説明

画像形成装置、画像形成方法及び記録媒体

【課題】
複写の指示に応じて、重畳画像の埋め込み状態を視認可能か不可能かに変更できるようにした画像形成装置を提供することにある。
【解決手段】
原稿画像に原稿画像と重畳させて描画する重畳画像を合成し、複写物を出力する画像形成装置において、複写物の重畳画像を視認可能か不可能かに切り替える操作部を有することで、上記画像形成装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原稿画像に原稿画像と重畳させて描画する重畳画像を合成し、複写物を出力する画像形成装置及び画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、複写機能をもつ画像形成装置の精度がアップし、書類等を簡単に複写できるようになっている。そこで、特定の原稿画像に対して不正複写を防止するため、複写防止バターンや透かし文字等を重畳するシステムが実現されている。
【0003】
特許文献1には、警告文字部分と背景部分が特定の共通濃度で異なるディザ処理が施された画像を重畳させることによって、複製偽造防止用紙と同様の効果が得られる技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、原稿の複写物上では視認不可能である一方、複写物の複写時に視認可能にあらわれる潜像パターンを埋め込む地紋埋込み機能を備えた画像形成装置において、地紋埋込み機能として、指示情報をあらわす所定形状をなすパターンを含ませることが、開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−231384号公報
【特許文献2】特開2007−20067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、会議等の配布用等においては、複写物は、原稿画像との差異が明確であるものの、目視では、原稿画像と殆ど同じ出力画像が得られることが望まれるが、特許文献1では、複写を抑止する効果を持たせることができ、複写物での重畳画像の検出も目視で容易化される反面、複写物で重畳画像が視覚的に認知され易く、原稿画像が見づらいものとなってしまい、カラーの複写物の場合は特に見づらいものとなってしまう。
【0007】
また、特許文献2では、原稿画像の複写物上では重畳画像が視認不可能であるものの、この複写物を更に再複写した時には重畳画像が視認可能にあらわれるので、複写物が見やすい利便性を維持したまま、機密情報の漏洩を防止できる。ただ、原稿画像の複写物の段階では視認不可能であるため、再複写は防止できるが、複写そのものを抑止・牽制する効果を生じさせるものではなかった。更に、原稿画像に対して埋め込まれるパターンも、単純なハッチングパターン等に限定されてしまう。
【0008】
また、どちらの場合も、機密性が高い原稿画像を複写する際に、利便性を優先するのか、抑止・牽制する効果を優先するのか、ユーザが任意に選択できるものではなかった。
【0009】
そこで、本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、複写の際に、重畳画像の埋め込み状態を視認可能か不可能かに変更できるようにした画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、原稿画像に原稿画像と重畳させて描画する重畳画像を合成し、複写物を出力する画像形成装置において、複写物の重畳画像を視認可能か不可能かに切り替える操作部を有することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明は、複写物の重畳画像を視認可能とする場合には、原稿画像をL色空間に分解したうちのa色空間に重畳画像を埋め込むことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明は、複写物の重畳画像を視認不可能とする場合には、原稿画像とは異なる空間周波数で重畳画像を埋め込むことを特徴とするものである。
また、本発明は、原稿画像に原稿画像と重畳させて描画する重畳画像を合成し、複写物を出力する画像形成方法において、重畳画像を視認可能にするか否かを選択するステップを有することを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明は、原稿画像に重畳画像を埋め込むプログラムを記録した記録媒体において、前記プログラムは、重畳画像を視認可能か不可能かに切り替える処理を有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、複写の指示に応じて、重畳画像の埋め込み状態を視認可能か不可能かに変更できる画像形成装置が得られる。
【0015】
また、本発明によれば、原稿画像をL色空間に分解したうちのa色空間に重畳画像を埋め込むため、埋め込み後の複写物の原稿画像が見づらくなることなく、複写物の重畳画像を視認できる。また、埋め込まれる重畳画像にも制限がない。
【0016】
また、本発明によれば、原稿画像とは異なる空間周波数で重畳画像を埋め込むため、複写物では重畳画像を視認不可能にでき、秘匿性が確保される。また、埋め込まれる重畳画像を任意に選択できる。
【0017】
また、本発明によれば、複写の指示に応じて、重畳画像の埋め込み状態を視認可能か不可能かに変更できる画像形成方法が得られる。
【0018】
また、本発明によれば、原稿画像に重畳画像を埋め込むプログラムを記録した記録媒体において、前記プログラムは、重畳画像を視認可能か不可能かに切り替える処理を有するため、重畳画像を視認可能か不可能かをコンピュータに容易に実行させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の画像形成装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の重畳画像の埋め込み処理を示すフローチャートである。
【図3】画像形成装置としてのデジタル複合機の操作部の基本画面の例を示す図である。
【図4】複写物の重畳画像を視認可能とする場合の例を説明する図である。(a)原稿画像を示す図である。(b−1)L色空間を示す図である。(b−2)a色空間に埋め込みパターンが埋め込まれた図である。(b−3)b色空間を示す図である。(c)複写物を示す図である。
【図5】複写物の重畳画像を視認不可能とする場合の実施例を説明する図である。(a)原稿画像を示す図である。(b)原稿画像の空間周波数より低い空間周波数の埋め込みパターンの図である。(c)複写物を示す図である。(d)埋め込みパターンを顕在化させた図である。
【図6】複写物の重畳画像を視認不可能とする場合の実施例の空間周波数特性を説明するグラフである。(a)原稿画像の空間周波数特性を示すグラフである。(b)埋め込みパターンの空間周波数特性を示すグラフである。(c)合成画像の空間周波数特性を示すグラフである。(d)抽出された画像の空間周波数特性を示すグラフである。
【図7】複写物の重畳画像を視認不可能とする場合の他の実施例を説明する図である。(a)原稿画像を示す図である。(b)原稿画像の空間周波数より高い空間周波数の埋め込みパターンの図である。(c)複写物を示す図である。(d)埋め込みパターンを顕在化させた図である。
【図8】複写物の重畳画像を視認不可能とする場合の他の実施例を説明するグラフである。(a)原稿画像の空間周波数特性を示すグラフである。(b)埋め込みパターンの空間周波数特性を示すグラフである。(c)合成画像の空間周波数特性を示すグラフである。(d)抽出された画像の空間周波数特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に示すように、本発明の実施形態の画像形成装置100は、カラー画像入力装置200、カラー画像形成装置300、及びカラー画像出力装置400から構成されている。カラー画像入力装置200は、例えば、図示しないスキャナ等の入力デバイスより構成されており、原稿画像からの反射光像をRGB(R:赤、G:緑、B:青)アナログ信号としてCCD(Charge Coupled Device)にて読み取るものである。カラー画像出力装置400は、カラー画像形成装置300にて所定の画像処理を行ない、その結果を出力する装置である。
【0021】
カラー画像形成装置300は、A/D(アナログ/デジタル)変換部10、シェーディング補正部11、原稿種別自動判別部12、入力階調補正部13、色補正部15、黒生成/下色除去部17、空間フィルタ処理部18、出力階調補正部19、階調再現処理部20、及び領域分離処理部14からなっている。
【0022】
A/D変換部10は、カラー画像入力装置200にて読み取ったアナログ信号をデジタル信号に変換するものである。
【0023】
シェーディング補正部11は、カラー画像入力装置200の照明系・結像系・撮像系で生じる各種歪みを取り除くためのシェーディング補正を行うものである。
【0024】
原稿種別自動判別部12は、シェーディング補正部11にて各種の歪みが取り除かれたRGB信号(RGBの反射率信号)に対して、カラー画像形成装置300に採用されている画像処理システムの扱いやすい濃度信号等に変換するとともに、入力された原稿画像が、文字原稿か印刷写真原稿か印画紙写真原稿、或いはそれらを組み合わせた文字/印刷写真原稿であるか等、原稿種別の判別を行なうものである。その後、後述する重畳画像の埋め込みの要求があって、重畳画像を視認可能とする場合には、ここで、特定の色空間に重畳画像を埋め込む。
【0025】
入力階調補正部13は、カラーバランスを整えると同時に、原稿種別自動判別部12の判定結果をもとに下地領域濃度の除去やコントラスト等の画質調整処理を施すものである。
【0026】
領域分離処理部14は、原稿種別自動判別部12の判定結果をもとに画素ごとに文字、網点、写真領域の何れかに分離させる。この領域分離処理部14は、分離された結果に基づき、各画素がどの領域に属しているかを示す領域識別信号16を、色補正部15、黒生成/下色除去部17、空間フィルタ処理部18、及び階調再現処理部20に送る。
【0027】
色補正部15は、色再現の忠実化実現のために、不要吸収成分を含むCMY(C:シアン、M:マゼンタ、Y:イエロー)色材の分光特性に基づいた色濁りを取り除く色補正処理を行うものである。
【0028】
黒生成/下色除去部17は、色補正後のCMYの3色信号からK(黒)信号を生成する黒生成処理を行なう一方、もとのCMY信号から黒生成で得たK信号を差し引いて新たなCMY信号を生成する下色除去処理を行なうものである。そして、これらの処理(黒生成処理、下色除去処理)の結果、CMYの3色信号はCMYKの4色信号に変換される。
【0029】
空間フィルタ処理部18は、デジタルフィルタによる空間フィルタ処理を行い、空間周波数特性を補正することによって、出力画像のボヤケや粒状性劣化を防ぐものである。その後、後述する重畳画像の埋め込みの要求があって、重畳画像を視認不可能とする場合には、ここで、原稿画像とは異なる空間周波数で重畳画像を埋め込む。
【0030】
出力階調補正部19は、濃度信号等の信号を、カラー画像出力装置400の特性値である網点面積率に変換する出力階調補正処理を行うものである。
【0031】
階調再現処理部20は、最終的に画像を画素ごとに分割して各々の階調を再現できるように処理する中間調生成処理を行うものである。
【0032】
なお、領域分離処理部14にて黒文字や色文字として抽出された画像領域は、黒文字或いは色文字の再現性を高めるために、空間フィルタ処理部18における鮮鋭度強調処理での高周波数の強調量を大きくする。同時に、中間調生成処理において高周波数再現に適した高解像のスクリーンでの二値化または多値化処理を選択するように構成している。
【0033】
一方、領域分離処理部14により網点と判別された領域に関しては、空間フィルタ処理部18において、入力網点成分を除去するためのローパス・フィルタ処理が施される。同時に、中間調生成処理では、階調再現性を重視したスクリーンでの二値化または多値化処理が行われる。
【0034】
このように、各処理が施された画像データは、記憶部500に記憶され、所定のタイミングで読み出されてカラー画像出力装置400に入力される。このカラー画像出力装置400は、画像データを記録用紙上に出力するもので、例えば、電子写真方式やインクジェット方式を用いたカラー画像形成装置100を挙げることができる。なお、各処理はCPU(Central Processing Unit)600により行われる。
【0035】
また、カラー画像形成装置300の各処理部を、別の方法で実現することもできる。カラー画像形成装置300に、各部を実現する制御プログラムの命令を処理するCPU600以外に、制御プログラム及び各種画像データを記録するメモリ等の記録媒体を備える方法である。即ち、制御プログラム及び各種画像データを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体を、カラー画像形成装置300に供給し、その後、カラー画像形成装置300が記録媒体に記録されている制御プログラム及び各種画像データを読み出し実行することによって達成する方法である。
【0036】
更に、この制御プログラムを、原稿画像に重畳画像を埋め込むプログラムとしても良い。この場合、この制御プログラムを記録したコンピュータ読取可能な記録媒体において、重畳画像を視認可能か不可能かに容易に切り替えることができる。
【0037】
記録媒体としては、例えば、磁気テープやカセットテープ等のテープ系、フロッピー(登録商標)ディスク/ハードディスク等の磁気ディスクやCD−ROM/MO/MD/DVD/CD−R等の光ディスクを含むディスク系、ICカード(メモリカードを含む)/光カード等のカード系、或いはマスクROM/EPROM(Erasable Programmable Read Only Memory)/EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)/フラッシュROM等の半導体メモリ系等を用いることができる。
【0038】
次に、本発明の重畳画像の埋め込み処理について詳細に説明する。図2のフローチャートに、重畳画像の埋め込み処理を示す。まず、ユーザからの原稿画像の複写が指示されたか否かが判断される(ステップS1)。そこで、指示がない場合には、再度ステップS1が繰り返される。ステップS1でYesの場合、原稿の読取が行われる(ステップS2)。その後、重畳画像の埋め込みの要求があるかどうかの判断が行われる(ステップS3)。埋め込み要求がない場合(ステップS3でNo)、複写物の出力が行われる(ステップS10)。
【0039】
ステップS3で重畳画像の埋め込みの要求があった場合、ステップS4で、視認可能とするかどうかの確認が行われる。ここで、視認可能とする場合は、特定の色空間に重畳画像が埋め込まれ(ステップS5)、逆に視認不可能とする場合は、ステップS6で原稿画像とは異なる空間周波数にて重畳画像が埋め込まれる。
【0040】
ステップS7では、視認可能とする場合の重畳画像のパターンの選定が行われ、ステップS8では、視認不可能とする場合の重畳画像のパターンの選定が行われる。
【0041】
その後、原稿画像に重畳画像が合成され(ステップS9)、複写物が出力(ステップS10)されて、終了する。
【0042】
図3は、カラー画像出力装置400としてのデジタル複合機の操作部の基本画面の例を示す図である。基本画面40は、デジタル複合機の電源がONになった時やリセットされた時に表示される画面である。この基本画面40では、上部のコピーキー41が選択され、コピーを行うための各種の条件設定が可能となっている。ここでは、重畳画像の埋め込みを指示するキー47が付与されている。ユーザは、このキー47を押すと、視認可能と視認不可能を選択できるキー(図示せず)が出現する。従って、重畳画像の埋め込みを指示できるため、重畳画像を視認可能か不可能かに切り替えられる。
【0043】
また、この基本画面40では、コピー以外に、イメージ送信キー42或いはドキュメントファイリングキー43を選択することにより、FAX等のイメージ送信を行うためのイメージ送信モード、或いはデータの保存や確認を行うためのドキュメントファイリングモードに移行することができる。さらに、この基本画面40では、両面コピーを設定するための両面コピーキー44、パンチやステープルの後処理の設定を行うための仕上げキー45、プレビュー確認キー46などを備えている。
【0044】
更に、具体例を用いて説明する。
<実施形態1>
図4(a)に示す原稿画像に対して、視認可能な重畳画像を埋め込む場合を説明する。まず、カラー画像入力装置200としてのスキャナ等の入力デバイスから読み取られた原稿画像をRGB色空間より入力デバイスに依存しないCIELab色空間に変換を行い、図4(b−1)、図4(b−2)、図4(b−3)に示すようなL色空間、a色空間、b色空間に分解する。そのうち、変換後のa色空間に重畳画像として、埋め込みパターンを埋め込む。本例ではTESTの文字を埋め込みパターンとして埋め込んでいるが、視認可能にできる文字・画像等、自由に選択できる。埋め込む空間もa色空間に限定されず、自由に選択してよい。原稿画像に重畳画像を埋め込む際も、原稿画像を色空間に変換することなく、文字・画像等の埋め込みパターンを重畳画像として埋め込んでもよい。
【0045】
変換にあたっては、入力デバイスごとに、RGB値とCIELab値の対応テーブルを測定によりあらかじめ作成したものを用いる。この対応テーブルを用いて、画素ごとに、RGB値に最も近いCIELab値を算出する。
【0046】
埋め込みにあたっては、変換後のa値と埋め込みパターンのa値が近すぎると視認不可能となってしまうが、少し離れた値とすることで、視認可能となる。このことで、視認性の精密な制御ができる。
【0047】
その後、埋め込まれることで得られた合成画像を、CIELab色空間よりCMYK色空間に変換する。カラー画像出力装置400としてのデジタル複合機等の出力デバイスのCMYK値に変換するためである。
【0048】
変換にあたっては、出力デバイスごとに、CIELab値とCMYK値の対応テーブルを測定によりあらかじめ作成したものを用いる。この対応テーブルを用いて、画素ごとに、CIELab値に最も近いCMYK値を算出する。
【0049】
変換された後、図4(c)のような画像の複写物を出力することができる。複写物では、TESTの文字をうっすら認知することができる。つまり、複写物の原稿画像は見づらいものとならずに、複写物の重畳画像は視認可能となっている。別の色空間に変換後、埋め込みパターンを埋め込むことで、視認性を制御できているからである。また、本実施形態では、別の色空間に変換後、重畳画像を埋め込んでいるため、種々の埋め込みパターンを埋め込むことが容易である。
【0050】
最後に、CIELab色空間に変換後、a色空間に重畳画像として埋め込みパターンを埋め込む理由について説明する。一般に、図4(a)に示すような自然画等の原稿画像をCIELab色空間に変換した場合、明度に相当するL値は変化量が大きいが、色度に相当するa値、b値は変化量が小さいので、重畳画像として埋め込みパターンを埋め込んだ後に合成画像をCMYK色空間に変換すると、埋め込みパターンが目立ちにくく違和感が少ないので、a色空間に重畳画像として埋め込みパターンを埋め込む。特に、a色空間は、R−G色成分しか含んでいないので、埋め込みパターンを特に目立たなくすることができる。
<実施形態2>
図5(a)に示す原稿画像に対して、視認不可能な重畳画像を埋め込む場合を説明する。カラー画像入力装置200としてのスキャナ等の入力デバイスから読み取られた図5(a)に示す原稿画像の空間周波数とは異なる空間周波数(本実施形態では原稿画像の空間周波数より低い空間周波数)の重畳画像を埋め込む。
【0051】
本実施例では、重畳画像としての埋め込みパターンを、図5(b)としているが、視認不可能にできる透かし文字・画像等、自由に選択できる。重畳画像は、原稿画像の画像領域内への埋め込みに限定されず、原稿画像のない画像領域外である背景部に埋め込まれてもよい。
【0052】
埋め込みにあたっては、原稿画像の空間周波数解析を行い、それより低い空間周波数で構成される埋め込みパターンを埋め込む。
図6(a)は、原稿画像の空間周波数特性を表すグラフであり、図6(b)は、埋め込みパターンの空間周波数特性を表すグラフである。
【0053】
その後、埋め込まれることで得られた合成画像を、カラー画像出力装置400としてのデジタル複合機等の出力デバイスで出力すると、図5(c)のような画像の複写物を出力することができる。図6(c)は、合成画像の空間周波数特性である。
【0054】
得られた複写物では、重畳画像を視認することはできない。これは、埋め込む重畳画像の空間周波数を低くすることで、目視では重畳画像を視認しにくく、得られた複写物では、重畳画像が付加されたかどうかわからないようにできるからである。
【0055】
また、本実施形態では、原稿画像の空間周波数より低い空間周波数の重畳画像を埋め込んでいるため、種々の埋め込みパターンを埋め込むことが容易である。
【0056】
このままでは、図5(c)のような画像の複写物が得られるだけで、視認不可能とする埋め込みパターンが埋め込まれたのか目視では判別できず、原稿画像との区別ができない。即ち、重畳画像の埋め込みを指示する図3のキー47を選択したのち、視認不可能を選択できるキーが押されたのかが判別できない。
【0057】
そこで、実際、埋め込みパターンが、埋め込まれているかどうか確認する方法について説明する。まず、合成画像をスキャナ等の入力デバイスを用いて、高周波数成分を除去する。除去にあたっては、ローパス・フィルタを用いる。その後、低周波数成分を抽出する。更に、抽出された低周波数成分のエッジを強調する。エッジの強調にあたっては、強調フィルタを用いる。この方法により、図5(d)のような画像が得られる。図6(d)は、抽出された画像の空間周波数特性である。
【0058】
このようにして、埋め込みパターンを顕在化させることができるため、埋め込みパターンが、実際、埋め込まれているかどうかを容易に確認することができる。
<実施形態3>
図7(a)に示す原稿画像に対して、視認不可能な重畳画像を埋め込む場合の他の例を説明する。カラー画像入力装置200としてのスキャナ等の入力デバイスから読み取られた図7(a)に示す原稿画像の空間周波数とは異なる空間周波数(本実施形態では原稿画像の空間周波数より高い空間周波数)の重畳画像を埋め込む。
【0059】
本例では、重畳画像としての埋め込みパターンを、図7(b)としているが、実施形態2と同様、視認不可能にできる透かし文字・画像等、自由に選択できる。重畳画像は、原稿画像の画像領域内への埋め込みに限定されず、原稿画像のない画像領域外である背景部に埋め込まれてもよい。
【0060】
埋め込みにあたっては、原稿画像の空間周波数解析を行い、それより高い空間周波数で構成される埋め込みパターンを埋め込む。
【0061】
図8(a)は、原稿画像の空間周波数特性を表すグラフであり、図8(b)は、埋め込みパターンの空間周波数特性を表すグラフである。
【0062】
その後、埋め込まれることで得られた合成画像を、カラー画像出力装置400としてのデジタル複合機等の出力デバイスで出力すると、図7(c)のような画像の複写物を出力することができる。図8(c)は、合成画像の空間周波数特性である。
【0063】
得られた複写物では、重畳画像を視認することはできない。これは、埋め込む重畳画像の空間周波数を高くすることで、目視では重畳画像を視認しにくく、得られた複写物では、重畳画像が付加されたかどうかわからないようにできるからである。
【0064】
また、本実施形態では、原稿画像の空間周波数より高い空間周波数の重畳画像を埋め込んでいるため、種々の埋め込みパターンを埋め込むことが容易である。
【0065】
このままでは、図7(c)のような画像の複写物が得られるだけで、実施形態2と同様、視認不可能とする埋め込みパターンが埋め込まれたのか目視では判別できず、原稿画像との区別ができない。即ち、重畳画像の埋め込みを指示する図3のキー47を選択したのち、視認不可能を選択できるキーが押されたのかが判別できない。
【0066】
そこで、実際、埋め込みパターンが、埋め込まれているかどうか確認する方法について説明する。まず、合成画像をスキャナ等の入力デバイスを用いて、低周波数成分を除去する。除去にあたっては、ハイパス・フィルタを用いる。その後、高周波数成分を抽出する。更に、抽出された高周波数成分のエッジを強調する。エッジの強調にあたっては、強調フィルタを用いる。この方法により、図7(d)のような画像が得られる。図8(d)は、抽出された画像の空間周波数特性である。
【0067】
このようにして、埋め込みパターンを顕在化させることができるため、埋め込みパターンが、実際、埋め込まれているかどうかを容易に確認することができる。
【符号の説明】
【0068】
10 A/D変換部
11 シェーディング補正部
12 原稿種別自動判別部
13 入力階調補正部
14 領域分離処理部
15 色補正部
16 領域識別信号
17 黒生成/下色除去部
18 空間フィルタ処理部
19 出力階調補正部
20 階調再現処理部
40 基本画面
41 コピーキー
42 イメージ送信キー
43 ドキュメントファイリングキー
44 両面コピーキー
45 仕上げキー
46 プレビュー確認キー
47 キー
100 画像形成装置
200 カラー画像入力装置
300 カラー画像形成装置
400 カラー画像出力装置
500 記憶部
600 CPU

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原稿画像に原稿画像と重畳させて描画する重畳画像を合成し、複写物を出力する画像形成装置において、前記複写物の前記重畳画像を視認可能か不可能かに切り替える操作部を有することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記原稿画像をL色空間に分解し、a色空間に前記重畳画像を埋め込むことにより前記重畳画像を視認可能とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記原稿画像とは異なる空間周波数で前記重畳画像を埋め込むことにより前記重畳画像を視認不可能とすることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
原稿画像に原稿画像と重畳させて描画する重畳画像を合成し、複写物を出力する画像形成方法において、重畳画像を視認可能にするか否かを選択するステップを有する画像形成方法。
【請求項5】
原稿画像に重畳画像を埋め込む処理を実行するプログラムを記録した記録媒体であって、
前記プログラムは、前記重畳画像を視認可能か否かに選択する処理を有することを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−228941(P2011−228941A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97048(P2010−97048)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】