説明

画像形成装置、アプリケーション実行方法、及びプログラム

【課題】機種の相違を適切に吸収することのできる画像形成装置、アプリケーション実行方法、及びプログラムの提供を目的とする。
【解決手段】アプリケーションを実行可能な画像形成装置であって、画像形成装置の機種に応じて値が異なる機種依存情報が記憶装置に保存され、前記アプリケーションは、前記機種依存情報に基づいて処理を実行することにより上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、アプリケーション実行方法、及びプログラムに関し、特にアプリケーションを実行可能な画像形成装置、アプリケーション実行方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置におけるソフトウェアは、主に、UNIX(登録商標)等のOS(Operating System)上において起動されているプラットフォームとアプリケーションとより構成される(例えば、特許文献1)。アプリケーションは、例えば、印刷機能やコピー機能等、ユーザから見て具体的な機能を実現するソフトウェアである。
【0003】
ところで、画像形成装置は、多様な機種(モデル)が提供され、その機種に応じてハードウェア構成や性能が異なる。機種の相違は、画像形成装置上で動作するアプリケーションの実装にも影響する。すなわち、アプリケーション内のロジックにおいて、当該アプリケーションが実行される機種を意識した処理の定義が必要とされる。従来、機種の相違に基づくロジックの相違は、各アプリケーションのソースコード内でハードコーディングされていた。
【特許文献1】特許第3679349号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば、プリンタ機能を実現するアプリケーション(以下「プリンタアプリ」という。)について考えると、基本的な処理については、機種に応じて大差が生じるものではない。それにも拘わらず、機種ごとにアプリケーションが作成されることにより、開発作業が非効率なものとなり、また、保守作業を煩雑なものとなっていた。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであって、機種の相違を適切に吸収することのできる画像形成装置、アプリケーション実行方法、及びプログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで上記課題を解決するため、本発明は、アプリケーションを実行可能な画像形成装置であって、画像形成装置の機種に応じて値が異なる機種依存情報が記憶装置に保存され、前記アプリケーションは、前記機種依存情報に基づいて処理を実行することを特徴とする。
【0007】
このような画像形成装置では、機種の相違を適切に吸収することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、機種の相違を適切に吸収することのできる画像形成装置、アプリケーション実行方法、及びプログラムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の実施の形態における画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。図1において画像形成装置10は、コントローラ11、スキャナ12、プリンタ13、モデム14、ネットワークインタフェース15、及び操作パネル16等のハードウェアを有する。
【0010】
コントローラ11は、CPU111、RAM112、ROM113、及びHDD114等より構成される。ROM113には、各種のプログラムやプログラムによって利用されるデータ等が記録されている。RAM112は、プログラムをロードするための記憶領域や、ロードされたプログラムのワーク領域等として用いられる。CPU111は、RAM112にロードされたプログラムを処理することにより、後述される機能を実現する。HDD114は、各種のデータの保存領域やプログラムの仮想メモリ(記憶)領域として用いられる。
【0011】
スキャナ12は、原稿より画像データを読み取るためのハードウェアである。プリンタは13、画像データを印刷用紙に印刷するためのハードウェアである。モデム14は、電話回線に接続するためのハードウェアであり、FAX通信による画像データの送受信を実行するために用いられる。ネットワークインタフェース15は、LAN(Local Area Network)等のネットワーク(有線又は無線の別は問わない。)に接続するためのハードウェアである。操作パネル16は、ユーザからの入力の受け付けや、ユーザに対する情報の通知等を行うめのボタン、液晶パネル等を備えたハードウェアである。
【0012】
図2は、本発明の実施の形態における画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。図2において、画像形成装置10は、コントロールサービス110と、当該コントロールサービス110を利用して動作する各種のアプリケーションと等より構成される。
【0013】
コントロールサービス110は、アプリケーションがそれぞれの機能を実現するために共通的に必要とされるサービスを提供するプログラムである。コントロールサービス110は、例えば、ネットワーク通信の仲介、ハードウェアの制御、メモリ(RAM112、ROM113)やHDD114の制御、操作パネル16の制御、及びユーザ情報の管理等を行う。
【0014】
図2には、各種のアプリケーションとして、プリンタアプリ120、FAXアプリ130、及びコピーアプリ140が示されている。プリンタアプリ120は、画像形成装置10をプリンタとして機能させるためのアプリケーションである。FAXアプリ130は、画像形成装置10をファクシミリとして機能させるためのアプリケーションである。コピーアプリ140は、画像形成装置10をコピー機として機能させるためのアプリケーションである。
【0015】
なお、コントロールサービス110、プリンタアプリ120、FAXアプリ130、コピーアプリ140は、OS(Operating System)150上においてそれぞれ異なるプロセスとして動作する。
【0016】
ところで、プリンタアプリ120は、インタプリタ121、プリンタシステム122、及び機種依存情報123より構成される。インタプリタ121は、プリンタ言語を解釈及び翻訳し、印刷画像を生成(描画)するプログラムである。本実施の形態における画像形成装置10には、プリンタ言語の種類に対応させて複数のインタプリタ121が実装されている。図中では、Aインタプリタ121a、Bインタプリタ121b、及びCインタプリタ121cが例示されている。各インタプリタ121は、解釈可能なプリンタ言語が異なる。例えば、Aインタプリタ121aは、PS(Post Script)用のインタプリタであり、Bインタプリタ121bは、PCL(Printer Control Language)用のインタプリタであるといった具合である。各インタプリタ121は、また、当該インタプリタ121が実行される画像形成装置10の機種に応じて処理内容が異なる。画像形成装置10の機種に応じて対応可能な用紙サイズ、紙種、解像度等が異なり、斯かる相違によって印字結果に影響が生じるからである。したがって、本実施の形態において、各インタプリタ121は、画像形成装置の機種に応じて処理を変化させるアプリケーションに相当する。なお、各インタプリタ121は、それぞれ異なるプロセスとして起動される
プリンタシステム122は、各インタプリタ121の管理を行う。例えば、PC(Personal Computer)等のホストコンピュータより、印刷データが受信された場合、当該印刷データが使用しているプリンタ言語の種類に応じて、対応するインタプリタ121を起動させる。
【0017】
機種依存情報123は、画像形成装置10の機種に応じて値が異なる情報をいい、かつ、インタプリタ121の動作仕様に影響を与える情報をいう。機種依存情報123は、例えば、HDD114に保存されている。
【0018】
図3は、機種依存情報の構成例を示す図である。図3では、機種依存情報123が分類されて管理されていることが示されている。すなわち、図中において、機種依存情報123は、機種固有情報、デバイス依存情報、グラフィック依存情報、及びインタプリタ職種機能情報等に分類されている。機種固有情報には、機種を識別する識別ID等が含まれる。デバイス依存情報には、給紙段情報及び排紙ビン情報等、画像形成装置10に備えられているデバイス(ハードウェア)の構成又は性能等に関する情報によって構成される。グラフィック依存情報は、解像度情報及びディザ情報等、画像形成装置10の画像処理能力に関する情報によって構成される。
【0019】
なお、機種依存情報123は、例えば、テキストエディタ等によって簡便に編集が可能とされている。
【0020】
以下、画像形成装置10の処理手順について説明する。図4は、本発明の実施の形態における画像形成装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【0021】
画像形成装置10において印刷要求(印刷データ)が受信されると(S101)、当該印刷データにおいて使用されているプリンタ言語に応じたインタプリタ121(例えば、Aインタプリタ121a)が起動される(S102)。Aインタプリタ121aは、機種依存情報123を読み込み(S103)、人間によって解釈可能な形式の機種依存情報123を、構造体等のプログラムに解釈可能な形式に変換する(S104)。続いて、Aインタプリタ121aは、印刷データにおいて要求されている印刷内容と、変換後の機種依存情報123とを比較することにより、当該印刷要求に対応した印刷処理の実行の可否を判断する(S105)。例えば、印刷要求において要求されている用紙サイズ、紙種、及び解像度等が、機種依存情報123において、当該画像形成装置10に対応可能な範囲とされているか否か等が判断される。
【0022】
印刷要求に対応可能である場合、Aインタプリタ121aは、機種依存情報123に基づいて印刷処理を実行する。例えば、画像処理に関しては、グラフィック依存情報を参照し、当該グラフィック依存情報に応じた処理を実行する。
【0023】
印刷要求に対応可能でない場合、Aインタプリタ121aは、印刷要求の無視やエラーの返却等、機種依存情報123において印刷要求を満たすことができないパラメータに応じて異常系の処理を実行する(S107)。
【0024】
上述したように本実施の形態における画像形成装置10によれば、機種に依存する情報は、プログラムロジックとは分離されて管理されている。したがって、機種に依存しない部分を共通部分として開発及び保守可能となり、アプリケーションの動作仕様の共通化、品質の確保、及び機種開発の工数削減が可能となる。
【0025】
なお、例えば、画像形成装置10において、部品化されたソフトウェアモジュールを組み合わせる(接続する)ことによってアプリケーションを構築可能な場合、機種依存情報123によって、構築可能なアプリケーションを判定するようにしてもよい。例えば、A3サイズの画像データを処理するようなアプリケーションの構築が指示された場合、機種依存情報123を参照し、当該画像形成装置10がA3サイズに対応可能か否かを判定するといった具合である。そうすることにより、実行不可能なアプリケーションが構築されるといった不都合を回避することができる。
【0026】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明は斯かる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態における画像形成装置のハードウェア構成例を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態における画像形成装置のソフトウェア構成例を示す図である。
【図3】機種依存情報の構成例を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における画像形成装置の処理手順を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0028】
10 画像形成装置
11 コントローラ
12 スキャナ
13 プリンタ
14 モデム
15 ネットワークインタフェース
16 操作パネル
110 コントロールサービス
111 CPU
112 RAM
113 ROM
114 HDD
120 プリンタアプリ
121 インタプリタ
121a Aインタプリタ
121b Bインタプリタ
121c Cインタプリタ
122 プリンタシステム
123 機種依存情報
130 FAXアプリ
140 コピーアプリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アプリケーションを実行可能な画像形成装置であって、
画像形成装置の機種に応じて値が異なる機種依存情報が記憶装置に保存され、
前記アプリケーションは、前記機種依存情報に基づいて処理を実行することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記アプリケーションは、入力される処理要求と前記機種依存情報とを比較することにより、当該画像形成装置において当該処理要求に応じた処理の実行の可否を判断することを特徴とする請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記機種依存情報には、当該画像形成装置のハードウェアの構成を示す情報が含まれていることを特徴とする請求項1又は2記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記機種依存情報には、当該画像形成装置の画像処理能力に関する情報が含まれていることを特徴とする請求項1乃至3いずれか一項記載の画像形成装置。
【請求項5】
アプリケーションを実行可能な画像形成装置におけるアプリケーション実行方法であって、
前記画像形成装置の記憶装置には、前記画像形成装置の機種に応じて値が異なる機種依存情報が保存され、
前記画像形成装置の記憶装置に保存されている、前記画像形成装置の機種に応じて値が異なる機種依存情報に基づいて、前記アプリケーションの処理を実行することを特徴とするアプリケーション実行方法。
【請求項6】
前記アプリケーションは、入力される処理要求と前記機種依存情報とを比較することにより、当該画像形成装置において当該処理要求に応じた処理の実行の可否を判断することを特徴とする請求項5記載のアプリケーション実行方法。
【請求項7】
前記機種依存情報には、当該画像形成装置のハードウェアの構成を示す情報が含まれていることを特徴とする請求項5又は6記載のアプリケーション実行方法。
【請求項8】
前記機種依存情報には、当該画像形成装置の画像処理能力に関する情報が含まれていることを特徴とする請求項5乃至7いずれか一項記載のアプリケーション実行方法。
【請求項9】
請求項5乃至8いずれか一項記載のアプリケーション実行方法を画像形成装置に実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−193355(P2008−193355A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−24767(P2007−24767)
【出願日】平成19年2月2日(2007.2.2)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】