説明

画像形成デバイスのためのリン含有エンドレス可撓性二層部材

【課題】高湿環境下でも転写特性の変動が少ない中間転写ベルトまたは転写材搬送ベルトを提供する。
【解決手段】ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む第1層およびリンを含むポリアミドイミドを含む第2層からなり、前記第1層、第2層またはその両方に電気的特性を調節する材料としてカーボンブラックを約5重量%〜約25重量%の量で含有させる。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
カラー画像を形成する画像形成装置では、個々の異なる色のトナー画像が互いに重ね合わされるので、エンドレスベルトは、最終的な複合カラー画像を構築する際に順に適用されるまたは受容される異なる色のトナー画像を運ぶユニットとして使用できる。エンドレスベルトはまた、異なる色のトナー画像を順に受容する記録媒体に転写するためのユニットとしても使用できる。
【0002】
可撓性部材の耐久性および機能を拡張するための手法の1つは、複数の層を使用することであり、各層は対象とする異なる機能を有する。例えば、可撓性部材の下位の表面は、モールド、マンドレルまたはフォームから容易に離型する特性を有していてもよく、こうした部材の上位の表面、例えば画像または部分画像を受容し得る表面は、高い抵抗率を有していてもよい。こうした機能の多様性は、モールドから容易に離型する能力を有する第1または下位層および高い抵抗率を有する、第1または下位層上の第2または上位層を用いて得ることができる。
【0003】
ポリアミドイミドおよびポリイミドは、こうしたポリマーが好ましい機械的特性を有するので、可撓性部材を製造するために一般に使用される。しかし、こうしたポリマーは、親水性であるので、吸湿性が画像転写に負の影響を与え得る。
【0004】
電子写真の分野において、必ずしもではないが、電荷および潜像を運ぶ可撓性部材表面は、不完全性、例えば表面層または表面の吸湿性質によって生じ得る不完全性が最小限で規則的であることが有益である。表面層の疎水性が増大すると、画像忠実度が向上し得る。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示される態様によれば、電子写真に使用するための可撓性部材、例えば可撓性画像転写部材、例えば中間転写ベルト(ITB)を製造するためのフィルム形成組成物を提供し、この部材は、ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む第1または下位層およびリンを含むポリアミドイミドを含む、第1または下位層上の第2または上位層を含む。
【0006】
開示される別の実施形態は、ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む第1または下位層およびリンを含むポリアミドイミドを含む、第1または下位層上の第2または上位層を含む可撓性部材を含む、画像形成または印刷デバイスを含む。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書で使用される場合、用語「電子写真」、またはこれらの文法上の変形は、用語「乾式電子写真」と交換可能に使用される。一部の実施形態において、例えばカラー画像を形成する場合、画像の個々の色は順に適用されることが多い。故に、「部分画像」は、最終的または複合的なカラ―画像を得るために最後の色を適用する前の1つ以上の色を含む画像である。「可撓性」とは、例えばローラーを用いて操作し、使用するのに適合性であり、ローラーと共に使用される、例えばベルト、ウェブ、フィルムなどにおいて観察されるような、容易な変形能を示すことを意味する。
【0008】
本願の趣旨上、「約」は、記載された値または中間値の20%以下の偏差を示すことを意味する。他の等価な用語としては、「実質的」および「本質的」、またはこれらの文法上の形式が挙げられる。
【0009】
可撓性部材は、中間転写部材、例えば中間転写ベルト(ITB)、フューザーベルト、圧力ベルト、輸液ベルト、輸送ベルト、現像剤ベルトなどを含むことができる。こうした部材は、単一層、または複数層、例えば支持体層、および特定機能を有する1つ以上の層を含むことができる。
【0010】
中間転写部材はまた、カラーシステムおよびその他のマルチ画像形成システムに有用である。マルチ画像形成システムにおいて、複数の画像が現像される、すなわち一連の部分画像が現像される。各画像は、感光体上に形成され、個々のステーションで現像され、中間転写部材に転写される。各画像は、感光体上に形成され、順に現像され、次いで中間転写部材に転写されてもよく、または各画像は、感光体上に形成され、中間転写部材に移されて現像され、転写されてもよい。
【0011】
高品質の画像転写を得るために、すなわち画像ずれを最小限にするために、転写部材の駆動中の撹乱による変位を、支持体または基材の厚さを、例えば約50μmに制限することによって低減できる。故に、基材または支持体の厚さは、約50μm〜約150μmまたは70μm〜約100μmであることができる。
【0012】
本開示において、対象とする可撓性部材は、当該技術分野において既知の材料および方法を用いて、ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む第1の層を含む。第1の層にまたは第1の層上には、リンを含むポリアミドイミドを含む第2または上位層であって、画像形成デバイスの可撓性部材として使用するのに好適であり、難燃性の付加利益を与える層が加えられる。
【0013】
第1の層に使用できる好適なポリイミドは、市販されており、例えばE.I.DuPontから入手可能なKAPTON(登録商標)およびBoedeker Plastics,Inc.からのIMIDEX(登録商標)である。好適なポリイミドはまた、種々のジアミンおよび二無水物から製造されるもの;SILTEM樹脂、例えばSABICから入手可能なSTM−1300;例えばピロメリット酸およびジアミノジフェニルエーテルを反応させることによって製造される芳香族ポリアミド;コポリマー酸のイミド化によるもの、例えばビフェニルテトラカルボン酸およびピロメリット酸と2つの芳香族ジアミン、例えばp−フェニレンジアミンおよびジアミノジフェニルエーテルとによるもの、またはピロメリット酸二無水物およびベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物コポリマー酸を、2,2−ビス[4−(8−アミノフェノキシ)フェノキシ]−ヘキサフルオロプロパンと反応させたもの;1,2,1’,2’−ビフェニルテトラカルボキシイミドおよびp−フェニレン基を含有するもの、例えばUBE Industriesから入手可能なUPILEX(登録商標)ポリマー;ジフェニルエーテル末端スペーサーによって特徴付けられるビフェニルテトラカルボキシイミド官能性を有するものなどである。ポリイミドの混合物も使用できる。第1の層に使用できる好適なポリアミドイミドは、市販されており、例えばVYLOMAX(登録商標)、例えばHR−11N、HR−16NおよびHR−66N(Toyobo、日本)である。ポリアミドイミドの混合物が使用できる。また、ポリイミドおよびポリアミドイミドの混合物も使用できる。
【0014】
ポリアミドイミド第2層を製造するために使用できる1つ以上のリン原子および複数のアミン基を含有する試薬は、商業的に得ることができ、または合成できる。例えば、アミン、カルボニル基を保持するアミン、例えばアミンフェノンまたはアミノ酸、およびリン含有化合物、例えばホスフェートは、有機強酸の存在下で組み合わされ、ポリアミドイミド重合反応における試薬として使用できるリン含有アミンを形成する。反応のために選択された特定のアミン、カルボニル基を保持するアミンおよびリン含有化合物は、各試薬の他の部分としてのR基が形成されたポリアミドイミドの構造に寄与するので、設計上の選択である。
【0015】
アミンは、一級アミンであることができるが、設計上の選択として二級または三級アミンであることもできる。アミノ基は、重合反応が過度に妨害されないことを確実にするように選択される。R基は、例えば脂肪族基、芳香族基またはこれらの組み合わせを含むことができ、ヘテロ原子を含むことができる。例はアニリンであり、最終的なポリアミドイミドにベンゼン環を与える。
【0016】
カルボニル基を保持するアミンも同様に、一級アミンであることができるが、設計上の選択として二級または三級アミンを使用することもできる。アミノ基は、重合反応が過度に妨害されないことを確実にするように選択される。また、アミン基およびカルボニル基の位置は、後続の重合反応を過度に妨害しないように選択される。例はアミノ酸であり、またはアミンフェノンの例は4−アミノアセトフェノンである。後者は、エチルベンゼン基を最終ポリアミドイミドに与える。
【0017】
リン含有化合物は、目的用途に好適な1つ以上のリン原子を保持するいずれかの化合物であることができる。リンは多価であるので、好適な試薬は、官能基、例えばハロゲンまたは酸素を保持するものである。例は、市販されている9,10−ジヒドロ−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO)であり、ここで多環式フェナントレン環は最終ポリアミドイミドに寄与する。
【0018】
3つの試薬を、有機強酸、例えばスルホン酸、例えば無水p−トルエンスルホン酸の存在下で組み合わせ、3つの試薬が組み合わさって1つ以上のリン原子を保持するアミンになるのに好適な時間、好適な反応温度でインキュベートし、それをポリアミドイミドを形成するための重合反応、例えば酸クロライドを用いるまたはジイソシアネートを用いる反応の試薬として使用できる。得られた試薬は、単離され、洗浄および/または再沈殿でき、次いで乾燥できる。
【0019】
リン含有ポリアミドイミドを形成するために、対象とする試薬が重合反応に含まれる。故に、例えば複数のアミン基および少なくとも1つのリン原子を含有する本試薬は、酸クロライド、例えば複数のカルボニル基を保持するもの、例えばトリメリット酸クロライドと混合でき、中間アミド酸を形成することが多い。反応は、一般に双極性、非プロトン性溶媒、例えばジメチルホルムアミドまたはジメチルスルホキシド中で行われ、対象とするポリマーを得る。
【0020】
あるいは、ジイソシアネートが無水物と反応し、複数のアミン基を含む対象とするリン含有化合物が反応に含まれる。反応は一般に、双極性、非プロトン性用溶媒、例えば、DMFまたはDMSO中で混合される。重合の後、生成物を単離する。
【0021】
転写部材またはデバイスは、一般に画像を保持するように予定された表面が低表面エネルギーを有するようなもの、すなわち水による湿潤性によって表されるような水滴に対して約70°以上または少なくとも約70°の接触角を有する、分散した電気伝導性剤を含む材料である。用語「水による湿潤性」とは、本明細書で使用される場合、試料としての表面層を構成する材料の、水滴に対する接触角を示すことを意味する。
【0022】
電気的特性、例えば表面およびバルク抵抗率、誘電率および放電を調節するために、電気的特性を調節する材料を1つの層または両方の層に添加できる。一般に、電気的特性を調節する材料は、フィルムの所望の抵抗率に基づいて選択できる。伝導性経路の数がパーコレーション閾値を常に十分上回り、それによって抵抗率の極端な変動を避けるように、電気的特性を調節する材料を高体積画分または充填で使用できる。組成物のパーコレーション閾値は、分散した相の体積濃度であり、その濃度未満では粒子と粒子との接触が非常に少ないので連結した領域が小さい。パーコレーション閾値よりも高い濃度では、連結された領域がフィルムの体積を超えるのに十分大きく、例えば浸透プロセスにおける密度の作用が議論されているScher et al.,J Chem Phys,53(9)3759−3761,1970を参照のこと。
【0023】
電気的特性を調節する材料の粒子形状は、体積充填に影響を及ぼし得る。体積充填は、粒子が、例えば球状、円形、不規則状、回転楕円体、海綿状、角状またはフレークもしくは葉状の形態であるかどうかに依存し得る。高いアスペクト比を有する粒子は、相対的に低いアスペクト比を有する粒子と同程度の高い充填を必要としない。相対的に高いアスペクト比を有する粒子は、フレークおよび葉状を含む。相対的に低いアスペクト比を有する粒子は、球状および円形粒子である。
【0024】
パーコレーション閾値は、実際、充填物のアスペクト比に依存して数体積%の範囲内である。いずれかの特定粒子の抵抗率に関して、コーティングされたフィルムの抵抗率は、層中の抵抗性粒子の体積画分を変更することによって約1桁にわたって変動させることができる。体積充填における変動により、抵抗率の微細な調整が可能である。
【0025】
抵抗率は、個々の粒子のバルク抵抗率および層における粒子の体積画分に対しておおよそ線形で変動する。2つのパラメータは独立に選択できる。いずれかの特定粒子の抵抗率に関して、強化部材の抵抗率は、粒子の体積画分を変更することによっておおまかに1桁にわたって変動できる。粒子のバルク抵抗率は、好ましくは、部材に所望されるバルク抵抗率より最大3桁まで下げて選択される。粒子が支持体または層とパーコレーション閾値を超える量で混合される場合、得られた強化部材の抵抗率は、充填の増大に比例して低下し得る。最終抵抗率の微細な調整は、こうした抵抗率の比例する増大に基づいて制御されてもよい。
【0026】
材料のバルク抵抗率は、材料の固有特性であり、均一な断面のサンプルから決定できる。バルク抵抗率は、こうしたサンプルの抵抗に、断面積を乗じ、サンプルの長さで除したものである。バルク抵抗率は、適用される電圧によりある程度変動し得る。
【0027】
表面またはシート抵抗率(オーム/平方、Ω/□と表される)は、こうした測定基準が材料の厚さおよび材料表面の汚染、例えば凝縮湿分による汚染に依存するので、材料の固有の特性ではない。表面作用がごくわずかであり、バルク抵抗率が等方性である場合、表面抵抗率は、バルク抵抗率を強化部材厚さで除したものである。フィルムの表面抵抗率は、フィルム表面上にある2つの平行接点間の抵抗率を測定することによってフィルムの厚さを知ることなく測定できる。平行接点を用いて表面抵抗率を測定する場合、末端作用が大きな誤差を生じないように接点ギャップより数倍長い接点長さを使用する。表面抵抗率は、測定された抵抗率に接点長さ対ギャップ比を乗じたものである。
【0028】
粒子は、得られる部材の所望のバルク抵抗率よりもわずかに低いバルク抵抗率を有するように選択できる。電気的特性を調節する材料としては、顔料、四級アンモニウム塩、炭素、染料、伝導性ポリマーなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
対象とするカーボンブラック粒子は、約10nm〜約30nm、約12nm〜約25nm、または約15nm〜約20nmの粒子直径を有するものである。対象とするカーボンブラックは、約100m/g〜約600m/g、約200m/g〜約500m/g、または約300m/g〜約400m/gのBET表面積を有するものである。対象とするカーボンブラックは、約1ml/g〜約7ml/g、約1.5ml/g〜約6ml/gまたは約2ml/g〜約5ml/gのDBA吸収値を有するものである。市販のカーボンブラックの例は、Special Black4、Special Black5、Color BlackFW1、Color BlackFW2またはColor BlackFW200(Evonik Industries)である。
【0030】
電気的特性を調節する材料、例えばカーボンブラックは、支持体または層の総重量の約1重量%〜約25重量%、支持体または層の総重量の約7重量%〜約20重量%、または約10重量%〜約15重量%の範囲の量で添加されてもよい。
【0031】
また、カーボンブラックシステムは、層を伝導性にするために使用できる。これは、複数種のカーボンブラック、すなわち、例えば異なる粒子幾何学形状、抵抗率、化学作用、表面積および/またはサイズを有するカーボンブラックを用いることによって達成され得る。また、1種類のカーボンブラックまたは複数種のカーボンブラックを、他の非カーボンブラック伝導性充填剤と共に使用できる。
【0032】
複数種のカーボンブラックを用いる例としては、それぞれが他のカーボンブラックとは異なる少なくとも1つの特徴を有し、構造化ブラック、例えば急勾配な抵抗率の傾きを有するVULCAN(登録商標)XC72と、低構造カーボンブラック、例えば増大した充填剤充填で抵抗率が低いREGAL250R(登録商標)との混合が挙げられる。所望の状態は、2種のカーボンブラックの組み合わせであり、これが、相対的に低いレベルの充填剤充填にて均衡がとれ制御された伝導率を与え、機械的特性を改善できる。
【0033】
混合カーボンブラックの別の例は、球状、フレーク、小板状、繊維、ウィスカーまたは長方形の粒子形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトと、異なる粒子形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトとを組み合わせて使用するものを含み、良好な充填剤パッキングを得て、こうして良好な伝導率を得る。例えば、球状形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトは、小板形状を有するカーボンブラックまたはグラファイトと共に使用できる。カーボンブラックまたはグラファイト繊維と球体との比は約3:1であることができる。
【0034】
同様に、相対的に小さい粒径のカーボンブラックまたはグラファイトと共に相対的に大きい粒径のカーボンブラックまたはグラファイトとの使用により、より小さい粒子がポリマー基材のパッキング空隙領域に配向されることができ、粒子接触を改善する。例として、約1μm〜約100μmまたは約5μm〜約10μmの相対的に大きな粒径を有するカーボンブラックは、約0.1μm〜約1μmまたは約0.05μm〜約0.1μmの粒径を有するカーボンブラックと共に使用できる。
【0035】
別の実施形態において、カーボンブラックの混合物は、約30m/g〜約700m/gのBET表面積を有する第1のカーボンブラックと、約150m/g〜約650m/gのBET表面積を有する第2のカーボンブラックとを含むことができる。
【0036】
また、抵抗率の組み合わせを使用して、充填剤充填に関して抵抗率変化を小さくできる。例えば、約10〜約10ohms−cmの抵抗率を有するカーボンブラックまたは他の充填剤と組み合わせて使用される約10−1〜約10ohms−cmまたは約10−1〜約10ohms−cmの抵抗率を有するカーボンブラックまたは他の充填剤が使用できる。
【0037】
カーボンブラックに加えて他の充填剤を、ポリマー、樹脂またはフィルム形成組成物に添加でき、これらに分散できる。好適な充填剤としては、金属酸化物;窒化物;炭化物;複合金属酸化物;雲母;これらの組み合わせが挙げられる。任意の充填剤は、ポリマー/混合カーボンブラックコーティング中に、約20重量%〜約75重量%の総固形分、または約40重量%〜約60重量%の総固形分の量で存在できる。
【0038】
コーティング層の抵抗率は、約10〜約1013Ω/□、約10〜約1012Ω/□または約10〜約1011Ω/□であることができる。
【0039】
別の実施形態において、層は、約1μm〜約10μmまたは約4μm〜約7μmの誘電厚さを有する。
【0040】
コーティングの硬度は、約85ShoreA未満、約45ShoreA〜約65ShoreA、または約50ShoreA〜約60ShoreAであることができる。
【0041】
別の実施形態において、表面は、少なくとも約60°、少なくとも約75°、少なくとも約90°、または少なくとも約95°の水接触角を有することができる。
【0042】
転写部材は、当該技術分野において既知の方法を用いて調製できる。ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む第1の層は、当該技術分野において既知のように調製される。故に、試薬は、分散デバイスまたは混合容器中にて混合され、分散され、次いで混合物を、フォーム、マンドレルまたはモールド、例えば樹脂、ガラス、セラミック、ステンレススチールなどから製造されるものに適用する。材料を適用するための他の技術としては、液体および乾燥粉末スプレーコーティング、浸漬コーティング、巻線ロッドコーティング、流動床コーティング、粉末コーティング、フローコーティング、静電噴霧、超音波噴霧、ブレードコーティングなどが挙げられる。コーティングが噴霧によって適用される場合、噴霧は、機械的および/または電気的に、例えば静電噴霧によって補助できる。フィルムは、好適な温度にて乾燥でき、好適な温度にて硬化されることができ、または部分的に硬化できる。
【0043】
リン含有ポリアミドイミドの第2の層の組成物は、分散機または混合容器中にて構成成分を混合し、分散することによって調製され、形成された第1または下位層に本明細書に教示されたように適用される。フィルムは、好適な温度にて乾燥でき、次いで好適な温度にて硬化できる。次いで形成された二層部材は、モールドから取り除かれる。
【0044】
第1または下位層は、約50μm〜約200μm、約60μm〜約150μm、または約70μm〜約100μmの厚さを有することができる。第2または上位層は、約1μm〜約50μm、約10μm〜約40μm、または約15μm〜約30μmの厚さを有することができる。
【0045】
2つの層は、化学的に関連し、適合性であり、故に層はよく接着する。上位層は、難燃性であるリンを含み、ポリマーの吸湿性を低下させ、こうして取扱および操作を容易にする。
【0046】
フィルムは、シームレスであることができ、または当該技術分野において既知のようにシームされた部材を製造するために使用できる。
【実施例】
【0047】
実施例1
9,10−ジヒドロ−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキシド(DOPO,108.1g,約0.5モル)、4−アミノアセトフェノン(67.6g,約0.5モル)、p−トルエンスルホン酸一水和物(2.56g,約0.135モル)およびアニリン(232.8g,約2.5モル)を、磁性撹拌によって混合し、窒素ガス下、120℃に18時間加熱した。反応混合物を室温まで冷却した後、150mlのメタノールを添加した。わずかに黄色の沈殿物をろ過によって回収し、3×250mlのメタノールによって洗浄し、乾燥した。
【0048】
実施例2
実施例1の乾燥粉末は、溶媒DMF(70g)中の1,2,4−ベンゼントリカルボン酸無水物(19.2g,約0.01モル)およびヘキサメチレンジイソシアネート(8.7g,約0.05モル)の混合物に添加した。約4時間室温にて撹拌した後、褐色の透明溶液を90℃で2.5時間加熱した。室温まで冷却後、開示されたリン含有ポリアミドイミドを含む粘稠な褐色液体を得た。
【0049】
実施例3
VYLOMAX(登録商標)HR−11N(Toyobo)およびカラーブラックFW1(Evonik)をNMP中に重量比90/10で含むITB第1層分散液をボールミル加工し、溶液をステンレススチールの基材上にコーティングし、乾燥させ、部分的に硬化させた。
【0050】
実施例2のリンを含有するポリアミドイミド、VYLOMAX(登録商標)HR−11NおよびカラーブラックFW1を、NMP/DMF中、30/60/10の重量比で含むITB第2層分散液を調製した。ボールミル加工の後、溶液を第1の層上にコーティングし、乾燥させ、160℃で30分間で硬化させた。
【0051】
取り除かれた二層部材は、約75μmの厚さを有する第1のポリアミドイミド層、および約20μmの厚さを有するリンを含有する第2のポリアミドイミド層を含んでいた。二層部材は、フラットであり、カールも引張もなかった。
【0052】
実施例4
VYLOMAX(登録商標)HR−11N(Toyobo)およびカラーブラックFW1(Evonik)をNMP中に重量比90/10で含むITB分散液をボールミル加工し、溶液をステンレススチールの基材上にコーティングし、乾燥させ、160℃で30分間硬化させた。取り除かれた単一層部材は、約100μmの厚さを有するポリアミドイミド層を含んでいた。
【0053】
実施例5
実施例3の二層部材は、約3,700MPaのヤング率および約6.3×10ohm/□の表面抵抗率を保持することが試験されたが、これは、約3,600MPaのヤング率および3.5×10ohm/□の表面抵抗率を有していた実施例4のポリアミドイミド単一層部材の場合に匹敵する。
【0054】
故に、ポリアミドイミド中のリンの存在は、ポリアミドイミド製のITBの所望の物理的特性を損なわない。表面または上位ポリマーの難燃特性および増大した疎水性によりポリマーの吸湿性を低下させることにより、ポリアミドイミド単独から製造された可撓性ベルトよりも優れた利点を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドまたはポリアミドイミドを含む第1層およびリンを含むポリアミドイミドを含む第2層を含む、可撓性中間転写部材。
【請求項2】
前記第1層、前記第2層またはその両方に電気的特性を調節する材料をさらに含む、請求項1に記載の可撓性中間転写部材。
【請求項3】
前記電気的特性を調節する材料がカーボンブラックを含む、請求項2に記載の可撓性中間転写部材。
【請求項4】
前記材料が、約5重量%〜約25重量%の量で存在する、請求項2に記載の可撓性中間転写部材。
【請求項5】
請求項1に記載の中間転写部材を含む画像形成デバイス。

【公開番号】特開2012−168524(P2012−168524A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14202(P2012−14202)
【出願日】平成24年1月26日(2012.1.26)
【出願人】(596170170)ゼロックス コーポレイション (1,961)
【氏名又は名称原語表記】XEROX CORPORATION
【Fターム(参考)】