説明

画像形成装置、画像形成装置の制御方法、プログラム及び記録媒体

【課題】用紙を搬送して印刷する画像形成装置の稼動中に停電が発生したとき、用紙が搬送の途中位置に残留するのを防止する。
【解決手段】画像形成装置1は、用紙Pに画像を印刷する印刷手段3と、用紙Pを給紙部から印刷手段3を経て排紙部まで搬送する搬送手段5とを備え、電源から供給される電力により印刷手段3と搬送手段5を稼動させる。電源からの電力の供給が停止した停電時には、無停電電源装置から搬送手段5に電力を供給して、搬送中の用紙Pを排紙部まで搬送させる。停電が発生したときの印刷処理の状況を記憶手段に記憶させ、停電から復帰して電源からの電力供給が再開したときに、記憶手段の記憶情報に基づき、電力供給の再開に伴う復帰処理を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源から供給される電力により稼動して用紙に画像を印刷する画像形成装置と、この画像形成装置の制御方法、プログラム及び記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用紙を機器内で搬送して画像を用紙に印刷した後、印刷後の用紙を装置外に排紙する画像形成装置において、複数の用紙を搬送して印刷している間に停電したときに、内蔵電池により印刷停止処理を行う印刷装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
この従来の印刷装置では、停電時に、転写ドラムまで到達していない用紙は停止させて次ユニットへは搬送せず、転写ドラムまで到達した用紙は、印刷処理を継続して印刷を完了させた後に排紙スタッカへ排紙する。この搬送中の複数の用紙に対する印刷停止処理は、給紙、転写、定着ユニットが分かれた大型の印刷装置では、ユニット毎に各用紙を搬送又は停止させることで実施できる。
【0004】
ところが、各ユニットが一体にレイアウトされた小型、中型の印刷装置では、ユニット毎に用紙を搬送や停止できず、搬送停止により全ての用紙が停止するため、上記した印刷停止処理を実施できない。そのため、この印刷装置では、停電により、機器内に用紙詰まりが発生し、停電から復帰して印刷を再開する前に、機器内から用紙を除去する必要が生じる。一方、大型の印刷装置でも、転写ドラム前で停止した用紙は、搬送路の途中位置に残留するため、印刷装置の復帰時に、機器内から除去する必要がある。また、印刷装置の復帰時には、用紙の除去作業に加えて、正常に印刷が完了した用紙や不足分の用紙の枚数を確認して再印刷する等、印刷再開までに種々の作業や復帰処理を、手間や時間をかけて行わなければならない、という問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これら従来の問題に鑑みなされたもので、その目的は、用紙を搬送して印刷する画像形成装置の稼動中に停電が発生したとき、用紙が搬送の途中位置に残留するのを防止することである。また、停電発生時の印刷処理の状況を把握して、停電から復帰したときの画像形成装置の復帰処理を容易に行えるようにし、停電に伴い必要となる作業や手間を軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、用紙に画像を印刷する印刷手段と、用紙を給紙部から印刷手段を経て排紙部まで搬送する搬送手段とを備え、電源から供給される電力により印刷手段と搬送手段を稼動させる画像形成装置であって、電源からの電力の供給が停止した停電時に、搬送手段に電力を供給して、搬送中の用紙を排紙部まで搬送させる無停電電源装置と、停電が発生したときの印刷処理の状況を記憶する記憶手段と、記憶手段の記憶情報に基づき、停電から復帰して電源からの電力供給が再開したときの復帰処理を制御する制御手段と、を備えた画像形成装置である。
また、本発明は、用紙に画像を印刷する印刷手段と、用紙を給紙部から印刷手段を経て排紙部まで搬送する搬送手段とを備え、電源から供給される電力により印刷手段と搬送手段を稼動させる画像形成装置の制御方法であって、電源からの電力の供給が停止した停電時に、無停電電源装置から搬送手段に電力を供給させて、搬送中の用紙を排紙部まで搬送させる工程と、停電が発生したときの印刷処理の状況を記憶手段に記憶させる工程と、停電から復帰して電源からの電力供給が再開したときに、記憶手段の記憶情報に基づき、電力供給の再開に伴う復帰処理を行う工程と、を有する画像形成装置の制御方法である。
更に、本発明は、画像形成装置の制御方法の各工程をコンピュータで実行させるためのプログラム、及び、このプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、用紙を搬送して印刷する画像形成装置の稼動中に停電が発生したとき、用紙が搬送の途中位置に残留するのを防止できる。また、停電発生時の印刷処理の状況を把握して、停電から復帰したときの画像形成装置の復帰処理を容易に行え、停電に伴い必要となる作業や手間を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態の画像形成装置を透視して示す構成図である。
【図2】本実施形態の画像形成装置の制御に関する構成と電力供給系統を示すブロック図である。
【図3】停電時における画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図4】停電時における画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図5】停電時に記憶するログ情報の例を示す図である。
【図6】画像形成装置の復帰処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】画像形成装置の復帰処理の手順を示すフローチャートである。
【図8】画像形成装置の復帰処理の手順を示すフローチャートである。
【図9】停電時における画像形成装置の処理手順を示すフローチャートである。
【図10】停電時に印刷手段に電力を供給する画像形成装置の処理手順の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の画像形成装置と画像形成装置の制御方法の一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の画像形成装置は、用紙に画像を印刷する、例えば印刷装置、コピー機、ファクシミリ、又は、それらの機能を併せ持つ複合機であり、用紙に画像を印刷する印刷手段と、用紙を搬送する搬送手段とを備えている。画像形成装置は、印刷手段と搬送手段を電源から供給される電力により稼働して、搬送手段により用紙を搬送し、印刷手段により搬送される用紙に画像を印刷する。その際、画像形成装置は、1枚の用紙を搬送して画像を用紙に印刷し、或いは、複数枚の用紙を連続して搬送して、各用紙に画像を順に印刷する。
【0010】
図1は、本実施形態の画像形成装置を透視して示す構成図である。
画像形成装置1は、図示のように、装置本体2と、装置本体2の上下に取り付けられた画像読み取りユニット100及び給紙ユニット300と、装置本体2の側面に設けられた排紙ユニット200とを備えている。画像読み取りユニット100は、給紙ローラ102、搬送ベルト103、及び、排紙ローラ104からなる自動原稿給紙装置(ADF:Auto Document Feeder)により、給紙台101上の原稿をコンタクトガラス10上で搬送して、排紙トレイ105に排紙する。画像読み取りユニット100は、コンタクトガラス10上を移動する原稿を露光ランプ11で露光して原稿を光学的に走査し、第1〜第3ミラー12〜14とレンズ15を介して、CCD等の読み取りセンサ16により原稿の画像を読み取る。
【0011】
給紙ユニット300は、用紙Pの給紙部である給紙トレイ310、320、330を複数備えている。給紙ユニット300は、給紙トレイ310、320、330内の用紙Pを、送り出し装置311、321、331により1枚ずつ送り出して、複数の搬送ローラ等からなる搬送ユニット340により、用紙Pを装置本体2まで搬送する。装置本体2は、給紙ユニット300から給紙される用紙P、又は、内部の給紙部である本体給紙トレイ50から送り出し装置51により送り出した用紙Pを、搬送ユニット60により、感光体ドラム30まで搬送する。
【0012】
装置本体2では、感光体ドラム30を回転させて、その外周面を帯電器31により一様に帯電した後、書込ユニット20により、感光体ドラム30の外周に画像を書き込む。書込ユニット20は、露光光であるレーザ光を発生し、fθレンズ21やミラー22を介して感光体ドラム30にレーザ光を照射し、感光体ドラム30を露光させて、感光体ドラム30に印刷する画像に対応した静電潜像を形成する。次に、現像ユニット32が、所定色(例えば、ブラック)のトナーにより、感光体ドラム30の静電潜像を現像して、感光体ドラム30の外周面にトナー画像を形成する。このトナー画像の形成に合わせて、紙センサ52で検出した用紙Pをレジストローラ53により供給し、搬送(転写)ベルト54と感光体ドラム30の間を通過する用紙Pにトナー画像を転写する。その後、感光体ドラム30は、クリーニング装置33により外周の不要なトナーが取り除かれて、除電装置(図示せず)により除電される。用紙Pは、定着ユニットである一対の定着ローラ55間を通過して加圧及び加熱され、トナー画像が定着する。
【0013】
このように、本実施形態の画像形成装置1は、感光体ドラム30、現像ユニット32、書込ユニット20、定着ローラ55等により、用紙Pに画像を印刷するための上記した印刷手段3を構成する。この印刷手段3により、1枚の用紙Pに画像を印刷し、或いは、複数枚の用紙Pに画像を順次印刷して、用紙Pに画像を形成する。また、用紙Pの両面に印刷するときには、一方の面に印刷した用紙Pを、切替爪57により、両面印刷路41を経て両面印刷トレイ40まで搬送し、再給紙ローラ42により搬送ユニット60に再度給紙して、用紙Pの他方の面に印刷する。
【0014】
印刷が完了した用紙Pは、搬送ローラ56により排紙ユニット200まで搬送される。排紙ユニット200は、用紙Pの排紙部である排紙トレイ201〜204を複数備え、切替爪205〜207により、用紙Pの搬送路を切り替えて、用紙Pの排紙先を選択する。用紙Pは、例えば、紙センサ208により検出されて、排紙ローラ209により最下段の排紙トレイ204に排紙される。
【0015】
本実施形態の画像形成装置1は、用紙Pの搬送路に沿って、搬送ユニット60、340、搬送ベルト54、搬送ローラ、切替爪、紙センサ、及び、モータ等を設けて、それらにより用紙Pの搬送機構4を構成する。また、搬送機構4と、搬送機構4を制御するための後述する給紙ユニット300と排紙ユニット200の制御部及び紙搬送制御部等により、上記した用紙Pの搬送手段5を構成する。搬送手段5は、搬送機構4をコントロールして、用紙Pを所定の給紙部(給紙トレイ310、320、330、50)から所定の排紙部(排紙トレイ201〜204)まで搬送する手段であり、給紙部から給紙される用紙Pを機器内の搬送路に沿って搬送する。また、搬送手段5は、用紙Pを印刷手段3へ搬送して、画像を用紙Pに印刷させる。このように、搬送手段5は、用紙Pを給紙部から印刷手段3を経て排紙部まで搬送する。
【0016】
図2は、画像形成装置1の制御に関する構成と電力供給系統を示すブロック図である。
画像形成装置1は、図示のように、電源70からの電力の供給経路を第1と第2の電力供給経路71、72の2系統に分け、第2の電力供給経路72の経路中に無停電電源装置(UPS:Uninterruptible Power Supply)73を接続して、無停電電源装置73を介して第2の電力供給経路72に電力を供給する。
【0017】
第1の電力供給経路71には、印刷手段3等、用紙Pの搬送に直接関係しない画像形成装置1の各構成やユニットを接続するとともに、それら接続された各構成やユニットを制御する制御部も接続する。例えば、第1の電力供給経路71には、画像形成装置1による画像処理をコントロールして書込画像を生成等する画像処理コントローラ81、定着ローラ55のヒータへの電力供給と温度を制御する定着温度制御部82、書込ユニット20による感光体ドラム30への画像の書き込みを制御する書込制御部83、及び、感光体ドラム30への画像の形成と画像の転写を制御する転写制御部84が接続される。第1の電力供給経路71には、これら印刷手段3の印刷制御手段を構成する各制御部81〜84に加えて、画像形成装置1の操作部85も接続される。
【0018】
第2の電力供給経路72には、搬送機構4等、用紙Pの搬送に関係する画像形成装置1の各構成やユニットを接続するとともに、それら接続された各構成やユニットを制御する制御部も接続する。例えば、第2の電力供給経路72には、給紙ユニット300と排紙ユニット200を制御する給紙ユニット制御部91と排紙ユニット制御部92、機器内の用紙Pの搬送を制御する紙搬送制御部93、及び、搬送される用紙Pの位置を検出する複数の紙センサ(以下、紙センサ94と表す)が接続される。即ち、第2の電力供給経路72には、搬送機構4と、その搬送制御手段を構成する各制御部91〜93、及び、紙センサ94等からなる搬送手段5が接続される。また、第2の電力供給経路72には、画像形成装置1の全体を制御するメインコントローラ6、その記憶手段である不揮発性メモリ(NVRAM)7、画像読み取りユニット100と、それを制御する画像読み取り制御部95が接続される。
【0019】
画像形成装置1は、電源70から、第1と第2の電力供給経路71、72に接続された各制御部や構成、及び、印刷手段3と搬送手段5に電力を供給する。この供給される電力により印刷手段3と搬送手段5を稼動させ、それぞれ印刷や用紙Pの搬送を実行させて、搬送手段5が搬送する用紙Pに、印刷手段3により画像を印刷して、印刷後の用紙Pを排紙部に排紙させる。また、ここでは、印刷手段3等の作像系と、用紙Pの搬送に必要な搬送機構4と各制御部91〜93等からなる搬送手段5とに、異なる電力供給経路71、72により互いに分離して電力を供給する。電源70からの電力の供給が停止した停電時には、第1の電力供給経路71側の各ユニットや構成と印刷手段3への電力供給は停止する。これに対し、第2の電力供給経路72は、停電発生時に、無停電電源装置73から蓄電された電力が自動で供給され、停電中も各ユニットや構成へ電力が供給される。
【0020】
印刷動作中に停電が発生したときには、画像形成装置1は、印刷手段3へは電力を供給せずに印刷処理を停止させ、その状態で、搬送手段5へ電力を供給して用紙Pを搬送する。即ち、無停電電源装置73は、電源70からの電力の供給が停止した停電時に、搬送手段5に電力を供給して用紙Pの搬送を継続させる手段であり、搬送中(搬送路の途中)の用紙Pを、印刷せずに(又は、印刷を中断して)、排紙部まで搬送して装置外に排紙させる。また、無停電電源装置73は、停電の発生を検出したときに、メインコントローラ6に電力を供給するとともに、停電検出通知をメインコントローラ6へ出力して、電源の切り替えを通知する。
【0021】
メインコントローラ6は、停電検出通知を受信したときには、電力の供給が停止した各ユニットや構成が無応答の状態になっても、サービスマンコールや通常のエラー検出等を行わずに、搬送手段5による用紙Pの搬送処理を継続する。また、メインコントローラ6は、停電発生時に、機器内で正常に印刷動作が完了している用紙Pと、印刷途中(又は、印刷前)で画像の保証ができない用紙Pとを判別して、正常に印刷完了した用紙Pと印刷完了していない用紙P、及び、各状態で排紙される用紙Pの枚数を把握する。併せて、メインコントローラ6は、停電発生時における印刷の要求内容や実行中の印刷処理の状態等を把握や判別して、これら各情報からなる停電が発生したときの印刷処理の状況を、記憶手段である不揮発性メモリ7に記憶する。その際、不揮発性メモリ7には、例えば、印刷要求内容、印刷ステータス、搬送した用紙Pの枚数、停電検出情報や印刷中断情報、印刷を中断した用紙Pと正常に印刷が完了した用紙Pの枚数、印刷ジョブ情報、印刷を中断した用紙P(中断箇所)等が、ログ情報として記憶される。
【0022】
メインコントローラ6は、これら停電発生時や停電中に不揮発性メモリ7に記憶された情報(記憶情報)に基づき、停電から復帰して電源70からの電力供給が再開したときの復帰処理を制御する。即ち、メインコントローラ6は、復帰処理の制御手段であり、画像形成装置1の各部を制御して、設定された停電からの各種復帰処理を実行させる。そのため、メインコントローラ6は、機能実現手段として、以下説明する画像形成装置1の復帰処理を制御等する各手段を有する。
【0023】
なお、第2の電力供給経路72は、印刷の要求元であるホストコンピュータと接続するためのホストI/F96も接続されており、停電時に、ホストI/F96へも電力を供給する。メインコントローラ6は、停電発生時に、ホストI/F96を介して、ホストコンピュータに画像形成装置1の電源異常や印刷の中断等を通知する。また、メインコントローラ6は、装置各部に設けた紙センサ94の検出結果に基づき、搬送路中の用紙Pの有無や用紙Pの位置、枚数等を判別する。停電から復帰したときには、無停電電源装置73による電力供給から、電源70による電力供給に自動で切り替わり、電源70から両電力供給経路71、72に電力が供給されて、画像形成装置1が稼動する。
【0024】
次に、停電が発生したときの画像形成装置1の処理や動作、停電からの復帰処理、及び、画像形成装置1の制御方法について説明する。
図3は、停電時における画像形成装置1の処理手順を示すフローチャートである。
画像形成装置1は、図示のように、電源70からの電力の供給が停止した停電時に、電源を切り替えて(S101)、無停電電源装置73から接続された各部に電力を供給する。また、メインコントローラ6が無停電電源装置73から出力された停電検出通知を受信したときに(S102)、メインコントローラ6等により、機器内の搬送路に用紙Pがあるか否かを判別する(S103)。用紙Pがないときには(S103、NO)、停電時の処理を終了し、用紙Pがあるときには(S103、YES)、無停電電源装置73から搬送手段5に電力を供給させて、搬送中の用紙Pを排紙部まで搬送させる。停電時には、印刷手段3等への電力供給と印刷処理は停止し、用紙Pに画像を印刷せずに、用紙Pを搬送して排紙部に排紙する。
【0025】
その際、メインコントローラ6は、用紙Pの排紙要求がなされたときに(S104、YES)、排紙する用紙Pに両面印刷が指定されているか否かを、不揮発性メモリ7に記憶された印刷情報に基づき判別する(S105)。用紙Pへの印刷が両面印刷ではないときには(S105、NO)、停電時に、その用紙Pが、定着ローラ55を通過済みか否かを判別する(S106)。通過済みのときには(S106、YES)、用紙Pへの印刷動作が完了しているため、用紙Pの排紙部への排紙時に、正常に印刷が完了した正常印刷枚数にカウントする(S108)。用紙Pが、給紙部から定着ローラ55までの範囲、又は、定着ローラ55を通過中であり、定着ローラ55を通過済みでないときには(S106、NO)、用紙P上の画像が保証できないため、排紙時に印刷が完了していない異常印刷枚数にカウントする(S109)。
【0026】
また、用紙Pに両面印刷が指定されているときには(S105、YES)、両面印刷済みか否かを判別して(S107)、両面とも印刷していない、又は、片面のみ印刷が完了しているときには(S107、NO)、異常印刷枚数にカウントする(S109)。両面印刷済みであるときには(S107、YES)、停電時に、その用紙Pが、定着ローラ55を通過済みか否かを判別し(S106)、通過済みのときには(S106、YES)、両面とも印刷が完了しているため、用紙Pの排紙時に正常印刷枚数にカウントする(S108)。用紙Pが、定着ローラ55を通過済みでないときには(S106、NO)、印刷中の面への印刷が完了していないため、異常印刷枚数にカウントする(S109)。
【0027】
メインコントローラ6は、これら正常印刷枚数と異常印刷枚数、及び、予め設定された各情報からなるログ情報を不揮発性メモリ7に記憶する(S110)。画像形成装置1は、機器内の搬送路に複数枚の用紙Pがあるときには、各用紙Pに対して以上の手順を繰り返し(S103、YES)、搬送路中の全ての用紙Pを排紙部まで搬送したときに(S103、NO)、停電時の処理を終了する。
【0028】
図4は、停電時における画像形成装置1の他の処理手順を示すフローチャートである。
画像形成装置1は、図示のように、停電時に電源が切り替えられて(S201)、無停電電源装置73から停電検出通知を受信したときに(S202)、停電による印刷の異常終了をログ情報として不揮発性メモリ7に記憶する(S203)。これにより、不揮発性メモリ7に、停電の発生や印刷の中断を記憶する。
【0029】
また、画像形成装置1は、停電時に、停電が発生するまで実行中していた印刷ジョブの情報や、印刷の進捗状況の情報を取得して、これら各情報を、ログ情報として不揮発性メモリ7に記憶する。このようにして、画像形成装置1は、記憶手段である不揮発性メモリ7に、停電が発生したときの印刷処理の状況を記憶させ、停電からの復帰後に、印刷処理や装置の状態を確認する。
【0030】
図5は、停電時に不揮発性メモリ7に記憶するログ情報の例を示す図である。
不揮発性メモリ7は、図示のように、それぞれの印刷要求(印刷ジョブ)の識別情報であるジョブID、ユーザからの印刷要求、及び、実行中の印刷の印刷ステータスを記憶する。印刷要求は、文書名、ユーザにより指定された印刷ドキュメントのページ数、印刷部数、及び、印刷の色や用紙の種類、両面又は片面印刷等の印刷設定からなる。印刷ステータスは、停電発生時における印刷状態、印刷を中断した中断ページ、印刷が完了していない未完了枚数等、中断された印刷や要求済みの印刷の進捗状況についての情報からなる。
【0031】
例えば、ジョブIDが「00001」のログ情報からは、10ページの文書を7部、計70ページの印刷が指定されたが、停電により印刷が中断して6ページ目で印刷を中断し、70ページ中32ページが未完了で、38ページまで定着ローラ55を通過して正常に印刷が完了したということが分かる。また、ジョブIDが「00002」、「00003」のログ情報からは、停電発生時に、各印刷要求の印刷が開始前であるということが分かる。画像形成装置1は、停電から復帰して電源70からの電力供給が再開したときに、これら不揮発性メモリ7に記憶された印刷処理の状況についての記憶情報に基づき、電力供給の再開に伴う復帰処理を行う。
【0032】
図6は、画像形成装置1の復帰処理の手順を示すフローチャートである。
画像形成装置1は、図示のように、停電から復帰して電源70がオンしたときに(S301)、不揮発性メモリ7から、前回終了時のログ情報を読み出して、その内容を確認する(S302)。その結果、前回の印刷中に停電を検出していないときには(S303、NO)、通常の手順で画像形成装置1を起動して立ち上げる(以下、通常立ち上げという)(S304)。これに対し、ログ情報の印刷状態(図5参照)に中断が記憶されており、前回印刷中に停電が検出された(S303、YES)、即ち、停電からの復帰であるときには、機器の詳細自己診断、又は、用紙Pの搬送路のクリーニング動作を実行する。
【0033】
詳細自己診断の実行時には(S305)、各ユニットや接続された周辺オプションユニットの動作や機能等を診断して、画像形成装置1に正常な印刷が可能か否かを自己診断させ、画像形成装置1が停電によるダメージを負っていないことを確認する。また、停電時には印刷手段3への電力供給が停止して、例えば、感光体ドラム30から用紙Pへのトナー画像の転写の中断、又は、定着ローラ55のヒータへの電力供給停止によるトナー画像の定着不良が生じる虞がある。これら用紙Pの搬送に関連しない動作の停止により、用紙Pの搬送路が、トナーの飛散等により汚れる可能性がある。そのため、画像形成装置1は、印刷手段3等の各ユニットや用紙Pの搬送路にクリーニング機構があるときには(S306、YES)、クリーニングを実行する(S307)。続いて、新たな用紙Pを搬送して、搬送路のクリーニングを兼ねたテスト印刷を実行し(S308)、搬送路に付着した汚れを低減する。また、クリーニング機構がないときにも(S306、NO)、テスト印刷を実行して(S308)、復帰処理を終了する。その際、クリーニング用の用紙Pには、例えば、最大幅の用紙Pが自動で選択される。
【0034】
このように、この画像形成装置1では、復帰処理の制御手段であるメインコントローラ6が、機能実現手段として、電源70からの電力供給が再開したときに、正常な印刷が可能か否かを自己診断させる手段、又は、搬送手段5の用紙Pの搬送路をクリーニングさせる手段を有する。これにより、画像形成装置1は、復帰処理時に、印刷手段3や搬送手段5を診断して、正常な印刷が可能か否かを自己診断し、又は、搬送手段5の用紙Pの搬送路をクリーニングする。
【0035】
以上説明したように、本実施形態では、停電時に、無停電電源装置73から搬送手段5に電力を供給して、搬送中の用紙Pを排紙部まで搬送させるため、用紙Pが搬送の途中位置に残留するのを防止できる。その結果、停電時の機器内に用紙Pが詰まることがなく、用紙Pを搬送路から除去する必要もないため、停電からの復帰時に行うユーザによる操作やメンテナンスが簡素化して、印刷を容易に再開できる。また、停電が発生したときの印刷処理の状況を不揮発性メモリ7に記憶するため、停電発生時の印刷処理の状況を正確に把握できる。更に、不揮発性メモリ7の記憶情報に基づき、電源70からの電力供給が再開したときの復帰処理を制御して行うため、復帰処理を、手間や時間をかけずに、かつ、印刷処理の状況に応じて適宜実施できる。従って、停電から復帰したときの画像形成装置1の復帰処理を容易に行え、停電に伴い必要となる作業や手間を軽減できる。
【0036】
また、この画像形成装置1は、停電時に、用紙Pの搬送に必要な搬送手段5には電力を供給するものの、用紙Pの搬送に関係しない印刷手段3等には電力を供給せずに、それらの稼動を停止させる。そのため、停電中に無停電電源装置73が消費する電力を小さくして、無停電電源装置73の電力の消耗を低く抑えることができる。更に、電源70からの電力供給が再開したときに、正常な印刷が可能か否かを自己診断することで、正常に印刷を再開できるか否かを確認できる。これにより、印刷ミスや画像形成装置1の故障の発生を抑制できる。また、搬送手段5の用紙Pの搬送路をクリーニングするときには、停電発生に伴う機器内の汚れが用紙Pに付着するのを防止できるため、印刷の品質を高く維持できる。
【0037】
次に、停電時や停電からの復帰時に、画像形成装置1が行う処理の他の例について順に説明する。
図7は、画像形成装置1の復帰処理の手順を示すフローチャートである。
この復帰処理では、図示のように、画像形成装置1は、停電から復帰して電源70がオンしたときに(S401)、不揮発性メモリ7から、前回終了時のログ情報を読み出して、その内容を確認する(S402)。その結果、前回の印刷中に停電を検出していないときには(S403、NO)、通常立ち上げを行う(S404)。これに対し、前回印刷中に停電が検出されたときには(S403、YES)、停電時に印刷を中断した印刷ジョブがあるか否かを確認し(S405)、中断した印刷ジョブがないときには(S405、NO)、通常立ち上げを行う(S404)。
【0038】
停電時に印刷を中断して印刷が完了しておらず、中断した印刷ジョブがあるときには(S405、YES)、ログ情報の印刷処理の状況から、中断した印刷ジョブ(印刷)の終了状態を確認する(S406)。また、印刷データを受信済みでハードディスク等の記憶装置に記憶してあり、印刷データがスプールされているときには(S407、YES)、その印刷データを取得して印刷を再開する(S410)。また、印刷データがスプールされていないときには(S407、NO)、ホストコンピュータ(ここでは、ホストPC(パーソナルコンピュータ))に、中断した印刷の印刷データを再送するよう要求する(S408)。印刷データの再送ができないときには(S409、NO)、その印刷をキャンセルして通常立ち上げを行い(S404)、印刷データの再送が可能なときには(S409、YES)、再送された印刷データに基づき印刷を再開する(S410)。
【0039】
このように、画像形成装置1は、メインコントローラ6により制御して、電源70からの電力供給が再開したときに、記憶装置やホストコンピュータから、停電に伴い中断した印刷の印刷データを取得する。また、メインコントローラ6は、取得した印刷データに基づき、搬送手段5による用紙Pの搬送と、印刷手段3による用紙Pへの印刷を実行させて、印刷を再開する。その際、中断した印刷が複数枚の用紙Pへの印刷であるときには、中断した印刷を、印刷が完了した用紙Pの続きから再開させて、中断された箇所(正常に印刷が完了した分の続き)から印刷させる。従って、メインコントローラ6は、印刷データ取得手段と印刷再開手段を構成する。
【0040】
なお、上記したログ情報(図5参照)の例では、ジョブIDが「00001」の印刷は、中断ページが6ページ目で、未完了枚数が32枚であることから、6ページ目の3部目まで正常に印刷が完了したことが確認できる。メインコントローラ6は、停電から復帰して印刷を再開するときに、「議事録A」の情報をホストコンピュータに送信して、その印刷データの再送を要求する。続いて、取得した印刷データから、5ページ目までの印刷データは印刷を実行せずに破棄し、6ページの4部目、即ち、全70ページ中の39枚目から印刷を再開させる。また、画像形成装置1は、停電時に、原稿のコピー動作や、読み取った原稿の印刷データを蓄積するスキャナー蓄積動作で、画像読み取りユニット100を使用していたときには、コピーや読み取りが完了していない原稿を戻して、コピーや読み取り動作を継続又は再開させるメッセージを操作部85の操作パネルに表示する。
【0041】
ここでは、電源70からの電力供給が再開したときに、停電に伴い中断した印刷の印刷データを取得して、中断した印刷を、印刷が完了した用紙の続きから再開するため、中断した印刷を早期に、かつ、手間をかけずに再開できる。そのため、画像形成装置1が停止している時間(ダウンタイム)を低減できるとともに、印刷再開時の負担を軽減して印刷を円滑に再開できる。
【0042】
図8は、画像形成装置1の他の復帰処理の手順を示すフローチャートである。
この復帰処理では、図示のように、画像形成装置1は、停電から復帰して電源70がオンした後(S501)、印刷を中断した印刷ジョブの再開要求がないときには(S502、NO)、通常立ち上げを行う(S503)。これに対し、印刷の再開要求があるときには(S502、YES)、ホストコンピュータに、中断した印刷の印刷データの再送を要求し、中断した印刷データを再受信して(S504)、印刷データを取得する。続いて、この中断した印刷データで再印刷するが、印刷ジョブで指定された排紙先(排紙部)以外の排紙先を、用紙Pの排紙先として選択できるときには、用紙Pの排紙先を切り替えて印刷を再開する。
【0043】
具体的には、指定された排紙先とは別の排紙先があるときには(S505、YES)、用紙Pの排紙先を、停電時に用紙Pを排紙した排紙先から他の排紙先に切り替え(S506)、排紙先の切り替えをユーザに通知する(S507)。次に、取得した印刷データに基づき印刷を再開する(S508)。その際、中断した印刷は印刷不良の用紙Pを含む可能性があるため、ここでは、中断した印刷を、中断箇所から再開せずに印刷ジョブ単位で再実行し、最初の用紙Pへの印刷から再開させて、改めて1ページ目から印刷する。また、排紙先を切り替えて、印刷を再開した用紙Pを、中断した印刷の用紙Pと分けて別の排紙部に排紙する。
【0044】
これに対し、別の排紙先がないときには(S505、NO)、印刷ジョブで指定された排紙先を排紙部として(S509)、再印刷開始を判別するための判別タグを出力して(S510)、中断した印刷を、最初の用紙Pへの印刷から再開する(S508)。判別タグは、複数の排紙先がなく、印刷を再開した用紙Pを、中断した印刷の用紙Pと同じ排紙先に排紙しなければならないときに、再開した印刷の開始位置を判別するための判別紙である。判別紙としては、例えば、別の給紙部から給紙した色付きの用紙P、他の印刷と異なるパターンを印刷して容易に判別できる用紙P、指定された用紙Pよりも大きいサイズの用紙Pを採用できる。これにより、印刷再開箇所の判別が容易になる。ただし、排紙部への用紙Pの排紙位置を左右にオフセットできるときには、停電からの復帰前後で用紙Pの排紙位置を変更して、印刷再開箇所を判別できるようにしてもよく、排紙位置の変更と判別タグとを併用してもよい。
【0045】
このように、画像形成装置1は、上記と同様に印刷データ取得手段と印刷再開手段を構成するメインコントローラ6により制御して、電源70からの電力供給が再開したときに、停電に伴い中断した印刷の印刷データを取得する。また、中断した印刷が複数枚の用紙Pへの印刷であるときには、取得した印刷データに基づき、中断した印刷を、最初の用紙Pへの印刷から再開させる。そのため、中断した印刷を早期に、かつ、手間をかけずに再開して、画像形成装置1のダウンタイムを低減できるとともに、印刷再開時の負担を軽減して印刷を円滑に再開できる。また、印刷を最初の用紙Pへの印刷から再開するため、複数の用紙Pへの印刷結果を保証でき、印刷不良の用紙Pを含まず、正しく印刷された用紙Pを確実に取得できる。
【0046】
更に、この画像形成装置1は、搬送手段5が用紙Pを搬送する複数の排紙部を備え、上記した復帰処理の制御手段であるメインコントローラ6が、搬送手段5により、印刷再開後の用紙Pを、印刷中断前に用紙Pを搬送した排紙部とは異なる排紙部へ搬送させる。即ち、搬送手段5が印刷再開後の用紙Pを搬送する排紙部を、印刷中断前に用紙Pを搬送した排紙部から他の排紙部に切り替えるため、それらを互いに分けて排紙して、用紙Pが混合するのを防止できる。その結果、印刷の再開前後の用紙Pを分ける作業が不要となり、ユーザの手間を削減できる。
【0047】
なお、印刷データは、ホストコンピュータから取得せずに、スプールされた記憶装置から取得するようにしてもよい。また、排紙部に紙センサを設け、印刷再開前に指定された排紙部に用紙Pがあることを検出したときに、用紙Pの排紙先を変更するようにしてもよい。
【0048】
図9は、停電時における画像形成装置1の他の処理手順を示すフローチャートである。
この停電時の処理では、図示のように、画像形成装置1は、停電時に電源が切り替えられて(S601)、無停電電源装置73から停電検出通知を受信したときに(S602)、機器内の搬送路に用紙Pがあるか否かを判別する(S603)。その結果、用紙Pがないときには(S603、NO)、停電時の処理を終了する。これに対し、機器内に用紙Pがあり(S603、YES)、用紙Pの排紙要求がなされたときに(S604、YES)、排紙される用紙Pに両面印刷が指定されているか否かを判別する(S605)。
【0049】
用紙Pへの印刷が両面印刷ではないときには(S605、NO)、停電時に、その用紙Pが、定着ローラ55を通過済みか否かを判別する(S606)。通過済みのときには(S606、YES)、用紙Pへの印刷が完了しているため、その用紙Pの排紙先を指定された排紙先に切り替えて(S607)、用紙Pを排紙し、排紙時に正常に印刷が完了した正常印刷枚数にカウントする(S608)。また、用紙Pに両面印刷が指定されており(S605、YES)、両面印刷済みであるときには(S609、YES)、停電時に、その用紙Pが、定着ローラ55を通過済みか否かを判別する(S606)。通過済みのときには(S606、YES)、両面とも印刷が完了しているため、用紙Pを指定された排紙先に排紙して(S607)、排紙時に正常印刷枚数にカウントする(S608)。
【0050】
また、両面印刷する用紙Pが、両面とも印刷していない、又は、片面のみ印刷が完了しているときや(S609、NO)、片面又は両面印刷する用紙Pが、停電時に定着ローラ55を通過済みでないときには(S606、NO)、指定された排紙先とは別の排紙先が指定可能か否かを確認する(S610)。別の排紙先が指定できるときには(S610、YES)、用紙Pの排紙先を指定排紙先とは別の排紙先に切り替えて(S611)、用紙Pを排紙し、排紙時に異常印刷枚数にカウントする(S612)。別の排紙先を指定できないときには(S610、NO)、排紙先を指定された排紙先に切り替えて(S607)、用紙Pを排紙し、排紙時に正常印刷枚数にカウントする(S608)。これら正常印刷枚数と異常印刷枚数や印刷処理の状況を、ログ情報として不揮発性メモリ7に記憶する(S613)。画像形成装置1は、機器内の搬送路に複数枚の用紙Pがあるときには、各用紙Pに対して以上の手順を繰り返し(S603、YES)、搬送路中の全ての用紙Pを排紙したときに(S603、NO)、停電時の処理を終了する。ただし、別の排紙先を指定できないときには(S610、NO)、正常印刷枚数にカウントする用紙Pに、印刷が完了していない用紙Pが含まれるため、用紙Pの排紙時に、正常印刷枚数と異常印刷枚数の両方にカウントして、両方にカウントしたこともログ情報として記憶する。
【0051】
ここで、停電時にトナー画像が定着していない用紙Pは、他の用紙Pとこすれ、或いは、ユーザが印刷面に触れることで、未定着のトナーを付着させて、他の用紙Pやユーザを汚す可能性がある。そのため、複数の排紙部があるときには、定着ローラ55を通過済みの正常な印刷が完了した用紙Pは、指定排紙先に排紙し、定着ローラ55を未通過の印刷未完了の用紙Pは、排紙先を切り替えて排紙する。これにより、印刷完了の用紙Pと、印刷未完了の用紙Pを、それぞれ排紙先を切り替えて分離し、不完全に印刷された用紙Pを正常に印刷された用紙Pから分けて管理する。
【0052】
この画像形成装置1は、搬送手段5が用紙Pを搬送する複数の排紙部を備え、メインコントローラ6により制御して、停電時の搬送手段5により、印刷未完了の用紙Pを、印刷完了の用紙Pを搬送する排紙部とは異なる排紙部へ搬送させる。即ち、搬送手段5が印刷未完了の用紙Pを搬送する排紙部を、印刷完了の用紙Pを搬送する排紙部から他の排紙部に切り替えるため、それらを互いに分けて排紙して、用紙Pが混合するのを防止できる。その結果、正常な用紙Pが汚れるのを防止できるとともに、排紙した用紙Pから不良印刷物等の印刷未完了の用紙Pを取り除いて、用紙Pを分ける作業が不要となるため、ユーザの手間を削減できる。また、印刷未完了の用紙Pが印刷完了の用紙Pに混入せず、正常に印刷された用紙Pのみを取得できるため、その続きから再印刷することで、再印刷の開始が容易になる。従って、用紙Pを破棄する枚数と、再印刷時に要する時間を短縮することもできる。
【0053】
なお、電源70からの電力供給が再開したときに、メインコントローラ6により制御して、停電が発生したときの印刷処理の状況、又は、印刷再開の処理手順を用紙Pに印刷して排紙部に排紙させるようにしてもよい。その際、例えば、用紙Pに、印刷中断時のログ情報の内容、印刷を再開すべき用紙P、停電時の状態、又は、以降の処理手順を印刷して、この用紙Pを、停電前の正常印刷が完了した用紙Pの排紙部に排紙する。また、用紙Pには、「完了印刷枚数」、「不良印刷枚数」、「実行を中断した印刷ジョブの名称」等、停電時の印刷の状態を示す情報、或いは、「不要印刷××枚を除いて、印刷を再開して下さい」等の操作パネルに表示する復帰処理手順を印刷することもできる。各情報を印刷する用紙Pは、上記した再印刷を判別するための判別タグ(判別紙)でもよく、新規の用紙Pでもよい。
【0054】
このようにすることで、操作パネルに情報の表示部を持たない、或いは、表示部の面積が小さいときでも、停電からの復帰時に必要な情報として、印刷処理の状況又は印刷再開の処理手順を詳細にユーザに知らせることができる。これにより、ユーザは、例えば、中断された印刷処理がどこまで正常に完了しているか、印刷を継続する際に、どこから処理を再開すればよいか等、印刷の参考情報を容易に取得できる。また、画像形成装置1に表示装置を設けなくても、ユーザに、印刷再開の処理手順を知らせることができ、停電から復帰したときに、ユーザは、用紙Pに印刷された手順に基づき、印刷再開のための処理を容易に実施できる。
【0055】
本実施形態の画像形成装置1では、停電時に、無停電電源装置73から、用紙Pの搬送に関係しない構成(印刷手段3等)には電力を供給せずに、それらの稼動や処理を停止させたが、停電時には、用紙Pの搬送に関係しない構成にも電力を供給するようにしてもよい。例えば、印刷手段3に電力を供給して印刷処理を継続させるときには、印刷手段3に、搬送手段5と同じ無停電電源装置73を接続し、或いは、この無停電電源装置73とは別の無停電電源装置を接続して、停電時に、印刷手段3にも電力を供給する。
【0056】
図10は、停電時に、無停電電源装置73から印刷手段3に電力を供給する画像形成装置1’の処理手順の例を示すフローチャートである。
この画像形成装置1’は、図示のように、印刷処理時には、ホストPCから印刷データを受信して(S701)、印刷データを蓄積し(S702)、用紙Pへの印刷を開始する。その間に、停電が発生して電源が切り替えられ(S703)、無停電電源装置73から停電検出通知を受信したときには(S704)、機器内の搬送路に用紙Pが有るか否かと、印刷のために用紙Pの給紙動作を開始したか否かを判別する(S705)。その結果、機器内に用紙Pがなく、かつ、給紙動作開始前である(S705、YES)、即ち、すぐに搬送手段5を停止しても用紙詰まり等の不具合が発生しない状態であるときには、印刷ジョブがどこまで完了したか等の印刷ジョブの進捗状況を不揮発性メモリ7に記憶して(S706)、処理を終了する。
【0057】
これに対し、機器内に用紙Pがあり、又は、給紙動作開始後であり(S705、NO)、印刷動作中のときには、すぐに用紙Pの搬送を停止すると用紙詰まり等の不具合が発生するため、実行中の印刷動作が完了するまで印刷処理を継続する。印刷動作は、印刷部数単位で継続するため、例えば、10ページを5部印刷する印刷動作で、3部目の途中で停電を検出したときには、3部目までの印刷を完了させるため印刷動作を継続する。このように、印刷の動作が終了するまで、用紙Pの搬送と印刷を継続し(S707、NO)、印刷が終了したときに(S707、YES)、印刷データを破棄して(S708)、処理を終了する。上記した例では、3部目までの印刷が完了するまで印刷動作を継続した後、ステップS708で、4部目以後の印刷データを破棄する。
【0058】
以上、各実施形態の画像形成装置1、1’について説明したが、本発明は、以上説明した画像形成装置1、1’の制御方法の各工程を、コンピュータで実行させるためのプログラムとして実現することもできる。更に、このプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM、DVD−ROM、又はMO等、任意のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録することもできる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・画像形成装置、2・・・装置本体、3・・・印刷手段、4・・・搬送機構、5・・・搬送手段、6・・・メインコントローラ、7・・・不揮発性メモリ、10・・・コンタクトガラス、16・・・読み取りセンサ、20・・・書込ユニット、30・・・感光体ドラム、31・・・帯電器、32・・・現像ユニット、33・・・クリーニング装置、40・・・両面印刷トレイ、50・・・本体給紙トレイ、54・・・搬送ベルト、55・・・定着ローラ、60・・・搬送ユニット、70・・・電源、71、72・・・電力供給経路、73・・・無停電電源装置、100・・・画像読み取りユニット、200・・・排紙ユニット、300・・・給紙ユニット、310、320、330・・・給紙トレイ、340・・・搬送ユニット、P・・・用紙。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】
【特許文献1】特開2009−238072号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙に画像を印刷する印刷手段と、用紙を給紙部から印刷手段を経て排紙部まで搬送する搬送手段とを備え、電源から供給される電力により印刷手段と搬送手段を稼動させる画像形成装置であって、
電源からの電力の供給が停止した停電時に、搬送手段に電力を供給して、搬送中の用紙を排紙部まで搬送させる無停電電源装置と、
停電が発生したときの印刷処理の状況を記憶する記憶手段と、
記憶手段の記憶情報に基づき、停電から復帰して電源からの電力供給が再開したときの復帰処理を制御する制御手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項2】
請求項1に記載された画像形成装置において、
制御手段が、電源からの電力供給が再開したときに、正常な印刷が可能か否かを自己診断させる手段、又は、搬送手段の用紙の搬送路をクリーニングさせる手段を有する画像形成装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された画像形成装置において、
制御手段が、電源からの電力供給が再開したときに、停電に伴い中断した印刷の印刷データを取得する手段と、中断した印刷が複数枚の用紙への印刷であるときに、取得した印刷データに基づき、中断した印刷を、印刷が完了した用紙の続きから再開させる手段とを有する画像形成装置。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された画像形成装置において、
制御手段が、電源からの電力供給が再開したときに、停電に伴い中断した印刷の印刷データを取得する手段と、中断した印刷が複数枚の用紙への印刷であるときに、取得した印刷データに基づき、中断した印刷を、最初の用紙への印刷から再開させる手段とを有する画像形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載された画像形成装置において、
搬送手段が用紙を搬送する複数の排紙部を備え、
制御手段が、搬送手段により、印刷再開後の用紙を、印刷中断前に用紙を搬送した排紙部とは異なる排紙部へ搬送させる手段を有する画像形成装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載された画像形成装置において、
搬送手段が用紙を搬送する複数の排紙部と、
停電時の搬送手段により、印刷未完了の用紙を、印刷完了の用紙を搬送する排紙部とは異なる排紙部へ搬送させる手段と、
を備えた画像形成装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載された画像形成装置において、
制御手段が、電源からの電力供給が再開したときに、停電が発生したときの印刷処理の状況、又は、印刷再開の処理手順を用紙に印刷して排紙部に排紙させる手段を有する画像形成装置。
【請求項8】
用紙に画像を印刷する印刷手段と、用紙を給紙部から印刷手段を経て排紙部まで搬送する搬送手段とを備え、電源から供給される電力により印刷手段と搬送手段を稼動させる画像形成装置の制御方法であって、
電源からの電力の供給が停止した停電時に、無停電電源装置から搬送手段に電力を供給させて、搬送中の用紙を排紙部まで搬送させる工程と、
停電が発生したときの印刷処理の状況を記憶手段に記憶させる工程と、
停電から復帰して電源からの電力供給が再開したときに、記憶手段の記憶情報に基づき、電力供給の再開に伴う復帰処理を行う工程と、
を有する画像形成装置の制御方法。
【請求項9】
請求項8に記載された画像形成装置の制御方法において、
前記復帰処理を行う工程が、正常な印刷が可能か否かを自己診断する工程、又は、搬送手段の用紙の搬送路をクリーニングする工程を有する画像形成装置の制御方法。
【請求項10】
請求項8又は9に記載された画像形成装置の制御方法において、
前記復帰処理を行う工程が、停電に伴い中断した印刷の印刷データを取得する工程と、中断した印刷が複数枚の用紙への印刷であるときに、取得した印刷データに基づき、中断した印刷を、印刷が完了した用紙の続きから、又は、最初の用紙への印刷から再開させる工程とを有する画像形成装置の制御方法。
【請求項11】
請求項8ないし10のいずれかに記載された画像形成装置の制御方法の各工程をコンピュータで実行させるためのプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載されたプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−63457(P2012−63457A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−206061(P2010−206061)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】