説明

画像形成装置、サーバ装置および画像形成システム

【課題】ある種類の記録媒体についてのキャリブレーションを他の種類の記録媒体を用いて実行できるようにする。
【解決手段】S1301で画像形成装置は特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体を用いてキャリブレーションを実行する際に必要となる輝度値を濃度値に変換する変換設定情報(LUTid)を、データサーバに要求する。S1305で画像形成装置はデータサーバから変換設定情報を受信して記憶する。画像形成装置は、記憶した変換設定情報と、特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体とを使用してキャリブレーションを実行する。なお、変換設定情報を受信できなかったときは、S1001〜S1005で画像形成装置が変換設定情報を作成してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像の品質を維持するためのキャリブレーションを実行する画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置の画像品質は、画像形成装置が使用される環境や画像形成装置の使用状況によって変動する。また、画像品質は、使用される記録媒体の種類によっても変動する。よって、環境や使用状況に依存して画像変換条件や画像形成条件を変更する必要がある(特許文献1)。同様に、使用される記録媒体の種類に応じて画像変換条件や画像形成条件を追加する必要もある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−261479号公報
【特許文献2】特開平08−287217号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、毎回、特定の種類の記録媒体がキャリブレーションに使用されることが前提とされている。よって、特定の種類の記録媒体がなくなってしまうと、キャリブレーションを実行できなくなってしまう。特許文献2の発明でも、追加された任意の種類の記録媒体についてキャリブレーションを行うには、やはりこれと同一の種類の記録媒体を、毎回、用意しなければならない。ここでいう記録媒体の種類とは、普通紙やコート紙といった種類だけでなく、メーカーや銘柄によって区別される種類も含む。同じ普通紙の中でも、メーカーや銘柄によって用紙の表面性や白色度が異なるからである。指定された種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体を用いてキャリブレーションを実行してしまうと、たとえば、トナーの載り量が十分でなくなってしまったり、画像形成装置の設計で定められた許容範囲を載り量が超えてしまったりする。これは、画像品質を維持できなくなることを意味する。
【0005】
仮に、所望の種類の記録媒体についてのキャリブレーションを他の種類の記録媒体を用いて実行できれば、操作者にとって便利であろう。とりわけ、予めメーカー等により指定された特定の種類の記録媒体を使用せずに、このような他の種類の記録媒体をキャリブレーション用に追加登録できれば便利であろう。さらに、追加登録作業を簡便化できれば、操作者の負担も軽減されよう。
【0006】
たとえば、本発明は、ある種類の記録媒体についてのキャリブレーションを他の種類の記録媒体を用いて実行できるようにすることを目的とする。とりわけ、本発明は、予めメーカー等により指定された特定の種類の記録媒体を使用せずに、キャリブレーションで使用可能な他の種類の記録媒体を追加できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、たとえば、特定の種類の記録媒体を用いて画像の品質を維持するためのキャリブレーションを実行する画像形成装置に適用可能である。画像形成装置は、要求手段、受信手段、記憶手段、キャリブレーション実行手段および作成手段を備える。要求手段は特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体を用いてキャリブレーションを実行する際に必要となる輝度値を濃度値に変換する変換設定情報を、サーバ装置に対して要求する。受信手段はサーバ装置から変換設定情報を受信する。記憶手段はサーバ装置から受信した変換設定情報を記憶する。キャリブレーション実行手段は記憶手段に記憶されている変換設定情報と特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体とを使用してキャリブレーションを実行する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体を用いてキャリブレーションを実行する際に必要となる輝度値を濃度値に変換する変換設定情報をサーバ装置から入手する。よって、画像形成装置は、ある種類の記録媒体についてのキャリブレーションを他の種類の記録媒体を用いて実行できるようになる。つまり、予めメーカー等により指定された特定の種類の記録媒体を使用せずに、キャリブレーションで使用可能な他の種類の記録媒体を追加できるようになる。また、サーバ装置から変換設定情報を入手するので、キャリブレーション時間を短縮でき、操作者の負担も軽減される。さらに、特定の種類の記録媒体を用いずに、特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体用の変換設定情報を画像形成装置に追加できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】カラー複写機を含む画像形成システムの構成例を示す図である。
【図2】リーダ画像処理部のブロック図である。
【図3】プリンタ制御部109を示すブロック図である。
【図4】(A)は第1のキャリブレーションにおけるコントラスト電位の算出処理を示したフローチャートである。(B)は第2のキャリブレーションを示したフローチャートである。
【図5】(A)は第1のキャリブレーションで使用する第1テストパターンの一例を示した図である。(B)は第2のキャリブレーションで使用する第1テストパターンの一例を示した図である。
【図6】コントラスト電位と画像の濃度情報との関係を示す図である。
【図7】グリッド電位と感光ドラム表面電位との関係を示した図である。
【図8】原稿画像の濃度を再現するために必要となる特性を示した特性変換チャートである。
【図9】記録媒体の特性差を説明するための図である。
【図10】記録媒体の追加登録作業を示したフローチャートである。
【図11】任意の記録媒体ZについてのLUTid(Z)の作成方法を説明するための図である。
【図12】追加された記録媒体を使用したキャリブレーションを示したフローチャートである。
【図13】データサーバを使用した記録媒体の追加登録作業を示したフローチャートである。
【図14】(a)は記録媒体の載置を促すメッセージの一例を示す図である。(b)はエラーメッセージの一例を示す図である。
【図15】データサーバの構成例を示す図である。
【図16】(a)はデータサーバが実行する設定情報の配信作業を示すフローチャートである。(b)はデータサーバが実行する設定情報の登録作業を示すフローチャートである。
【図17】各種のキャリブレーションの比較結果を示す表である。
【図18】データサーバを使用した記録媒体の追加登録作業を示したフローチャートである。
【図19】(a)は追加対象となる記録媒体の表面性を選択するためのユーザインタフェースの一例を示した図である。(b)は追加対象となる記録媒体の坪量を指定するためのユーザインタフェースの一例を示した図である。
【図20】(a)はデータサーバが実行する設定情報の配信作業を示すフローチャートである。(b)はデータサーバが実行する設定情報の登録作業を示すフローチャートである。
【図21】データサーバを使用した記録媒体の追加登録作業を示したフローチャートである。
【図22】(a)はデータサーバに設定情報を送信するか否かを操作者に問い合わせるユーザインタフェースの一例を示した図である。(b)は認証画面の一例を示した図である。
【図23】読み取り輝度値と濃度値との関係(LUTid)を示す図である。
【図24】平均化処理の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明の一実施形態を示す。以下で説明される個別の実施形態は、本発明の上位概念、中位概念および下位概念など種々の概念を理解するために役立つであろう。また、本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって確定されるのであって、以下の個別の実施形態によって限定されるわけではない。
【0011】
[実施例1]
以下では、電子写真方式のカラー複写機に適用する実施例について説明する。なお、本発明は、キャリブレーションが必要となる画像形成装置であれば適用できる。すなわち、画像形成方式は、電子写真方式に制限されることはなく、インクジェット方式、静電記録方式、その他の方式であってもよい。また、本発明は、多色画像を形成する画像形成装置だけでなく、単色画像を形成する画像形成装置にも適用できる。画像形成装置は、たとえば、印刷装置、プリンタ、複写機、複合機、ファクシミリとして製品化されてもよい。また、記録媒体は、記録紙、記録材、用紙、シート、転写材、転写紙と呼ばれることもある。さらに、記録媒体の素材は、紙、繊維、フィルム又は樹脂などであってもよい。
【0012】
<基本的なハードウエア構成>
図1を用いて本実施例にかかる画像形成システムについて説明する。図1が示す画像形成装置100aは、複写機であり、原稿から画像を読み取るリーダ部Aと、リーダ部Aにより得られた画像を記録媒体上に形成するプリンタ部Bとによって構成されている。リーダ部Aは、画像形成手段により記録媒体上に形成されたパターン画像を読み取って輝度情報を含む画像データを作成する画像読取手段の一例である。リーダ部Aは、原稿台ガラス102上に載置された原稿101を読み取る前に基準白色板106を読み取り、いわゆるシェーディング補正を実行する。原稿101は、光源103によって光を照射され、その反射光は光学系104を介してCCDセンサー105に結像する。CCDセンサー105等の読取ユニットは矢印K1の方向に移動することにより、原稿をラインごとの電気信号データ列に変換する。なお、読取ユニットが移動する代わりに原稿が移動してもよい。電気信号データ列は、リーダ画像処理部108によって画像信号に変換される。
【0013】
なお、画像形成装置100aは、ネットワークや公衆電話通信網などの通信回線180を介して、プリントサーバC、データサーバD、他の画像形成装置100b、100c、100dと接続されている。プリントサーバCは、ホストコンピュータから受信した画像信号をプリンタ制御部109に送信する。プリンタ部Bは当該画像信号に基づいて画像形成を実行する。プリンタ部Bにおける画像形成動作は、プリントサーバCからの画像信号のみに基づいて行われるわけではなく、リーダAからの画像信号に基づいても行われる。データサーバDは、画像形成装置と連携して動作するサーバ装置であって、画像形成装置100a〜100dに対して、後に述べる任意の種類の記録紙に対応する変換設定情報を受信して演算したり、送信したりする情報処理装置である。なお、本実施例においてはプリントサーバCとデータサーバDとを物理的に異なるハードウエアで構成したが、これらが同一のハードウエア上で実現されてもよい。同様に、データサーバDが、いずれかの画像形成装置に搭載されていてもよい。データサーバDは、画像形成装置に対して変換設定情報を送受信できるネットワーク上の位置であればどのような位置に配置されてもよいからである。ただし、本実施例のように変換設定情報の記憶装置を画像形成装置の外部のデータサーバDに持たせることによって、データの管理性や汎用性、アクセス性を向上させることができる。
【0014】
図2が示すCCDセンサー105により得られた画像信号は、CCD/AP回路基盤201のアナログ画像処理部202でゲイン等を調整され、A/D変換部203でデジタルの画像信号に変換され、リーダ部Aコントローラ回路基盤210に出力される。リーダ部Aコントローラ回路基盤210のシェーディング処理部212をCPU211により制御されながら画像信号をシェーディング補正してプリンタ部Bのプリンタ制御部109へ出力する。この時点で、画像信号は、RGBの各輝度情報により構成されている。
【0015】
次にプリンタ部Bの説明を行う。図1によれば、プリンタ制御部109により画像信号はPWM(パルス幅変調)されたレーザービームに変換される。レーザービームは、ポリゴンスキャナ110で偏向走査され、画像形成部120、130、140、150の各感光ドラム121、131、141、151を露光する。これにより、静電潜像が形成される。画像形成部120、130、140、150は、イエロー色(Y)、マゼンタ色(M)、シアン色(C)、ブラック色(Bk)に対応している。画像形成部120、130、140、150の構成は略同一なので、イエローを担当する画像形成部120についてのみ説明する。これらの画像形成部は、予め設定されたコントラスト電位にしたがって所定のパターン画像を記録媒体上に形成する画像形成手段の一例である。1次帯電器122は、感光ドラム121の表面を所定の電位に帯電させる。現像器123は、感光ドラム121上の静電潜像を現像してトナー画像を形成する。転写ブレード124は、転写ベルト111の背面から放電を行い、感光ドラム121上のトナー画像を転写ベルト111上の記録媒体へ転写する。その後、記録媒体は、定着器114でトナー画像を定着される。
【0016】
なお、各感光ドラム121、131、141、151には、その表面電位を計測するための表面電位計125、135、145、155が設けられている。表面電位計125、135、145、155は、コントラスト電位を調整するために使用される。
【0017】
図3が示すプリンタ制御部109の各部は、CPU301によって統括的に制御される。CPU301に代えてASIC(特定用途回路)などのハードウエアによって制御部が構成されてもよい。メモリ302は、ROMやRAMであり、制御プログラムや各種のデータが格納される。リーダ部AまたはプリントサーバC等で処理された画像信号は、プリンタ制御部109の色処理部303に入力される。画像信号のうち、記録媒体Xに形成されたパッチから取得された輝度値をi(X)と定義し、記録媒体Zに形成されたパッチから取得された輝度値をi(Z)と定義する。
【0018】
色処理部303は、輝度情報を濃度情報に変換するための輝度濃度変換設定情報(LUTid304)を用いて、画像データに含まれている輝度情報を濃度情報に変換する変換手段である。このように、LUTid304は、リーダ部Aからの画像信号に含まれている輝度情報を濃度情報に変換する輝度−濃度変換テーブルである。LUTid304は、当初は特定の種類の記録媒体について用意されているが、本実施例では任意の種類の記録媒体の追加作業を実行することによって、任意の種類の記録媒体用のLUTid304が追加される。また、追加作業としては、データサーバDから画像形成装置へダウンロードする方法と、画像形成装置自身が作成する方法とがある。
【0019】
本実施例において、CPU301は、使用される記録媒体の種類ごとにLUTid304を切り替える。たとえば、特定の種類の記録媒体Xを用いて、記録媒体Xについてのキャリブレーションを実行するときには、LUTid(X)が使用される。また、追加された任意の種類の記録媒体Zを用いて、記録媒体Xについてのキャリブレーションを実行するときには、LUTid(Z)が使用される。色処理部303は、予め指定された特定の種類の記録媒体上に形成されたパターン画像を読み取って取得された特定の種類の記録媒体についての輝度情報(i(X))を、特定の種類の記録媒体における対応する濃度情報(d(X))に変換する。さらに、色処理部303は、特定の種類の記録媒体とは異なる他の種類の記録媒体上に形成されたパターン画像を読み取って取得された他の種類の記録媒体についての輝度情報(i(Z))を、特定の種類の記録媒体における対応する濃度情報(d(X))に変換する。LUTはルックアップテーブルの略称である。LUTはテーブル形式でなくともよく、関数により実現されてもよいし、プログラムコードにより実現されてもよい。色処理部303は、プリンタ部Bの出力特性が理想的であった場合に所望の出力が得られるよう、入力された画像信号に画像処理及び色処理を適用する。入力信号の階調数は8bitであるが、精度向上のため色処理部303で10bitに拡張される。色処理部303から出力されるYMCKの各濃度情報をd1と定義する。
【0020】
階調制御部311は、UCR部305と、LUTa306を備え、プリンタ部Bを理想的な特性に合わせるべく画像信号を補正する。LUTa306、LUTb312は、濃度特性を補正するための10bitの変換テーブルであり、とりわけ、プリンタ部Bのγ特性を変更するために使用される。階調制御部311は、画像形成手段における階調特性を調整するための変換設定情報(LUTa)を使用して濃度情報を画像形成手段の出力濃度に変換する変換手段である。また、階調制御部311は、第1画像処理条件に含まれる予め決定されたテーブル(LUTa)を使用して画像の濃度情報をトナー載り量に変換する階調制御手段として機能する。
【0021】
具体的に説明しますと、LUTa306は、プリンタ部Bの特性を適正にするために特定の種類の記録媒体Xに対して作成される。なお、特定の種類の記録媒体Xは、画像形成装置のメーカーによって階調性が所望の階調性となるように予め設計された記録媒体である。本発明のLUTa306は他の記録媒体に対しても共通に使用される。LUTa306は、プリンタ部Bのエンジンの特性が設置環境や経年変化に応じて変動してしまう分を補正するために使用されるテーブルであるため、常に最新のものが使用される。よって、LUTa306は、いずれの記録媒体を用いて作成されたものであってもよい。階調制御部311は、第1変換設定情報(LUTa306)を用いて各色の濃度情報を各色の出力濃度に変換する手段として機能する。また、階調制御部311は、規制手段により総和を規制された各色のトナー載り量を、テーブル(LUTa)を使用して階調制御されたトナー載り量に変換する変換手段として機能する。
【0022】
UCR部305は、各色の出力濃度の総和所定の上限値を超えないように規制する規制手段である。具体的にUCR部305は、各画素における画像信号の積算値を規制することで、画像信号レベルの総和を制限する回路である。総和が規定値を超えた場合、UCR部305は、所定量のCMY信号をK信号に置き換える下色除去処理(UCR)を実行し、画像信号レベルの総和を低下させる。たとえば、上限値を280%と仮定する。このときY=100%、M=100%、C=100%、K=0%の信号が入力されると、積算値は300%となり規定値を超えてしまう。Y/M/Cがそれぞれ等量で形成される部分はKに置き換えても色の変化がない。よって、UCR部305は、Y/M/Cをそれぞれ10%ずつ減らして、その代わりにKを10%加算する。つまり、Y=90%、M=90%、C=90%、K=10%となり、色を変化させることなく積算値を280%に維持することができる。ここで画像信号レベルの総和を規制するのは、プリンタ部Bでの画像形成におけるトナー載り量を規制するためである。本実施例で行うプリンタ部Bの動作の適正化とは、トナー載り量が規定値を超えることにより発生する画像不良等を防ぐことである。
【0023】
UCR部305は、入力された濃度情報d1の階調特性を制御して濃度情報d2を出力する。LUTa306は、入力された濃度情報d2の階調特性を制御して濃度情報d3を出力する。なお、後述するキャリブレーション工程や記録媒体の追加工程では、LUTa306やUCR部305などが作用しないように制御されるため、濃度情報d1がそのまま濃度情報d3となることもある。
【0024】
階調制御部311から出力された信号は、ディザ処理部307でディザ処理され、PWM部308でパルス幅変調される。レーザードライバ309は、PWM変調された信号を使用して半導体レーザを発光させる。このため、ディザ処理部307は10bitの画像信号を4bitデータに変換するための中間調処理を行う。
【0025】
操作部313は、情報を入力する入力部と、出力する出力部とを備え、たとえば、タッチパネルディスプレイなどである。モデム321は、公衆電話回線を介してデータサーバDと通信するための通信装置である。なお、モデム321は、LANインタフェースであってもよい。機器インタフェース部322は、USBインタフェース、シリアルインタフェース、パラレルインタフェースなど、コンピュータ周辺機器を接続可能なインタフェースである。バーコードリーダ323は、記録媒体の種類を表すバーコード化された銘柄情報を読み取るための読み取り装置である。
【0026】
<画像形成条件の制御>
本発明の特徴はユーザー任意の種類の記録媒体におけるキャリブレーションでプリンタ特性を適正にすることにある。まずは、予め設定されている特定の種類の記録媒体Xを用いた場合のキャリブレーションについて説明する。記録媒体Xは、たとえば、画像形成装置のメーカーによって工場出荷時に指定された記録媒体またはメンテナンス担当者によってメンテナンス時に指定された記録媒体などである。本実施例においてはコントラスト電位を調整する第1のキャリブレーション機能と、画像データの階調制御部311が備えるγ補正回路(LUTa)を調整する第2のキャリブレーション機能とが存在する。CPU301は、画像形成手段が形成する画像の品質を維持するために、変換設定情報(LUTa)を調整するキャリブレーションを制御する制御手段として機能する。
【0027】
I.第1のキャリブレーション
図4(A)において、CPU301が、特定の種類の記録媒体に形成された画像から得られた第1輝度情報を使用してコントラスト電位を決定するための第1キャリブレーションを実行する第1キャリブレーション手段として機能する。また、CPU301は、複数種類のキャリブレーションの一つである第1のキャリブレーションとして、画像形成手段に第1パターン画像を形成させ、形成された第1パターン画像に基づき、コントラスト電位を決定する手段として機能する。
【0028】
S401で、CPU301は、第1のテストプリントの出力と、感光ドラムの表面電位の測定を実行する。たとえば、CPU301は、第1テストパターンの画像データ(YMCKの濃度情報d1)を作成して階調制御部311へ出力することで、特定の種類の記録媒体Xに第1テストパターンが画像として形成される。CPU301が作成する代わりに、この画像データは予めメモリ302のROMに記憶されていてもよい。また、記録媒体に対して形成される画像に対するLUTa306の作用の有無を判断するために、LUTb312は、この画像データには作用しないように、CPU301によって階調制御部311が制御される。第1テストパターンの画像を形成された記録媒体Xが第1のテストプリントとなる。なお、第1のテストプリントを出力する際に使用されるコントラスト電位は、そのときの雰囲気環境(例:絶対水分量)において目標濃度を達成すると予測された初期値が設定される。メモリ302には、様々な雰囲気環境のそれぞれに対応したコントラスト電位の値が記憶されているものとする。CPU301は、絶対水分量を測定し、測定した絶対水分量に対応したコントラスト電位を決定する。
【0029】
図5(A)に示すように、第1テストパターン50は、たとえば、帯パターン51とパッチパターン52とを含む第1パターン画像の一例である。帯パターン51は、Y、M、C、Bkの中間階調濃度からなる帯状のパターンである。パッチパターン52は、Y、M、C、Bkごとの最大濃度パッチ(例:255レベルの濃度信号)からなるパッチパターン52Y、52M、52C、52Bkである。表面電位計125、135、145、155は、各最大濃度パッチを形成したときの実際のコントラスト電位を測定する。
【0030】
S402で、リーダ部Aは、出力された第1のテストプリントを読み取り、RGB値をプリンタ制御部109のCPU301に渡す。CPU301は、特定の種類の記録媒体Xについて予め用意されているLUTid(X)を用いてRGB値を光学濃度に換算する。LUTid(X)は、特定の種類の記録媒体についての輝度情報を、特定の種類の記録媒体における対応する濃度情報に変換するための第1テーブルである。
【0031】
S403で、CPU301は、目標最大濃度に対応するコントラスト電位bを算出する。図6の横軸は現像バイアス電位を示し、縦軸は画像濃度を示している。コントラスト電位は、現像バイアス電位と、感光ドラムが一次帯電された後に各色の半導体レーザ310が最大レベルで発光したときの感光ドラムの表面電位との差である。コントラスト電位aを使用して形成された第1のテストプリントから得られた最大濃度がDaであったとする。この場合、最大濃度付近(濃度0.8〜2.0)では、コントラスト電位に対して画像濃度が実線Lに示すように線形となる。実線Lは、コントラスト電位aと、最大濃度Daとによって確定される。本実施例においては一例として目標最大濃度を1.6とする。CPU301は、目標最大濃度に対応するコントラスト電位bを実線Lに基づいて算出する。実線Lに相当するテーブルまたは関数が予めメモリ302に格納されているものとする。コントラスト電位bは、たとえば、次式(1)を用いて算出される。
【0032】
b=(a+ka)×1.6/Da ・・・(1)
ここで、kaは補正係数であり、現像方式の種類によって決定される値である。
【0033】
S404で、CPU301は、コントラスト電位bからグリッド電位Vgと現像バイアス電位Vdsを決定して設定する。
【0034】
図7によれば、CPU301は、グリッド電位Vgを−300Vに設定し、各色の半導体レーザ310の発光パルスレベルを最小にして走査を実行させ、表面電位計125、135、145、155で表面電位Vdを測定する。さらに、CPU301は、グリッド電位Vgを−300Vに設定し、各色の半導体レーザ310の発光パルスレベルを最大にしたときの表面電位Vlを表面電位計125、135、145、155で測定する。同様にCPU301はグリッド電位Vgを−700Vに設定したときの表面電位Vd、Vlを測定する。−300Vのデータと−700Vのデータとを補間または外挿することで、CPU301は、図7に示したグリッド電位と感光ドラム表面電位の関係は求めることができる。この電位データを求めるための制御を電位測定制御と呼ぶ。
【0035】
コントラスト電位Vcontは現像バイアスVdcと表面電位Vlとの差分電圧として決定される。コントラスト電位Vcontが大きい程、最大濃度を大きくとれる。CPU301は、図7に示した関係から、決定したコントラスト電位bに対応したグリッド電位Vgを決定する。CPU301は、決定したグリッド電位Vgと図7に示した関係とから対応する表面電位Vdを決定する。さらに、CPU301は、表面電位VdからVback(例:150V)を減算することで現像バイアスVdcを決定する。Vbackは、画像上にカブリトナーが付着しないように決定された電位である。
【0036】
II.第2のキャリブレーション
よく知られているように、複写機等の画像形成装置では、原稿の画像を読み取って複写物(出力画像)を形成する。つまり、原稿画像の濃度(階調特性)と出力画像の濃度(階調特性)とが一致することが要求される。複写機において実行されるプロセスでは、原稿画像はリーダ部によって輝度信号に変換され、さらに輝度信号が対応する濃度信号へ変換される。さらに、濃度信号は、トナー載り量に相当するレーザ出力信号に変換される。レーザ出力信号に応じたレーザ光が像担持体に照射され、静電潜像が形成され、それがトナーによって現像されてトナー像となる。トナー像は記録媒体に転写され、さらに、定着装置によって定着される。これにより、出力画像が形成される。
【0037】
図8によれば、原稿から出力画像が形成されるまでの一連の複写プロセスにおける各信号の関係が示されている。第I領域は、原稿濃度を濃度信号に変換するリーダ部Aの特性を示している。なお、原稿濃度は、原稿を光学濃度計で読み取った光学濃度として示している。濃度信号の階調数は1024階調である。第II領域は、濃度信号をレーザ出力信号に変換するための階調制御部311(LUTa306)の特性を示している。レーザ出力信号の階調数も1024階調としている。ここでは、特定の種類の記録媒体Xに向けのLUTaが設定してある。第III領域は、レーザ出力信号から出力画像の濃度に変換するプリンタ部Bの特性を示している。出力画像濃度は記録濃度と呼ばれることもある。出力画像濃度の階調数を1024階調としている。第III領域は、レーザ出力信号から出力濃度に変換するプリンタ部Bの特性を示している。第IV領域は、原稿濃度と記録濃度の関係を示しており、この関係は実施例における画像形成装置100aの全体的な階調特性を表している。
【0038】
画像形成装置100aでは、第IV領域の階調特性を線型にするために、第III領域のプリンタ部Bにおける記録特性の歪みを第II領域の階調制御部311によって補正している。LUTa306は、階調制御部311を作用させないでテストプリントを出力した場合に得られる第III領域の特性における入力と出力とを入れ換えるだけで、容易に作成できる。つまり、テストプリント上のパターン画像にはそれぞれ階調のことなる複数のパッチが含まれている。各パッチを形成するために使用したトナー載り量(出力信号)は当然既知である。一方で、各パッチの濃度はリーダ部Aによって輝度情報として読み取られ、さらにLUTid304によって濃度信号に変換される。これらから、入力として付与されたそれぞれ異なるトナー載り量(出力信号)と、それに対応する出力としての濃度信号(濃度値)との関係が得られる。よって、この入力と出力との関係を反転させると、ある濃度信号を入力として与えたときに出力されるべきトナー載り量(出力信号)が得られる。つまり、この濃度信号を出力信号との関係を表すものがLUTa306となる。なお、本実施例では、出力階調数は256階調(8bit)であるが、階調制御部311は10bitでデジタル信号を処理しているので、階調制御部311では1024階調である。
【0039】
図4(B)において、CPU301は、複数種類のキャリブレーションの一つである第2のキャリブレーションを実行する。CPU301は、予め指定された特定の種類の記録媒体上にパターン画像を画像形成手段に形成させ、特定の種類の記録媒体上に形成されたパターン画像から光学濃度と出力濃度との関係を取得し、取得した関係に基づき変換設定情報を作成する手段として機能する。第2のキャリブレーションは、通常、第1のキャリブレーションが終了すると実行される。
【0040】
S411で、CPU301は、第2のテストプリントの出力を実行する。たとえば、CPU301は、第2テストパターンの画像データ(YMCKの濃度情報d1)を作成して階調制御部311へ出力することで、特定の種類の記録媒体Xに第2テストパターンが画像として形成される。CPU301が作成する代わりに、この画像データは予めメモリ302のROMに記憶されていてもよい。第2テストパターンの画像を形成された記録媒体Xが第2のテストプリントとなる。この際に、CPU301は、階調制御部311のLUTaを作用させないで画像形成を実行させる。UCR部305から出力された濃度信号YMCKはLUTa306を迂回してディザ処理部307へ入力される。
【0041】
第2のテストプリントには、たとえば、図5(B)が示すように、Y、M、C、Bkの各色について4列16行(すなわち64階調)のグラデーションからなる第2テストパターン(パッチ群61、62)が形成される。第2テストパターンは、第2パターン画像の一例である。64階調のパッチには、たとえば、全部で256階調あるうちの、低濃度領域を重点的に割り当てる。これにより、ハイライト部における階調特性を良好に調整することができる。なお、第2テストパターンを、低解像度(160〜180lpi)用と高解像度(250〜300lpi)用とのそれぞれで用意してもよい。図5(B)においては、前者がパッチ群61であり、後者がパッチ群62である。なお、lpiは、lines/inchの略称である。各解像度の画像を形成するには、ディザ処理部307がその解像度になるパラメータをもつディザ処理を実行することで実現できる。なお、階調画像を160〜180lpi程度の解像度で、文字等の線画像は250〜300lpiの解像度で作成すればよい。この2種類の解像度で同一の階調レベルのテストパターンを出力しているが、解像度の違いで階調特性が大きく異なる場合には、解像度に応じて階調レベルを設定するのがより好ましい。また、プリンタ部Bが、3種類以上の解像度で画像を形成できる能力を有している場合、第2のキャリブレーション用のテストプリントを複数ページに分けても良い。
【0042】
S412で、リーダ部Aは、第2テストパターンから画像を読み取る。第2テストパターンから出力されたRGBの各輝度値は、色処理部303に入力される。色処理部303は、LUTid(X)を用いてRGBの各輝度値を濃度値に変換する。LUTid(X)を用いるのは、記録媒体Xが使用されるからである。
【0043】
S413で、CPU301は、各濃度値を、第2テストパターンを作成するために使用されたレーザ出力レベルと、テストパターン(階調パッチ)の作成位置と対応させることで、レーザ出力レベルと濃度との関係を示すテーブルを作成する。CPU301は、作成したテーブルをメモリ302に書き込む。この段階で、CPU301は、図8に示した第III領域に示したプリンタ部Bの特性を求めることができ、この特性における入力と出力とを入れ換えることにより、このプリンタ部BのLUTaを決定し、階調制御部311に設定する。LUTaを計算で求めるにはデータが不足していることがある。本来であれば、256階調必要であるが、64階調分だけしか階調パッチを形成していないからである。そこで、CPU301は、不足しているデータを補間することで、必要なデータを作成する。このような第2のキャリブレーションによって、目標濃度に対して線型となる階調特性を実現できる。
【0044】
このように、CPU301は、テーブル(LUTa)を作成するテーブル作成手段として機能する。具体的には、CPU301が、テーブル(LUTa)を調整するためのキャリブレーション処理を起動すると、画像形成手段は、特定の種類の記録媒体上にパターン画像を形成する。画像読取手段は、特定の種類の記録媒体上に形成されたパターン画像を読み取って輝度情報(i(X))を出力する。さらに、変換手段は、テーブル(LUTid(X))を使用して輝度情報(i(X))を対応する濃度情報(d(X))に変換する。そして、テーブル作成手段は、濃度情報(d(X))を入力値とし、画像形成手段がパターン画像を特定の種類の記録媒体に形成したときに使用したトナー載り量(t(X))を出力値とすることでテーブル(LUTa)を作成する。
【0045】
本実施例では、第1のキャリブレーションと第2のキャリブレーションとをシーケンシャルに実行するものとして説明したが、どちらか一方のみを個別に実行してもよい。本実施例では、キャリブレーションを実行することにより、短期的又は長期的に発生しうる画像濃度、画像再現性または階調再現性の変動を有効に補正することができるため、画像の品質を維持できる。
【0046】
<任意の種類の記録媒体の追加作業>
次に、キャリブレーションに用いることが可能な記録媒体を追加する場合について説明する。本実施例の特徴は任意の種類の記録媒体を使用してキャリブレーションを行ってプリンタ特性を適正にすることにある。ここでは、画像形成装置100aが特定の種類の記録媒体を用いて画像の品質を維持するためのキャリブレーションを実行する画像形成装置であるものと仮定する。
【0047】
特定の種類の記録媒体を用いることが想定されているキャリブレーションに任意の種類の記録媒体を用いてしまうと、補正されるプリンタの出力特性に問題が生じる。特定の種類の記録媒体については、トナーの載り量が既知であり、画像に欠陥が現れないようにキャリブレーションが設計されている。よって、特定の種類の記録媒体を用いてキャリブレーションを実行することで階調特性を所望の特性に合わせることができる。しかし、任意の種類の記録媒体については、濃度とトナーの載り量との関係が不明である。よって、特定の種類の記録媒体を用いることが想定されているキャリブレーションにおいて、他の種類の記録媒体を使用すれば、トナーの載り量が設計時の想定を超えてしまうことがある。この場合、転写や定着時に不具合が生じ、画像不良につながるおそれがある。
【0048】
図9によれば、特定の種類の記録媒体Xのトナー載り量と同量とすると出力濃度が低下する他の種類の記録媒体Zが例示されている。特定の種類の記録媒体Xと他の記録媒体Zともに、ある1次色についての出力濃度特性が図9(I)に示した出力濃度特性となるように画像形成条件を設定したと仮定する。この場合、濃度信号に対する記録媒体上のトナー載り量は図9(II)が示すとおりとなる。すなわち、特定の種類の記録媒体Xのトナー載り量に対し他の種類の記録媒体Zのトナー載り量がより多くなる。つまり、記録媒体Xの階調性を調整する際に記録媒体Zを用いてキャリブレーションを行い、その結果を記録媒体Xに適用すると、画像不良発生する。たとえば、2次色、3次色等を出力すると記録媒体Xには想定以上のトナーが存在することなり、定着不良が発生する。
【0049】
そこで、本実施例では、任意の種類の記録媒体Zを使ってキャリブレーションを実行しても、特定の種類の記録媒体Xを使ってキャリブレーションを行った場合と同じLUTaが作成されるようにする。そして、LUTaの直前で画像信号の信号レベルの総和を規制することで、載り量オーバーを緩和する。これを実現するために、同一の画像信号を用いて特定の種類の記録媒体Xと任意の種類の記録媒体Zとのそれぞれに同一のパターン画像(画像パターン)を形成する。同一の画像信号を用いるのは、特定の種類の記録媒体Xと任意の種類の記録媒体Zとの双方でトナー載り量を等しくするためである。リーダ部Aで、特定の種類の記録媒体Xと任意の種類の記録媒体Zとからそれぞれ画像を読み取ってそれぞれの輝度値を決定する。さらに、CPU301は、これらの輝度値間の輝度差を算出し、LUTidでその差分を補正する。たとえば、CPU301は、特定の種類の記録媒体X用のLUTid(A)に差分を加算することで、任意の種類の記録媒体Z用のLUTid(Z)を作成する。よって、任意の種類の記録媒体Zを用いてキャリブレーションを実行する際には、LUTid(Z)を色処理部303に設定することで、あたかも特定の種類の記録媒体Xを用いてキャリブレーションを行ったのと同等の階調性を実現したLUTaを作成できる。
【0050】
図10によれば、画像形成装置100aに設けられた操作部のボタンによりキャリブレーション用の記録媒体の追加登録が指示されると、CPU301は、追加作業を起動する。S1001で、CPU301は、特定の種類の記録媒体Xを選択し、特定の種類の記録媒体Xに画像パターンを形成する。画像パターンとしては、たとえば、第2のキャリブレーションに使用される第2のテストパターンを採用できる。プリンタ部Bは、キャリブレーションに使用可能な記録媒体として任意の種類の記録媒体を追加するために、キャリブレーションに使用可能な特定の種類の記録媒体と任意の種類の記録媒体とにそれぞれ同一の画像信号を用いて画像を形成する画像形成手段に相当する。S1002で、リーダ部Aは、特定の種類の記録媒体Xに形成された画像パターンを読み取り、読み取り輝度値I(X)を生成してプリンタ制御部109のCPU301に渡す。輝度値I(X)は、特定の種類の記録媒体に形成された画像から得られた第1輝度情報に相当する。
【0051】
S1003で、CPU301は、追加対象となる任意の種類の記録媒体Zを選択し、記録媒体Zに第2のテストパターンを形成する。S1004で、リーダ部Aは、記録媒体Zに形成された画像パターンを読み取り、読み取り輝度値I(Z)を生成してプリンタ制御部109のCPU301に渡す。輝度値I(Z)は、任意の種類の記録媒体に形成された画像から得られた第2輝度情報に相当する。読み取り輝度値I(Z)を取得するために使用される画像データ及び画像処理は、読み取り輝度値I(X)を取得するために使用されたものと同一とする。
【0052】
S1005で、CPU301は、これらの読み取り輝度値I(X)及びI(Z)に次の方法を適用することで、記録媒体Zでキャリブレーションを実行する際に適用するLUTid(Z)を作成して、メモリ302または色処理部303に記憶する。LUTid(Z)の詳細な作成方法は以下の通りである。なお、LUTid(Z)は、任意の種類の記録媒体について輝度情報を濃度情報に変換するための第2変換設定情報に相当する。
【0053】
次に図11を参照する。図11(I)には、特定の種類の記録媒体Xと任意の種類の記録媒体Zとの出力画像信号と読み取り輝度値との関係が示されている。図11(II)には、読み取り輝度値と読み取り濃度値との関係が示されている。なお、記録媒体Zの濃度値は、記録媒体Xでの濃度値に換算されている。
【0054】
特定の種類の記録媒体Xについての読み取り輝度値I(X)と、任意の種類の記録媒体Zについての読み取り輝度値I(Z)は、同一の画像信号(=同じトナー載り量)で記録媒体Xと記録媒体Zに形成された画像から読み取った輝度値である。CPU301は、輝度値I(X)とI(Z)とから、同じ載り量を達成するために必要となる特定の種類の記録媒体Xと任意の種類の記録媒体Zとの輝度差を算出する。よって、CPU301は、第1輝度情報と第2輝度情報との差分を算出する算出手段として機能する。
【0055】
CPU301は、LUTid(X)にこの輝度差を加算することで、任意の種類の記録媒体ZについてのLUTid(Z)を作成する。よって、CPU301は、第1変換設定情報に差分を加算することで第2変換設定情報を算出する第2算出手段として機能する。LUTid(X)は、特定の種類の記録媒体について輝度情報を濃度情報に変換するための変換設定情報に相当する。
【0056】
このように、記録媒体ZとLUTid(Z)とを組にして使用すれば、記録媒体XとLUTid(X)とを組にして使用したときと同様のキャリブレーション結果が得られることになる。これは、記録媒体ZとLUTid(Z)とを組にして決定されたLUTaは、記録媒体XとLUTid(X)とを組にして決定されたLUTaと実質的に同一となることを意味する。すなわち、特定の種類の記録媒体Xの代わりに任意の種類の記録媒体Zを用いても、理論的には同一のLUTaが得られることになる。LUTaは、図7に示した第II領域に示した特定に対応している。よって、第III領域に示されるプリンタ特性が同一であれば、記録媒体Xを用いて作成したLUTa(X)も記録媒体Zを用いて作成したLUTa(B)も同じ物になるのである。よって、LUTa(B)は、特定の種類の記録媒体と任意の種類の記録媒体とに適用される共通の画像形成条件に相当する。CPU301は、第2変換設定情報に基づいて画像形成条件を決定する決定手段として機能する。CPU301は、作成したLUTid(Z)を追加された任意の種類の記録媒体Zの識別情報と関連付けて、メモリ302に記憶しておく。
【0057】
図12を参照する。S1201で、CPU301は、操作部を介して、どの記録媒体を使用するかを操作者に指定させる。S1202で、CPU301は、記録媒体Xが指定されればLUTid(X)をメモリ302から読み出して色処理部に設定し、記録媒体Zが指定されればLUTid(Z)をメモリ302から読み出して色処理部に設定する。よって、CPU301は、キャリブレーションに使用される記録媒体を指定する指定手段として機能する。S1203で、CPU301は、第1キャリブレーション(S401〜S404)及び第2キャリブレーション(S801〜S803)を実行する。とりわけ、第2キャリブレーションによって、LUTa(Z)が作成される。なお、色処理部303は、CPU301により指定された記録媒体に対応したLUTidを使用して変換処理を実行する。よって、色処理部303は、指定手段により特定の種類の記録媒体が指定されたときは特定の種類の記録媒体に形成された画像から得られた輝度情報を第1変換設定情報により濃度情報に変換する変換手段として機能する。また、色処理部303は、指定手段により任意の種類の記録媒体が指定されたときは任意の種類の記録媒体に形成された画像から得られた輝度情報を第2変換設定情報により濃度情報に変換する変換手段として機能する。このように、CPU301やプリンタ制御部109は記憶手段に記憶されている変換設定情報と特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体とを使用してキャリブレーションを実行するキャリブレーション実行手段として機能する。
【0058】
本実施例によれば、特定の種類の記録媒体Xの特性(輝度値I(X))、任意の種類の記録媒体Zの特性(輝度値I(Z))、及び、記録媒体X用の第1変換設定情報(LUTid(Z))から、記録媒体Z用の第2変換設定情報(LUTid(Z))を作成する。これにより、任意の種類の記録媒体Zを用いてキャリブレーションを実行できるようになる。とりわけ、同一の画像信号を用いて記録媒体Xと記録媒体Yとに画像を形成することで、両者におけるトナー載り量を同一にすることができる。トナー載り量が同一であるため、輝度値I(X)と輝度値I(Z)との差分は、LUTid(X)とLUTid(Z)との差分に相当する。よって、LUTid(X)に輝度値I(X)と輝度値I(Z)との差分を加算すれば、比較的に簡単に、LUTid(Z)を取得できる。
【0059】
さらに、第2変換設定情報に基づいて、特定の種類の記録媒体Xと任意の種類の記録媒体Xとに適用される共通の画像形成条件(LUTa)を決定するため、画像形成条件(LUTa)を記録媒体ごとに用意する必要はない。すなわち、輝度情報と濃度情報とを変換するLUTidについては記録媒体ごとに用意する必要はあるものの、LUTaについては記録媒体ごとに用意する必要はない。LUTaを複数種類の記録媒体間で共通に使用できることも、有利な効果の一つである。つまり、LUTidは、指定された記録媒体の種類に応じて切り換える必要はあるが、LUTaについて切り換える必要がない。記録媒体の種類ごとに専用のLUTaを記憶する他の例と比較して、本発明では、メモリの記憶容量も減らすことが可能となる。
【0060】
本実施例によれば、プリンタ部Bの単色の出力特性を精度良く所望の状態にできるため、プリンタ制御部109や外部コントローラ等でICCプロファイルを使用したカラーマネジメントを行った場合の色再現性の精度を上げることもできる。なお、ICCは、インターナショナル・カラー・コンソーシアムの略称である。
【0061】
本実施例では、記録媒体の追加作業において記録媒体Xでの画像形成及び読み取りの後に、記録媒体Zでの画像形成及び読み取りを行うものとして説明した。しかし、記録媒体Xおよび記録媒体Zでの画像形成を先に実行し、その後に記録媒体Xおよび記録Zから画像を読み取ってもよい。記録媒体Xと記録媒体Zとのいずれが先であってもよい。
【0062】
<データサーバを利用したLUTidの追加作業>
上述したように、記録媒体ZについてのLUTid(Z)を作成すれば、記録媒体Xの代わりに記録媒体Zを使用して、記録媒体Xの階調性を維持するためのキャリブレーションを実行できるようになる。ところで、市場には、同一の機種の画像形成装置が稼働しており、それらの画像形成装置が同一の種類の記録媒体を使用することがある。よって、記録媒体ZについてのLUTid(Z)がすでにいずれかの画像形成装置において作成済みとなっている可能性がある。LUTid(Z)の作成するためには、記録媒体Xが必要になるだけでなく、作成時間も必要となる。よって、同一の機種の画像形成装置が同一の記録媒体Zについて作成済みのLUTid(Z)をダウンロードできれば、記録媒体Xが不要となるだけでなく、作成時間も短縮されるであろう。そこで、実施例1では、任意の種類の記録媒体Zの追加作業が起動されたときに、データサーバからLUTid(Z)の受信を試みる。そして、受信に成功したときは受信したLUTid(Z)をメモリに格納し、失敗したときにLUTid(Z)を作成するものとする。なお、作成したLUTid(Z)をデータサーバDに登録することで、他の画像形成装置の処理負担を軽減できるようになろう。
【0063】
[画像形成装置が実行する追加フロー]
図13に示したフローチャートに基づいて、本実施例の画像形成装置が実行するキャリブレーション用記録紙の追加処理について説明する。なお、すでに説明した個所は同一の参照符号を付与することにより、説明の簡潔化を図る。ここでは、操作部313が備える表示部に表示された、追加開始を指示するためのボタンがユーザーによってタッチされたことをCPU301が検知すると、本処理を開始する。CPU301は、追加対象となる記録媒体Zを示す銘柄情報(バーコード情報)をバーコードリーダに読み取らせるよう、ユーザーに促すメッセージを操作部313の表示部に表示する。
【0064】
S1301で、CPU301は、バーコードリーダ323が読み取ったバーコード情報を一旦、メモリ302に格納する。CPU301は、操作部313の表示部にメッセージを表示する。このメッセージは、データサーバDに対してLUTidを参照するかどうかをユーザーに選択させるためのメッセージである。このように、CPU301やバーコードリーダ323は、特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体の銘柄を示す銘柄情報を取得する銘柄情報取得手段として機能する。また、バーコードリーダ323は、記録媒体の銘柄を示すバーコード化された銘柄情報を読み取るバーコードリーダの一例である。
【0065】
S1302で、CPU301は、操作部313から入力された情報に基づいて、データサーバDのLUTidを参照するかどうかを判定する。参照することを意味するボタンが操作されたことを示す信号をCPU301が検知すると、S1303に進む。一方、参照しないことを意味するボタンが操作されたことを示す信号をCPU301が検知すると、S1306に進む。
【0066】
S1303で、CPU301は、参照リクエストをデータサーバDにモデム321を介して送信する。たとえば、CPU301は、メモリ302に格納しておいた記録媒体Zの銘柄情報を読み出すとともに、メモリ302に格納されている画像形成装置100aの機種を示す機種情報を読み出す。CPU301は、銘柄情報および機種情報を含むかまたは付随した参照リクエストを作成して送信する。このように、CPU301は、特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体を用いてキャリブレーションを実行する際に必要となる輝度値を濃度値に変換する変換設定情報を、サーバ装置に対して要求する要求手段として機能する。とりわけ、実施例1において、CPU301は、銘柄情報に対応した変換設定情報をサーバ装置に対して要求する要求手段として機能する。また、CPU301は、画像形成装置の機種を示す機種情報を取得する機種情報取得手段として機能する。さらに、CPU301は、銘柄情報に加えて機種情報にも対応した変換設定情報をサーバ装置に対して要求する要求手段としても機能する。ここで、機種情報は、たとえば、製造番号、型番、シリアル番号などである。詳しくは次項で述べるが、データサーバDは参照リクエストを受信すると、銘柄情報と機種情報に基づいて、データサーバDのメモリ領域を検索して、対応するLUTidの抽出を試みる。対応するLUTidが発見すれば、データサーバDはそれを画像形成装置100aに送信する。一方、発見できなければ、データサーバDは発見に失敗したことを意味するレスポンスを画像形成装置100aに送信する。
【0067】
S1304で、CPU301は、データサーバDから追加対象の記録媒体Zに対応したLUTidを受信できたかどうかを判定する。検索成功メッセージとともにLUTidを受信できたのであれば、S1305に進む。
【0068】
S1305で、CPU301は、受信したLUTidを記録媒体Zの銘柄情報と対応付けて、メモリ302のROM部分に記憶して、本処理を終了する。これにより、記録媒体Xの代わりに記録媒体Zを用いてキャリブレーションを実行できるようになる。このように、メモリ302は、サーバ装置から受信した変換設定情報を記憶する記憶手段として機能する。上述したS1201で、バーコードリーダを用いて銘柄情報が入力されると、S1202で銘柄情報に対応したLUTidがセットされ、S1203でLUTaが作成される。一方、S1304で、検索失敗メッセージを受信したのであれば、S1306に進む。
【0069】
S1306で、CPU301は、記録媒体Zに対応するLUTid(Z)の作成を開始する。LUTid(Z)を作成するためには、記録媒体Zだけでなく特定種類の記録媒体Xも必要となる。図14(a)が示すように、CPU301は、操作部313の表示部に示すメッセージ1401、ボタン1402、1403を表示する。メッセージ1401は、画像形成装置100aのメーカーから指定された記録媒体Xを手差しトレイにセット(載置)することを促すためのメッセージである。ボタン1402は、記録媒体Xのセットが完了したことをCPU301に知らせるためのボタンである。ボタン1403は、記録媒体Xを操作者が用意できないことをCPU301に知らせるためのボタンである。
【0070】
S1307で、CPU301は、操作部313から入力された情報に基づいて、記録媒体Xがトレイにセットされたのかどうかを判定する。具体的には、ボタン1402が操作されたことを示す信号を検知すると、CPU301は、記録媒体Xがトレイにセットされたと判定する。ボタン1403が操作されたことを示す信号を検知すると、CPU301は、記録媒体Xがトレイにセットされなかったと判定する。
【0071】
記録媒体Xがトレイにセットされたのであれば、上述したS1001ないしS1005を実行してLUTid(Z)を作成し、その後、S1308に進む。このように、CPU301は、サーバ装置から変換設定情報を受信できなかったときに、変換設定情報を作成して、記憶手段に記憶させる作成手段として機能する。S1308で、CPU301は、作成したLUTid(Z)、銘柄情報および機種情報が含まれているかまたは付随した登録リクエストをデータサーバDに送信(アップロード)し、本処理を終了する。データサーバDは、銘柄情報、機種情報と対応付けて、LUTid(Z)をデータベースに登録する。このデータベースは、記録媒体の銘柄を示す銘柄情報または記録媒体の物理特性を示す物理特性情報と対応付けて、変換設定情報を登録したデータベースである。これにより、画像形成装置100aと機種が同一の画像形成装置100b〜100dは、LUTid(Z)を作成せずに、データサーバDからダウンロードして使用できるようになる。このように、CPU301は、作成手段が作成した変換設定情報をサーバ装置に送信することで、サーバ装置に変換設定情報を登録させる送信手段として機能する。
【0072】
一方、記録媒体Xがトレイにセットされなかった(ボタン1403が操作された)のであれば、S1309に進む。S1309で、CPU301は、操作部313の表示部にメッセージを出力する。このメッセージは、図14(b)に示すメッセージ1404のように、記録媒体Xを用意できないときに操作者がとるべき行動を説明したメッセージである。ここでは、記録媒体XがないためにLUTidの作成を実行できないため、画像形成装置のサービス担当者へ連絡することを促している。
【0073】
[データサーバDが実行する追加フロー]
複数の画像形成装置によって送信された変換用LUTidの管理を行うデータサーバDのフローを説明する。
【0074】
図15が示すように、データサーバDは、CPU1501がメモリ1502に格納されたプログラムにしたがって動作する。メモリ1502は、RAM、ROMおよびHDD(ハードディスクドライブ)などの記憶装置により構成されている。モデム1521は、公衆電話回線を介して画像形成装置100a〜100dと通信するための通信装置である。なお、モデム1521は、LANインタフェースであってもよい。
【0075】
<参照リクエストに対する応答処理>
図16(a)に示したフローチャートにしたがって、参照リクエストに対したデータサーバDが実行する応答処理について説明する。ここでは、画像形成装置100aが参照リクエストを送信してきたものと説明するが、他の画像形成装置から参照リクエストを受信したときも同様の手順となる。
【0076】
S1601で、CPU1501は、モデム1521を使用して、画像形成装置100aから上述した参照リクエストを受信する。S1602で、CPU1501は、受信したリクエストから銘柄情報と機種情報を読み出して、メモリ1502に格納する。
【0077】
S1603で、CPU1501は、受信した銘柄情報と機種情報を検索キーとして、メモリ1502に記憶されているデータベースの検索を開始する。このデータベースには、予め、銘柄情報と機種情報との組み合わせ(カテゴリー)に対応したLUTidが登録されているものとする。つまり、メモリ1502のデータベースは、銘柄情報または物理特性情報と、画像形成装置を示す機種情報との組み合わせに対応付けて、変換設定情報を保持している。このように、CPU1501は、画像形成装置から要求を受信すると、データベースを検索する検索手段として機能する。また、CPU1501は、要求とともに送信されてきた、銘柄情報または物理特性情報と、画像形成装置を示す機種情報との組み合わせに対応する変換設定情報を検索して抽出する検索手段として機能する。なお、物理特性情報についての検索は、後述する実施例で説明する。
【0078】
S1604で、CPU1501は、対応するLUTidを発見(抽出に成功)したかどうかを判定する。対応するLUTidを発見すると、S1605に進む。S1605で、CPU1501は、成功メッセージとともにLUTidをレスポンスとして画像形成装置100aに送信する。一方、対応するLUTidを発見できなかったときは、S1606に進む。S1606で、CPU1501は、失敗メッセージをレスポンスとして画像形成装置100aに送信する。このように、CPU1501は、検索手段が発見した変換設定情報を画像形成装置へ配信する配信手段として機能する。
【0079】
<LUTidの登録処理>
図16(b)に示したフローチャートにしたがって、登録リクエストに対してデータサーバDが実行する応答処理について説明する。ここでは、画像形成装置100aが登録リクエストを送信してきたものと説明するが、他の画像形成装置から登録リクエストを受信したときも同様の手順となる。
【0080】
S1611で、CPU1501は、銘柄情報、機種情報、LUTidとともに登録リクエストを受信する。S1612で、CPU1501は、受信した銘柄情報、機種情報、LUTidを一旦、メモリ1502に格納する。
【0081】
S1613で、CPU1501は、受信した銘柄情報および機種情報を組み合わせたカテゴリーと同一のカテゴリーのLUTidがすでにデータベースに登録されているかどうかの検索を開始する。S1613で、CPU1501は、同一のカテゴリーを発見できたかどうかを判定する。同一のカテゴリーを発見できなければ、S1617に進み、受信した銘柄情報と機種情報をと組み合わせて新規のカテゴリーを作成し、作成したカテゴリーと対応付けてデータベースにLUTidを登録する。一方、同一のカテゴリーを発見できたのであれば、S1615に進む。
【0082】
S1615で、CPU1501は、発見したカテゴリーに対応付けてLUTidをメモリ1502のデータベースに格納する。
【0083】
S1615で、CPU1501は、同一のカテゴリーに属している複数のLUTidを平均化処理して平均LUTid(LUTid_ave)を作成する。さらに、CPU1501は、LUTid_aveをカテゴリーと対応付けてデータベースに登録する。CPU1501は、参照リクエストを受信すると、LUTid_aveを送信する。このように、サーバ装置から送信される変換設定情報(LUTid_ave)は、複数の画像形成装置から送信されたそれぞれ異なる変換設定情報を平均化した情報であってもよい。
【0084】
このように複数の画像形成装置によって作成されたLUTidを平均化することによって、LUTid作成時におけるリーダの測定誤差や、LUTid作成時に使用した記録媒体Zおよび記録媒体Xの個体差などを緩和できる。つまり、より精度の高いLUTidを画像形成装置100a〜100dに配信できるようになる。
【0085】
なお、本実施例ではデータサーバDにLUTidが記憶され、LUTidを画像形成装置に送信する構成としている。しかし、LUTidは、記録媒体上の載り量に対する制限を与える情報であるため、もし誤ったLUTidを用いてキャリブレーションを行ってしまうと画像不良が発生するおそれがある。そのため、データサーバDのサーバ管理者はデータサーバDが受信したLUTidや、そのLUTidを作成した画像形成装置の機種情報を監視してもよい。監視の結果、CPU1501は、サーバ管理者からの指示に基づいて不適切なLUTidをデータベースから削除してもよい。これにより、データサーバDにおけるLUTidの精度と信頼性が維持されよう。
【0086】
[実施例1にかかる発明の効果]
図17を用いて本実施例の効果について、キャリブレーション精度、キャリブレーションの実行時間(制御時間)および特定種類の記録媒体Xが必要となる枚数の観点から説明する。ケース(i)は、記録媒体Xのみを用いてキャリブレーションを行ったケースである。ケース(ii)は、任意の種類の記録媒体ZについてLUTid(Z)を作成し、記録媒体Zを用いてキャリブレーションを行ったケースである。ケース(iii)は、記録媒体ZのLUTid(Z)をデータサーバDから取得してキャリブレーションを行ったケースである。ケース(iv)は、記録媒体ZのLUTid(Z)をデータサーバDから取得しようと試みたものの取得に失敗し、LUTid(Z)を作成して記録媒体Zでキャリブレーションを行ったケースである。評価は、◎(非常に良い)、○(良い)、△(やや劣る)、×(課題あり)といった4段階の評価とした。
【0087】
ケース(i)では、メーカーが指定した記録媒体Xのみでキャリブレーションを行うため、精度や制御時間については良好であるが、記録媒体Xの必要枚数が多くなりやすい。これは、毎回、記録媒体Xを用意しなければならないためである。さらに、記録媒体Xがなければ、キャリブレーションを実行できなくなってしまうというデメリットもある。そのため、記録媒体Xの必要枚数に関する評価は最低レベルである。
【0088】
ケース(ii)では、記録媒体ZについてLUTid(Z)を作成してから記録媒体Zを用いてキャリブレーションを行うため、ケース(i)と同等の精度が得られる。よって、精度の評価は良好である。しかし、ケース(ii)では、LUTid(Z)の追加作業が発生する点で、ケース(i)よりも制御時間が増えてしまう。よって、制御時間の評価はやや劣ると判定した。記録媒体Xの必要枚数はLUTid(Z)の追加作業の際に1枚が必要となるにすぎない。しかも、記録媒体Zを追加してしまえば、その後のキャリブレーションでは記録媒体Xが必要とならず、操作者にとって便利である。そこで、記録媒体Xの必要枚数に関する評価は良好である。
【0089】
ケース(iii)では、記録媒体ZについてのLUTid(Z)をデータサーバDからダウンロードして記録媒体Zを用いてキャリブレーションを行うため、精度については良好である。また、LUTid(Z)を作成せずに、データサーバDからダウンロードするだけでよいため、制御時間に関しても良好である。記録媒体Xの必要枚数に関しては、記録媒体Xを全く用いる必要がないため、4つのケースの中では最良である。
【0090】
ケース(iv)では、LUTid(Z)をデータサーバDから取得しようとしたもののその取得に失敗して、LUTid(Z)を作成してから記録媒体Zでキャリブレーションを行うため、制御時間はやや劣る。ただし、精度に関しては、良好である。また、ケース(iv)における記録媒体Xの必要枚数は、ケース(ii)と変わらないため、良好である。
【0091】
このように、本実施例では、ある種類の記録媒体Xについてのキャリブレーションを他の種類の記録媒体Zを用いて実行できるようになる利点がある。とりわけ、ケース(ii)、(iv)では、予めメーカー等により指定された特定の種類の記録媒体Xを1枚だけ使用するだけで、キャリブレーションで使用可能な他の種類の記録媒体Zを追加できるようになる。さらに、ケース(iV)では、記録媒体Xを1枚も用いることなく、記録媒体Zでキャリブレーションを実行できるようになる。これは、記録媒体Xを準備する必要がなくなるため、操作者にとって利便性が高い。つまり、操作者が入手しやすい任意の種類の記録媒体Zを用いて、記録媒体Xを用いたのと同等のキャリブレーション結果が得られる利点がある。複数の画像形成装置が接続されたデータサーバDを用いてLUTid(Z)を共用することで、操作者の作業負担を軽減できる。また、複数の画像形成装置によって取得されたLUTid(Z)を平均化して用いることで、いずれかの画像形成装置において発生した画像形成エンジンの不調の影響を緩和できるであろう。
【0092】
[実施例2(坪量・表面性で分類する)]
実施例1では、画像形成装置の機種情報と記録媒体の銘柄情報との組み合わせをカテゴリーとし、カテゴリーごとのLUTidをデータサーバDが保持するものであった。しかし、記録媒体の種類を特定するための情報は、銘柄情報に限られず、記録媒体の物理的特性を示す物理特性情報であってもよい。そこで、実施例2では、画像形成装置の機種情報と記録媒体の物理特性情報(例:坪量および表面性)と組み合わせをカテゴリーとしてLUTidを管理する発明について提案する。なお、実施例1と共通する事項については、同一の参照符号を付与することで、説明の簡潔化を図る。
【0093】
[画像形成装置の追加フロー]
図18を用いて画像形成装置が実行する追加処理について説明する。ここでは、操作部313が備える表示部に表示された、追加開始を指示するためのボタンがユーザーによってタッチされたことをCPU301が検知すると、本処理を開始する。CPU301は、追加対象となる記録媒体Zを示す物理特性情報(例:坪量および表面性)を操作部313から入力するよう、操作者に促すメッセージを操作部313の表示部に表示する。図19(a)、(b)が示すように、入力を促すメッセージ1901、1903と、表面性の種類を選択するためのボタン1902と、坪量を選択するためのボタン1904とが操作部に表示される。
【0094】
S1801で、CPU301は、操作部313から入力された物理特性情報を受け付ける。つまり、CPU301や操作部313は、特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体の物理特性を示す物理特性情報を取得する物理特性取得手段として機能する。ここでは、物理特性情報として、表面性を示す情報と坪量を示す情報が入力されたものとして説明するが、物理特性は、記録媒体の表面性と坪量とのうち少なくともひとつであってもよいし、さらに他の物理特性情報が採用されてもよい。S1802で、CPU301は、操作部313から入力された情報に基づいて、データサーバDのLUTidを参照するかどうかを判定する。参照することを意味するボタンが操作されたことを示す信号をCPU301が検知すると、S1803に進む。一方、参照しないことを意味するボタンが操作されたことを示す信号をCPU301が検知すると、S1806に進む。
【0095】
S1803で、CPU301は、参照リクエストをデータサーバDにモデム321を介して送信する。たとえば、CPU301は、メモリ302に格納しておいた記録媒体Zの物理特性情報を読み出すとともに、メモリ302に格納されている画像形成装置100aの機種を示す機種情報を読み出す。CPU301は、物理特性情報および機種情報を含むかまたは付随した参照リクエストを作成して送信する。よって、CPU301は、物理特性情報に対応した変換設定情報をサーバ装置に対して要求する要求手段として機能する。S1804で、CPU301は、データサーバDから追加対象の記録媒体Zに対応したLUTidを受信できたかどうかを判定する。検索成功メッセージとともにLUTidを受信できたのであれば、S1805に進む。
【0096】
S1805で、CPU301は、受信したLUTidを記録媒体Zの物理特性情報と対応付けて、メモリ302のROM部分に記憶して、本処理を終了する。これにより、記録媒体Xの代わりに記録媒体Zを用いてキャリブレーションを実行できるようになる。上述したS1201で、操作部313を通じて物理特性情報が入力されると、S1202で物理特性情報に対応したLUTidがセットされ、S1203でLUTaが作成される。一方、S1804で、検索失敗メッセージを受信したのであれば、S1806に進む。
【0097】
S1806で、CPU301は、記録媒体Zに対応するLUTid(Z)の作成を開始する。LUTid(Z)を作成するためには、記録媒体Zだけでなく特定種類の記録媒体Xも必要となる。図14(a)が示すように、CPU301は、操作部313の表示部に示すメッセージ1401、ボタン1402、1403を表示する
S1807で、CPU301は、操作部313から入力された情報に基づいて、記録媒体Xがトレイにセットされたのかどうかを判定する。記録媒体Xがトレイにセットされたのであれば、上述したS1001ないしS1005を実行してLUTid(Z)を作成し、その後、S1808に進む。S1808で、CPU301は、作成したLUTid(Z)、機種情報と物理特性情報が含まれているかまたは付随した登録リクエストをデータサーバDに送信(アップロード)し、本処理を終了する。データサーバDは、機種情報と物理特性情報と対応付けて、LUTid(Z)をデータベースに登録する。これにより、画像形成装置100aと機種が同一の画像形成装置100b〜100dは、LUTid(Z)を作成せずに、データサーバDからダウンロードして使用できるようになる。
【0098】
一方、記録媒体Xがトレイにセットされなかった(ボタン1403が操作された)のであれば、S1809に進む。S1809で、CPU301は、操作部313の表示部にメッセージ1404を出力する。
【0099】
<参照リクエストに対する応答処理>
図20(a)に示したフローチャートにしたがって、参照リクエストに対してデータサーバDが実行する応答処理について説明する。ここでは、画像形成装置100aが参照リクエストを送信してきたものと説明するが、他の画像形成装置から参照リクエストを受信したときも同様の手順となる。
【0100】
S2001で、CPU1501は、モデム1521を使用して、画像形成装置100aから上述した参照リクエストを受信する。S2002で、CPU1501は、受信したリクエストから物理特性情報と機種情報を読み出して、メモリ1502に格納する。
【0101】
S2003で、CPU1501は、受信した物理特性情報と機種情報を検索キーとして、メモリ1502に記憶されているデータベースの検索を開始する。このデータベースには、予め、物理特性情報と機種情報との組み合わせ(カテゴリー)に対応したLUTidが登録されているものとする。
【0102】
S2004で、CPU1501は、対応するLUTidを発見(抽出に成功)したかどうかを判定する。対応するLUTidを発見すると、S2005に進む。S2005で、CPU1501は、検索成功メッセージとともにLUTidをレスポンスとして画像形成装置100aに送信する。一方、対応するLUTidを発見できなかったときは、S2006に進む。S2006で、CPU1501は、失敗メッセージをレスポンスとして画像形成装置100aに送信する。
【0103】
<LUTidの登録処理>
図20(b)に示したフローチャートにしたがって、登録リクエストに対してデータサーバDが実行する応答処理について説明する。ここでは、画像形成装置100aが登録リクエストを送信してきたものと説明するが、他の画像形成装置から登録リクエストを受信したときも同様の手順となる。
【0104】
S2011で、CPU1501は、物理特性情報、機種情報、LUTidとともに登録リクエストを受信する。S2012で、CPU1501は、受信した物理特性情報、機種情報、LUTidを一旦、メモリ1502に格納する。
【0105】
S2013で、CPU1501は、受信した物理特性情報および機種情報を組み合わせたカテゴリーと同一のカテゴリーのLUTidがすでにデータベースに登録されているかどうかの検索を開始する。なお、物理特性情報が表面性の情報と坪量の情報であれば、表面性の情報、坪量の情報および機種情報から1つのカテゴリーが定義されることになる。S2013で、CPU1501は、同一のカテゴリーを発見できたかどうかを判定する。同一のカテゴリーであるためには、検索キーとデータベースのエントリーとの間で、表面性の情報、坪量の情報および機種情報についてすべて一致することが要求される。同一のカテゴリーを発見できなければ、S2017に進み、受信した物理特性情報と機種情報をと組み合わせて新規のカテゴリーを作成し、作成したカテゴリーと対応付けてデータベースにLUTidを登録する。一方、同一のカテゴリーを発見できたのであれば、S2015に進む。
【0106】
S2015で、CPU1501は、発見したカテゴリーに対応付けてLUTidをメモリ1502のデータベースに格納する。
【0107】
S2015で、CPU1501は、同一のカテゴリーに属している複数のLUTidを平均化処理して平均LUTid(LUTid_ave)を作成する。さらに、CPU1501は、LUTid_aveをカテゴリーと対応付けてデータベースに登録する。CPU1501は、参照リクエストを受信すると、LUTid_aveを送信する。なお、平均化処理の技術的意義はすでに説明したとおりである。
【0108】
[実施例2にかかる発明の効果]
実施例2では、実施例1の銘柄情報に代えて、表面性や坪量などの物理特性情報を採用しているにすぎないため、実施例2も実施例1と同様の効果を奏することになる。ただし、銘柄情報は製紙メーカーごとに異なるため、物理的特性がほぼ同等であっても、別の種類の記録媒体として扱われる。つまり、実施例1では、実質的に同等の種類の記録媒体であっても別の種類の記録媒体としてデータサーバDも画像形成装置100a〜100dが認識するため、データベースが肥大化しやすい。さらに、LUTidの母数が少なくなるため、平均化の効果が小さくなりやすい。また、LUTidがデータサーバDに存在しないと判定される回数が増えるため、操作者の作業負担も増えやすい。一方、実施例2であれば、銘柄こそ違っても物理特性が同一であれば同一のカテゴリーとしてデータサーバDも画像形成装置100a〜100dが認識する。よって、データベースの効率化、平均処理の効果の向上、作業負担の軽減の観点で極めて有効となる。
【0109】
[実施例3(データ収集配信装置への送信を制限)]
実施例1、2では、画像形成装置が作成したLUTidをそのままデータサーバに送信する発明であった。しかし、LUTidは複数の画像形成装置によって共用される情報であり、画像形成装置が出力する画像の品質に大きな影響を及ぼす重要な情報である。そのため、作成したLUTidをそのままデータサーバに登録する際に何らかの制限を設けることが望ましい。そこで、実施例3では、LUTidの作成者に関する情報に応じてデータサーバDへの送信の可否を判定して、データサーバDへの登録に制限を設けることにする。ここでは、実施例1をベースとして説明するが、実施例2をベースとしてもよい。
【0110】
[画像形成装置の追加処理]
図21は、図13をベースとしたフローチャートであり、S2101とS2102が追加されている。S1001ないしS1005を通じてLUTidが作成されると、S2102に進む。
【0111】
S2101で、CPU301は、作成したLUTidをデータサーバDに送信するかしないかを判定する。たとえば、CPU301は、操作部313の表示部に、図22(a)に示すようなメッセージ2201を表示する。メッセージ2201は、LUTidをデータサーバDに送信するかどうかを操作者に問い合わせるメッセージである。このように、CPU301や操作部313の表示部は、作成手段が作成した変換設定情報をサーバ装置に送信すべきか否かを操作者に問い合わせるためのメッセージを出力する出力手段として機能する。CPU301は、肯定的な意思を示すボタン2202が操作されたことを検知すると、作成したLUTidをデータサーバDに送信すると判定し、S2102に進む。一方、CPU301は、否定的な意思を示すボタン2203が操作されたことを検知すると、作成したLUTidをデータサーバDに送信しない判定し、本処理を終了する。このように、CPU301や操作部313の入力部は、変換設定情報をサーバ装置に送信すべきか否かを操作者が選択した選択情報を受け付ける受付手段として機能する。
【0112】
S2102で、CPU301は、操作者が認証に成功したかどうかを判定する。たとえば、CPU301は、図22(b)に示すようなメッセージ2204を表示部に表示する。予め画像形成装置の管理者に設定されているパスワードがテキストボックス2205に入力され、ボタン2206が押されると、CPU301は、認証処理を実行する。たとえば、CPU301は、入力されたパスワードと、予めメモリ302に記憶されているパスワードとを比較する。両者が一致すれば、操作者が正規の管理者であると推定して、S1308に進む。このように、CPU301は、画像形成装置の操作者が所定の操作者かどうかを認証する認証手段として機能する。
【0113】
S1308では、上述したように、LUTidがデータサーバDに送信される。よって、CPU301は、変換設定情報をサーバ装置に送信すべきことが選択されると、変換設定情報をサーバ装置に送信する送信手段として機能する。また、CPU301は、画像形成装置の操作者が所定の操作者であることを認証手段が認証すると、変換設定情報をサーバ装置に送信する送信手段としても機能する。一方、認証に失態したときは、LUTidがデータサーバDに送信せずに、本処理を終了する。
【0114】
なお、図21に示したフローチャートでは、作成したLUTidについてはデータサーバDに送信されないことがあるが、作成した画像形成装置には保持されるため(S1005)、その画像形成装置では使用されることになる。
【0115】
また、実施例3の発明を実施例2に適用するときは、S1005とS1808の間に、S2101およびS2102を同様に挿入すればよい。
【0116】
[実施例3にかかる発明の効果]
上述したように、LUTidは、記録媒体上のトナー載り量に制限を与える情報であるため、もし誤ったLUTidを用いてキャリブレーションを行ってしまうと、画像不良が発生する可能性がある。さらには、画像形成装置に対して大きな負荷を与える可能性もある。しかも、それをデータサーバDに登録してしまうと、他の画像形成装置も誤ったLUTidの影響を受けてしまうことになる。
【0117】
そこで、実施例3のように認証処理を用いてデータサーバDへのLUTidの送信を制御することで、このような悪影響を抑えやすくなる。また、LUTidの作成過程において予期しない不具合がはっせいしたときには、操作者の意思でLUTidをデータサーバDに送信しないようにすることができる。よって、実施例3では、LUTidの精度と信頼性を維持しやすくなる。
【0118】
[実施例4(送信された変換用LUTidを平均化処理したLUTid_aveと比較する)]
実施例1〜3では、画像形成装置から受信したLUTidをデータサーバDが平均化処理して他の画像形成装置に提供することを1つの特徴としていた。しかし、受信したすべてのLUTidを無条件に平均化処理してしまうと、LUTidが意図したような情報にならないことも考えられる。たとえば、何らかの異常が発生した画像形成装置が作成したLUTidは本来のLUTidからの乖離が著しく、平均化処理に使用すべきではないだろう。
【0119】
図23において、2301は、正常に動作している画像形成装置によって作成されたLUTidを平均化処理して取得されたLUTid_aveを示している。2302は、正常に動作している画像形成装置によって作成されたLUTidを示している。図23から、正常に動作している画像形成装置によって作成されたLUTidと、LUTid_aveとは凡そ近い特性を有していることがわかる。一方で、2303は、不具合が生じた画像形成装置によって作成されたLUTidを示している。このように、不具合が生じた画像形成装置によって作成されたLUTidは、LUTid_aveに対して、著しい乖離を示すことがある。
【0120】
仮に、このようなULTidも平均化処理に使用してしまえば、LUTid_aveの精度が低下してしまう。そこで、実施例3では、受信したLUTidを平均化処理に使用すべきかどうかを事前に判定し、使用可能なLUTidのみを用いてLUTid_aveを生成する。
【0121】
[実施例4におけるLUTidの平均化処理]
実施例4では、データサーバDが受信したLUTidと、LUTid_aveとの乖離が一定以上であれば、平均処理の対象から除外することにする。なお、ここでは一例として、図23に示すように、LUTidを輝度濃度変換曲線と考え、読み取り輝度値をI(Iは1〜256の値をとる)とし、対応する濃度値をD(I)(D(I)も1〜256の値をとる)とする。また、LUTid_aveの濃度値をD_ave(I)とし、画像形成装置より新規に送信されてきたLUTidの濃度値をD_new(I)とする。
【0122】
新規に送信されたLUTidと、LUTid_aveとの乖離度合は、D_new(I)のD_ave(I)に対する誤差の二乗平均(分散)により表すことができる。乖離度合を表す指数Δとして、次式を採用する。
【0123】
【数1】

【0124】
Δは輝度値1レベルあたりのD_new(i)とD_ave(i)の差分の絶対値を表す。たとえば、Δ=10の場合には新規に送信されたLUTidと、LUTid_aveとが平均的に10レベル乖離していることを示す。
【0125】
実施例4では、Δが所定閾値Th(例:10)より大きい場合には、新規に送信されたLUTidに対して何らかの不具合が起こったものと推定し、平均化処理の対象から除外する。一方、ΔがTh以下であれば、新規に送信されたLUTidを平均化処理の対象とする。
【0126】
[変換用LUTid受信時のフロー]
ここでは、上述したS1616やS2016の具体的な例を図24に示している。S2401で、CPU1501は、LUTid_aveに対する新規に受信したLUTidの乖離度合を示す指数Δを上述した数式にしたがって算出する。S2402で、CPU1501は、受信したLUTidとLUT_aveとに基づいてLUTidを平均化処理の対象とすべきかどうかを判定する。たとえば、CPU1501は、指数Δが所定の閾値Th以下かどうかを判定する。このように、CPU1501は、画像形成装置から受信した変換設定情報と、データベースに登録されており、複数の画像形成装置に対して配信される配信用の変換設定情報との乖離度合を判別する判別手段として機能する。
【0127】
ΔがThより大きい場合は、受信したLUTidは不適切であるため、S2404に進む。S2404で、CPU1501は、受信したLUTidはデータベースから削除し、不具合情報としてメモリ1502に確保されている別の領域に保存する。このように、CPU1501は、乖離度合が所定の閾値を超えていれば、画像形成装置から受信した変換設定情報のデータベースへの登録を拒否する登録手段として機能する。
【0128】
ΔがTh以下の場合は、受信したLUTidは適切であるため、S2403に進む。S2403で、CPU1501は、受信したLUTidを平均化の対象として加えて、LUT_aveを再計算し、データベースに登録する。このように、CPU1501は、乖離度合が所定の閾値以下であれば、画像形成装置から受信した変換設定情報をデータベースへ登録する登録手段として機能する。また、CPU1501は、機種が同一である複数の画像形成装置から受信したそれぞれ異なる変換設定情報を平均化処理することで、配信用の変換設定情報を生成する生成手段として機能する。
【0129】
[実施例4にかかる発明の効果]
実施例4では、データサーバDが受信したLUTidと、LUTid_aveとの乖離が一定以上であれば、平均処理の対象から除外することで、LUTid_aveの精度を維持することが可能となる。なお、LUTidが初めてデータベースに登録されるときや、LUTidの登録数が一桁程度の数のときには、LUTid_ave自体の精度が十分でない可能性がある。そこで、CPU1501が、LUTidの登録数が統計的に十分な数(所定数)になった以降から、実施例4を適用して、不適切なLUTidを除外するようにしてもよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の種類の記録媒体を用いて画像の品質を維持するためのキャリブレーションを実行する画像形成装置であって、
前記特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体を用いて前記キャリブレーションを実行する際に必要となる輝度値を濃度値に変換する変換設定情報を、サーバ装置に対して要求する要求手段と、
前記サーバ装置から前記変換設定情報を受信する受信手段と、
前記サーバ装置から受信した前記変換設定情報を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されている前記変換設定情報と前記特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体とを使用してキャリブレーションを実行するキャリブレーション実行手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記サーバ装置から前記変換設定情報を受信できなかったときに、前記変換設定情報を作成して、前記記憶手段に記憶させる作成手段をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体の銘柄を示す銘柄情報を取得する銘柄情報取得手段をさらに備え、
前記要求手段は、前記銘柄情報に対応した前記変換設定情報を前記サーバ装置に対して要求することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記銘柄情報取得手段は、記録媒体の銘柄を示すバーコード化された銘柄情報を読み取るバーコードリーダであることを特徴とする請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記特定の種類の記録媒体とは異なる種類の記録媒体の物理特性を示す物理特性情報を取得する物理特性取得手段をさらに備え、
前記要求手段は、前記物理特性情報に対応した前記変換設定情報を前記サーバ装置に対して要求することを特徴とする請求項1または2に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記物理特性は、記録媒体の表面性と坪量とのうち少なくともひとつであることを特徴とする請求項5に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記画像形成装置の機種を示す機種情報を取得する機種情報取得手段をさらに備え、
前記要求手段は、前記機種情報にも対応した前記変換設定情報を前記サーバ装置に対して要求することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記作成手段が作成した前記変換設定情報を前記サーバ装置に送信することで、前記サーバ装置に前記変換設定情報を登録させる送信手段
をさらに備えることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記作成手段が作成した前記変換設定情報を前記サーバ装置に送信すべきか否かを操作者に問い合わせるためのメッセージを出力する出力手段と、
前記変換設定情報を前記サーバ装置に送信すべきか否かを前記操作者が選択した選択情報を受け付ける受付手段と
を備え、
前記送信手段は、前記変換設定情報を前記サーバ装置に送信すべきことが選択されると、前記変換設定情報を前記サーバ装置に送信する
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記画像形成装置の操作者が所定の操作者かどうかを認証する認証手段をさらに備え、
前記送信手段は、前記画像形成装置の操作者が所定の操作者であることを前記認証手段が認証すると、前記変換設定情報を前記サーバ装置に送信する
ことを特徴とする請求項8に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記サーバ装置から送信される前記変換設定情報は、複数の画像形成装置から送信されたそれぞれ異なる変換設定情報を平均化した情報であることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載された画像形成装置と連携して動作するサーバ装置であって、
記録媒体の銘柄を示す銘柄情報または記録媒体の物理特性を示す物理特性情報と対応付けて、前記変換設定情報を登録したデータベースと、
前記画像形成装置から前記要求を受信すると、前記データベースを検索する検索手段と、
前記検索手段が発見した前記変換設定情報を前記画像形成装置へ配信する配信手段と
を備えることを特徴とするサーバ装置。
【請求項13】
前記データベースは、前記銘柄情報または前記物理特性情報と、前記画像形成装置を示す機種情報との組み合わせに対応付けて、前記変換設定情報を保持しており、
前記検索手段は、前記要求とともに送信されてきた、前記銘柄情報または前記物理特性情報と、前記画像形成装置を示す前記機種情報との組み合わせに対応する前記変換設定情報を検索して抽出する
ことを特徴とする請求項12に記載のサーバ装置。
【請求項14】
前記画像形成装置から受信した前記変換設定情報と、前記データベースに登録されており、複数の画像形成装置に対して配信される配信用の変換設定情報との乖離度合を判別する判別手段と、
前記乖離度合が所定の閾値を超えていれば、前記画像形成装置から受信した前記変換設定情報の前記データベースへの登録を拒否し、前記乖離度合が所定の閾値以下であれば、前記画像形成装置から受信した前記変換設定情報を前記データベースへ登録する登録手段と
をさらに備えることを特徴とする請求項13に記載のサーバ装置。
【請求項15】
機種が同一である複数の画像形成装置から受信したそれぞれ異なる変換設定情報を平均化処理することで、前記配信用の変換設定情報を生成する生成手段をさらに備えることを特徴とする請求項14に記載のサーバ装置。
【請求項16】
請求項1ないし11のいずれか1項に記載された画像形成装置と、
請求項12ないし15のいずれか1項に記載されたサーバ装置と
を備えることを特徴とする画像形成システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2012−123269(P2012−123269A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274918(P2010−274918)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】