画像形成装置、補正値算出装置、濃度測定用テストチャート、及び補正値算出方法
【課題】記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読み取り装置の特性が均一でない場合であっても、適切な濃度ムラ補正値を算出する。
【解決手段】複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、前記出力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出された補正値に基づいて入力データを補正する補正手段と、前記補正された入力データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段とを備え、前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力する画像形成装置によって上記課題を解決する。
【解決手段】複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、前記出力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出された補正値に基づいて入力データを補正する補正手段と、前記補正された入力データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段とを備え、前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力する画像形成装置によって上記課題を解決する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、補正値算出装置、濃度測定用テストチャート、及び補正値算出方法に係り、特に記録素子の出力特性に応じて画像データを補正するための濃度ムラ補正値を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いて記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドに具備された多数のノズル(記録素子)が持つ吐出特性のばらつきによって、記録画像に濃度ムラ(濃度不均一)が生じ、画質上問題となる。
【0003】
この濃度ムラを補正するために、記録媒体上にテストパターンを形成し、形成したテストパターンの読取結果に基づいて各ノズルの補正値を算出し、算出した補正値に基づいて入力データを補正してインクを吐出することが行われている。
【0004】
特許文献1には、長尺ヘッドの各ノズルの補正値を算出する際に、液体吐出装置が第1ノズル群と第2ノズル群を用いて媒体に第1テストパターンを形成し、第2ノズル群と第3ノズル群を用いて媒体に第2テストパターンを形成し、第2ノズル群により形成された第1テストパターン、第2テストパターンの読取結果をそれぞれ第2読取階調値、第3読取階調値として取得し、第2読取階調値と第3読取階調値との平均値である平均階調値に基づいて、第2ノズル群の補正値を算出する補正値算出方法が開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、異なるスキャンで得られた、同じヘッド群の複数の読み取り情報を平均化することにより、読取精度を向上させることができ、最適な補正値を算出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−234115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インク吐出前に記録媒体上に塗布された処理液の塗布量が安定していない場合や、装置全体が振動する場合等、インクジェットヘッドと記録媒体との相対移動方向(ノズル列と直交する方向、以下、「記録媒体の搬送方向」と表す)の特定位置に横縞状の濃度ムラが発生する場合がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、このような濃度ムラが発生した場合には、1回にスキャンするデータがスキャン幅方向すべて変動してしまうので、平均化の効果を得ることができないという問題点があった。
【0009】
また、テストパターンを読み取るスキャナの特性の面内分布が均一でない場合についても、平均化の効果を得ることができない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読み取り装置の特性が均一でない場合であっても、適切な濃度ムラ補正値を算出することができる画像形成装置、補正値算出装置、濃度測定用テストチャート、及び補正値算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために請求項1に記載の画像形成装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、前記出力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出された補正値に基づいて入力データを補正する補正手段と、前記補正された入力データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、を備え、前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力し、出力した濃度測定用テストチャートを測定し、測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【0013】
請求項2に示すように請求項1に記載の画像形成装置において、前記算出手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の濃度パッチの測定値を平均化し、該平均化した値に基づいて当該階調値における補正値を算出することを特徴とする。
【0014】
これにより、複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートの測定結果から、適切な補正値を算出することができる。
【0015】
請求項3に示すように請求項1に記載の画像形成装置において、前記算出手段は、前記濃度測定用テストチャート毎に各階調値の補正値を算出し、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の補正値を平均化することで当該階調値における補正値を算出することを特徴とする。
【0016】
これにより、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートの測定結果から、適切な補正値を算出することができる。
【0017】
請求項4に示すように請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記濃度測定用テストチャートは、隣り合う濃度パッチの階調値の差が所定値以下となるように配置されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、光の散乱等による測定誤差を減少させることができる。
【0019】
請求項5に示すように請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記出力手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートをそれぞれ異なる記録媒体上に出力することを特徴とする。
【0020】
これにより、濃度パッチの記録媒体上の位置に寄らず、適切な補正値を算出することができる。
【0021】
請求項6に示すように請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記測定手段は、各濃度パッチを前記所定の幅だけ繰り返し測定し、得られた測定結果を前記所定の幅で平均化することを特徴とする。
【0022】
これにより、適切な補正値を算出することができる。
【0023】
前記目的を達成するために請求項7に記載の画像形成装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、を備え、前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの配置がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することが可能となる。
【0025】
前記目的を達成するために請求項8に記載の補正値算出装置は、記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力手段と、前記入力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出した補正値を出力する補正値出力手段と、を備え、前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、前記入力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを測定し、測定結果に基づいて濃度ムラを補正するための補正値を算出するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【0027】
前記目的を達成するために請求項9に記載の濃度測定用テストチャートは、記録素子の濃度を補正するために該記録素子により記録される複数のテストチャートからなる濃度測定用テストチャートであって、各テストチャートには、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが第1の方向に配置され、各濃度パッチはそれぞれ前記第1の方向に所定の幅を有し、該第1の方向と直交する第2の方向に階調が一定であり、前記各テストチャートは、各濃度パッチの配置順がそれぞれ異なることを特徴とする。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが第1の方向に配置され、各濃度パッチはそれぞれ前記第1の方向に所定の幅を有し、該第1の方向と直交する第2の方向に階調が一定であり、各濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる濃度測定用テストチャートを用いるようにしたので、これを測定することにより、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【0029】
前記目的を達成するために請求項10に記載の補正値算出方法は、記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力工程と、前記入力された濃度測定用テストチャートを測定する測定工程と、前記測定工程の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出工程と、前記算出した補正値を出力する補正値出力工程と、を備え、前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、前記入力工程は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを測定し、測定結果に基づいて濃度ムラを補正するための補正値を算出するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読み取り装置の特性が均一でない場合であっても、適切な濃度ムラ補正値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】濃度測定用テストチャートを示す平面図
【図2】第1の実施形態の濃度ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図3】第1の実施形態における測定データの平均化処理を示すフローチャート
【図4】ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態の濃度ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図6】第2の実施形態における測定データの平均化処理を示すフローチャート
【図7】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図
【図8】図7に示したインクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の要部平面図
【図9】(a)ヘッドの構造例を示す平面透視図 (b)図9(a)の要部拡大図 (c)フルライン型ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図10】図9(a)の4−4線に沿う断面図
【図11】図9(a)に示したヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図12】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
[濃度測定用テストチャート]
記録ヘッドが有する複数のノズルの濃度ムラを補正するために、各ノズルの濃度ムラ補正値を算出し、算出した濃度ムラ補正値に基づいて各ノズルに入力するデータの補正を行う。本実施形態では、3種類の濃度測定用テストチャートを出力し、読み取ったデータに基づいて各ノズルの濃度ムラ補正値を算出する。
【0035】
なお、濃度ムラ補正値の取得は、電源投入時等のユーザが指示したタイミングにおいて行われる。
【0036】
図1は、本実施形態に係る濃度測定用テストチャートを示す平面図である。即ち、3種類の濃度測定用テストチャートTA、TB、TCを示す平面図であり、ここでは、各色ヘッドのうち、1色のヘッドによって印字された濃度測定用テストチャートを示している。濃度測定用テストチャートは、搬送方向に搬送される記録媒体(用紙)に、長尺ヘッドの全てのノズルからインクを吐出して一度の走査において形成するものである。したがって、各濃度パッチの用紙搬送方向に直交する方向の長さは、ノズル列の幅と等しい。
【0037】
図1(a)に示すように、濃度測定用テストチャートTAは、ノズル列方向に階調値が一定であり、用紙搬送方向に所定の幅を有する濃度パッチを、用紙搬送方向に複数段(図ではA1〜A8の8段)印字したものである。各濃度パッチは、A1、A2、・・・、A7、A8の順に階調値が大きくなっており、テストチャート上では、印字順にA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7及びA8の順に配置されている。
【0038】
図1(b)に示すように、濃度測定用テストチャートTBは、濃度測定用テストチャートTAと同様に、ノズル列方向に階調値が一定で、用紙搬送方向に所定の幅を有するA1〜A8の8段の濃度パッチを印字したものである。また、各濃度パッチは、印字順にA3、A4、A5、A6、A7、A8、A2及びA1の順に配置されている。
【0039】
図1(c)に示すように、濃度測定用テストチャートTCについても、ノズル列方向に階調値が一定で、用紙搬送方向に所定の幅を有するA1〜A8の8段の濃度パッチを印字したものである。また、各濃度パッチは、印字順にA6、A7、A8、A5、A4、A3、A2及びA1の順に配置されている。
【0040】
このように、3種類の濃度測定用テストチャートTA、TB、TCは、同じ8段の濃度パッチを備えているが、当該8段の濃度パッチがそれぞれ異なる順番に配置されている。したがって、これら3種類の濃度測定用テストチャートTA、TB、TCがそれぞれ異なる用紙上に印字されることで、同じノズル群が描画する同じ階調値の濃度パッチが、紙面上においてノズル列方向の直交方向(搬送方向)に異なる位置に印字されることになる。
【0041】
なお、ここでは3種類の濃度測定用テストチャートを有し、各濃度測定用テストチャートには8段の濃度パッチを備えているが、テストチャートの種類の数や濃度パッチの段数は、これに限定されない。
【0042】
[測定データの平均化処理]
次に、第1の実施の形態の濃度ムラ補正値の算出処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
まず、用紙上に濃度測定用テストチャートTAを出力する(ステップS1)。次に、出力した濃度測定用テストチャートTAをスキャナにより読み取り(測定)を行う(ステップS2)。
【0044】
なお、濃度測定用テストチャートの測定は、スキャナの有する解像度における測定を濃度パッチの用紙搬送方向の幅の分だけ繰り返し行い、得られた測定値を平均化することにより行う。したがって、濃度パッチの用紙搬送方向の幅は広い方が安定した測定結果を得ることができる。しかし、用紙搬送方向の用紙長さとの兼ね合いにより、幅を広くすると濃度パッチの段数を減少させることになるので、濃度パッチの段数と幅は適宜バランスをとって決定する必要がある。
【0045】
次に、濃度測定用テストチャートTAを出力した用紙とは別の用紙上に、濃度測定用テストチャートTBの出力を行い(ステップS3)、出力した濃度測定用テストチャートTBをスキャナにより測定する(ステップS4)。同様に、さらに別の用紙上に、濃度測定用テストチャートTCの出力を行い(ステップS5)、出力した濃度測定用テストチャートTCをスキャナにより測定する(ステップS6)。
【0046】
ここでは、それぞれの濃度測定用テストチャートの出力と測定を繰り返しているが、3種類の濃度測定用テストチャートを連続して出力した後に、出力した濃度測定用テストチャートをまとめて測定を行ってもよい。
【0047】
次に、これらの測定結果から、濃度パッチA1〜A8毎の3つのテストチャートの平均値を算出する(ステップS7)。
【0048】
例えば、図3に示すように、上記ステップS2において測定した濃度測定用テストチャートTAから、濃度パッチA1の測定値を取得する(ステップS101)。また、上記ステップS4において測定した濃度測定用テストチャートTBから、濃度パッチA1の測定値を取得する(ステップS102)。同様に、上記ステップS6において測定した濃度測定用テストチャートTCから、濃度パッチA1の測定値を取得する(ステップS103)。
【0049】
この3つの測定値から、濃度パッチA1の測定値の平均値を算出する(ステップS104)。同様に、濃度パッチA2〜A8の測定値の平均値を算出する。
【0050】
[ムラ補正値の算出処理]
全濃度パッチの測定値の平均値の算出が終了したら、次に算出した平均値に基づいて各濃度パッチの階調値の濃度ムラ補正値を算出する(ステップS105)。ここでは、例として、濃度パッチA1の階調値の濃度ムラ補正値の算出処理を説明する。
【0051】
図4に示すように、まず、スキャナの濃度測定位置(例えば解像度=400dpi)をノズル位置(例えば解像度=1200dpi)に変換する(ステップS200)。次に、ステップS104において算出した濃度パッチA1の測定値の平均値と、ステップS200において変換したノズル位置とから、ノズル位置毎の濃度測定値D1を算出し、さらに事前に算出された目標濃度値D0との差分を算出する(ステップS202)。
【0052】
次に、画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、ステップS202において算出されたノズル位置毎の濃度値の差分を画素値の差分に変換する(ステップS204)。この画素値の差分を、濃度パッチA1における階調値のノズル位置毎の濃度ムラ補正値として記憶する(ステップS206)。
【0053】
このように、濃度パッチA1の階調値の濃度ムラ補正値が算出される。各濃度パッチA2〜A8の階調値のムラ補正値についても、同様に算出すればよい(ステップS101〜S105、ステップS8)。
【0054】
なお、濃度ムラ補正値の演算方法は上記の方法に限定されるものではなく、その他公知の算出方法によって算出してもよい。また、ここでは1色のヘッドについて説明しているが、複数色のヘッドを有する場合にも、同様に算出すればよい。
【0055】
以上のように、濃度パッチの配置が異なる複数の濃度測定用テストチャートを用いて濃度ムラ補正値を算出することで、用紙の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することが可能となる。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の濃度ムラ補正値の算出処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すフローチャートと共通する部分には共通の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
まず、第1の実施形態と同様に、用紙上に濃度測定用テストチャートTA、TB、Tcを出力し、それぞれをスキャナにより測定する(ステップS1〜S6)。
【0058】
次に、3種類のテストチャート毎に、濃度パッチD1〜D8毎のムラ補正値を算出する(ステップS11)。
【0059】
例えば、図6に示すように、ステップS2において測定した濃度測定用テストチャートTAから、濃度パッチA1の測定値を取得し(ステップS101)、取得した測定値に基づいて、濃度パッチA1の階調値のムラ補正値Aを算出する(ステップS111)。
【0060】
同様に、上記ステップS4において測定した濃度測定用テストチャートTBから、濃度パッチA1の測定値を取得し(ステップS102)、取得した測定値に基づいて、濃度パッチA1の階調値のムラ補正値Bを算出する(ステップS112)。さらに、上記ステップS6において測定した濃度測定用テストチャートTCから、濃度パッチA1の測定値を取得し(ステップS103)、取得した測定値に基づいて、濃度パッチA1の階調値のムラ補正値Cを算出する(ステップS113)。個々のムラ補正値の算出は、図4を用いて説明したように行えばよい。
【0061】
このように算出した3つのムラ補正値A、B、Cの平均値を算出し、最終的な濃度パッチA1の階調値の濃度ムラ補正値とする(ステップS114)。各濃度パッチA2〜A8の濃度ムラ補正値についても、同様に算出する(ステップS101〜S103、ステップS111〜S114、ステップS12)。
【0062】
このように、テストチャート毎に各濃度パッチの濃度ムラ補正値を演算した後、それらを平均化してもよい。
【0063】
[濃度測定用テストチャートの濃度パッチの配置]
次に、濃度測定用テストチャートの濃度パッチの配置の決定方法について、説明する。
【0064】
濃度測定用テストチャートの各濃度パッチは、スキャナにおける光の散乱等による測定誤差を減少させるために、階調が近い濃度パッチが隣接して配置されることが好ましい。
【0065】
また、複数の濃度測定用テストチャートにおいて、高い階調値である濃度パッチの搬送方向の位置は常に異なることが好ましいが、比較的低い階調値である濃度パッチの搬送方向の位置は、同じ位置であってもよい。低い階調値においては、高い階調値と比較して濃度ムラが目立たないためである。
【0066】
したがって、濃度測定用テストチャートの濃度パッチの配置を決定するには、最も濃い階調を持つ濃度パッチに注目して決定することが好ましい。
【0067】
例として、ここでは最も濃い階調値を持つ濃度パッチA8を印字順で5番目とした場合の、他の濃度パッチの配置の決定方法について説明する。
【0068】
濃度パッチA8を印字順で5番目としたことに伴い、濃度パッチA8の次に階調が高い濃度パッチA7を印字順で4番目、次に階調が高い濃度パッチA6を印字順で6番目とする。したがって、濃度パッチA8に隣接して配置される濃度パッチはA7、A6となる。即ち、隣り合う階調値の差が最大でも2段差以内となり、濃度パッチA8を測定する際の光の散乱の影響を最低限に抑えることができる。
【0069】
さらに、濃度パッチA5を印字順で3番目に配置することで、濃度パッチA7に隣接して配置される濃度パッチはA8、A5となり、隣り合う階調値の差を2段差以内とすることができる。
【0070】
同様に、濃度パッチA4を印字順で7番目に配置することで、濃度パッチA6に隣接して配置される濃度パッチはA8、A4となる。以下、濃度パッチA3を印字順で2番目、濃度パッチA2を印字順で8番目、濃度パッチA1を印字順で1番目に配置することで、隣り合う階調値の差を2段差以内とすることができる。そのため、それぞれの濃度パッチを測定する際の光の散乱の影響を最低限に抑えることができる。
【0071】
ここでは、階調値を8段階に分割し、8段の濃度パッチを出力した場合に隣り合う濃度パッチの階調値が最大で2段差となるように配置したが、上記と同様の方法により、階調値をn段階に分割した場合に、隣り合う濃度パッチの階調差が2段差以内となるように配置することができる。
【0072】
このように濃度パッチを配置することで、各濃度パッチを測定する際の光の散乱の影響を最低限に抑えることができる。また、複数の濃度測定用テストチャートを作成する際に、最も濃い階調値を持つ濃度パッチに注目して、優先的に配置を決定することで、最も濃い階調値を持つ濃度パッチの位置を、搬送方向において常に異なった位置に配置させることが可能となる。
【0073】
[インクジェット記録装置の構成]
次に、前述した濃度補正値の算出処理を行う画像記録装置の具体的な適用例としてのインクジェット記録装置について説明する。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する記録ヘッド112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記記録ヘッド112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、記録ヘッド112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0075】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0076】
図7では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0077】
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0078】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0079】
ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0080】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0081】
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図7に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
【0082】
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図12の符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図7上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図7の左から右へと搬送される。
【0083】
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0084】
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0085】
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において記録ヘッド112の上流側には、処理液付与部140が設けられている。処理液付与部140は、印字前の用紙の記録面に処理液を付与する機構であり、処理液は、後述するインク中の色材(顔料もしくは染料)を凝集又は増粘させる成分を含有している。処理液の付与方法としては、インクジェットヘッドによる打滴、ローラによる塗布、スプレーによる一様付与等、いずれでもよおい。
【0086】
記録ヘッド112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図8参照)。
【0087】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0088】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0089】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と記録ヘッド112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0090】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0091】
図7に示した印字検出部124は、記録ヘッド112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストチャート又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。前述した濃度測定用テストチャートの画像も、印字検出部124において読み取り(測定)が行われる。
【0092】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0093】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0094】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0095】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図7には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0096】
[ヘッドの構造]
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
【0097】
図9(a)は、ヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図9(b)は、図3(a)の一部の拡大図である。また、図9(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図であり、図10は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図9(a)の4−4線に沿う断面図)である。
【0098】
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図9(a)及び図9(b)に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0099】
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図9(a)の構成に代えて、図9(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0100】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図9(a)、図9(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0101】
図10に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0102】
圧力室152の一部の面(図10において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0103】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図11に示すように主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0104】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が一例で1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0105】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0106】
特に、図11に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151−11、151−12、151−13、151−14、151−15、151−16を1つのブロックとし(他にはノズル151−21、…、151−26を1つのブロック、ノズル151−31、…、151−36を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151−11、151−12、…、151−16を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
【0107】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0108】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(あるいは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0109】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0110】
[制御系の説明]
図12は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。
【0111】
図12に示すように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0112】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0113】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0114】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0115】
また、システムコントローラ172は、印字検出部124から読み込んだ濃度測定用テストチャートの読取データから各ノズルの濃度測定値を測定する。さらに、この測定した濃度測定値から各ノズルの濃度ムラ補正値を算出する。算出された濃度ムラ補正値は、濃度補正値記憶部190に記憶される。
【0116】
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(各濃度測定用テストチャートのデータを含む)などが格納されている。ROM175は、書き換え不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段であってもよい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175を濃度補正値記憶部190として兼用する構成も可能である。
【0117】
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0118】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
【0119】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0120】
すなわち、プリント制御部180は、濃度データ生成部180Aと、濃度補正部180Bと、インク吐出データ生成部180Cと、駆動波形生成部180Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(180A〜180D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
【0121】
濃度データ生成部180Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
【0122】
濃度補正部180Bは、濃度補正値記憶部190に格納されている濃度ムラ補正値を用いて濃度ムラ補正の演算を行う処理手段である。
【0123】
インク吐出データ生成部180Cは、濃度補正部180Bで生成された補正後の濃度データから2値(又は多値)のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。インク吐出データ生成部180Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド150のインク吐出動作が制御される。
【0124】
駆動波形生成部180Dは、ヘッド150の各ノズル151に対応したアクチュエータ158(図10参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0125】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図12において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0126】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
【0127】
インクジェット記録装置110では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180の濃度データ生成部180A、濃度補正部180B、インク吐出データ生成部180Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
【0128】
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0129】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0130】
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0131】
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0132】
印字検出部124は、図7で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。なお、濃度測定用テストチャート読み取り用の印字検出部をインクジェット記録装置110とは別に設けるようにしてもよい。
【0133】
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0134】
なお、図12で説明した濃度データ生成部180A、濃度補正部180Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ186側に搭載する態様も可能である。
【0135】
また、上記の実施形態では、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。即ち、本発明は、インクジェット記録装置以外の形式の画像記録装置、例えば、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタについても適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
10…ラインヘッド、110…インクジェット記録装置、112…記録ヘッド、112K,112C,112M,112Y…ヘッド、114…インク貯蔵/装填部、116…記録紙、122…ベルト搬送部(搬送手段)、124…印字検出部、150…ヘッド、151…ノズル(記録素子)、172…システムコントローラ、180…プリント制御部、180B…濃度補正部、184…ヘッドドライバ、190…濃度補正値記憶部
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、補正値算出装置、濃度測定用テストチャート、及び補正値算出方法に係り、特に記録素子の出力特性に応じて画像データを補正するための濃度ムラ補正値を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット方式を用いて記録媒体上に所望の画像を形成するインクジェット記録装置が知られている。インクジェット記録装置では、インクジェットヘッドに具備された多数のノズル(記録素子)が持つ吐出特性のばらつきによって、記録画像に濃度ムラ(濃度不均一)が生じ、画質上問題となる。
【0003】
この濃度ムラを補正するために、記録媒体上にテストパターンを形成し、形成したテストパターンの読取結果に基づいて各ノズルの補正値を算出し、算出した補正値に基づいて入力データを補正してインクを吐出することが行われている。
【0004】
特許文献1には、長尺ヘッドの各ノズルの補正値を算出する際に、液体吐出装置が第1ノズル群と第2ノズル群を用いて媒体に第1テストパターンを形成し、第2ノズル群と第3ノズル群を用いて媒体に第2テストパターンを形成し、第2ノズル群により形成された第1テストパターン、第2テストパターンの読取結果をそれぞれ第2読取階調値、第3読取階調値として取得し、第2読取階調値と第3読取階調値との平均値である平均階調値に基づいて、第2ノズル群の補正値を算出する補正値算出方法が開示されている。
【0005】
特許文献1によれば、異なるスキャンで得られた、同じヘッド群の複数の読み取り情報を平均化することにより、読取精度を向上させることができ、最適な補正値を算出することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−234115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
インク吐出前に記録媒体上に塗布された処理液の塗布量が安定していない場合や、装置全体が振動する場合等、インクジェットヘッドと記録媒体との相対移動方向(ノズル列と直交する方向、以下、「記録媒体の搬送方向」と表す)の特定位置に横縞状の濃度ムラが発生する場合がある。
【0008】
しかしながら、特許文献1の技術では、このような濃度ムラが発生した場合には、1回にスキャンするデータがスキャン幅方向すべて変動してしまうので、平均化の効果を得ることができないという問題点があった。
【0009】
また、テストパターンを読み取るスキャナの特性の面内分布が均一でない場合についても、平均化の効果を得ることができない。
【0010】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読み取り装置の特性が均一でない場合であっても、適切な濃度ムラ補正値を算出することができる画像形成装置、補正値算出装置、濃度測定用テストチャート、及び補正値算出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記目的を達成するために請求項1に記載の画像形成装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、前記出力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出された補正値に基づいて入力データを補正する補正手段と、前記補正された入力データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、を備え、前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力し、出力した濃度測定用テストチャートを測定し、測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【0013】
請求項2に示すように請求項1に記載の画像形成装置において、前記算出手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の濃度パッチの測定値を平均化し、該平均化した値に基づいて当該階調値における補正値を算出することを特徴とする。
【0014】
これにより、複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートの測定結果から、適切な補正値を算出することができる。
【0015】
請求項3に示すように請求項1に記載の画像形成装置において、前記算出手段は、前記濃度測定用テストチャート毎に各階調値の補正値を算出し、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の補正値を平均化することで当該階調値における補正値を算出することを特徴とする。
【0016】
これにより、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートの測定結果から、適切な補正値を算出することができる。
【0017】
請求項4に示すように請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置において、前記濃度測定用テストチャートは、隣り合う濃度パッチの階調値の差が所定値以下となるように配置されていることを特徴とする。
【0018】
これにより、光の散乱等による測定誤差を減少させることができる。
【0019】
請求項5に示すように請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置において、前記出力手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートをそれぞれ異なる記録媒体上に出力することを特徴とする。
【0020】
これにより、濃度パッチの記録媒体上の位置に寄らず、適切な補正値を算出することができる。
【0021】
請求項6に示すように請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置において、前記測定手段は、各濃度パッチを前記所定の幅だけ繰り返し測定し、得られた測定結果を前記所定の幅で平均化することを特徴とする。
【0022】
これにより、適切な補正値を算出することができる。
【0023】
前記目的を達成するために請求項7に記載の画像形成装置は、複数の記録素子を有する記録ヘッドと、前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、を備え、前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする。
【0024】
請求項7に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの配置がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することが可能となる。
【0025】
前記目的を達成するために請求項8に記載の補正値算出装置は、記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力手段と、前記入力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、前記算出した補正値を出力する補正値出力手段と、を備え、前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、前記入力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする。
【0026】
請求項8に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを測定し、測定結果に基づいて濃度ムラを補正するための補正値を算出するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【0027】
前記目的を達成するために請求項9に記載の濃度測定用テストチャートは、記録素子の濃度を補正するために該記録素子により記録される複数のテストチャートからなる濃度測定用テストチャートであって、各テストチャートには、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが第1の方向に配置され、各濃度パッチはそれぞれ前記第1の方向に所定の幅を有し、該第1の方向と直交する第2の方向に階調が一定であり、前記各テストチャートは、各濃度パッチの配置順がそれぞれ異なることを特徴とする。
【0028】
請求項9に記載の発明によれば、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが第1の方向に配置され、各濃度パッチはそれぞれ前記第1の方向に所定の幅を有し、該第1の方向と直交する第2の方向に階調が一定であり、各濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる濃度測定用テストチャートを用いるようにしたので、これを測定することにより、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【0029】
前記目的を達成するために請求項10に記載の補正値算出方法は、記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力工程と、前記入力された濃度測定用テストチャートを測定する測定工程と、前記測定工程の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出工程と、前記算出した補正値を出力する補正値出力工程と、を備え、前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、前記入力工程は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする。
【0030】
請求項10に記載の発明によれば、複数の濃度パッチの第1の方向の配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを測定し、測定結果に基づいて濃度ムラを補正するための補正値を算出するようにしたので、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、記録媒体の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読み取り装置の特性が均一でない場合であっても、適切な濃度ムラ補正値を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】濃度測定用テストチャートを示す平面図
【図2】第1の実施形態の濃度ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図3】第1の実施形態における測定データの平均化処理を示すフローチャート
【図4】ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図5】第2の実施形態の濃度ムラ補正値の算出処理を示すフローチャート
【図6】第2の実施形態における測定データの平均化処理を示すフローチャート
【図7】本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図
【図8】図7に示したインクジェット記録装置の記録ヘッド周辺の要部平面図
【図9】(a)ヘッドの構造例を示す平面透視図 (b)図9(a)の要部拡大図 (c)フルライン型ヘッドの他の構造例を示す平面透視図
【図10】図9(a)の4−4線に沿う断面図
【図11】図9(a)に示したヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図12】インクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0034】
[濃度測定用テストチャート]
記録ヘッドが有する複数のノズルの濃度ムラを補正するために、各ノズルの濃度ムラ補正値を算出し、算出した濃度ムラ補正値に基づいて各ノズルに入力するデータの補正を行う。本実施形態では、3種類の濃度測定用テストチャートを出力し、読み取ったデータに基づいて各ノズルの濃度ムラ補正値を算出する。
【0035】
なお、濃度ムラ補正値の取得は、電源投入時等のユーザが指示したタイミングにおいて行われる。
【0036】
図1は、本実施形態に係る濃度測定用テストチャートを示す平面図である。即ち、3種類の濃度測定用テストチャートTA、TB、TCを示す平面図であり、ここでは、各色ヘッドのうち、1色のヘッドによって印字された濃度測定用テストチャートを示している。濃度測定用テストチャートは、搬送方向に搬送される記録媒体(用紙)に、長尺ヘッドの全てのノズルからインクを吐出して一度の走査において形成するものである。したがって、各濃度パッチの用紙搬送方向に直交する方向の長さは、ノズル列の幅と等しい。
【0037】
図1(a)に示すように、濃度測定用テストチャートTAは、ノズル列方向に階調値が一定であり、用紙搬送方向に所定の幅を有する濃度パッチを、用紙搬送方向に複数段(図ではA1〜A8の8段)印字したものである。各濃度パッチは、A1、A2、・・・、A7、A8の順に階調値が大きくなっており、テストチャート上では、印字順にA1、A2、A3、A4、A5、A6、A7及びA8の順に配置されている。
【0038】
図1(b)に示すように、濃度測定用テストチャートTBは、濃度測定用テストチャートTAと同様に、ノズル列方向に階調値が一定で、用紙搬送方向に所定の幅を有するA1〜A8の8段の濃度パッチを印字したものである。また、各濃度パッチは、印字順にA3、A4、A5、A6、A7、A8、A2及びA1の順に配置されている。
【0039】
図1(c)に示すように、濃度測定用テストチャートTCについても、ノズル列方向に階調値が一定で、用紙搬送方向に所定の幅を有するA1〜A8の8段の濃度パッチを印字したものである。また、各濃度パッチは、印字順にA6、A7、A8、A5、A4、A3、A2及びA1の順に配置されている。
【0040】
このように、3種類の濃度測定用テストチャートTA、TB、TCは、同じ8段の濃度パッチを備えているが、当該8段の濃度パッチがそれぞれ異なる順番に配置されている。したがって、これら3種類の濃度測定用テストチャートTA、TB、TCがそれぞれ異なる用紙上に印字されることで、同じノズル群が描画する同じ階調値の濃度パッチが、紙面上においてノズル列方向の直交方向(搬送方向)に異なる位置に印字されることになる。
【0041】
なお、ここでは3種類の濃度測定用テストチャートを有し、各濃度測定用テストチャートには8段の濃度パッチを備えているが、テストチャートの種類の数や濃度パッチの段数は、これに限定されない。
【0042】
[測定データの平均化処理]
次に、第1の実施の形態の濃度ムラ補正値の算出処理について、図2のフローチャートを用いて説明する。
【0043】
まず、用紙上に濃度測定用テストチャートTAを出力する(ステップS1)。次に、出力した濃度測定用テストチャートTAをスキャナにより読み取り(測定)を行う(ステップS2)。
【0044】
なお、濃度測定用テストチャートの測定は、スキャナの有する解像度における測定を濃度パッチの用紙搬送方向の幅の分だけ繰り返し行い、得られた測定値を平均化することにより行う。したがって、濃度パッチの用紙搬送方向の幅は広い方が安定した測定結果を得ることができる。しかし、用紙搬送方向の用紙長さとの兼ね合いにより、幅を広くすると濃度パッチの段数を減少させることになるので、濃度パッチの段数と幅は適宜バランスをとって決定する必要がある。
【0045】
次に、濃度測定用テストチャートTAを出力した用紙とは別の用紙上に、濃度測定用テストチャートTBの出力を行い(ステップS3)、出力した濃度測定用テストチャートTBをスキャナにより測定する(ステップS4)。同様に、さらに別の用紙上に、濃度測定用テストチャートTCの出力を行い(ステップS5)、出力した濃度測定用テストチャートTCをスキャナにより測定する(ステップS6)。
【0046】
ここでは、それぞれの濃度測定用テストチャートの出力と測定を繰り返しているが、3種類の濃度測定用テストチャートを連続して出力した後に、出力した濃度測定用テストチャートをまとめて測定を行ってもよい。
【0047】
次に、これらの測定結果から、濃度パッチA1〜A8毎の3つのテストチャートの平均値を算出する(ステップS7)。
【0048】
例えば、図3に示すように、上記ステップS2において測定した濃度測定用テストチャートTAから、濃度パッチA1の測定値を取得する(ステップS101)。また、上記ステップS4において測定した濃度測定用テストチャートTBから、濃度パッチA1の測定値を取得する(ステップS102)。同様に、上記ステップS6において測定した濃度測定用テストチャートTCから、濃度パッチA1の測定値を取得する(ステップS103)。
【0049】
この3つの測定値から、濃度パッチA1の測定値の平均値を算出する(ステップS104)。同様に、濃度パッチA2〜A8の測定値の平均値を算出する。
【0050】
[ムラ補正値の算出処理]
全濃度パッチの測定値の平均値の算出が終了したら、次に算出した平均値に基づいて各濃度パッチの階調値の濃度ムラ補正値を算出する(ステップS105)。ここでは、例として、濃度パッチA1の階調値の濃度ムラ補正値の算出処理を説明する。
【0051】
図4に示すように、まず、スキャナの濃度測定位置(例えば解像度=400dpi)をノズル位置(例えば解像度=1200dpi)に変換する(ステップS200)。次に、ステップS104において算出した濃度パッチA1の測定値の平均値と、ステップS200において変換したノズル位置とから、ノズル位置毎の濃度測定値D1を算出し、さらに事前に算出された目標濃度値D0との差分を算出する(ステップS202)。
【0052】
次に、画素値と濃度値との対応関係を示す画素値−濃度値曲線に従って、ステップS202において算出されたノズル位置毎の濃度値の差分を画素値の差分に変換する(ステップS204)。この画素値の差分を、濃度パッチA1における階調値のノズル位置毎の濃度ムラ補正値として記憶する(ステップS206)。
【0053】
このように、濃度パッチA1の階調値の濃度ムラ補正値が算出される。各濃度パッチA2〜A8の階調値のムラ補正値についても、同様に算出すればよい(ステップS101〜S105、ステップS8)。
【0054】
なお、濃度ムラ補正値の演算方法は上記の方法に限定されるものではなく、その他公知の算出方法によって算出してもよい。また、ここでは1色のヘッドについて説明しているが、複数色のヘッドを有する場合にも、同様に算出すればよい。
【0055】
以上のように、濃度パッチの配置が異なる複数の濃度測定用テストチャートを用いて濃度ムラ補正値を算出することで、用紙の搬送方向の特定位置に濃度ムラが発生する場合や、読取装置の特性が均一でない場合であっても、これらの影響を低減させた濃度ムラ補正値を算出することが可能となる。
【0056】
[第2の実施形態]
第2の実施形態の濃度ムラ補正値の算出処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。なお、図2に示すフローチャートと共通する部分には共通の符号を付し、詳細な説明は省略する。
【0057】
まず、第1の実施形態と同様に、用紙上に濃度測定用テストチャートTA、TB、Tcを出力し、それぞれをスキャナにより測定する(ステップS1〜S6)。
【0058】
次に、3種類のテストチャート毎に、濃度パッチD1〜D8毎のムラ補正値を算出する(ステップS11)。
【0059】
例えば、図6に示すように、ステップS2において測定した濃度測定用テストチャートTAから、濃度パッチA1の測定値を取得し(ステップS101)、取得した測定値に基づいて、濃度パッチA1の階調値のムラ補正値Aを算出する(ステップS111)。
【0060】
同様に、上記ステップS4において測定した濃度測定用テストチャートTBから、濃度パッチA1の測定値を取得し(ステップS102)、取得した測定値に基づいて、濃度パッチA1の階調値のムラ補正値Bを算出する(ステップS112)。さらに、上記ステップS6において測定した濃度測定用テストチャートTCから、濃度パッチA1の測定値を取得し(ステップS103)、取得した測定値に基づいて、濃度パッチA1の階調値のムラ補正値Cを算出する(ステップS113)。個々のムラ補正値の算出は、図4を用いて説明したように行えばよい。
【0061】
このように算出した3つのムラ補正値A、B、Cの平均値を算出し、最終的な濃度パッチA1の階調値の濃度ムラ補正値とする(ステップS114)。各濃度パッチA2〜A8の濃度ムラ補正値についても、同様に算出する(ステップS101〜S103、ステップS111〜S114、ステップS12)。
【0062】
このように、テストチャート毎に各濃度パッチの濃度ムラ補正値を演算した後、それらを平均化してもよい。
【0063】
[濃度測定用テストチャートの濃度パッチの配置]
次に、濃度測定用テストチャートの濃度パッチの配置の決定方法について、説明する。
【0064】
濃度測定用テストチャートの各濃度パッチは、スキャナにおける光の散乱等による測定誤差を減少させるために、階調が近い濃度パッチが隣接して配置されることが好ましい。
【0065】
また、複数の濃度測定用テストチャートにおいて、高い階調値である濃度パッチの搬送方向の位置は常に異なることが好ましいが、比較的低い階調値である濃度パッチの搬送方向の位置は、同じ位置であってもよい。低い階調値においては、高い階調値と比較して濃度ムラが目立たないためである。
【0066】
したがって、濃度測定用テストチャートの濃度パッチの配置を決定するには、最も濃い階調を持つ濃度パッチに注目して決定することが好ましい。
【0067】
例として、ここでは最も濃い階調値を持つ濃度パッチA8を印字順で5番目とした場合の、他の濃度パッチの配置の決定方法について説明する。
【0068】
濃度パッチA8を印字順で5番目としたことに伴い、濃度パッチA8の次に階調が高い濃度パッチA7を印字順で4番目、次に階調が高い濃度パッチA6を印字順で6番目とする。したがって、濃度パッチA8に隣接して配置される濃度パッチはA7、A6となる。即ち、隣り合う階調値の差が最大でも2段差以内となり、濃度パッチA8を測定する際の光の散乱の影響を最低限に抑えることができる。
【0069】
さらに、濃度パッチA5を印字順で3番目に配置することで、濃度パッチA7に隣接して配置される濃度パッチはA8、A5となり、隣り合う階調値の差を2段差以内とすることができる。
【0070】
同様に、濃度パッチA4を印字順で7番目に配置することで、濃度パッチA6に隣接して配置される濃度パッチはA8、A4となる。以下、濃度パッチA3を印字順で2番目、濃度パッチA2を印字順で8番目、濃度パッチA1を印字順で1番目に配置することで、隣り合う階調値の差を2段差以内とすることができる。そのため、それぞれの濃度パッチを測定する際の光の散乱の影響を最低限に抑えることができる。
【0071】
ここでは、階調値を8段階に分割し、8段の濃度パッチを出力した場合に隣り合う濃度パッチの階調値が最大で2段差となるように配置したが、上記と同様の方法により、階調値をn段階に分割した場合に、隣り合う濃度パッチの階調差が2段差以内となるように配置することができる。
【0072】
このように濃度パッチを配置することで、各濃度パッチを測定する際の光の散乱の影響を最低限に抑えることができる。また、複数の濃度測定用テストチャートを作成する際に、最も濃い階調値を持つ濃度パッチに注目して、優先的に配置を決定することで、最も濃い階調値を持つ濃度パッチの位置を、搬送方向において常に異なった位置に配置させることが可能となる。
【0073】
[インクジェット記録装置の構成]
次に、前述した濃度補正値の算出処理を行う画像記録装置の具体的な適用例としてのインクジェット記録装置について説明する。
【0074】
図7は、本発明の一実施形態に係る画像処理装置を適用したインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示すように、本実施形態に係るインクジェット記録装置110は、黒(K),シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y)の各インクに対応して設けられた複数のインクジェット記録ヘッド(以下、ヘッドという。)112K,112C,112M,112Yを有する記録ヘッド112と、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部114と、記録媒体たる記録紙116を供給する給紙部118と、記録紙116のカールを除去するデカール処理部120と、前記記録ヘッド112のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙116の平面性を保持しながら記録紙116を搬送するベルト搬送部122と、記録ヘッド112による印字結果を読み取る印字検出部124と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部126とを備えている。
【0075】
インク貯蔵/装填部114は、各ヘッド112K,112C,112M,112Yに対応する色のインクを貯蔵するインクタンクを有し、各タンクは所要の管路を介してヘッド112K,112C,112M,112Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部114は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0076】
図7では、給紙部118の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0077】
複数種類の記録媒体(メディア)を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0078】
給紙部118から送り出される記録紙116はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部120においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム130で記録紙116に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0079】
ロール紙を使用する装置構成の場合、裁断用のカッター(第1のカッター)128が設けられており、該カッター128によってロール紙は所望のサイズにカットされる。なお、カット紙を使用する場合には、カッター128は不要である。
【0080】
デカール処理後、カットされた記録紙116は、ベルト搬送部122へと送られる。ベルト搬送部122は、ローラ131、132間に無端状のベルト133が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0081】
ベルト133は、記録紙116の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図7に示したとおり、ローラ131、132間に掛け渡されたベルト133の内側において記録ヘッド112のノズル面及び印字検出部124のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ134が設けられており、この吸着チャンバ134をファン135で吸引して負圧にすることによって記録紙116がベルト133上に吸着保持される。なお、吸引吸着方式に代えて、静電吸着方式を採用してもよい。
【0082】
ベルト133が巻かれているローラ131、132の少なくとも一方にモータ(図12の符号188)の動力が伝達されることにより、ベルト133は図7上の時計回り方向に駆動され、ベルト133上に保持された記録紙116は図7の左から右へと搬送される。
【0083】
縁無しプリント等を印字するとベルト133上にもインクが付着するので、ベルト133の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部136が設けられている。ベルト清掃部136の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組合せなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0084】
なお、ベルト搬送部122に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0085】
ベルト搬送部122により形成される用紙搬送路上において記録ヘッド112の上流側には、処理液付与部140が設けられている。処理液付与部140は、印字前の用紙の記録面に処理液を付与する機構であり、処理液は、後述するインク中の色材(顔料もしくは染料)を凝集又は増粘させる成分を含有している。処理液の付与方法としては、インクジェットヘッドによる打滴、ローラによる塗布、スプレーによる一様付与等、いずれでもよおい。
【0086】
記録ヘッド112の各ヘッド112K,112C,112M,112Yは、当該インクジェット記録装置110が対象とする記録紙116の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図8参照)。
【0087】
ヘッド112K,112C,112M,112Yは、記録紙116の送り方向に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の色順に配置され、それぞれのヘッド112K,112C,112M,112Yが記録紙116の搬送方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
【0088】
ベルト搬送部122により記録紙116を搬送しつつ各ヘッド112K,112C,112M,112Yからそれぞれ異色のインクを吐出することにより記録紙116上にカラー画像を形成し得る。
【0089】
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド112K,112C,112M,112Yを色別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録紙116と記録ヘッド112を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙116の全面に画像を記録することができる。これにより、記録ヘッドが紙搬送方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0090】
本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組合せについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
【0091】
図7に示した印字検出部124は、記録ヘッド112の打滴結果を撮像するためのイメージセンサ(ラインセンサ又はエリアセンサ)を含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりや着弾位置誤差などの吐出特性をチェックする手段として機能する。各色のヘッド112K,112C,112M,112Yにより印字されたテストチャート又は実技画像が印字検出部124により読み取られ、各ヘッドの吐出判定が行われる。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。前述した濃度測定用テストチャートの画像も、印字検出部124において読み取り(測定)が行われる。
【0092】
印字検出部124の後段には後乾燥部142が設けられている。後乾燥部142は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0093】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0094】
後乾燥部142の後段には、加熱・加圧部144が設けられている。加熱・加圧部144は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ145で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0095】
こうして生成されたプリント物は排紙部126から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置110では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部126A、126Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)148によってテスト印字の部分を切り離す。また、図7には示さないが、本画像の排出部126Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0096】
[ヘッドの構造]
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド112K,112C,112M,112Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号150によってヘッドを示すものとする。
【0097】
図9(a)は、ヘッド150の構造例を示す平面透視図であり、図9(b)は、図3(a)の一部の拡大図である。また、図9(c)はヘッド150の他の構造例を示す平面透視図であり、図10は1つの液滴吐出素子(1つのノズル151に対応したインク室ユニット)の立体的構成を示す断面図(図9(a)の4−4線に沿う断面図)である。
【0098】
記録紙116上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド150におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド150は、図9(a)及び図9(b)に示したように、インク吐出口であるノズル151と、各ノズル151に対応する圧力室152等からなる複数のインク室ユニット(液滴吐出素子)153を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送り方向と直交する方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
【0099】
記録紙116の送り方向と略直交する方向に記録紙116の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図9(a)の構成に代えて、図9(c)に示すように、複数のノズル151が2次元に配列された短尺のヘッドモジュール150’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録紙116の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
【0100】
各ノズル151に対応して設けられている圧力室152は、その平面形状が概略正方形となっており(図9(a)、図9(b)参照)、対角線上の両隅部の一方にノズル151への流出口が設けられ、他方に供給インクの流入口(供給口)154が設けられている。なお、圧力室152の形状は、本例に限定されず、平面形状が四角形(菱形、長方形など)、五角形、六角形その他の多角形、円形、楕円形など、多様な形態があり得る。
【0101】
図10に示したように、各圧力室152は供給口154を介して共通流路155と連通されている。共通流路155はインク供給源たるインクタンク(不図示)と連通しており、インクタンクから供給されるインクは共通流路155を介して各圧力室152に分配供給される。
【0102】
圧力室152の一部の面(図10において天面)を構成している加圧板(共通電極と兼用される振動板)156には個別電極157を備えたアクチュエータ158が接合されている。個別電極157と共通電極間に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ158が変形して圧力室152の容積が変化し、これに伴う圧力変化によりノズル151からインクが吐出される。なお、アクチュエータ158には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電体を用いた圧電素子が好適に用いられる。インク吐出後、アクチュエータ158の変位が元に戻る際に、共通流路155から供給口154を通って新しいインクが圧力室152に再充填される。
【0103】
上述した構造を有するインク室ユニット153を図11に示すように主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向とに沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
【0104】
すなわち、主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット153を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd×cosθとなり、主走査方向については、各ノズル151が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が一例で1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。
【0105】
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、用紙の幅方向(用紙の搬送方向と直交する方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0106】
特に、図11に示すようなマトリクス状に配置されたノズル151を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。すなわち、ノズル151−11、151−12、151−13、151−14、151−15、151−16を1つのブロックとし(他にはノズル151−21、…、151−26を1つのブロック、ノズル151−31、…、151−36を1つのブロック、…として)、記録紙116の搬送速度に応じてノズル151−11、151−12、…、151−16を順次駆動することで記録紙116の幅方向に1ラインを印字する。
【0107】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットからなるライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0108】
そして、上述の主走査によって記録される1ライン(あるいは帯状領域の長手方向)の示す方向を主走査方向といい、上述の副走査を行う方向を副走査方向という。すなわち、本実施形態では、記録紙116の搬送方向が副走査方向であり、それに直交する方向が主走査方向ということになる。
【0109】
本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。また、本実施形態では、ピエゾ素子(圧電素子)に代表されるアクチュエータ158の変形によってインク滴を飛ばす方式が採用されているが、本発明の実施に際して、インクを吐出させる方式は特に限定されず、ピエゾジェット方式に代えて、ヒータなどの発熱体によってインクを加熱して気泡を発生させ、その圧力でインク滴を飛ばすサーマルジェット方式など、各種方式を適用できる。
【0110】
[制御系の説明]
図12は、インクジェット記録装置110のシステム構成を示すブロック図である。
【0111】
図12に示すように、インクジェット記録装置110は、通信インターフェース170、システムコントローラ172、画像メモリ174、ROM175、モータドライバ176、ヒータドライバ178、プリント制御部180、画像バッファメモリ182、ヘッドドライバ184等を備えている。
【0112】
通信インターフェース170は、ホストコンピュータ186から送られてくる画像データを受信するインターフェース部(画像入力手段)である。通信インターフェース170にはUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、イーサネット(登録商標)、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。
【0113】
ホストコンピュータ186から送出された画像データは通信インターフェース170を介してインクジェット記録装置110に取り込まれ、一旦画像メモリ174に記憶される。画像メモリ174は、通信インターフェース170を介して入力された画像を格納する記憶手段であり、システムコントローラ172を通じてデータの読み書きが行われる。画像メモリ174は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0114】
システムコントローラ172は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置110の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。すなわち、システムコントローラ172は、通信インターフェース170、画像メモリ174、モータドライバ176、ヒータドライバ178等の各部を制御し、ホストコンピュータ186との間の通信制御、画像メモリ174及びROM175の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ188やヒータ189を制御する制御信号を生成する。
【0115】
また、システムコントローラ172は、印字検出部124から読み込んだ濃度測定用テストチャートの読取データから各ノズルの濃度測定値を測定する。さらに、この測定した濃度測定値から各ノズルの濃度ムラ補正値を算出する。算出された濃度ムラ補正値は、濃度補正値記憶部190に記憶される。
【0116】
ROM175には、システムコントローラ172のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データ(各濃度測定用テストチャートのデータを含む)などが格納されている。ROM175は、書き換え不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書き換え可能な記憶手段であってもよい。また、このROM175の記憶領域を活用することで、ROM175を濃度補正値記憶部190として兼用する構成も可能である。
【0117】
画像メモリ174は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
【0118】
モータドライバ176は、システムコントローラ172からの指示に従って搬送系のモータ188を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ178は、システムコントローラ172からの指示に従って後乾燥部142等のヒータ189を駆動するドライバである。
【0119】
プリント制御部180は、システムコントローラ172の制御に従い、画像メモリ174内の画像データ(多値の入力画像のデータ)から打滴制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理手段として機能するとともに、生成したインク吐出データをヘッドドライバ184に供給してヘッド150の吐出駆動を制御する駆動制御手段として機能する。
【0120】
すなわち、プリント制御部180は、濃度データ生成部180Aと、濃度補正部180Bと、インク吐出データ生成部180Cと、駆動波形生成部180Dとを含んで構成される。これら各機能ブロック(180A〜180D)は、ASICやソフトウエア又は適宜の組み合わせによって実現可能である。
【0121】
濃度データ生成部180Aは、入力画像のデータからインク色別の初期の濃度データを生成する信号処理手段であり、濃度変換処理(UCR処理や色変換を含む)及び必要な場合には画素数変換処理を行う。
【0122】
濃度補正部180Bは、濃度補正値記憶部190に格納されている濃度ムラ補正値を用いて濃度ムラ補正の演算を行う処理手段である。
【0123】
インク吐出データ生成部180Cは、濃度補正部180Bで生成された補正後の濃度データから2値(又は多値)のドットデータに変換するハーフトーニング処理手段を含む信号処理手段であり、2値(多値)化処理を行う。インク吐出データ生成部180Cで生成されたインク吐出データはヘッドドライバ184に与えられ、ヘッド150のインク吐出動作が制御される。
【0124】
駆動波形生成部180Dは、ヘッド150の各ノズル151に対応したアクチュエータ158(図10参照)を駆動するための駆動信号波形を生成する手段であり、該駆動波形生成部180Dで生成された信号(駆動波形)は、ヘッドドライバ184に供給される。なお、駆動波形生成部180Dから出力される信号は、デジタル波形データであってもよいし、アナログ電圧信号であってもよい。
【0125】
プリント制御部180には画像バッファメモリ182が備えられており、プリント制御部180における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ182に一時的に格納される。なお、図12において画像バッファメモリ182はプリント制御部180に付随する態様で示されているが、画像メモリ174と兼用することも可能である。また、プリント制御部180とシステムコントローラ172とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0126】
画像入力から印字出力までの処理の流れを概説すると、印刷すべき画像のデータは、通信インターフェース170を介して外部から入力され、画像メモリ174に蓄えられる。この段階では、例えば、RGBの多値の画像データが画像メモリ174に記憶される。
【0127】
インクジェット記録装置110では、インク(色材)による微細なドットの打滴密度やドットサイズを変えることによって、人の目に疑似的な連続階調の画像を形成するため、入力されたデジタル画像の階調(画像の濃淡)をできるだけ忠実に再現するようなドットパターンに変換する必要がある。そのため、画像メモリ174に蓄えられた元画像(RGB)のデータは、システムコントローラ172を介してプリント制御部180に送られ、該プリント制御部180の濃度データ生成部180A、濃度補正部180B、インク吐出データ生成部180Cを経てインク色ごとのドットデータに変換される。
【0128】
すなわち、プリント制御部180は、入力されたRGB画像データをK,C,M,Yの4色のドットデータに変換する処理を行う。こうして、プリント制御部180で生成されたドットデータは、画像バッファメモリ182に蓄えられる。この色別ドットデータは、ヘッド150のノズルからインクを吐出するためのCMYK打滴データに変換され、印字されるインク吐出データが確定する。
【0129】
ヘッドドライバ184は、プリント制御部180から与えられるインク吐出データ及び駆動波形の信号に基づき、印字内容に応じてヘッド150の各ノズル151に対応するアクチュエータ158を駆動するための駆動信号を出力する。ヘッドドライバ184にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0130】
こうして、ヘッドドライバ184から出力された駆動信号がヘッド150に加えられることによって、該当するノズル151からインクが吐出される。記録紙116の搬送速度に同期してヘッド150からのインク吐出を制御することにより、記録紙116上に画像が形成される。
【0131】
上記のように、プリント制御部180における所要の信号処理を経て生成されたインク吐出データ及び駆動信号波形に基づき、ヘッドドライバ184を介して各ノズルからのインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0132】
印字検出部124は、図7で説明したように、イメージセンサを含むブロックであり、記録紙116に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつき、光学濃度など)を検出し、その検出結果をプリント制御部180及びシステムコントローラ172に提供する。なお、濃度測定用テストチャート読み取り用の印字検出部をインクジェット記録装置110とは別に設けるようにしてもよい。
【0133】
プリント制御部180は、必要に応じて印字検出部124から得られる情報に基づいてヘッド150に対する各種補正を行うとともに、必要に応じて予備吐出や吸引、ワイピング等のクリーニング動作(ノズル回復動作)を実施する制御を行う。
【0134】
なお、図12で説明した濃度データ生成部180A、濃度補正部180Bが担う処理機能の全て又は一部をホストコンピュータ186側に搭載する態様も可能である。
【0135】
また、上記の実施形態では、本発明をインクジェット記録装置に適用した場合について説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されるものではない。即ち、本発明は、インクジェット記録装置以外の形式の画像記録装置、例えば、サーマル素子を記録素子とする記録ヘッドを備えた熱転写記録装置、LED素子を記録素子とする記録ヘッドを備えたLED電子写真プリンタ、LEDライン露光ヘッドを有する銀塩写真方式プリンタについても適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
10…ラインヘッド、110…インクジェット記録装置、112…記録ヘッド、112K,112C,112M,112Y…ヘッド、114…インク貯蔵/装填部、116…記録紙、122…ベルト搬送部(搬送手段)、124…印字検出部、150…ヘッド、151…ノズル(記録素子)、172…システムコントローラ、180…プリント制御部、180B…濃度補正部、184…ヘッドドライバ、190…濃度補正値記憶部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、
前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、
前記出力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出された補正値に基づいて入力データを補正する補正手段と、
前記補正された入力データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、
を備え、
前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の濃度パッチの測定値を平均化し、該平均化した値に基づいて当該階調値における補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記濃度測定用テストチャート毎に各階調値の補正値を算出し、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の補正値を平均化することで当該階調値における補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記濃度測定用テストチャートは、隣り合う濃度パッチの階調値の差が所定値以下となるように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートをそれぞれ異なる記録媒体上に出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記測定手段は、各濃度パッチを前記所定の幅だけ繰り返し測定し、得られた測定結果を前記所定の幅で平均化することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、
前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、
を備え、
前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力手段と、
前記入力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出した補正値を出力する補正値出力手段と、
を備え、
前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、
前記入力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする補正値算出装置。
【請求項9】
記録素子の濃度を補正するために該記録素子により記録される複数のテストチャートからなる濃度測定用テストチャートであって、
各テストチャートには、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが第1の方向に配置され、
各濃度パッチはそれぞれ前記第1の方向に所定の幅を有し、該第1の方向と直交する第2の方向に階調が一定であり、
前記各テストチャートは、各濃度パッチの配置順がそれぞれ異なることを特徴とする濃度測定用テストチャート。
【請求項10】
記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力工程と、
前記入力された濃度測定用テストチャートを測定する測定工程と、
前記測定工程の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出工程と、
前記算出した補正値を出力する補正値出力工程と、
を備え、
前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、
前記入力工程は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする補正値算出方法。
【請求項1】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、
前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、
前記出力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出された補正値に基づいて入力データを補正する補正手段と、
前記補正された入力データに基づいて前記記録ヘッドを駆動する駆動手段と、
を備え、
前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記算出手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の濃度パッチの測定値を平均化し、該平均化した値に基づいて当該階調値における補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記算出手段は、前記濃度測定用テストチャート毎に各階調値の補正値を算出し、前記複数の濃度測定用テストチャートにおける同じ階調値の補正値を平均化することで当該階調値における補正値を算出することを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記濃度測定用テストチャートは、隣り合う濃度パッチの階調値の差が所定値以下となるように配置されていることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記出力手段は、前記複数の濃度測定用テストチャートをそれぞれ異なる記録媒体上に出力することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記測定手段は、各濃度パッチを前記所定の幅だけ繰り返し測定し、得られた測定結果を前記所定の幅で平均化することを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
複数の記録素子を有する記録ヘッドと、
前記記録ヘッドと記録媒体とを第1の方向に相対移動させる移動手段と、
前記第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置された濃度測定用テストチャートを前記記録ヘッドの各記録素子により記録媒体上に出力する出力手段と、
を備え、
前記出力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを出力することを特徴とする画像形成装置。
【請求項8】
記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力手段と、
前記入力した濃度測定用テストチャートを測定する測定手段と、
前記測定手段の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出手段と、
前記算出した補正値を出力する補正値出力手段と、
を備え、
前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、
前記入力手段は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする補正値算出装置。
【請求項9】
記録素子の濃度を補正するために該記録素子により記録される複数のテストチャートからなる濃度測定用テストチャートであって、
各テストチャートには、階調値が段階的に異なる複数の濃度パッチが第1の方向に配置され、
各濃度パッチはそれぞれ前記第1の方向に所定の幅を有し、該第1の方向と直交する第2の方向に階調が一定であり、
前記各テストチャートは、各濃度パッチの配置順がそれぞれ異なることを特徴とする濃度測定用テストチャート。
【請求項10】
記録ヘッドの各記録素子により記録された濃度測定用テストチャートを入力する入力工程と、
前記入力された濃度測定用テストチャートを測定する測定工程と、
前記測定工程の測定結果に基づいて、階調値毎の濃度ムラを補正するための補正値を算出する算出工程と、
前記算出した補正値を出力する補正値出力工程と、
を備え、
前記濃度測定用テストチャートは、第1の方向に所定の幅を持った濃度パッチであって、階調値が異なる複数の濃度パッチが前記第1の方向に配置されており、
前記入力工程は、前記複数の濃度パッチの配置順がそれぞれ異なる複数の濃度測定用テストチャートを入力することを特徴とする補正値算出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−66457(P2012−66457A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212459(P2010−212459)
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月22日(2010.9.22)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】
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