り当てる。具体的には、CPU11は、まず、処理対象の画像データのうち、第1ページ目の画像データを抽出する。CPU11は、抽出した第1ページの画像データに対し、周知のレイアウト抽出処理を施し、第1ページの画像を複数の部分画像に分割する(ステップS31)。
CPU11は、これらの部分画像の各々に対し、画像データから像密度の算出をする。CPU11は、算出した像密度に基いて、その部分画像を低像密度、中像密度、高像密度のいずれかに分類する(ステップS32)。具体的方法は、第1実施形態と同じである。
CPU11は、分類した部分画像の画像データの各々に、その部分画像が属する分類区分を示す区分識別子を付加する。すなわち、高像密度、中像密度、低像密度の部分画像データに、それぞれ「H」、「M」、「L」という区分識別子を付加する。
CPU11は、部分画像データに付加された識別子に基いて部分画像を合成し、印刷処理用の処理画像データを生成する(ステップS33)。すなわち、CPU11は、同一の分類区分に属する部分画像同士を結合して処理画像データを生成する。
【0047】
CPU11は、区分識別子に基いて、処理画像データをプリンタ20a〜20cの3台の画像形成装置に割り当てる。続いて、CPU11は、使用者から送信された印刷指示に基づき、各処理画像データに対する印刷指示を生成する(ステップS34)。具体的には、次のとおりである。HDD14は、画像形成システム2を構成する画像形成装置(プリンタ20a〜20c)の各々を特定する識別子であるプリンタIDと、画像形成装置の接続順を示す情報と、画像形成条件を特定する識別子である画像形成条件IDとを対応付けて記録した装置テーブルTB4を記憶している。
図14は、装置テーブルTB4を例示する図である。ここで、プリンタ20a、20b、20cはそれぞれ、「a」、「b」、「c」のプリンタIDを有する。CPU11は、装置テーブルTB4を参照して処理画像データを送信する送信先を決定する。CPU11は、例えば、区分識別子「L」を有する処理画像データの送信先はプリンタ20aであると判断する。
【0048】
CPU11は、装置テーブルTB4から読み取った画像形成条件ID(この場合は「L」)を含む印刷指示を生成する。このとき、印刷(画像形成)を行わない画像形成装置に対しては、その旨を示す指示を生成する。CPU11は、この印刷指示と画像データとを、対応する画像形成装置(この場合はプリンタ20a)に送信する。CPU11は、すべての処理画像データに対してこの処理を行う。
【0049】
プリンタ20aの制御部111aは、印刷指示および画像データを受信すると、まず動作モードの判定を行う(ステップS35)。具体的な方法は、ステップS21で説明したものと同一である。
動作モード識別子が「高画質モード」であると判断すると、制御部111aは、用紙の搬送路を用紙搬送路88aに切り換える(ステップS36)。具体的には、制御部111aは、搬送路切り替えロール96aを図11中のcの位置に移動する制御信号を出力する。搬送路切り替えロール96aは、この制御信号に応じて図11中のcの位置に移動する。こうして用紙の搬送路は、用紙搬送路88aに切り換わる。また、動作モード識別子が「高生産性モード」であると判断すると、制御部111aはさらに、プリンタ20a自身が、用紙搬送路の最下流に位置するか否か判断する。動作モード識別子が「高生産性モード」であり、かつプリンタ20a自身が用紙搬送路の最下流に位置する場合、制御部111aは、用紙をカット紙トレイ85aから供給するように切り換える。プリンタ20b等のように、動作モード識別子が「高生産性モード」であり、かつプリンタ20b自身が用紙搬送路の最下流に位置しない場合、制御部111bは、用紙を搬入口60bから供給するように切り換える。
【0050】
また、動作モード識別子が「高画質モード」であると判断すると、制御部111aは、画像形成条件を、高画質モードに適したものへ変更する(ステップS37)。具体的には、次のとおりである。制御部111aは、記憶部113aから画像形成条件テーブルTB3aを読み出し、読み出した画像形成条件テーブルTB3aから、受信した印刷指示に含まれる画像形成条件IDにより特定される画像形成条件を抽出する。制御部111aは、抽出した画像形成条件に従って、各種パラメータを変更する。画像形成条件は、例えば、高像密度の画像形成を担当する装置においては、低像密度を担当する装置よりもトナー濃度を高く設定するものである。プリンタ20b、20cにおいても、プリンタ20aと同様にして、画像形成条件が変更される。高画質モードにおいては、プリンタ20a〜20cの各画像形成装置の画像形成条件は、画像形成条件IDにより決定される。すなわち、各画像形成装置の画像形成条件はそれぞれ異る条件となるように設定される。例えば、プリンタ20aは低像密度に、プリンタ20bは中像密度に、プリンタ20cは高像密度に最適な条件となるように設定される。
【0051】
このように、高画質モードにおいては、画像形成条件は高画質モードに適したものに変更される。こうして、高生産性モードと比較して高画質の画像を形成することができる。すなわち、画像データは部分画像に分解され、各部分画像は、その部分画像に対し最適な画像形成条件を有する画像形成装置によって画像形成処理が行われる。
高画質モードにおいては、用紙はカット紙トレイ85aから供給され、定着装置90aを通過後、用紙搬送路88aを通って排出口61aに出力される。用紙は引き続き搬入口60bに導入され、用紙搬送路88bを通って排出口61bに出力される。さらに、用紙は引き続き搬入口60cに導入され、用紙搬送路88cを通って排出口61cに出力される。
すなわち、第1実施形態と同様に、用紙は、3台の画像形成装置(プリンタ20a〜20c)内を通過する一連の搬送路上を搬送される。すなわち、1枚の画像は、3台の画像形成装置により形成される。
【0052】
<2−3.変形例>
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
第1実施形態の変形例で説明したように、複数の画像形成装置全体で、最終的に要求されるトナー量を用紙(記録材)上に定着するように役割分担をしてもよい。その際、前段の画像形成装置においては、定着装置90における定着温度を、後段の画像形成装置よりも低く設定するようにしてもよい。すなわち、画像形成条件テーブルTB3には、パラメータとして、定着装置90における定着温度が記録されている。制御部111は、画像形成条件テーブルTB3から、印刷指示で指定される画像形成条件を読み出す。制御部111は、定着温度が読み出した画像形成条件に適合するように、定着装置90に対して制御信号を出力する。定着装置90は、制御信号に従って定着温度を変更する。これにより、前段での定着温度が低く、後段での定着温度が高く設定されるので、いわば前段で仮定着、後段で本定着されるようになり、リトランスファの影響を少なくすることができる。
【0053】
また、例えば通常Y、M、C、Kの順番となっている刷り順を、画像形成に必要なトナー量に応じて変更するようにしてもよい。具体的には次のとおりである。IOTマネージャ19のCPU11は、受信した画像データから、YMCKの各色につき画像形成に必要なトナー量をそれぞれ算出する。CPU11は、YMCKの各色をトナー量の多い順に並べる。例えば、ある部分画像に対して、使用するトナー量がC>M>Y>Kであれば、CMYKの順番に並べ替える。HDD14には、各色の並び順を識別する識別子と、その並び順に対応する装置テーブルTB4を特定する識別子が記憶されている。また、HDD14には、各色の並び順に対応して装置テーブルTB4が複数記憶されている。CPU11は、この場合CMYKの順番に相当する装置テーブルTB4を読み出す。CPU11は、この部分画像の画像形成を担当する画像形成装置に対しては、刷り順を指定する識別子(例えば「CMYK」)を付加した印刷指示を送信する。
【0054】
一方、プリンタ20の記憶部113に記憶されている画像形成条件テーブルTB3には、各色の刷り順に応じて複数の画像形成条件が記録されている。印刷指示を受信したプリンタ20の制御部111は、画像形成条件テーブルTB3から、印刷指示に含まれる刷り順を指定する識別子で指定される画像形成条件を読み出す。制御部111は、画像形成条件で指定される刷り順となるように、ロータリー現像器74に対して制御信号を出力する。ロータリー現像器74は、制御部111からの制御信号に応じて、感光体ドラム71上にトナー画像を形成する順番を制御することができる。トナー量が多いとリトランスファが発生しやすくなることが知られているが、この変形例により、トナー量の少ないものから画像形成することができるので、リトランスファの影響を少なくすることができる。
【0055】
また、上述の実施形態では、動作モードの変更に伴って各画像形成装置における画像形成条件が変更される態様について説明したが、画像形成装置毎に、動作可能な動作モードが特定されている構成としてもよい。すなわち、例えばプリンタ20a〜20fの6台の画像形成装置から構成される画像形成システムにおいて、プリンタ20a〜20cの3台の画像形成装置は高画質モード用のサブシステムを構成し、プリンタ20d〜20fの3台の画像形成装置は高生産性モード用のサブシステムを構成する。この変形例に係る画像形成システムは、動作モードに応じてサブシステムを切り換えて使用する。
【0056】
<2−4.効果>
本実施形態によれば、画像形成システム2は、各画像形成装置が同じ画像を形成する、すなわち並列処理を行う高生産性モードと、各画像形成装置が役割分担をして全体で1つの画像を形成する、すなわち直列処理を行う高画質モードとを有することで、使用者の要求に応じてこれらを切り換えて使用できる。また、高画質モードにおいては画像形成条件のパラメータを変化させることにより、高品質の画像を形成することができる。また、定着温度や刷り順等のパラメータを最適化することによりリトランスファの影響を少なくすることができる。
【0057】
<3.第3実施形態>
<3−1.システム構成>
図15は、本発明の第3実施形態に係る画像形成システム3の構成を示す図である。画像形成システム3は、プリンタ30a、30b、30cの3台の画像形成装置と、プリンタ30a〜30cを制御するIOTマネージャ19から構成される。IOTマネージャ19は、第1実施形態におけるIOTマネージャ19と同一の構成(図4)を有しているのでその説明は省略する。本実施形態において、プリンタ30a〜30cは、同一のハードウェア構成(以下でプリンタ30として説明する)を有する画像形成装置である。添字a〜cは3台の画像形成装置を区別するため、説明の便宜上用いられるものであり、プリンタ30a〜30cの各々にハードウェア構成上の差異は無い。
本実施形態では、画像形成システム3は、各画像形成装置は、共通の用紙搬送路58の他に、それとは別の用紙搬送路68を有する。用紙搬送路68については後述する。
【0058】
図16は、プリンタ30の構成を示すブロック図である。プリンタ30は、用紙(記録材)上に画像を形成するための画像形成部130と、プリンタ20の各部を制御する制御部111と、他の機器とデータあるいは制御信号の送受信をするためのI/F112と、各種のプログラムやデータを記憶する記憶部113とを有する。ここで、画像形成部130以外の構成要素は、第1実施形態におけるプリンタ10と同一である(図2)。
【0059】
図17は、プリンタ30の画像形成部130の構成を示す図である。画像形成部130は、第2実施形態におけるプリンタ10の画像形成部120(図11)とほぼ同じような構成を有している。そこで、図17においては、図11に示される画像形成部110と同一の構成要素については、同一の符号が付されている。これらの構成要素についての説明は省略する。
【0060】
画像形成部130が画像形成部120と異なる点は、画像形成部120にも存在する用紙搬送路88、用紙搬送路98とは別に、搬入口60から排出口61まで、二次転写ロール79とバックアップロール81との間の画像形成領域を通過しない用紙搬送路68を有する点である。用紙搬送路68においては、搬入口60から導入された用紙は、搬送ロール87により、画像形成用の構成要素が存在しない用紙搬送路を通過する。いわば、搬入口60と排出口61とをバイパスするものである。従来の用紙搬送路88においても画像形成を行わないことは可能であるが、画像形成を行わない場合でも、用紙は、二次転写ロール79とバックアップロール81との間の画像形成領域や、定着装置90を通過する必要があった。そのため、用紙に不必要な負荷(温度、圧力等)が加えらてしまっていた。しかし、用紙搬送路68によれば、このような余分な負荷を加えることなく、用紙を搬入口60から排出口61までバイパスすることができる。
【0061】
<3−2.動作>
本実施形態に係る画像形成システム3は、通常状態では第2実施形態で説明した画像形成システム2と同一の動作をする。画像形成部130に何らかのトラブルが発生した場合に、用紙搬送路68により用紙を搬入口60から排出口61までバイパスすることにより、処理を中断させずに継続することを可能にしたものである。
【0062】
図18は、画像形成システム3の動作を示すフローチャートである。ここでは、画像形成システム3を構成する画像形成装置のうち、プリンタ30bが故障した場合について説明する。
プリンタ30bの各構成要素は、動作不能状態になるとその旨を示す信号を制御部111bに出力する機能を有する。あるいは、制御部111bが各構成要素の動作状態を定期的にチェックする構成としてもよい。これにより、制御部111bは、プリンタ30bのいずれかの構成要素が動作不能状態(故障)となった場合には、それを検出することができる。
【0063】
いずれかの構成要素が動作不能(故障)状態となったことを検出すると(ステップS41:YES)、制御部111bは、その旨を示す信号をIOTマネージャ19に出力する。故障発生の信号を受信すると、IOTマネージャ19のCPU11は、各画像形成装置の役割分担の変更を行う。具体的には、CPU11は、画像形成システム3が予備の画像形成装置を有しているか否か判断する(ステップS42)。予備の画像形成装置を有している場合(ステップS42:YES)、CPU11は、故障が発生したプリンタ30bの担っていた役割を、予備の画像形成装置に割り当てる(ステップS43)。CPU11は、予備の画像形成装置がプリンタ30bの代役となるように装置テーブルTB4を更新する。CPU11は、更新した装置テーブルTB4に基いて、予備の画像形成装置に役割を割り当てる旨を示す制御信号を出力する。予備の画像形成装置は、制御信号に基づいて画像形成条件を、以前プリンタ30bに割り当てられていたものと同一の条件に変更する。このようにして、予備の画像形成装置を用いて処理が継続される(ステップS44)。
画像形成システム3が予備の画像形成装置を有していない場合(ステップS42:NO)、CPU11は、第2実施形態で説明した高生産性モードと同様の動作となるように、プリンタ30の動作を切り換える(ステップS45)。具体的には、CPU11は、各画像形成装置に対し、画像形成条件を、第2実施形態で説明した高生産性モードに相当する共通の画像形成条件とするように指示する制御信号を出力する。プリンタ30a〜30cの各画像形成装置は、制御信号に従って画像形成条件を変更する。
【0064】
<3−3.変形例>
続いて、本実施形態の変形例について説明する。
画像形成システム3は、システムを構成する画像形成装置のいずれかに故障(あるいは、消耗品の寿命)が発生した場合には、その旨を使用者に報知あるいは警告をする構成としてもよい。例えば、故障発生の信号を受信すると、IOTマネージャ19のCPU11は、ディスプレイ16にその旨を示すメッセージを表示する。あるいは、使用者のコンピュータ装置にその旨を示すメッセージを表示させる信号を出力してもよい。また、報知方法はメッセージにより使用者の視覚に訴えるものに限られず、ビープ音等の使用者の聴覚に訴えるもの、バイブレータ等の使用者の触覚に訴えるものであってもよい。
【0065】
また、IOTマネージャ19のCPU11は、前述の報知の後に、引き続き画質優先モードで画像形成処理を行うか、生産性優先モードに切り換えて画像形成処理を行うか、あるいは画像形成処理を停止するかを使用者に選択させるためのメッセージをディスプレイ16に表示してもよい。使用者は、このメッセージを見て、その後の動作の継続方法について判断することができる。使用者は、判断結果に基いて、画像形成システム3に対し指示入力を行う。画像形成システム3は使用者の指示入力に従って動作する。すなわち、IOTマネージャ19のCPU11は、必要であれば画像形成条件の変更を各画像形成装置に指示する。
【0066】
さらに、故障等が発生して使用不可能になった画像形成装置が復帰した場合には、IOTマネージャ19のCPU11は、復帰した装置も使用して画像形成処理を行うか、あるいは復帰した装置は使用せずこのまま画像形成処理を継続するか、使用者に選択させるためのメッセージをディスプレイ16に表示してもよい。使用者は、画像形成システム3に対し指示入力を行い、画像形成システム3は使用者の指示入力に従って動作する。すなわち、IOTマネージャ19のCPU11は、必要であれば画像形成条件の変更を各画像形成装置に指示する。
【0067】
<3−4.効果>
以上において説明したように、本実施形態によれば、画像形成システム3を構成する複数のプリンタ30のうち1台に故障が発生した場合でも、残りの装置で処理を継続することができる。
【0068】
<4.変形例>
以上説明した本発明の第1乃至第3の実施形態において、各プリンタは用紙トレイを有するため、最初に画像形成するプリンタを含めて用紙搬送方向上流側に位置するプリンタから任意に用紙を供給することができる。例えば、最初に画像形成するプリンタから用紙を供給し、このプリンタの用紙トレイに用紙がなくなると隣接する用紙搬送方向上流側のプリンタから用紙を供給することを順次行うことができる。あるいは逆に、用紙搬送方向最上流に位置するプリンタから用紙を供給し、このプリンタの用紙トレイに用紙がなくなると隣接する用紙搬送方向下流側のプリンタから用紙を供給することを順次行ってもよい。このようにすると多数枚記録において特定の用紙トレイの用紙がなくなって記録が中断することを防ぐことが出来る。また、用紙搬送方向上流側のプリンタを含めて各プリンタから平均して用紙を供給するようにすれば、用紙トレイから用紙がなくなって以降の記録動作に支障をきたすことを防ぐことができる。更に、用紙搬送方向上流側のプリンタを含めて各プリンタの用紙トレイから用紙サイズ等の記録仕様に合ったトレイを選択するようにすれば、各プリンタの用紙トレイに多種類の用紙を用意してこれを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の第1実施形態に係る画像形成システム1の構成を示すブロック図である。
【図2】プリンタ10の構成を示すブロック図である。
【図3】プリンタ10の画像形成部110の構成を示す図である。
【図4】IOTマネージャ19の構成を示すブロック図である。
【図5】画像形成システム1の動作を示すフローチャートである。
【図6】処理対象となる画像データの第1ページ目の画像を示す模式図である。
【図7】分類テーブルTB1を例示する図である。
【図8】割り当てテーブルTB2を例示する図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る画像形成システム2の構成を示すブロック図である。
【図10】プリンタ20の構成を示すブロック図である。
【図11】プリンタ20の画像形成部120の構成を示す図である。
【図12】画像形成システム2の動作を示すフローチャートである。
【図13】画像形成条件テーブルTB3を例示する図である。
【図14】装置テーブルTB4を例示する図である。
【図15】本発明の第3実施形態に係る画像形成システム3の構成を示す図である。
【図16】プリンタ30の構成を示すブロック図である。
【図17】プリンタ30の画像形成部130の構成を示す図である。
【図18】画像形成システム3の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0070】
1、2、3…画像形成システム、10…プリンタ、11…CPU、12…RAM、13…ROM、14…HDD、15…I/F、17…バス、19…IOTマネージャ、20…プリンタ、30…プリンタ、40…画像、41…画像、42…画像、58…用紙搬送路、60…搬入口、61…排出口、68…用紙搬送路、71…感光体ドラム、72…帯電器、73…露光装置、74…ロータリー現像器、75…ドラムクリーナ、76…中間転写ベルト、77…駆動ロール、78…一次転写ロール、79…二次転写ロール、80…ベルトクリーナ、81…バックアップロール、82…レジストロール、85…カット紙トレイ、87…搬送ロール、88…用紙搬送路、89…搬送ベルト、90…定着装置、91,92…定着ロール、93…排出ロール、94…排紙トレイ、95…排出ロール、96…搬送路切り替えロール、97…排紙トレイ、98…用紙搬送路、110…画像形成部、111…制御部、112…I/F、113…記憶部、114…バス、120…画像形成部、130…画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレイから記録材を供給する第1の供給手段と、装置外部から記録材を供給する第2の供給手段と、前記第1または第2の供給手段から供給される記録材上に画像形成を行う画像形成手段と、画像形成された記録材を排出する第1の排出手段とを各々備えた複数の画像形成装置であって、各々を順次経由して記録材が搬送されるように縦続接続され、相互に接続された2つの画像形成装置は、一方の画像形成装置から前記第1の排出手段によって排出される記録材が他方の画像形成装置の前記第1の供給手段から供給されるように構成された複数の画像形成装置と、
処理対象となる画像を入力する入力手段と、
前記入力手段を介して入力された画像を、複数の部分画像に分割する分割手段と、
前記複数の部分画像の各々を、前記複数の画像形成装置のうち少なくとも2つの画像形成装置のいずれかに分配する分配手段と、
を有する画像形成システム。
【請求項2】
前記複数の画像形成装置の各々が、画像形成された記録材を前記第1の排出手段とは異なる位置に排出する第2の排出手段を備え、
前記画像形成システムが、1枚の記録材上に前記複数の画像形成装置のうち少なくとも2つの画像形成装置が画像形成を行う高画質モードと、1枚の記録材上に前記複数の画像形成装置のうち1つの画像形成装置が画像形成を行う高生産性モードとの2つの動作モードのうち、指定されたモードでの動作が行われるように各画像形成装置の前記第1、第2の供給手段、前記画像形成手段および前記第1、第2の排出手段の動作を制御する制御手段をさらに有する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像形成システム。
【請求項3】
前記複数の画像形成装置のうち、少なくとも1つの画像形成装置は、他の画像形成装置とは異なる画像形成条件を有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成システム。
【請求項4】
動作モードを切り換える指示を入力する動作モード切替手段と、
前記動作モード切替手段により動作モードの切り換えが指示されたときに、前記画像形成条件を、切り換え後の動作モードに適した条件に変更する画像形成条件変更手段と
をさらに有する請求項3に記載の画像形成システム。
【請求項5】
前記複数の画像形成装置の各々が、
装置外部から前記第1の供給手段を介して供給された記録材を前記画像形成手段を経由して前記第1の排出手段から排出する搬送路と前記画像形成手段を経由しないで前記第1の排出手段から排出する搬送路とを備え、
当該画像形成システムの動作モードに応じて記録材の両搬送路を切り換える搬送路切り替え手段をさらに有することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成システム。
【請求項6】
前記複数の画像形成装置の各々が、
画像形成処理を実行できない状態になったことを検知する検知手段を有し、
前記搬送路切り替え手段が、前記検知手段により画像形成処理を実行できない状態になったことが検知されたときに、記録材の搬送路の切り替えを行う
ことを特徴とする請求項5に記載の画像形成システム。
【請求項7】
前記複数の画像形成装置のうち、いずれかの画像形成装置において画像形成処理を実行できない状態になったことが検知されたときに、使用者にその旨を報知する報知手段
をさらに有する請求項6に記載の画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2006−88380(P2006−88380A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−273738(P2004−273738)
【出願日】平成16年9月21日(2004.9.21)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】