説明

画像形成装置およびその制御方法

【課題】画像の形成を開始する際の吐出ヘッドの移動ロスを少なくして画像の形成をよりスムーズに開始する。
【解決手段】1パス目の印刷データから1パス目に形成するドットの両端部の位置(右端位置Rp,左端位置Lp)を判定し(S100,110)、判定した右端位置Rpと左端位置Lpとのうち吐出ヘッドを搭載するキャリッジの現在位置Gpに近い位置が印刷開始位置となるよう1パス目の移動方向を設定すると共に待機位置Tpを設定し(S120〜S190)、設定した待機位置Tpにキャリッジを移動させて(S200)、給紙処理を行ない印刷処理を実行する(S210,220)。これにより、キャリッジの待機位置Tpを印刷開始位置の近くの位置として、印刷処理を開始する際に吐出ヘッドを速やかに印刷開始位置まで移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置およびその制御方法に関し、詳しくは、液体を吐出する吐出ヘッドを搭載したキャリッジを備え、パス毎に用紙を所定量ずつ搬送すると共に該搬送の方向と直交する方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから前記用紙に液体を吐出することにより複数のドットを画像として形成する画像形成装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の画像形成装置としては、サイズの異なる複数種類の記録用紙をその中央位置を基準として搬送しながら搬送方向と直交する方向に吐出ヘッドを走査して印刷を行なう装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。この装置では、使用される記録用紙の端部の位置に応じた待機位置に吐出ヘッドを待機させておき、記録用紙の給紙が完了したときに待機位置に待機させていた吐出ヘッドを移動させて印刷を開始する。これにより、印刷開始時に吐出ヘッドがインクを吐出することなく移動する距離を短くして、吐出ヘッドをロスなく移動させることにより、スムーズに印刷を開始することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−241261号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した画像形成装置では、印刷を開始する位置が記録用紙の端部近傍にある場合には効果を得ることができるが、印刷を開始する位置によっては印刷開始時の吐出ヘッドの移動ロスをそれほど小さくすることができず期待するほどの効果を得られない場合がある。
【0005】
本発明の画像形成装置およびその制御方法は、画像の形成を開始する際の吐出ヘッドの移動ロスを少なくして画像の形成をよりスムーズに開始することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の画像形成装置およびその制御方法は、上述の主目的を達成するために以下の手段を採った。
【0007】
本発明の画像形成装置は、
液体を吐出する吐出ヘッドを搭載したキャリッジを備え、パス毎に用紙を所定量ずつ搬送すると共に該搬送の方向と直交する方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから前記用紙に液体を吐出することにより複数のドットを画像として形成する画像形成装置であって、
前記キャリッジを移動させる移動手段と、
画像データを受け付けて画像の形成が指示された場合、該画像データに基づいて1パス目で最初に形成するドットの位置であるドット形成開始位置を判定し、前記キャリッジの1パス目の移動方向を基準として前記判定したドット形成開始位置よりも手前側で且つ前記ドット形成開始位置が奥側に位置するほど奥側に前記キャリッジの待機位置を設定する待機位置設定手段と、
前記待機位置が設定された場合に該設定された待機位置に前記キャリッジが移動するよう前記移動手段を制御し、前記用紙の給紙が完了した場合に前記キャリッジが前記待機位置から往復動を開始するよう前記移動手段を制御すると共に前記画像データに基づいて前記給紙された用紙に液体を吐出するよう前記吐出ヘッドを制御する制御手段と
を備えることを要旨とする。
【0008】
この本発明の画像形成装置では、画像データを受け付けて画像の形成が指示された場合、画像データに基づいて1パス目で最初に形成するドットの位置であるドット形成開始位置を判定し、キャリッジの1パス目の移動方向を基準としてドット形成開始位置よりも手前側で且つドット形成開始位置が奥側に位置するほど奥側にキャリッジの待機位置を設定し、待機位置が設定された場合に設定された待機位置にキャリッジが移動するよう移動手段を制御し、用紙の給紙が完了した場合にキャリッジが待機位置から往復動を開始するよう移動手段を制御すると共に画像データに基づいて給紙された用紙に液体を吐出するよう吐出ヘッドを制御する。これにより、画像の形成を開始する際にキャリッジを速やかにドット形成開始位置まで移動させることができる。この結果、画像の形成を開始する際の吐出ヘッドの移動ロスを少なくして画像の形成をよりスムーズに開始することができる。
【0009】
こうした本発明の画像形成装置において、前記待機位置設定手段は、前記移動方向を基準として前記ドット形成開始位置から手前側に所定距離だけ離れた位置を前記待機位置に設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、簡易な処理で待機位置を設定することができる。この態様の本発明の画像形成装置において、前記制御手段は、前記キャリッジが定速移動を伴って往復動するよう前記移動手段を制御する手段であり、前記待機位置設定手段は、前記所定距離として、前記キャリッジが定速移動するまでの加速に必要な距離を用いる手段であるものとすることもできる。
【0010】
また、往路と復路との双方で前記吐出ヘッドから液体を吐出可能な本発明の画像形成装置であって、前記待機位置設定手段は、1パス目に形成されるドットの両端部である2つのドット形成端のうち前記キャリッジの現在の位置に近いドット形成端が前記ドット形成開始位置となるよう前記キャリッジの1パス目の移動方向と前記待機位置とを設定する手段であるものとすることもできる。こうすれば、キャリッジを速やかに待機位置まで移動させることができる。
【0011】
本発明の画像形成装置の制御方法は、
液体を吐出する吐出ヘッドを搭載したキャリッジと該キャリッジを移動させる移動手段とを備え、パス毎に用紙を所定量ずつ搬送すると共に該搬送の方向と直交する方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから前記用紙に液体を吐出することにより複数のドットを画像として形成する画像形成装置の制御方法であって、
(a)画像データを受け付けて画像の形成が指示された場合、該画像データに基づいて1パス目で最初に形成するドットの位置であるドット形成開始位置を判定し、前記キャリッジの1パス目の移動方向を基準として前記判定したドット形成開始位置よりも手前側で且つ前記ドット形成開始位置が奥側に位置するほど奥側に前記キャリッジの待機位置を設定し、
(b)前記待機位置が設定された場合に該設定された待機位置に前記キャリッジが移動するよう前記移動手段を制御し、前記用紙の給紙が完了した場合に前記キャリッジが前記待機位置から往復動を開始するよう前記移動手段を制御すると共に前記画像データに基づいて前記給紙された用紙に液体を吐出するよう前記吐出ヘッドを制御する
ことを特徴とする。
【0012】
この本発明の画像形成装置の制御方法では、画像データを受け付けて画像の形成が指示された場合、画像データに基づいて1パス目で最初に形成するドットの位置であるドット形成開始位置を判定し、キャリッジの1パス目の移動方向を基準としてドット形成開始位置よりも手前側で且つドット形成開始位置が奥側に位置するほど奥側にキャリッジの待機位置を設定し、待機位置が設定された場合に設定された待機位置にキャリッジが移動するよう移動手段を制御し、用紙の給紙が完了した場合にキャリッジが待機位置から往復動を開始するよう移動手段を制御すると共に画像データに基づいて給紙された用紙に液体を吐出するよう吐出ヘッドを制御する。これにより、画像の形成を開始する際にキャリッジを速やかにドット形成開始位置まで移動させることができる。この結果、画像の形成を開始する際の吐出ヘッドの移動ロスを少なくして画像の形成をよりスムーズに開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】インクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図。
【図2】印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【図3】右端位置Rpと左端位置Lpの一例を示す説明図。
【図4】待機位置Tpの一例を示す説明図。
【図5】右端位置Rpの変化と待機位置Tpとの関係を示す説明図である。
【図6】変形例の印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明の画像形成装置の一実施形態であるインクジェットプリンター20の構成の概略を示す構成図である。
【0015】
本実施形態のインクジェットプリンター20は、図1に示すように、駆動モーター33による紙送りローラー35の駆動により用紙Sを図中奥から手前(搬送方向)に搬送する紙送り機構31と、紙送り機構31によりプラテン38上に給紙された用紙Sに印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行なうプリンター機構21と、プラテン38の図中右端に形成され印刷ヘッド24を封止すると共に必要に応じて印刷ヘッド24内のインクを吸引してクリーニングを行なうキャッピング装置40と、インクジェットプリンター20全体をコントロールするコントローラー70とを備える。なお、キャッピング装置40上の位置をホームポジションという。
【0016】
プリンター機構21は、メカフレーム80の図中右側に配置されたキャリッジモーター34aと、メカフレーム80の図中左側に配置された従動ローラー34bと、キャリッジモーター34aと従動ローラー34bとに架設されたキャリッジベルト32と、キャリッジモーター34aの駆動に伴ってキャリッジベルト32によりガイド28に沿って用紙Sの搬送方向に直交する図中左右方向(主走査方向)に往復動するキャリッジ22と、このキャリッジ22に搭載され溶媒としての水に着色剤としての染料または顔料を含有したイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の各色のインクを個別に収容したインクカートリッジ26と、インクカートリッジ26から供給されたインクを加圧して図示しないノズルからインク滴を吐出する印刷ヘッド24とを備える。また、キャリッジ22の背面には、キャリッジ22の位置を検出するためのリニアエンコーダー36が配置されており、このリニアエンコーダー36によりキャリッジ22のポジションが管理されている。ここで、印刷ヘッド24には図示しないノズルからなるノズル列が主走査方向に並列に複数形成されているが、本実施形態では、それらのノズル列が形成される領域の主走査方向における中央位置をキャリッジ22のポジションとして管理するものとした。また、このキャリッジ22のポジションは、上述したホームポジションを原点とする左右方向の座標の値により表される。なお、印刷ヘッド24は、圧電素子に電圧をかけることにより、その圧電素子を変形させてインクを加圧する方式を採用するものとした。また、インクカートリッジ26をキャリッジ22に搭載したオンキャリッジタイプを図示したが、キャリッジ22以外の場所に配置したオフキャリッジタイプとしてもよい。
【0017】
コントローラー70は、CPU72を中心とするマイクロプロセッサーとして構成されており、各種処理プログラムや各種データを記憶したROM73と、一時的にデータを記憶したりするRAM74と、データを書き込み消去可能なフラッシュメモリー75と、外部機器との情報のやり取りを行なうインターフェース(I/F)76と、図示しない入出力ポートとを備える。RAM74には、印刷バッファー領域が設けられており、この印刷バッファー領域に汎用のパーソナルコンピューターであるユーザーPC10からI/F76を介して送られた印刷データが記憶される。このコントローラー70には、リニアエンコーダー36からのポジション信号などが入力ポートを介して入力される。また、コントローラー70からは、印刷ヘッド24への駆動信号や駆動モーター33への駆動信号,キャリッジモーター34aへの駆動信号などが出力ポートを介して出力される。なお、キャリッジ22が停止状態から加速し定速移動した後に減速して停止するようキャリッジモーター34aへの駆動信号が出力される。
【0018】
こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20では、ユーザーPC10側で展開されたドットデータを印刷データとして印刷実行指示と共に受け取ると、これをRAM74に設けられた印刷バッファー領域に出力する。そして、駆動モーター33により紙送りローラー35を回転させて用紙Sをプラテン38上に搬送すると共にキャリッジモーター34aによりキャリッジ22を往復動させ、同時に印刷ヘッド24の図示しない各色の圧電素子を駆動して各色インクを吐出してドットを形成することにより、用紙S上に画像を形成する。このインクジェットプリンター20は、印刷モードとして双方向印刷モードを有しており、双方向印刷モードにおいては、主走査方向の往路(図1における左方向)と復路(図1における右方向)との双方で印刷ヘッド24からインク滴を吐出して印刷を行なう。また、インクジェットプリンター20は、各パス毎のキャリッジ22の移動量が最小となるよう各パス毎のキャリッジ22の停止位置を次のパスの印刷開始位置に応じて変更してキャリッジ22を制御する、いわゆるロジカルシークが可能となっている。なお、ドットデータは、1パス分のデータ毎にキャリッジ22の移動方向に応じた順に並べ替えたイメージデータとして印刷ヘッド24に転送され、転送されたイメージデータに基づいて印刷ヘッド24の圧電素子の駆動が行なわれる。
【0019】
次に、こうして構成された本実施形態のインクジェットプリンター20の動作、特に、印刷処理時の動作について説明する。図2は、コントローラー70により実行される印刷処理ルーチンの一例を示すフローチャートである。このルーチンは、双方向印刷モードでユーザーPC10から印刷データを入力したときに実行される。
【0020】
このルーチンが実行されると、コントローラー70のCPU72は、まず、RAM74のバッファー領域から1パス目の印刷データを取得し(ステップS100)、取得した印刷データから1パス目に形成するドットのうち両端のドットの形成位置(右端位置Rp,左端位置Lp)を判定する(ステップS110)。図3は、右端位置Rpと左端位置Lpの一例を示す説明図である。図示するように、1パス目の印刷データから用紙Sにドットが形成されるドット形成領域(印刷領域)を認識することができ、この領域の両端の位置をそれぞれ右端位置Rp(図中右側),左端位置Lp(図中左側)とする。なお、印刷データには、ドットを形成する位置が規定されており、それらの位置に対応するリニアエンコーダー36の左右方向の座標の値のうち最も小さい値を右端位置Rpとすると共に最も大きい値を左端位置Lpとして判定することができる。
【0021】
次に、リニアエンコーダー36からキャリッジ22の現在位置Gpを取得して(ステップS120)、取得した現在位置Gpから右端位置Rpを減じた値の絶対値を距離Rkとして算出し(ステップS130)、現在位置Gpから左端位置Lpを減じた値の絶対値を距離Lkとして算出する(ステップS140)。次に、算出した距離Rkと距離Lkとの大小を比較する(ステップS150)。この大小の比較により、右端位置Rpと左端位置Lpとのどちらの位置がキャリッジ22の現在位置Gpにより近いかを判断することができる。なお、印刷開始当初であれば、通常キャリッジ22はホームポジション上の位置にあるから、距離Rkが距離Lk以下と判定する。一方、印刷を開始した以降であれば、上述したロジカルシークにより前ページの印刷における最終パスの終了位置が現在位置Gpとなることがあり、その位置によっては距離Lkが距離Rkよりも小さくなるから、距離Rkが距離Lk以下ではないと判定する。
【0022】
ステップS150で距離Rkが距離Lk以下と判定したときには、1パス目のキャリッジ22の移動方向を往路方向に設定し(ステップS160)、右端位置Rpからキャリッジ22の加速に必要な所定距離αを減じた位置(Rp−α)をキャリッジ22の待機位置Tpに設定する(ステップS170)。即ち、この場合には、右端位置Rpを印刷開始位置として、その印刷開始位置からキャリッジ22の移動方向の手前側に所定距離αだけ離れた位置を待機位置Tpに設定するのである。なお、所定距離αは、キャリッジ22を停止状態から加速して定速移動させるまでの加速に必要な距離をリニアエンコーダー36の座標値に換算した値として、予めROM73に記憶されている。一方、ステップS150で距離Rkが距離Lk以下ではないと判定したとき即ち距離Rkが距離Lkより大きいときには、1パス目のキャリッジ22の移動方向を復路方向に設定し(ステップS180)、左端位置Lpに所定距離αを加えた位置(Lp+α)をキャリッジ22の待機位置Tpに設定する(ステップS190)。即ち、この場合には、左端位置Lpを印刷開始位置として、その印刷開始位置からキャリッジ22の移動方向の手前側に所定距離αだけ離れた位置を待機位置Tpに設定するのである。
【0023】
こうして待機位置Tpを設定すると、キャリッジモーター34aを制御してキャリッジ22を待機位置Tpに移動させる(ステップS200)。ここで、図4は、待機位置Tpの一例を示す説明図であり、図4(a)は、距離Rkが距離Lk以下と判定したときの待機位置Tpを示し、図4(b)は、距離Rkが距離Lk以下ではないと判定したときの待機位置Tpを示す。このように、距離Rkと距離Lkとの大小を比較して、現在位置Gpにより近い位置を待機位置Tpに設定してキャリッジ22を移動させるから、キャリッジ22をよりスムーズに待機位置Tpまで移動させることができる。また、図5は、右端位置Rpの変化と待機位置Tpとの関係を示す説明図である。なお、図5では、距離Rkが距離Lk以下と判定して、1パス目のキャリッジ22の移動方向を往路方向(図5中左方向)に設定した場合の関係を示す。1パス目の印刷データからドットを形成する領域(印刷領域)が、図示するように、領域(1),(2),(3)と変化した場合を考えると、右端位置Rpも右端位置Rp(1),(2),(3)と変化する。このとき、待機位置Tpは、右端位置Rp(1),(2),(3)からそれぞれ所定距離αだけ離れた待機位置Tp(1),(2),(3)となる。即ち、1パス目のキャリッジ22の移動方向を基準として、右端位置Rpよりも手前側で且つ右端位置Rpが移動方向の奥側に位置するほど奥側となるようキャリッジ22の待機位置Tpが設定されることになる。これにより、キャリッジ22を印刷開始位置の近くのより適切な位置で待機させておくことができる。
【0024】
こうしてキャリッジ22を待機位置Tpに移動させると、駆動モーター33を制御して用紙Sの給紙処理を行なう(ステップS210)。なお、給紙処理は、キャリッジ22が待機位置Tpに移動するのを待って行なうものとしてもよいし、キャリッジ22の移動中に行なうものとしてもよい。給紙処理を行なうと、1ページ分の印刷処理を実行する(ステップS220)。なお、印刷処理は、主走査方向にキャリッジ22が往復動するようキャリッジモーター34aを制御すると共に印刷データに基づいて用紙Sにインクが吐出されるよう印刷ヘッド24の圧電素子を駆動し、パス毎に用紙Sが搬送方向に所定量ずつ搬送されるよう駆動モーター33を制御する処理を繰り返すことにより行なわれる。ここで、キャリッジ22は、印刷を開始する際には印刷開始位置から所定距離αだけ離れた待機位置Tpで待機しているから、速やかに印刷開始位置まで移動させることができる。このため、印刷ヘッド24からインクを吐出することなくキャリッジ22を移動させる距離を短くすることができるから、印刷ヘッド24の移動ロスを少なくしてよりスムーズに印刷処理を開始させることができる。こうして印刷処理を実行すると、印刷した用紙Sを排紙処理して(ステップS230)、次ページ(次の用紙S)の印刷があるか否かを判定する(ステップS240)。次ページがあると判定したときにはステップS100に戻り処理を繰り返し、ないと判定したときにはキャリッジ22をホームポジションに移動させて(ステップS250)、本ルーチンを終了する。なお、キャリッジ22の待機位置Tpの設定は、各ページ毎(給紙される用紙S毎)に行なうから、各ページの印刷処理を開始する度に印刷ヘッド24の移動ロスを少ないものとすることができ、結果として、印刷処理のスループットの向上を図ることができる。
【0025】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態のキャリッジ22を移動させるキャリッジベルト32、キャリッジモーター34a、従動ローラー34bが本発明の「移動手段」に相当し、図2の印刷処理ルーチンのステップS100〜190の処理を実行するコントローラー70が「待機位置設定手段」に相当し、図2の印刷処理ルーチンのステップS200,220の処理を実行するコントローラー70が「制御手段」に相当する。
【0026】
以上詳述した本実施形態のインクジェットプリンター20によれば、1パス目の印刷データから1パス目に形成するドットの両端部の位置である右端位置Rpと左端位置Lpとを判定し、判定した右端位置Rpと左端位置Lpとのうち印刷ヘッド24を搭載するキャリッジ22の現在位置Gpに近い位置を判定し、近いと判定した位置が印刷開始位置となるように1パス目の移動方向を設定すると共に印刷開始位置から加速に必要な所定距離αだけ手前の位置を待機位置Tpに設定し、設定した待機位置Tpにキャリッジ22を移動させてから給紙した用紙Sに対して印刷処理を実行するから、印刷処理を開始する際にキャリッジ22を速やかに印刷開始位置まで移動させることができる。この結果、印刷ヘッド24の移動ロスを少なくしてよりスムーズに印刷処理を開始させることができる。また、待機位置Tpは、印刷開始位置から所定距離αだけ手前の位置に設定するものとしたから、簡易な処理で待機位置Tpを設定することができる。
【0027】
なお、本発明は上述した実施態様に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0028】
上述した実施形態では、印刷モードとして双方向印刷モードを用いて印刷する場合に適用して説明したが、双方向印刷モードを用いることなく片方向(例えば、往路方向)で印刷を行なうものとしてもよい。また、双方向印刷モードにおける1パス目のキャリッジ22の移動方向を設定するものとしたが、移動方向を設定することなく、予め決められた方向(例えば、往路方向)で印刷を行なうものとしてもよい。この場合、図2の印刷処理ルーチンの代わりに図6に示す変形例の印刷処理ルーチンを実行するものとすればよい。以下、この処理ルーチンについて説明する。なお、図6においては、図2と同じ処理については同じ符号を付しその説明を省略する。ステップS100で1パス目の印刷データを取得すると、取得した印刷データから1パス目で形成するドットの右端位置Rpを判定する(ステップS110a)。次に、右端位置Rpから所定距離αを減じて待機位置Tpを設定し(ステップS160a)、ステップS200でキャリッジ22を待機位置Tpに移動して、以下ステップS210以降の処理を実行する。これにより、より簡易な処理で待機位置Tpを設定して、スムーズに印刷処理を開始することができる。
【0029】
上述した実施形態では、待機位置Tpを印刷開始位置(右端位置Rpまたは左端位置Lp)から加速に必要な所定距離αだけ離れた位置に設定するものとしたが、これに限られず、右端位置Rpまたは左端位置Lpから任意の所定距離だけ離れた位置に設定するものとしてもよい。あるいは、所定の距離に限られず、右端位置Rpまたは左端位置Lpの位置などに応じて変動する距離を離した位置に設定するものとしてもよい。
【0030】
上述した実施形態では、ノズル列が形成される領域の主走査方向における中央位置をキャリッジ22のポジションとして現在位置Gpを取得するものとしたが、これに限られず、キャリッジ22のポジションを管理できる位置であればどのような位置であってもよい。なお、その場合には、取得する現在位置と主走査方向の左端のノズル列までの距離と、取得する現在位置と主走査方向の右端のノズル列までの距離とを予め把握しておき、距離Rkを算出するときには左端のノズル列までの距離を加味して算出し、距離Lkを算出するときには右端のノズル列までの距離を加味して算出するものとすればよい。
【0031】
上述した実施形態では、本発明の画像形成装置の一例としてインクジェットプリンター20を示したが、本発明は液体を吐出して用紙にドットを形成するものであればこれに限定されるものではなく、例えば、ファクシミリ装置や複合機などのOA機器に適用してもよい。
【符号の説明】
【0032】
10 ユーザーPC、20 インクジェットプリンター、21 プリンター機構、22 キャリッジ、24 印刷ヘッド、26 インクカートリッジ、28 ガイド、31 紙送り機構、32 キャリッジベルト、33 駆動モーター、34a キャリッジモーター、34b 従動ローラー、35 紙送りローラー、36 リニアエンコーダー、38 プラテン、40 キャッピング装置、70 コントローラー、72 CPU、73 ROM、74 RAM、75 フラッシュメモリー、76 インターフェース(I/F)、80 メカフレーム、S 用紙。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する吐出ヘッドを搭載したキャリッジを備え、パス毎に用紙を所定量ずつ搬送すると共に該搬送の方向と直交する方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから前記用紙に液体を吐出することにより複数のドットを画像として形成する画像形成装置であって、
前記キャリッジを移動させる移動手段と、
画像データを受け付けて画像の形成が指示された場合、該画像データに基づいて1パス目で最初に形成するドットの位置であるドット形成開始位置を判定し、前記キャリッジの1パス目の移動方向を基準として前記判定したドット形成開始位置よりも手前側で且つ前記ドット形成開始位置が奥側に位置するほど奥側に前記キャリッジの待機位置を設定する待機位置設定手段と、
前記待機位置が設定された場合に該設定された待機位置に前記キャリッジが移動するよう前記移動手段を制御し、前記用紙の給紙が完了した場合に前記キャリッジが前記待機位置から往復動を開始するよう前記移動手段を制御すると共に前記画像データに基づいて前記給紙された用紙に液体を吐出するよう前記吐出ヘッドを制御する制御手段と
を備える画像形成装置。
【請求項2】
前記待機位置設定手段は、前記移動方向を基準として前記ドット形成開始位置から手前側に所定距離だけ離れた位置を前記待機位置に設定する手段である請求項1記載の画像形成装置。
【請求項3】
請求項2記載の画像形成装置であって、
前記制御手段は、前記キャリッジが定速移動を伴って往復動するよう前記移動手段を制御する手段であり、
前記待機位置設定手段は、前記所定距離として、前記キャリッジが定速移動するまでの加速に必要な距離を用いる手段である
画像形成装置。
【請求項4】
往路と復路との双方で前記吐出ヘッドから液体を吐出可能な請求項1ないし3いずれか1項に記載の画像形成装置であって、
前記待機位置設定手段は、1パス目に形成されるドットの両端部である2つのドット形成端のうち前記キャリッジの現在の位置に近いドット形成端が前記ドット形成開始位置となるよう前記キャリッジの1パス目の移動方向と前記待機位置とを設定する手段である
画像形成装置。
【請求項5】
液体を吐出する吐出ヘッドを搭載したキャリッジと該キャリッジを移動させる移動手段とを備え、パス毎に用紙を所定量ずつ搬送すると共に該搬送の方向と直交する方向に前記キャリッジを往復動しながら前記吐出ヘッドから前記用紙に液体を吐出することにより複数のドットを画像として形成する画像形成装置の制御方法であって、
(a)画像データを受け付けて画像の形成が指示された場合、該画像データに基づいて1パス目で最初に形成するドットの位置であるドット形成開始位置を判定し、前記キャリッジの1パス目の移動方向を基準として前記判定したドット形成開始位置よりも手前側で且つ前記ドット形成開始位置が奥側に位置するほど奥側に前記キャリッジの待機位置を設定し、
(b)前記待機位置が設定された場合に該設定された待機位置に前記キャリッジが移動するよう前記移動手段を制御し、前記用紙の給紙が完了した場合に前記キャリッジが前記待機位置から往復動を開始するよう前記移動手段を制御すると共に前記画像データに基づいて前記給紙された用紙に液体を吐出するよう前記吐出ヘッドを制御する
ことを特徴とする画像形成装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−143556(P2011−143556A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−4069(P2010−4069)
【出願日】平成22年1月12日(2010.1.12)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】