説明

画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム及び記録媒体

【課題】階調パターン数や階調の数を低減したとき階調特性の推定精度劣化を小さく抑えるための画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム、及び記録媒体を提供する。
【解決手段】像担持体上に形成された階調パターンのパッチの濃度の測定値に基づき階調特性を推定し、推定された階調特性と目的の階調特性から階調補正データを生成する画像形成装置で、該階調パターンの階調特性を推定する第一階調推定手段と、目的の階調パターンの階調特性を推定する第一階調パターン間推定手段と、同面積率の目的の階調パターンの濃度を推定する第二階調パターン間推定手段と、目的の階調パターンの推定濃度から、該階調パターンの階調特性を推定する第二階調推定手段と、第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値を加重加算し、該目的の階調パターンの階調特性の推定値とする加重加算手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム、及び記録媒体に係り、特に高精度な階調補正を実現するための画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム、及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、レーザプリンタ等に代表されるように、最小印刷単位の画素(ドット)がON/OFFの2つの状態に量子化された画像形成装置において、中間濃度を表現する際に、単位面積あたりのON画素の面積率の変化により中間的な濃度表現を行う階調処理と呼ばれる画像処理が利用されている。
【0003】
上述の階調処理には、例えば複数の画素を組にすることで、入力階調に応じて面積の変化する網点を模擬する網点階調処理や、特定方向にスクリーン線を生成する万線階調処理、ONドットの面積率を均一に増加させる誤差拡散処理等がある。さらに網点階調処理における網点の単位面積当たりの個数、万線階調処理における単位面積当たりの線数、誤差拡散処理におけるディザマトリクスの係数など、パラメータの違いにより多様な階調パターンが存在する。階調パターンによって解像性・階調性が異なるので、文字・線画・写真といった異なる画像種に対して、一つの画像形成装置で複数の階調パターンを切り分けて使用される。
【0004】
ところで、階調パターンの基本となる1画素の面積は、ベタ画像が全面積を覆うようにするため、厳密には1画素分よりも大きく設計される。この画素(ドット)の太り分はドットゲインと呼ばれる。ドットゲインは、画像形成装置の新旧の状態や温湿度の環境条件により微妙に変化するため、入力値に対する濃度階調特性が敏感に変化し、階調パターンの違いによりその特性の変化も異なる。したがって、常に一定の画像再現を得るためには、階調パターンごとにキャリブレーションを行うことが必要となる。このキャリブレーションは、複写機やプリンタなどの電子写真方式の画像形成装置において、感光体上に階調パターン・面積率の異なる複数の補正用パッチを生成し、それを中間転写ベルト等に転写するとともに、その補正用パッチの濃度を濃度センサで測定し、所定の目標値と比較することにより階調補正テーブルを修正することで行われる。
【0005】
すべての階調パターンにおけるすべての面積率の補正用パッチを生成・測定することは、キャリブレーションに要する時間やトナー消費量の増大の観点から望ましくない。そこで、より少数の階調パターン・面積率の補正用パッチを生成・測定し、その測定値を補間することで階調パターンごとの階調特性(ON画素の面積率に対するトナー濃度値の特性)を推定することが行われる。
【0006】
たとえば、測定する面積率の数の低減に関しては、次の従来技術がある。
特許文献1では、測定した濃度値に対してスプライン補間を施し、全体の階調特性を推定する。また、特許文献2では、特定の面積率からの事前に生成した対応関係(数式、モデル)を用いて他の階調を推定し、その推定値間を線形補間や二次曲線補間で補間し、全体の階調特性を推定する。また、階調パターン数の低減については次のような従来技術が存在する。
特許文献3では、階調幅の広いパターン(2×2網点)の階調特性を補正して、階調幅の狭いパターン網点(1×1網点)の階調特性を推定することにより、処理工数を低減する手法が開示されている。
また、特許文献4では、階調特性をパラメータ付きのモデル(関数)で表現し、測定した階調パターンで得たパラメータから、他の測定していない階調パターンのパラメータを推定することで、測定に要する階調パターン数を低減している。
さらに、特許文献5では、異なる階調パターンの同一面積率のパッチ間の回帰モデルを用いて、一つの階調パターンの測定値から他の階調パターンの濃度を推定し、測定に要する階調パターン数を低減している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したような従来の技術において、特許文献1〜5に示される手法は、処理時間の低減やトナー消費量の低減を行うために、中間転写ベルト上に生成する補正用パッチの数を減らすと、階調特性の推定精度が低下するという問題がある。特に階調パターン数と階調数の低減を同時に行うと、階調特性の推定精度劣化が大きいという問題がある。
【0008】
これを鑑みて本発明では、測定する階調パターン数や階調の数を低減したときでも、階調特性の推定精度劣化を小さく抑えるための画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム、及び記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、請求項1に記載の通り、像担持体上に形成された階調パターンのパッチの濃度の測定値に基づき階調特性を推定し、推定された階調特性と目的の階調特性から階調補正データを生成する画像形成装置であって、測定した階調パターンのパッチの濃度から該階調パターンの階調特性を推定する第一階調推定手段と、第一階調推定手段で推定された階調パターンの階調特性から前記目的の階調パターンの階調特性を推定する第一階調パターン間推定手段と、該測定した階調パターンのパッチの濃度から、同面積率の前記目的の階調パターンの濃度を推定する第二階調パターン間推定手段と、第二階調パターン間推定手段で推定された前記目的の階調パターンの推定濃度から、該階調パターンの階調特性を推定する第二階調推定手段と、第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値を加重加算し、前記目的の階調パターンの階調特性の推定値とする加重加算手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、請求項2に記載の通り、請求項1に記載の画像形成装置において、前記加重加算手段が、第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値の平均を取ることを特徴とする。
また、本発明は、請求項3に記載の通り、請求項1に記載の画像形成装置において、推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出手段をさらに備え、前記加重加算手段が第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値のうち、前記適合度が高い方の重みを1、他方を0として加重加算を行うことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、請求項4に記載の通り、請求項1に記載の画像形成装置において、推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出手段をさらに備え、前記加重加算手段が第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値を、前記適合度に比例した重みで加重加算を行うことを特徴とする。
また、本発明は、請求項5に記載の通り、請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置において、前記適合度算出手段において、前記適合度が、階調特性の単調増加性、滑らかさ、過去測定データに基づく出現確率のいずれかまたはその組み合わせによって算出されることを特徴とする。
【0012】
また、本発明は、請求項6に記載の通り、像担持体上に形成された階調パターンのパッチの濃度の測定値に基づき階調特性を推定し、推定された階調特性と目的の階調特性から階調補正データを生成する画像形成方法であって、測定した階調パターンのパッチの濃度から該階調パターンの階調特性を推定する第一階調推定ステップと、第一階調推定ステップで推定された階調パターンの階調特性から前記目的の階調パターンの階調特性を推定する第一階調パターン間推定ステップと、該測定した階調パターンのパッチの濃度から、同面積率の前記目的の階調パターンの濃度を推定する第二階調パターン間推定ステップと、第二階調パターン間推定ステップで推定された前記目的の階調パターンの推定濃度から、該階調パターンの階調特性を推定する第二階調推定ステップと、第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値を加重加算し、前記目的の階調パターンの階調特性の推定値とする加重加算ステップと、を備えることを特徴とする。
【0013】
さらに本発明は、請求項7に記載の通り、請求項6に記載の画像形成方法において、前記加重加算ステップが、第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値の平均を取ることを特徴とする。
さらに本発明は、請求項8に記載の通り、請求項6に記載の画像形成方法において、推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出ステップをさらに備え、前記加重加算ステップが第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値のうち、適合度が高い方の重みを1、他方を0として加重加算を行うことを特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、請求項9に記載の通り、請求項6に記載の画像形成方法において、推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出ステップをさらに備え、前記加重加算ステップが第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値を、前記適合度に比例した重みで加重加算を行うことを特徴とする。
さらに、本発明は、請求項10に記載の通り、請求項8又は請求項9に記載の画像形成方法において、前記適合度算出ステップにおいて、前記適合度が、階調特性の単調増加性、滑らかさ、過去測定データに基づく出現確率のいずれかまたはその組み合わせによって算出されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の画像形成装置においては、階調パターン間推定と階調推定の順番の異なる2つの推定結果を組み合わせることで、階調特性及びその推定方法の違いによる推定精度のバラツキを低減し、階調特性の推定精度を高めることができる。したがって高精度な画像を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る画像形成装置の装置構成例を示す図である。
【図2】本発明に係る画像形成装置の機能構成例を示す図である。
【図3】本発明に係る画像処理手順の一例を示す図である。
【図4】本発明に係る感光体上に形成されるパッチ画像の一例を示す図である。
【図5】本発明における画像形成処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。
【図6】本発明に係る階調補正データ生成手段の構成1を示す図である。
【図7】本発明に係る階調補正データ生成処理例1を示す図である。
【図8】本発明に係る階調特性推定の例1を示す図である。
【図9】本発明に係る階調特性推定の例2を示す図である。
【図10】本発明に係る階調補正データ生成手段の構成2を示す図である。
【図11】本発明に係る階調補正データ生成処理例2を示す図である。
【図12】本発明に係る階調補正データ生成手段の構成3を示す図である。
【図13】本発明に係る階調補正データ生成処理例3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図1〜図13に基いて画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム、および記録媒体ついて説明する。
【0018】
<基本部分>
図1は、本実施形態の画像形成装置の装置構成例の一構成例を示す図である。なお、以下に示す画像形成装置の一例として、例えば600dpiカラーレーザプリンタの構成概要を示すものとするが、本発明としての画像形成装置はこれに限定されるものではない。図1に示す画像形成装置としてのプリンタエンジン10は、感光体(感光部材)11と、中間転写体12と、現像器13と、帯電器14と、露光器15と、反射輝度センサ16、コントローラ17と、転写ローラ18と、カセット部19と、定着器20と、操作パネル(操作手段)21とを有するよう構成されている。
【0019】
図1に示す感光体11は、例えばベルト形状からなり、図1に示す矢印A方向に所定のタイミングと速度で回転している。
中間転写体12は、感光体11上に順次1色ずつ形成した異なる4色のトナー画像を、1回転毎に1色ずつ転写する。つまり、中間転写体12は、一例として4回転で1枚のカラー画像を形成する中間転写体方式を採用している。
【0020】
なお、図1において、ベルト形状の感光体11は、プリンタエンジン10の中央部に配置され、その一方の面に感光体11と接触させて中間転写体12が配置されている。
【0021】
感光体11の周囲には回転方向に沿って、感光体11上にトナー画像を形成するプロセス部品である、現像器13、帯電器14、露光器15、及び感光体11上のトナー付着量を検出する反射輝度センサ16が配置されている。プリンタエンジン10の筐体側面には、破線で示したプリンタエンジン10の各機能構成全体を制御する制御手段としてのコントローラ17の基盤が設置されている。
【0022】
現像器13は、縦に長く張った感光体11における中間転写体12と反対側に、それぞれ異なる色のトナーを格納する4つの現像器(ブラック現像器13K、イエロー現像器13Y、マゼンタ現像器13M、シアン現像器13C)が縦に積層して配置されている。現像器13は、ブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色成分に対応したトナー等の像可視化剤を感光体11に付着させる。
帯電器14は、感光体11の表面を均一に帯電させる。
露光器15は、帯電した感光体11の表面にレーザ光を照射することで像露光し、静電潜像を形成する。
【0023】
つまり、各色に対応した像可視化剤を付着した感光体11は、所定のタイミングと速度で回転する中間転写体12上の所定の位置に各色の転写を行う。 これにより、中間転写体12上に可視像(カラー画像)が形成される。
反射輝度センサ16は、感光体11の所定領域に対して輝度検出用の光を発光し、その反射光を検出(受光)する。なお、反射輝度センサ16による輝度検出信号は、このコントローラ17に予め蓄積(搭載)されている換算テーブル等により画像出力の濃度値に換算される。この意味では、反射輝度センサ16は、濃度検出手段としての機能を有している。このように、反射輝度センサ16により感光体11における像可視化剤の付着量を検出することで、画像形成の精度を把握することができる。
【0024】
中間転写体12の周囲にはトナー画像形成、用紙等の印刷媒体(記録媒体)の搬送を行うプロセス部品である転写ローラ18が配置されている。具体的には、用紙を搬送する搬送経路は、本体下部に配置している用紙カセット等のカセット部19から中間転写体12の外側を通って本体上面に排出する構成としており、その搬送経路に沿って、用紙等の印刷媒体を中間転写体12に圧接させて中間転写体12上に形成された可視像(カラー画像)を用紙に転写させると共に、所定方向に用紙を搬送させる転写ローラ18、印刷媒体の通過時に熱を供給しながら通過させることで中間転写体12から印刷媒体に転写された可視像(トナー像)を定着させるための定着器20が配置されている。なお、この他の構成としては、例えば印刷媒体を除電する用紙除電器(図示せず)等を所定位置に設けてもよい。
【0025】
筐体外部に面して、階調パターン選択手段を有するユーザインタフェースとしての操作パネル(操作手段)21が設けられている。この操作パネル21を通して、ユーザによる手動のキャリブレーション命令等がコントローラ17に送られる。
【0026】
<画像形成装置:機能構成例>
次に、画像形成装置(プリンタエンジン)10における機能構成例について図を用いて説明する。図2は、本発明における画像形成装置のプリンタエンジンとしての機能構成の一例を示す図である。図2に示す画像形成装置10は、入力手段31と、出力手段32と、蓄積手段33と、画像展開手段34と、色補正手段35と、基準画像生成手段36と、基準画像保持手段37と、4色分解保持手段38と、階調パターン選択手段39と、色選択手段40と、階調補正データ生成手段41と、階調補正手段42と、階調処理手段43と、濃度検出手段44と、画像形成手段45と、送受信手段46と、制御手段47とを有するように構成されている。
【0027】
入力手段31は、ユーザからの画像形成処理の実行指示や、蓄積手段33から所定のデータを読み出したり、書き込むための指示等、各指示等の入力等を受け付ける。なお、入力手段31は、例えばタッチパネル等の入力インタフェース等からなり、また、キーボードやマウス等のポインティングデバイス、マイク等の音声入力インタフェース等であってもよい。
【0028】
また、出力手段32は、入力手段31により入力された指示内容や、指示内容に基づいて生成された階調補正の色を選択させたり、補正結果を表示したり、画像形成処理結果や形成された画像等のデータ、処理の開始及び終了等をユーザに通知するメッセージ等を表示及び/又は音声等にて出力する。なお、出力手段32は、モニタやスピーカ等からなる。
【0029】
蓄積手段33は、後述する階調補正データテーブルTAや閾値配列テーブルTB(閾値配列DB)、履歴データDC、換算テーブルTD、基準画像(階調値データ(パッチデータ)DE)、各種パラメータ、画像濃度検出結果(例えば、パッチ画像の輝度情報)、画像展開により色補正されたRGB画像データ等の各処理を実行するために必要な各種データ及び処理の実行後に生成される各種データを蓄積する。
【0030】
画像展開手段34は、入力する画像を例えば1ページ分の点順次のRGB画像データに展開する。色補正手段35は、展開されたRGB画像データを入力描画命令に含まれる色情報の印字装置の特性に合わせた色情報への変換処理を行う。なお、この色補正手段により色補正されたRGB画像データは、蓄積手段33に蓄積される。
【0031】
基準画像生成手段36は、複数階調からなる階調パッチからなる階調値データ(パッチデータ)DEを基準画像データとして生成する。基準画像保持手段37は、複数階調からなる階調パッチで構成される基準画像を保持する。なお、この基準画像は、蓄積手段33に蓄積させてもよい。
【0032】
4色分解保持手段38は、蓄積手段33に蓄積されたRGB画像データからブラック(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の4色に分解する。ここで、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)(3色)をK、C、M、Y(4色)に分解する手法は、マシンの能力や作画意図等によって設定を変更することができるが、例えば4色分解保持手段38は、K、C、M、Yに対応して予めK[i]、C[i]、M[i]、Y[i](i=0,・・・,255)からなるルックアップテーブルを用意しておき、K=K[max{R,G,B}]、C=C[R]、M=M[G]、Y=Y[B]として対応付けることで4色に分解することができる。また、K=K[k]、C=C[c]、M=M[m]、Y=Y[y]、(ただし、k=min{R,G,B}、c=255−R、m=255−G、y=255−B)とすることもできる。
【0033】
階調パターン選択手段39は、複数の異なる階調パターン(網点、万線、誤差拡散)から特定の階調パターンを選択する。階調パターン選択手段39は、ユーザに階調パターンを選択させるためのユーザインタフェースを提供する。
【0034】
色選択手段40は、階調パターン選択信号及び色選択信号、及び4色分解保持手段38により分解された信号のうち、どの色について階調補正を行うかが予め設定される。また、色選択手段40は、選択されたK,C,M,Yのうち、どの信号に出力色として選択させるか等の処理を行う。
【0035】
階調補正データ生成手段41は、階調補正を行うためのルックアップテーブル(LUT)を生成する。具体的には、階調補正データ生成手段41は、送られてきたパッチ画像のパッチのそれぞれに対応する反射輝度信号に基づいて、後述する手法によって、K、C、M、Yごとに階調パターンのそれぞれに対応した階調補正データDFを生成する。また、階調補正データ生成手段41は、生成した階調補正データDFを階調補正データテーブルTAとして蓄積手段33に蓄積する。なお、生成した階調補正データテーブルTAは、256個の8bitのエントリを有するルックアップテーブル(LUT)として実装されている。
【0036】
階調補正手段42は、階調補正データテーブルTAに従って、0〜255の1画素8bitの画像信号を同じく8bitの出力階調値に補正する。ここで、階調補正データDFは、256個の8bitのエントリを有するルックアップテーブル(LUT)として実装される。
【0037】
階調処理手段43は、予め設定されて蓄積手段33に蓄積された閾値配列DBを用いて階調補正手段42から出力される1画素の8bit階調値を、ON/OFFのドットによる中間調のパターンに置き換える。当処理は、例えば特許文献4(特開2008−244644号公報)に示されている手法等を用いることができる。
【0038】
濃度検出手段44は、感光体11等に付着されたパッチ画像の輝度を検出し、検出した輝度の情報を検出する。また、検出した結果は、蓄積手段33により蓄積される。なお、濃度検出手段44は、例えば反射する輝度を検出するセンサ(反射輝度センサ16)等により構成される。
【0039】
画像形成手段45は、指示入力された画像や文字データをK、C、M、Yの各面(各色)毎に現像を行い、最終的に用紙等の印刷媒体に印刷する。
送受信手段46は、通信ネットワークを介して他の外部装置等からデータを取得したり、画像形成結果等の生成した各種データを外部端末に送信するための通信インタフェースである。
【0040】
制御手段47は、画像形成装置10における各機能構成全体の制御を行う。具体的には、制御手段47は、入力手段31により入力されたユーザからの入力情報等に基づいて、画像展開や色補正、基準画像生成、4色分解、階調パターン選択、出力色選択、階調補正データDFの生成、階調処理、濃度検出、画像形成等の各処理における画面を生成して表示したり、上述したそれぞれの処理で生成された情報を蓄積する等の制御を行う。
【0041】
<画像処理手順>
次に、上述した機能構成における本発明の画像形成装置10における画像形成処理手順について図を用いて説明する。図3は、本実施形態における画像形成処理手順の一例を示す図である。また、図3における一点鎖線は、信号の流れではなく処理の反復を示している。
【0042】
<通常印刷時における画像処理手順>
最初に、通常印刷時における画像処理の流れについて説明する。まず印刷対象となる画像データを入力し(S01)、上述した画像展開手段34により画像の展開処理と(S02)、色補正手段35による色補正処理を行い、入力画像の1ページ分の点順次のRGB画像データを取得する(S03)。また、取得した結果は、蓄積手段33としての画像バッファに蓄えられる(S04)。
【0043】
蓄積手段33としての画像バッファに蓄えられたRGB画像データは、4色分解保持手段38により、K,C,M,Yの4色の信号に分解される(S05)。
また、色選択手段40により既に設定された色選択信号に従って、それぞれK,C,M,Yの4色の出力値を4色分解保持手段38の出力から選択する(S06)。
【0044】
階調補正手段42は、階調補正データDFに従って、0〜255の1画素8bitの画像信号を同じく8bitの出力階調値に補正する(S07)。
階調処理は、例えば特許文献4(特開2008−244644号公報)に示されている手法等を用いることができる。閾値配列N(上記特許文献4に記載の手法により生成することができる。)を用いて階調補正手段42から出力される1画素の8bit階調値を、ON/OFFのドットによる中間調のパターンに置き換える(S08)。
【0045】
図1の画像形成装置のプリンタエンジン10に示されるコントローラ17は、図3の画像バッファ蓄積(S04)以降の処理を、自動的に切り替わる色選択信号に従って、K,C,M,Yの4面分(4回)繰り返すことで、プリンタエンジン10に対するK、C、M、Yの4色分の現像プロセスに必要な、各色面毎のデータを生成する。
【0046】
プリンタエンジン10は、これらの色の重ね合わせによるフルカラー画像を形成し(S09)、紙面上に形成し、画像として出力する(S10)。
【0047】
次に、キャリブレーション時の動作について、主に図3の破線で示す流れに従って説明する。
キャリブレーション動作は、プリンタの起動時や出力枚数が所定値に達した場合、或いは操作パネル21(図1)からのユーザ指示により起動される。
キャリブレーション動作時には、図3のS04に示すような蓄積手段33における画像バッファに対して、基準画像生成手段36により生成され基準画像保持手段37等に蓄積された階調値データ(パッチデータ)DEに基づいて生成したパッチ画像を直接書き込む。
一方で、4色分解保持手段38は、内部処理をRGB信号(r,g,b)に対して、(k,c,m,y)=(min{c,m,y},255−r,255−g,255−b)のKCMY信号に対応付ける処理に切り替える。また、階調補正手段42の処理は実行することなくスルーされる。これにより、例えばパッチデータPとして、g,bをg=b=255に固定して、rを振ったデータを用意することで、c=255−rの信号値に対応するシアン単色のパッチ画像が、プリンタエンジン10に送出される。なお、上述の処理は、マゼンタ、イエローに対しても同様に行うことができるが、ブラックについてはr=g=b=255−kのデータを用意することで、kの信号値に対応するパッチ画像がプリンタエンジン10に送出される。
また、キャリブレーション動作モードでは、プリンタエンジン10は、用紙のピックアップを行わないことと、用紙等の印刷媒体への転写以降のプロセスを実行しないことを除き、上述した通常印刷と同様のプロセスが実行される。
【0048】
<感光体上に形成されるパッチ画像例>
図4は、感光体上に形成されるパッチ画像の一例を示す図である。上述の処理により、図4に示すように、プリンタエンジン10の感光体11上の所定の位置(例えば、中間転写体12と接触しない位置等)にパッチ画像57を形成することができる。また、プリンタエンジン10に搭載された反射輝度センサ16は、このパッチ画像57の反射輝度信号を検出し、階調補正データ生成手段41に送信する。これにより、用紙等の印刷媒体への画像出力を行うことなく、パッチ画像の反射輝度信号を検出することができる。
【0049】
また、階調補正データ生成手段41は、送られてきたパッチ画像57のパッチそれぞれに対応する濃度値(反射輝度信号から換算)に基づいて、階調パターン数のそれぞれに対応した階調補正データDFを生成し、階調補正データテーブルTAに登録する。具体的にはパッチ画像のON画素の面積率に対する濃度値を用いて、任意の面積率xに対する濃度値f(x)を生成する。この濃度値f(x)の生成方法は後述する。8bitの画像信号値をs、8bitの画像信号値から面積率への変換のルックアップテーブルをt(s)、目標の階調特性をr(s)とすると、f(t(s))=r(s)を満たすようにt(s)を決める。すなわち、t(s)=f-1(r(s))としてt(s)を生成する。これを階調補正データテーブルTAに登録する。
本実施形態では、階調補正データDFの生成をコントローラ17上に搭載された制御手段47としてのCPU及び蓄積手段33としての周辺メモリと、それに対して予め組み込まれたプログラムによって実現されている。 また、階調補正データテーブルTA及び履歴データDCは、蓄積手段33内の周辺メモリの特定のアドレス空間として実現されている。 また、基準画像生成処理についても同様にCPU等に対するプログラムによって実現されている。
【0050】
<画像形成処理が実行可能なコンピュータのハードウェア構成例>
本発明における画像形成処理が実行可能なコンピュータのハードウェア構成例について図5を用いて説明する。図5は、本発明における画像形成処理が実現可能なハードウェア構成の一例を示す図である。図5におけるコンピュータ本体には、入力装置91と、出力装置92と、ドライブ装置93と、補助記憶装置94と、メモリ装置95と、各種制御を行うCPU(Central Processing Unit)96と、ネットワーク接続装置97とを有するよう構成されており、これらはシステムバスBUSで相互に接続されている。
【0051】
入力装置91は、ユーザ等が操作するキーボード及びマウス等のポインティングデバイスや音声入力デバイス等を有しており、ユーザ等からのプログラムの実行指示等、各種操作信号、音声信号を入力する。
出力装置92は、本発明における処理を行うためのコンピュータ本体を操作するのに必要な各種ウィンドウやデータ等を表示するディスプレイやスピーカ等を有し、CPU96が有する制御プログラムにより実行経過や結果等を表示又は音声出力することができる。
【0052】
ここで、本発明において、コンピュータ本体にインストールされる実行プログラムは、例えばCD−ROMやDVD等の記録媒体98等により提供される。プログラムを記録した記録媒体98は、ドライブ装置93にセット可能であり、記録媒体98に含まれる実行プログラムが、記録媒体98からドライブ装置93を介して補助記憶装置94にインストールされる。 また、ドライブ装置93は、本発明に係る実行プログラムを記録媒体98に記録することができる。これにより、その記録媒体98を用いて、他の複数のコンピュータに容易にインストールすることができ、容易に画像形成処理を実現することができる。
【0053】
補助記憶装置94は、ハードディスク等のストレージ手段であり、本発明における実行プログラムや、コンピュータに設けられた制御プログラム等を蓄積し必要に応じて入出力を行うことができる。また、補助記憶装置94は、上述した本発明に係る各種データ等を蓄積する蓄積手段として用いることもできる。
メモリ装置95は、CPU96により補助記憶装置94から読み出された実行プログラム等を格納する。なお、メモリ装置95は、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等からなる。
CPU96は、OS(Operating System)等の制御プログラム、及び補助記憶装置94から読み出されメモリ装置95に格納されている実行プログラム等に基づいて、各種演算や各ハードウェア構成部とのデータの入出力等、コンピュータ全体の処理を制御して、画像形成における各処理を実現することができる。また、プログラムの実行中に必要な各種情報等は、補助記憶装置94から取得することができ、また格納することもできる。
【0054】
ネットワーク接続装置97は、電話回線やLAN(Local Area Network)ケーブル等の通信ネットワーク等と接続することにより、実行プログラムを通信ネットワークに接続されている他の端末等から取得したり、プログラムを実行することで得られた実行結果又は本発明における実行プログラムを他の端末等に提供することができる。
上述したようなハードウェア構成により、特別な装置構成を必要とせず、低コストで画像形成処理を実現することができる。また、プログラムをインストールすることにより、ソフトウェアとして容易に画像形成処理を実現することができる。これにより、画像形成プログラムと、各種データをメモリ装置95にロードし、CPU96により、そのデータを用いてプログラムを実行させ、本実施形態に係る画像形成処理を行う。したがって、高精度な階調補正を実現することができる。また、高精度な画像を形成することができる。また、プログラムをインストールすることにより、汎用のパーソナルコンピュータ等で本発明における画像形成を容易に実現することができる。
【0055】
<階調補正データ生成手段による階調補正データ生成方法>
以下、階調補正データ生成手段41の具体例を説明する。面積率xに対する濃度値f(x)を「階調特性」と呼ぶことにする。また、ある階調パターンの特定の面積率のパッチの濃度値から他の階調パターンの同一面積率のパッチの濃度値を推定することを「階調パターン間推定」、ある階調パターンにおける有限個の面積率と濃度値の組から、その階調パターンの全体の階調特性を推定することを「階調推定」と呼ぶことにする。
【0056】
<階調推定結果の平均化>
本実施例では、測定した中間転写ベルト上のパッチの濃度を用いて、階調パターン間推定を行ってから階調推定したものと、階調推定してから階調パターン間推定を行ったものを平均化することにより、少ない測定パッチから階調特性を高精度で推定する例を示す。
本実施例における機能ブロック図を図6に示す。階調補正データ生成手段41は測定部101、階調パターン間推定部102、階調推定部103、階調推定部104、階調パターン間推定部105、平均化部106、階調テーブル修正部107から構成される。
本実施例における処理フローを図7に示す。また、この処理の具体例を図8に示す。
【0057】
処理ステップS101では、測定部101が中間転写ベルト上に特定の階調パターンの異なる階調の複数パッチを作成し、反射輝度センサ16(図1)を通じて各パッチの濃度を測定する。具体例では、網点の面積率0.25、0.50、0.75、1.00(それぞれ25%、50%、75%、100%を示す。以下同様)の4パッチを生成し、その濃度を測定する。
処理ステップS102では、階調パターン間推定部102が、反射輝度センサ16を通じて、前記測定したパッチの濃度から、異なる階調パターンの同面積率のパッチの濃度を推定する。具体例では、網点の面積率0.25、0.50、0.75、1.00の4パッチの濃度から、万線の面積率0.25、0.50、0.75、1.00の4パッチの濃度を推定する。ここでは、面積率をx、面積率xの網点のパッチの濃度をf(x)、面積率xの万線のパッチの濃度をg(x)、補正項をh(x)として、次式で推定するものとする。
【0058】
【数1】

【0059】
推定式は事前に同面積率の網点と万線のパッチのペアを測定し、回帰分析等を用いて同定することができる。
処理ステップS103では、階調推定部103が、前記推定した階調パターンにおける濃度を補間し、階調全体に渡る濃度の推定値を得る。具体例では、網点の4パッチから推定された万線の面積率0.25、0.50、0.75、1.00の4パッチの濃度を補間し、任意の面積率の濃度の推定値を得る。この補間には線形補間、スプライン補間、線形回帰などの種々の方法を取ることができる。
処理ステップS104では、階調推定部104が、処理ステップS101で測定したパッチの濃度を補間し、階調全体に渡る濃度の推定値を得る。具体例では、網点の面積率0.25、0.50、0.75、1.00の4パッチの濃度を補間し、任意の面積率の濃度の推定値を得る。この補間には線形補間、スプライン補間、線形回帰などの種々の方法を取ることができる。
処理ステップS105では、階調パターン間推定部105が、前記推定した階調全体に渡る濃度の推定値から、異なる階調パターンの対応する面積率の濃度を推定する。具体例では、式(1)を用いて、面積率xの網点の濃度f(x)から面積率xの万線の濃度g(x)を推定する。
処理ステップS106では、平均化部106が、処理ステップS103とS105で推定された二つの階調特性に対して、同面積率の濃度を平均化し、新しく階調特性を得る。
処理ステップS107では、階調補正テーブル修正部107が新しく得られた前記階調特性を用いて、階調補正データテーブルTAを修正する。修正された階調補正データテーブルTAは階調補正手段42に渡される。
【0060】
本発明の効果を、図9の面積率1.00の網点のパッチの濃度測定値から万線の階調特性を推定する例を通じて説明する。階調推定には線形補間を用い、階調パターン間推定には式(1)を用いて、
【0061】
【数2】

【0062】
とする。図9を見て分かる通り、階調パターン間推定と階調推定の順番が異なると得られる階調特性は変わる。仮に階調パターン間推定の誤差が十分に小さいとすると、網点の真の階調特性が直線的である場合は階調推定を先に行った方が、万線の階調特性が直線的である場合は階調パターン間推定を先に行った方が推定誤差が小さくなる。これは線形補間の場合であるが、一般に、階調推定は推定方法に適した階調特性を持った階調パターンで行った方が最終的な推定誤差が小さくなる(スプライン補間であれば、滑らかな階調特性を持つ階調パターンの方で階調推定を行う方が推定誤差が小さい)。したがって、階調推定方法に適した階調特性の階調パターンで階調推定が行われるように、階調パターン間推定、階調推定の順番を決めるのが良い。しかし実際には、温湿度やトナーの帯電状態、現像剤の劣化状態など様々な因子によって階調特性は変わるため、各階調パターンの階調特性を事前に知ることは困難である。そこで本実施例のように、階調パターン間推定と階調推定の順番を入れ替えて二つの階調特性を得て、それらを平均化することで、推定誤差が増大するリスクを低減することができる。
ところで、階調パターン間推定は式(1)に限らず、様々な関数形を取ることができる。また、すべての面積率xに対して推定式が作れない場合(例えば離散的にxが0.05刻みで推定式が存在する場合)は、推定可能な面積率で推定を行ってから、その間を線形補間、スプライン補間などの補間手法により補間しても良い。
【0063】
<階調推定結果の選択>
本実施例では、図10、図11に基いて説明するように、測定した中間転写ベルト上のパッチの濃度を用いて、階調パターン間推定を行ってから階調推定したものと、階調推定してから階調パターン間推定を行ったものの適合度を算出し、より適合度の高い方の推定結果を採用することで、少ない測定パッチから階調特性を高精度で推定する例について示す。
本実施例における機能ブロック図を図10に示す。階調補正データ生成手段41は測定部101、階調パターン間推定部102、階調推定部103、階調推定部104、階調パターン間推定部105、適合度算出部201、選択部202、階調テーブル修正部107から構成される。
【0064】
図11は、本実施例における処理フローを示す。以下では、前述した階調推定結果の平均化の処理フローとの差分である処理ステップS201とS202について説明する。
処理ステップS201では、適合度算出部201が階調パターン間推定と階調推定の順番の異なる2つの階調特性推定結果の適合度を算出する。適合度は、階調特性の単調増加性、滑らかさ、過去測定データに基づく出現確率のいずれかまたはその組み合わせによって算出する。適合度算出対象の階調特性を面積率xに対してg(x)と表記する。
単調増加性による適合度算出では、「階調の濃度は面積率の増加に対して単調増加する」という事前知識を用いて、この特性が守られていない場合の適合度が小さくなるように適合度算出関数を設定する。具体的な構成の1例を挙げる。まず次のようなペナルティ関数φ(x)を考える。
【0065】
【数3】

【0066】
そして、階調特性gの適合度J(g)を次のように算出する。
【0067】
【数4】

【0068】
このように適合度を取ると、階調特性が単調増加であれば1に、減少する区間があればその減少の度合いに応じて1より小さい値となる。ここではg(x)が区間[0 1]で定義されることを想定しているが、g(x)が離散的な場合でも微分を差分に積分を和に置き換えることで対応できる。
滑らかさによる適合度算出では、「階調の濃度は面積率に対して滑らかに変化する」という事前知識を用いて、この特性が守られていない場合の適合度が小さくなるように適合度算出関数を設定する。階調特性gの適合度J(g)の具体的な構成例として、次式が挙げられる。
【0069】
【数5】

【0070】
この定式化では、二階微分の二乗値の階調全体に渡る積分値が小さい時に適合度が高くなる。
また、過去測定データに基づいて確率モデルを作成し、その確率モデルにおける対象階調特性の出現確率を適合度として用いることもできる。たとえば、確率モデルにガウス分布を用いる場合は、階調特性を適当に離散化し、過去測定データの平均階調特性μ、分散共分散行列Σを算出し、次のように適合度J(g)を算出する。
【0071】
【数6】

【0072】
処理ステップS202では、選択部202が階調パターン間推定と階調推定の順番の異なる2つの階調特性推定結果のうち、適合度が高い方を選択し、それを最終的な階調特性の推定結果とする。
本実施例の方法によれば、適合度に応じて階調パターン間推定と階調推定の順番の異なる2つの階調特性推定結果を選択するため、前述の階調推定結果の平均化による方法のように推定誤差の増大を防止するのではなく、積極的に推定誤差の小さい結果を得ることができる。
【0073】
<階調推定結果加重加算>
本実施例では、図12、図13に基いて説明するように、測定した中間転写ベルト上のパッチの濃度を用いて、階調パターン間推定を行ってから階調推定したものと、階調推定してから階調パターン間推定を行ったものの適合度を算出し、適合度の比率に応じて二つの推定結果を加重加算することで、少ない測定パッチから階調特性を高精度で推定する例を示す。
本実施例における機能ブロック図を図12に示す。階調補正データ生成手段41は測定部101、階調パターン間推定部102、階調推定部103、階調推定部104、階調パターン間推定部105、適合度算出部201、加重加算部301、階調テーブル修正部107から構成される。
図13には、本実施例における処理フローを示す。以下では、前述の階調推定結果の選択の方法との差分である処理ステップS301について説明する。
処理ステップS301では、適合度の比率に応じて、階調パターン間推定と階調推定の順番の異なる2つの階調特性推定結果g1, g2を加重加算し、最終的な階調特性の推定結果gとする。前述の階調推定結果の選択の方法で述べた適合度Jを用いると、推定式は次の通りである。
【0074】
【数7】

【0075】
本実施例の方法によれば、適合度に応じて階調パターン間推定と階調推定の順番の異なる2つの階調特性推定結果を加重加算するため、誤差の小さい階調推定結果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
以上説明したように、本発明の画像形成装置、画像形成方法、画像形成プログラム、記録媒体によれば、階調特性及びその推定方法の違いによる推定精度のバラツキを低減し、階調特性の推定精度を高めることができ、高い画像品質を維持することに適している。
【符号の説明】
【0077】
画像形成装置(プリンタエンジン)…10、感光体…11、中間転写体…12、現像器…13、帯電器…14、露光器…15、反射輝度センサ…16、コントローラ…17、転写ローラ…18、カセット部…19、定着器…20、操作パネル(操作手段)…21、入力手段…31、出力手段…32、蓄積手段…33、画像展開手段…34、色補正手段…35、基準画像生成手段…36、基準画像保持手段…37、4色分解保持手段…38、階調パターン選択手段…39、色選択手段…40、階調補正データ生成手段…41、階調補正手段…42、階調処理手段…43、濃度検出手段…44、画像形成手段…45、送受信手段…46、制御手段…47、入力装置…91、出力装置…92、ドライブ装置…93、補助記憶装置…94、メモリ装置…95、CPU…96、ネットワーク接続装置…97、システムバス…BUS、記録媒体…98、測定部…101、階調パターン間推定部…102、階調推定部…103、104、階調パターン間推定部…105、平均化部…106、階調テーブル修正部…107、適合度算出部…201、選択部…202、加重加算部…301
【先行技術文献】
【特許文献】
【0078】
【特許文献1】特開平05−336367号公報
【特許文献2】特許4305113号公報
【特許文献3】特許3738346号公報
【特許文献4】特開2008−244644号公報
【特許文献5】特願2011−139613号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体上に形成された階調パターンのパッチの濃度の測定値に基づき階調特性を推定し、推定された階調特性と目的の階調特性から階調補正データを生成する画像形成装置であって、測定した階調パターンのパッチの濃度から該階調パターンの階調特性を推定する第一階調推定手段と、第一階調推定手段で推定された階調パターンの階調特性から前記目的の階調パターンの階調特性を推定する第一階調パターン間推定手段と、
該測定した階調パターンのパッチの濃度から、同面積率の前記目的の階調パターンの濃度を推定する第二階調パターン間推定手段と、
第二階調パターン間推定手段で推定された前記目的の階調パターンの推定濃度から、該階調パターンの階調特性を推定する第二階調推定手段と、
第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値を加重加算し、前記目的の階調パターンの階調特性の推定値とする加重加算手段と、を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記加重加算手段が、第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値の平均を取ることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出手段をさらに備え、前記加重加算手段が第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値のうち、前記適合度が高い方の重みを1、他方を0として加重加算を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出手段をさらに備え、前記加重加算手段が第一階調パターン間推定手段で算出された階調特性の推定値と第二階調推定手段で算出された階調特性の推定値を、前記適合度に比例した重みで加重加算を行うことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記適合度算出手段において、前記適合度が、階調特性の単調増加性、滑らかさ、過去測定データに基づく出現確率のいずれかまたはその組み合わせによって算出されることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の画像形成装置。
【請求項6】
像担持体上に形成された階調パターンのパッチの濃度の測定値に基づき階調特性を推定し、推定された階調特性と目的の階調特性から階調補正データを生成する画像形成方法であって、
測定した階調パターンのパッチの濃度から該階調パターンの階調特性を推定する第一階調推定ステップと、第一階調推定ステップで推定された階調パターンの階調特性から前記目的の階調パターンの階調特性を推定する第一階調パターン間推定ステップと、
該測定した階調パターンのパッチの濃度から、同面積率の前記目的の階調パターンの濃度を推定する第二階調パターン間推定ステップと、
第二階調パターン間推定ステップで推定された前記目的の階調パターンの推定濃度から、該階調パターンの階調特性を推定する第二階調推定ステップと、
第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値を加重加算し、前記目的の階調パターンの階調特性の推定値とする加重加算ステップと、を備えることを特徴とする画像形成方法。
【請求項7】
前記加重加算ステップが、第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値の平均を取ることを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項8】
推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出ステップをさらに備え、前記加重加算ステップが第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値のうち、適合度が高い方の重みを1、他方を0として加重加算を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項9】
推定された階調特性と目的とする階調特性との適合度を算出する適合度算出ステップをさらに備え、前記加重加算ステップが第一階調パターン間推定ステップで算出された階調特性の推定値と第二階調推定ステップで算出された階調特性の推定値を、前記適合度に比例した重みで加重加算を行うことを特徴とする請求項6に記載の画像形成方法。
【請求項10】
前記適合度算出ステップにおいて、前記適合度が、階調特性の単調増加性、滑らかさ、過去測定データに基づく出現確率のいずれかまたはその組み合わせによって算出されることを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の画像形成方法。
【請求項11】
請求項6乃至10のいずれか1つに記載の画像形成方法を実行させるようにコンピュータを動作で実行させることを特徴とする画像形成プログラム。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成プログラムを格納したコンピュータに読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−98802(P2013−98802A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−240597(P2011−240597)
【出願日】平成23年11月1日(2011.11.1)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】